今、俺はテュッティさんに連れられてゼオルートという人の家に向かっている

 ………俺は、ここに来てからずっと気になっていたことを聞いてみることにした


「テュッティさん、ちょっと聞いてもいいですか?」


「なにかしら?」


「テュッティさんや、ヤンロンさん達は皆地上の人間だって言ってましたよね?」


 俺の問いに肯定の意を示すテュッティさん


「ええ、そうよ。私はフィンランドから召還されたの

 こっちに来たのは大体、3ヶ月位前かしら……」


「それじゃあ、その………戦争がどうなったか知ってますか?」


「もちろん、知ってるわ。でも変なことを聞くわね………終戦したのは1年半位前よ?」


「…………」

 ……

 ……

 ……

 …………い、一年半!?

 予想外の返答に固まる、俺


「………アキト君?」


「…………」

 ……

 ……

 ……

 ということは、だ

 俺は、空間だけでなくまたも時間を超えたらしい


「アキト君ってば!!」


  がくがく、と誰かが俺を揺さぶってくる


「え?………あ、ああ、な、何ですか?」


「なんですか、じゃないわよ……どうしたの?

 いきなり固まって?」


「い、いや……何でもない、です」


 そう返答する俺を、不思議そうな眼差しで見てくる


「それならいいんだけど……じゃあ、私からも一つ聞いていいかしら?」


「は、はい」


「じゃあ、ずばり聞くけど………アキト君って、あの伝説のエステバリスライダー『漆黒の戦神』?」


  ごしゃぁぁぁ!


 一年半という驚愕の事態から脱し切れていない俺は、ずばり的中してる上にまたもや予想外のその問いに思いっきりすっころぶ


「ななななななななななななななななんん・・・」


「何でわかったの、って聞きたいの?」


「(こくこくこくこく)」


 狂ったように「な」を連発する俺を見て不思議そうに見ていたが、どうやらこちらの質問を明確に汲み取ってくれたらしい


「それは簡単よ

 確かに『漆黒の戦神』に対する情報は殆ど規制されているわ

 けど、名前くらいは知れ渡っているわ………妙な暴露本も出版されているし

 それに、あなたの乗ってた黒い機体のこともあるしね」


 その妙な暴露本については心当たりが多すぎて、何も言えん……(汗)

 テュッティさんは、そんな俺を面白そうに見ている


「うふふ……それにしても、驚いたわ」


「驚いた?」


「ええ、『漆黒の戦神』は死んだって報道されたから……盛大に国葬の生中継で」


「……まあ、そうなるでしょうね」
 

 行方不明というか消息不明になった俺を、政治家や軍の連中がどう扱うかは想像するのは容易だ

 個人Lvを遥かに超越した俺の力を疎んでいる連中も多いだろうし、な


「ナデシコの橋渡しと活躍で、地球と木連は和解

 戦争は終結して平和になったわ」


 ……俺が消えても皆はやってくれたみたいだ

 取り合えず、一安心といったところだな

 細々とした問題はあるだろうけど、ナデシコの皆なら何とかしてくれるだろう


「そうですか、教えてくれてどうも有難うございます」


 そう言って歩き出そうとした俺だが、ふいに立ち止まったテュッティさんを振り向き……


「どうかしたんですか?テュッティさん?」


「……お礼を言うのは、こっちの方よアキト君

 貴方がいたから、ナデシコに乗って戦って戦い抜いたから平和が来たのよ

 だから、地上人代表としてお礼を言うわ

 有難う……そして、ご苦労様。アキト君」


 ………

 ………

 ………

 その言葉は、俺を優しく包んで癒してくれるようだった











『僕達、絶対忘れられてるよね〜』


「………(むすっ)」




 魔装機神 The Load Of Nadesiko


         第二話『初陣』





 それから、色々会話しつつようやく目的地のぜオルートという人の家に到着した


 コンコン……ガチャ!


 テュッティさんがノックしてそれほど間をおかず、扉が開いた


「こんばんは、ゼオルートさん」


「おや、テュッティじゃないですか。まあ、どうぞ入って下さい

 晩ご飯でもいかがですか?」


「ごめんなさい。今日はちょっとお願いがあってきたの

 この子、新しい地上人でアキト君っていうの

 しばらく預かってくれないかしら?」


「ああ、先刻伺った件ですね

 もちろん、大歓迎ですよ。私はゼオルート=ザン=ゼノサキスといいます

 よろしく」


「アキト=テンカワです。お世話になります」


「それじゃあ、私はまた明日来ますね

 アキト君、ゆっくり考えてね

 ……地上でゆっくりできなかった分、ここで羽を伸ばすのも一つの選択よ」


「はい。良く考えることにします(にこ)」


「(ぽっ)………じゃ、じゃあ、私は行くわね

 ゼオルートさん、よろしくお願いします」


「ええ、テュッティも気を付けて」


 そうして、テュッティさんは戻って行った……けど何か赤い顔してたけど、風邪かな?

 後、妙に足取りが軽かった様に見えたのは気のせい……かな?


「なんだか、ご機嫌でしたねぇ、テュッティ………

 ……さ、アキト、中に入ってください。狭い我が家ですがゆっくりして下さい」


「(はっ)……え、あ、はい。それじゃあ、失礼して……」

 
「あれ?お客さん?」


 お言葉に甘えて中に入ろうとしたとき、中から可愛らしい声が聞こえてきた

 そちらを見やると、金髪の10歳前後の可愛い女の子がいた


「ええ、今日からしばらくうちで一緒に暮らすことになった、アキト=テンカワ君です

 ……アキト、私の娘のプレシアです」


「プレシアです。よろしくね、アキトお兄ちゃん」


 ……お兄ちゃん、か。そう呼ばれるのも……久々のような気がするな

 俺は、あの事件に巻き込まれて命を落としたあの子のことをしばし思い出していた

 この際、アイちゃんもとい、イネスさんのことは忘れよう、うん


「どうかしましたか、アキト?」 


「お兄ちゃん?」


 黙りこんでしまった俺を心配したのか、二人がそう言ってくる

 いかん、いかん……すぐ思考の淵に沈むのが俺の悪い癖だ


「いや、なんでもないよ。よろしくね、プレシアちゃん(にこっ)」


「う、うんっ(赤)」


 何故か、プレシアちゃんの顔も赤くなった

 ………何故だ?英語で言うとホワイ?




 そんなこんなで、中に招きいれられ食卓に付く


「良い匂いがしますねぇ、今日はティキ鳥のシチューですか?」


 ティキ鳥……?なんだ、それ……?聞いたことのない食材だ

 俺は改めて、異世界だということを再認識した


「うん。赤ピーマンも入ってるから、ちゃんと食べなくちゃ駄目だからね」


「う……」


 と、思ったら地上でも聞いたことのある食材が……

 侮りがたし、異世界……等と、俺はいろんな意味で異世界の奥深さを味わっていた


「そ、そうだ……アキト。貴方は好き嫌いはないですか?」


「好き嫌いですか?特に、ありませんけど……」


「じゃあ、あなたには大サービスで赤ピーマンを沢山差し上げましょう!

 私の分まで遠慮なく食べてください」


「遠慮しますよ。ちゃんと野菜も食べなくちゃいけないですから」


「おと〜さん〜、お兄ちゃんの言う通り、食べなきゃダメ!」


「トホホ……」


 俺とプレシアちゃんの二人に口撃され、ゼオルートさんは観念したようだ

 それにしても、おいしいなこのシチュー……食べる人のことをよく考えている

 俺の知らない調味料とかも入ってるし……後でプレシアちゃんに作り方とかを聞いてみるとしよう

 俺の力と名声、その他諸々であきらめかけたコックの夢をこの異世界で実現させるのも、良いかもしれないな

 







「………ふぅ」


 自分にあてがわれた部屋で、二度と叶わないと思っていた安らぎに身を委ねてくつろいでいた

 もちろん、これからどうするかを考えなくてはならないのだが……まあ、誰にも文句は言われないだろう


「さて……これからどうするか」


 できることなら、このままゆっくり暮したいが……俺は例の予言と王子の言葉をを思い出していた


『巨大な魔神がラングランを滅ぼす

 そしてそれは、ラ・ギアスに生ける者全てに厄災を振りまく』


『君がここに来たのも恐らく必然・・・・・何か意味があると思う』


 ………ラ・ギアスの予言は信憑性が高いと言う

 恐らく、この予言は遅かれ早かれ実現するのだろう

 ならば、俺がすることは一つ………それを阻止するため戦うこと

 世界を救うなどと大きなことは言わない……だがせめて、俺の周りにいる人々を守りたい

 ひと時とはいえ、俺を家族として迎えてくれた、ゼオルートさんにプレシアちゃん

 俺の正体を知っても特別視しないでくれるテュッティさんやヤンロン達……

 ……俺はそのために再び戦うことを決意した




 ちなみにその後、俺の決意した旨をブロスとディアに伝えたのだが……


「『・・・・・・・(むすっ)』」


 どうも、割と長い間ほったらかしにしていたため……むくれてしまったらしい

 それから、約二時間………二人の機嫌を直すために四苦八苦する俺であった





 で、次の日……
 
「どう?昨日は良く眠れたかしら?」


「ええ、久しぶりに良く眠れましたよ」


「それは、良かったわ。それで……どうするか、決めたの?」


「はい。ゼオルートさんから色々聞きました……俺も、闘おうと思います」


「本当に良いの?……完全に平穏、とまではいかないけれどゆっくり暮すこともできるのよ?」


「分かってます。でも、だからといって、理不尽な暴力で傷ついている人達を見捨てることはできません

 ナデシコにのっていた理由も……大切な人を守りたいという一心だったんです

 だから、俺は…戦います」


「そう……分かったわ。なら、これから色々とよろしくね」


「はい」


「それじゃ、取り合えず格納庫へ行きましょ。貴方の乗る魔装機を決めなくちゃね」


「分かりました」


 確かに、乗る機体が無いと話にならない……ブローディアは見事に壊れてるし

 相手が機動兵器じゃ、さすがの俺も生身じゃどうにもできないからな

 格納庫へ行く間に、魔装機操者のことについて色々教わった

 しかし、何度見ても魔操機というのは大きいな……エステなんか比較すると大人と子供Lvにみえるし

 普通より大型だと思っていた俺のブローディアよりもさらに大きいんだよな


「今、操者のいない魔操機で登場可能なのは

 ・岩の魔操機  フェンタ−

 ・陽炎の魔操機 ジャオーム

 ・雷の魔操機  ガルガード

 ・霧の魔装機  ラストール

 この4機よ……って、どうしたの?」


 と、機体のでかさに唖然とする俺にテュッティさんの声が聞こえた


「いえ、なんでも」


 ……なんか俺、こっちに来てからこればかりだな


「とにかく、端から試すことにします」


「分かったわ………あら?」


 答えて、ジャオームのコクピットに入り込んだ俺の耳になにかのコール音とテュッティさんの声が聞こえてきた


 ピーッ、ピーッ、ピーッ、ピーッ、ピッ!


「また事件かしら?………はい、テュッティです


 ヴンッ!


 ………何だ? 

 原理は不明だが、俺にはこの魔装機の操縦法が分かる……?

 いや、分かったというべきか……まさか、こいつ自身が教えてくれたのか?


「……はい、分かりました、すぐにそちらに向かいます」


「どうか、したんですか?」


「またテロリストが出現したわ。場所は、パローム州

 ここから1000キロ程離れたところよ

 私は出撃するけど、アキト君はどうする?」


「俺も行きますよ。なんだか良くわからいけど、こいつに乗った瞬間操縦法が理解できましたし」


「そう、じゃあお願いするわ。正直人手が足りないの」


 その5分後、俺達は現場に向かって出撃した

 俺にとっての、この世界で初の出撃だ








「しかし、物騒なところですね

 こんなしょっちゅうテロが発生するなんて」


「ここまでテロが頻発し始めたのはここ最近のことよ

 多分魔装機の存在が引き金になっているのね

 魔装機の力は強大だから、みんな疑心暗鬼になっているの」


「大きな力を持っているだけで、いらぬ誤解を生み出しますからね」


 俺自身、そうだったからな………苦い記憶だ

 軍に政治家に一般人、etc……数えたらそれこそきりが無い


「そうね……そろそろ現場よ、準備はいい?」


「OKです」







 俺達が到着したとき、現場は予想よりもはるかに酷いことになっていた

 俺達よりも先に来ていた部隊の人達は、テロリストと闘いながら救助活動を行っていた


「あれは、魔装機ファルク!!テュッティ殿か!!助かった!

 急いでけが人を収容しろ!!後、何人残っている!?」


「これが最後です!」


「ご無事ですか!?」


「一般人は避難させました!!けが人の収容も、たった今終わったところです!!」


「ご苦労様、後は私たちにまかせて下さい!」


「よろしくお願いします!!」


「今の怪我人は……」


「テロの犠牲者よ……何の関係も無い人たちを巻き込んで。……許せない!!」


「ふん、何を甘っちょろいことを!独裁王朝に荷担する者は、すべてこうなるのだ!!」


「暴力で人を恐怖に陥れておいて……何をっ!!」


「独裁、王朝……?」


「出鱈目よ。ラングランは立憲君主国よ

 国王に大した権限は無いわ

 彼らはただ口実が欲しいだけ」


「……ロクでもない連中だな

 なら、遠慮は必要無いな。……悪いが、本気でやらせてもらうぞ!」




 ゴゥ!!! ザシュゥ! バシュッ!!




「なっ!?」(その場にいた、アキト以外の全員)


 一瞬で相手との間合いを詰め、その勢いで機体の腕を斬り飛ばし、返す刀で残るもう片方の腕も切り裂く

 はたから見ていた者でさえ、何が起こったのか理解したのは、この機体が地に伏した時だったろう


「す、すごい……これが、あの伝説の『漆黒の戦神』……」


 呆然と呟くテュッティさんと、二の句の告げないテロリスト達

 ……やるなら、いまだな


「テュッティさん!奴らを倒しますよ!」


「え?……え、ええ。分かったわ!」


 テュッティさんに激を飛ばしつつ、敵のほうへ向かう

 相手の残りはたかだか5機……千を超える無人兵器を相手にしてきた俺の敵ではない!







 私は、あの戦争を最初から最後まで闘い抜いた『漆黒の戦神』について、多くを知っているわけではない

 せいぜい、名前とナデシコという戦艦に乗っていたということくらいだ

 だから、噂もそれほど信じていたわけでは無かった

 恐らく、彼が乗っていた機体が非常識な強さを持っていたんだろう、くらいにしか思っていなかった

 だけど……


『……ロクでもない連中だな

 なら、遠慮は必要無いな。………悪いが、本気でやらせてもらうぞ!』




 ゴゥ!!! ザシュゥ! バシュッ!!




 一瞬……いえ、まさに刹那の瞬間で相手を屠った実力

 彼が乗っているのは、ただのB級魔操機……性能としては正直それほど高くない

 なのに、動きが見えなかった


「す、すごい……これが、あの伝説の『漆黒の戦神』……」


 という台詞が思わず、口からこぼれた

 私が目の当たりにしたのは、恐らく彼の実力のほんの一握り


「テュッティさん!奴らを倒しますよ!」


 私にそう言いつつ、敵に向かっていくアキト君


「え?………え、ええ。分かったわ!」


 そして……私が、一機倒す間に電光石火の速さでアキト君は残りの敵を倒していた






「これで、ラストだ!」


 ギッン! ザシュゥゥゥ!


 敵の鉄球を斬り払い、体勢を立て直す前に敵の頭部を叩き潰す

 制圧完了だな……ふぅ、やれやれ

 俺が気を緩めたその瞬間


「やれやれ、もう少し健闘してもらえるかと思っていたのですが、所詮はテロリストですな」


 なにっ!? まだいたのか!?

 瞬時に声が聞こえてきた所を割り出し、そちらを油断無くみやる


「敵の増援か?」


「分からないわ。何かしら……見たことも無い魔装機だけど、すごく禍々しい雰囲気ね」


 テュッティさんの言う通り、尋常ではないオーラを放っている


「何者だ、貴様は?」


「……確かあなたは地上人のアキト=テンカワでしたな?

 噂はかねがね、お伺っていますよ

 そして、もう一人がテュッティ=ノールバック

 私はルオゾール=ゾラン=ロイエルと申します。以後お見知りおきを」


「ルオゾール……!? あの魔神官ルオゾール!?」


「おや、ご存知でしたか。それは光栄です

 『闇の貴族』とも呼んで頂いておりますが

 それと、私めのナグツァートは魔装機ではございません

 咒霊機(じゅれいき)と呼んでいただきたい

 ……さて、お近づきになられたばかで恐縮ですが、お二人にはここで死んで頂きます」


「何だと?」


「あなた方に生きていられると、後々障害がありそうですのでね」


「勝手なことを……できるものなら、やってみろ!」


「フフフ……元気があって良いですねぇ

 では、あなた達の相手を紹介しましょう

 いでよ、デモンゴーレム!!」


 妙な男、ルオゾールとやらが奇妙な呪文を唱えた瞬間、

 あちこちの地面から、人型をした岩の塊が生えだしてきた


「な……あれは一体?」


「デモンゴーレム……死霊の霊気を土塊に宿らせた兵器よ

 感情を持たないから、やっかいな相手ね」


 木星連合の無人兵器みたいなものか……それならば、恐れるような相手ではない!


「左様。この怨念のみで動く死霊どもに

 どうやって立ち向かうか……拝見させていただきましょう」


 余裕綽々、といった感じだな……良いだろう、もう少し本気でやってやる!


「いくぞっ!」




 ドン! ドン! ドン! ドン!




 早打ちの要領で、ビームキャノンを撃ち、いっきに4体を倒す


「テュッティさん、右の3機をお願いします!」


「分かったわ、まかせて!」


 右の方のゴーレムをまかせて、俺はナグツァートと数体のゴーレムへ向け疾走する




 ザンッ!! ザシュッ!! ズバッ!




 すれ違いざまに、3体のゴーレムをなぎ払う……、が!



 オオオオォォォォォォォォオオォォオォ!!



 !!

 嫌な気配を感じて、即座にその場を飛びすざる

 俺のその判断が正しいことが、すぐに分かった

 
 ゴガァ!!


 声、というかおたけびの発する衝撃波を受けた地面と建物が破壊される


「ほう、今のをよけましたか……なかなかやりますな」


「その余裕が、いつまでもつか……な!!」



 シュッ、ガッ! ザシュッ!! ギッ!!



 ディスカッターを投げ、ゴーレムに突き刺す

 刺さったディスカッターの柄を掴み、力任せに切り裂く

 そして、残った1体を勢いもそのままに屠る


「ほう……面白い。ここまでやるとは思いませなんだな」


「……次は、貴様の番だ」


「ククク……お相手してあげたいのはやまやまですが、

 私めも忙しい身なのでね……ここらで退かせてもらうとしましょう」


「逃げる気か?そうは……何だ?」


 新しい反応がディスプレイに表示されている

 反応は二つ、どちらも味方のものだ


「なんだあ!?何でナグツァートがこんな所にいる!?」


「どういうことだ!?報告では単なるテロリストだったはずだが……」


 そこに現れたのは、二機の魔装機だった

 一機は、がっしりとしたフォームでもう一機は、スマートなフォルムをしている


「ザムジードとグランヴェール!!

 リカルドと……もしかしてグランヴェールに乗っているのはヤンロンなの?」


「うむ。どうやら僕はグランヴェールに気に入ってもらえたようだ

 正式な操者になった」


「よう、テュッティ!相変わらずチャーミングだな」


「ヤンロンさんは知ってるけど……彼は?

 リカルド、と言ってたけど」


「おう、お前さん、確かアキトとかって言う地上人だな?

 話はテュッティから聞いてるぜ

 俺はリカルド=シルベイラ

 魔装機神ザムジードの操者だ

 地上じゃブラジル空軍のミラージュ乗りだった

 とにかく、やっかいなやつがいるからな。ここは俺達にまかせな」


「むむ……ザムジードにグランヴェールとは

 魔装機神2機が相手というのは、少しばかり分が悪いようですな

 しかたありません、やはり、ここは一旦退くとしましょう

 ついでに、おまけもつけましょうぞ」


「……しまった!」


「ちっ、逃げやがったか」


 ナグツァートが離脱するのと同時に、再び現れるデモン・ゴーレム

 たいして強くない……というか、はっきりいって弱いのだが数が集まるとどうにも手こずってしまう


「だが、まだデモンゴーレムが残っている。気を抜くな」


「はっ、あんな奴らに遅れを取るリカルド様じゃねえよ

 ……とはいえ、ちょいと数が多いな

 よっしゃ、俺様必殺の技をぶちかましてやる!」


「必殺って、ちょっとまてリカルド!」


「リカルド!まさか、あれをする気なの!?」


 ??ヤンロンとテュッティさんが何やら焦っているが、俺には二人が何で焦っているのか分からない


「おう!お前ら皆ちゃんと避けろよ!」



 ……………避ける?



「くっ」
 

「もう!」


 ヤンロンとテュッティさん、二人が同時にザムジードから距離をとるように、後方へ跳ぶ

 ………なんなんだ、一体? 


「アキト(君)、避けるんだ(避けて)!」


「…………は?何だって?」


「行くぜっ!レゾナンス・クエイク!」


 注意を促す、はもる二人の声と、状況が理解できずに硬直している俺をよそに、リカルドはそれを放った





 ゴゥ!!ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!













「いや〜わりぃ、わりぃ

 ちゃんと避けてくれると思ったんだがなぁ」


 あの後、確かにデモン・ゴーレムは掃討でき、一見落着した

 ………俺(他二名含む)を巻き添えにした、という事を除けばな


「その事に付いては、もう何も言いませんが………

 それで、ザムジードとグランヴェールを、あいつは魔装機神といってましたけど、それは一体?」


「魔装機を越えた魔装機………とでも言うかな。自意識を持った魔装機だ」


「自意識?」


「魔装機はね、それぞれ精霊と契約して、その人格を宿らせてあるの

 その中でも高位の精霊と契約できたものが魔装機神と呼ばれているわ

 魔装機神は全部で4体存在しているの
   
 ザムジード、グランヴェール、ガッデス、それにサイバスター」

 魔装機神は、その精霊の力によって、理論上は無限のパワーを持っているわ

 そして、その精霊と波長の合った人物しか、魔装機神を操る事は出来ないのよ」


「テュッティはもうすぐ、そのテストがあるんだろ?

 そいつに合格すりゃ、晴れて魔装機神の操者だ

 ガッデスかサイバスターか………テュッティの雰囲気からするとガッデスが可能性高いよな」


「まだ、分からないわよ。それに合格しても、魔装機神に選ばれなければ、意味が無いんだし」


「大丈夫だって。テュッティなら間違いなく選ばれる」


「リカルドに保証されてもねえ……それより、さっきのルオゾール

 どうしてこんな所にいたのかしら………」


「俺達の命を狙ってた………みたいなことを言っていたな、あの男……」


「この件に関しては、フェイルロード殿下に御知らせしておくべきだろう」


「そうね。とにかく、一旦王都に戻りましょ」



 こうして、俺の初出撃が終わったのだった

 と・こ・ろ・で………ふふふ、リカルド、まさかこれで終わると思ってないよな?

 何も言わないと言ったが、何もしないとは言ってないからな……ククク、フハハハハハハ

 等と復讐を胸に近い、帰還する俺であった









 一方その頃………


『……僕達の出番は〜?』


「(不貞寝中)」







 後書き風座談会

A:やっと書き終わった……思い起こせば第一話をアップしてからおよそ2ヶ月弱(涙)

?:長かったよな、これ終わるまで

A:ああ。予備校やらなにやらで暇が無かったもんな……楽な授業の合間に書いたりして(爆)

?:ま、それは置いておいて、だ。マサキはどこいった?

A:彼は不慮な事故(作者の思惑)でお空のお星サマに……

?:……()の中身が気になるぞ、オイ

A:正直に言えば、作者である私の画力不足というか、マサキがそこはかとなく邪魔だとか(マテ)、キャラ数的に扱いきれないとか

?:……ま、身のほどをわきまえるのは大切だな。で、俺様の出番は?

A:例のアノキャラが出るまでは出番無しだ

?あっそ………なら、とっとと先に進めろよな。「うたわれ○もの」クリアして感動して泣いてないで

A:な、何故それを……(汗)

?:ふん、俺様の情報網を甘く見るなよ

A:……まあ、それは忘却の彼方にでも送りつけて、読者の皆、何か突っ込みどころを見つけたら容赦なくメール下さい

?:そうそう、まだまだコイツは未熟だからな。意見しだいではもしかしたらプレシアがいきなり魔装機に乗ることも

A:マドックのじいさん見せ場無く殺す気か……?

?:じいさんより、女の子の方がいいじゃないか。読者の諸君もそう思うだろ?

A:ま、まあ……それはともかくなるべく早いうちにアップさせるつもりだから、期待せず待っててくれ(びしっ)

?:んじゃ、また次回でな

───終幕───



 


─── 一口人物紹介 ───

・ゼオルート=ザン=ゼノサキス

 ラ・ギアスでは最強クラスの剣術の使い手らしい。原作では死亡したが、本編で果たして生き残ることができるか?

 搭乗機:ギオラスト


・プレシア=ザン=ゼノサキス

 年齢ちょっと不明。ラ・ギアス女性陣全員を超えると思われる家事能力をもつ(笑)魔装機に乗るのはかなり後になってから


・リカルド=シルベイラ

 ブラジル人。能力的にはとても強い。だが、どうあがいても死ぬ運命にある不遇な人、というか死なないとあのキャラが出てこれない


・ルオゾール=ゾラン=ロイエル

 色々異名を持ってる人。第一部最頻出名前あり敵キャラ。理不尽な強さと特殊能力にムカつくのは作者だけではないだろう



─── 一口魔装機紹介 ───

・魔装機ジャオーム

 風系低位「陽炎」の魔装機。武装はわずか3つだがアキトが乗ると異様に強くなる


・咒霊機ナグツァート

 半分アストラル界に属しているため通常兵器ではダメージを与えることができない。これを別名無敵モードともいう


・魔装機神グランヴェール

 炎系高位「炎」の魔装機神。精霊グランバと契約している。攻撃力は高いが、防御面に不安あり


・魔装機神ザムジード

 大地系高位「大地」の魔装機神。精霊ザムージュと契約している。攻守のバランスがとれており、使いやすい


・デモンゴーレム

 死霊の霊気を土塊に宿らせた兵器。大した強さではないが、やたらとでてくるため印象に残る






 名前:アンセスター

 どうも、こんにちわ。新人作者のアンセスターです。

 ようやく書きあがりました。こんなにかかるとは、まだまだです。

 なにか指摘点があったら容赦なく言ってください。がんばって向上しますので

 それでは、短いですがまた次回作で………



 

 

代理人の突発的解説

さて、今日は魔装機についての解説をしましょう。

まず魔装機に宿る精霊の説明から始めましょう。

この世界には無数の種類の精霊が存在し、オーソドックスに地水火風の四系統に大別されます。

そしてそれぞれの精霊は下から順に低位、高位、そして聖位とランク付けされます。

例えばサイバスターに宿る『風』の精霊「サイフィス」は風系高位の精霊、

テュッティのファルクに宿る『氷』の精霊「フルイッシュ」は水系低位といった具合です。

表でまとめてみると

  大地系 水系 炎系 風系
聖位 『闇』 『刻』 『光』 『空』※
高位 『大地』のザムージュ 『水』のガッド 『炎』のグランバ 『風』のサイフィス
低位 『森』のディアノス
『岩』のフェニール
『砂』のラ・ウェニール

他『鉄』『山』『花』など
『氷』のフルイッシュ
『霧』のラシーム
『雪』のザナ

他『泉』『川』『湖』など
『雷』のガルナンサ
『電光』のディンハイム
『熱風』のジェイチ

他『マグマ』『不知火』など
『竜巻』のギオリック
『陽炎』のジャノク
『砂嵐』のソレイド

他『カマイタチ』『北風』など

※『空』は「空間」の『空』と言う説が有力。

と、言う感じですね。

ラングランの正魔装機は地水火風の高位精霊を宿らせた魔装機神四体と

同じく地水火風それぞれの低位精霊を宿らせた4×3の十二体で合計十六機。

これらが魔装機神の主役機になっていくわけですが……前回も作者の方が書いたとおり、

最初のほうで顔見せしたきり二度と出てこない機体もあるんですよね〜(苦笑)。

ちなみに女性よりも男性が操る機体の方が二度と出てこない確率は高いです(爆)。

ディアブロに乗ってるスケベ爺マドックとか、ディンフォースを操る破戒坊主ティアンとか、

脇にもいいキャラはいるんですが(苦笑)。