「テンカワ アキト、後日再戦を申し込む」





ブロスとディアの正しいアキト君の育て方
 第五十八話 虚構





月臣がジャンプした後、

ほぼ間を置かずして、周囲に二つ、ボース粒子反応をキャッチした。

と、次の瞬間、予想通りといえば予想通り、

予想を裏切られたといえば、予想を裏切られた機体がジャンプアウトした。

前回、ナデシコに進入した小型のジンタイプ・・・

確かに、俺の記憶が確かなら、あの声は北辰の部下の声だった。

とは言え、なぜここに?

『アキト兄の邪魔かな?

 研究所襲撃のタイミングを、わざわざアキト兄がいない時になるようにずらしたのに、

 アキト兄は出撃したんだもん。

 多分、アキト兄がジャンパーだということはばれちゃったんじゃない?』

『月臣さんが月にいる以上、アキト兄も月にいる・・・

 まぁ、ボソンジャンプに限っては必ずしもそうとは言い切れないだけど、

 まぁ、木連もそこまで詳しくわかっているわけじゃないだろうし・・・』

『アキト兄の大ピンチ!!

 彼はこの危機をどう乗り越えるのか!!

 はたまた、志半ばで倒れてしまうのか・・・』

(はいはい、無駄口叩いている暇はないぞ。

 それでなくても、急いでナデシコにいかなくちゃならないってのに・・・)

ちょうどさっきバーストモードが切れ、

エステの動きが目に見えて悪くなっている。

バーストモードが切れた直後の機体に武装はライフルのみと言う状態で、

六人衆の乗る機体二機・・・

まぁ、うまくすれば強行ジャンプも不可能じゃなかろうが、

こいつらを無視してナデシコに帰るわけには行かない。

となると、先にこいつらを始末する必要があるが、バーストモード直後のノーマルエステでは、

ジンタイプのディストーション・フィールドを突破することすら難しい。

もちろん、テンカワsplはただのノーマルエステではないし、

得物は、機体の出力に左右されないラピッドライフル・・・

ナイフでないだけマシと言えばマシだが・・・

とは言え、始めから勝つつもりがないのなら、

"負けない方法"はいくらでもあるのも事実だ。

最も、"負けない"ことばかり考えていると、

かえって足元をすくわれ、かえって大敗をきす場合も多いが、

六人衆クラスの技量があれば、そういう事も無いだろう。

まして、この時代の防御の要であるディストーション・フィールドと言うものは、

相当な過負荷を与えてディストーション・フィールド発生装置が火を噴いたとか言わない限り、

しばらく休ませればダメージが回復するので、

二機に交互に出てこられては、ダメージを蓄積させることもできない。

現代の機動兵器戦は、他の戦闘以上に数の優位が物を言う世界なのだ。

とは言え、当然負けるわけにはいかないんだから、やるしかないが・・・

・・・こう言う状況に対応した戦法をいくつか考えておく必要があるな。





「何をしに来た、北辰!!」

なぜか、部下のうち四人だけを引き連れて、

ブリッジに入ってきた北辰を見て、

白鳥さんが声を荒げます。

「ほう、貴様、生きていたか・・・

 例え死体であっても、対跳躍処理手術を受けたものを、

 地球人の手に渡すわけにはいかぬでな。

 裏にいる我が直々に回収にきたのよ。

 しかし、主らは機もパイロットも最重要機密だと言うに自爆もせぬとは・・・

 やはり、あんな小娘に任せたのがそもそもの間違いよの」

「貴様!!」

そう叫ぶと同時に、白鳥さんが縛られたまま北辰に体当たりをかけます。

しかし、ナオさんがそのロープの先を握っていたため、

その体当たりは途中で失速してしまい、

北辰に難なくかわされ、すれ違いざまに首筋に手刀をもらい、

その場に崩れ落ちてしまいました。

「全く、手間をかけさせおって。

 しかし、惜しいな。

 お主と言い、月臣と言い、

 その気性さえなくば、こいつらを束ねられる程度の技量はあるというに・・・

 小娘にはもったいない部下よの。

 が、こやつを片付けてくれた事には礼を言おう」

そういうと、突然の事に対応できず、

ロープに手をとられて転んでしまったナオさんを踏みつけ、

刀を突きつけました。

「おい」

その言葉に反応し、北辰の部下が気絶した白鳥さんのロープを外すと、

素早くナオさんを縛り付けます。

・・・困りましたね、

一番強い人が、戦う前からやられちゃいました。

アキトさんも、いくらなんでも遅すぎます。

何か予定外のトラブルがあったと見るべきでしょうが・・・

いずれにせよ、北辰を倒す策などありはしませんし、

そもそも北辰には、アキトさんに完敗してもらわないと、

北斗さんの件に絡んでくる・・・らしいですから・・・

やっぱり、時間稼ぎ以外に道はない・・・ですね・・・

「こやつ以外は、見るべきものはおらぬ様だな、

 ならば、ここは我ともう一人いればよかろう。

 小娘に貸しを作るのも悪く無い、

 おまえたち三人は、先にこれと一緒に脱出しておけ。

 人質は・・・そうだな、

 そこの女と・・・」

北辰が然も当然のように人質の品定めを始め、

白鳥さんに対するあてつけなのか、やはり当然のようにミナトさんを選択し、

もう一人人質を選ぼうと、北辰があたりを見回します。

ただでさえ重い空気の渦巻いているブリッジに、

さらに重い空気がのしかかろうとしたその時、

ユリカさんが一歩前に出ようとし、

イネスさんに止められました。

「待ちなさい。

 あなたがいなくなってどうするの?

 ここは私が行くわ」

「でもここは、艦長である・・・」

「だから言っているの、

 艦長がいなくなってどうするの?

 それに比較民俗学的にも興味があるしね」





結局、特に代案があったわけでもないらしく、

私の提案はすんなりと了承されることになった。

爆破されたブリッジの扉をくぐると、

同じく爆破されたシャッターが目に入る。

その破壊跡を見る限り、

一度の爆破で、しかも最小限のそれで進入路を確保したことが窺える。

いい爆破解体業者になれるわね。

私の前には、白鳥さんが"北辰の部下"に引きずられていて、

その後に私とミナトさんが、

後の二人は、それぞれ私たちの横と後ろにいる。

周りを見回したりしたら、問答無用で刀を突きつけられるから、

実際に見ることはできないけど、

まぁ、何をしているかは大体察しが着くわね。

と、思っていると、ミナトさんが前に出て白鳥さんに肩を貸そうとし・・・

"北辰の部下"の一人に刀を突きつけられた。

「何よ、

 良いじゃない大変そうだし・・・

 それに、あんたたちもあとで運ぶのが大変なんだから、

 動けなくさせること無いじゃないのよ」

と、ミナトさんが言っているけど、

さっきの話を聞く限り、

この白鳥さんは、この中で一番強いらしいから、

念には念を入れて・・・ってことでしょうね。

その手に握られている刃物を全く意に介することなく、

押し問答をしていたミナトさんだけど、

結局、白鳥さんに肩を貸すのを諦めたらしく、元の場所に戻り、

私に話し掛けてきた。

「で・・・

 イネスさんは何でこんなことに志願したの?」

「あら、言ったでしょう?

 比較民俗学的に興味があるって・・・

 他にも、精神学や生物学・・・薬学的にも究めて興味深いわ。

 そもそも・・・」

「う・・・」

・・・と、私が説明を始めようとしたその時、

狙い済ましたかのように白鳥さんが目覚め、

「あ、ちょっとごめん」

ミナトさんは白鳥さんのほうへ歩み寄り、さっきと同じようなやり取りを始めた。





そう、確かに木連と言う環境は興味深いわ。

一世紀以上隔離された環境で育った独自の文化はもとより、

極限状況で代を重ねた人々の精神など、そうそう観察できるものではない。

一世紀以上隔離されていれば、

動植物はさすがに無理でしょうけど、微生物なら、

全く別の形に突然変異を起こしたものいるでしょう。

未知の微生物は、生物としてだけでなく、

新しい薬などを作る為の非常に貴重な媒体ともなるわ。

でも、それ以上に興味深いことが有る・・・

きっかけは、火星での一幕。

尤も、私も後で思い返して疑問に感じたことで、

義母さんやプロスさんにも話していないから、

このことを知っているのは私とアキト君、ルリルリだけと言うことになるけど・・・





アキト君たちと始めてあったあの時、

アキト君は、私と義母さん、フィリスは呼び出したのに、

なぜか、タニ博士だけは呼ばなかった・・・

確かに、あの時タニ博士はコロニーにはいなかったわ。

でも、冷静になって考えると、アキト君がそれを知っているはずは無い。

知っていて、あえて無視した・・・と言うのは・・・

アキト君が自分の親の弟子を見捨てた・・・とは思いにくい。

むしろ私たちよりもタニ博士の方を助けたい筈・・・

何しろ、テンカワ夫妻と一番親密だったのは、テンカワ夫妻に師事していた彼なのだから・・・

なら、なぜ彼を呼ばなかったのか?

彼の事を知らなかったと言うのは、真っ先に却下。

"あの"アキト君が、そんなことも知らなかったなんて考えられない。

かといって、彼は遺跡に調査に行っていて留守だことまで知っていたと言うのは・・・

遺跡の調査、これ自体は戦前から月当番で続いている。

ボソンジャンプの解明は、最重要事項ではあったけど、

さすがにテンカワ夫妻が亡くなってから十年近く、

何の進展も無い部署である遺跡調査チームが、

のうのうと研究を続けられるほどには優遇されていなくて、

数年前、遺跡調査チームはその規模を縮小され、

オリンポス山の研究所に吸収される形で

極冠遺跡近くの研究所は、閉鎖されたわ。

でも、遺跡の調査自体は、遺跡が時折活発化すること等、

(アキト君の話から推測して、

 恐らくは木連がチューリップを使った実験をしたときの反応でしょうけど)

興味深い点は山ほどあるし、あえて打ち切る理由もなかったから、

当番制で続けられることになった。

そして、それは戦争が始まってからも続いていた。

いえ、むしろ、戦争が始まってからの方が、熱心だったわ。

それまでの主な仕事である、「ナデシコ級戦艦の設計」と、

「オリンポス山の戦艦の研究」をこれ以上続ける意義はなかったし、

地球の人間には絶望していたとは言え、

むざむざと死を甘受するつもりなど無く、

むしろ、地球の人間に絶望していたからこそ、

自分たちの手で脱出する術を模索していた・・・

それが、ボソンジャンプを用いて、安全に地球に避難する計画。

そうでなければ、さすがにアキト君たちの申し込みを断りはしなかったわ。

何もせずにただ待ち続けるということは、予想以上に神経をすり減らす。

もし、無為無策でただ戦争が終わるのをまっている状況なら、

例え決死の覚悟でも、ナデシコに乗り込みたいという人は多かったでしょうね。

でも、目の前に希望があれば、多少の困難は乗り越えられる。

もちろん、それがいつ完成するかはわからなかったけど、

私も、自分の能力に、それなりの自信を持っていたわ。

世界で、五本の指に入るような、各分野のエキスパートが集まっている、

ネルガルで最もレベルの高い研究所・・・オリンポス山研究所。

私は、二十八の若さで、そこのトップに実力で選ばれた。

同期の仲間からは、テンカワ夫妻を超えるとまで言われたことがあるわ。

尤も、お世辞でしょうけどね。

あの少ない情報量・・・時々活発化する以外、

全く情報が無いとしかいえない状況で、

"遺跡"を、瞬間移動の演算装置であると特定して、

オモイカネ級コンピュータの基礎理論を立ち上げ、CCの精製法を確立し、

アキト君の話では、ボソンジャンプの解明まで行なったと言う天才・・・テンカワ夫妻・・・

さすがに彼らを超えると思っているほどには、自惚れていない。

それでも、この百年で五本の指に入る科学者・・・

それぐらいの才能は有る・・・そう自負していた。

目の前に実物がある以上、それの再現は時間の問題・・・

そう思っていた。

そして、その計画の中で、遺跡の調査はかなり重要な位置を占めていたわ。

遺跡は、ボソンジャンプの制御機関・・・

その調査は、多少の危険を冒しても、断行するだけの価値があったわ。

そして、本当ならあの時遺跡調査を行なっている班のリーダーは、

義母さんのはずだった・・・

研究者と、他の避難民との間で起こった、

ちょっとした諍いの仲介に入って、突き飛ばされた弾みに足をひねりさえしなければ・・・

数日で直る程度のたいした怪我ではなかったけど、

敵地を突破しなくてはいけない仕事に、

満足に走ることができない人は足手まとい以外の何物でもないわ。

あの時タニ博士が遺跡に行ったのは、

そんな義母さんの変わり・・・

スケジュールとは違うイレギュラー・・・

私たちは、彼らとは連絡をとっていないのだから、

いかにアキト君と雖も、知っているはずが無い。

なのに、義母さんは呼んで、タニ博士は呼ばなかった。

これは、知っていたとしか考えられない。

ユートピアコロニーと連絡をとらず、事前に知っていたわけでもなく、

それを知る方法・・・

タニ博士があそこにいなかったことを知っていたのは、

あの時あそこにいた人たちとタニ博士たち、遺跡に向かったグループ・・・

と言っても、さすがにアキト君がタニ博士と連絡を取り合っていた、

と言う可能性も考えられないわ。

となると、ほかにありえるのは、

タニ博士たちは、木連に捕まっていて、

木連経由でそれを知ったっていう可能性。

テンカワ夫妻なら、CCをいくつか持ち出すことも可能だったでしょうし、

CCさえあれば、A級ジャンパーの彼には、距離なんて無意味だから、

木連と連絡を取り合うことも十分可能。

否定する要素は見つからない・・・

もし彼が木連と連絡をとっていたなら・・・

アキト君はスパイ・・・のはず無いから・・・

木連に忍び込んで、その情報を得たか・・・

もしくは、木連に協力者がいるか・・・

いずれにしても、推察が行き詰まったら、視点を変えてみるのが基本中の基本。

このチャンスを逃す手は無いわ。





月臣がジャンプしてから数分後、

俺は、うまく動かない機体を必死に動かしつつ、

ライフルをうまく使って、何とか一機を撃破することに成功した。

とは言え、ライフルはもう弾が切れてしまっている。

パイロットとしての腕では、俺の方が遥かに優っていると自負しているが・・・

(ブロス!! ディア!!

 なんか手はないのか!!)

『手・・・って言われても・・・』

『見事なまでに八方塞だからね。

 強いて言うなら・・・

 頑張る?』

(これ以上無い位がんばってる、もう既に!!)

『じゃぁ、もっと頑張る』

(あのな)

『ほら、それによく言うでしょ、

 エステバリスの性能差が戦力の絶対的な差ではない・・・って』

(良い言葉だとは思うが、聞いたことがない。

 それに、機体性能差が絶対的な戦力差なら、

 俺はとっくに死んでいる!!)

と、そのとき・・・

背後から前へ、俺の肩を掠めるように、弾丸が駆け抜けていった。

援軍?

しかし、月の守備隊は、まだ編成途中で、満足に動けないはず・・・

と、そんなことを考えていると・・・

ピッ!!

「やぁ、お待たせ」

「アカツキ!!」

見ると、アカツキのエステが大型の重火器を乱射しながら、こちらにやってきていた。

(ラピットライフルにしては、威力が高いな。

 これは・・・レールガンか?)

『だね、

 多分、この前サンプルとして渡した、CCを利用したバッテリーを組み込んだんじゃない?』

『相変わらず、技術と金を無為に使ってるね』

(おまえらほどじゃないと思うぞ)

と、意識の中では、ディアたちとそんな会話を繰り広げつつ、

現実ではアカツキと通信をしていた。

「ふぅ、どうやら、間に合ったようだね。

 いや、珍しく苦戦しているようじゃないか?」

「減らず口を叩いている暇はないぞ、集中しろ!!」

「おいおい、

 ピンチに駆けつけてくれた人に対して、言うに事欠いてそれかい?」

「・・・悪いな」

尤も、いささか二つの会話の境界線が曖昧になってしまったが・・・

とはいえ、アカツキはとぼけたことを言いつつも、高速で近付いてくる。

全く・・・へたに有能なだけに扱いづらい・・・

・・・ルリちゃんが聞いたら間違いなく、

"アキトさんほどではありません"

と言うに違いないな・・・と思った時、アカツキ機はすでに俺の隣にきていた。

「ま、いいけどね。

 でも、良かったよ。

 一度やってみたかったんだよね、

 ピンチに颯爽と現れるって言うのをさ。

 助ける相手が、美女じゃないって言うのがちょっと不満だけど・・・

 で、こいつが君の奥さんからの預かり物」

「オ、奥さんって!!」

「当然ルリ君のことだよ」

「るっ、ルリちゃんはそんなんじゃ・・・」

ちょうどルリちゃんについて考えていたため、余計に動揺する。

「はいはい、

 そういうことにしてあげるよ、

 で、預かり物」

と、言うと、アカツキはDFSを取り出す。

「全く、なかなかに良くできた奥さんだよね」

「だから・・・」

「はいはい、そういうことにしてあげるよ、

 しかし、君が苦戦する相手がいるとはね・・・」

その声で、俺は現実に引き戻される。

「ああ、完全に俺のミスだ。

 増援が来るとは思ってなくてな、飛ばしすぎた」

「飛ばしすぎ?

 君らしくないミス・・・

 と言うか、君らしいというか・・・

 最近おかしいよ?

 もう少し周りを見たほうが良い、

 何をそんなに焦ってるんだい?」

「・・・ナデシコに・・・って、最近か?

 確かに今は焦っているかも知れないが・・・

 いや・・・そうだな、そうかも知れんな」

焦っている、確かにそうかもしれない。

だが・・・

俺には・・・

「だろ?

 もう少し、周りを見ないと・・・」

俺たちには・・・

・・・ふ、愚問だな。

それに・・・今はそんなことを考えている余裕はない。

「だがそれは、最近の話だ。

 少なくとも、今この瞬間は正当な理由があって焦っている。

 ナデシコに侵入者だ。

 ナオさんたちだけじゃ防ぎきれないらしい。

 恐らく、目的を達成した後は、クルーを皆殺しにして、ナデシコごと爆破される」

「な!!

 そういうことなら、ここは僕に任せて君は早くナデシコに戻りたまえ」

内心どう思っているか知らないが、

都合が良い事に、どうやってそれを知ったかは聞いてこない。

俺も、その点はことさらに無視して話を進める。

「無茶を言うな、こいつを相手に、お前一人で・・・」

「いいから!!」

アカツキが有無を言わさぬ声でそういう。

だが、だからといってアカツキを・・・

「早く!!」

「・・・・・・・・・・・・

 解った、ここは、その言葉に甘えさせてもらうことにする。

 一撃決めた後に、この場所を離脱してジャンプする、

 後は頼んだぞ」

「ああ、その代わり、しっかりと奥さんを護ってやるんだよ」

「だから!!

 ・・・まぁいい、そういうことにしてやる!」

そんなつまらないことをいっている暇はない。

このまま離脱したいと言う気持ちもあるが、アカツキだけで防ぎきれるとは思えない。

ジンタイプとエステがやりあった場合、エステの優位性はその小ささと小回りだが、

この小型ジンタイプが相手では、その優位性も薄い。

アカツキの腕を信用しないわけじゃないが、相手が悪いのは確かだ。

「バーストモード直後の機体では、

 DF格闘術など不可能・・・

 ライフルがない今、逃げ回る以外たいしたことはできない・・・

 確かにさっきまではそうだった。

 DFSを手に入れたといっても、

 バーストモード直後の機体では、

 DFS剣術はおろか、剣を形成することすら不可能・・・

 それも確かにその通りだ。

 だが!!」

DFSは、本来は剣を作るための装置ではない。

球体のものを、筒状の物体で収束するから、結果的に棒状になり、

そして、それが非常に高い切れ味を持つから、

ディストーション・フィールド・ソードと名付けただけの話で、

本来はディストーション・フィールドを収束する装置だ。

最も、DFSなしでもディストーション・フィールドを収束させることは可能だから、

より正確に言えば、ディストーション・フィールドの収束を補佐する装置・・・と言うことになる。

DFSが無くては、剣を発生させることができないのは、

単にディストーション・フィールドのコントロール能力の問題に過ぎず、

実際にそれが可能かどうかは別として、

理論上は、DFS無しでも剣を発生させることは可能だ。

最も、バーストモード直後の機体・・・ブローディアなら話は別だが・・・では、

ディストーション・フィールド発生装置の出力的な問題で、

理論的にも剣を発生させる事は不可能だが・・・

しかし、たとえバーストモード直後の機体でも、

その出力の全てをディストーション・フィールドにまわし、

そのディストーション・フィールドを全て収束させれば・・・

普通に、DFS無しで可能な程度は、ディストーション・フィールドを収束させること・・・

要するに、DF格闘術ぐらいは可能と言うことになる。

「剣に拘っている様では、剣術を究めることはできん。

 DFS剣術もまた然り!

 全てを!! 噛み砕け!!

 必殺!!竜牙弾!!」





第六十九話に続く





あとがき

やたらと間があいてしまいました、

スイマセン。

一度書きあがったのを書き直していたら・・・いつの間にやら八月に・・・

私の場合、一度書きあがるとそのイメージに捕らわれすぎて、書き直せないタイプなんです。

・・・って、言い訳にもなっていませんね。



対跳躍処理・・・

ジャンパー処理を、木連用語で何と言うかがわからなかったので勝手に作りました。

公式設定もなさそうでしたし・・・

本来は、対跳躍処理手術を受けたもの・・・などと言う回りくどい言い方をせずに、

ジャンパーを・・・と言うべきでしょうが、こちらは良い言葉を思いつかなかったので・・・

跳躍体質者・・・じゃ変ですし・・・

ちなみに、対跳躍処理手術を受けたものを・・・と言うくだりは舞歌さんに対する建前です。

本来の目的は言わずもがな・・・ですね。

いつかあとがきで書いたように、この話の北辰は白鳥さんが生きている事を知りませんので。



白鳥さんの白兵戦における実力・・・

月臣さんに簡単に撃ち殺されたことから、

月臣さんの方が上・・・と言うのも、ありえなくは無いとも思うのですが、

個人的な意見としては、たぶん月臣さんとタメだと思うのです。

何と言うか・・・その・・・イメージ的に。

で、月臣さんの実力ですが、

これはノーマルの六人衆よりは上でしょう。

劇場版にて、烈風(うろ覚え)を簡単に片付けていますからね。

よって、白鳥さんも六人衆よりも上・・・と、

この話では、そういうことにしました。

「時の流れに」でも、三人で警戒していましたし。

・・・六人衆って、けっこう弱い?

まぁ、彼らは暗殺部隊ですので、

正面からの戦いや機動兵器戦のエキスパートである必要性も必然性もないのですけど・・・。





タニ博士についての言い訳

アキト君が、ユートピアコロニー後でタニ博士を救出しなかったのは、

その時、彼がユートピアコロニーにいなかったからです。

彼は劇場版の時点でボソンジャンプの研究をしています。

もし、あの時ユートピアコロニーにいたのであれば、

その時死んでしまっていると考えた方が、自然なのではないでしょうか?

仮に、生きていたとすると、ちょっと疑問が出てくるのです。

ユートピアコロニー跡の戦闘は、逃げたのではなく戦った・・・はずです。

フィールド維持しつつ交代、敵との距離をとった後反撃・・・

と、ユリカが指示を出しておりますし、

そもそも逃げきれるとは思えませんからね。

当然負けた筈が無いので、一応撃退には成功したが、

大気圏突破は不可能なほどのダメージを受けた・・・

と、言うことでしょう。

大気圏突破が不可能なほどのダメージを受けたのなら、

当然、応急修理をしたでしょう。

とりあえず逃げる・・・と言うのも手ですが、

三百六十度どの方向からも敵がくる可能性があり、

どの方向に逃げても味方がいない上に、

ナデシコからは煙が上がっているのですから、

見つからないで逃げ切れると期待するのは愚かでしょう。

下手に動くと飛んで火にいる夏の虫になりかねません。

その点ユートピアコロニー跡ならば、

少なくとも近くに敵はいないはずですから、

開き直ってその場で応急修理をしたほうが安全でしょう。

ユートピアコロニー跡で修理するのであれば、その時間を利用して、

崩壊したユートピアコロニーの探索ぐらいはしたでしょうし、

となれば、タニ博士は発見されたととるべきでしょう。

しかし、そんな描写は全く無く、

ユートピアコロニー後から助けられたのは、イネスさんだけ・・・と言うふうに見受けられました。

もちろん、助け出されたけど、画面には出てこなかった・・・と言う可能性もありますが、

助け出されたのなら、少なくともコスモスに収容されるまではナデシコに乗っていたはずです。

テンカワ夫妻に師事していた "ボソンジャンプの専門家"が、

(のわりには、ダリアを開発していますが、

 本来なら考古学者のはずのイネスさんが、

 医学と精神医学、素粒子物理に空間物理等々、とにかく色々なことに詳しいようですから、

 今更そんなこと気にしても仕方が無い・・・ですよね?)

全く出てこないというのは、非常に不自然です。

さらに、「時の流れに」で、アキト君が完全に無視しているのもいただけません。

そう言うわけで、タニ博士はユートピアコロニーにはいなかったのです。

あの時うまく敵を殲滅することができ、

ユートピアコロニーの生き残りを収容することになれば、

タニ博士も迎えに行ったかも知れませんが、

そんな余裕はなかったと言うわけです。

どこに行っていたのかはわかりませんが、

イネスさんは、"チューリップに物体が出入りする時に遺跡が活発化する"と言っています。

しかし、第一時火星会戦前には、チューリップ・・・

手のひらサイズのCCはともかく、

物体が出入りできるサイズの活動しているチューリップは確認されていなかったはずです。

(それがあれば、チューリップがワームホールの一種だと言うことは、

 "仮説"ではなく、きちんとした"実験結果"となるはずです。

 チューリップの行き先を制御できなくても、

 少なくとも入れた物が消滅することは確認できるはずですからね)

チューリップと言う単語を、イネスさんが共通用語として使用している点や、

チューリップ・クリスタルと言う名称などから、

チューリップ自体は確認されていたはずですが・・・

ともかく、ナデシコに乗ってから遺跡に赴いたと言うのは、ありえませんので、

火星に取り残されてから、ナデシコに乗るまでに調査をしたと考えて良いはずです。

彼はその調査のために遺跡にでも行っていたということで・・・

別に、近くのコロニー等に食料を探しに行っていた・・・でも構わないのですが。



うん、泥縄式に作った言い訳にしては、筋が通っている・・・ような気がする。





テンカワ夫妻の功績・・・

少なくとも、遺跡の演算ユニットを、

瞬間移動のコントロールユニットであると特定したことだけは間違いないでしょう。

全く情報がない(はず)の状況で、一体如何にしてそれを成したのかはわかりませんが・・・

CCの精製法については・・・

CCに関しても多少関わっていると思うのですが、確証はありません。

CCがアキト君の両親の形見・・・と言う部分から推測しましたが、

CCとジャンプの関連性については、ネルガルもはっきりとは認識していませんでしたし、

どういう経緯でそれがアキト君の手に渡ったのかも不明ですし・・・

極端な見方をすれば、

全てを知った上で、いざと言うときのためのお守りとしてアキト君に渡した・・・

と言う可能性も考えられないではありませんし・・・

それは置いておくとして、色や質感等を見る限り、

どう見ても、チューリップが純粋なCCには見えません。

最も、完全に同じ物体なら、わざわざCCなどと呼ばないでしょうけど・・・

また大きさが統一されて入れている点も、

チューリップ・・・細胞質の物体的ではありません。

個人的な意見ですが、

どう見てもCCの方が純粋な結晶体っぽい点や、

チューリップを使ったジャンプは、

ディストーション・フィールドさえあれば誰でも可能なのに対し、

CCを使ったジャンプはA級ジャンパーでなくてはいけない点等から察するに、

CCは、純粋にジャンプフィールド発生システムの結晶体で、

チューリップは、ジャンプフィールド発生システムを基本としてはいますが、

そこにジャンプコントロール用のシステム(ナノマシン?)等、

分子レベルで異物が混じったセルマシンなのではないかと・・・

また、チューリップクリスタルと言う名称も、

CCがあの形で発掘されたものでなく、

チューリップを結晶化させたものっぽい雰囲気を醸し出していますし・・・

そんなわけで、チューリップを精製したものがCCなのではないか・・・と思ったわけです。

その、精製済みのCCをアキト君が持っている以上、

彼らが死ぬ前にその精製法は完成したのでしょうし、

関係していてもおかしくないかな・・・と。

そういうことにしました。

ちなみに、精製したのは活動を停止して化石化したチューリップです。

オパール見たいなものですね。

上記の通り活動可能なチューリップは戦前には確認されていなかったと思いますし、

普通のチューリップやただ活動を停止したチューリップがCCになるとすると、

重役たちの極冠遺跡にあるCCの回収・・・と言う台詞が不自然になりますので。

没案として、CCとは、チューリップの種である・・・と言うものもあったんですけどね。

 

 

 

代理人の感想

えーと、当時のCCって確か全て発掘・発見されたものだったような事を

TV版でエリナさんが言ってたたと思いますが、違いましたっけ?

後、原作でのタニさんは別にユートピアコロニーにいたと言うわけでもないと思います。

(少なくとも火星生まれでない=A級ジャンパーでないのは間違いありませんし、木連の人という可能性もあります)

公式設定と時ナデ設定はごっちゃにしないほうがよろしいかと。