機動戦艦ナデシコ
ORIGINAL GENERATION






第1話

運命』の幕開け







此処はアステロイド帯に位置するターミナルコロニー『シラヒメ』

『ヒサゴプラン』のイッカクを担うコロニーの一つだ

そのシラヒメは現在、謎の機動兵器の襲撃を受けていた

防衛ラインに配置されていたステルンクーゲルは次々と破壊されていく

そんな中、シラヒメ内部の機密区域の通路では

異質な格好をした7人組が静かに歩いていく

彼等の後ろには、おびただしいまでの大量の死体が転がっていた

7人組はある部屋に入ると、中の研究員の一人をナイフで突き殺した

人を殺したにも関わらず、何の感慨も抱かない狂気の目

研究員達は脅えながら訴える



研究員「まってくれ、我々がいなくては研究が」



それを聞き、編み笠をかぶった男達

そのリーダーたる北辰は言い放った



北辰「機密保持だ」



研究員達の顔に恐怖が色褪せる

部下の北辰衆は不適な笑みを浮かべ、一気に研究員達を虐殺する

北辰同様、彼等も人を殺す事に何の感慨も抱かない

まさしく腐れ外道の集団と言える

全ての研究員が息を引き取った瞬間

漆黒の機動兵器が隔壁を破壊して現れる

それを見た北辰は笑みを浮かべて一言



北辰「遅かりし復讐人。未熟以外の何者でもないわ・・・・・・滅!」



次の瞬間、北辰達は閃光と共にその場から消えた

漆黒の機体『ブラックサレナ』

それに乗っていたアキトは舌打ちすると、機体をシラヒメから脱出させる



アキト「また遅かったか・・・・・・ラピス、撤収する。軍の索敵センサー外の適当なところで待っててくれ」


ラピス「了解」



通信を終えると、ブラックサレナは不思議な光に包まれ、そのまま虚空へと消えた

まるで何事も無かったかのように














アメリカ代表「宇宙をめぐる大螺旋・・・ヒサゴプラン。そのうち、4つのコロニーが破壊されました
        4つです!何のために!?誰が!!これは断じて許されない」


木蓮代表「今度は土星トカゲ、なんてのはナシですよ」


アメリカ代表「・・・!?何だ?それはどういう意味だ!?」



地球連合臨時会議室では、無能な代表者達が無意味な会談を開いていた

もっとも、互いに責任転換や挑発だけで、まともな話し合いになどなっていない

けっきょくはヤジの飛ばし合いになった



議長「静粛に!それで、本当に見たのかね中佐?」



Uの字型に配置された机の内側にジュンが立つ

それから周囲を見渡し、強い口調で答える



ジュン「私は見ました。確かにボソンジャンプです!!」



必死に呼びかけるジュンを横目に

議員達や代表者達は鼻で笑った



議員A「コロニー爆発の影響で、付近の艦、センサーの乱れも著しいとの報告があるが?」


議員B「それに、全高8メートルの機動兵器が跳躍と言われてもねぇ」


ジュン「誤認だと言うのですか?」


議員A「その通り」


議員B「考えてもみたまえ!現時点では、そんなサイズでジャンプ可能な人型兵器など作れない
     それが地球と木蓮の出した答えなんだ」



それからジュンはすぐに追い出される

後ろを振り返ってみると、今度は互いが開発した機体ではないかともめていた














ジュン「くそっ!!



ジュンは力いっぱい壁を殴りつけた

そんな様子を見ていたムネタケ父は、悠長にコーヒーを飲みながら一言



ムネタケ父「コラコラいかんよ」


ジュン「あいつ等、はなっからやる気がないんだ
     何が事故調査委員会だ!」


ムネタケ父「かくして連合宇宙軍はカヤの外。事件は調査委員会と統合軍の合同捜査と相成り・・・・・・」


ジュン「参謀!!



まるきっり他人事のような口調のムネタケ父を咎める

それでもムネタケ父は余裕な表情で話を続ける



ムネタケ父「ハッハッハッ。ま、確かに黙って見ている手はないからね
       だから早速行ってもらったよ。ナデシコにね」


ジュン「ナデシコ?」














ルリ「・・・・・・・・・こんにちわ」



誰とも知れずにあいさつをする

宇宙を駆けるナデシコB

そのブリッジには、ルリ、サブロウタ、ハーリーがそれぞれの役職を果たしている

ハズなのだが・・・・・・



『サーブちゃん!』


『最近ゴブサタじゃなーい』


『ツケ払えよ!』


『こらーッ、サブーッ!何で電話くれないの?
 ホントにもう、他の女とイチャイチャしてたら、許さないんだから――――ッ!』


『留守番映像サービス、以上です』



サブロウタは自分の留守番映像を見ていた

全員が全員女性で、男からは一つもなかった

そんな様子を見せつけられていたハーリーは文句を言う



ハーリー「・・・・・・モテモテですね。サブロウタさん・・・」


サブロウタ「あ、見てたの?」


ハーリー「見たくなくても見えるでショ」


サブロウタ「あ、そーか♪」



良く見なくても、ハーリーとサブロウタはお隣に座っている

全てが筒抜けになっいてる



ハーリー「ボクは・・・木連の軍人さんはマジメで勇ましい人達だとばかり思っていました・・・・・・」


サブロウタ「あー、それはどぉもぉ――」


ハーリー「高杉大尉!!」



あまりにやる気の無いサブロウタの答えに

ハーリーは"カチン"ときて、いつもより大きな声を出す

ルリはルリで、いつもの事だとほっといて読書する

しばらくして、ターミナルコロニー『タキリ』が見えてきた



女性オペレーターA「艦長、前方にターミナルコロニー『タキリ』を確認」



その声でハーリーは仕事に集中する



ハーリー「ルート確認。タキリ、サヨリ、タギツを通って『アマテラス』へ」



一転してブリッジ内の空気が引き締まる



ハーリー「光学障壁展開」


ルリ「ナデシコB、速度このままでチューリップへ進入。各員最終チェックよろしく」



ルリの声と共にオペレーター達の報告が次々と入る

オペレーターは全員女性なので、サブロウタには嬉しい光景だろう



女性オペレーターA「通信回路閉鎖」


女性オペレーターB「生活ブロック準備完了」


女性オペレーターC「エネルギー系統OK」


女性オペレーターD「艦内警戒体制パターンBへ」


サブロウタ「フィールド出力異常なし、その他まとめてオールオッケイ!」


《よくできました》



ナデシコはチューリップ内部を進む

中は虹色をグチャグチャにしたような、異常といえば異常な光景が広がっていた



ハーリー「フェルミオン=ボソン変換順調」


サブロウタ「艦内異常なし!」


ハーリー「レベル上昇中、6、7、8、9・・・・・・」


ルリ「じゃんぷ」




ルリのナノマシンが発光して

つぶやいた瞬間、ナデシコBはアマテラスへとジャンプした














その頃

カケルはアマテラスへとやって来ていた

片手に火星ソーダを手にし、のんのんと通路を歩いていた



カケル(そろそろナデシコが着いたかな。もう少しゆっくりしたかったんだけど
     これじゃちょっと無理そうだな)



いつの間にか人気のない通路に差し掛かっていた

人気はないが、確かに誰かが使用している形跡がある



カケル(ヒサゴプラン・・・なるほど、思ったとおり裏がありそうだな
     後ろからついて来ているのは・・・2人・・・いや、3人かな・・・?)



気配を完全に消し、闇からこちらを見据えている

並みの達人ではなく、プロの暗殺者でもこうはいかない

完全に隔離されたブロックに差し掛かった頃

火星ソーダを完全に飲み干して、その場に足を止める



カケル「・・・人気はない。出てきなよ」



カケルは空になった缶を後ろに投げる

すると、空き缶は空中で切り裂かれて落下した

そこから編み笠をかぶった三人の男が現れた



北辰衆A「我等の存在に気づいていたか」


カケル「それだけ気配を絶っている連中が近づいてたら、そりゃ気づくでしょ」



しかし、それはカケルだからだ

普通の人間では気づくのは不可能である



北辰衆B「さすがはかつての英雄」


北辰衆C「だが、我等3人を相手に何秒持つかな?」


カケル「さてね」



3人の北辰衆がそれぞれ3方向に跳ぶ

それから一斉にカケルに襲い掛かるが、まったく動じる気配がない

油断してるわけじゃないし、相手をなめてるわけでもない

ただ、防げる自信があったのだ



カケル「


「「「なっ!!」」」



その場を動かず、軽く気合を入れて咆哮する

すると、カケルの体から、白い炎のようなオーラが発せられた

それを見た北辰衆の動きが一瞬だが止まった



カケル「だあっ!!」



その隙を付き、一気に距離を詰めて、真ん中の北辰衆を殴り飛ばす

だが、北辰衆の男はしっかりガードしていた



カケル「あれ?今ので決まったと思ったんだけどな
     やっぱり、昔に比べたら身体能力も気のコントロールも落ちてるな」



自分の手を握ったり開いたりしながら言う

北辰衆達は再び三方を囲み、隙を窺っている



北辰衆B「なかなかの威力。きゃつは気の使い手と見た」


カケル「ご名答」



秘密にするわけでもなく、あっさりと暴露する



北辰衆A「気は生命力の源。使い続ければ命を落とす」


北辰衆B「それをあのように放出し続けるとは、まさに愚の骨頂」


カケル「そうかな?」



人の気の許容量は限られている

熟練の使い手でも、そこまで気を放出していられる時間は少ない

それを常に解放し続けていては、普通なら数分で気を使い切り

ヘタをすれば、命を落とす可能性は充分にある



北辰衆A「その強がりがいつまで持つかな」


カケル「いつまでか分からないけど、もう1分は経ったけど」


北辰衆B「ふん」



今度は3人同時にナイフを投げつける

2本のナイフを避け、一本を人差し指と中指の間で受け止め、それを投げ返す

北辰衆はそれを簡単に避けると、一定の距離を保ちながら、時間差で攻撃を仕掛けてくる



カケル「とっさに戦法を変えてくるあたり、強かな連中だな」



反撃に転じる隙を与えてはくれない

それでも攻撃は全て防いでいるので、時間だけが過ぎていく

北辰衆の望んだ持久戦の態勢になった














カケルが戦闘を始めた頃

ルリ達3人は、アマテラスに入港するなり司令室に向かった

そこには、アマテラスの警備責任者であるアズマ准将がいた

アズマは3人を見るなり、室内に響き渡るほどの野太い怒声を放つ



アズマ「何だ貴様らは!?



アズマの怒声に竦むハーリー

軍人としては少し情けない

そんなハーリーを横目に、ルリとサブロウタが涼しい顔で自己紹介を始める



ルリ「地球連合宇宙軍少佐、ホシノ・ルリです」


サブロウタ「同じく連合宇宙軍大尉、タカスギ・サブロウタ」



そんな二人の態度がアズマをさらにヒートアップさせる

ツルツルの頭から湯気が噴出す



アズマ「そんな事を聞いているのではない!何で貴様らがそこにいる!


ルリ「宇宙軍が地球連合所有のコロニーに立ち入るのに問題は無いはずですが」



ルリの回答にアズマの怒りが限界を超える



アズマ「ここはヒサゴプランの中枢だ!開発公団の許可は取ったのか!?



それに対して、サブロウタは呆れたように言う



サブロウタ「取ったからいるじゃん」


アズマ「何ィ!!


ハーリー「い・・・・・・いや、ただの横浜弁です。じゃんじゃん♪ハハ・・・・・・」



その場の空気に耐え切れず、場を和ませようとするハーリー

だがルリは、淡々と現時点まで起こった出来事を語る



ルリ「先日のシラヒメ事件において、ボソンの異常増大が確認されています
   ジャンプシステムの管理に問題がある場合、近辺の航路並びにコロニー群に影響があります
   これはコロニー管理法の緊急査察条項が摘要されますので、あしからず」


サブロウタ「ま、ガス漏れ検査だと思っていただけたら♪」



その言葉にアズマはキレる

アズマはヒサゴプランは完全な計画であると自負している

さらに宇宙軍を毛嫌いしているので、そこまで言われて黙っているわけがない



アズマ「ヒサゴプランに欠陥はない!!



激昂に激昂を重ねるアズマ

そこにアズマの横に控えていたスーツ姿の男が、初めて口を開く



ヤマサキ「まあまあ准将。宇宙の平和を守るのが我らが宇宙軍の使命・・・・・・
      ここは使命感に燃える少佐に安心していただきましょう!」



怒れる暴君であるアズマを宥めるヤマサキ

それからヤマサキの提案をしぶしぶ了承するアズマだった

ルリ達は、その部屋から出ていった

それを見て、ヤマサキは不適な笑みを浮べていた














司令室から退室し、ルリはサブロウタ達とは別に行動していた

アマテラスの内部を見せる条件として

子供達と一緒に見学コースを回るとのことだった

もちろんこれはアズマの嫌がらせである



ヒサゴン「みなさん、こんにちは〜〜ッ」


「「「「「こんにちは―――ッ」」」」」



ヒサゴプランのマスコットである『ヒサゴン』が子供達にあいさつする

すると子供達は、元気な声であいさつをする

そこに案内役の女性ガイド、マユミが自己紹介をする



マユミ「未来の移動手段、ボソンジャンプを研究するヒサゴプランの見学コースへようこそ!
    ガイドは私、マユミおねえさんと〜・・・」


ヒサゴン「ぼくヒサゴン!」


「「「「「わ〜い」」」」」



子供達が無邪気にはしゃぐ

それからマユミは、子供達の後ろにいるルリを紹介する



マユミ「なんと、今日は特別ゲストです
    みなさんと一緒にコースを回ってくださるのは、あの!」


ヒサゴン「そう、あの!」


マユミ「史上最年少の天才美少女艦長、宇宙軍のホシノ・ルリ少佐で〜す!」


ルリ「よろしく」


「「「「「わ―――い!!」」」」」



ルリは投げやり気味にVサインをする

それを子供達は本当に嬉しそうに歓迎した

ルリは天才とか美少女と呼ばれるのは好きではないが

こういう子供達の無邪気な笑顔は嫌いではなかった

一通り子供達が落ち着いたところで、アマテラスの見学ツアーが始まった














ルリが子供達と相手にしている頃

アズマとヤマサキはお茶を飲みながらその様子を見ていた

アズマはひたすら上機嫌で

ヤマサキはそれを呆れているが、表情に出さずに相手をする



アズマ「ガ――ッハッハッハッ!!
    子供と一緒に臨検査察か。愉快愉快・・・・・・!
    ガ――ッハッハッハッハッ!!


ヤマサキ「ハハ・・・・・・。しかし、あの少佐さんにはカワイそうな事をしましたな
     ・・・・・・宇宙軍も最近の事件に関しては、メンツもあるんでしょうが・・・・・・」


アズマ「宇宙軍にメンツなぞない!!なんだ、あの小娘は!?


ヤマサキ「嫌がらせですよ、宇宙軍の。子供の使いだと思えば・・・・・・」


アズマ「使いはとっとと返すに・・・・・・限る!



アズマはそう言い放つと

皿に盛られた菓子を鷲掴みする

ヤマサキはそれを眺めながら、腕時計を見ていた

腕時計のパネルには、4人の姿が映し出されていた


ヤマサキ(妖精だけではなく、翼まで現れるなんて・・・これはチャンスだな)














ルリが道化を演じ、カケルが闘っている頃

ハーリーと三郎太はアマテラス中枢にハッキングを行っていた



ハーリー「・・・・・・フム。・・・・・・領域11001までクリアー・・・・・・。そろそろ行こうか?」


≪OK≫



ウインドウボールを展開してオモイカネにアクセスする

オモイカネが応じると、得られたデータを識別する



ハーリー「データ検索、絹ごし。出来たスープを順次ボクに・・・・・・
      スピードはわんこの中級・・・・・・」


サブロウタ「よッ!」


ハーリー「うわぁ―――――ぁ・・・・・・」



独り言を呟いていたハーリーだったが

突然ウインドウボールの中に現れたサブロウタの顔を見て、驚きの叫びを上げる

周囲のスタッフはその様子を見て、苦笑する者も何人かいた

ハーリーは必死に息を整えようとし

サブロウタは追い討ちを掛けるようにからかう



ハーリー「ハァハァ・・・・・・」



サブロウタ「何驚いているんだ、お前?」


ハーリー「ウィンドウボールの中に・・・・・・、無断で入らないで下さい・・・・・・」


サブロウタ「いいじゃん、別に知らない中じゃないんだから♪」


ハーリー「な、何言っているんですか、エッチ――・・・・・・!!



ハーリーの怒った顔が飛び散る

予想通りの反応に嬉しくなるサブロウタ

それからハーリーの表情は一気に暗くなる



ハーリー「はぁ・・・・・・でも、いいんですかねェ」


サブロウタ「何だよ、いろいろ忙しい奴だナ」


ハーリー「だってこれってハッキングですよ。いくら協力してくれないとはいえ・・・・・・」


サブロウタ「しょーがねえさ。調査委員会も統合軍も何か隠しているみたいだしナ」


ハーリー「でも・・・・・・艦長が、かわいそうじゃないですか・・・・・・」



ハーリーはまだ肝が煮えきってない様子

サブロウタはそんなハーリーの頬を掴み、引っ張ったり、抓ったりする

ハーリーの顔がグチャグチャに変形する



ハーリー「ヴ。・・・・・・ヴ――ヴ――ヴ――ぐえ」


サブロウタ「なぁにいきなりおセンチになっているんだよ、この口が、この口が――
       ま、その艦長がせっかくマヌケを演じてるんだ。そのスキに掴めるものは掴んじまおうぜ」


ハーリー「ヴヴ」



頬を引っ張られているため、何を言っているのかは分からない

一応表情は引き締まっている

サブロウタに頬を離されると、気を取り直して作業に取り掛かる














マユミ「はい、以上、超対称性やらムズカシイ話しをいたしました!」


ヒサゴン「わかったかな?」


「「「「「わかんなぁ――い」」」」」



元気に返事をする子供達

子供にそんな高度な知識が解かるはずがない

もっとも、大人でも常人の頭では理解するのは不可能だろう

マユミはそんな子供達の様子を窺いながら説明を続ける



マユミ「要するに、このチューリップを通る事によって、非常に遠い距離
    それこそ地球から火星まで、一気に移動できるのです」


「「「「「うわぁ――――」」」」」



ヒサゴンは両手(?)から鳩を出す手品をする

それを見てはしゃぐ子供達

それでもマユミの説明は続く



マユミ「えー、ただしですね、今の段階では、フツーの人は使えないんですね
    生身の人間がこれを利用するとですね、その身体をですね・・・・・・」


タケシ「改造しちゃうんですか?」


「「「「え?」」」」



一人の少年の言葉に、他の子供達が反応する

子供とは時として、とんでもない事を無邪気に言ってしまうものだ



マユミ「そ、そこまでロコツなもんじゃなくて、その、DNAをですね・・・・・・調査してですね・・・・・・」


チカ「そーいやTVでも言っていたよ。反ジンドー的とか何とか」


ユキ「へ―――」



一度日のついた子供達は止まらない

ルリのいる手前、マユミは説明する言葉に困っていた

それを察したルリはマユミに言った



ルリ「私の事は気にしなくていいですよ」


マユミ「あ、はい・・・・・・今の段階では、ボソンジャンプに生身の人間が耐えるには
    その・・・・・・DNAをいじらないとダメなんです」


「「「「「ええ――ッ!?」」」」」


ユキ「少佐、改造人間?」


ルリ「ええ」


タケシ「スッゲー、まじだぜ」



驚き、質問攻めの子供達

ルリは表情にこそ出さないが、内心は悲しい気持ちになっていた

それでも子供達の真っ直ぐで純粋な瞳を見て

他のボソンジャンプに耐えれる方法を教える



ルリ「あ、でもネ。高出力のディストーションフィールドを使えば、普通の人もジャンプできますよ
   戦艦とか・・・・・・」



ルリの言葉にはしゃぐ子供達

そんな子供達を見ていると、自然に微笑んだ














ハーリー「あ――、やっぱり。公式の設計図にはないブロックがありますね」


サブロウタ「襲われるなりの理由ってやつかナ?さあ、続けていってみよう!」



すると、次々とウインドウが開く

そこにはボソンジャンプが可能なジャンパーの実験結果が表示される



ハーリー「ボソンジャンプの人体実験?コレ、全部非公式ですよ!」


サブロウタ「おいおい、こいつは・・・・・・」



サブロウタの言葉を遮るように警告音が響く

それにハーリーが素早く反応する



サブロウタ「ばれたのか?」


ハーリー「モード解除、オモイカネ、データブロック!進入プログラム、バイパスへ!」


サブロウタ「なに!」



メインスクリーンに巨大なウィンドウが開く



OTIKA  OTIKA  OTIKA  OTIKA  OTIKA  OTIKA
OTIKA  OTIKA  OTIKA  OTIKA  OTIKA  OTIKA
OTIKA  OTIKA  OTIKA  OTIKA  OTIKA  OTIKA
OTIKA  OTIKA  OTIKA  OTIKA  OTIKA  OTIKA
OTIKA  OTIKA  OTIKA  OTIKA  OTIKA  OTIKA
OTIKA  OTIKA  OTIKA  OTIKA  OTIKA  OTIKA
OTIKA  OTIKA  OTIKA  OTIKA  OTIKA  OTIKA
OTIKA  OTIKA  OTIKA  OTIKA  OTIKA  OTIKA




サブロウタ「・・・・・・これは一体・・・・・・」














カケル「はぁはぁ・・・・・・」



カケルは息を切らして腰を落としていた

それでも外傷はまったくなく、体を纏うオーラも健在だ



北辰衆C「さすがにそろそろ限界だな」


北辰衆A「ならば我等も」


北辰衆B「本気で行かせてもらう」


「「「はっ!」」」



カケルの目の前で、北辰衆の3人もオーラを纏った

それはカケルの白と違い、3人とも茶色いオーラを纏っていた

その様子を見て、立ち上がって構える



北辰衆B「気を纏うくらいなら我等とてできる」


北辰衆A「貴様の命運もこれまで」



再び3人の北辰衆が襲ってくる

今度の北辰衆は気を纏っているので、スピードもパワーも上がっている

北辰衆は勝利を確信した・・・が



カケル「うおぉぉぉぉ―――――



カケルは全ての攻撃を防いで反撃に転じた

一気に3人とも蹴り飛ばす

突然の反撃に驚く北辰衆



北辰衆B「バカな!もはや限界のはず」


カケル「全然。ようやく馴染んできたところだ」



カケルの言ったとおり、乱れていた呼吸も落ち着いていた

それに比べ、北辰衆は少なからずダメージを受けていた



カケル「だからそろそろ終わらせてもらう」



カケルは掌に気を生み出し、止めを刺そうとする

だがその瞬間、周囲に謎のウインドウが次々と表示される



カケル「なんだこれ・・・OTIKA・・・おちか?」



一瞬動きを止めるカケル

北辰衆はそれを見逃さなかった



北辰衆C「ちぃ!」



北辰衆から光が放たれる

光が収まったとき、そこに北辰衆の姿はなかった

カケルは周囲に気を配り、気配が無いことを確認すると、体を纏っていたオーラを消す



カケル「行ったか。それより、これはどうなってるんだ?」



表示されるOTIKAのウインドウが動き回る

何かアマテラスに起こっていることだけは理解できるが

その全貌までは理解できない

OTIKAを凝視していると、一つの事に気が付いた



カケル「OTIKA・・・まさか!!」



確信と疑問を抱えながら、脱兎のごとく駆け出した

まるで100mを7秒台で走るくらいのスピードだ














ルリ達の見学コースにも『OTIKA』のウインドウが出現していた

子供達は好き勝手に遊びまわり

大人達は慌てふためいていた

そうしたなか、ルリは三郎太達に連絡をとる



ルリ「・・・・・・ハーリー君、ドジった?」


ハーリー「ぼ、僕じゃないです!アマテラスのコンピューター同士のケンカです!」


ルリ「ケンカ?」


ハーリー「そうなんです!そうなんですよ!アマテラスには非公式なシステムが存在します
      今の騒ぎは、まるでそいつが自分の存在をみんなに教えてると言うか
      単にケラケラ笑っていると言うか」



ハーリーの話を黙って聞き、OTIKAのウインドウを見る



ルリ「・・・・・・・・・」



OTIKA

AKITO



ルリ「!!」



一つの事に気づき、金色の瞳を大きく見開いた

それからすぐその場を駆け出す

それをハーリーのウインドウが追いかける



ハーリー「あッ、艦長!?ちょっと待ってください!どこに行くんですか?」


ルリ「ナデシコに戻ります」


ハーリー「へ?」


ルリ「敵が来ますよ」


ハーリー「え"」



珍しく慌てているルリ

敵と聞いてハーリーは慌てふためく














アマテラスの近辺宙域

そこに少量のボソン反応が現れる

それを統合軍司令部が察知した



オペレーターA「ボース粒子の増大反応」


オペレーターB「全長約10m、幅約15m!」


オペレーターA「識別不能、相手応答ありません」



宇宙空間に波紋が広がり、徐々にその姿を現してゆく

まるで鳥をイメージしたような漆黒の機動兵器『ブラックサレナ』

そのコックピットの中では、闇の皇子が微笑していた














ルリは通路を走りながら一つの事を考えていた



ルリ(予感は的中、敵が来た。あれは暗号?あれは偶然?
   でも、あの人は・・・・・・あの人たちは・・・・・・)



ルリの脳裏に過去の出来事が浮かび上がる

アキトとユリカの葬儀・・・・・・悲しい記憶の断片

そこに浮かんだアキトは、振り向いて笑い


ルリちゃん


ルリ「!?」



色々と考えながら進んでいると、5人の兵士たちが立ち塞がった

兵士たちは銃を構えて通路を塞ぐ



兵士A「ホシノ・ルリだな。我々と一緒に来てもらおう」


ルリ「お断りします」



ルリはそう言うと、腰に掛けていた銃を取り出す

それでも兵士たちはゆっくりと近づいてきた

兵士たちは、ルリに白兵戦の経験がまるで無い事に気づいているからだ

実際に、ルリの手は少し震えていた



兵士B「手が震えてるぞ。人を手にかけた事はないだろう」


ルリ「くッ・・・」



ルリは舌打ちして銃のトリガーを引こうとした

その時、突然壁が何かに打ち砕かれてる

その砕かれた壁の破片の一部が、兵士の一人の頭部にぶつかる

兵士の一人は倒れて気絶した



兵士C「な、なんだ!?」



兵士たちは当然だが、ルリも驚いて壁に空いた穴に目を向ける

すると、一人の青年が咳きをしながら現れた



カケル「けほッ、ちょっと煙が多いな。近道も考え物だな」


ルリ「あ、あの人は・・・・・・」



ルリはカケルに気づいたが、カケルはまだ気づいてない

カケルはゆっくり穴を飛び越えると、倒れた兵士の背中に乗ってしまった

すると、4人の兵士が取り囲んで銃を向ける

それでもカケルは呆けた様子で問い掛ける



カケル「誰だ・・・・・・おまえら?」



それを聞いて兵士たちは怒る



「「「「おまえこそ誰だ!?」」」」


カケル「この人、こんな所で寝てると風邪引くよ」


「「「「おまえがやったんだよ!!」」」」



兵士たちの怒りを完全に無視している

時間が惜しいので、さっさと行こうとしたとき

ふと目の前のルリの姿が目に入った



カケル「あ、ルリちゃん」



手を振りながらルリの方に向かうと

兵士の一人が銃を頭に突きつける



ルリ「カケルさん!」


兵士D「ふふふ。こいつの命を助けたければ、我々と一緒に来てもらおうか」


ルリ「・・・・・・わかりました」



ルリは銃を床に落とし、ゆっくりと兵士たちの所に歩いていく

兵士たちはニタニタと笑い、完全に油断をしていた



カケル「物事は終わりまで気を抜いちゃダメだよ」


兵士F「何ッ!?」



カケルの右手から光が放たれる

すると、兵士たちは光に撃たれ、その場に倒れこんでしまった

カケルは周囲を少し確認すると、ルリに近づき、笑顔で再会の挨拶をする



カケル「久しぶりだねルリちゃん」


ルリ「はい。3年ぶりですね」



『翼の守護者』と『電子の妖精』は3年ぶりに再会した



















〜〜〜あとがき〜〜〜




何とか無事に1話に辿り着けました

カケルや北辰衆の方々が纏っていた気のオーラ

これはドラゴンボールの気、ハンター×ハンターの念、NARUTOのチャクラ

これらを足して、3で割った感じと思っていただければ結構です(知らない人はすいません)

もちろん個人によって様々な色や効果を及ぼします

その後も数人ほど使い手を出す予定になっております

そのうち特殊能力でも持たせてみますかね


次回はカケルがエステで色々と戦闘を行います





感想代理人プロフィール

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管理人の感想

アテムさんからの投稿です。

う〜ん、メインとなるストーリーはほぼ劇場版そのままですね。

台詞等もそのままなので、どうやってカケルなどのオリキャラを上手く絡ませるのが今後の問題ですね。

未だカケルとルリ達の関係が分かりませんが、謎解きに期待します。

しかし、『気』と一言で言い切ってますが、それぞれの原作を見る限りかなり個性に富んでると思いますが(苦笑)

ま、その辺りも今後に期待、ですねw