ミナトが負傷してからしばらくして・・・・・

ナデシコは月のネルガルドックへと向かうことになった

「ふぅ・・・・負傷者は多く出たけど・・・全員命は取り留めたようね」

「そうですね、でも・・・提督はどう思いますか?

あの・・・・・蜥蜴さんのことについて」

艦内被害報告に目を通していたムネタケにユリカが訊ねる

「・・・・真実はいくら隠してもいつか表に出るもの・・・・

・・・・まだ・・・今は表に出るときではないようね・・・・」

「では・・・・いつ表に出るんですか?」

「・・・・・もう・・・すぐよ」

ムネタケはそういうと再び被害報告の方に目を通し始めた

「・・わかりました、ナデシコ、異常が無いようでしたら最大速度で月に向かいます

アキト達と合流後、ミナトさんの処遇について相談します」

「ユリカ・・・・テンカワ達を呼んだ方が早いんじゃない?」

「それじゃあ駄目だよジュン君、アキトが離れている間に敵の攻撃が始まる可能性もあるもの

そうなったら・・・・今の月面防衛艦隊の力じゃあ支えきれない可能性のほうが大きい・・・・

だから・・・ナデシコを合流させた上でアキト達と合流するのが一番!!」

ユリカはジュンの進言に対しそう言いきった

「艦長・・・・それでいいんですか?」

メグミが・・・・ユリカに訊ねる・・・その中には・・・ある意味が含まれていた・・・・

「うん・・・今まで・・私はアキトに甘えてたから・・・・・・それに・・・・・ううん

・・・・私は・・・アキトの荷物にはなりたくない、アキトの役にたちたい

その為には・・・・私情を殺して最善の策をとらないとね」

メグミの言葉の意味を理解しユリカは満面の笑みでそう返した

ジュンとムネタケはそれを満足そうに見ていた

ユリカの指揮官としての覚醒・・・・それはナデシコにとって大きなプラスとなっていく・・・・・




機動戦艦ナデシコif
『新たなる刻の歌』
第十五話 俺達の『戦争』の始まり

ほぼ同時刻・・・・木連戦艦ゆめみづき艦長室

「傷口はいたみませんか?・・・・・何かほしい物はありませんか?」

「大丈夫よ・・・・そこまで気を使ってくれなくても良いわよ白鳥さん」

・・・今の言葉でわかっただろうが艦長室には解毒治療を受けたミナトと白鳥九十九がいた

「はあ・・・・何かほしい物があれば遠慮なくいってください」

「・・・・私って・・・一応捕虜としてこの船にいるのよね?」

「はい・・・しかし捕虜である前に女性ですから

地球ではどうかはしりませんが木連では女性は慈しむべきものですから」

九十九はそう言うと横になっているミナトに見事な敬礼をした

『プシュー』

「失礼する、体の調子はどうだ?」

九十九が敬礼したのとほぼ同時に提督である龍斗が入ってきた

「・・・・少なくとも悪くは無いわ、・・貴方が命を助けてくれたんでしょ・・・・・ありがとう」

「礼を言うのはこちらの方だ、九十九を庇ってくれたことを感謝する

それと・・・・食欲はあるか?」

龍斗はミナトに向かって深々とお辞儀をする、頭を上げるとミナトに食欲について訊ねた

「・・・・・ええ、少しお腹がすいてきたわ」

ミナトは少し考えるとその問いに頷きながら答えた

「そうか・・・・・」

そう言うと龍斗は少し身体をずらした、その後ろから食事を持っているバッタが部屋の中に入ってきた

「え・・・・あ・・・ありがとう」

バッタの姿を見たミナトは少し驚いたが食事を渡してきたバッタを見てなぜか礼を言った

「味は一応保障する、九十九、後はお前に任せる」

龍斗はそう言うと艦長室から出て行った



月、ネルガルドック

そこにはナデシコがとある事情により停泊していた

「新型艦シャクヤク・・・・それに・・・ナデシコ用強化ユニット・・・Yユニット・・・随分と大盤振る舞いね?」

追加されるユニットと現在製造中の新型艦の情報を見たムネタケがプロスに向かってそう言った

「会長と大手株主の意思でして・・・・アキト君とイツキさんが乗っているこのナデシコを強化するのが最善だそうで・・・」

プロスがいつもの笑みを全く変えずにムネタケに返した

「けれど・・・・シャクヤクは無事発進できるかしらね?」

「そうですね・・・・敵だって・・・・戦力増強を見逃すわけは無いでしょうからね」

ムネタケがふと呟いた言葉にユリカが返した・・・・その時

「テンカワ・アキト、ただいま帰還しました」

「イツキ・カザマ、ただいま帰還しました」

ブリッジの扉が開きアキトとイツキが入ってきた

「帰ってきたわね・・・・ホシノ・ルリ、艦全体に放送の準備をして頂戴」

「了解しました」

ルリがムネタケの言葉に従い放送体制を整える

「提督?何をお話するのですか」

「・・・・この戦争の原因となった・・・・過去の悲劇だ」

そう言ったムネタケの顔は・・・・かつてのように・・・厳格な・・・歴戦の将といった顔だった

「全クルーに告ぐ、しばらく作業の手を休めてくれ・・・・」

ムネタケはそう言うと目を瞑り、大きく深呼吸をすると目をしっかりと開いた

「この話を聞いたあとどうするかは各員の意思に任せる・・・・・

その前に・・・疑問に思っているだろうあの・・・木星蜥蜴の正体について言っておく・・・・

木星蜥蜴の正体は・・・・百年前に追放された・・・・・・・・地球人だ」

ムネタケの言葉に多くのクルーが衝撃を受ける・・・・・・

その後・・・ムネタケは百年前に起こった事件を・・・少しずつ・・・しかしはっきりと語り始めた



同時刻、木連戦艦ゆめみづき

ミナトも・・・同じ話を九十九から聞いていた・・・・

「・・・・以上が木連に残されている歴史です」

「そう・・・・・あなた達は・・・・百年前に追放された人たちの末裔なのね・・・・」

「ええ・・・・」

「・・・貴方達は・・・・復讐のために・・・戦争をしているの?」

「・・・・今まではそうでした・・・・・・ですが・・・・今は違います」

ミナトの質問に九十九は頭を軽く横に振りながら応えた

「提督・・・龍斗殿が木連に来てから・・・・木連でも意識改革が起きています

我々木連優人部隊の総司令官・・・・東舞歌様は地球との和平の道を模索しています」

「・・・ちょっとまって、今・・・・木連に来たって言ったわよね?

それじゃあ・・・・・あの人は・・・・」

「詳しくはわかりませんが・・・・木連人ではありません、

しかし・・・・我々は信頼しております」

九十九は・・・・はっきりとそう言いきった・・・・それは・・・いかに龍斗への信頼が厚いかを示していた



ナデシコブリッジ

「・・・これが・・・私達の戦争の相手・・・木星蜥蜴の真実だ

最後に・・・一言だけ言わせてもらう・・・・この戦争は・・・過去の亡霊なんかじゃあない・・・

この戦争は・・・俺達の戦争だ!!

ムネタケの言葉に何か言えるものはどこにもいなかった・・・・・・・

「艦長・・・・この戦争・・・・君ならこの戦争をどうする?」

ムネタケが・・・・表情をそのままにユリカのほうを向いて訊ねる

「え・・・私なら・・・・ですか?」

「うむ、互いの恨みの根は想像できないほど深い・・・・・・・

片方は百年前に虐殺され、歴史から抹消された人たち・・・・

もう片方は・・・今・・無差別に・・・無人兵器達に虐殺された人たち・・・・

余りにも・・・・愚かすぎるこの戦争を・・・君ならどうする?」

「私は・・・・・私は・・・・」

『ドッゴーーーーン!!』

ユリカが悩んでいた瞬間、凄まじい振動がナデシコを揺らした

「艦長、敵の攻撃です!!」

「くっ・・ルリちゃん、Yユニット装着は」

「既に完了しています、異常動作も何所にもありません」

「ナデシコは月の防御を最優先にします、アキトとイツキちゃんは敵の攻撃を止めてきてください!!」

ユリカの指示にアキトとイツキは頷くと格納庫に向かっていった・・・・・

その時・・・・誰も気づかなかった・・・アキトがいたところに・・・ウィンドウが開かれていたことを・・・・



木連戦艦ゆめみづき

「さってっと、出撃するとしますかね」

月臣の謹慎が決定した時に補充して移ってきていたサブロウタが

そういいながらダイマジンの各部チェックを行っていた

「サブロウタ、敵艦から機動兵器が発進された、くれぐれも気をつけろよ」

「はいはい。んじゃ、行きますか!!」

艦長である九十九の声に軽く応えながら出撃していった



月面宙域・・・・

ダイマジンがナデシコより発進された機動兵器・・・

アキトの乗るアーサーとイツキの乗るアルテミスを迎え撃つべくナデシコの方に向かっていた

「・・・さて・・・少しの間付き合ってもらいましょうか!!」

その言葉と共にグラビティブラストが接近してくるアーサーに向かって放たれる

しかし・・・アーサーはそれをいとも容易くかわしさらに速度を上げゆめみづきへと向かっていく

「ちっ、俺は無視かよ・・・・そこまでなめられてたまるかよ!!」

何度も・・・何度もグラビティブラストを放つがその全てをアーサーは紙一重で回避していき・・・・

『ドッゴーーーン!!』

ゆめみづきのレールガンの掘削シャフトを破壊した・・・・

ゆめみづきの戦闘能力を奪った機体・・・アーサーは静かにダイマジンのほうに向く

その近くでは・・・・アルテミスがその銃口をゆめみづきに向けている

「この機体での勝ち目は・・・0だろうなぁ・・・・でも・・・引くわけにはいかねえんだ!!」

『サブロウタさん・・・』

サブロウタの脳裏には・・・自分の婚約者である三姫の姿が映っていた

「やっと・・・・やっと再会できたんだ・・・・もう・・・・もう離れたくはねえんだよ!!」

サブロウタの乗るダイマジンがアーサーに向かって殴りかかる・・・・しかし

『バシュウ・・・ザシュ、ザシュゥウン』

G・Bによってその腕を切り落とされ・・・次に左足を奪われ、もう片方の腕をも奪われた

「ちくしょお!!・・・・俺はこの程度なのかよ・・・・・・」

サブロウタは・・・頭では理解していたが・・・やりきれない思いでいっぱいだった・・・・

「サブロウタ!!急いで脱出しろ!!敵艦がきているぞ!!」

九十九の言葉どおり・・・ナデシコが接近してくる・・・・・その瞬間

『ザシュウウン』

動きを停止していたアーサーがダイマジンの右足を切り裂いた

「アキトやめて!!その人はもう戦えないよ!!」

ユリカの叫び声が・・・ダイマジンにも届いた・・・そう・・・ゆめみづきにも・・・・・・



木連戦艦ゆめみづき

「これは・・・ナデシコの通信か?」

「何かあるのかしらね・・・・・」

「まっ舞歌様!!何故ここに!?」

九十九はいきなり隣に来ていた舞歌の姿を認めると驚き飛び上がった

「つい先ほどよ、それより・・・通信に集中しましょう」



ナデシコブリッジ

「・・・なぜ・・・攻撃を止める必要がある」

ユリカの叫びに対するアキトの答えは・・・余りにも簡単で・・ブリッジを凍りつかせる物だった

「だって・・・・人が乗っているんだよ!!」

「人が乗っているから?・・・・それだけで無人兵器たちは攻撃の手を緩めてくれたか?

ユリカ・・・お前はこの戦争の終わらせ方を悩んでたな・・・・・俺の終わらせ方を教えてやろう・・・

それはな・・・・木連の人間を皆殺しにする・・・・・だ」

抑揚の無い・・・アキトの声に・・・ブリッジの空気は・・・極寒の如く凍りついていく・・・・

「む・・・むりだよ・・・いくらアキトでも・・」

「俺の本当の力がどれほどか・・・・まだお前達は知らないだけだ・・・・」

「それに・・・・アキトだけではありませんよ?」

そういいながら・・・イツキは・・・ゆめみづきに向けていたグラビティライフルをナデシコに向けなおした

「イツキ・・・・ちゃん?」

「お姉ちゃん・・・どうして・・・・・」

「私は・・・一つだけ・・・譲れない思いがある・・・・

世界中の人がアキトを否定しても・・・私がアキトを肯定してみせる

だから・・・・アキトの敵は・・・私の敵!!

イツキがそう言いきったと同時に・・・・

「テンカワ・アキト!!刺し違えてでもサブロウタを返してもらうぞ!!」

月臣の乗ったダイテツジンがアキトの乗るアーサーに突撃する・・・・しかし

「自ら死にに来るか・・・・・馬鹿なやつめ」

アキトはそう言いきると一瞬にしてダイテツジンの四肢を奪い取った

「さて・・・・・どちらから殺そうか・・・・」

「エステ部隊全機出撃!!アキトとイツキちゃんを・・・・・止めます!!」

「ほう・・・・・俺を相手に戦うか・・・・・」

「たとえ・・・アキトとイツキちゃんが相手だとしても・・・・ナデシコは・・・・必ず勝ってみせる・・・・

そして・・・・木連と和平を成立させて見せる!!

「・・・・今の言葉に・・・偽りは無いな?」

アキトの問いに・・・・ユリカは無言で頷いた

「俺も艦長に賛成だ!!」

ユリカが頷くと同時にリョーコそう言いきり・・・エステバリス達が出撃していく

「アキト君・・・・君ほどの力があれば・・・・もっと別の道を作る事ができるはずだろう!!」

アカツキが真剣な表情でアキトを説得する

「月臣とサブロウタをやらせはせん!!

木連の為にも・・・・刺し違えて貴様の命を貰い受けるぞ!!」

九十九の乗ったマジンがアキトのアーサーに向かって突撃する

ナデシコクルーの誰もがマジンが切り裂かれるのを想像したが・・・・・・

「白鳥・・・九十九だな?」

「・・・・その通りだが」

アキトは・・・・・G・Bをしまい、ナデシコの方を向きながらいった

「今の意志は聞いたな?」

「ああ・・・・・和平の意思・・・・確かに聞かせてもらった」

「それが俺の・・・いや・・・・俺たちの総意だ!!」

アキトの言葉にその場にいた全員が息を呑んだ

「ふぅ・・・・役者が違いすぎるわね・・・まるで龍斗殿みたい・・・・・

九十九君、元一朗君とサブロウタ君を回収して戻ってきなさい」

「は・・・・はい」

九十九はそう言うと二人の乗っている機体を回収する・・・・

「しかしかなりの策士ね・・・・自らが悪者となることでその艦の意識改革を行い

目的意識を造り上げる・・・・・・正直そんな人が敵にまわってると思うと恐ろしいわ」

「ふふふ・・・・この作戦は俺ではなくムネタケ提督が立てたものですよ」

アキトのその言葉にナデシコのブリッジクルーが全員ムネタケのほうを向いた

「提督・・・・本当・・・・・・ですか?」

「ああ・・・・こうでもしなければすぐには固まらんと思ったからな・・・・・

これからは人間同士の戦争だ、下手な迷いがあればそれは死に繋がる

俺は・・・・みすみす部下を殺すような真似はしたくないのでな」

ユリカの問いにムネタケはさも当然のような顔でそう返した

「あら・・・・ムネタケって言うと・・・・地球連合軍少将のあのムネタケ・サダアキかしら?」

「ああ、そうだが」

今だ繋がっている通信から聞こえてきた舞歌の質問にムネタケはやや疑問に思いながらも返した

「へぇ・・・オカマ言葉の軍人って聞いてたんだけど・・・・・まあいいわ

貴方ほどの人物が和平に賛成してくれるのなら心強いわね」

舞歌がそう言った瞬間・・・・・

「艦長!!緊急通信です!!

月軌道上を航行中の地球連合艦隊から救難信号です!!」

メグミからの報告がブリッジに響く

「敵の数は!!」

「機動兵器が・・・・二機・・・実際に攻撃しているのは一機だけだそうです」

「艦長!!俺が先に行く!!」

「待ってアキト!!」

アキトとイツキが戦闘宙域に先に向かっていった・・・・

「・・・ここから先は私達と貴方達は敵同士ね、手加減は無用よ」

舞歌はそう言うと通信をきった

「ナデシコも最大速度で戦闘宙域に向かいます!!」

ユリカの指示と共にナデシコも戦闘宙域へと向かっていった・・・・・



月軌道上・・・・戦闘宙域・・・・

「こ・・・これは・・・・」

たどり着いたアキトが見たものは・・・・破壊し尽くされた戦艦の残骸だった・・・・

アーサーはブラックサレナの後継機といって良いほどの性能を誇っている

特に・・・最大速度ならブラックサレナに高機動ユニットを装備している時の速度と殆ど変わりは無い

つまり・・・・ここまで来るまでにかかる時間は・・・・ほんの僅かなはずなのだ・・・・

その僅かの間に・・・・・敵は・・二機・・いや、一機でここまで破壊して見せたのだ

「くくくく・・・・やっと来たか・・・・こいつらは起動テスト代わりにしかならなかったが・・・・・

お前なら・・・・本気で戦えそうだな」

アーサーに急に通信が入り・・・そんな言葉が聞こえた・・・・紅い・・エステバリスのような機体が目の前に現れる

「な・・・・・その機体は!?」

「貴様らが造ろうとしていた機体だろう?

貴様の乗っている機体の情報は回収できなかったがな・・・・

こいつも情報だけでまだ試作の段階だが・・・・・  

だが・・・・貴様との手合わせはこれで充分だろう・・・行くぞ!!」

その声がそう言うと紅いエステのような機体・・・・夜天光・試作型が攻撃を開始した

『キャリ・・・・キャリキャリキャリ・・・・』

夜天光・試作型(以降夜天光P(プロトタイプ)とする)が振るう錫杖をアーサーはイミディエットソードで受ける

「ははははは・・・・・流石にやるじゃないか!!」

「くっ・・・こいつ・・・間違いなく強い!!」

アキトは夜天光Pの猛攻に守りに徹するので手一杯といってもいい状態だった

「アキト!!」

イツキがアキトの支援をするべくラピッドライフルを構える・・・その瞬間

『マスター!!敵の攻撃がきます!!』

「え?きゃあ!!・・・・・くっ損害は?」

『・・・行動に支障はありません』

エルフから敵からの攻撃の報告を受け、それに当たり機体を大きく揺さぶられるが

イツキはすぐに気を取り直し戦闘態勢に入る

「悪いが・・・・此方の姫君はそちらの騎士と一騎打ちを所望しているのでな・・・・

邪魔をさせるわけにはいかん」

イツキの眼の前に・・・・漆黒の機動兵器が現れる・・・・・・

「龍斗・・・・誰が姫君だと!!」

アキトと対戦しているパイロットが漆黒の機動兵器、ブラックサレナパイロット・・・龍斗に抗議する

「お前以外の誰が姫君なんだ?俺は女装癖は無いし女にはなりたくないぞ」

やかましい!!・・・・枝織の時は良いが俺のときにそういう言い方はするな!!」

「じゃあなんと呼べばいいんだ、北斗」

「ぬぅ・・・・・それは・・・・せめて・・・戦士か闘士、もしくは羅刹にしろ!!」

「わかった・・・・・これからは戦士と呼ばせてもらおう」

ちなみにそんなやり取りをしている間にも攻撃の勢いはまるで衰えていなかったりする

ちょうどその時・・・ナデシコも戦闘宙域での戦いが確認できる距離まで来ていた

「そ・・・そんな!?」

「ルリちゃん、どうしたの?」

「アキトさんと互角に打ち合っている機体を確認・・・・・

それと同時に・・・イツキさんと戦闘を開始した機体も確認・・・・

両機とも・・・ネルガルで開発予定であった機体・・・夜天光とブラックサレナです!!」

ルリが・・・・ナデシコクルーにとって驚愕の事実を報告する・・・

一つは・・アキトとまともに打ち合える存在が敵にもいること・・・・

もう一つは・・・ネルガルの機動兵器が敵の手に渡っていることである・・・・・・



北斗VSアキト

「エクス、G・B起動!!一気にけりをつけるぞ!!」

『了解しました、G・B起動』

「ほう・・・・重力波刀か・・・・面白い!!」

アキトがG・Bを起動させたのを見ると北斗も背中につけていた柄を取り出す

「・・・・はぁっ!!」

北斗は柄を前に構え、集中力を高めると・・・・その柄から・・・漆黒の刃がでてきた

「なに!!その形状・・・・まさかDFS!?」

「ああ・・・・ある企業が軍にサンプルとして渡された物を改良していたそうでな

こいつはその詳細データをもとに作り上げられた物だ、貴様の武器にも引けは取らんぞ!!」

その言葉と共に北斗はDFSを振り下ろす・・・アキトはG・Bでその攻撃を受け止め逆に攻撃に移る

そこから先は・・・・・・・まさに・・・一進一退の攻防が始まっていた・・・・・



イツキVS龍斗

「くっ・・・・一発も当たらないなんて!!」

『マスターと敵パイロットの腕の差は・・・余りにも違いすぎます・・・・

このままでは・・・・・・・弾薬が尽きて此方の攻撃が不可能になります』

エルフが・・・悔しそうにイツキに報告する

「今回は命を奪うつもりは無い、北斗が満足するまで時間稼ぎに徹させてもらうぞ」

龍斗は時折ハンドカノンで牽制のためにイツキを撃っているだけだった

その戦いは・・・まさに・・・大人と子供・・・いや・・・・大虎と兎の戦いといってといい状態だった



ナデシコブリッジ

「そんな・・・・・まさかテンカワと互角に戦える相手がいるとは・・・」

「いいえ・・・・・互角ではありません。

アキトさんの腕のほうが・・・・北斗と呼ばれたパイロットより僅かに劣っています」

ムネタケの言葉に、ルリが非情な報告をした

「ルリちゃん・・・・・それってどういうこと?」

「はっきり言います・・・あの機体・・・夜天光とアーサーの出力を比較してみたところ・・・・

速度、パワー両面ともアーサーの方が僅かながら上回っているんです

つまり・・・敵はパイロットの腕の差でそれをカバーしているんです!!

それに・・・ブラックサレナのパイロットは・・・おそらく・・・・夜天光のパイロットをも凌駕しているはずです」

ルリの報告にナデシコにいる全員が言葉を失っていた・・・(ミナトは回収され念のために自室療養中)



北斗VSアキト

「ふははははは・・・・・正直ここまでやれるとは思わなかったぞテンカワ・アキト!!」

「・・・・それはどうも、こっちもここまで打ち合える相手がいるとは思わなかったよ」

二人の機体は一定の距離を保ち・・・・それぞれ剣を構えたまま睨みあっている

「・・・互いに大技のぶつけ合いをしてみないか?」

「・・・いいだろう」

アキトの提案に北斗は賛成の意を示し、互いに構える・・・・・

「エクス、ベルセルクモードスタンバイ」

『了解、ベルセルクモードスタンバイ』

「ふん・・・・バーストモードスタート!!」

ナデシコブリッジの面々は自分の目を疑った・・・・・敵は此方の切り札であるバーストモードまで備えているのだ・・・

互いの剣がより黒く・・・・宇宙の闇に溶けるかのように黒く染まっていく・・・・・

「消え去れ!!蛇王牙斬!!

先に動いたのは北斗・・・・

「やらせるか!!黄龍牙斬!!

『ギュオォオオォオオン!!
ゴォアァァァアアァァアア!!』


凄まじい衝撃波が周辺を襲う・・・・・

その衝撃波の源(みなもと)にはアキトと北斗がにらみ合うようにして剣を構えている・・・・

「くっ・・・・無茶をしたもんだな」

「それはそっちだろうが?」

二人がそう言いあったとき・・・・・・・異変が起きた

『ドッ、ドッゴーン!!』

夜天光の後方で急に爆発が起きたのだ

「スラスターにブースターがやられただと!?くそっ!!こんな時に!!」

北斗の・・・・焦りと悔しさが混じった声がアキトに届く

「(どうする?・・・・ここでこの北斗と言う奴を倒すのは簡単だ・・・・・・

だが・・俺は・・・・・本当にそれで良いのか?)」

アキトも・・・・攻撃するか否か悩んでしまっている・・・・その時

「テンカワ・アキト、まだ戦闘を望むと言うのならこの俺が相手をしよう!!」

凄まじい速度で龍斗の乗るブラックサレナがアキトと北斗の間に割り込んだ

「くっ・・・・龍斗、邪魔をするな!!」

「強がるのも大概にしておけ、その夜天光ではこいつには勝てん

お前とてわかっているはずだ・・・それに・・・・この戦いは俺たちの勝ちだ」

龍斗がそう言った瞬間・・・・北斗と龍斗の後方・・・ナデシコの前方に一台の戦艦が現れた

それは・・・・・月のドックにあるはずの・・・ナデシコ四番艦・・・シャクヤクだった

「龍斗・・・・作戦は成功、早く戻ってきて」

少女の声が・・・・戦場に響く

「わかった、よくやった翡翠、それに悟刻達もよくやってくれた。北斗、引くぞ」

「くっ・・・・・わかった・・・・テンカワ・アキト・・・次こそ決着をつけさせてもらう!!」

北斗はそう言うと傷ついた夜天光Pをシャクヤクへと向かわせていった・・・・・

それを見届けると、警戒するようにブラックサレナもシャクヤクへと戻っていった・・・・・

ナデシコは・・・シャクヤクが去っていくのを大人しく見ていた・・・いや、見ることしかできなかった・・・・

余りにも・・・ブラックサレナから放たれる気が・・・・恐ろしかったから・・・・・・

歴史は・・・・ついに誰も知らないところへと歩み始めた・・・・・・・

この先・・・・ナデシコを待つ物は光か闇か・・・・知る者は誰もいない・・・・・・






後書き

・・・・今ひとつ戦闘シーンがかけなかったのが心残りの今回でした

時ナデに似たり寄ったりになってしまったのも心残りではありますが・・・・・・

次回・・・・新型機の御披露目です、それと共に・・・ムネタケがほぼ退場の予定です

では・・・・・・次回お会いしましょう

下におまけをおいておきます・・・・・本編に余り関連無いので無視してくださって決行です





シャクヤクが去っていった後・・・・ナデシコでは珍事と呼ぶかどうか困る出来事が起こった・・・・

余りの衝撃で沈黙が続いていた・・・・その時

「艦内にボース粒子反応・・・・・詳細確認・・・・ブリッジです!!」

ルリの報告と共にブリッジの中央あたりで光があふれ始める

それに対しムネタケ、プロスの二人は身構え、他の面々はジュンの指示に従いブリッジの扉の前に移動した

「・・・・突然の訪問失礼する」

そういいながら光の中から現れたのは・・・以前北辰強襲の時に現れた黒尽くめの男達だった

「これはこれは・・・・・何の御用かしら?」

ムネタケが銃を構えたままそういう

「すまんな・・・舞歌から詳細は聞いた、詫びの品だ・・・・悟刻」

龍斗の言葉に悟刻は頷き、闇龍達が持っていたアタッシュケースを地面に置くように指示する

「・・・・あの船の代金代わりと見舞金だ・・・・では・・・・失礼する」

龍斗はそう言うと目を瞑り・・・・跳躍と呟き・・・・シャクヤクへとボソンジャンプをした

「さてさて・・・・中身はなんでしょうね・・・」

「・・・・オモイカネに調べてもらったところ爆弾とかではなさそうです」

「ちょっと開けてみましょうか・・・・・こ・・・これは!!」

「何で金塊が詰まってるんだ!!」×ブリッジクルー

・・・・その金塊はナデシコの運営の為に役にたったと言う・・・・

しかし・・・・・この事件は後の歴史研究家達や戦術評論家達の頭を悩ませ続けたと言う

 

 

 

 

 

代理人の感想

ん〜〜〜〜〜〜〜。

展開としては時ナデままなので特に言うこともありませんねぇ。

筋をなぞるだけでなく、どこか一つひっくり返して欲しかった所ではあります。

(例えば、敵に奪われるのはナデシコAで、ナデAクルーは以後シャクヤクをナデシコと改称して使うとか)