「やあ、はじめましてナデシコの皆さん。

 俺はアカツキ ナガレ、コスモスから来た男さ」

キラーン

しかし・・・なんで光るんだ?

やっぱり気になるな・・・





ブロスとディアの正しいアキト君の育て方
 第十六話 目的





「では、良い返事を期待するよ」

「はあ、取り敢えずクルーの皆と相談します」

ま、ナデシコは俺たちの場所だからな、勝手に決められても困るが・・・

そんなのじゃなめられるぞ、ユリカ。

もっと言い方ってものがあるだろうに・・・

「・・・多分、アキトさんにそれを言う資格は無いと思います」

「え!!ル、ルリちゃん俺の独り言を聞いてたの?」

「すいません、偶然聞こえたもので・・・」

・・・本当だろうか?

二回目みたいなことになったら・・・

お願いだ、それだけは止めてくれ。

「ま、そうかも知れないけど・・・

 正解が解らなくても、人の間違いは解ることだってあるんだよ」

「それが解ってるんなら少しは自覚してください」

・・・それができれば苦労しないよ、ルリちゃん。

って、また逃げてるな、俺。





「チューリップを通り抜けると、瞬間移動する・・・とは限らないのね」

やっと起きましたね、イネスさん。

あの後何度か激しい衝撃が有った筈だけど、それにも負けずに寝るとは・・・

『ま、ナデシコだからね』

ブロス・・・それで何でも済ませる気か?

ま、あながち間違ってはいないが・・・

「少なくとも火星での戦いから、八ヶ月が経過しているのは事実よね」

この八ヶ月には何か意味があるのだろうか?

偶然あのチューリップがこの場所この時間に繋がっていたのか?

別にここをイメージした人はいないはずだよな。

「ちなみに、その間に連合軍とネルガルは和解し・・・

 戦艦を作って月面を奪回・・・」

「で、ユリカ、今後の予定は?」

イネスさんの説明を長々と聞いてる暇は無いからな・・・

「あ、うん、あのね、ネルガルは連合軍と協力することになって・・・」

「そこで皆さんには申し訳ないんですが、

 ナデシコは地球連合海軍極東支部に編入されるということに・・・」

「私たちに軍人になれって言うの?」

「ま、一時的な共同戦線みたいなものかな」

といってミナトさんを口説き始めるアカツキ。

どうでもいいが・・・手を広げすぎると、収拾のつかないことになるぞ。

経験者は語る・・・だ。





「ルリちゃん、ジャンプ時のデータはどうなった?」

「はい、一応アキトさんも展望室に跳んで、

 起きた後ユリカさんを運んだことにしておきました。

 でも良いんですか、ジャンプについては隠しておいた方が・・・」

「エリナさんにも乗ってもらったほうが好都合だからな。

 それに・・・下手なことをして、有人ジャンプ実験の犠牲者を増やすのは・・・」

「そうですか・・・解りました」

「ごめんね、いつもルリちゃんに頼ってばっかりで」

「良いんですよ、私が好きで頼られてるんですから」

「ごめん・・・ありがとう」





取り敢えず部屋に・・・そういえば前回はガイがいたな。

あの音波攻撃は・・・そうだ厨房に行こう。





「テンカワか、いいのかい?パイロットがこんなところにいて」

「俺はコックですよ、パイロットは副業です。

 それに・・・料理をしてると落ち着くんですよ」

「そうかい、ならいいんだけどね」

俺はコックになりたい、

この世界が、俺の存在が、全て間違っているとしても、

この思いは少なくとも本物なはず・・・いや、本物だ。

「くくくくく・・・面白いね君は」

「えっとー、アカツキさん・・・でしたよね、ご注文は?」

「何、君はナデシコが軍に編入されることについて、どう思っているのか聞きたくてね」

軍・・・か。

ま、今なら解らなくもないが・・・

結局人を殺すのが仕事だからな。

自分のやっている事は正しいのか、上の言うことは正しい事なのか?

そんなことを考えていたら、罪の意識で押しつぶされる。

だから上の命令が正義に違いないと割り切る。

ちょうどムネタケのようにな・・・

ある意味、洗脳された被害者だ。

でも・・・それでも許せない事もある。

自分の罪を、自分の過ちを、正面から受け止めずに逃げている。

・・・そうか、俺も同類か。

くくくくく、結局同類嫌悪って訳だったのか。

でも、俺はいつか逃げずに受け止めて見せる、

それを自覚しているか、いないかだけでも違うはずだ。

「ど、どうしたんだい、急に黙って」

アカツキがどもりながら聞いてきた。

「いや、何でもありませんよ。

 俺は俺の目的のためにナデシコに乗っています。

 俺にとってナデシコは・・・」

「こら!!テンカワ!!ロン髪!!迎撃戦だぞ早く格納庫に来い!!」

「だそうだ、いくぞアカツキ」

「あ、ああ」





「ジュン、作戦は?」

「戦艦はコスモスに任せて、各自の判断でバッタを迎撃してくれ」

「了解」

「テンカワ君、無敵のエースの実力を見せてもらうよ」

「ああ、そこでじっくり見ていてください」

前回と同じじゃ芸がないからな、距離に応じて連射の数も変えて・・・

ドドン、ドドドドン、ドドドン、ドドン、ドドドン、

近くの敵には少なく、遠くの敵には多く同じ場所に集中射撃する。

「取り敢えず5匹・・・どうですか?」

「・・・恐れ入ったよ。

 君だけは敵にしたくないな」

・・・俺もお前を敵にしたくないな。違う意味でだが。





今回は飛ばされて行った人はなかった。

そういえばなんかガイの奴が静かだけど、一体どうしたんだ?



「で、さっきは聞き損ねたけど、

 君はパイロットとしてナデシコに残るのかい?」

食堂で休憩していると、前回と同じくアカツキがやってきた。

「俺はどちらかって言うとコックのほうが好きなんですけどね」

「・・・テンカワ君、君がその台詞を言うのは他のパイロットに対して失礼だよ。

 君は現在間違いなく、連合宇宙軍を含む中でのエステバリスのエースパイロットだよ?

 そんな君が軍隊を否定するのかい?」

「エステバリスのパイロットだってたくさんいるんだ、

 料理が好きな奴だってたくさんいるだろう。

 偶然、エースパイロットがそうだっただけだ。

 それと残るか残らないかですけどね、

 俺にとってナデシコはかなり重要なカードなんです。

 禍福はあざなえる縄の如し、ナデシコと軍が手を組むんならそれを受け入れますし、

 パイロットも続けますよ」

「ふ〜ん、あ、そ。

 じゃあ取り敢えず今は仲間だ・・・今後も宜しく」

「ああ、宜しくアカツキさん」

・・・ま、今のところはナデシコに残るさ。

俺の守るべきものは、全てナデシコにいるのだから・・・

守るのにもっと都合のいい場所が見つかれば・・・その限りじゃないけどな。





(ラピス?)

(何、アキト?)

(調子はどうだ?)

(A計画とB計画が終わったのはこの前話した通りだけど・・・

 C計画が・・・

 ねえ、あのデータはどこから持ってきたの?)

(ま、俺も色々とあったんだよ・・・

 そのうち話すから・・・

 それよりハーリー君とは仲良くやってるか?)

(うん、ハーリーに色々と聞いたんだよ。

 それでね、ハーリーって色々と面白いこと知ってるんだよ)

(そうか、話を聞いてみてよかっただろ?)

(うん。ねえ、今度一緒に遊びに行こうよ)

(ああ、そうだな)





暫くするとブリッジに招集がかかった。

多分・・・エリナさんとムネタケが来たんだろうな。

今度は忘れずにムネタケと話す機会を作らないと・・・

「は〜い、皆さんお久しぶりね〜」

「う〜んと・・・ねぇルリちゃん、この人誰?」

ユリカのその言葉に、クルー全員が笑い転げる。

結局忘れられる運命にあるんだな、この人は・・・

結構濃い人だと思うんだが・・・

「あ、相変わらず抜けてるわね、ミスマル ユリカ。

 アタシは今度からナデシコの提督になった、ムネタケ サダアキよ!!

 今後はビシバシと、このナデシコを鍛えていくからね!!」

・・・そうして人を見下すことでしか自分自身を肯定できない、

かわいそうな人なんだけど・・・

ナデシコでは無視される運命にあるよな、それじゃ・・・

「はじめまして、ナデシコの皆さん。

 私の名前はエリナ キンジョウ ウォンです。

 これからは副操舵手として、ナデシコに乗らせてもらいます」

そして俺を凝視する・・・

ま、解らなくもないんだが・・・

その目はあいつ等を思い出すから・・・早い所話をしてみるか。

そう思ってエリナさんのほうを見ると慌てて目をそらせた。

多分ネルガルが俺の両親を殺したことを俺が知っていることを聞いてるんだろう。

「どうして会長秘書が直接乗り込んでくるんです?」

・・・すみません、プロスさん。それは俺のせいです。

「では、今後とも宜しくお願いします」

「宜しくね〜」

さて、アカツキとエリナさんとムネタケ・・・あとイネスさんとも話をしないといけないし・・・

ウリバタケさんにジュン用のエステの改造も頼まないといけないし・・・

C計画についてもならないといけないことが多いし・・・

リョーコちゃんたちに訓練もつけてやらないといけないし・・・

俺自身も鍛えたいし、新しい技も試してみたいしな。

さて、どこから手をつけるかな?





「まさか・・・貴方まで乗り込んでいるなんてね」

「例の彼に興味があったんだよ」

「それで、第一印象はどうなの?」

「・・・正直言って底が知れない。

 だが話して解らない人じゃないな。

 でも、どこまで知っているんだ?」

「・・・うちのSSに調べさせたけど、

 彼が裏の組織に所属していたと言う記録はなかったそうよ」

「うちのSSを完璧にだますほどの組織・・・

 味方につけられるのなら、それに越したことはないな。

 だが、何か触れてはいけない物に触れた気分だ」

「貴方がそこまで言うなんて・・・

 でも、ますます彼に興味が湧くわね」

「エリナ君・・・彼には関わらない方が良いかもしれない。

 かなりリスクの高い賭けになる」

「嫌よ。

 この映像を見たらもう引き返せないわ」

「ジャンプの瞬間、か」

「・・・そうよ、彼には絶対協力してもらうわ。

 我が社の為にも、ね」

「テンカワ夫妻について知ってるんだ。

 彼等の殺された訳、ボソンジャンプについても知っている可能性が高い。

 簡単に協力してくれるとは思えないな」

「・・・協力してもらうわ、話して解らない人じゃないんでしょ?」

・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・

「だが・・・本当に彼は何者だ?

 彼が見せたあの気配・・・あの時の奈落の底のような暗く深い闇・・・

 裏の組織にいたというのはたぶん本当だろう。

 プロス君もそんなこと言ってたし・・・

 だが・・・うちのSSは世界一優秀だ、なんて言うつもりはないが、

 完全に白・・・っていうのは流石に・・・

 興味深いのは確かだな」



第十七話に続く





あとがき

というわけで「育て方」の第十六話です。

軍もネルガルもアキト君もルリ君も皆自分たちの目的のために動いています。

他者の目的も認識できる人は不幸ですよね。

アキト君は、そういうところ・・・他人の悲しみなどには敏感ですので、

いろいろと考えさせられる事になるでしょう。

優しくて、感受性の高い人は不幸ですよ。

人の不幸を自分のものとして理解できると言うことですから・・・

それでも自分の目的に向かって歩く・・・つらい道になりそうです。

方々に怪しまれまくっているアキト君。

さてさてこれからどうなることでしょうか?

全ては電波次第と言った所ですが・・・



追記

キャラを書ききれません。

登場人物の数に対して、それぞれのキャラが濃すぎます。

パイロット三人娘や、ゴート ホーリ、ホウメイさん+ホウメイガールズ、

特にリョーコさんの出番がありませんね・・・

リョーコさんにはたぶん次回かその次あたりに動いてもらう事になるでしょう。

彼女は・・・たぶんアキト君に惚れてもらう事になります。

保証はありませんが・・・

後、ホウメイガールズの井戸端会議も、新登場のキャラについてを議題に行ってもらいます



追記その2

ラピスの性格はかなり改造する予定です。

私的ハーリーのイメージが、エヴァの最終回で、シンジの夢(?) の中の・・・

学園エヴァで良いんでしたっけ?

その中のシンジが彼のイメージなので、

ラピスのイメージは

その中に出てきた綾波嬢(何か言い方があったと思うのですが・・・)かアスカを、

幼くした感じで行こうと思っています。

いずれにしろハーリーには振り回されてもらうことになりそうですが・・・



追記その3

タニ博士に関しては、私が完全に忘れておりました。

この点に関して指摘してくださった方々へ深く感謝しております。

どうも有り難うございました。

一応辻褄合わせはするつもりです。

ダリアも出しますし、タニ博士も助けようと思います。

う〜ん、何とか言い訳を考えなくては・・・必殺言い訳士と呼ばれた私の名にかけて。



追記その4

「代理人の感想」について

それはそうかも知れませんが・・・

アキト君にしろルリ君にしろ、ジュン君に教えられることはないと思います。

彼は、応用は苦手ですが、暗記物は得意なタイプだと思いますので、

教えられるタイプの知識は、既に全部暗記していてもおかしくないと思うのです。

参謀副官としての仕事、作戦立案に必要な能力は、

そういういわゆる士官学校で習うような知識、経験、直感、柔軟性、

この四つだと思います。

このうち、直感はそれこそユリカの専売特許ですし、

努力して後天的に身に付くような能力ではありません

経験も、アキト君もルリ君もそれなりにあるでしょうが、教えることができる物ではありません。

後、柔軟性ですが、ユリカに長年付き合っていただけあって、

頭が固いタイプでないことは確かですが、これもユリカに敵う筈がありません。

結局アキト君たちにできることと言えば、

機動戦の指揮について、模擬戦で経験をつませることぐらいですし、

それなら、エステで前線に出たほうがいいと思ったのですが・・・

 

 

 

代理人の感想

え〜と・・・「リナレイ」でしたっけ?

あの交差点でぶつかった綾波。

まぁ、間違ってたら幾らでもツッコミが来るでしょうからそれは置いておいて。

 

 

>結局アキト君たちにできることと言えば、

 

別にアキト達が「教える」必要はないと思います。

そもそもアキト達に出来ないことをフォローしてもらう為の人材の筈ですし。

その線でいくとアキト達が得意な分野を強化することは出来ても

不得意な分野をフォローすることは出来ないまま、ということです。

で、ジュンの場合元の能力自体はそれなりなんですから

アキト達がやるべきはむしろ彼を精神的に成長させることではないのかなと。

 

後、前回は書き忘れましたが記憶だかなんだかで知っただけのチハヤに対して

ジュンが思い入れを抱くのも不自然でしょう。

この時点のジュンにとってはチハヤは「見知らぬ女」でしかないわけですから。