「ルリルリ、うれしそうね、何か良いことでもあったの?」

「い、いえ、何でも有りません」

「そう?」





ブロスとディアの正しいアキト君の育て方
 第五十二話 合流





ついにアキトさんが帰ってきます。

まぁ、私は知らないはずなので、

気付かれたら困るので、顔に出さないようにしなくてはいけませんね。

私はあまり表情が顔に現れないのですが・・・

なぜかアキトさんとミナトさんはわかるみたいなんですよね・・・

まぁ良いです。

でもアカツキさんたちはアキトさんに聞くでしょうね、

色々と・・・

ジャンプ技術は渡しましたが、

一応カードは取り返しましたけど・・・

先手を打つべきでしょうね、これは・・・

はぁ・・・





「救難信号!!」

「救難信号・・・か・・・」

表向きはネルガルの研究所、

実際はナデシコに合流しようと向かう輸送機の中、

突然入った救難信号だったが、

今の状態のブラックサレナでは、

この輸送機の護衛ぐらいならともかく、

長時間の戦闘、しかも救難信号を出さなければならないような状態の部隊を助けるの は、

はっきり言ってかなりきつい。

その気になれば、バーストモードや、ディサイシブ・ユニットは無理でも、

それ以外のシステムは、直してから運ぶこともできたのだが、

軍を騙すのにそれはまずい。

それに、レイナちゃんと俺でいじっているより、

ウリバタケさんやルリちゃんに頼んだ方が、早く終わることも確かだ。

そう言うわけで修理は適当なところで中断して積み込み、

レイナちゃんと輸送機の中で少しづついじっている訳だが・・・

「位置・・・五時の方向、約七十キロ・・・」

輸送機のパイロットは律儀に続ける。

俺なら・・・"漆黒の戦神"なら、これくらい・・・とか思っているんだろう。

・・・期待には答えないといけない・・・か。

英雄としては・・・な。

「認識番号・・・ND−001・・・」

ND−001!!

「本当か?」

「は、はい・・・」

「おい・・・」

「通信は繋がるか?」

「いえ・・・」

「俺は出る!!」

「この距離で・・・ですか?」

「輸送機で戦闘空域にはいるわけにもいかんだろ、任せろ」

どうせ、それを期待してるんだろ?

(ラピス、監視衛星を急いでハッキングしてくれ!!)

(アキト?)

(いいから、映像を俺に回してくれ)

(う、うん)

ND−001

ナデシコの登録ナンバーだ。

表向きは修理なので、ナデシコに直接向かうわけにも行かず、

軍艦の位置をそのまま連絡するわけにも行かないので、

一度極東方面に向かってから改めてナデシコに向かう予定になっていたんだが・・・

そう言えば、前回も俺が合流するときに襲われてたよな。

・・・ふっ、

さっきまで乗り気じゃなかったのに、それがナデシコだとわかったとたん・・・

結局自分が・・・仲間が第一なのか。

まぁ良い、俺は、俺の正義を貫くだけだ、英雄として・・・な。

(アキト、見つけたよ)

(ああ、回してくれ)

これは・・・

間違いない、ナデシコだ。

!!

駄目だ、チューリップ十五機・・・

必要ないと判断したのか、何機かは離脱しはじめているようだが・・・

今のナデシコの戦力で勝てる相手じゃない。

これは・・・ジュン、何とかして右のバッタを・・・

無理だ、アリサちゃんがいればまだしも・・・

このままじゃ・・・

ピッ!!

「どうしたのアキトく・・・」

「レイナちゃん、

 グラビティ・ポッド、ボソン砲準備!!

 ブースターユニットを装備させて!!」





私たちは敵に囲まれてしました。

私のミスです。

私が、もう少し回りに気を使っていれば、もっと早く気がついたはずです。

私が考え事に夢中になっていたばかりに・・・

そう言えば、二回目の時も囲まれたらしいですけど、

まぁ、よほどのことがない限り、機動戦艦で、

包囲殲滅戦に持ち込まれることなど、ありえないんですが・・・

たとえば、火星の時のような無茶な突入を強行しただとか、

今のように索敵をすべき人が注意散漫だったとか・・・

・・・やめましょう、虚しくなるだけですし、

それに、今はそれどころじゃ有りません。

「敵・・・チューリップ十五機、戦艦百二十」

これは・・・きついですね・・・

もしかしたら、マークされていたのかも知れません。

木連の人たちはそういう事は嫌いそうですし、

ナデシコのレーダーより索敵範囲が広いレーダーなど、もっていなさそうですが・・・

「メグちゃん、救難信号発信、

 ルリちゃん、ディストーション・フィールド、出力最大。

 その後、最低出力でグラビティ・ブラストを広域発射、

 連続発射で、敵を牽制します」

「グラビティ・ブラスト、発射します」

「エステバリス隊発進します」

「ルリちゃん、敵の一番薄いところを表示、

 ミナトさん、一点突破でこの場を脱出します」

ユリカさんの意見は正しいですね。

でも・・・チューリップ十五機・・・

アキトさんがいれば別ですが、かなりきついですよね・・・

その気になれば、ジャンプできてもらうこともできるかもしれませんが、

ジャンプ技術は・・・

ネルガルはともかく、まだ連合や木連には見せたくありませんし・・・

それに、ブラックサレナはまだ・・・

特にジャンプフィールド発生装置が満足に動くとは思えませんしね。

「ディストーション・フィールド出力低下、現在五十三%」

「エネルギーはディストーション・フィールドを最優先」

「敵、なおも増大中、現在戦艦だけでも約二百」

「敵さんが周り中にいるけど、次どっち行けば良いの?」

さて・・・困りましたね・・・

「右舷よりバッタの一隊が接近」

「九時の方向がもっとも手薄です」

「ジュンさんより連絡、ミサイルを・・・」

「敵、戦艦前方より・・・」

「ミナトさん、前方のチューリップを狙える位置を維持、

 ほかは任せます。

 ルリちゃん、グラビティ・ブラストは?」

「緊急回避するわ、

 取舵二十下舵十六に全速!!」

「グラビティ・ブラスト現在七十五%・・・

 前方のチューリップの殲滅には、射線上に敵戦艦が多数配置されているため、

 出力が最低六十五、できれば七十%ほしいですが、

 その出力で今発射すると、ディストーション・フィールドの維持に支障が出ます」

「ジュンさんのエステって、グラビティ・ブラストを撃てませんでしたっけ?」

「説明しましょ・・・」

「敵部隊、散開、

 どうやら、ナデシコを包囲するつもりのようです」

「説明しま・・・」

「敵の包囲網が完成する前に、強行突破します。

 ルリちゃん、被害が最小ですむ航路を、

 可能な限りリアルタイムで計算、

 ミナトさんのサポートをしてください!!」

「だから説明を・・・」

「後方の敵、攻撃態勢に入りました!!」

「だからね、説・・・」

「ルリちゃん、攻撃を予測、

 ミナトさん、よけてください」

「説明をす・・・」

「ミナトさん」

「説明を・・・」

「わかってるわよ」

「説明・・・」

「艦長、慣性制御が追いつきません」

「説・・・」

「総員対ショック防御!!」

「せ・・・」

グォォォォォォォ・・・

「回避成功、具体的な被害は無いようです」

「ふぅ・・・

 では説明しましょう。

 あのライフル・・・グラビティ・ライフルをチャージするには、

 エステバリスの出力では約二時間必要・・・

 つまり、一回の戦闘で、実質一回しか使えないの、

 さっき撃ってしまったから、

 もう撃てないの、

 以上、イネス フレサンジュでした(ペコリ)」

イネスさんが説明していますが、もう誰も聞いていません。

「だれも聞いてない・・・(いじいじ・・・)」

そう言って之の字を書いていますが・・・

そんなところにウインドウを開かれると邪魔です。

まったく、この人は・・・

!!っと・・・

「敵、グラビティ・ブラスト来ます」

ドゴォォォォンンン・・・

「ディストーション・フィールドなおも出力低下、このままでは突破されます」

「機関室より・・・

 ディストーション・フィールド発生装置が過負荷、

 このままでは緊急停止します」 

「ミサイルの発射を中止して・・・」

ミサイルの発射を中止すれば、発射の際フィールドを弱める必要がなくなって、

ジェネレータに余裕はできますが・・・

「しかしそれでは、迎撃が間に合いません」

「ヤマダ機被弾、中破、

 帰還するそうです」

「ならなら・・・」

「三時方向のバッタ、ナデシコに攻撃を開始します」

「メグちゃん、ジュン君に連絡、右舷のバッタを・・・」

「解りました。

 ナデシコより・・・」

「ルリちゃん、格納庫以外の場所の慣性制御レベルを最低まで落として、

 そのほか不要と判断したシステムは、

 ルリちゃんの判断で、出力を低下、もしくは停止させてかまいません。

 その後余剰エネルギーを使ってグラビティ・ブラストを高速チャージ!!

 メグちゃん、全艦に今のを伝えて!!」

「え、ア、はい、全艦非常・・・」

「しかし・・・はい、わかりました」

仕方ありませんね・・・

せめてアキトさんがいれば・・・

アキトさんなら、一人で倒せるのですが・・・

「ユリカ、ごめん、

 右舷のバッタまで手が回らない、そっちで何とかできないか?」

「降下するわよ!!」

「対ショック防御!!

 ええ〜ぇ・・・

 ルリちゃん、状況は?」

「現在緊急出力モードを使用して、

 ディストーション・フィールド出力四十三%、

 また、ディストーション・フィールド発生装置に過負荷がかかっていて、

 このままではあと数分で機関が爆発します。

 出力を二十%前後に落とせば・・・」

「整備班より、ヤマダ機の修理には十分前後かかるそうです」

「ディストーション・フィールドの出力は落とせません」

「はい。

 ただ、慣性制御のエネルギーと、

 ディストーション・フィールドの出力が落ちた分のエネルギーを、

 グラビティ・ブラストに回せましたので、

 現在充電率八十七%です。

 この位置からでは・・・先ほどより、位置が悪いので、

 チューリップの撃破には、やや出力不足ですが、

 チューリップを避けて敵の一角を崩すぐらいなら、可能です」

「なら・・・」

「あとミナトさん、

 回避する時は、可能な限り上空へ逃げてください」

「うーん・・・でも、降下するほうが、足が速いのよね・・・」

まぁ、重力がある以上そうでしょうが・・・

「とりあえずグラビティ・ブラスト、出力理論値プラス二%で右舷のバッタを殲滅後、

 チューリップを撃破可能なレベルまで、チャージを続け・・・」

「艦長、通信が入りました、

 え、えっと・・・ノイズがひどくて・・・

 救援にきてくれるそうですが・・・

 所属は・・・あれ?

 通信、途絶えました。」

「グラビティ・ブラストやディストーション・フィールド等の影響で、

 通信状況が著しく悪化しています。

 これでは、長距離通信は難しいですね」

いつの間にか、フィリスさんがサブオペレータ席に座っています・・・

それにしても・・・

途中で切れてしまいましたか・・・

「方向は?」

「短時間、しかも高速機動中でしたので、割り出しは難しいと思います。

 一応計算して見ますが・・・」

いつ、どこから来るかわからないのでは、作戦の立てようが・・・

「なら結構です、その救援が来るまで、最大何分ほどかかると推測できますか?」

「この空間状態で、しばらくでも通信が通じたのですから、

 相手の通信機の性能にもよりますが、

 百キロは離れていないと思いますが・・・」

「では、とにかく現状を維持、

 当初の予定通り三時方向のバッタを殲滅、

 救援を確認し次第、そちらの方向へ全速。

 三十分で結構です、持たせてください」

「なんで三十分なんですか?」

メグミさん、疑問はもっともですが、今はそんな暇・・・

「説明しましょう!!

 このナデシコは、ネルガルの所属で、

 軍には厄介物扱いされています。

 かつ、その任務達成率には一切の不備なく、

 ナデシコ、ひいてはネルガルの名声はうなぎのぼり、

 しかも、特にこれと言って問題行動も起こしていないため、

 軍としては強硬手段に訴えることもできない・・・

 早い話が、軍はネルガルに恩を売りたがってるって訳。

 仮に百キロはなれていても、高速の駆逐艦なら、二十分弱、

 戦闘機なら、一分もかからずに着く距離よ。

 まぁ、無茶と言えば無茶だけど、是が非でも恩を売りたい軍が、

 この機会を逃すとは思えないわ。

 そもそも・・・」

・・・いつの間に復活したんですか?

まぁ良いですけど・・・

さて、それより・・・

「フィリスさん、通信・索敵系統を頼みます」

「ルリさん?」

「大丈夫です、私はディストーション・フィールドの微調整をして、

 なるべく早くグラビティ・ブラストのチャージができるようにします」

レーダーに注意してさえいれば、

無駄な出力でディストーション・フィールドを張る必要がなくなる・・・

要は、敵が来るときにだけ張れば良いんです。

もちろん光速で進む重力子を使ったグラビティ・ブラストを

同じく光速で進むレーダー波で捕らえてから防御したのでは、間に合いませんが・・・

注意していれば、発射するタイミングはわかります。

電子の妖精を甘く見ないでください。

実際の所は、相転移炉の出力を上げた方が、

かなりのエネルギーが望めるのですが、

ナデシコAでは、制御できませんよね・・・

ナデシコAとB、大きな違いは主にそこで、

相転移炉や、ディストーション・フィールド発生装置自体の性能は、

あまり違いがないのですが・・・

もちろん、正式な戦艦だけあって、アルゴリズムは煮詰められていて、

ナデシコAのように、設計上のミスとしか言えないような場所はなくなっていますけ ど。

私としても、あっちの方がやりやすいのですが、

ナデシコAで、そこまでやるには、

フルコンタクト状態でなくては無理ですし、

またあれをやるわけにはいきませんが・・・

基本的にはハードの増設と、新しいプログラムのインストールだけですみますから、

今度改造してもらいましょうか?

「三時の方向に、ボース粒子反応」

ボース粒子!!まさか・・・

私がその方向を見ると、

光の中から真紅の球体が現れ、次の瞬間・・・

ゴォォォォォォォォォーーーーー

「三時の方向にエネルギー反応・・・グラビティ・ブラストです。

 右舷のバッタ部隊、殲滅を確認」

「被害状況、直ちに確認、

 ミナトさん、三時方向へ・・・」

「待ってください、先ほどの援軍にしては、到着が早すぎます、

 この時間で到着できる程度の距離でしたら、通信が途切れるとは・・・」

「先ほどのグラビティ・ブラストによるナデシコ本体への具体的ダメージはありませ ん」

「エステバリス隊より、先ほどの攻撃によるダメージは無し、

 事態の説明を求めています」

「で、艦長、三時方向へ行くの?行かないの?」

「あ、はい、命令撤回、

 可能な限り現状を維持、

 進路は、ミナトさんの判断に任せます」

「発射地点の特定・・・」

「どうしたんですか?」

「い、いえ・・・発射地点、先ほどボース粒子反応があったところです。

 そこから方向無指定で、放射状に発射されています」

フィリスさんがどもりながら答えます。

なるほど、あれ・・・ですか。





「アキト君、言われた通り一応準備したけど・・・

 一体これ・・・」

「詳しくは後で話す」

(ラピス、さっきの映像を、もう一度まわしてくれ)

(うん)

「・・・イメージング・・・ジャンプ」

ビュゥゥゥゥゥゥ・・・・・・・・・

ビシュン!!

(ラピス!!)

(うん、被害はないみたい)

(そうか)

「テンカワ アキト・・・出る!!」

ふう・・・グラビティ・ポッドと速射式・ボソン砲・・・

ボソン砲のほうは、

A級ジャンパー専用・・・座標特定機関を排除する事で、

かなりの速射性と、ピンポイント攻撃を可能としたけど、

欠点は、かなりのジャンプ経験のあるA級ジャンパーしか使えない・・・

ま、これは仕方が無いか・・・

元々リレーフェザーとかを戦闘空域にばら撒いて、

空間状況の確認や、エネルギー供給フィールドの整備等、

その空域での戦闘を有利にするための、

広域空間支配を行うための道具だからな。

フェザーを使えるほどの機体を、一般兵向けに作るわけにもいかんしな。

グラビティ・ポッドのほうは・・・

高出力のディストーション・フィールドで作った球体に、

グラビティ・ブラストを封じ込める事で、

ディストーション・フィールドを解除すれば、

その場所を中心に方向無指定のグラビティ・ブラストを撃てるという物だが、

欠点はチャージしている最中は、ほとんど何もできない・・・

エンジン出力は十%、ディストーション・フィールドは、張る事すらできない・・・

チャージが終わったあとも、発射するまではディストーション・フィールドの出力は 当然落ちるし・・・

専用の機材がないと、チャージにもやたらと時間がかかるし・・・

それに、出力もバッタやジョロぐらいなら破壊できるけど、

戦艦相手ではちょっと役者不足・・・

今の所、先制攻撃でバッタを破壊するぐらいしかできない・・・

ま、これはフェザーなんかを利用するとか、

もう少し出力を上げるとかすれば何とかなるし・・・

それに、ルリちゃんならこれの微調整用のサポートプログラムを作れるだろうから、

そうすればもう少し性能が上がるか・・・

元々、グラビティ・ブラストを、カートリッジ式にして、

複数の同時チャージや、今までのように逐一、

ためたエネルギーを重力子に変換・収束させてチャージ、

と言う無駄を排除して、直接"グラビティ・ブラスト"をためることで、

出力と速射性の両方を上げるという、冗談のような計画のテストシステムだから、

使い勝手が悪いのは、はじめからわかっていたしな。

機材も今はエステに積み込めないが、

イネスさんとウリバタケさんならまだ小型化ができるはずだし、

システムさえ完成すれば、戦闘中にチャージする意味はなにもない。

完成すれば、

"機体の出力に関係なく使用可能で、

 ナデシコクラスの出力のグラビティ・ブラストを連射可能な、グラビティ・ライフル "

ができる・・・らしい。

まぁ・・・良いけどね、別に。

止めても無駄だろうし、それに・・・

切り札は、多いに越したことはないからな。

「さて・・・漆黒の戦神、テンカワ アキトの"初陣"だ・・・

 テンカワ アキト、ブラック・サレナB・・・

 いくぞ!!」





「これは・・・」

「あんな攻撃ができるのは・・・」

「彼しかいないわよね」

「ボース粒子・・・」

「アキト・・・」

「しかし・・・」

「ウム・・・」

「な、何よ、あれ・・・」

「おお、新兵器、新兵器だな」

「また良い場面を持っていったね」

「ふふふふふふ・・・」

「アキト君がくれば安心だね」

「テンカワに、俺たちの成長を見せてやろうぜ!!

 いくぞ!!」

「おお、その話乗ったぜ、アキトに俺様の実力を見せてやる」

「リョーコさん、ヤマダ、先行しすぎだ!!戻れ!!」

「俺の名前はダイゴウジ ガイだ!!」

それぞれその人らしい感想を言います。

「三時の方向、超遠距離より高速で接近してくる物体があります。

 距離、六千四百・二百二十・五千九百八十・・・さらに加速」

「ミナトさん、三時方向に回頭後全速前進!!」

「了解」

「ルリちゃん、回頭終了と同時にグラビティ・ブラストを発射。

 出力、収束率は任せます」

「はい」

「高速で接近してくる物体から超高エネルギー反応!!」

「ミナトさん、いったんナデシコをこの場に停止!!

 メグちゃん、ジュン君に連絡、エステバリス隊は、直ちにその位置に待機、

 ディストーション・フィールド全開にするように伝えてください!!

 ルリちゃん、ナデシコもディストーション・フィールド全開!!

 この際ディストーション・フィールド発生装置が壊れてもかまいません!!

 あと慣性制御を出力最大、エネルギーが不足しているようであれば、

 グラビティ・ブラスト用のエネルギーも使ってかまいません!!

 フィリスさんは、高エネルギー体に私たちの具体的な場所を伝えてください!!」   

「オッケー」

「了解」

「はい」

「解りました」

・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・

「高エネルギー体の収束を確認・・・

 推定ではあと七秒後に発射、到達します。

 四・三・二・一・・・

 来ます!!」

ドゴゴゴゴゴゴゴオオオオォォォォォォォォォォォォォォンンンンンン!!!!





第五十三話に続く





あとがき

ナデシコは一応いつもの調子を取り戻したようです。

ユリカも元気ですし・・・

まぁ、ネルガル組の方々は、ほとんど出てきませんでしたから、

(一言づつしかしゃべってませんからね・・・)

実際のところどうかは、保証の限りではありませんが・・・



しかし・・・ユリカの立てる、奇抜な作戦・・・

なかなか思いつきませんね・・・

原作においては、どちらかというと、

エステバリスより、ナデシコ本体のほうが重要視されているのに対して、

ナデシコのSSでは、「時の流れに」や、この話もそうですが、

なぜかエステバリス隊のほうが活躍している事が多い・・・

ナデシコ自体の活躍は、ユリカの作戦によるものが大きいですし、

ユリカは天才ですから、

彼女の立てる奇抜な作戦は・・・

その点エステバリス隊のほうは動きが読みやすい・・・

まぁ、アキト君が主人公で、彼がエステバリスライダーなせいもあるでしょうが・・・



ナデシコと言う戦艦自体が、巨艦・巨砲主義の産物だからともいえるのかも知れませ んが、

それにしては、その後も戦艦は重視されつづけていますし・・・

私的には、劇場版の時点ではともかくも、

あのような事件があった以上、

軍はブラックサレナをモデルに、次世代機を製作させるでしょうから、

"ブラック・サレナ級の機動兵器の製造"は、急務とされるはずです。

そうなると"戦艦"は余り作られず、空母が重視されると思うのですが・・・

"前例"もありますし、"役所"も意外に早く反応しそうですが・・・

まぁ、それはTV版ではナデシコが活躍したからとも言えるのですが、

「時の流れに」の世界でも、少なくとも、ネルガルとクリムゾン・グループは、

準・ブラック・サレナ級の機動兵器を作る技術を持っているでしょうし、

"軍"は、当然ですがそれを要請しなければなりません。

これはむしろ義務です。

まぁ、ネルガルもクリムゾン・グループも、

二つ返事で作りはしないでしょうし、

劇場版アフターより、ほかの企業の技術レベルは下でしょうが、

いつまでも技術を隠匿できるものでは有りませんし、

TV版で、ウリバタケさんが不完全ながらグラビティ・ブラストを打てる機動兵器を作っていましたし、

具体的な目標が、明確になった以上、

戦争終結後一〜二年のうちに、そのレベルの機動兵器は当然の物となる・・・と思うの ですが、

でも、「時の流れに」ではナデシコBやC、

ユーチャリスなどの建造に力を入れているようですし、

どうやら違うようですね・・・

私に何か見落としがあるのでしょうか?

まぁ、ルリ君たちがただ思い入れがあるから作ってほしいと、

脅迫したと言うのが、一番ありそうですが・・・



さて・・・シュン隊長(と言うより、西欧の人々)は、ユリカをどう判断するでしょうか ・・・

普通の人(あえて軍人とは言いません)から見れば、ユリカはただの"馬鹿"ですから ・・・

まさに紙一重の人ですからね・・・彼女は。



ついでに、デフォルトで壊れている西欧の人々の影響で、

ナデシコ内のパワーバランスはどう変わるか・・・ですね。

まぁ、「時の流れに」では、この時点でナデシコの人々が壊れていたので、

西欧の人がデフォルトで壊れているのは、

バランスを保つためには当然と言えるため、

然も有らんと納得できたのですが、

別にこの話の方々は、壊れてはいませんし・・・

しかし・・・壊れたキャラの心情が、いまいち良くわからないので、

そのキャラになりきらなければ、話を書くことができない私には、

如何ともしがたいのですが・・・

まぁ、壊さずに延々書くのは、大変なので、

すぐ壊したがる方の、気持ちはわからないでもないのですが・・・

得にルリ君・・・壊さないでいると、話が進まないというかなんと言うか・・・

私はああいう雰囲気好きですし書くのも好きで、書きやすい流れだと思いますけどね ?



ちなみに、そのせいでメグミちゃんは出番が余りありません。

ついでにラピスも・・・

彼女達の思考回路が、今ひとつピンとこない・・・

まぁ、無理に書いて変なキャラにするよりは、

いっそのこと書かないほうが、身のためかな?と・・・

書けない事は、書かない主義ですので・・・

期待している方がいましたら、この場を借りて謝らせて頂きます。

すいません。



しかし、戦闘シーンは難しい・・・

ところで、「時の流れに」第十三話で、

なぜチューリップは、攻撃を持続させないのでしょう?

手持ちの兵力は、事実上無限大なのですから、

チューリップを撃破されない限り、攻撃が中断するとは思えないのですが・・・

もちろん、チューリップが撃破されたとか、

敵を足止めできたと判断したのでしたら、

第二陣は、確実に敵戦力を撃破できる戦力を整えてから、

戦闘を開始するのも、正しいでしょうが、

そうでない場合、少しでも攻撃を続けるべきでしょう。

無人兵器は使い捨てで、有人機のように、

時間をかけても、戦力が回復するわけではないのですから、

敵に休む暇を与えるなど、愚の骨頂でしょう。

まぁ、ご都合主義なのでしょうが・・・

私は、ご都合主義は認めます。

どのようなタイプの話であろうと、

よりにもよってこのタイミングでこの人と出くわすか? と言う話の流れも、アリで しょう。

しかし、シリアスな話である以上、

心理描写やマニュアル行動しかできない無人兵器の行動パターンに、

ご都合主義を持ち込んでは、話にならないと思うのですが・・・

逆に、ギャグであれば、

何がどうなろうと、面白ければアリでしょうが・・・





追記

―"護る"と言う事について―

護るという行為自体を否定しているわけではありません。

"護る"と言うことを、究極目的としていることを否定しているのです。

民間人を護る軍人にとって、

その戦闘の戦術レベルでの目的が、

"民間人を護ること"であるという事態はありえるでしょうが、

戦略レベルで見た場合の目的ではないのです。

もちろん"民間人を見殺しにすること"は、

軍人の存在意義に反するでしょうし、

逆に"自国の民間人を見殺しにしないこと"は究極目標と言っても良いかもしれません が、

逆は必ずしも真ならず、

自国の民間人を護るためなら何でもして良い訳がありません。

究極目的を達成するためには、"自国の民間人を可能な限り護る"と言うことは、

必要不可欠な条件であるべきですが、

あくまでも、"究極目的から派生した目的"です。

"護る"と言うことは、手段や、副次的な目的にはなりえても、

究極目的にはなりえない・・・と言うか、

してはいけないと言うことが言いたいのです。

目的と手段を取り違えているわけで、

それを肯定すると、とんでもないことになります。

しかし、「時の流れに」のアキト君は、どう好意的に考えても、

ルリ君たちを護るためであれば、何でもしそうです。

草壁中将の考えと比べて、発想の元となる考え方こそややレベルが高いものの、

その行動は、草壁中将と同じか、それ以下と言うわけです。

まぁ、"目的と手段を取り違える"ことは、

アキト君の十八番ですから、当然ともいえるのですが・・・



さらに、軍と民間人と言う、

大きな組織と大きな集団の関係を、

そのまま個人と一戦艦のクルーと言う、きわめて小さな集団に、

そのままあてはめるのはきわめて危険ですし、おかしいと思います。

軍は、軍と言う巨大な、一種超法規的な組織であるからこそ、

認められる権利と、認められない権利、

負うべき義務と、免除される義務があるのであって、

アキト君と言う"個人"とは、根本的に違う存在なのです。

比べること自体が、間違っているのではないでしょうか?

 

代理人の感想

ん〜、空母戦術と言うのは「艦載機に戦艦を落とせる攻撃力がある」ことが大前提になります。

そして、ブラックサレナは(少なくとも劇場版に登場したバージョンは)

決して火力・攻撃力に優れた機体ではありません。

サレナの最大の武器は機動性と耐久力、そしてアキトのA級ジャンパーとしての能力なのです。

なにせサレナの敵として予想されていたのは戦艦やコロニーではなく、夜天光&六連ですから。

 

後、基本的にエース用カスタム機であるサレナを揃えても

使いこなせる人間がどれだけいるかと言うこと、

またコストパフォーマンスが割に合うかと言うことが問題として上げられます。

例えて言うならアルストロメリアがF-22ラプター(最新鋭戦闘機)で

サレナがB-2ステルス爆撃機(黒いブーメランみたいなアレ。一機2000億円以上)とか、

そういったレベルなんじゃなかろうかと思いますね(笑)。