「ナデシコ・・・ユリカ先輩の船・・・

 テンカワ アキトの監視と調査・・・か。

 それにしても、皆も私の新しい配属先なんて、どこで聞きつけたのかしら?

 一応軍機でしょ、配属先って・・・

 テンカワ アキトのサインをもらってきてって、

 揃いも揃って何考えてるのかしらね・・・

 大体、シャトルの中じゃ、手も足も出ないし、

 シャトルを降りてからの短時間で調べ上げたとも思えないし・・・

 知ってたのなら、教えてくれても良いのに・・・」



ブロスとディアの正しいアキト君の育て方
 第六十話 新人





私はあわただしく乗り込んだシャトルの中で、

チームメイトからの餞別を見てため息をつきました。

昨日、突然言い渡された転属命令、機動戦艦ナデシコへの配属・・・

確かに、ナデシコを軍に組み込みたいと言う、軍の再三の要求に対して、

ようやくネルガルが折れたと言う噂はありました。

もっとも、普通こう言う話は、ようやく折れた・・・と言う話が出てから、

交渉が煮詰まるまで、それなりに掛かるのですが・・・

今回の命令と言い、その事と言い、

あまりにも、唐突過ぎます。

まぁ、配属命令の方は、

ミスマル提督が無理を言って私を配属させようとしたせいかもしれませんが、

それにしても、どう考えても不自然です。

そう思いつつ、私は昨日の事を思い起こしました。

突如、雲の上の存在ともいえる、

極東方面軍指令のミスマル提督直々に着き付けられた、転属命令・・・

ネルガル重工が、ちょうど一年前に出航させた艦、

あまりにも荒唐無稽な噂に彩られた、無敵の戦艦ナデシコ・・・

更に、全エステバリスライダーの憧れ、

地球圏最強のパイロット、漆黒の戦神・テンカワ アキトの監視・・・

ともかく、私の周りで何かが動いているのは確かです。

「彗星のごとく現れた稀代の英雄、漆黒の戦神・テンカワ アキト・・・

 やっぱり、英雄は突然現れて、謎だらけの方がインパクトがありますからね。

 プロモーションとしてはほぼ完璧・・・

 ネルガルも、食えない連中ですよね・・・」

と、そこまで言って気がつきました。

「・・・でも、彗星のごとくあらわすには、

 能力のあるパイロットを隠した上で、

 戦争に確実に起きてもらう必要がありますよね・・・

 ・・・ということは、ネルガルは戦争を予測していた?」

・・・いずれにせよ、結論を出すには、情報が少なすぎます。





「能力最優先・・・ねぇ?」

しばらくして、ミスマル提督から手渡された資料の事を思い出し、

慌ててそれに目を通すと・・・

事実は小説より奇なりとはよく言ったもので、

噂にたがわず個性的なクルーらしい。

まず目に付いた人物はアオイ ジュン副長。

特記事項に、テンカワ アキトとの関係が示唆されていた。

士官候補生だったらしく、経歴がはっきりしているので、

ナデシコ搭乗前にテンカワ アキトとの接触はない事は、ほぼ間違いないらしい。

となると、どうやらナデシコに乗ってから何かあったのでしょう。

そして、エステバリス隊の指揮官。

しかし、人間性に関しては特になし・・・

普通、何か一言あるんじゃないの?

影が薄いか、もしくは意図的に消されたか・・・

士官候補生だったそうですし、

私の同類・・・スパイで、テンカワ アキトに懐柔されたというのが、

一番ありえると思うのですが・・・

まぁ、この目で見るまでははっきりした事はわからない。

次にアカツキ ナガレ。

この人の場合、経歴の方にこれといったものがない。

と・・・いうより、調べていない?

人間性はともかく、経歴は純粋な記録だから、

もう少し突っ込めば、わかる事もあるでしょうに・・・

彼には近づくなって事かしら?

何か裏がありそうね・・・

でも、それくらい教えてくれないと、任務なんてできないんじゃ・・・

以下、続々と強者の紹介が・・・

あ、頭が痛くなってきたわ。

改造癖やら、熱血馬鹿とかアニメオタクに・・・

本当に軍艦のクルーなの?





頭が痛くなってきた私は、別紙のテンカワ アキトの経歴を見た。

これにも目立った事は記入されていなかった。

何故?

基本的に彼の戦果・・・特に西欧に配属されてからの戦果はネルガルの意向により秘匿されている。

もっとも、最近は建前としては秘匿していますが、以前ほど厳しいモノでなく、

多少情報が漏れるのは、黙認しているようですが・・・

しかし、それ以前のモノ・・・この戦争が始まる前のものすらも・・・白紙に近かった。

(火星生まれの火星育ち)

(IFS体質)

(学校を卒業後は、コックを目指す)

今までの中で、一番まとも・・・

しかし、とてもパイロットの経歴とは思えません。

それどころか、これはただの一般市民の経歴です。

いたって普通・・・

おそらく街行く人百人にこの経歴を見せて、

彼の職業が軍人だと思うかを聞けば、

百五十人が違うと答えるに違いありません。

となると、彼の戦果は捏造されたものなのでしょうか?

確かに、古来より士気の維持のために、"無敵"の部隊や、

英雄を捏造するのは、珍しい事ではありませんが・・・

しかし、西欧方面軍に配属された友人は、言った。

私は、『漆黒の戦神』を見たと・・・

無論冗談や、軍に命じられて口裏を合わせているだけかもしれませんが、

兎にも角にも、"テンカワ アキト"が西欧に配属されて、

数ヶ月しか立たないうちに、地球圏最大の激戦区、西欧方面が落ち着いたのは事実です。

何事かが起こったのは間違いありません。

そこで気が付いた・・・

テンカワ アキトのプロフィール・ファイルに、

封筒が挟んである事に・・・

=極秘・読後焼却の事=

また古風な・・・

しかし、テンカワ アキトの資料に挟んであった以上、

これもテンカワ アキト関係の資料なのでしょう。

そして、そこには今までとは比べ物にならないほど、詳しく彼の情報が書いてありました。

しかも手書き・・・

軍も相当危ない橋を渡ってるみたいですね・・・

彼の戦闘・その他についてのレポート・・・

それと何枚かの写真・・・

そこには、黒いエステバリスと、

不思議な赤い光に包まれるエステバリス、

ダース単位の戦艦を、一撃で吹き飛ばしているエステバリス、

チューリップが光の剣で引き裂かれる光景が写っていた・・・

彼の経歴についても、余程念入りに調査したのだろう、

細かく記されており、かなり埋まっている・・・

もっとも、私たちが求めているような情報は、全く記されていないが・・・

「と、言うより、これじゃほとんどストーカーね」

生年月日を始め、事細かに書かれた、経歴の数々・・・

そして・・・ナデシコに乗る一年前・・・

第一次火星会戦の日の記録を最後にその痕跡は途絶える・・・

・・・?

火星、ユートピア・コロニーにて・・・

地球、サセボ・シティーにて・・・?

どう言う事?

同じ日に地球と火星で・・・

テンカワ アキト・・・ある意味一番変な人なのかもしれない・・・

しかし・・・

「とてもパイロットの経歴じゃないわよね・・・」

何度見てもそう思う、

テンカワ アキトの噂を聞いたことがないのは、噂にならなかったから?

そういう方向に限定するなら、完全に白紙の経歴・・・

では、どこでこれだけの技術を?

記録に残る物は、何も無い。

この資料を別として・・・

あくまで人の口から噂話として、"漆黒の戦神"の異名は広まっている。

一体、彼の正体は?

・・・なぜネルガルは、彼を隠すのでしょう?

英雄・・・彼を抱えている事は、宣伝になりこそすれ、

汚点にはなりえない・・・

続けて、彼の戦闘以外についてのレポートを見る。

西欧で友人がやらせたと書かれている軍の適性検査の結果・・・

格闘術・射撃・IFS操縦・実戦指揮・・・適正レベル特A

オペレート・操舵・医術・整備・戦術指揮・通常操縦・・・適正レベルA

・・・本当に何でもできるらしい。

そして、特技の欄を見たときさらに驚いた。

特技・・・料理。

・・・特Aの能力を持ちながら、それは特技じゃないと?

そういえば、コックを目指す・・・と書いてありましたね・・・

そして・・・

ネルガルとの関係・・・両親がネルガルの研究者、

戦争開始と共に一年の空白を挟み、

突如としてネルガルに入社、

まぁ、他のクルーもナデシコのクルーとしてわざわざスカウトされたそうですので、

突然入社するのは、単独では怪しいですが、全体としては全く問題ないのかも知れません。

しかし、こうなると、むしろ木の葉を隠すために森を作ったようにも見えます。

そして、ナデシコにコックとして乗り込む。

私は目をこすり、もう一度見る・・・

コックとして?

ネルガルが、軍を欺こうとした・・・と言うところでしょうか?

・・・さっきより気が滅入って来ました。

さほど厚くないレポートだったので、

数分で読み終わった私は、

個人的な好奇心から、何枚かの写真と、

いくつかの気になるレポートをポケットに捩じ込むと、

給湯室へ行って残りの資料と写真を全て破き、

それらを全て焼き払いました。





その後、無事何事も無くヨコスカドックに到着し、

本来ならまっすぐナデシコに乗り込むべきなのでしょうが、

ようやくシャトルから降りる事ができ、体中が痛かったので、

私は私物を持って歩いて向かう事にしました。

しかし・・・月に荷物を送り出した瞬間に転属命令が出ますか、普通・・・

もっとも、ミスマル提督から呼ばれるのが後一時間遅ければ、

更に振り回される事になったでしょう。

一時間後には、そのシャトルで月に行く予定でしたからね・・・

月に送られた荷物を、とんぼ返りで一番早く出る地球行きの船に乗せて、

私はその船の到着する、九州まで輸送機で飛ばされて・・・

まぁ、私なんかのために、わざわざシャトルを飛ばしてくれたのですから、

ミスマル提督も、太っ腹と言うかなんと言うか・・・

そんなことを考えつつ、荷物を持ってナデシコに向かって歩いていくと・・・

「ちょっと、ラピス、

 待ってよぉ〜」

「ハーリー遅い」

「そんな事言ったって・・・」

「なんか言った?」

「いえ、何も・・・」

やたらと大きな荷物を持った男の子と、

おそらくその大半の持ち主であろう女の子を見つけました。

どちらも、年のころは六〜七歳・・・

なんでこんなところに子供が?

「君たち!!」

とにかく、軍の基地に子供がいるのは問題です。

方向から考えて、おそらく"ナデシコ"を見に行くのでしょうが・・・

一体どこから入り込んだんでしょう?

「ハーリー、私先に行くよ!!」

「ちょ、ちょっとラピス!!

 この人が・・・」

「何、文句でもあるの?」

「い、嫌、だから、この人が呼んでるみたいだよ?」

「ハーリー、何したんだか知らないけど、

 変な事に私を巻き込まないでよ。

 じゃぁ、私は先に行くから、こってり油を絞られてれば」

「ちょっ、ちょっと!!

 ラーピースー!!」

そう言い残して、女の子は去っていきました。

・・・はぁ、

散歩した事で、回復しかけていた長旅の疲れが、

今の出来事で、一気に膨れ上がった気分です。

・・・って、

「ちょ、ちょっと、

 君、待ちなさい!!」

と、叫びましたが、反応は帰ってきませんでした。

「あ、あの・・・」

「あ、ああ、

 ここは、軍の基地です、

 許可の無い民間人の立ち入りは・・・」

そこまで言った時、男の子が答えました。

「許可は受けてます、

 僕は、マキビ ハリ、軍属です。

 さっきの子は、ラピス ラズリ、同じく軍属です」

「ぐ、軍属って・・・」

・・・軍は何を考えてるんですか、

こんな子供を・・・

・・・マキビ ハリと、ラピス ラズリ?

どこかで聞いた・・・いえ、見ました。

そう思い、私はスーツケースに腰掛けると、

鞄からさっきの資料を取り出しました。

・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・

ありました。

ナデシコが軍に編入される直前に、

ナデシコクルーに登録申請された新人クルー、

と、あります。

その他の事は、時間がなくて調べられなかったようですが・・・

まさかこんな子供を・・・

ナデシコのオペレータを勤めていると言う、ホシノ ルリですら、

十二歳ぐらいだったはずです。

・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・

「あ、あの・・・

 じゃ、じゃぁ僕はこれで・・・」





「かん・・・じゃないルリさん!!」

荷物を引きずりつつ、ようやく僕がブリッジまで辿り着くと、

なんか、騒然としていた。

一騒動あったみたいだけど、それが何かは解らない。

ラピス・・・今度は何をやらかしたんだ?

ともかく、そのおかげで、ブリッジが静まり返っていて、

僕の声がやたらと響いてしまった。

「遅かったですね、ハーリー君」

「だって、ラピ・・・

 何でもありません」

ラピスの荷物が重いと言おうとしたら、

ラピスに睨まれてしまった。

ま、まぁ、ルリさんに今の状況から、それを理解してくれますよね?

「良いですけどね。

 と、まぁ、この子が"あの"ハーリー君です」

「へぇ、この子が・・・」

「ふぅ〜ん・・・」

なんか、僕が来る前に僕の紹介は終わっていたらしく、

皆がじろじろと僕を見ている・・・

「あ、あの・・・ルリさん?」

「なんですか、ハーリー君?」

「・・・僕の事、なんて紹介したんですか?」

一体、どんな紹介をしたら、こんな風にじろじろと見られるんだろう?

「聞きたいですか?」

「はい」

「本当に聞きたいんですか?」

「え?

 は、はい、」

「本当の本当に?

 後悔しませんね?」

「え、え・・・えぇ〜?」

「それは・・・」

「そ、それは・・・?」

「・・・・・・・・・・・・」

「あ、あの・・・」

「・・・・・・・・・」

「ふぇ?」

「・・・・・・」

「う、うぁ・・・・」

「・・・」

「う、うわぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん!!」





「あらららら・・・

 ちょっと引っ張りすぎちゃいましたね」

走り去っていくハーリーくんを、呆然と見つめながら、

私はそうつぶやきました。

冗談のつもりだったのですが・・・

「で、ルリルリ?

 あの子・・・どんな子なの?」

「あ、はい。

 ハーリー君です、

 マキビ ハリ、愛称がハーリー君です。

 まぁ、私の弟みたいなものでしょうか?

 ラピスともども、オペレータ見習いをしてもらう事になる予定ですけど・・・」

「そう、まぁどうでも良いけど、

 彼の紹介は、ラピスちゃんかアキト君にさせるから、

 追いかけて行ってあげなさい」

「そうですね」

全く、この程度で逃げていては、ナデシコ・・・ナデシコAのクルーは、

勤まらないんですけどね・・・

ハーリー君にも困ったものです、

全く、いつまでたっても子供なんですから・・・





「カード一枚で乗船出来る軍艦・・・

 カード一枚で乗船出来る軍艦・・・

 何考えてるの、ネルガルは・・・」

あの後、再起動に成功すると、

男の子もいなくなっていた。

疲れが一気に出てきた私は、

スーツケースを引きずるようにナデシコに向かい・・・

とどめをさされた。

私のエステバリスも見て見たいけど・・・

ユリカ先輩にあいさつして、今日は早めに休ませてもらいましょう・・・

そう思いつつ、地図を頼りに歩いていると・・・

「わぁぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん!!」

さっきの男の子が、泣きながら走って来て・・・

「わぁぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん!!」

ドップラー効果を残して走り去っていきました。

・・・保育園じゃないんですからさぁ、

お願いしますよ・・・神さまぁ・・・

私は、スーツケースの重さが、一気に百倍ぐらいになったような錯覚を覚えつつ、

這うようにブリッジへの"旅"を再開しました。

そこに、破滅が待っているとも知らず・・・

ねぇ、神さまぁ・・・

私何か悪い事しましたかぁ?





「来ないな・・・」

私が、部屋の隅でオレンジジュースを飲んでいると、アキトさんがやってきて言いました。

「ええ、遅いですね・・・

 来ないということがはっきりしているのであれば、

 もう少し羽目を外せるのですが・・・」

クリスマスパーティーが始まり、

しばらくはユリカさんたちに囲まれていたアキトさんですが、

どうやら、うまく抜け出してきたようです。

「"俺"と言う存在が、木連に伝わっていたんだから、

 俺の行動が木連の戦略に影響を与えるというのはわかるが・・・

 二回目はこのタイミングで来たんだよな・・・」

多少の時差は、誤差の範囲内としてもかまわないかもしれませんが・・・

「・・・やはり、アキトさんのせいかもしれませんね」

「どう言うこと?」

「元々、研究所の襲撃は、

 "ジャンプ技術研究所の破壊"が目的です。

 アキトさんがいる以上、例えジンタイプであっても戦闘は避けた方が良い、

 と、判断したのであれば、近くにナデシコがいる状況では、襲ってこないかもしれません」

もっとも、まだ白鳥さんたちが今日こないと決まったわけではありませんが・・・

「・・・テツヤか、

 確かに、今回は最後にクリムゾンへ情報を送ろうとしなかった。

 おそらく、ブラックサレナに関する情報を得た時点で、

 今ある情報だけでも、先にクリムゾンに送ったんだろう。

 先手を打ったつもりだったんだけど、仇になったか・・・」

「その仮説が正しいとすると、襲ってくるのは一週間後・・・

 月基地に襲撃の方が、先になるかもしれませんね。

 となると、Yユニットは確実に破壊されるでしょうから・・・

 困りましたね・・・」

「・・・そうだなぁ、

 それに、明日イネスさんたちとジャンプ研究所に行く予定なんだ。

 どうなる事やら・・・」

「・・・聞いてませんよ?」

まぁ、物に全てを話せ・・・とは言いませんが、

そう言う重要なことはいってほしかったです。

まぁ、言われたからどうなると言うものではないのですが・・・

「ああ、言ってないからね。

 どうせ、今日襲われたら月に行くことになるわけだし、

 反故になる事がわかりきった約束だったから・・・」

・・・必要ない・・・ですか。

まぁ、そうかもしれませんけどね?

「・・・だけど、反故にはならないことになった・・・ですか」

「そう言うこと、

 モルモットにされるのは、ごめんなんだけど・・・」

「ご愁傷様です」

「助けてくれないの?」

「それで、私にどうしろと?」

「つれないなぁ、ルリちゃんは」

「おや、今ごろ気付いたんですか?」

「・・・つれないね、ホントに」

・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・

「ア〜キ〜ト〜!!」

その後、二人で黙ってお茶を飲んでいると・・・

(アキトさんが何を飲んでいるのかは、あいにくここからは見えませんが・・・)

ユリカさんがやってきました。

・・・遅かったですね。

「そんな大声出さなくても聞こえてるよ」

「そんなところにいないでさ、こっち来て・・・」

「ア、いや、でもさ・・・」

アキトさんはそう言いますが、

まぁ、この状況では、アキトさんが逃れるのは難しいですね。

それに・・・

「行ってくれば良いじゃないですか、

 ここにいても、仕方が無いでしょう?」

ここにいても、やる事はないでしょう。

まぁ、黙って二人お茶を飲むのが、

"何か"に入るのなら別ですが・・・

「でも、ほら、ルリちゃんも・・・」

「私は良いですよ、

 それに・・・

 アキトさんが行かなければ、始まらないでしょう?」

私には、あの輪の中に入って自分の地位を確立する自信はありません。

私としては、このまま二人でお茶を飲んでいたかったのですが・・・

それが出来ないのなら、仕方ありません。

ここで、アキトさんが疲れて帰ってきた時に備えていましょう。

「ルリちゃん偉い!!

 そう言うわけで、行こう、アキト!!」

「ちょ、ちょっと待てユリカ、

 俺は・・・」

「ほらほら、あそこにケーキが・・・」

「だから俺は・・・

 ルリちゃん、何とかしてくれ」

・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・

わめきながら引きずられていくアキトさんを見送ると、

私は人知れずため息をつきました。

「はぁ・・・

 アキトさんにも困ったものです。 

 全く、いつまでたっても子供なんですから・・・」





第六十一話に続く





あとがき

イツキ カザマの登場シーンですが、

ネルガルと軍の交渉が終わった時期がずれたということは、

当然命令が下る時期もずれるんですよね・・・

まぁ、月で拾っていくと言う選択肢も、無きにしも非ずだったのですが・・・

それはそれで面白そうですが、

まぁ、無理やり出しました。

後、ミスマル提督との会話は飛ばしました。

そのままではなかったはずですが、

ただでさえスケジュールが送れているのに、余計なものは書いていられないと言うことで・・・



ハーリーとラピスですが・・・

ハーリーはともかく、ラピスは書きにくいですね・・・

まぁ、この話の彼女は「時の流れに」ほど、世渡りがうまくありません。

どう考えても、ラピスは世渡りがうまいタイプとは思えないからです。

そもそも、「時の流れに」の初期設定でも、

ラピスはむしろ対人恐怖症とも言える状況だったはずです。

その後であった人と言えば、自分のことをモルモットだと思っている研究者たちと、

ハーリーとダッシュ(人か?)程度でしょう。

世渡りはうまくならないと思うのですが・・・



ハーリーは・・・

固定観念なのか、どうなのかは知りませんが、

やっぱりあんな感じです。

別に、ラピスに手玉に取られる必要はないようにも思えますし、

必然性は全くないと言っても過言ではないのですが・・・

まぁ、第一三話で既に布石をおいてしまった以上、

必然性はあるにはありますか・・・





追記、

ルリ君とハーリーですが、

私もあまりにているとは思っていません。

しかし、ルリ君はそう考えていると考えるのが、一番自然だと思うのです。

自分と重ねている・・・

だからこそ、不愉快だし、助けてあげたい・・・

ルリ君のハーリーに対する行動は、

大体これで説明がつくと思うのですが・・・



まぁ、リョーコさんとコロニーで通信した時のように、

旧友との再会から来る気安さからか、冗談のネタに使ったりもしていますが、

あれはハーリー君である必然性はなく、別に誰でも良かったと思いますし・・・

たまたまハッキングの話が出たから、ハーリー君に被害が行っただけで、

機動兵器の話が出れば、おそらく高杉さんに被害が行ったでしょう。

災い池魚に及ぶと・・・

ご愁傷様と言う以外にありません。

まぁ、そう言う"野良犬に手を噛まれたと思って諦めろ"というしかないような災いを、

自然とひきつけてしまう辺りが、

ハーリーの"ハーリー"たる所以でしょうが・・・



まぁ、答えはそのうち書きます。

ただ、実際にそうであるかは、余り重要ではありません。

ルリ君が、そうだと判断していることの方が、はるかに重要なのです。

ですから、"そうかぁ?"と思われたとしても、余り気にしないで下さい。

そもそも、ルリ君の行動が先にあって、

その行動の理由付けとして、

ルリ君は、自分とハーリーを重ねているのだろうと予想したと言う、

本末転倒な逆説的推理から来た設定ですので・・・





追記その二

エリナ様についてですが、

納得力ですか・・・

なるほど、そうですね、そうした方が良かったですね。



次回こう言う話を書く時には、参考にさせてもらいます、

ありがとうございました。

 

代理人の個人的感想

ひょっとしてルリお嫌いですか?(爆)

いや、前回といい今回といい読者がルリに反発を覚えるような独白がちらほらと。

どうもいっぺんはルリを嫌わせようとしてらっしゃるような意図に思えるんですよね。