誰もが、辛さを押し隠していた。

 誰もが、仮面をかぶろうとした。

 精一杯の強がりを、いつか強さにかえようと

 覆い隠したその傷は、きっと痕を残すだろう。





 男は、そんな歌を口ずさんだ。

 暗い部屋で、光るモニターを眺めながら。

 いつ聞いたのかも、誰の詩かもわからない。

 ただ、今の彼を眺めていると、自然に思い出された歌だった。



「…これから僕がする事は、君の仮面をはがす事。
 顔に残った傷跡を、隠さず誰かに見せれるように。」


 それは歌うと言うよりも、ただ切々と言葉を続けているようだった。

 画面の中の英雄に、言葉の端が、伝わるように。






「…………僕は、最低なのかも、知れないね………」









ヴァーチャル・ゲーム
〜生徒会室編…双子の婚約者〜
前編






 私立アカツキ学園…

 膨大な数の生徒・教師を抱える有名校である。

 それはつまり、天才・鬼才を多く有するとともに、
 問題児たちも、多く存在すると言う事であった。


 そんな中にあって、学園生徒会の存在はきわめて重要である。

 教師の眼の届かぬ部分での、生徒自身の自治によって、
 今日の平和な学園生活は保たれているのである。


「…ここか。」


 学園のある一室の前に立ち、男はそうつぶやいた。

 その部屋のプレートには「生徒会室」の文字が見える。

 …かといって、彼が生徒会のメンバーであるわけではない。

 ある意味では、関係の深い人物ではあったが。

 そもそも、彼は生徒ですらなかった。

 アカツキ学園において、最も特殊な役職にいる人物。

 非常勤講師兼用務員兼生徒会ご意見番、テンカワアキトである。


「…………」


 しばし彼は無言のまま扉の前に立っていた。

 ……何があると言うわけではない。

 ただ単純に、部屋に入るのを逡巡しているだけである。


「…………」


 原因は…彼が迷う原因は、つまるところその向こうにいる人物についてである。

 このVGにはメインである自分以外にサブプレイヤーとして
 多数の人間が入り込んでいた。

 すでに東舞歌は理事長として登場していたし、
 自分を連行した影護枝織、ひいては北斗もこの中に来ていることだろう。

 アカツキはゲームマスターとして外にいるようだが、
 イネスについては確実にゲーム内に存在している。


「…………」


 この扉の向こうにいるのが誰かわからない…

 それは、恐怖である。

 元・優華部隊の面々ならいいのだが…

 彼女らは意中の人が別にいる分、
 テンカワアキトにそう深く関わって来ていないからだ。

 逆に最も避けたいのはとある同盟の女性達だろう。

 …………別に彼は彼女達が嫌いなわけではない。

 むしろ何を置いても護るべき存在だとは考えている。

 困るのは、現時点で困るのは、
 ここが「恋愛シュミレーションゲーム」内だということだ。

 彼女達はこと、その分野においては暴走する事が多い。

 ここで彼女達に出くわそうものなら、
 最悪、精神がどこかあなたの知らない世界へ
 旅立つはめになる可能性もある。

 …某組織にとってはそれすらうらやましい事なのかもしれないが…

 この先にいるのが某組織の場合は、別の意味で危なかった。

 かといってそれ以外がいいかと言うと…
 ゴート神教関連の人間は遠慮したいところだろう。

 さらに違う世界が見えてくる…


「…迷っていても仕方がないか…」


 イネス・フレサンジュの話によれば
 あまり過激な行為は禁止されていると言うし、
 それをなそうとすればゲーム自体が強制終了されるらしい…
 …某妖精たちが手を加えてなければだが。


 どの道アカツキがのぞいてる前で、そんなに変な事はしないだろう、
 と、テンカワアキトは結論付けた。


「…よしっっ!!」


 気合を入れて扉を開ける。

 そして一番最初に起こった出来事は…


「あーーーっ!!あきとぉーー!!」


 ミスマルユリカ嬢による、フライングボディプレスであった。


「…だああああーーーっっ!!」


     がしっっ


 さすがに出会い頭の襲撃を予想していなかったアキトは、
 他に選択肢もなく、これを受け止める

 (……避けれたかもしれないが、そうすると彼女は床に突っ込む事になる。)


「あーきとっ♪」


 そしてそのまま抱きついてくる。

 その表情は至福そのものだ。


「……ユリカ…」

「ん?なーにアキト?」


 無邪気に…ホントに無邪気かは判断しかねるが…
 瞳をキラキラさせながらアキトを見つめるユリカ。


「……いや……なんでもない……」


 もはや彼には言うべき言葉は見つからなかった……





「生徒会長……?ユリカが、か?」

「うんっっ!!そうだよっっ!!
 ユリカ、会長さんなんだっ!!
 えっへんっっ!!」


 ユリカが胸をはって応えた。

 ……場所は生徒会室前。先ほどと変わっていない。

 最初の襲撃からしばらくして、
 何とかイベントを進めようと説得した次の会話がこれである。


「……まぁ、妥当と言えば妥当な配役だな。」


 とアキトはつぶやく。


「えーーっと、コホンッ。
 アキト先生っ、今年から新しく選任された生徒会のメンバーを紹介します。
 部屋に入ってくださいっ。」

「…ああ、わかった……」


 先にいくユリカの後についていく…


「?」


 と、ユリカの歩き方がおかしい事に気づいた。


「…ユリカ?」

「ん?なぁに?あきと」

「なんで足、引きずってるんだ!?
 ……まさかさっきので痛めたんじゃ!!」


 思わず声が大きくなった。

 ゲームの中の怪我がどういう作用を起こすかは知らないが、
 目の前で足を引きずっている様子を見せられると心配になる。

 ……イネスは大丈夫だといっていたが、
 彼女の大丈夫は時として一般の意味と違う事がある…


「あ、これ?ちがうちがう!
 怪我をしてるって設定なんだって。」

「設定……?」

「そう……詳しいところはゲーム進めたらわかるって言ってたよ」

「…だれが?」

「アカツキさん」

「…………」


なんとなく、あいつが影の黒幕なんだな、と
アキトは半ば確信めいた予感を感じていた…










「じゃ、紹介しまーす!!
 生徒会会計のプロスさんっっっ!!!」


       どがしゃあっっ!!


 最初の役員紹介で、アキトは机群の只中に頭から突っ込んだ。

 目の前に立ったのは、紛れもなくプロスペクタ−その人である。

 …それも、ブレザー着用で。


「おや、どうされました?テンカワさん…
 いえ、テンカワ先生。」


 なんでもないような、いつもの笑みを浮かべて、プロスが言う。


「…なぜここに…?
 というかなぜ生徒側なんですかっ!?」

「いえいえ、私は何もしていませんよ。
 テンカワさんもご存知の通り、
 メイン以外のプレイヤーは自分のキャラを選べませんから……」


 一瞬、プログラムの完成度を疑いたくなったアキトである。


「……で、副会長のジュン君っっ!!」

「…………」


 どうにか立ち直ると、そこにはアオイ・ジュンが立っていた。

 …こちらはブレザーが良く似合っている。


「…ジュン…」

「…なんで、俺はここにいるんだ…」


 ……どうやらこっちは無理矢理付き合わされたくちなのだろう。

 予想通りでもあるが。


(と、するとVG内のどこかにユキナちゃんもいるな…
 ……追っかけてきて白鳥九十九までいないだろうな?)


 何とはなしに考える。


「で、会長の私っと。
 ホントはもっとたくさんいるんだけど、今日はこの三役だけだね。」


 役員紹介はこれで終わりらしい。


「…で、この後はどうするつもりなんだ?」

「この後?今後の活動について草案をまとめて今日はかいさーーん♪」


 ……VG既存の台詞にアレンジを加えて喋っているせいか、
 何か少しユリカの性格が違う気がする。

 気のせいかもしれないが…

(ともあれ、こういうメンバーなら安心だな…)


 アキトはフゥッと安堵のため息をもらした。

 プロスもジュンも悪乗りして何かをやらかすほうではないし、
 ユリカも対抗する相手さえいなければ、そんなに暴走するタイプではない。
 …たぶん。

 どうやら平穏無事に終われそうだと、この時点ではそう思っていた。



 …最大の衝撃は、この、後にくる。














「えーーっと、次の議会での草案は、こんなところでいいかな?」


 生徒会長のその一言が発せられたのは、
 アキトが部屋に入ってからかなり後の事だった。


「はい、私としましてもこれならば異論ありません。
 では、これで決定、ということで。」


 会計のプロスがそう答える。

 ……アキトとジュンは反応を返す事はしなかった。


(…なんで本気になって話し合いしてたんだ?)


 アキトの心境である。

 所詮、ゲーム内の事。

 会議の内容なんて飛ばされるのが普通であろうに。


(ヴァーチャルだから、より現実に近くって事か……)


 それも理由の一つだろう。

 ユリカの場合、
 話し合いもそこそこに先のイベントに進みたかったところであろうが、
 もともとの設定のためにやらざるを得なかった、というのが真相だろう。


(それにしても…長すぎだ。)


 おそらく、製作者側もこれは予想しなかったはずだ。

 この、会議の長さは。


(つまりは、……つまるところ原因は……)


 と、一人の人物に目線を移す。

 ……ジト目で睨むと言ってもいい。


 目線の先には……


(…プロスさん)


 生徒会の会計がいた。


「……おや?
 どうかされましたか?テンカワさ…先生」

「…いいえ、なんでもないです……」


 視線に気づいて、いぶかしげにこちらを見やるプロス。

 そもそも、彼が会計役、というところで予想しておくべきだったのかもしれない。

 ……今期予算の割り振りに付いて、話が長引くというのは。


「……ユリカ、もう解散してもいいんだろう?」


 ここまで終始無言で、『つきあってられない』
 という態度でいたジュンが、ユリカを促す。


 これは会議中に暇を持て余していて聞いた話だが、
 イベントにからんでいる以外のプレイヤーは、
 常時ゲーム内にいるわけではないらしい。

 ……考えてみれば当たり前だが。

 登録をしておくと出番がくる度に連絡が入り、
 それを受けてゲーム内に入ってくるそうだ。

 もちろん、参加しない事もできるし、
 その場合はもともとゲームに用意されている
 プログラムの擬似人格(たいしたものではない)が代行する。


 ……もっとも、そこはノリのいいナデシコ関係者の事。

 擬似人格の出番は少なそうである。


 まあ、ジュンの心境からすれば
 なるべくゲーム内にいたくないのだろう。

 ……参加拒否はできそうにないが。

「うんっっ!!そうだねっ!!
 それじゃ、かいさーーんっ!!」

「はい、おつかれさまでした皆さん。
 では、私はこれで・・・」

「…………」


 ユリカの声とともに席を立つ。

 部屋を出て行った二人をよそに、
 アキトには次の指示もなく、その場に残るしかなかった。


「あ、アキト……先生。
 お話があるので…すこし、いいですか?」

「……あ、ああ。いいけど…」


 落ち着いた様子で自分に話し掛けるユリカが新鮮で、
 どもってしまったアキトである。











「……やっと…二人っきりになれたね…アキト…」


 人のこない屋上に場所を変え、切り出したのはユリカだった。


(……?)


 さっきまでとは様子が違う。


(演技…?それとも…ユリカ自身の台詞なのか?)


 判別がつきにくい。ゆえにアキトは何も応えなかった。


「……みんなの前だと、やっぱり、まだダメなのかな……?」

「……何がだい…ユリカ。」


 黙っていようとしても、自然に口が動いた。

 と、いうことは、どうやら前者だったらしい。

 納得しながらも、話は続く。


「…いつまで、先生って呼んでなきゃいけないのかな?
 私……隠したくないよ。」

「…………」


 普段が普段だけに、こういうユリカを見ると無性に抱きしめたくなる。

 ……あまりにも、落ち込んでいるように見えて。

(……しかし、それはそれとして。
 お前、すでにアキトって呼んでただろうに……
 ゲーム的にはなかった事になってんだろうな、やっぱり。)


「……アキトって、皆の前でも呼びたい!!
 いっぱいアキトに甘えたい!!
 抱きついて…
 キスして…
 その先は…………でへへ(真っ赤)」

「……あのーー、もしもし、ゆりかさん?」


 どうやら演技の途中で素にもどったらしい。

 シリアスなムードも台無しである。


「……はっ!…
 と、とにかくっっ!!
 我慢するのつらいよっっアキトっっ!!
 私達、『婚約者』なのにっっ!!」

「それは……って、婚約者ぁ!!?


 思わず、アキトは叫んでいた。


「……そうだよ、アキト!!
 なのに皆の前では先生って呼ばなきゃいけなくてっっ!!」

「いや、それは…」

(聞いてない、聞いてないぞアカツキ!!
 せめてそういう情報は事前に渡せっっ)

 
 脳裏に浮かぶ十数人の怒りの笑顔を頭から追い出しながら、
 ゲームでのこと、ゲームでのこと、と自分に言い聞かせる。


「……ユリカ。」

「やっぱり、ダメなんだよね。
 私は、生徒会長で…名前を皆に知られてて。
 アキトは先生なんだもんね…」


 また、シリアスにもどる。

 いいかげん精神的に疲れてきたが、続けないわけにはいかない。

 ……ここでゲームをやめる、なんてことはできないだろう。

 その場合は、年齢制限解除モードでのお仕置きが待っている。


「でも……
 でもずるいよっっっ!!
 あの子はそんなの気にもしないのにっっ!!」

「……あの子?」

「人目も気にせずアキトにくっついてっっ!!
 私だけ我慢するのが馬鹿みたいっっ!!」

「いや…あの…」

「どこが違うのっっ!!
 顔もっ声もっ年齢もっ身長だって同じっ!!
 なのにどうして私だけっ!!」

「…?それはまさか…」

「私と…
 私と同じ婚約者なのにっっ!!

「ちょっと待てぃっっ!!」


     バタンッッッ


 屋上の、扉が開く。

 同時に、音につられてアキトは振り返った。


 ……そこにいたのは。


「あーーーっっ!!アキトだーーーーっっ!!
 アキトアキトアキトアキトーーーー」


 二人目の、ユリカだった。

















「…えーーっと」


 あれから。

 アキトに問答無用で抱きついてきたユリカ二号と、
 それを引き剥がそうと必死のユリカ一号の口論がはじまり。

 二大スピーカーの大音響攻撃に頭の中まで揺さぶられた後。

 それにどうにか耐え抜いたアキトが現状の確認をすべく、二人の説明をうけていた。

 ……といっても、片方は擬似人格である。

 どうもユリカのパーソナルを可能な限りコピーしたものであるらしいのだが、
 イベントにない行動(二人のケンカは予定通りのものだったらしい)に付き合えるわけもなく、
 専らニコニコと笑っているだけで、主に説明していたのはユリカ一号だった。


「つまり、ユリカとユリは双子ってことか。」

「うんっっ!!
 そっくり、だよねっっ!」


 ……ユリ、というのは二号の名前である。


「…で、二人とも婚約者ってのはどういうことだ?」

「アカツキさんに言われた設定だと、
 はじめは親同士の口約束から始まった関係で、
 自分の子供同士を結婚させようって。」

「それで、双子だったから、とりあえず両方って事にしといて
 後は本人たちに決めさせようって。」


 三人の関係について説明することはできるらしく、ユリが後を続ける。

 …しかし、二人の会話に口をはさめるあたり、恐ろしい柔軟性だ。

 ディアやブロス、オモイカネやダッシュ、
 あるいは、ルリ、ラピス、ハーリーあたりが陰で操っているんじゃないかと思わせる。


(……だとするとやっぱり一般に売るっていうのはうそだな。
 何をさせたいんだ、アカツキ。)


「……で、決定権は俺にある、と?」

「そうだよ、アキト!!」

「アキト!!
 私はアキトの事、信じてるよ!!
 アキトは私の“王子様”だもんねっっ!!」

「…………」


 本当に、似ている。

 擬似人格とは思えないほどに。

 あの、ナデシコ出港当時のユリカに。


「……で、ゲームのクリア条件が。」

「えーーっと、アキトが出てくる選択肢を選んだ結果で、
 どちらかのポイントが一定値に達したら、
 あるイベントが起こって、最終的にその結果でエンディング、だって。」


 ユリカが制服のポケットから生徒手帳を出してそれを読む。

 中身はゲームの説明書になっているらしい。


(……と、いうかそういうのがあるんなら
 最初に渡しといてくれよ、アカツキ…)


 疲れたように…実際疲れていたが…ため息をつく。


「で、アキト…先生。
 これからどうするの?」


 と、不意にユリカが聞いてくる。

 先生、と呼んだところからすると、
 ゲームを続けよう、ということだろう。


「ね、ね、ね、アキトっっ!!
 私の家にいこっっ!!
 お父様も、久しぶりに会いたいって!!」

「うんっっそうだねっっ!!
 それがいいよっっ!!
 そうしようっっアキト!!……先生」


 イベントの流れにもどったのだろう。

 ユリとユリカの言葉の後、選択肢が頭に浮かぶ。


「……なぁ、ユリカ」

「なぁに!アキト先生っっ!!」


 ひょっとして、と思う。

 まさか、とも思う。

 これるはずがない、とも思っている。

 だけど一応聞いてみた。


「……お父様って……来てるのか?」


 おそるおそるの質問に、だけどユリカは満面の笑みで。


「うんっそうだよアキトっ!!
 お父様、ここでもお父様だったの!!
 モニター室で確認したから、もう間違いなくっっ!!」


 ぴしっっ


 瞬時に固まるアキト。

 頭の中では、
 大音響の三重奏の中心で、
 ただただ呆然とする自分が映っていた。


「もう少し、話をしていこう…」


 アキトは自然と、違う選択肢を選んでいた。

 三人よりは、二人の方がまだいい。


「うんっっ!!
 アキトがそうしたいなら、それでいいよっっ!!」

「お父様には残念だけど…
 アキト先生とももっとお話したいしっ!!」


 ユリとユリカは本当に前々からの双子のように、
 そうやって、息を合わせた答えを返す。


「でもでもでも、
 アキトのお話って、私わかってるんだっ!!」


 ふいに、ユリがそういった。


「へ?」


 意表をつかれたのは、アキトである。

 話の内容なんて考えてないうちに言われたのだから。

 ユリカも?な表情を浮かべる。


「私への、愛の告白っでしょっっ!!」

「…………」


 おおはずれ。

 だが、なんとなく、それがユリらしい…ユリカらしい気がして、
 アキトは笑みを浮かべた。

 心の中に、平穏を感じて。


 それが、いけなかったらしい。

 ユリカの視線がきつくなる。


「アーーキーートーーっ!」

「い…いや、まて、ユリカ」


 なんとなく、身の危険を感じる。

 夢見るようなユリと噴火しようとしているユリカにはさまれて、
 アキトは一転、精神的に窮地に追い込まれた。


 だから、かもしれない。


「でもアキト、ユリカの見てる前で私…
 どうしようっっっ(はぁと)!!」

「い、いや……ちが…」

「うんうんっ!
 わかってるよっ!
 アキトをとめる事はできないんだよね!!
 もう我慢できないんでしょ!?
 だいじょぶだよっ!!
 私しっかりうけとめるからっっ!!」




 ユリの言葉に、身構える暇もなく……




「そうじゃなくてだな…!!
 別に俺は、お前を…」

「うん!!わかってるっっ!!」




 衝撃を、うけたのは。




「アキトは、


 わたしが、


 だーーーーい好き!!」

















――――…ああ、そうだよ!!

――――そういうお前は、どうなんだよ!!



――――あれ?言った事、なかったっけ?


――――私は……アキトが………













「…っ!!…」


「!?…アキト?」

「どうしたの?アキト!?」



 二人の前であるにもかかわらず…

 アキトは天を仰いだ。





 こぼれる涙を、おさえきれずに…













前編・完


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