「ち・・・

 ああは言ったものの・・・意外に被害が出たな・・・

 情報と違う・・・

 スパイについても、すでに調査済み・・・か。

 まぁいい、どうせ、あいつらは捨て駒だ。

 ははははは、見てろよ、テンカワ アキト。

 おまえを・・・おまえを殺せば、俺は・・・

 俺は、英雄以上の存在になれる・・・

 俺を・・・俺が・・・すべての元凶の・・・

 そうすれば・・・俺は・・・俺たちは・・・

 あいつを・・・あいつを殺せば・・・すべてが元通り・・・

 俺たちは・・・もう苦労することもない・・・

 また・・・みんなで・・・」





ブロスとディアの正しいアキト君の育て方
 第四十八話 二人





私は車から降りると、空を見上げた。

まだ戦闘の終わっていない空は、

厚く黒い雨雲が覆っていて、

チューリップやバッタから立ち上る黒い煙と相成って、

当たりの空気を、よりいっそう暗いものにしている。

視界の中で、特に激しく動く黒い塊と、白い光の剣・・・

あれがアキトさん・・・

結局、アキトさんが敵なのかどうかは解らなかった。

でも・・・そんなこと関係ない。

あの子を救うには・・・あの子を助けるために、私にできるのは・・・

この間、アキトさんが言っていたこと・・・

今なら理解できる。

あの子を助けるため・・・私にできるのは、これしかない・・・

これしか・・・これだけしか・・・

例え、それが・・・あの子の・・・あの子の・・・

あの子の微笑が私の脳裏に蘇る。

・・・アキトさんが死んだら、

あの子は笑わなくなるかもしれない・・・

でも・・・

それでも・・・私は・・・

父の顔が頭をよぎる・・・

男手一つで私とメティを育ててくれた父。

また、親孝行がしたかったな。

私がこれからする事を知れば・・・

父はどんな顔をしただろう?

メティは、どんな顔をするだろう?

・・・でも、止まれ無いのよ。

止まっては・・・いけないのよ。





「止まるんだミリア・・・」

ヤガミ ナオが駐屯地へと続く道に現われた。

予想外の事態の筈だけど・・・

なぜかごく自然に思えた・・・

だから・・・私はこう答える。

「やっぱり・・・貴方が私の前に立ち塞がるのね」

晩秋と呼ぶには、もう無理があるこの時期・・・

ただ立っているだけでは凍えてしまう。

吹き荒ぶ風が容赦無く私達の体温を奪う。

だけど・・・

私の心の黒い炎は一向に消えない。

彼と出会ってから五分。

お互いに無言のまま時は過ぎて行く・・・

凍りついた時間・・・

早くしなければいけないはずだが、

なぜか足が動かない・・・

駄目・・・私は・・・早くしないと・・・

急がないと・・・メティが・・・

そのままさらに五分・・・

ようやく、彼が口を開く・・・

「あいつの・・・テツヤの言う事を信じるのか?」

何で・・それを知っているの?

「すまない・・・君の家を盗聴していたんだ」

衝撃的な事実のはずだけど・・・

何も感じなかった。

だから・・・私はこう答える。

「そう・・・」

「いや、アキトは関係無い、俺の一存だ」

・・・嘘だ、

直感的に、そう思った。

何が嘘なのかはわからなかったけど・・・

「すまない・・・気が付いたときには・・・もう・・・」

これは本当だ・・・

・・・そう・・・盗聴していたというのが嘘なのね。

どうやってあのことを知ったのかは解らない・・・

もしかしたら、あの人がヤガミさんに教えたのかもしれない・・・

でも・・・そんな事は、もう関係無い。

だから・・・私はこう答える。

「そう・・・」

ヤガミさんが、悲しそうな目で私を見る・・・

駄目・・・そんな目で見られたら・・・

私の・・・私の・・・

だから・・・私は目をそらした。

「あいつの・・・テツヤの言う事を信じるのか?

 あいつは・・・もし君がアキトを殺したとしても・・・」

解ってる、そんな事はもう・・・

だけど・・・止まれない・・・止まりたくない・・・

止まるのが怖いから・・・

だから・・・私はこう答える。

「そう・・・」

「何でだ、君は、君はそんな人じゃないはずだ!!」

「貴方に私の何がわかるの!!」

思わず叫んでしまった。

いけない・・・彼の話を聞いたら・・・

彼の話に答えたら・・・

「解らないさ、解らないからこそ、知りたいんだ、君を!!」

何で・・・

何で貴方は・・・なんで、貴方に見られると・・・

だから・・・私はこう答える。

「そう・・・」

ヤガミさんが、泣きそうな目で私を見る・・・

メティがよくそんな目をしたっけ?

何で、私にはお母さんがいないのって言いながら・・・

そんな時、私はメティを抱いて、頭をなでつづけた・・・

駄目・・・このままじゃ・・・何かが・・・駄目・・・

早く切り上げないと・・・

だから・・・私はこう答える。

「私の手が届く範囲にいる目標は、

 あの人と、貴方だけだもの」

決意を込めた目で彼を睨む。

今、彼は何を考えているのだろう?

私を・・・敵と認識してくれたのだろうか?

もう、私は彼すらも復讐の対象だと宣言したのだから。

私の言葉を聞いて・・・

彼の肩が微妙に揺れる。

そう・・・それでいい・・・

わたしの心の中で・・・何かが切れた・・・

それは・・・最後の良心だったのか・・・

それとも・・・

ここで私は殺されるのかしら?

・・・そうよね、もう私は彼にとって利用する価値も無い女だもの。

生きている限り、あの少年と自分の命を狙う存在だから。

もう、私は疲れたの。

私が死ねば・・・あいつは、メティを捕まえておく必要がなくなる・・・

それに・・・

ヤガミさんなら・・・アキトさんなら、

私より上手に・・・メティを助けてくれる・・・

私は・・・足手まといだから・・・

だけど・・・私は止まれない。

だから・・・私は止まれない。

だから・・・私はこうする。

私はゆっくりとハンドバックを開き、

中に入れていた小型の拳銃を取り出す。

「ミリア!!考え直すんだ!!

 アキトを殺しても何も解決はしないんだぞ!!」

そんな事は解っている・・・

だから・・・私はこう答える。

だから・・・私はこう答える事しか・・・できない。

「そう・・・」

「ミリア!!」

ヤガミさんのいいたい事は・・・

解るような気がする・・・

けど・・・

解ってはいけない・・・

解ったら・・・

だから・・・私はこう答える。

「そう・・・」

そう、これしか・・・私にできることは無い。

だから・・・だから・・・私は・・・

だから・・・私は・・・私は・・・

だから・・・私はこうする。

だから・・・私は冷たく微笑みながら彼に銃口を向ける。

私には・・・止まる事ができないから・・・

だから・・・私は・・・

「・・・」

無言で佇んでいた彼は・・・

おもむろに私に向けて歩きだした。

このまま黙っていれば・・・全てはうまくいくのかもしれない・・・

だけど、私は止まれない・・・

だから・・・私はこう答える。

「近づかないで!!」

しかし・・・彼は止まらない。

「どうして私に近づくのよ!!」

多分・・・この人の言う通りメティは殺されるだろう。

だから・・・私は・・・

だから・・・私は?

解らない。

でも・・・止まれない。

だから・・・私は・・・私は・・・

でも・・・そう、少なくとも、

私は・・・この人に嫌われなければならない。

だから・・・私は・・・





「頼む・・・アキトを殺さないでくれ、

 アキトを信じてやってくれ、

 メティちゃんは必ず俺が助け出す。

 アキトは・・・あいつはこれから先必要な男なんだ」

ヤガミさんが私を見つめる・・・

優しく・・・

暖かく・・・

私は・・・

私は・・・止まれない・・・止まれないはず・・・止まれなかったはずなのに・・・

彼の目は・・・彼に見られていると・・・

氷が・・・凍りついた心が・・・

私には・・・冷たい女の演技など無理だったのだ。

演技?私は演技をしていた?

強張った手には彼の胸をポイントした拳銃。

緊張に押しつぶされそうな心臓は、彼と出会った時から激しく脈打っていた。

いえ・・・そんな事ない・・・そんな感情・・・家に捨ててきたのだから・・・

「私が・・・私なんかが・・・違う・・・私は・・・私が・・・私を・・・?」

言葉にすると、頭の中にかかっていた霧が晴れていく・・・

だから・・・

駄目・・・考えちゃ・・・

違う・・・しっかりして・・・ちゃんと前を見て・・・

駄目・・・このままじゃ・・・違う・・・霧を・・・闇を振り切らないと・・・

違う・・・駄目・・・このままじゃ・・・いや・・・でも・・・

解らない・・・解ってる・・・解っていた・・・解っていたはず・・・

・・・解らない・・・これは・・・何?

全てが・・・私が・・・解らない・・・

彼が?

・・・いえ、違う・・・?

解ってる?

解らない・・・解らないはず・・・解っては・・・いけない・・・

「どうしてよ・・・私は貴方にとって、もう価値が無い存在なのよ?

 邪魔者なんでしょう?

 いらないんでしょう?

 だったら・・・貴方の手で殺してよ。

 私が・・・私たちさえいなければ・・・」

止まれない・・・だから・・・

だから?

だから何?

解らない・・・

解ってる?

もう・・・どちらでもいい・・・

「君は価値の無い人じゃない・・・

 少なくとも俺もアキトもそう思っている」

私の価値?

さっき私の言った言葉・・・

さっき?

私は・・・何を・・・

私の価値・・・あの人に?

あの人にとって・・・私には・・・価値が?

それとも・・・私たちを利用するの?

違う・・・

きっとアキトさんは・・・

・・・嫌、

「信じない・・・信じられない・・・信じたくない・・・

 信じては・・・いけないのよ!!」

解らない・・・

駄目・・・

だから・・・私は・・・

私は、こうする・・・

この人がいなければ・・・苦しまないですむから・・・

この人も、メティも、アキトさんも・・・

みんな、みんないなければ・・・

だから・・・私は・・・彼を・・・

・・・殺さなくてはいけない。





銃声





ポタポタポタ・・・

「何故、最後に銃口を外した?」

左腕を撃ち抜かれた衝撃で片膝をついていた彼が、立ちあがりながら私に質問する。

その声を、私は上の空で聞いていた。

初めて人を拳銃で撃った衝撃に・・・

私は手に持つ拳銃を取り落として泣いていた。

同時に・・・ヤガミさんと、アキトさんの心が、少しわかったような気がした。

人を撃つ・・・ヤガミさんは、ここまでの決意があったんだ・・・

アキトさんは・・・あの男を殺してでも、メティを助けるといっていた。

人を・・・ヤガミさんを・・・殺してしまったわけじゃ・・・無いのに。

こんなに・・・

私には・・・できない・・・

自分が・・・憎からず思ってる人を撃った。

血を流している彼の左手を見詰めながら・・・

私は心に激しい衝撃を受けていた。

そう・・・私は彼を殺すところだったんだ。

違う・・・私は始めから彼と少年を殺す為にこの場所を訪れ・・・

違う・・・私には・・・そこまでの決意は・・・無かった。

決意があると・・・思い込んでいただけだった。

私に・・・私は、人を撃つ事は・・・そんな決意は・・・ない・・・

そんな事は・・・でき・・・無い。

「私は・・・私は・・・」

「俺には君が必要なんだミリア・・・信じてくれ」

突然、抱き締められた・・・

暖かい大きなものに包まれる・・・

「真実を話していなかった事は謝る・・・

 いや、謝ってすむ問題じゃない。

 だけど、俺の気持ちは本当なんだ。

 俺には君が必要なんだ、ミリア・・・」

静かに・・・抱き締めた私の耳元でそう告白するヤガミさん。

それを信じろというの?

それに縋っていいの?

いえ、その言葉に縋り付きたい自分がいる。

でもこの言葉すら、嘘だったとしたら?

そう・・・きっとこれも嘘・・・

何で・・・なんで、自分を傷つけた相手を・・・

自分を傷つけた・・・自分を撃った相手を・・・

私はあいつを・・・テツヤを許すことはできない。

だから、きっとヤガミさんも・・・

でも・・・

でも?

そう・・・どこかに・・・その言葉を信じている私がいる・・・

私の中で・・・希望は恐怖になる・・・

希望の向こうに、絶望を・・・感じるから・・・

もう・・・後がないから・・・

もう・・・何も失えないから・・・

だから否定をするの・・・

自分が壊れない為に。

全てを・・・

何より・・・私自身を・・・

「・・・

 離して・・・

 離してよ、離してよ!!

 私を・・・一人にして・・・

 私に・・・関わらないで・・・

 もう・・・解らないのよ、

 もう、どうでもいいのよ!!

 ごめんなさい・・・もう・・・貴方を・・・アキトさんを・・・狙わないから・・・

 私を・・・一人にして。

 だって・・・だって・・・

 私は・・・貴方を信じれない・・・信じたら・・・信じたくない・・・

 きっと・・・それも嘘だから・・・

 だって・・・じゃないと・・・そう思わないと・・・

 もう・・・メティの事も・・・でも・・・違う・・・だから・・・」

ヤガミさんとメティ・・・

比べる事はできない・・・

だから・・・

どちらかを選んだら・・・

だから・・・選べない・・・

だから・・・どちらも・・・いらない。

でないと・・・でないと・・・

だから・・・私は、私は・・・

だから・・・私は、どちらもいらない、

だから、彼を否定する。

だから、自分を否定する。

だから、全てを・・・否定する。

彼の腕の中で激しく暴れ・・・

でも、彼は私を離してくれなかった。

暫くの間抵抗を続けていた私は・・・

やがて大人しくなる。

力尽きたわけじゃない。

もちろん、彼を受け入れたわけじゃない・・・

もう・・・それもどうでもいい。

もう・・・疲れた・・・

全てに・・・

何より・・・生きることに。

だから・・・もう・・・いい。

そして、唐突に気が付いた。

私が一番殺したかったのは・・・私だったんだ。

私が一番許せなかったのは・・・私だったんだ。

だから・・・彼を殺せなかったんだ、

私は・・・彼に・・・

私を殺してほしかったんだ。

でも・・・

それももういい・・・

「今は、信じてくれとしか言えない・・・

 けど俺は真剣に君の事を想ってる」

私の背中を抱き締めていた右手を離すと。

彼は背広のポケットから小箱を取り出し、私に手渡す。

「取り敢えず・・・約束の印だ」

彼は、少し照れたような表情をして、

それが・・・どこかに引っかかる・・・

けど・・・それじゃ駄目・・・

しかし私は、そのまま夢遊病の患者のように、

小箱を開けて・・・

愕然とした。

愕然とした?

まだ・・・そんな感情が残ってたんだ・・・

心のどこかで、自分をさめた目で見ている自分がいる・・・

・・・違う。

こっちが本物の私。

さめているのが私・・・

驚いてるのが・・・私の影・・・

そうに決まってる。

そのはず・・・

だって・・・そうでないと・・・

「た、誕生石の指輪だけど気に入って貰えたかな?」

そうでないと・・・

でないと・・・

私は・・・

私は・・・

彼に・・・

「で、でも・・・私は・・・」

「今度こそ嘘は言って無い!!

 ミリアじゃないと駄目なんだ・・・

 その、婚約指輪だと、お、思って欲しい。

 だから頼む、俺を信じてくれ、

 メティちゃんは、俺とアキトで必ず助けるから」

そう宣言する彼の目は真剣だった。

違う・・・

こっちが・・・私・・・

違う・・・

それは・・・

解らない。

もう私の気持ちは・・・

私は、自分で自分の判断が出来なくなっている。

「私は・・・」

「次に裏切られたと思ったなら、

 俺を本当に撃て。

 俺は君の銃弾から逃げる事はしない」

私は・・・私は・・・

そう・・・きっと・・・

こっちが、本物の私・・・

なぜなら・・・

なぜなら?

違う。

理由なんて要らない。

そう・・・私は・・・彼に・・・

彼のことを・・・





私は、彼の不器用な優しさが嬉しかった。

それは、彼なりの誠実さなのだろう。

でも・・・私には、もう人は撃てない・・・

人に撃たれるより・・・撃つほうが怖いから・・・

でも・・・

そこまで・・・本当に私の事を想ってくれている・・・

その事が嬉しかった・・・

希望が見えた気がした。

それをつかんだ気がした。

そして・・・それが暖かかった。

うれしかった。

「本気なの?」

「ああ、本気さ」

そして力強い腕で私を再び抱き締める。

信じよう、この人を・・・

この人は・・・

この人と、この人が信頼しているアキトさんは・・・

ここまでの覚悟で、メティを・・・みんなを守るといってくれたのだから・・・

メティ・・・ごめんね。

あなたと・・・彼・・・

私は・・・彼を選んでしまった。

でも・・・いいでしょ?

そう、この人なら・・・あなたを・・・メティを・・・助けてくれる。

理由なんて要らない。

だって・・・そうなんだもの。





そして・・・それを見つけた。

それを見付けたのは偶然だったのだろうか?

もしかしたらあの男は、私に見つけられるために、

わざわざあそこにいたのかもしれない。

でも・・・そんなこと関係がなかった。

あの男の顔を忘れる事は出来ない。

忘れる筈が無い。

そう、ライフルを構えるテツヤを私は見付けた。

考えるより先に身体が動いていた。

躊躇う必要も無かった。

彼は私を必要としてくれた。

私も彼が必要だった。

彼は、私の希望だった・・・

もう・・・絶望したくなかった。

希望を・・・失いたくなかった・・・

もう・・・あの闇に戻りたくなかった・・・

だから・・・

気付いたとき・・・

私は、彼と場所を入れ替えていた・・・

そして・・・

撃たれた・・・

ナオ・・・さん・・・

一言・・・名前で呼びたかった・・・

この傷はひどいのでしょうか?

・・・私・・・死んでしまうのでしょうか?

死ぬ・・・しぬ・・・シヌ・・・

死ぬ・・・

・・・いや。

死にたくない・・・

生きたい・・・

ナオさんと・・・メティと・・・

一緒に・・・

一緒に・・・

戦争が終わったら・・・三人で・・・

そのまま、視界が暗くなる・・・

ナオさんが・・・何かを言っている・・・

何?

呼んでる・・・答えなきゃ・・・

駄目・・・いかないで・・・ナオ・・・さん・・・

そして・・・意識が途絶える・・・

ナオさんを・・・

好きな人を守れた嬉しさと・・・

好きな人と、一緒にいられなくなる恐ろしさで・・・

いっぱいの・・・

そんな世界へ引き込まれて・・・

今日は、一日中、訳解らない一日でしたね・・・

ごめんなさいナオさん・・・私・・・

ごめんね、メティ・・・





第四十九話に続く





あとがき

進まない・・・

書きたい事が多すぎます。

もうどうしようもありません。

だから・・・私はこう答える。

「すいません」



ミリアさんが多用している、

「そう・・・」

という答えには、意味があります。

答えを言葉にすると、考えが固まり、

仮面が壊れてしまう・・・

だから"答えられない"

無意識なのか、意識して意識しないようにしているのかはわかりませんが、

ミリアさんには、自分のやっていることが事態を悪くするだけだと解っているでしょ うから。

でも止まれない・・・

「そう・・・」

という言葉は、冷たい反応のように聞こえ、

かつ考えないですむ・・・

"冷たい女"を演じる際には、非常に使い勝手がいい言葉なんです。



しかし・・・

暗いというか内向的というか・・・

私が書くと、なぜ自問自答するシーンが増えるのでしょう?

ミリアさん完全に分裂していますし・・・

この話に関しては、あらすじは同じなんですけどねぇ。

 

 

代理人の感想

あらすじは、というか・・・・内面描写以外は殆ど同じじゃないですか(苦笑)。