「く・・・」





ブロスとディアの正しいアキト君の育て方
 第七十話 心





北辰から後れること十数秒、

俺はDFSをもってナデシコから飛び出した。

まさか、無事にナデシコから帰すことになるとは思わなかったが、

ここまで来ては仕方がない。

いくらなんでも、機動兵器戦でパイロットの四肢だけもらうなんていう器用なことをするのはやはり難しい。

ここはできるだけ速やかにお引取り願おう。

とは言え、それだけではあまりに面白くない。

そもそも、北辰はともかく、六人集を生きて返さなければならない謂れはないのだ。

さて、どうするか・・・

彼我の距離は二百m強、ブラックサレナならともかく、

ノーマルエステの使うDFSで直接切るには、やや間合いから外れる、

このまま切るのは難しい。

小型ジンタイプは一般のジンタイプと比較したらやや高速だが、

エステバリスと比べると、それでも低速、

時間さえかければ間違いなく追いつくが、

もたもたしていると北辰が要らん事を考え付く可能性大、

このまま追いかけるのは、上策とは言いがたい。

となれば、この場から刃を飛ばすしかないな。

そう結論付けると、俺はDFSを起動させると、六人集の乗るほうのジンタイプに斬撃を飛ばした。

出力とため時間の関係上、十分な収束ができず、やや手ぬるい一撃になってしまい、

北斗はもちろん、北辰レベルやアカツキたちでも避けられるかもしれない規模だったが、

今の六人集・・・しかも機体がジンタイプでは避けられるはずがない一撃。

ところが、俺が斬撃を飛ばした瞬間、北辰は六人集のジンタイプを蹴り飛ばした。

結果、俺の攻撃は北辰のジンタイプの左脚部と、

六人集のジンタイプの右腕部を切り落とすにとどまってしまった。

とは言え、余分な行動をした分だけ、敵の速度は落ちていて、

当然その分距離が詰まっている。

ブラックサレナなら、加速力が違うから、完全当時攻撃も可能なんだが・・・

と、知らず知らずの内にブラックサレナと比較している自分を見て、思わず自嘲気味な笑みを浮かべる。

・・・いかんな、ずいぶんとフラストレーションがたまっているらしい。

北斗と決着をつけたいという感情もそうだが、

俺もずいぶんと好戦的になったな・・・

とは言え、そんな感傷にふけっている余裕などない。

俺は、そのままジンタイプに逆袈裟切りに切りかかる・・・

と、そのとたん嫌な予感がして、DFSを開放し、その爆発力で一気に間合いをとる。

次の瞬間、北辰の放ったグラビティ・ブラストが、

六人集のジンタイプごと、さっきまで俺がいた空間を薙ぎ払った。

「味方を巻き添えに・・・か」

ディストーション・フィールドを張っていたとは言え、

完全に防ぎきれなかったのか、機体各所から火花を上げる六人集のジンタイプを見て、俺はそう呟く。

と、次の瞬間、北辰が再び六人集を蹴り飛ばし、

その反動でこちらに急速接近し、こちらをからかうように俺の周りを漂い始めた。

「ちっ、時間切れか」

慌てて攻撃したりせず、一気に秘剣レベルの技を使ったほうがよかったか・・・

どうやら、無意識のうちに北辰達を見くびっていたらしい。

俺に他人を低く見積もる悪癖はないと思っていたんだけどなぁ・・・

ふっ・・・冷静に彼我の戦力差を見極めようとしたらこの様だ。

やっぱり、俺にそういうことは合わないらしい。

といっても、そういう分析は必要だし、

ブロスもディアも参謀役には向かない。

・・・となると、やっぱり、ルリちゃんしかいないかなぁ?

そんなことを考えつつ、適当に北辰を牽制していると、

通信ウインドウが開いた。

「くくく、どうしたテンカワ アキト?

 我を追いかけて来たのではないのか?」

「そんな安っぽい挑発に引っ掛かるほどおろかじゃないつもりでね」

通信ウインドウに移る北辰を睨みつつ、俺は答えた。

「ふむ、我の策を見抜いたか。

 つまらんな、艦隊の前で無抵抗の我を殺せば、おぬしの名は地に落ちたろうに」

「そして、その映像を敵味方に後悔して俺を社会的に抹殺する・・・と?」

俺の言葉に、北辰は何度見ても嫌悪感を誘うあの笑みを浮かべる。

「その通りよ。

 我の命とお主の戦線離脱・・・木連の利益は計りしれんわ。

 地球の軍人は、体面を第一に考えるからな。

 それは派手に、宣伝をするつもりだったのだがな。

 くくくく、慌てる地球連合の軍人の顔が目に浮かぶわ。

 きっと、我等と同じ運命をお主も辿るはずよな。

 それに木星にいる馬鹿な和平推進派を、黙らせる事も可能よ。

 なにせ、お主は木連にとって最強の敵なのだからな!!」

「そうか?

 残念ながら、そのたくらみは半分しかうまくいかないな。

 今は戦争中で、お前は敵だ。

 投降して捕虜になろうとしているというのならともかく、

 重要な機密文書を奪って逃亡中の敵を何でいかして返さなくちゃいけない?

 それに、お前なら知っているはずだ。

 一般人にとって、俺たちが戦っている相手・・・つまりおまえらは、

 木星蜥蜴と呼ばれる謎の無人兵器の集団だ。

 無人兵器を一方的に破壊したところでヒューマニズムを問われるはずもない。

 なぜ俺が軍を追われなくてはいけないんだ?

 むしろ、敵が同じ人間であるとわかったほうが、反戦運動は高まると思うがな」

「なるほど、ならなぜ見逃した?」

策の半分が無意味と看破されたにもかかわらず、

北辰は笑みを絶やさずに言う。

「半分はうまくいかなくても、もう半分はうまくいくかもしれないからな。

 そうか、木連にも和平推進はいるか・・・

 それがわかっただけで十分な収穫だ」

「・・・ふむ、なるほどの。

 今日は実に有意義な出会いであった。

 まだ、お主と我の戦いは始まったばかりよな・・・テンカワ アキトよ」

そういうと、北辰は機を反転させ、スラスターを噴かす。

「ああ、次の戦闘を楽しみにしてるよ。

 もっとも、あいつならともかく、お前じゃ勝負にならんと思うがな」

悠々と去っていく北辰は、俺のその台詞に、一瞬止まったが、

すぐに何事もなかったかのように一直線に帰っていった。





「アキトさん?」

アキトさんと北辰がブリッジを飛び出していった後、

私は逸早く後を追い、その甲斐あって、格納庫でアキトさんを出迎えることができました。

「ルリちゃん、大丈夫?

 ラピスの様子はどう?」

「・・・私は問題ありませんが、ラピスはあまり良いとはいえません、

 早く行ってあげてください。

 それと・・・

 今からどうしますか?」

アキトさんに遅れないように必死に追いかけながら、私は聞きました。

普段なら、アキトさんは私の歩調に合わせてくれるのですが・・・

・・・ふぅ、私もやな女ですね。

私が追いつけるペースなのですから、アキトさんは十分ゆっくり歩いているはずなのに・・・

「・・・なんで遅れたのか、聞かないのかい?」

「私は・・・!!

 ・・・今はそんなこと言っている場合じゃないでしょう?」

心の中を見透かされたような気がして、

思わず反射的に怒鳴りそうになり、慌てて言葉を飲み込む。

その私の言動を不審に思わなかったはずはありませんが、

アキトさんは少なくとも表面的には何事もなかったかのように言葉を続けます。

「遅れたのは、月臣を追い払った後に六人集が攻めてきたからだ。

 一人はやっつけたけど、もう一人はアカツキが相手をしている。

 ラピスが落ち着いたら、アカツキの援護に行きたい。

 細かいことは任せた」

「わかりました」

そういうと、私はその場から逃げるように、

格納庫へと足を進め・・・

「アキト、あの・・・」

という、ユリカさんの声を聞いて思わず足を止めた。





ブリッジはさながら野戦病院のように、負傷者の手当てに右往左往している。

そんな人たちを見ながら、私は不安になっていた。

だから・・・日ごろの悩みを聞いて欲しくて、私はアキトを探しに出た。

そして・・・格納庫へ向かう角を曲がると、こちらへ歩いてくるアキトを見つけた。

「アキト、あの・・・」

アキトに声をかけた瞬間、アキトが鋭くこちらを睨んできた。

アキト?

のどまで出た言葉を、私は飲み込んだ。

私は、艦長として何をすれば良いのか。

今までは、艦長としてただクルーの安全を考えていた。

木星蜥蜴が人間だと聞いて、始めは混乱した。

でも、人間なら、わかりあうこともできるはず・・・

そうも思った。

百年前の諍い・・・

そんな馬鹿げたことで殺しあうなんて、そんなことはおかしいと思った。

恨みを忘れろとは言わない。

そんなこと言える訳がない。

でも、百年前の人が起こした諍いのせいで、

今の人たちがわかり合えないなんて、絶対に間違っている・・・そう思った。

白鳥さんをみて、その思いは強くなった。

この人となら、きっと分かり合える・・・

そういう自信を持てた。

・・・でも、

あの北辰と言う人をみて、

それは無理かもしれないと言う思いが生まれた。

人は、あそこまで薄汚くなれる・・・

人は、あそこまで残酷になれる・・・

人は、あそこまで・・・

それが信じられなかった。

恐かった。

それを、アキトに聞いてほしかった。

アキトに話せば少しは楽になるような気がしたから。

アキトの考えを聞かせてほしかった。

アキトは私の目標だから。

アキトに私の言うことを肯定して欲しかったから。

そう思って、アキトに声をかけた。

でも・・・

いぬくような、鋭い視線・・・

言葉に出しては、何も言っていない。

でも、それは、私に対する叱責のように感じられた。

私は、艦長としての責務を、ちゃんとはたしていたのか?

私は、私がなすべき事をきちんとなしていたのか?

アキトは、ナデシコの危機を一人で何度も救ってくれた。

今回のことだって、

私がちゃんとしていたら、こんなことにはならなかったかもしれない。

でも、実際には何も出来なかった。

アキトが帰ってこなかったら、私たちは皆殺にされていた・・・

私たちは、いつもアキトに頼りっぱなしだった。

だから・・・

アキトに甘えちゃいけない。

アキトは、いつも一人でそんな人たちと戦ってきたんだ。

いつも、皆に頼られてばかりだったから、

誰も頼ることができなかったから、

周りにたくさんの人がいたけど・・・孤独だったんだ。

それがわかったから。

今の私には、アキトの隣に立つことはできない。

私は、変わらなくては行けない。

アキトの、隣に立てるぐらい、強くならなくちゃ行けない・・・

だから、私も、アキトに負けないように見つめ返した。

私の決意を込めて・・・

「・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・」

「・・・」

そして・・・

アキトは、急に微笑んだ。

私たちが馬鹿をやっているのを、ちょっとはなれたところでみている時の、

いつものあの微笑み・・・

やわらかくてきれいなあの微笑み・・・

暖かく、やさしく、それでいて、どことなく悲しげな、あの微笑み・・・

私たちが気付くと、すぐに消えてしまうあの微笑み・・・

「・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・

 ・・・・・・

 ・・・

 そうだな。

 ユリカ、お前は・・・それで良い」

そしてアキトは、そう一言呟くと、ブリッジの方へ消えて行った。





「"・・・そうだな。

 ユリカ、お前は・・・それで良い・・・"

 ・・・ですか」

アキトが見えなくなっても、

私はアキトの消えた方向から目が離せずに、

しばらくの間その方向を見つめ続けていると、

後ろから急に声が聞こえた。

驚いて振り向くと、

そこにはルリちゃんがいた。

驚いている私を尻目に、

ルリちゃんは、そのまま意味ありげに一瞬目を合わせ、

何事もなかったかのように格納庫に向かってやや早足に歩き出した。

「ルリちゃん!!」

私が慌てて呼びとめると、ルリちゃんは振り返り、

さも意外そうな表情で聞き返してきた。

「はい?

 なんですか、ユリカさん」

「え、えぇ〜と・・・

 ル、ルリちゃん、私に何か言いたい事があるんじゃないの?」

「私が?

 ユリカさんに?

 言いたいこと?

 まさか」

ともすると、嘲っているともとれるような口調でルリちゃんが言う。

「ユリカさんに助言できるほど、

 私は偉くありませんよ。

 人間としても、女としても、・・・戦艦のクルーとしても」

「じゃぁ・・・」

ルリちゃんは私の言葉をさえぎり、

射抜くような鋭い目をして続けた。

「私は、アキトさんとユリカさんの意見を全面的に支持します。

 ユリカさんは、それが正しいと思ったんでしょう?

 なら、それが正しいんです。

 アキトさんは、それで良いといったんでしょう?

 なら、それで良いんです。

 アキトさんが認めた、ユリカさんの答え・・・お二人の出した答えに、

 私が異を唱えるなんてことがあり得るはずが無いじゃないですか」

まるで、それが常識だと言わんばかりの口調で・・・

一点の曇りもない目で・・・

射抜くような視線で、私をその場に縛り付けながら・・・

ルリちゃんはそう言い切った。

心のそこから信じていなくては出しえないその口調は・・・

冗談に逃げることを許さないその目は・・・

私をアキトと同列に扱うその視線は・・・

・・・私には重すぎた。

私は、アキトみたいに強くない。

私は、アキトみたいに偉くない。

私はアキトみたいに・・・

その時、唐突に気が付いた。

ついさっきまで、私は同じ目でアキトを見ていたんだ。

なら・・・私は耐えないといけない。

アキトがそうするように、この視線を平然と受け止めなくてはいけない。

それができないと・・・私は、アキトの隣に立てない。

「では、私はこれで・・・」

呆然と立ち尽くしていた私に、ルリちゃんはそういうと、

表情を緩めながら正面を向き直り、格納庫のほうへ歩き出す。

「あ・・・」

その、一瞬の表情が気になって、ルリちゃんに声をかけようとしたとき、

ルリちゃんがそれをさえぎるように後ろを向いたまましゃべり始めた。

「・・・ああ・・・そうでした。

 ちなみに・・・」

と、そこで息をつくと、手を後で組みながらその場でくるりと半回転して続けた。

「私も・・・

 アキトさんとか、ユリカさんとか関係なく、

 私個人の意見としても・・・

 それが正しいと思いますし、

 それで良いと思いますよ。

 応援してますから・・・

 負けないで下さいね、私や、北辰や・・・アキトさんにも・・・」

そう言って、ルリちゃんはさっきの表情を浮かべた。

アキトと同じ、あの微笑み・・・

私には、あの顔はできない。

一体、なにがあったら、あんな顔ができるんだろう?

アキトとルリちゃんに、強い絆をみたような気がして、

私は、再びその場に立ち尽くした。





ユリカさんと別れた後、私は当初の予定通り格納庫へと来ていた。

「ウリバタケさん?」

「ん?

 ああ、ルリルリか」

驚いたことに、格納庫にはウリバタケさんがいました。

爆弾の解体を嬉々としてやっていると思ったんですが・・・

「良いんですか、爆弾の方は?」

「それも重要だがな、

 こっちはこっちで大惨事でな。

 こんなところでロケットパンチなんか使うなってんだ。

 弾薬やら推進剤やらが山積みなんだぞ」

本気で怒っている声でウリバタケさんが言います。

「・・・アキトさんのエステは使えますか?」

「は?

 まだ使う事態があるってか?

 ・・・残念だけどよ、そいつは無理だぜ?

 これで動いていたこと自体が奇跡なんだ。

 すまねぇが、こいつを修理するのにはしばらくかかる」

「そうですか・・・」

「アキトの奴なら、他の機体でも何とかなるんじゃないか?」

確かに、相手がうわさの北斗さんだというのならともかく、六人集であれば、

アキトさんなら、他の人用に調整した機体でも問題なく戦うでしょう。

しかし、ジャンプフィールド発生装置はアキトさんのエステバリスにしか搭載していません。

となると・・・

まさかジャンプフィールド発生装置を取り外して他の機体に付け直すと言うわけには行きませんから・・・

「月でアカツキさんがピンチです。

 機動兵器単位でボソンジャンプができるのは、アキトさんのエステだけですから・・・」

「こんなこともあろうかと・・・って言いてぇけどよ、

 そいつはさすがに・・・」

仕方がありません。

月には、一応月面フレームがあるはずです。

戦えないことはないでしょう。

「わかっています。

 すいませんでした、忙しいところ・・・」

「おいルリルリ!!」

トボトボと・・・さっきのことで、アキトさんと顔を合わせにくいので・・・

その場を立ち去ろうとした私に、ウリバタケさんが声をかけてきました。

「ハイ」

「そんな顔するなよ、おれが悪者見てーじゃねぇか。

 仕方ないな」

と、そこで一端言葉を切り、真面目な表情で続けます。

「・・・アキトの奴呼んでこい。

 事と次第によっちゃ、何とかなるかも知れねぇ」





「痛〜。

 ウリバタケさん、殴るのは良いですけどね、

 先にラピスを下ろさせてくださいよ」

右腕には、脅えきって抱きつくラピス・・・殴り飛ばされても離れなかった・・・を抱きかかえており、

左手は火傷をしていてもう少し使えない・・・

俺一人なら、受身など取らなくても別にどうってことはないが、

ラピスを抱いている状態では、衝撃はほぼ完全に吸収してやらなくてはいけない。

だが、如何に俺でも、両腕がつかえない状態で、完全な受身を取るのはさすがに骨が折れる。

ウリバタケさんが怒っているのは当然だから、それについて文句を言うつもりはないが、

もうちょっと考えて欲しい。

「・・・俺としてはまだ殴り足りねぇが、今は良いだろ。

 ルリルリから話は聞いた。

 月に行きたいから、こいつが使いてぇんだってな。

 しかしな、見てわかる通りこいつはボロボロだ。

 だが、関節部分は完全にいかれてるが、アサルトピット周りは致命的というほどではねぇ。

 その気になれば、細かい調整まではできねぇが、十分で一応は使える状態に持っていってみせる。

 ・・・どうする?」

「どうするって・・・」

ウリバタケさんの言いたいことがいまひとつつかめない。

「・・・こいつもそうだし、ブラックサレナもそうだ。

 あれは一体なんだ?

 誰があんなもん作ったんだ?

 ・・・それを教えるって言うんなら、何とかしてやる」

「それは・・・」

・・・どうする?

二回目の時のように、未来の技術だとだけ言って、煙に巻くか?

しかし、この口調では、細部まで説明しなくては納得しまい。

となると、話をするしかないが・・・

・・・確かに、いつかは言わなくてはいけないことだ。

・・・仕方がないな。

「わかりました。

 帰ってきたら説明します」

「ああ、わかった。

 ならさっさと乗り込みな」

と、ウリバタケさんがエステを指差す。

「え?

 でも、まだ・・・」

「馬鹿野郎、

 んなもんとっくに済んでるに決まってるだろ。

 さっさとしろ。

 あぁ、それと一つ言っておく。

 一応動くことは動くが、ボロボロなことに変わりはない。

 できるだけ丁寧に扱えよ」

「ハイ」

俺は、抱きついてはなれないラピスを何とか説得しながら、返事をする。

「で、武器はどうする?

 バーストモード使い終わった後で無理に動かし続けたせいで、

 ジェネレータはくたばりかけてやがるが、

 こいつを取り替えるのは時間がかかるから、そのままになってる。

 一応、応急処置はしたがな。

 だが、バーストモードは無理だぜ?」

「・・・フェザーライフル。

 あれなら、機体の調整が不完全でも何とかなります」

「わかった、一分で準備する。

 それまでに、ラピスちゃんをなだめとくんだな」





あとがき

あう・・・

このお話で、一番壊れているキャラは、強いて言うならアキト君なのですが、

アキト君の壊れ様が前面に出ない・・・

ルリ君の壊れ様の方が目立つ・・・

何で?



ともあれ、アキト君とルリ君とユリカ・・・

三人の思惑はそれぞれ微妙にずれています。

・・・となると、個人的には、それぞれが理想が中途半端な形で実現して、

結果的に誰も幸せになれず・・・というのが好きなんですが・・・

・・・そういうわけにはいかんでしょうねぇ。







管理人の感想

アリア・ミリディールさんからの投稿です。

ついにウリピーがキレましたな(苦笑)

ま、あそこまでこき使われて、何も説明無しじゃやってられないのでしょう。

月から帰った後のアキトが、何処まで真実を話すのかが楽しみですね。