「敵襲!!

 敵、チューリップ四機、

 戦艦約六十!!」

「アキト無しで勝てる戦力じゃないな・・・

 だが・・・しかし・・・」

あいつは今・・・

あいつと・・・部下たちと・・・

・・・・・・・・・・・・

「仕方が無い・・・アキトに連絡しろ・・・」





ブロスとディアの正しいアキト君の育て方
 第四十七話 殺意





ちくしょう!!テツヤめ・・・どこにいるんだ?

ルリちゃんや、ラピスの追跡から逃れるとは・・・

前回いた場所にはいなかったし・・・

相当前から準備していたらしいな・・・

何?敵襲!!

チューリップが四機・・・

一機ぐらいなら、シュンさんたちに任せるんだが・・・

確か、前回テツヤがきたのは、もう少し後だったよな・・・

メティちゃんの家の前を離れるのは、心もとないが・・・

こいつらに任せて・・・大丈夫か?

でも、メティちゃんたちもすぐに避難するだろうし・・・

何より、俺が行かなければ、ここも危ない・・・

仕方がない、今は敵の殲滅が最優先だ。





テンカワ アキト・・・一体何者だ?

俺もまさかあいつらのことまで知ってるとは思わなかった・・・

だが・・・もう遅い・・・

これは俺の仕事だ。

ちょうどいい機会だ、

やめてやるよ。

もともと、クリムゾンにいるのも、特に理由があってのことじゃない。

未練も何もないしな。

だが・・・テンカワ アキトは俺の好きにさせてもらう・・・

それに、これであいつを徹底的に苦しめ、追い詰めることができる・・・

そして殺すことも・・・

もうスカウトする必要はないからな。

・・・それに、あいつらが俺に貸したチューリップは、まだ俺の指揮下にある。

まさかあいつらも、表立って俺からチューリップの指揮権を取り上げるわけにも行く まい。

あいつらには、まだ本社に報告していないテンカワ アキトに関するデータを渡したら、

喜んで協力してくれたしな・・・

あくまであいつらは蜥蜴・・・

クリムゾンのものじゃない・・・

これだけあれば・・・

やってやるさ・・・

あいつこそ・・・俺の捜し求めていた"英雄様"だ。

自分じゃ違うといっていたが・・・

謙遜するのも英雄の条件・・・か・・・

ふふふふふ・・・

ははははは・・・

は〜っはっはっはっは





「テンカワ アキト・・・出る!!」

アキトが出撃した。

チューリップ四機・・・

かなりの戦力だが、アキトにとっては雑魚だろう・・・

しかし・・・

「良いんですか、隊長、

 あいつ・・・ここ暫くろくに寝てませんよ」

「解っている、しかし・・・

 俺が言って聞くと思うか?」

「ですが・・・」

「言うな、俺たちは、俺たちにできることをやるだけだ」

テツヤ・・・あの男を、軍は総力をあげて探している・・・が、

未だ、手がかりすらつかめない・・・

「チューリップ破壊、衝撃波、来ます!!」

ドゴォォォォォォォォーーーーンンンンン!!

最初は、耳が痛くなり、破壊するたびに対ショック防御を指示していたが・・・

なれとは恐ろしい物だな・・・

しかし・・・

しばらく寝ていない・・・

イメージが重要なIFSにおいては、かなりのマイナス要素のはずなんだが・・・

「アキト・・・飛ばしていますね・・・」

「ああ、やはり・・・気がかりなんだろう」

「チューリップ続けざまに撃破!!」

ドゴォォォォォォドゴォォォォォォォーーーーーンンンンン!!!

「スパイについても知っていたみたいですし・・・」

「泳がしていたとも思えんがな・・・

 然し、サイトウはメカニックの中では比較的アキトと仲が良いと思ったんだがな ・・・」

「嫉妬・・・ですか?

 まぁ、アキトですからね」

「ああ」

「でも、ホントどうやって見つけたんでしょう?

 次の日にはもう証拠つきで突き出していましたし・・・」

「ああ、あの時は殺すんじゃないかと思ったけどな・・・」

「でも、あれはある意味殺されるよりひどいかもしれませんよ?」

「・・・自業自得だよ、

 アキトを・・・あんなにがんばっている男を・・・

 何で邪魔する・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

「それに、あのことで一番つらかったのはたぶんアキトだぞ?

 仲のよかったやつが裏切っていて、

 それを自分が突き出す・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

けたたましい破砕音をBGMに、俺とカズシは、

何度繰り返したか解らない議論をまた繰り返していた。

・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・

「こちらテンカワ機・・・

 チューリップを殲滅、後は任せる」

「ああ、全機残敵を殲滅せよ」

「いつも、これくらい俺たちを頼ってくれるといいんですけどね?」

「それができないから・・・あいつなのさ」

「英雄を嫌っているくせして・・・そういうところは英雄なんですよね?」

「・・・アンバランスな奴だ」

でも・・・黙っては、いられないんだろうな。

その気持ちは・・・解る、解るが・・・





戦艦が十数機とバッタとジョロが百機強・・・・・・

俺がいなくても、大丈夫だろう。

「こちらテンカワ機・・・

 チューリップを殲滅、後は任せる」

さて・・・

(ラピス、そっちのほうはどうだ?)

(駄目・・・全然見つからない)

(そうか・・・いや、引き続き調べてくれ)

(うん)

(ルリちゃんと、ハーリー君に宜しくな)

(・・・解った)

さて・・・

軍のほうは何かつかんだか?

司令室まで行くか・・・

・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・

「シュンさん、どうです、何か・・・」

「いや、何もつかめない・・・すまんな」

「いえ、いいです、

 すいません、無理言って協力してもらって・・・」

「いや、当然だ、民間人の安全を守るのは軍の役目だからな・・・」

役目・・・

俺の役目・・・皆を守る・・・

皆が・・・俺が、後悔しなくてすむ世界・・・

俺は・・・

・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・

・・・メティちゃんたちが気がかりだ、

そう思い、司令室を出る。





あの事件から数日・・・

ヤガミさんの怪我は幸い大した事は無く、

無理をしなければ、という条件でもう退院しているが、

軍の駐屯地は、まるで数ヶ月前に戻ったかのように、

暗く、重い空気に包まれている。

・・・この空気を取り払ったのが、アキトさんだった。

そして、今はまた私たちが狙われるかもしれないと、

ほとんど一日中私の家を見張っている・・・らしい・・・

ヤガミさんがそう言ってました。

その時、街に警報が鳴り響く。

敵の襲来を知らせる警報だった。

私は父と共に避難所に向う為に、手早く荷物をまとめる。

もっとも、アキトさんが来てからは、

町が破壊されることはほとんどなくなったし、

避難し終わる前に敵の殲滅が終わるのですが・・・

でも、一応避難する。

私が荷物をまとめ終わって、下に下りようとしたその時、

父が待ってるはずの玄関から父の怒鳴り声が響いた・・・

「何だアンタ達は!!」

「・・・」

「何か言ったらどうなんだ!!人の家に勝手に入り込んで・・・」

ドン!!

その音に私は凄まじい不安を感じた。

いつか・・・どこかで聞いたような・・・

そして静かになる玄関・・・

カツカツカツ・・・バタン

二階の私の部屋に、迷う事なく一人の人物が入って来る。

ドアにノックもしなければ、伺いをたてる声もなかった。

そして、当たり前の様に私の部屋に侵入する。

「あ、あなたは!!」

「おお、覚えてくれたとは光栄だね?

 もう聞いているかもしれないけど、一応自己紹介しておこう、

 俺の名前はテツヤだ」

「・・・・・・・・・・・・」

私は動けなかった・・・

「ところで・・・警報が鳴っているのに、君の家族はどこにいるんだろうね?」

「ま、まさか・・・」

「オヤオヤ、そんな怖い顔しないでくれ・・・

 俺も鬼じゃない、あんな小さな子を殺したりしてないさ」

「そうですか・・・」

ホッとしたのもつかの間・・・

あることに気が付く・・・

「!!ち、父は・・・」

「オヤオヤ、言っておくが、君のお父さんを殺したのは俺たちじゃないぞ?

 公式には、この戦闘に巻き込まれた事になる予定だ」

・・・それは・・・殺したということですか?

この人が・・・父を?

「そんな・・・

 そんな事が・・・

 それに・・・」

「テンカワ アキトは俺の仕業だと見抜く・・・か?

 で、どうなる?

 いくらお前等が泣き叫ぼうとも、

 公式記録は変わらない・・・

 お前のお父さんは、事故死なんだよ」

「そ、そんな・・・」

この人は・・・なんで・・・なんでそこまで・・・

「全ての元凶はテンカワ アキトだ。

 あいつが俺の誘いにのれば、こんな事をする必要はなかった。

 それに・・・あいつほどの情報網と、俺に関する資料があれば、

 俺の行動ぐらい読んでしかるべきだ。

 結局、あいつはお前等を見殺しにしたんだよ」

そんな・・・アキトさんが・・・

いえ・・・アキトさんは私たちを・・・

「一回襲われたというのに、無用心なことだよな」

そうです、何で・・・アキトさんは・・・

「人の命は地球より思いなんて言うけどな、

 自分に関係の無い人の命ほど軽い物も無い。

 あからさまな隠ぺい工作なら兎も角、

 このことに関して、いくらお前が訴えても、動いてくれる奴なんて居ない。

 知ってるか?

 冤罪裁判や、人権擁護とかの裁判は、

 あらかじめ上が決めているんだ。

 わざと中途半端な隠蔽をして、おろかな大衆の目をそらすためにな。

 今回の件は違う・・・つまり、

 幾らあんたが大声で叫んだ所で・・・誰も聞きはしない。

 そうさ、あんたはこの世界で一人きりなんだよ」

「いや・・・そんな事無い・・・」

「そうか?

 まあ良い・・・ところで・・・

 妹さんはどこにいるんだろうな?」

「あ、あなた・・・メティは殺さないと・・・」

「ああ、殺してはいない・・・

 だが・・・今からどうするかは、お前しだいだな」

「・・・・・・・・・・・・」

「ここに銃がある・・・

 これをどう使うべきかは・・・解るな?

 そうすれば・・・妹さんは返してやろう」

・・・私に・・・アキトさんを・・・殺せと?

そんな・・・私は・・・

・・・あの人は・・・私を・・・私たちを、

父を・・・メティを・・・

「さぁ、俺の気が変わらないうちに、

 せいぜい頑張るんだな」

メティは・・・

それで・・・メティは・・・

メティは・・・この人の・・・

その時、男が不気味に微笑む!!

この人は・・・

この人が・・・この人が父を・・・

この人が!!

「おっと、その拳銃を向ける相手は俺じゃあない。

 テンカワ アキトだと言ってるだろ?」

「何を抜け抜けと!!」

私は手の中にある拳銃を男性に向け。

引き金を引こうと・・・

ガッ!!

「まったく・・・相変わらず強情だな。

 俺を殺しても、妹さんは帰ってこないぜ?」

メティ・・・

なぜ・・・なんで・・・

「ま、いいさ。

 勇気だけは認めてやる。

 その勇気に敬意を表して、もう一つ教えてやろう。

 ナオも、クリムゾンの関係者だ。

 シークレット・サービスで、結構有名な奴だった。

 ま、そこそこ幸せな生活を送っていたわけだ。

 ところが、ある日ナオの守備している場所に、アキトが攻めてきてな、

 コテンパンにやられちまったわけだ。

 で・・・修行なのか知らんが、失踪しちまってな、

 その落ち着いた先が・・・

 テンカワ アキトの護衛だっていうんだからな。

 思わず笑っちまったぜ、俺はよ。

 表向きは、西欧方面軍指令の孫娘の護衛なんて言ってたがな。

 重要度からすればテンカワ アキトの価値は計り知れない。

 あいつが、君をかばったのも、

 俺達があんた達家族を狙う可能性を見落としたからだぜ、きっと」

・・・そんな・・・ヤガミ・・・さん?

「ああ、ついでにもう一つ面白い事を教えてやろう。

 テンカワ アキトはちょっと前まで十一歳の少女を可愛がっていた。

 あんたの妹はテンカワ アキトにとってその子の身代わりだったんだよ」

「そんな・・・馬鹿な・・・」

違う・・・違うに決まってる・・・

違っていてほしい・・・

「さぁ、それはどうかな?

 現にあいつの妹さんに対する接し方は・・・」

アキトさんのメティに対する・・・

「そう、ギクシャクした変なものだったそうじゃないか」

ヤガミさんが?

アキトさんが?

ヤガミさん・・・お願い・・・違うって・・・

「あいつが・・・テンカワ アキトが、おまえたちを不幸にしたんだ」

・・・アキトさんが?

アキトさんは・・・私たちを・・・メティを・・・

アキトさんは・・・テンカワ アキトは・・・

あの人は・・・私の・・・私たちの・・・

私たちの・・・敵?

敵・・・テキ・・・てき・・・

敵は・・・

敵は?

・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・





第四十八話に続く





あとがき

やっぱり、この話は必要なようです。

私としては、「時の流れに」そのままっぽくなって、

オリジナリティーが出しにくい話なので、

できれば書かなくてすむ話にしたかったのですが・・・

しかし、ミリアさんには動いてもらわないと・・・

一応かなり変えていくつもりですが・・・



しかし・・・テツヤの扱いはいかがいたしましょう・・・

アキト君は今の所、殺すつもりですが・・・

単に殺しても、面白くない・・・

「時の流れに」とは違った形で、アキト君に影響を与える形で・・・

まぁ、殺さなくてもいいですが・・・



しかし、「時の流れに」において、

テツヤはどうやってテア家(・・・変ですね)

に潜入したのでしょう?

どう考えても、特に厳重に警戒されているはずでしょう。

事実、アキト君に親しい人を集めて・・・

とか言っていますし・・・

まぁ、そうしないと話が進みませんし、

私も潜入させたのですから、人の事言えませんが・・・



追記

ユリカについてですが、

ジャンプ実験は、絶対安全とはいえません。

少なくとも、ネルガル的には、百%の安全を保障することはできません。

十分な知識がありませんからね。

被験者がユリカである以上、

ジャンプに耐えられないと言うことはありませんが、

ネルガルは、ジャンプにおいてイメージが重要だという事を知りませんから、

もちろんユリカも知りませんし、

ジャンプミスが起きる可能性も否定できません。

チューリップ内部で、いいかげんなことをイメージしたら、

どこに跳ばされるか解りません。

ルリ君としても、見過ごしていい事態ではないでしょう。

もちろんネルガルにもそれなりの勝算はあるわけですが・・・

何より、ジャンプ実験にチューリップを使う以上、

ジャンプ先は開いていると言うか、稼動中のチューリップです。

チューリップが稼動中と言うことは、

木連の基地のか、戦場と言うことに・・・

ジャンプに成功しても、危険なことに変わりはないでしょう。

今までのアキト君とルリ君の行動を見る限り、

他者を危険にさらすことは、できれば避けたいと思っていることは、

一目瞭然でしょうから、

取引の材料としては、申し分ないかと・・・

 

 

 

代理人の感想

>ユリカの処遇

・・・普通、そういう交渉は「脅迫」と言いますゾ。