輝ける未来を

第十三話

夢を見ている。

全てを包み込むような真っ白な雪が辺り一面に積もっている。

そして目の前には全焼した後の家がある。

数日前までは幸せの象徴だった物。

何時も笑顔で帰りを出迎えてくれる大切な女性がいた。

でも、もうその女性はいない。

もう私に微笑みかけてくれない。

もう二度と私と共に歩んではくれない。

それは私の所為。

私が力が無かった・・・無力だった所為。

・・・だから私は・・・

「・・・・命(ミコト)!!!」

明が目を開けて最初に目に入った物はすっかり目に馴染んだ艦長室の天井だった。

「はっ、はっ、はっ・・・・命」

「どうしたの明斗君?」

つい最近まで自分が寝ていたベットを使っている舞が起き上がると心配そうに

こちらを覗いてくる。

「何か悪い夢でも見たの?」

「・・・大丈夫」

「そんな顔して、ぜんぜん大丈夫じゃないよ」

「・・・そんなに酷い顔をしている?」

「とっても酷い顔してるよ。だって全く生気を感じられないもん」

「・・・そう、でも大丈夫。ちょっとだけ夢見が悪かっただけだから」

それだけ言い残すと洗面台に向いそこに備えつけられている鏡に映る自分を見る。

鏡に映った自分は舞の言うとうり酷い顔だった。

顔面蒼白で全く生気が感じられない。

それはまるで死人のような気配まで漂っていた。

「・・・命、私はどうして生きているんだろうな。君のいない世界なんて

 どうでも良いはずなのに。私は一体何に執着しているのだろうか・・・」

あの時、自分の大切だった人を守りきれなかった時から永遠と繰り返してきた

疑問を自分に投げかけながら明の朝がゆっくりと開けていく。

「・・・明、どうしたんだ今日は。動きが何時もより鈍いが?」

午前中、何時もどうりに書類の山を片付けるといつものようにトレーニングルームに向い

待っていたアキトと訓練し始めて1時間。少し休憩を入れたときにアキトが近づいて来ると

そう聞いてきた。

「やっぱり分りますか」

「もちろん。伊達に毎日お前にしごかれていないよ。それよりどうしたんだ、

 何か悩み事でもあるのか?」

「いえ、そう言うわけではないんです。ただちょっと夢見が悪かっただけなんですが・・・

 すみませんが、今日は一人でやってくれませんか」

「それは構わないが・・・本当に大丈夫か?何なら部屋まで送っていくが」

「いやそれには及びません。大丈夫ですよ」

素早く荷物をまとめ、背負うと部屋を出る。暫く歩いた所にあった自販機でコーヒー(無糖)

を買い、ベンチに腰をかけると静かに飲み始める。

「・・・やはり、俺は弱いな。彼女がいないと・・・」

「あら、彼女って誰のこと?」

振り返るとそこにミナトが立っていた。

「・・・ミナトさん、何時からそこに?」

「今来たばかりよ。ねえ、それよりも『彼女』って誰のこと?もしかして恋人とか?」

「・・・・黙れ」

「・・・・えっ?」

「黙れと言っている」

明は飲み干した缶を少し力を入れて握る。すると缶は簡単に潰れた。

「あの、私何か艦長の気に触ることいった?」

「・・・・・・・・」

恐る恐る聞いてきたミナトを睨み付ける。その瞳にはこの艦で誰も似たことがないくらいの

怒りの感情が含まれていた。そのあまりの恐怖に体が石化したのごとく動かなくなる。

「その、ごめんなさい」

「忘れてくれ」

「・・・は?」

「さっき、私が言ったことは忘れてくれ」

「うっ、うん」

ミナトの返事を聞くとつぶした缶をゴミ箱の中に投げ入れ席を立とうとした瞬間、

コミュニケに緊急通信のアラームが鳴る。

「艦長、大変です!!」

「何か、メグミさん?」

「ウリバタケさん達が反乱を起こしたんです」

「わかった。すぐ行く。ミナトさん行こう」

「ちょっ、ちょっとまって」

先に走り出していった明を追いかけてミナトも走ってブリッジに向かった。

「何事だ、いったい」

艦橋について明が最初に見たものは、ルリ、ラピス、琥珀に銃を突きつけている

パイロット四人娘と、片手に銃、片手に契約書を持ちプロスと睨み合いをしている

ウリバタケだった。

「おう、艦長丁度良い。これを見てくれ」

そう言って自分が持っていた契約書を明に手渡す。

「これが何か?」

「その一番最後のやつを読んでみてくれ」

「一番最後って言うと、艦内恋愛についてだったな。それがどうしたんだ」

「・・・知っているのか?」

「何を言っているんですか。良いですかウリバタケさん。契約と言うのは契約した相手に

 自分の命を預けるといった意味なんですよ。そんな大事なことを簡単に決めれるわけ

 ないじゃないですか。よって契約書は隅々まで読んで自分にとって不利益が無いか確かめて

 から契約するのが世間一般の常識だと思うのだが。貴方達はどう思う」

明に正論を述べられ沈黙する反乱軍。一方の経営陣は満面の笑みを浮かべていた。

「だが、ネルガル側もこのような解り辛いところに書くのも悪い。こう言った大切な物は

 もう少しわかりやすいところに書くべきだと思う。よってどちらも悪いと言ったことで

 喧嘩両成敗だ。さっ、皆さっさと自分の・・・・」

ドガーーーン

突如巨大な爆音とゆれが艦内を襲う。物につかまっていた者や明みたいに平衡感覚に

優れている者以外は皆見事にこけた。

「ラピスちゃん、状況を報告して」

「うん。今の攻撃でフィールドが7割まで低下。敵は戦艦クラス約50、バッタが

 約2000から2300。まだ増えてる、後方にチューリップがあるみたい」

ラピスの報告に皆の顔が一斉に青ざめる。戦況は絶望的と言っても良いだろう。

だが、そんな中平然とした顔をしている数名が戦略を立てていた。

「後方にチューリップか・・・厄介だな」

「無人兵器の数としては大した事は無いんですけど」

「大丈夫、アキトならきっとどうにかしてくれる」

「そうです、なんたって私の夫なんですから」

「「違います(もん)アキト(さん)は私の騎士です(だよ)」」

三人の妖精が火花飛ばすなか、明だけはひたすら考える。

「俺がチューリップを沈めるとして問題は無人兵器だな。アキトさん一人だと負担がでかいし

 かと言って、この状況で戦力になるといったら「私しかいないよね」そう舞姉さんしか・・・

 てっ、どうしてここに舞姉さんがいるんだ」

「だって、暇だったんだもん」

「暇だと貴方はかってに艦内を出歩くんですか」

「いいじゃない。どうせ私のことなんて皆にばれているんだし」

ちなみに、前々回において舞を見つける際に『神気』を使ったことで艦内全体を知覚した時に格納庫で

自分を見ていることに気づいたが、あえて無視していた。見られていたことに少しは怒りを感じたが

聞かれても理解できる物ではないと判断したためだ。

「舞姉さん、ナノマシン処理してたっけ?」

「大丈夫、ほら」

明の目の前に差し出した手の甲には普通の物とは違った紋様が浮かんでいた。

「・・・確かこの絵柄は万能型のやつだよね」

「そう。これで機動兵器の操縦から戦艦のオペレートまで何でもござれだよ」

「あまり姉さんを危険な目に合わせたくないんだけど場合が場合だから仕方が無いか。

 舞姉さんは青いエステを使って、格納庫にいるアキトさんと共にバッタや戦艦の相手を。

 ルリちゃん達はナデシコをなるべく後方に下がらせて、全てのエネルギーをフィールドに回して待機。

 俺はチューリップを落す。いいかい」

「「「「わかりました(わかった)(了解)」」」」

「しかし、厄介だなあ」

「愚痴らない、愚痴らない。」

アキトの乗るサレナは両腕に取り付けられているハンドカノンでバッタを破壊しつつ、愚痴をこぼし、

舞は両腕に持ったナイフに自分の『神気』を纏わせ切り裂きながらアキトの愚痴を聞いていた。

「もう少し少なかったらよかったんだけどなあ」

「そうよねえ。確かにこれだけの数を相手にするのは辛いよねえ」

「っと、もうすぐ弾切れか・・・後は肉弾戦だな」

「あっ、もうそろそろ明斗君がチューリップに到着するころね。アキトさん通信開いときなさい。

 きっといいこと聞くことが出来ると思うわよ」

「・・・いいこと?」

「そう、あっ始まったみたい。琥珀ちゃんたちも良い?」

『はい。準備OKです』

「我、天河の名を継ぎ、戦神と契約し者なり。今この時をもって

 その力を我の前に示し,全てを滅ぼせ!!!」

その言葉が終ると同時にガーベラを中心として広範囲に紫金色の光に包まれる。

そして光が晴れると、そこにはガーベラ以外何も存在していなかった。

「なっ・・・」

「あのころより威力は格段に違うわねえ」

『凄い・・・始めて見た』

「おーーい、明斗君大丈夫?」

「・・・ああ、大丈夫だ。全機これより敵残党狩りを開始する。いくぞ」

「「了解」」

絶望的と思われたこの戦いは僅か明一機の活躍により損害は殆ど皆無で終った。

だがこの事により明はクルーの間から敬意と畏怖の篭った目で見られるようになる。

後書き

こんにちわ、akiraです。

この熱い日々を皆さんはどのように過ごしていますでしょうか。

私はばてています。死にかけています。

さて、今回はどうでしたか?少しでも皆様に楽しんでいただければ幸いです。

それではまた。

 

 

代理人の感想

明の口調が脈絡無しに度々変化するのは精神分裂か躁鬱の気でもあるんでしょうか?

 

それは置いておいてもいまいち盛り上がりに欠けます。

何と言うか、「起きた出来事を書いてるだけ」という感じがして盛り上がりがないんですね。

要精進。