輝ける未来を
第十話

「どうしてあなたがこの世界に居るんですか!?」

明はくっついていた百合香を離し彼女に向き合うとそう切り出した。

「どうしてって、酷い言い方ですね。明さん」

「すみません。ですが・・・・・」

「大丈夫です。今からあなたが聞きたいと思っていることを順序良く説明してあげます」

彼女は懐から短剣を一本取り出して空を切り、そこを掴み思いっきり左右に引っ張ると

そこに黒い空間が現れる。そのなかに手を入れホワイトボードを取り出した。

「・・・・・質問したいんですが」

「はい、何でしょう」

「今、何しました?」

「ただ単に時空を切って私の空間と繋げただけですが?」

「何ですと!!」

「どうして驚くんですか?この位私にかかれば朝ご飯前であることぐらい知っているじゃあないですか」

どうしてそんなことを聞くのかわからないといった感じでそう聞き返す。

「いや、まあ久しぶりに見たものでちょっと驚いたんです」

「ふふ、変な明さん」

大声出したことと笑われたことが恥ずかしかったのか彼女から目をそらし頭を掻く。

「では、説明を始めますよ」

「あっ、はい。お願いします」

「まず百合香さんがここに居るのは、明さんを追ってきたためです。」

「それは予想していましたが、どうして「どうして私の所に辿り着けたということでしょう?」・・・・・はい」

「その事に関しては、二人の因縁から話さないと行けませんね」

「「俺(私)達の因縁?」」

明と百合香の声が見事にはもる。

「そう。明さん、あなたの姓は?」

「・・・・・天河ですけど」

「じゃあ、百合香さん、あなたのは?」

「・・・・・御統です」

「はい、そのとうり。二人ともよく出来ました♪」

「「それがどうかしたんですか?」」

さすが五年間一緒に暮らしたことのある二人であって、ここらの息はぴったりだ。

「次に、明さんあなたの右目は何?」

「・・・・・邪眼です」

少し黙った後、絞り出すような声でそう答えた。

「ほえ?お兄ちゃん、邪眼って何?」

「・・・・・そう言えば、百合香には見せたことが無かったな」

明は眼鏡を外し、さらに右目に付けているカラーコンタクトを外した。

「百合香、これが邪眼だよ」

「・・・・・紫金色の瞳」

百合香は、普通ありえない色の瞳でこちらを見つめる義兄から目が離せずにいた。

「なるべくなら百合香には一生見せたくは無かったんだがな」

明の声には深い悲しみが含まれているように感じた。

「・・・・・気味、悪いよな、やっぱり」

何も話さない義妹を見て自嘲するような笑みを浮かべる義兄を見て必死に否定するように首を振る。

「無理しなくても良い。誰だってこんな瞳を見れば気味が悪く「そんなこと無い!!」・・・・・え?」

百合香は大声を出し言葉を途中で遮った。

「そんなこと無い。お兄ちゃんの瞳、綺麗だよ。気持ち悪くなんて絶対無い」

「・・・・・そうかな?」

「そうだよ。そうですよねアンゼロットさん」

「百合香さんの言う通りです。明さんの瞳、とっても綺麗ですよ」

二人に誉められ、少し戸惑ったようだが嬉しそうにそうに頬を掻く。

「それに、私の瞳だって普通じゃあないもの」

そう言うと百合香も自分が何時も左目につけていたカラーコンタクトを外した。

そこに現れたのは彼女が羽織っているマントの色と同じ白銀色の瞳だった。

「なっ!?」

今度は明が黙る番だった。

「まさか、邪眼!?」

「いいえ、百合香さんのは対邪眼用邪眼。名を破邪眼」

「・・・・・対邪眼用邪眼?聞いたことありませんよそんなの」

「まあ、無いでしょうね。このことは天河、御統両方とも言い伝えられなくなったことだから。

 ・・・・・実はですね、天河と御統の因縁は千年の時を遡るんですよ。」

いきなり話が大きくなり唖然とした表情をし、言葉が出なくなる二人。

「千年前、まだ鎌倉に幕府があった頃京都の山奥にある一族がすんでいました。

 その一族の長には不思議な力があり、念動力や、人々を魅了する力を使って、

 都に降りては人をさらったり、強奪などの悪さを起こしていました。

 その事で頭を痛ませていた帝はその当時最強の術者集団と謳われていた一族に命じそのもの達を討つ様に命じました。

 その一族の姓は御統。そしてその一族の長だったのは若干14歳の少女、名を百合火と言いました」

「じゃあ、悪さをしていた方の一族って・・・・・」

「・・・・・天河だったんですね。そして、その長の名前は・・・・・」

「二人が思っている通り、その時の長の名前は秋斗。その美貌から歩けば男女問わず振り返り、力を使えば

 どんな物でも破壊しました」

そこまで話すと、一息つくかのように彼女は何も話さなくなった。その間に明は時計を見ると、針は

もうそろそろ式が始まる予定だった時間から1時間経とうとしていた。

「すみません、もうそろそろ時間が迫っているので話しを簡略化してお願いできませんか?」

「わかりました。勅命を受けた御統一族は直に天河一族を討ちに出ました。そこで二人は始めて出会い、

 それから色々あり何時の間にか二人の間に愛情が芽生え終には駆け落ちして、陸奥の山奥でひっそりと

 暮らしたんです。それから暫くして男女の双子が生まれました。それがあなた達の遠い先祖になるわけです」

「それって、私達は親戚になるってことですか?」

「ものすっごーーーく遠い親戚だけどね、それよりも幾つか質問があります。

 まず一つ目、俺の邪眼については解りましたが百合香のはどっちの物ですか?」

「百合香さんのは百合火さんの力が遺伝したものです。次は?」

「戦争後、両陣営の生き残りは何人ですか」

「天河側が五名、御統側が十名だけです」

「その人達の子孫は、その後どうなりましたか」

「・・・・・実は、彼らの子孫の内何人かはこの船に乗っていたりするんですよ」

「「何ですと!!!!!」」

またも衝撃の新事実に二人の声が綺麗にはもる。何度もこうだと感嘆物である

「天河側の子孫は、副長のアオイさん、パイロットのヤマダさんとイツキさん、それに琥珀。

 対して御統側は、操舵士のハルカさん、副提督のキョウコさん、整備班長のウリバタケさんです」

今の説明で明の頭の中で組み立てていたパズルの最後のパーツが音をたててはまる。

「なるほど、そう言うことか」

「どうしたのお兄ちゃん、いきなり?」

「俺や百合香、アキトさんや琥珀ちゃんがこの人のところに辿り着けて、ルリちゃんやラピスちゃんが

 辿り着けなかったその境界線、それは天河や御統みたいな不思議な能力が使える遺伝子を持っているか

 どうかってことですね」

「大正解、よく出来ました」

パチパチパチと拍手をして、賞賛する。

「そうなると、細かいことを色々聞きたくなりますが今回は無視するとして、

 最後の質問なんですが・・・・・」

途中で言葉を切り言うべきか言わざるべきかいつもの姿勢で悩み始める。

「どうしたんですか?」

大半のことに関しては物事をはっきり言う彼が珍しく悩んでいる姿を見て

不思議そうにそう聞いてくる。

「先ほどから気になっていたんですが・・・・・アンゼロットって何ですか?」

確か、彼女には名前が無かったはずだし、必要無かったはずだ。

「それはですね、私、人間になったんですよ。これが証拠です」

彼女は明の手を取り自分の胸の谷間に当てる。このいきなりの行動に混乱しそうになったが

持ち前の精神力で何とか理性を保った・・・・・

「なっなんばしよっとですかーーー」

様に見えたがやはり無理だったらしい。それより、どこの言葉だよそれ。

「わかりませんか、胸の鼓動が」

混乱した状態からなんとか立ち直り神経を集中してみると、確かに鼓動が聞こえる。

「・・・・・本当みたいですね。と言う事はアンゼロットは人としての名前ですか」

「その通りです。さすが明さんは物分りが速いですね」

「それよりも、もうそろそろ手を離してくれませんか?さすがに・・・・・」

今の彼女は、そこらのアイドルを一掃するほどの美貌とスタイルの持ち主であり、そんな人の胸に触っている

わけで、一応明も年相応の感情を持っているわけだが、もうこれ以上は理性が保てませんと言えるわけが無く

小声でごにょごにょ言うことしか出来ない。

そんな天国と地獄の味わいながら、いい加減理性も限界に来た時、機械音が室内に響き渡る。

「(やった、天の助けだ)一体何の音だ?」

「あら、もう時間ですか」

「そんなーーーー」

アンゼロットは残念そうに、百合香に至ってはブーイング爆発だ。

「・・・・・時間?」

「もうそろそろ会議の時間ですね」

「・・・・・会議??」

「お兄ちゃん、『フェルミオン』って言う会社知ってる?」

明は記憶を掘り起こしてみると、該当する名前が一つ出てきた。

「確か、ここ五年で一気に大きくなって、今ではネルガルやクリムゾンにも退けを取らないと言われていて、

 戦艦から揺り篭まで幅広く取り扱っているとかなんとか」

「アンゼロットさんが会長さんで私が会長秘書。すごいでしょ」

(この世界に干渉したのか!!!)

「良いんですか、こんなことをして?」

「あら、いくら明さんが優れていても支援無しでどこまでのことが出来るかしら?」

「それは・・・・・」

明も後方支援の大切さは身に染みている。そしてこういった大企業の支援があれば

より幅広く活動ができるのも確かである。

「急がないと、本当に遅刻しちゃいますよ!!」

「そうですね。その前に、明さんこれ見といてください」

彼女は懐から一枚のディスクを取り出し、明に手渡した。

「これは?」

「今建造中の明さんと百合香さん、それにアキトさんの新しい機体の設計図です。

 ちゃんと見ていてくださいね」

「お兄ちゃん、またね♪」

再び短剣で空間を切り、今度は地球のフェルミオンの会長室とを繋げ、その中に入っていった。

そして空間が閉じた時展望室には明だけが残っていた。

「さて、俺も行くとするかな」

カラーコンタクトと眼鏡を付けなおすと展望室を後にした。

結局この出来事はプロスの手によって皆に放映されていたことに明は最後まで気がつかなかった。





後書き

・・・・・どうも、akiraです。さて、今回のお話はどうでしたでしょうか。

明と百合香の時を越えた因縁(みたいなもの)を書いてみたかったんです。

良かった点、不満だった点、何でも構いません。一筆書いて頂けると嬉しいのですが・・・と言うか、ください(涙)

次回は格納庫のお話になる予定です。それでは、また。



 

 

代理人の感想

むぅ。

この二人、「もう一人のアキトとユリカ」だと思ったんですが

本家の方のアキトとユリカはどうなるんでしょう?

今後の展開がかなり気になる所ではあります。