北斗と龍斗との戦い・・・シャクヤクの強奪・・・・一日に多くの事件が起きた・・・・

ナデシコクルーの多くは・・・精神的に疲れ始めていた・・・・

そこで・・月で開発中だった新型機と改良型エステを受け取るついでに休暇をとる事にしたのだ

クルー達はそれを喜び・・・どうやって過ごすか話し合っている者達もいた・・・・・

ナデシコが月のドックに到着するのとほぼ同時に・・・・・

シャクヤクの方でも事件が起きていた・・・・・




機動戦艦ナデシコif
『新たなる刻の歌』
第十六話 新しい『決意』



木連優人部隊旗艦シャクヤク

その中で・・・・一つの小さな・・・しかし重大な事件がおきていた・・・・・

「・・・千沙はどうしたの?」

近くで龍斗が仕事をしているため久々にまともに仕事をしている舞歌が

普段なら既に来て共に仕事をしているはずの千沙がいまだにきていないことに気付いた

「千沙殿でしたら・・・・・いまだに立ち直れないようで・・・・」

「そう・・・・・まあ仕方ないでしょうね・・・」

舞歌の言葉に氷室が返しその言葉で舞歌が全てを察した・・・・

実は・・・・九十九がミナトにつきっきりで看病していた事が千沙の両親にまで知れ渡り

千沙以外の女性に手を出そうとした軟派者として無理矢理婚約解消をされたのだ(かなり事実が捻じ曲がっていた)

そして・・・・九十九本人も自分の本心がわからなくなり真っ向から否定する事ができず・・・・

結局婚約解消され・・・・千沙はそのことにショックを受け塞ぎ込んでしまったのだ

「・・・・氷室、後は任せる、今日届く予定の荷物の最終チェック表だ」

龍斗はそう言いながら手にもっていたチェック用紙を氷室の前におくと去っていった

「・・・ところで舞歌様・・・・龍斗殿はみなづきの方に移ってもらうのですか?」

龍斗からチェック用紙を受け取った氷室は舞歌に自分が懸念している事を訪ねた

「いいえ・・・・今下手に戦力を割くのは得策ではないわ・・・・・

北斗と龍斗殿にはシャクヤクのパイロットとしていてもらう事にしたわ」

氷室の問いに舞歌は自信に満ちた顔でそう言いきった



シャクヤク展望室

シャクヤクにもナデシコと同じように展望室などがあった・・・・・

「はぁ・・・・・・」

そこには・・・・一人の女性・・・・各務千沙がいた

彼女は先ほどから溜息をつくばかりでちっとも気晴らしにはなっていないようだった

「・・・・・お前らしくも無いな」

「なっ!?り・・・・龍斗殿!?」

千沙はいきなり後ろから聞こえてきた声に振り返り、そして後ろにいた人物に驚いていた

「お前がここまで接近され・・・・声をかけられるまで気付かんとはな・・・」

龍斗はそういいながら千沙の横に座った

「・・・・何か急用でもあるんですか?」

千沙が龍斗の方を見ながら言う・・・その表情は・・・・何所か暗かった

「・・・何故お前はこんなところにいる」

「何故って・・・・」

「お前は九十九の事が好きではなかったのか?なぜ九十九の側にいようとしない」

「それは・・・・・・私は・・・・もう婚約者じゃあ・・・」

「それは己を偽っているにすぎん、本当に愛しているのなら・・・・・・

九十九の心から離れるな、九十九を自分に振り向かせてみろ

そして・・・・・・何があろうと離れようなどと思うんじゃあない・・・・・」

龍斗の最後の声は・・・・何所か消え入るような声だった・・・・まるで・・・己の後悔を語るかのように・・・

「・・・・・・ふっ・・・俺らしくも無いな・・・・決めるのは自分だ、ゆっくりと・・・・考えるといい」

龍斗はそう言うと展望室から出て行った・・・・・・・

「(私は・・・・九十九さんの事が好き・・・・でも・・・全てを捨ててついていけるだけの覚悟があったかしら・・・・

わからない・・・・・もしかしたら・・・・・・ついていく事ができないかもしれない・・・・・)」

龍斗が残した言葉は・・・・千沙に今まで以上の大きな疑問を残す事になった・・・・・・




次の日シャクヤク格納庫

「・・・・こいつが新型か?」

北斗が・・・・目の前にある真紅の機体を見てそう呟く

「そのようですね・・・・しかし・・・・一度にこれほどの機体を造り上げられるとは・・・・」

その隣にいた京子(北斗に道案内をさせられていた)が同時に積み込まれていく神皇タイプを見て呟いた

「おや・・・・二人共こんな所でどうしたんだ?」

実物のチェックに来ていた氷室が二人の姿を見て声をかけた

「以前の機体では奴とはまともに打ち合い続けられん、新型の力を早く見たくてな」

北斗が目線を変えぬまま氷室の言葉に応えた

「ダリア・・・・随分と強力な機体ですよ、ブラックサレナの欠点であった接近戦能力を補強

さらに・・・龍斗大佐が造り上げた防衛用無人機・・・『四陣』間違いなく木連の機動兵器でもトップクラスでしょう」

氷室が手渡されているダリアの詳細データを見ながら北斗に語りかけた

「そう言えば・・・・龍斗の奴はどうするんだ?」

北斗がひとつ気になっている事・・・・龍斗の新型機について訊ねる

「それは・・・・まだ完成してないんです、夜天光のカスタム機を専用機にする予定なのですが・・・

先に完成した機体は北辰殿のほうに回されたそうですから」

「ふん・・・・・今はブラックサレナで堪えろというわけか・・・・・」

「まあブラックサレナでも十分にやれるがな」

北斗がつまらなさそうにそう言った時ちょうど隣から龍斗の声が響いた

「り・・・龍斗大佐・・・いつの間に」

「つい先ほどだ、・・・・北斗、ダリアの機動テストだ、ナデシコの場所を翡翠が捕捉した

あちらも新型を追加したらしい」

「ふふふ・・・・面白くなりそうだな」

龍斗の言葉に北斗は嬉しそうに応えダリアに乗り込んだ、それと共に龍斗もブラックサレナに乗り込む

「ダリア、出るぞ!!」

「黒河龍斗、ブラックサレナ発進する!!」

真紅と漆黒の機体は・・・・宇宙の闇を切り裂くように飛んでいった・・・・・・





ほぼ同時刻、ナデシコ格納庫

こちらでは新型のエステカスタムと新型機の一つ・・・・ブローディアについて説明をされていた

「なるほどね・・・・・凄い物を造ったわね・・・・・ところで・・・・もう一機の方はなんなのかしら」

急に格納庫に来てパイロット達と共に説明を聞き始めたムネタケが

唯一説明されていない純白の機体のほうを向きながらいった

「それは私が説明するわ!!」

ムネタケの言葉と共にその機体の最終チェックをしていた女性がパイロット達の目前に来た

「貴方・・・・ナデシコの人ですか?」

イツキが初めて見る女性の姿に多少驚きながら訊ねた

「ええ、今日からナデシコに乗る事になったレイナ・キンジョウ・ウォンよ

後・・・三人乗り込んできてるんだけど・・・・・」

「あっ、レイナさんこんなところにいたんですか、ちゃんと登録をしてくださいよ」

そういいながら一人の女性が十一、二歳くらいの少年と少女を連れてレイナのところまで来た

「あらチハヤ、ちょうどよかった。

貴方たちも自己紹介をしておいた方がいいんじゃない?」

レイナはそういいながらチハヤと少年、少女を自分の前に立たせる

チハヤは仕方ないといった表情で自己紹介を始めた

「ええ・・・・・本日よりナデシコに警備班員として乗り込むことになりましたチハヤ・カタオカです

おもな警備対象はこの子達なので他の方までなかなか手が回らないかもしれませんが・・・・

これからよろしくお願いします」

チハヤの自己紹介に拍手と整備班の絶叫が入る、チハヤに続く形で少女が自己紹介を始める

「サブオペレーターのラピス・ラズリ」

「同じくサブオペレーターのマキビ・ハリです宜しくお願いします」

少女に続き少年も自己紹介をした

「さて・・・・自己紹介が終わったところで説明を始めるわね

この機体・・・アレスはブローディアの兄弟機なの、ブローディアは万能戦型だけどアレスは接近戦用

AIの支援がないと発動が難しいG・Bを破棄、これはブローディアにもいえることだけどね

その代りに出力を高めたDFSを四個装備、当然の如くバーストモード・・・・フルバーストを搭載

基本性能としてはガイアを装着しているブローディアよりは装甲は劣るけど、その分機動能力を高めているわ

さらに・・・・出力面でもブローディアより僅かだけど高くなっているわ

そして・・・・ブローディアと同じく支援用AIを搭載」

レイナがそう言いきったときパイロット達の眼の前にウィンドウが開かれた

そのウィンドウには鎧を着た女性が映っていた

『私がアレスをサポートしているアテナだ、これからよろしく頼む』

『アテナ姉・・・・もうちょっと愛想よく出来ないの?』

『そうだよ、もっと親しみやすくしたほうがいいと思うよ』

アテナの自己紹介の後ブロスとディアがアテネに向かって話し掛ける

『・・・・ティア・・・・アテナと同じくアレスの支援を担当してる』

『うきゃ!?・・・・ティア兄・・・お願いだから急に出てこないでよ』

ウィンドウに龍が映り、自己紹介をした、自分の背後で突然声が聞こえてきたのでディアが驚きティアに抗議をし始める

「さてと・・・ブロスとディアの担当は聞いてるわよね?

この子・・・アテナはアレスの情報関係の処理を担当しているわ

そしてこの子・・・・ティアはアレスに装備されているランスビットの制御を担当しているの」

レイナがそう言いさらに説明を続けようとした時

「レイナさん!!ルナアーマーの装備完了しました!!」

つい先ほどからアルテミスの調整をしていた整備員からレイナに向かって報告が入った

レイナはその整備員の方に行きしばらく話をすると再びパイロット達の元に戻っていった

「あの・・・ルナアーマーってなんなんですか?」

アルテミスのパイロットをしているイツキが不安そうに訊ねる

「ああ・・・・・先にパイロットの担当機を知っておいた方が良いわね」

レイナはそう言うと自分が持っていた新型機のパイロットの情報を手渡した

それは・・・・以下の通りである



アレスパイロット:テンカワ・アキト

ブローディアパイロット:サツキ・カザマ

アルテミス(ルナアーマー装着)パイロット:イツキ・カザマ



名前が無いパイロットはカスタムエステのほうに乗ると言うことはすぐに察しがついた

「ち・・・ちょっとまってください!!何で私がブローディアのパイロットなんですか!?」

予想もしていなかった自分の名前を見つけサツキは半ば叫びながらレイナに尋ねた

「それはシュミレーションのデータを元にしたの、一番ブローディアの性能を引き出せるのは貴方だった」

その問いにレイナの隣にいたラピスが答えた

「あの・・・・結局ルナアーマーってなんなんですか?」

「ルナアーマーはね・・・・アルテミスの強化装甲の事よ

装甲にブラックサレナに搭載していた小型エンジンの改良型を組み込んでいるの

その分大型化したけど・・・・出力ではブローディアとほぼ互角よ

さらに・・・・・ブローディアと同じくラグナランチャーを装備・・・・充填時間も同じだけどね」

イツキの問いにレイナが冷静に答えた

「ところで・・・アーサーの方はどうしたんだ?」

リョーコが先ほどから気になっていた事を訊ねた

「アーサーは・・・・もともと実験機だったからアレスと交換の形でネルガルの方に戻したのよ

アルテミスは実験機じゃあなく完成品として生産されたからそのまま強化に踏み切ったのよ」

レイナがそう言いきったとき・・・・・・

『ヴィーーヴィーーヴィーー!!』

「敵機が接近してきています!!パイロットの皆さんはすぐに出撃してください!!」

警報が急に鳴り響き、それと共にユリカから出撃の命令が下った

パイロット達はその命を聞くとすぐに出撃体勢へと入っていった・・・・・・



ナデシコ近辺宙域

「ふふふ・・・・来たなテンカワ・アキト・・・・そいつが新型か」

ダリアに乗っている北斗がアレスで出撃してきたアキトの存在を確認し嬉しそうに話し掛ける

「北斗か・・・・行くぞ!!」

アキトはDFSを両手に構え一気にダリアに接近する

「ふん・・・・楽しませてくれよ!!」

北斗もそれに応えDFSを両手に構え同じくアレスに接近する



「さて・・・お前達はこの俺が相手をしよう」

二人が戦闘を開始し、離れ始めたと共に龍斗が残っているナデシコメンバーに話し掛ける

「一人で相手をしようってのか?」

「君も腕に自信があるかもしれないけど・・・・・僕らを侮ってないかい」

『そうだよ、ブラックサレナくらいなら僕たちだけでも充分なんだからね』

「ブロス、落ち着いて・・・・・でも・・・・無謀すぎると思いますよ?」

「貴方には一度助けられた恩があります・・・・引いてください、背中を撃つよう真似はしませんから」

龍斗の言葉にリョーコ、アカツキ、ブロス、サツキ、イツキが各々の意見を述べる

「御託はいい・・・・・無謀では無いと言うことを教えてやる」

その言葉と共にブラックサレナの攻撃が始まった、ナデシコメンバーはそれを回避し反撃に移る・・・・

「おいおい・・・・冗談だろ!?今のを回避しただと!!」

「ウオッ!?・・・・くそっ速すぎて照準が定まらねえ!!」

「・・・・そこっ!!・・・・うそ・・・今のを読んでいたの?」

「凄い・・・腕だけじゃあない・・・・状況判断能力・・・空間把握能力・・・・どれもずば抜けてるよ!!」

『・・・ブロス、パターン解読完了した?』

『ある程度は・・・・フェザーを使うよ!!』

「ブローディアでも追いつくのが限界?・・・いや・・・・私の腕が悪いんだね」

「エルフ・・・・今の私の腕と貴方のサポートであの人を完全に捕捉できる?」

『残念ですが・・・・・その確率は一割程度しかありません』

ナデシコの面々は・・・余りにも違うその腕の差に脅威を覚え始めていた・・・・・・

しかし・・・・戦況はナデシコ側優勢、さらに・・・・フェザーを使い始めた事でさらに傾き始めた



「ぬぅ!?・・・・・くっ・・・・防御と攻撃をかねているだと・・・・厄介な新兵器だな・・・・・

まだ目立った損傷は無いが・・・・・・このままでは・・・・」

龍斗がフェザーの猛攻をかわしながら最悪の状況を想定し始めた・・・・・その時

「龍斗殿!!大丈夫!!」

龍斗たちが発進した時から全速でナデシコに向かっていたシャクヤクが戦闘宙域に入り 戦域に艦長である舞歌の声が響いた

「優華部隊全員出撃!!北斗は置いておいていいわ、龍斗殿の援護に回りなさい!!」

舞歌の言葉と共にシャクヤクから機動兵器・・・・神皇タイプが発進する

発進した神皇タイプはそれぞれ散開していき、それに応えるようにエステバリスも散開する



「私の名前は天津京子と申します」

「へえ・・・アンタみたいな奴もいるんだな・・・・俺はスバル、スバル・リョーコ

自己紹介が終わったところで・・・・・勝負と行くか!!」

リョーコの言葉が終わると共に京子とリョーコは戦闘に入った・・・・



「玉百華です、よろしくね!!」

「私はアマノ・ヒカル、宜しく!!」

・・・ちなみに二人は射撃戦をしながら話していたりする・・・・・



「俺の名はダイゴウジ・ガイ!!お前の名は!!」

「御剣万葉・・・・・ガイとやら・・・・お前の力試させてもらうぞ!!」

万葉の声と共に二人は格闘戦を開始した



「私の名前は神楽三姫・・・・悪いけど・・・勝たせてもらいますよ」

「マキ・イズミ・・・・・悪いけど・・・・そう簡単にはやらせないよ!!」

その言葉と共にイズミが射撃を行い三姫はそれを回避し反撃を開始した



「・・・・以外にやるみたいだけど・・・・・もう少し気を張り詰めたらどう?」

「悪いね、これが僕の戦闘スタイルなんだよ、もっとも・・・・手を抜いているわけじゃあないけどね!!」

アカツキの軽いノリにやや不機嫌になりつつある飛厘がそのことを注意するが

アカツキはそれを軽く返し、急に真剣な表情になって攻撃を再開した



「北ちゃんの邪魔はさせないわよ」

「・・・・・・安心して・・・アキトの邪魔は私もしたくないから・・・・でも・・・手加減は無用よ!!」

互いに戦闘の邪魔をしたくない二人は・・・その戦闘から少しずつ離れながらも全力で戦っていた



「千沙、聞こえているな?

あの新型は少々厄介な武器を持っている、二人がかりで行くぞ」

「は・・・・はい」

龍斗の言葉に若干遅れ気味に応える千沙、龍斗はそれをみて僅かに顔を歪めたが何もいわずに戦闘を再開した

「ブロス、ディア・・・・・私であの二人に勝てる確率はどれくらい?」

『フェザーとラグナランチャー、ガイアを上手く使えば十二分に勝てるよ』

『といってもあちらも和平推進派みたいだから殺さないようにしないとね』

『だったら・・・・離れてラグナランチャーを撃って撤退させようか?』

『いい考えねブロス、サツキさん、私達が援護するから頑張ってね!!』

先ほどの龍斗の戦闘を見て弱気になったサツキは二人に自分の限界について訊ねた・・・・

しかし・・・・ブロスとディアは負けるなどと微塵も思っておらず

いかにしてこの戦闘を無理矢理終わらせるかを考えていたりする・・・・・・

ちなみに・・・・その間にフェザーが四発龍斗たちに向かって発射されていた



「はははは・・・・やるじゃないかテンカワ・アキト!!」

「ふっ・・・・よく言う・・・性能ではこちらが上の筈なんだがな・・・・」

「くくく・・・・性能差などどうでもいい・・・・・お前は俺とまともに打ち合えている・・・それだけで俺は充分だ!!」

『ティア・・・・あの防御用ユニットを破壊する事は可能だと思う?』

『・・・・無茶・・・ランスビットを防ぎきってる時点で有効な武器はDFSクラスの物だけ』

アレスとダリアは両手に持つDFSを自在に操りながら白兵戦を行っていた・・・・・・

その一方でティアとアテナが防御用ユニット・・・・・四陣の攻略法について話し合っていた

「行くぞ!!白虎爪襲斬零式!!

アキトが己が持つ最大の乱撃技を放つ・・・・・・・

「こちらも行くぞ・・・・剣技・・・八首之蛇龍!!

それに呼応するかのように北斗も龍斗と共に開発した最強の乱撃技で攻撃する・・・・

ギャギャギャギャギャ・・・・・・

バシィイインン!!

「くぅっ!!」

「ちいっ!!」

互いに互いの攻撃を相殺しあい・・・・最後の攻撃の巨大な衝撃波に二人は軽くした打ちをした





ナデシコ近辺宙域(サツキVS龍斗&千沙の宙域)

「北斗・・・・大技をまた放ったな?・・・・・テンカワ・アキトはそれほどの力を持っているというわけか

・・・・・以外に侮れんな」

龍斗は戦場で急激に膨張した気を読み、二人の戦闘で何が起きているのかをほぼ正確に理解していた

『ブラックサレナの注意が離れた!!今よ、ブロス!!』

『わかってるよ!!ラグナランチャースタンバイ!!サツキさん、コース計算をしておいたから

誤差は0.2パーセント内で収めて』

「わかった・・・・・・ラグナランチャー・・・・・ファイヤ!!」

龍斗の注意が僅かに離れた瞬間にブローディアはラグナランチャーの用意をし発射した・・・・・

ブロスの計算は完璧だった・・・・千沙と龍斗の腕を正確に把握し完全に回避できるコースを狙ったはずだった

サツキも・・・・狙いは正確だった・・・・・・この時は・・・・・その正確さが仇となった・・・・・

射線軸上にいた機体は・・・・千沙の乗る雷神皇だった・・・・距離も充分で・・・回避できるはずだった・・・しかし

「千沙!!何をやっている」

「はっ・・・・きゃああああ!!」

最悪な事に・・・・千沙は・・・考え事をしていた・・・・その為・・・反応が遅れてしまった・・・・

「くっ・・・・あれでは回避は不可能か・・・・止むをえん!!」

『バシィィィン・・・・・


ドゴォオオオオオン!!

それは・・・・まさに一瞬だった・・・・・リミッターを解除し普段の1.4倍の速度で移動したブラックサレナが

千沙の乗る雷神皇のフィールドに自分のフィールドを弾き合うくらいでぶつけ・・・・千沙を弾き飛ばし・・・

千沙がいた空間に・・・その身を置くことになりラグナランチャーに当たったのだ・・・・・

そして・・・・・その漆黒の機体は・・・マイクロブラックホールにより・・・・・消し飛んだ・・・・

「龍斗殿(大佐)!!」

・・・・漆黒の機体・・・ブラックサレナが消滅した事を確認した木連の軍人達は・・・一斉に龍斗の名を呼んだ

しかし・・・・・当然の事ながら・・・・それに・・応えてくれる者はその場には存在していなかった

「わ・・・・私の・・・・私のせいで・・・」

龍斗が消滅するところを一番近くで見る事になった千沙は・・・・自分を責めていた・・・・

「何をぼんやりしているの千沙!!まだ戦いは終わっていないわよ!!」

動きを完全に停止していた千沙に向かって、舞歌は大声で叱咤した

「し・・・・しかし・・・・私のせいで・・・龍斗殿が・・・」

「貴方・・・・あれくらいで龍斗殿が死ぬと思ってるの?

・・・・私はそうは思わないわ・・・・・あれくらいの事で死ぬはずがない・・・そうでしょ・・・龍斗殿?」

「ふっ・・・・当然だ・・・・俺はまだやらねばならん事があるのだからな・・・・あの程度で死ぬわけにはいかん」

舞歌の言葉に答えるように通信が入ってきた・・・その通信は・・・・龍斗本人の物だった

「り・・・龍斗殿!!ど・・・・どうやってあの攻撃から・・・・・それに・・・・その機体は・・・・」

千沙が感動と驚きで震える声で龍斗に訊ねた・・・・・

「跳躍装置を跳躍先固定で載せておいたんだ、三時間前のみなづきに跳んでしまったがな

この機体だが・・・たまたまみなづきで調整中だったんでな・・・・・稼動テストを兼ねて乗ってきたと言うわけだ

調整中と言うこともあって殆どまともな武装は無いがな」

そういう龍斗の機体は・・・・・宇宙に溶け込むような黒色の・・・夜天光だった・・・・・

「ふん・・・・・相変わらずしぶとい男だな」

急に北斗からの通信が龍斗の乗る夜天光に入った

「北斗か・・・・・まだ満足したりないか?俺としては今回は大人しく下がりたいんだが・・・・」

「ふん・・・・・お前が後で訓練に付き合ってくれるのなら構わん」

「わかった・・・・と言うわけだ、悪いが今回は引かせてもらうぞ」

北斗と龍斗の会話が終わると共に優華部隊はシャクヤクへと戻り始めた・・・・・・

ナデシコパイロットの面々は攻撃はせず・・・対戦相手と一言交わしていた



「ふん・・・・・今回はここまでだ・・・次こそ満足行くまで戦わせてもらうぞ」

「こちらとしてはもうご勘弁をって感じなんだけどな・・・・・」

北斗は・・・・・アキトの言葉に僅かに口元を動かすとシャクヤクへと戻っていった・・・・・・



「パイロットの皆さん、帰還してください。ナデシコは軍の命令でもう一度月面ドックに向かいます」

北斗たちが撤退した後・・・・ユリカからの通信が入り・・・・・パイロット達は全員帰還していった



月面ドック内ナデシコブリッジ

ドックに入るなり階級の高そうな軍人達がブリッジまで入ってきた・・・・・

「ムネタケ・サダアキ少将・・・・貴方に極東方面軍司令部への帰還命令が出ております」

軍人はムネタケの前まで行くとそう言った

「そう・・・・・わかったわ」

ムネタケはそうとだけ答えた・・・・・

「ち・・・ちょっとまってください!!どうして提督が帰還することになったんですか」

その光景を見ていたジュンがその軍人に駆け寄り詳細を訊ねようとした・・・・

「落ちつきなさい副長・・・・いずれは戻るつもりだったのよ・・・・むしろ好都合だわ・・・艦長」

「は・・・はいっ!!」

急に言葉をかけられたユリカは思わず背筋を伸ばして返事をした

「貴方に・・・・後は任せるわよ・・・・・貴方自身の手で・・・貴方の望む未来を手に入れなさい

私も・・・・・・直接手伝う事は出来なくなるけど・・・・・地盤固めくらいはしておくわ・・・・じゃあね」

ムネタケはそう言うとユリカに敬礼をしブリッジから出て行った・・・・・・

ムネタケ提督の極東方面軍司令部への帰還・・・・それはナデシコクルーに大きな衝撃を与えた

しかし・・・クルーの結束は揺らぐことなく・・・・・より一層強固な物となった

だが・・・・終末の時は・・・・刻々と近づきつつある・・・・・・・

この結束の力で・・・・その時を超えられるかどうか・・・・・まだ・・・・わからない・・・・

それでも・・・・・時は終末へと・・・少しずつ・・・・しかし確実に流れていた・・・・・・・











後書き

今回は・・・・新型機を出すための繋ぎと言ってもいいような仕上がりでした

AIの名前ですが・・・アテネはギリシャ神話の戦神から、ティアは某ゲームの武器であるバハムートティアから取りました

優華部隊側とナデシコ側の戦力調整をするためにナデシコ側の方が高性能な新型になっています

次回・・・・少しだけですが事件が起きます・・・それと共に・・・物語もクライマックスへと移動する予定です

恐らく・・・・長くても後15話位でこの物語は終焉を迎えると思います

オリジナル要素を少しずつ加えて行きますので・・・・ほんの少しだけ期待していてください

 

 

代理人の感想

まー、原作(時ナデ)でもそんな感じだったし、それはいいんですが。

地の文に「だった」「した」「なった」などの完了形ばかり使うのと、

「・・・・・・・」を語尾に多用しすぎるのが少し気になりました。

読みにくいと思うんですが・・・・どうでしょう?