「さて・・・

 ミスター、早速だが裏を取ってくれ」

「はい、では早速・・・」

「ちょっとまってよ、何であんな・・・」





ブロスとディアの正しいアキト君の育て方
 第五十六話 芍薬





「どうやら不満があるみたいだけど、

 じゃああの時どうしたらよかったんだい?」

「それは・・・

 でも、何もせずに相手の言う事を聞くだけなんて弱腰すぎよ、

 なんで・・・」

「ふぅ・・・

 どうやらわかっていないみたいだね、

 元来交渉とは、あああるべきだよ。

 うちも見習いたいねぇ」

「どう言うことよ!!」

「そうだね、あれを交渉だと思うからわかりにくいんだ、

 交渉とは、武力を使わない戦争だ。

 相手の戦力、戦術を読み、相手の弱いところをついて、

 自分に都合のいい形で休戦する・・・

 そうだろ?」

「・・・まぁ、そう言えないこともないでしょうね」

「戦争の正攻法とは、正面からの突撃だ。

 何も考えず、ただ正面から攻撃を仕掛ける戦法だ」

「それじゃ・・・」

「あくまで、戦略的には、だよ。

 戦略的には、それが理想・・・それでも勝てる状況が理想だって事さ。

 戦術的には、愚策だけどね?

 もちろん普通はそれじゃ勝てない、

 仮に勝てても被害が大きすぎる。

 だからそれで勝てるように、被害があまりでないように、

 兵隊の数をそろえ、道具をそろえ、兵士の技量を上げる、

 一気に敵の隊列を崩せるような切り札も用意する。

 それが基本だろう?

 どんなに工夫しても、ナイフ一本じゃエステバリスに勝てないんだよ。

 圧倒的な力を持つ軍に作戦なんて必要ない、

 むしろ、作戦を使わずにすむ軍を作れるか否かと言うのが、

 それ以前のレベルでの戦いだろう?」

「それとこれとどういう関係が・・・」

「交渉も同じだよ、

 下手な小細工を必要とせず、

 ストレートに要請・・・つまり正面からの突撃ができて、

 相手の反論を封じるだけの交換条件・・・つまり切り札を持っているのなら、

 僕としてはどうしようもない。

 それだけの戦力差が有る以上、相手の力を使わせないようにする以外に勝機はないけど、

 彼は切り札を惜しまずにきってきた。

 なら下手に逃げて被害を増やすよりは、速やかに降伏するべきじゃないのかい?」

「・・・でも」

「あれだけの準備があるんだ、何をやっても正面から叩き潰されるよ、

 それに・・・得る物はちゃんとあった、

 僕としては満足だよ、

 双方に利益があったのに、これ以上何を望むんだい?」

「でも・・・

 どう考えたって、あんな・・・」

「憎まれっ子世に憚る・・・

 多少あくどい方が、味方としては心強いんじゃない?」



「あ、おはよう、ルリルリ」

「おはようございます、

 今日は早いんですね、ミナトさん」

昨日のことが気になって、

いつもより早くブリッジに来て待っていると、

時間通りにルリルリが入ってきた。

「あら、私だって、たまには早起きするわよ」

「たまには・・・ですか?」

「ルリルリィ〜?」

昨日とは打って変わって、落ち着いた様子のルリルリに、

私は少し突っ込んだ質問をする事にした。

「で、ルリルリ、

 昨日何があったの?」

「・・・・・・・・・・・・

 ただの決断・・・です。

 要するに、するべき事は決まっていたんです。

 それが消化できるかどうかと言うだけで・・・」

「決断?」

「何かを守るために、手に入れるために、

 他の何かを犠牲にする・・・

 それでは・・・

 そう言うことです」

「まだまだ若いわねぇ」

「私、少女ですから」

「そう言うこと言っている訳じゃないわよ。

 そう言う潔癖症なところが、"若い"って言ってるの。

 もっとも、当事者じゃないから言えることかもしれないけど・・・」

「ちょっと違います、

 そうですね・・・

 昔知り合いが言った台詞なんですが、

 本当の居場所は人から与えてもらうものじゃなく、自分自身でつかみ取るもの・・・

 だそうです」

「ふーん、いい言葉ね、

 で、続きは?」

「でも・・・ですね。

 本当の居場所だから、

 自分自身でつかみとったものだから・・・

 だからこそ、失いたくないんですよ」

「だから決断?」

「ハイ。

 思い出は思い出、

 過去を彩るものでしかなく、

 未来を約束する物ではありません。

 でも、だからと言って割り切れるものでもないですから」



「そう言えば・・・

 白鳥さんたちをどうするつもりなのか聞いていませんけど、

 やっぱりジャンプするんですか?」

「それについては、俺がどうするつもりか・・・でなく、

 どうなる予定か・・・を知ってるんじゃない?」

「・・・?

 どういう意味です?」

例によってルリちゃんとこれからの事について話し合っていると、

ルリちゃんがそんな質問をして来た。

「昨日月で謎の大爆発が起こっただろう?」

「ええ、ですがそれと何の関係が・・・?」

「あの爆発は本来ヨコスカで起きるはずの物だったんだ」

「・・・あっ!

 なるほど・・・

 あの爆発は、月臣さんのジンタイプの相転移炉が暴走したせいだったんですか・・・

 そう言えば時期もあいますね・・・」

「・・・話してなかったっけ?」

「ええ」

「そうか・・・

 話した・・・と思ったけど・・・」

「すいません、勉強不足で・・・」

「別に怒ってる訳じゃないよ」

「で・・・ジャンプはするんですね?」

「らしいな。

 二回目の時は、どうやら月臣は二週間前に跳ばされたらしいけど、俺は違った。

 今回も、月臣はうまくジャンプしたらしいが・・・

 元々時間を超えるジャンプは、あまりに不確定要素が多すぎる。

 時間のイメージは・・・

 ジャンプミスが怖くて実験もできないから、実例が余りに少なすぎるし・・・

 かといって、ジャンプしないのも・・・

 月臣の機体も大破させてみても面白いとは思うけど・・・

 いずれにしろ何らかの理由でジャンプする事になるらしい」

「・・・大丈夫なんですか?」

「それは遺跡に聞いてくれ。

 いずれにしろ、しなくてはならなくなる・・・

 自爆する前に決着をつける事はできないらしい。

 それがわかっているだけでも、だいぶ違うから、

 それだけでも良かったと思うしかないよ。

 まぁ、月臣とも話したいし・・・

 北斗の件も何とかしないといけない。

 月で俺と白鳥さんたちが戦っている間に、

 北斗が艦隊を全滅させてシャクヤクを強奪するのは話しただろ?

 俺としては・・・少なくとも"漆黒の戦神"としては、

 艦隊が全滅するのを、黙ってみているわけには行かない。

 まぁ、この間までだったら、悩まずに黙認したんだろうけどな・・・

 クロッカスやパンジーみたいに・・・

 ナデシコクルーが、二回目より幸せなら、それ以外の人は全て生け贄にささげても・・・

 とかいってね?」

「その選択は、必ずしも間違ってはいないと思いますよ?

 ―自分の仲間、仲間の関係者を優先的に助けることがそんなに悪いことなのか―

 と言ったのは、アキトさんですよ?

 もちろん、犠牲にされた人には違う言い分もあるでしょうが・・・

 それはそれで、人間として正しい選択だと思います。

 ・・・それと、Yユニットはナデシコにつけてもらえるように頼みましたから、

 前回より早く動けるでしょうし・・・」

「そうだね、まぁ、それでよしとするしかないか・・・

 で・・・シャクヤクはどうするかな・・・

 やっぱり、"漆黒の戦神"としては、

 むざむざ最新型戦艦を奪われるのを見過ごすわけにはいかないが・・・

 となると・・・シャクヤクはどうするか・・・

 先手を打つ以上、そう都合よく破壊してくれるとは思えないしな」

「そうですね・・・

 でも、火星に行く話を中止にした上、Yユニットすらないのでは、

 シャクヤク自体意味がないでしょう?

 ナデシコB・・・は難しいでしょうから、

 単独ジャンプが可能な戦艦に改造するかもしれませんね」

「・・・ユーチャリスみたいなものか?」

「はい、実はアキトさんがいない間にプロスさんが来て、

 ウリバタケさんに頼んだジャンプフィールド発生装置の設計図について質問されました。

 あれを手に入れたのでしたら、技術的には可能でしょう。

 あのジャンプフィールド発生装置の設計図があれば、

 イネスさんなら、戦艦を包む規模のフィールドを発生させられるように改造できるでしょう。

 どちらも、構造に差は無いはずですからね」 

「ジャンパーはどうするんだ?」

「ネルガルは、火星での活動が盛んでしたが、

 盛んだったが故に、火星出身者はほとんど火星に取り残されてしまってますから・・・

 わざわざ地球に呼ぶほどの人は、結構偉い人でしょうし・・・

 ジャンパーの不足を理由に計画を凍結する可能性もありますが・・・

 方法が無いわけじゃありません。

 ユーチャリス・・・本来のナデシコC先行試作戦艦には、

 その当たりの実験戦艦的な意味合いも有ったのだと思いますし・・・

 元々、ワンマンオペレーションシップの実験艦はナデシコBです。

 同じシステムの実験艦をもう一つ造る・・・

 しかも、ほぼ完成している物を造るのは不自然ですから、

 本来ユーチャリスは、"単独ジャンプの可能な戦艦"の実験艦だったのだと思います。

 もっとも、ユーチャリスをアキトさんの旗艦に改造することになったので、

 ワンマンオペレーションシップに改造し、

 アキトさんと言うA級ジャンパーが乗り込むのなら、

 アキトさんがナビゲートすれば良いのですから、

 ただの"単独ジャンプのためのジャンプフィールド発生装置の実験艦"

 になってしまったわけですが・・・

 "超大規模イメージサポートによる擬似A級ジャンプ"

 に関するデータは渡していませんが、

 渡したデータからでもイネスさんなら思い付くでしょうから・・・」

「"超大規模イメージサポートによる擬似A級ジャンプ"?」

「ええ、私たちがアキトさんを追いかけた方法です」

「・・・何か特殊な手段を使ってたの?」

「・・・使っていたに決まっているじゃありませんか。

 確かにジャンパーの数ではユーチャリスの二人に対して、

 ナデシコCは三人でしたから、勝っていました。

 ジャンプ経験も、おそらくハーリー君と、ラピスは同じぐらい・・・

 もしかしたらラピスが上だったかもしれませんが、

 私はラピスよりは経験豊富でしょうし、

 三郎太さんはさらに上を行っていたはずです。

 でも、三郎太さんに関してもアキトさんほど経験があったわけではありませんし、

 ましてアキトさんはA級ジャンパーですよ?

 B級ジャンパーでは基本的にピンポイントジャンプは不可能です。

 結局、一人当たりの負担の少なさぐらいしか有利な点はないんですが、

 それに関しても、精神リンクしているアキトさんたちが相手では微妙です。

 わかっているとは思いますが、精神リンクをしているということは、

 完全なイメージの同調が可能と言うことです。

 普通に二人でイメージするのに比べ、

 格段に負担が少ないであろうことは間違いありません。

 まぁ、どちらの負担がより少ないかは計算することも測定することもできませんが、

 普通の方法では、絶対に追いつけないんです」

「・・・ごめん」

「かまいませんよ、アキトさんの気持ちはもうわかっていますから。

 話を戻しますが、B級ジャンパーはA級ジャンパーには遠く及びません。

 これを何とかしようと、火星の後継者はあの事件を起こしました。

 でも、同じ事はネルガルも考えていたんです」

「ネルガルも・・・か。まぁ、当然だな。

 俺個人としては気にいらないが、企業としてはその研究自体はむしろ義務だろう」

「はい、アキトさんが気にいらないから助かったんです。

 ラピスがこのことを知っていたら、まず間違いなく追いつけなかったでしょうから・・・

 おそらく、アキトさんがそう考えているから、ラピスにその事を教えられなかったのだと思います。

 始めに言っておきますが、ネルガルは非人道的な研究は行っていませんよ。

 ネルガルは、B級ジャンパーのA級化と言う手段を取った火星の後継者と違い、

 B級ジャンパーをA級化するのは難しい上、倫理的にも問題があるので、

 人ではなく補助システムを改良しようとしたんです。

 B級ジャンパーは機械的な補佐がなくてはジャンプできません。

 言い換えれば、機械的な補佐があればジャンプできるんです。

 それなら高性能のコンピュータによる、十分な補佐があれば、

 A級ジャンパーとそう変わらないナビゲート能力が手に入るのではないか?

 そう考えたわけです。

 ユーチャリスが使えなくなりましたが、実験自体は続いていたようで、

 ネルガルは、ジャンプ補助施設なども保有していました。

 幸いネルガルはオモイカネ級コンピュータと言う、

 この上ないハードを持っていましたから、

 マシンチャイルドである私がアキトさんと比べて、

 あまり遜色ないレベルでジャンプできるようになるまで研究するのには、

 あまり時間はかかりませんでした。

 もっとも、ナビゲートとオペレートを同時に行う私自身の負担は、

 馬鹿にならないレベルになってしまったのですが・・・

 今の私ならナデシコCがあれば、さすがにアキトさんにはかないませんが、

 その辺りのA級ジャンパー以上のナビゲートをして見せますよ?

 もしあの時、ユーチャリスに乗っていたのがアキトさん一人だったら、

 三郎太さんたちの補佐があれば絶対に捕まえられた自信があります」

「でも、シャクヤクはナデシコCなみのコンピュータを搭載しているわけじゃないし、

 ルリちゃん並に情報処理能力がある人は・・・

 始めの時にカキツバタに乗ったけど、

 オペレータが、何人もいた。

 あの人数いないと、ルリちゃん並のオペレートが出来ないんだろう?

 まぁ、あの時はジャンプのデータ採取の意味合いもあったのかもしれないけど・・・

 それにジャンプには経験も重要だ。

 でも、そんな人がいるわけないし、

 今のネルガルには無理なんじゃ・・・」

「そうですね・・・

 でも、ジャンプできることをうりにするのであれば、

 ディストーション・フィールドの出力こそ相当レベル必要ですが、

 攻撃力と機動性はそんなに高くなくても良いわけですから、

 スペースはナデシコCよりかなり広く取ることができます。

 また、何もアキトさん並を目指さなくてもいいわけですから、

 機材もそんなに大型化しないでしょう。

 要するにジャンプフィールド発生装置と、

 オモイカネ級コンピュータを連動させてあれば良いんですから・・・

 私たちが持ち込んだ技術の中にも、参考にできるものもあるかもしれませんし・・・

 それらを使って、思い切ってシャクヤク本体ごと改造して・・・

 オペレートの精度と、ジャンパーの数次第では近くてイメージしやすい場所へ・・・

 たとえば、目視できる範囲で、目印のある場所へなら、

 ほとんどピンポイントでジャンプができる艦ができるかもしれません。

 ジャンプフィールド発生装置の出力自体は十分ですから・・・

 いずれにしろ、少なくとも木連軍よりは確実に高レベルなナビゲートができますよ」

「それはそうだろうが・・・

 何か使い道はあるのか、それは・・・」

「そうですね・・・

 でも、いずれにしろこの戦争中に物になるとは思えませんし、

 大体木連との和平がすめば、ジャンプ技術は一般に公開されざるを得ません。

 ネルガルがジャンプ関連で大きなシェアを持っていれば、

 クリムゾンも、ヒサゴプランを立て難いでしょう?

 それこそ、ネルガルがヒサゴプランを推進してもいいわけです。

 ジャンプターミナルのコロニーをネルガルが造るとなると、

 火星の後継者も相当やりにくくなると思いますよ?」

「それじゃ、問題を先送りするだけで、何の解決にもならないよ」

「火星の後継者の思想を一掃する事はできませんし、

 またするべきではないと思います。

 例えどんな思想でも、存在自体を否定するのは戴けません。

 なら、相手にアドバンテージが傾かないようにするのは、

 当然の選択だと思いますけど?」

「結局、力には力を持ってするしかないのか、

 ジャンプ技術でテロを企む奴を抑えるために、

 同種のより強い力を持ってする・・・

 二十世紀後半から、何一つ変わっていない・・・」

「違いますよ。

 少なくとも、英雄はそう見るべきじゃありませんね。

 仲間を、他人を、人間と言う種を信じること、

 英雄である以上、性善説で生きていくべきですよ」

「解っているよ。

 それに、元々俺は性善説の信者だよ。

 ただの愚痴さ、

 しかし、厳しいな、ルリちゃんは」

「アキトさんも言ったでしょう?

 ―俺には・・・俺は俺にしかできないことがある。

  だから・・・それは、君がやってくれると助かる―

 って・・・」

「それは・・・」

「決めましたから」

「でも・・・」

「決めましたから」

「・・・解った、好きにしろ」

「言われなくとも・・・」

「言えた義理じゃないが・・・頑張ってね」

「ありがとうございます」

「話を戻そう。

 さっきも言ったけど、シャクヤクを奪われるのは、ちょっと困る。

 奪われた方が、やりやすい部分もあるけど・・・

 ま、それを気にするのは、アカツキの方だ。

 その辺りはアカツキが考えるさ。

 一応どうするつもりか聞いておこう」

「そうですね」



「でも、まぁ、さっきルリちゃんも言ったように、

 Yユニットはナデシコにつけることになったから、

 前回までと比べて、いくらか早く動くことができるはずだ。

 とりあえず・・・」

「やらなければいけない事の整理ですね?

 まずは北斗の相手・・・、

 これはアキトさん以外できないでしょうが、

 言わせてもらえば、別にほっておいても問題ありません。

 別にどうしても困るわけでは・・・」

「・・・それは皮肉かい?」

「違いますよ、

 ただの自己中心的な意見です。

 アキトさんの苦手な・・・」

「別に苦手なわけじゃない、嫌いなだけだ。

 でなければ、テロリストなんか出来ないさ・・・」

「だから・・・ですよ、

 アキトさんは、アキトさんが好きで得意な道を進んでください。

 私は、アキトさんが苦手な分野をフォローします。

 私はアキトさんの補佐官ですから」

「俺と逆の道をいく・・・ね?

 大変だよ、自分のことしか考えないと言うのは・・・

 誰も理解してくれないことが多いからね・・・

 黒の王子からの忠告だ」

「それを聞いて、私が恐れをなすとでも?」

「・・・俺はそれを希望するが、

 恐れをなすとは思えないな」

「私も、その言葉を返しますよ。

 "電子の妖精"として、"英雄"は辛いものだと忠告します。

 ですから、私はアキトさんが英雄になるのを諦めてくれるのを希望しますが・・・

 ・・・諦めるとは思えませんね」

「・・・そういうことだな」

「とにかく、この一件はアキトさん以外で代用はききませんが、

 優先順位は低いです」

「自分のことしか考えていない意見だが・・・な。

 だが、さっきも言ったように、艦隊の全滅はなんとしてでも防ぎたい」

「そうですね、アキトさんはそれで良いです。

 次に、三郎太さんの件ですが・・・」

「それこそ、別に俺じゃなくても、無力化は可能だろう。

 確かにボソンジャンプは厄介だが、

 連携攻撃なら、何とか戦えるだろうし、

 ジュンも、何か対策を考えているだろう」

「そうですか?

 確かに、三郎太さんは強いですが、別にアキトさんでなくても、

 皆で戦えば倒せない相手ではないかもしれません。

 しかし、ナデシコに乗ってくれないと困るのでは・・・」

「確かに乗ってもらわないと困るが、

 向こうも、乗れなくては困るだろう。

 ほっておいても勝手に乗ってくるだろうと思うんだが・・・」

「ですが、有人部隊指令の・・・」

「舞歌さん?」

「そう、その舞歌さんの件が絡んでいきますよ?

 私たちの目的を、確実に舞歌さんに伝えるのであれば、

 やはりアキトさんが出て行った方が・・・」

「その当たりは状況とユリカ次第だな。

 どうせ、クリスマス前に木連について話すんだ。

 それを聞いて、ユリカがどう言う反応を示すか、

 迷っているようなら、俺が出ていく必要があるだろうし、

 できれば俺が出ていきたいけど、

 それが無理なら、任せよう。

 "漆黒の戦神"としては、艦隊の全滅を防ぐ方を優先したい」

「・・・そうですね。

 後は無限砲ですが・・・

 Yユニット付きのナデシコなら、一撃で突破されてしまうほどの物ではありませんし、

 連射性も低かったと思いますから、

 別にアキトさんでなくても破壊はできます。

 現に最初の時も破壊できましたしね。

 ま、優先度、重要度、共に低いですから、

 そこまで気にしないで良いんじゃないでしょうか?」

「そうだな、

 まぁ、その気になればいくらでも破壊する手段はあるだろう。

 いざと言う時は任せるよ」

「ハイ、任されます」





第五十七話に続く





あとがき

う〜む・・・

当初は、ルリ君とアキト君が技術方面の話をする話を書く予定だったのですが、

かけない、書いても変、読んだら更に変・・・

仕方がない、必殺、"書けないものは書かない"でいこう・・・と思い、

アキト君とミナトさんの会話を書こうとしたのですが、またもや、

かけない、書いても変、読んだら更に変・・・

双方数十回書き直しましたが、結局納得のいく物はできず、あえなく没・・・

そのうち書きます・・・(涙)





さて、それはともかく・・・

よく劇場版アフターのSSで、ナデシコCとユーチャリスが小競り合いをしていますが、

あの状況では、ジャンプで奇襲でもしない限り、

そう戦闘できる範囲まで接近はされないと思うのです。

ナデシコCがユーチャリスに比べて巡航速度に置いて相当上であるのなら、話は別ですが、

奇襲を基本としたユーチャリスの設計思想の面から考えても、

(ユーチャリスを、アキト君のためにわざわざ造ったとは思い難いので、

手元にあった戦艦をデータ収集の意味もあって流用したのでしょう。

となると、当初の予定は違ったかもしれませんが、

アキト君の旗艦にする事にした時点で改造したでしょう。

私としては艦としての総合性の性能はナデシコCの方が上だとは思っていますが、

力を入れている方向が違う以上、勝っている部分もあると考えています)

ユーチャリスは速度にかなりの重点を置いているでしょうし、

ステルス性も、ユーチャリスの方が上でしょう。

まぁ、索敵能力はナデシコCの方が上でしょうから、

互いに相手を確認できる距離は同じぐらいなのかもしれませんが・・・

ハッキングして目くらましをすれば別でしょうが、

それができればとっくにつかまっているでしょう。

レーダー探知した瞬間に、逃げながらジャンプの準備をすれば・・・

ユーチャリスやブラックサレナにしろ、

「時の流れに」のブローディアのように問答無用の物ではありませんので、

使用する戦術・状況を限定して、それしか考えていない機体性能になっているでしょう。

となると、当然迎撃は苦手でしょうから、

相手がナデシコCだろうが統合軍だろうが宇宙軍だろうが、はたまた火星の後継者だろうが、

先手を取られたら逃げの一手しかありえないと思います。

消極的ですが、ユーチャリスと言う特異な状況に置かれた戦艦で戦う以上、

それは仕方のない選択でしょう。

見つかったらとりあえず逃げる敵を相手にする場合でも、

複数の艦で相手を追い詰めるのなら、作戦のたてようもありますが、

一対一で、しかも自分より足が速い敵を追い詰めるのは・・・

ルリ君がいくら有能でも、それ以前の問題ですし、

しかもジャンプできる以上、どこかに追い詰めると言う手段も使えません。

普通に考えたら、ユーチャリスには追いつけないでしょう。

補給等でどこかに入る時に、ルリ君が待ち伏せして・・・と言う話をよく見かけますが、

別にその気になればジャンプででも運べるでしょうし・・・

ソナーをそこら中にばらまいて、

反応があったらジャンプで奇襲と言う戦法以外の方法はないと思うんですけどね・・・

ボソン砲の時のように、エンジンを切って慣性飛行をしても、

見つけてから隠れたのでない限り、

ぶつかる可能性はゼロに等しいでしょうし・・・

つまり、B級ジャンパーで何とかピンポイントジャンプをする必要がある訳です。

幸いB級ジャンパーは、機械的な補佐があればジャンプできるそうです。

これは、障害者スポーツに通じるものがあります。

障害者スポーツは、種目によっては健常者よりいい記録を出します。

その辺りから想像しました。

ナデシコCとルリ君たちの組み合わせのように、

十分な機械的補佐と、補助ジャンパーがいれば、

B級ジャンパーでも長距離ピンポイントジャンプはできる、

と、いうことにして置いてください。

ちなみにネルガルのジャンプ補助施設とは、

ハーリーがイネスさんと月にジャンプして行ったあそこです。





追記

立場が違う以上、対等な席についての交渉など、起こりうるはずがありません。

どう考えても、アキト君たちの方が主導権を握れるだけのカードを持っているのですから、

カードを出し渋って、小出しにするとか言わない限り、

脅迫、強要に近い形になるのは、仕方がないかと・・・

大量にカードを切ったのですから、

それに見合うだけの見返りはむしろもらえて当然だと思いますし・・・

アカツキたちは、戦術では強いですし、

それに関しては間違いなくアキト君たちより上ですが、

戦略レベルで負けている以上、勝ち目はないでしょう。

もちろんアカツキたちが戦略では弱いわけではありません。

ですが、多少戦術に自信を持ちすぎ、

アキト君の戦力を見誤ったと・・・

アキト君たちが様々な事に恵まれていた為、

予想をはるかに超えて強かったと言うわけで・・・





追記その二

前回(かなり前ですが・・・)代理人様に、

「そもそもアキト抜きではエリナは成長できない」と言うよう取られかねない表現は感心できない、

と言われましたので、説明を・・・

別にエリナ様がアキト君がいないと成長しないわけではありませんが、

TV版にしろ「時の流れに」にしろ、

エリナ様の成長に大きな影響を与えているのが、アキト君です。

これがラピスであれば、何もなくても成長するのはおかしくありませんが、

エリナ様のようにある程度成長した人は、

よほどの事がない限り、なかなか自分の考えを改めません。

それが人間と言うものです。

また、エリナ様は特にその傾向が強いように思われます。

また、この話に置いては、アキト君はむしろエリナ様の成長を妨げています。

どちらかと言うと、エリナ様が一方的に自爆していると言うべきかも知れませんが・・・

彼女は、アキト君を露骨に嫌っていますし・・・

"好き"の反対は"無関心"だと言う話があります。

例え"嫌い"であっても、意識されている以上、脈はあると・・・

これは、逆もまた然りで、

"嫌い"の反対も"無関心"な訳です。

正史でも「時の流れに」でもアキト君は、彼女によい影響を与えましたが、

"影響を与えられる"以上、ちょっとベクトルが狂えば、

悪影響も与えられるのではないでしょうか?

可愛さ余って憎さ百倍とも言いますし、

善に強い者は悪にも強しとも言います。

アキト君は、エリナ様にとって、良くも悪くも影響を与える存在だと思っているのですが・・・

ベクトルを修正できれば話は違いますが、

アキト君にそれを何とかできれば、同盟など発足しなかったでしょうし、

ブロスとディアも・・・意味もなくわざわざ仕事を増やさないでしょう。

結果的にエリナ様とアキト君との関係は今のままとなりそうです。

 

 

代理人の感想

説明が長い!

文章が読みづらい!

「・・・」を使いすぎ!

 

以上(爆)。

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・だって、説明だけで話も何もないじゃないですか!?(爆)

駆け引きの余地も無いものはそもそも「交渉」とは言わないとか、

ユーチャリスの建造目的を根拠も無しに断定してえーんかとか(無論このSS限定ならいくらでも)、

「迎撃」って言葉の意味わかっているのかなとか、

ツッコミ以外に感想なんか書けませんよ(苦笑)。