「世界史は 不断の闘争が生む 永遠の人間劇に他ならない   J=ミシュレー」


 その国は危機に陥っていた…………神聖ラングラン王国
 
 地球内部の空洞世界『ラ・ギアス』に存在する国

 5万年の歴史と、地上の科学をも凌駕する技術を持ったこの国は、迫り来る脅威と闘おうとしていた

 ことは、ラングラン王宮アカデミーの未来見の予言に端を発する

『巨大な魔神がラングランを滅ぼす。そしてそれは、ラ・ギアスに生ける者全てに厄災を振りまく』

 そして予言の日は遅くとも10年後と予測された

 正体不明の巨大な力・・・・ラングラン国王アルザール=グラン=ビルセイアは、

それに対抗し得る力を作り出すのが賢明であるとの判断を下した

 ラングラン王国は連金学協会の全面的な支援の下魔装機計画を発動した

 魔装機、それは錬金学の粋を集めて作成された、人型汎用兵器である

 動力は永久機関によってまかなわれ、パイロットのプラーナ(気)によって、無限ともいえるパワーを引き出す

 そして、その魔装機の内、高位の精霊との契約に成功し、絶大なパワーを持つに至った4機の魔装機を『魔装機神』と呼んだ



 だが、ここで一つの問題が発生した

 魔装機はその能力の高さ故に、高いプラーナを持つものでなければ操れない欠陥があったのだ

 ラ・ギアスの人々は、精神的に成熟しているが故に、荒々しいプラーナを持つものが少なかった

 

 予言の日まであと四年・・・・遅々として集まらぬ魔装機操者候補…………

 ラングラン首脳部は、ついに一大決心をし、地上から魔装機操者を召喚することにした

 その中に、『テンカワ アキト』という一人の青年の姿があった



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『俺が帰るべき場所は・・・ナデシコだ!!

 皆が揃っているナデシコだ!!

 何処に跳ばされようと、俺は絶対に帰って来る!!

 例え、遥かな距離だろうと、時を超えても―――』

 虹色の閃光に包まれたブローディアの中で、俺は意識を失った………


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                        スーパーナデシコ大戦
 
                          
魔装機神

                      THE LORD OF NADESIKO 

                         
                       第一話『ラ・ギアス』

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アキト兄、起きて!!アキト兄!!


『アキト兄〜、外が大変な事になっているよ〜』



 ドゴーン!!パパパパパパ、ドカーン



「ちょっと、ブロス!そんなんじゃ、アキト兄おきないわよ!!」


『だって〜、僕が大声出すのイメージに合わないと思わない?』


「そんなこと言ってる場合!?外は、何だか知らないけど戦場なのよ!?」



 ガシィン!!チュドーン!!



『そうだね〜、見事に戦場だね〜、しかも最前線っぽいね〜』



 ……うう、何だ?二人がなにやら言い合っている…?その上爆音が聞こえるような……



「アキト兄!起きて!起きてよ!!起きなさい!!」


「うわ!?な、なんだ!?」


『あ、アキト兄。眼、覚めた〜?』


「うう……なんだか知らないけど頭がガンガンする」


『それは多分、ディアが叫んでたからだと思うよ〜』


「それはともかく、アキト兄、なんか外でドンパチやってるんだけど」


「な、なに?ええと、二人とも、機体と周囲の状況を教えてくれ」


 ドムッ!!


 ……確かに、少し注意しなくても分かる爆音が轟いている。さっきのは聞き間違いでは無かったようだ



『ブローディアはね〜、スラスター類全損、相転移エンジンも出力10%以下に低下してるよ〜

 いまのブローディアで出来ることって歩行での移動くらいじゃないかな〜』


「周囲では、機動兵器と思われる反応が多数……戦闘中、だと思う

 ちなみに、その距離ってすぐ近くなんだけど」


「戦闘行為は出来そうに無いってことか………ところで、近くって…どれ位近くなんだ?」


「『目の前』」


「えっ!?」



 慌ててモニターを立ち上げてそれを見やると……本当だ、ブローディアよりふた周り程大きなロボットが多数戦闘してる

 黒いロボットが炎を吐いてオレンジっぽい色のロボットに攻撃してる……どっちがどっちか分からないけど決着付くのも時間の問題だな

 敵になるのか味方になるのか分からない以上、干渉するのは得策じゃないな………一度、この場を離れるか
 
 そう考えてふと重要な事に思い当たった



「ブロス、ディア……遺跡はどうなった?」


『周囲に遺跡の反応は無いよ〜。そんなことよりさ〜さっきからディアと二人で逃避してたんだけど〜

 アキト兄、外をよーく見てみてよ〜』


「外?機動兵器が戦闘しているんじゃないのか?」


「そうじゃなくて、それ以外の、例えば空とか見て欲しいんだけど……」



 ………?よく分からないけど、見てみるか……

 そう思った俺はモニターを戦闘している機動兵器達から外して二人に言われたとおり他へ向けてみる










 …………………………………………………………………………………えっ!?



 飛びかけた意識を再び、無理矢理引き戻してもう一度モニターを見る

 いや、一度ではなく目をこすったり深呼吸したり人と言う字を手のひらに書き、それを三回飲んだりして見てみる

 ………う〜ん、これは……何度見ても



「……地平線が無い(汗)」 



 いや、地平線どころか水平線も無い。上を良く見てみればそこにも大地があって真ん中に太陽らしきものが浮いている



「『やっぱり……?』」

 

 二人が声をそろえて言う…………ふっ、二人が逃避したくなる気持ちも分かったよ



「しかし、なんなんだ、この世界は……?まるでボールの内側みたいじゃないか」


「あ、アキト兄……いつの間にか戦闘、終わってるよ」


「え?あ、本当だ」


『さっきの機動兵器の一体が近づいてきているよ〜、赤紫っぽいやつ』



 モニターをそっちに向けてみると、確かに……こっちに近づいてきてるな



「アキト兄、どうする?」


「ブローディアは戦闘できないし………よし、通信をしてみてくれ。ただし油断だけはするな」


「『分かった(〜)』」



 ……待つこと10秒ほど



『アキト兄〜通信、繋がったよ〜』


「通信機器がちょっと違ったからちょっと手間取ったけど」


「ありがとう、二人とも、取り敢えずは黙っていてな…………さて、鬼が出るか蛇が出るか、だな」



 ピッ!!



「……あら?繋がったのかしら?」



 画面に現れたのは、金髪で水色の瞳の20前半くらいの女性だった



「ごめんなさいね、はじめまして。私の名前はテュッティ=ノールバックよ、貴方の名前は?」


「俺は、テンカワ=アキトだ」


「テンカワ=アキト?変な名前ね……中国の人?」


「違いますよ、アキト=テンカワです。ちなみに中国人じゃありませんから」


「そう、分かったわ。ところで、貴方の乗っている機体、見たところかなり壊れているようだけど動けそう?」


「移動だけなら、なんとか」


「それじゃあ、私の乗っている魔装機についてきてくれるかしら?お互い自己紹介をふまえて、情報交換をしましょうよ」


 
 オレは少し考えた………情報が完全に不足している今、この世界を知っておく必要がある



「………分かりました」


 俺は結局こう答えるしかなかった








 ブローディアを格納庫らしき場所に格納させ、案内されたところは……見た限りでは客間のようだった

 そして、そこには二人の男性と一人の女性がいた

 男の内一人は、緑色の髪、緑色の瞳の男でもう一人は紺色の瞳と髪の長身の男だ

 残る女性はテュッティさんと同じ水色の瞳に金髪だが、こちらは後ろで髪を結わえている



「さて、さっきはご苦労だった、みんな。テュッティも案内ご苦労だった」



 緑色の髪をした男性が開口一番こう言った



「あんたは?」


「そういえば、君はテュッティ以外は初対面だったね

 先にお互い自己紹介をしようか。私の名はフェイルロード=グラン=ビルセイア

 ラングラン王国の第一王子だが、私は堅苦しいのは嫌いでね、気軽にフェイルと呼んでくれ」
 


 フェイル王子……か。人の良さそうな人だ………俺は素直にそう思った

 俺ははっきり言って 軍人嫌いだが……この人は信用できそうだ


「僕の名はホワン=ヤンロン。中国人だ」
 

「シモーヌ=キュリアン、フランス人よ」



 黒髪の男性と金髪の女性がそれぞれそう言ってくる



「俺の名前は、テン……いや、アキト=テンカワです。ところで、中国やフランスがでてくるということは………」


「テンカワ君か。其の通り、ここは君のいた世界ではない

 ではまず、この世界のことを説明しておこうか」


 
 ギクッ


 ………頭に「せ」の文字がつく二文字の漢字を聞いた瞬間、俺の脳裏に、某説明好き女医兼科学者の姿がよぎった

 いないと分かってはいるが……もう条件反射だな、これ……

 どこからともなく出てきそうで………

 
「?テンカワ君、どうかしたかね?」


「い、いえ……ちょっと心理的外傷(トラウマ)が。……そ、それよりもこの世界について教えてください」


「それは私から話すわね」



 と、テュッティさんが横から入ってくる………うぅ、お願いだから、説明が長くなりませんように

 俺は信じてもいない神に………いや、この際ゴートさんしか見えない神でもいいから祈った



「ここはね、地球の裏側に存在する世界………『ラ・ギアス』」



 説明は5秒で事足りた

 ……それはともかく



「地球の裏側、ですか?」


「そう。といっても、言葉通り地球の裏側にあるわけじゃないわよ。あくまでも比喩的表現だから」


 そういうことか……やっと、地平線とかがなかったことにも納得できる


「なるほど……ようやく合点がいきましたよ。まさか本当にボールの内側の世界だとは思いませんでしたけど」



「それで、だね。君の乗っていた黒い機体をみるに、君も地上で機動兵器のパイロットだったのだろう?

 それを見込んで頼みがあるのだ」


「頼み、ですか?どういうことです?」


「ことの起こりは一つの予言から始まったの」


 ……予言、か。俺はあんまり予言の類は信じないんだけど………


「その予言によると………」











「………つまり、この世界を救うために、俺たちの力を貸してくれと、こういう訳ですね?」

 

 信じられない話だが、魔神が現れ世を混乱に導く………しかもここでの予言はかなり信憑性が高いらしい 



「ええ、でも強制をするわけじゃないわ。あなたが嫌なら、断ってもいいのよ」


「その前に、二つ程いいですか?」


「私たちに答えられるのなら」


「まず一つ………俺たちが地上へ戻ることが可能かどうかということ

 もう一つは、協力しなかったらどうなるかということだ」 
 

「一つ目の質問に答えるにはまず、君がどのようにしてラ・ギアスに来たかを聞かねばならない

 先ほども説明したように、我々は地上から地上の人を召喚している

 つまり、その方法によって召喚され、こちらに来た人ならば、逆に送り返すことも可能なのだ」


「ということは、ジャンプの暴走で転移してきた俺は、無理だと言うことか……」


「ついでに、君がどのような経緯でこちらにきてしまったのかを説明してもらえると助かるのだが」


 と、それまで事の成り行きを見守っていた黒髪の男性……ホワン=ヤンロンさんが口を挟んでくる

 ………よく考えなくても、向こうの事情を聞くだけでこっちの事情を全く話してないじゃないか


「そうでした。まず、俺がどうしてこの世界に来たかを…………」









 取り合えず、極めて簡潔に、木蓮や戦争の事はそこそこでこちらに来た経緯を話した

「君の話に出てきた遺跡というのが、いまいちイメージが沸かないが………

 ともかく、その遺跡のランダム・ジャンプとやらで君はラ・ギアスにきたという訳だね?」


「はい。何故この世界に来たのかは分かりませんが、そういうことです」


「なるほどな。………しかし、私は全ての出来事は偶然ではなく必然によって成り立っていると考えている

 君がここに来たのも恐らく必然……恐らく、何か意味があると思う」


「…………」


 不思議とフェイル王子の言葉には、説得力がある……全ては必然、か。確かに其の通りなのかもしれないな……


「………それで二つ目の質問の答えは、仮に協力してくれなくても君が地上へ戻れる時まで生活環境、その他は保障する」


 協力しない場合の条件も魅力的だが、王子の言ったことがどうにも耳に残っている………どうするべきか


「………アキト君、2〜3日ほど考える時間をもらったらどうかしら?」


 返答に悩んでいる俺に気を使ったのか、テュッティさんがそう提案してくる

 たしかに、そうかもしれないな……少し、考える時間をもらったほうがいい

 ブロスとディアとも相談したいしな

「そうですね……王子、しばらく時間を貰えますか?」



「分かった。そうだな………テュッティ、ゼオルートに連絡を入れておいてくれいないか?」



「分かりました、殿下」



「あの……ゼオルートというのは?」



「王宮の武術指南をしている人よ。あなたが協力するしないに関わらず、住む場所は必要でしょ?」




                                              つづく



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 後書き風座談会(逆だろ普通、という突っ込みは無しデ)


作者(以下アンセスターのA):と、いうわけで……魔装機神ナデシコバージョン差し替え第一話完成!!

?:……なあ、なんでストーリー変えたんだ?

A:うむ、それはな……ラ・ギアスの世界にアキトをぶち込むのはいいんだが、それではちょっと面白くないなと思ってな

?:そんなんでマサキ消したのか?

A:多分、そのうち出てくるだろ。アキトをサイバスターに乗っけるのはそのまんまで面白くないしな

?:まあ、面白いが行動基準だからな、お前

A:………とまあ、建前は置いといて、実はアキトにプレシアを落としてもらう都合上マサキがどことなく所在無げ、だから

?:ほほぅ……それと、原作では地上に戻ることが出来たのに難癖つけて本編で出来ない理由は?

A:決まっとろーが。アキトを地上へ逃がさないためだ

?:なるほど………で、俺の紹介はどうなるんだ?

A:残念だが、本編で出てこない限りは無理だな

?:…………(SE:ゴソゴソ……チャッ)

A:ちょっとマテ、その手に持つモノは何かナ?

?:これか?見りゃ分かるだろ?某黒ずくめの牧師がもってた十字架サ♪

A:マテコラ、洒落になら(SE:ズガガガガガガガガガガガ!!)


(約20秒ほど銃撃が続き、鉄錆にも似た匂いがあたりに充満する)

?:とまあ、景気良くミンチを作ったところで幕引きだな
  こんな下らない作者であるが、末永く見守ってやってくれ


──終幕──







後書きっぽいもの

 どうも、見慣れない身の程知らずの新人、アンセスターです

 前回、これとは違うものを書きましたが、諸事情により、こちらに差し替えさせていただきます

 ご了承下さい(お辞儀)

 感想などを頂けると幸いです。感想だけでなく、ここをこうした方がいい、これはいけない、という指摘なども大歓迎です

 簡単ですが、今後ともよろしくお願いします







──簡単な登場キャラクター紹介・其の1──

・テュッティ=ノールバック

 二十歳、イングランド人。金髪で水色の瞳のおねーさん。そんなん毎日喰ってたらそう遠くないうちに糖尿病になるぞ、的な超甘党

 搭乗機:魔装機ファルク


・シモーヌ=キュリアン

 フランス人。テュッティと同じく金髪で水色の瞳のおねーさん。こっちは後ろで髪をまとめている

 搭乗機:魔装機ザイン


・ホワン=ヤンロン

 24歳、元中国の熱血体育教師。趣味は説教(?)。中国4千年の歴史から説教に入る……中国って建国してから4千年もたったっけ?

 搭乗機:魔装機ディンフォース


・フェイルロード=グラン=ビルセイア

 有能な人、以上(笑)


・テロリスト

 何が目的で行動してるのかいまいち分からない。かなりの数が出てくる上、脱出失敗確率が妙に高い不運な人たちが多い

 搭乗機:グラフドローン・ルジャノール改


・アキト=テンカワ

 本編の一応主人公。アキトスマイルという年齢制限無し女性専用広範囲型マップ兵器(笑)を搭載している

 搭乗機:ブローディア(半壊どころか、10分の9壊)





──簡単な登場魔装機(他)紹介・其の1──


・魔装機ファルク

 水系低位「氷」の魔装機。修理装置がついている。テュッティが乗っている頃の2〜3回位しか見たことが無い

 
・魔装機ザイン

 水系低位「雪」の魔装機。ファルク同様修理装置つき。第2部へ行ってふと気がつく頃には、見ないままにエンドを迎えたりする


・魔装機ディンフォース

 炎系低位「電光」の魔装機。ヤンロンの能力が高いのでそこそこ強い。でも、ザインと同じく再登場せず終わったりする


・グラフドローン

 魔装機なのかそうじゃないのかよく分からない機体。思い出にならないほど弱く、ザコ其の1……というか最弱


・魔装機ルジャノール改

 属性は特に付加されていない。何故か長い間ラングランで正式兵器として活躍しているため、敵味方で無駄に出てくる。ザコ其の2


・ブローディア

 でてきて突然お蔵入り。相転移エンジンをはじめ、ラ・ギアスじゃ多分修理できないと思う……というか修理しちゃいけない(爆)

 

 

代理人の感想

お〜、頑張りましたね(ぱちぱちぱち)。

いい感じです・・・・個人的には妹を落とされて「某組織」化するマサキと言うのも見てみたかった気が(笑)。

ちなみにテュッティは北欧のヒトじゃありませんでしたっけか?