月日は流れ・・・ナデシコとシャクヤクは先発隊として火星にたどり着いていた

何故この二隻が一番早くたどり着いたか・・・答えは簡単である

A級ジャンパーである龍斗にナビゲートしてもらいチューリップを使用したのだ

何故この二隻が先に火星にいったか・・・・それにも理由があった



火星、オリンポス山ネルガル研究施設

かつて、相転移エンジンを研究していた施設・・・その中に、アキトとイネス、イツキとプロス、龍斗と舞歌がいた




機動戦艦ナデシコif
『新たなる刻の歌』
第十九話 『守護者』



「で・・・ここになにがあるのかしら?」

舞歌が、延々と地下への階段をおり続けるイネスに話し掛ける

「この先に眠っている物は・・・・真のナデシコ始祖の船、それを知っているのはここにいる面々とイツキちゃんの両親くらいよ

そして・・・・その始祖の船が・・・私達にとって最後の切り札にもなるのよ」

「始祖の船・・・・オーバーテクノロジーの塊か・・・・しかし気になる・・・何故わざわざ今まで封印していたのだ?」

龍斗が疑問をぶつける、今まで戦況は木連が優勢なままだった、それは停戦前でも変わってはいない

そんな状況は誰でもひっくり返したいはず、切り札が回収できないならともかく

ナデシコにはテンカワ・アキトがいる、アーサーがいた頃でも回収くらいならできたはずなのだ

「・・・まずは・・・かけられているプロテクトを突破するのが無理だった事

次に・・・・余りにも化け物すぎたからよ・・・本当なら・・・ずっと封印しておきたいものなのよ」

イネスの言葉に・・・・再び静寂が降りる・・・・ただ・・・階段を下りる音だけが響いていた



そして・・・いつの間にか階段は終わり・・・大きなドアが一つある所まできた

イネスはそのドアの前に立つと・・・何かを決心したような顔でアキトの方を向いた

「・・・・ここよ・・・アキト君」

イネスの言葉に、アキトは深く頷き、近くにあるコンソールパネルに右手を置いた

『IFS識別開始・・・・テンカワ・アキトと一致・・・ロック解除』

電子音声があたりに響き、ドアがゆっくりと開いていく・・・・・

「ほう・・・これは・・・」

龍斗が・・・そのドアの先にあるものを見てそう呟いた

「そう・・・これがナデシコ真の始祖の船・・・・今から五年前に偶然発見された古代の遺産

私達はこの船をこう呼んでいるわ・・・・・・ナデシコ・ゼロと」

イネスが龍斗の言葉に続くようにその船の事を話す





「この船は厳重なプロテクトをかけられていてね、ブリッジまではいけるけど起動はできなかったの

でも・・・・・鍵は手に入れられたみたいね・・・・アキト君」

ナデシコ・ゼロの内部を歩き続け、ブリッジまでたどり着いた時、イネスは再びアキトを促した

アキトも頷くとブリッジ中央にあるコンソールパネルに右手を置く

『ナノマシンの存在を確認、ナノマシンデータを抽出・・・・・データ照合・・・・

起動確認・・・・・ガーディアン・ナノマシン『ビショップ』ランクの起動を確認

エンジン起動開始、各部破損場所の確認・・・・破損場所ゼロ

データ送信テスト・・・・・テスト完了、全電子機器に異常はありません

格納庫のバンクシアの起動チェック・・・チェック完了、オールグリーン

ビショップのデータ抽出・・・・・抽出完了、全権を移行します』

アキトが右手を置いて、すぐにウィンドウが出て・・・エンジンが起動した

そして・・・・全てのウィンドウが消えたとき、再びウィンドウが開いた

そこには・・・・金色の髪と、銀色の瞳をした少年が映っていた

「ホップか?・・・・・どうやってそこにいるんだ?」

アキトが・・・その少年の正体に気付き話し掛ける

「さっきデータを抽出してただろ、それでだよ、こっちのオモイカネは起動まで時間がかかるからね

それに・・・人類側の味方をさせるにはデータ書き換えをおこなわなければいけないからこっちに映ったんだ

しばらくしたらバンクシア内に保存している擬似肉体に移る予定だよ」

ホップは比較的明るい口調でそう言った

「ふむ・・・・ホップだったか・・・先ほどの話を聞くかぎりお前はアキトと接触があるようだな

いや、それよりも聞きたいのは・・・・・お前は古代の遺産に入っているが・・・

お前は・・・・あの火星の守護者と同一の存在では無いのか?」

龍斗の疑問に、ホップが僅かに顔をしかめ・・・・そして口を開いた

「そう・・・僕は火星の守護者の一員・・・ビショップランクのホップ

でも・・・今は違う、僕は・・火星の守護者・・・いや、創造主を裏切り・・君達の味方をするつもりだ」

ホップは・・・・龍斗を直視しながらそう言いきった

「ふむ・・・・俺はすぐに相手を信用するつもりは無いが・・・

この情勢だ・・・仲間は一人でも多いほうがいい、だが・・俺の仲間に手を出せば・・・容赦はせんぞ」

龍斗はそう言いきると、視線をホップから外し、纏わせていた殺気を消した

「ありがとう・・・じゃあ・・・早速だけど・・・火星の守護者について説明させてもらうよ

・・・遺跡の作られた理由、そして・・・僕たちが作られた意味、・・・火星の守護者の戦力の順にね」

ホップの言葉に・・・・全員が黙り、そして・・・次の言葉を待った

「まず君達が知っている遺跡・・・ボソンジャンプの演算ユニットは・・・ある野望の為だけに作られたんだ

・・・・歴史を自らの思い描いたままに動かすと言う野望の為にね・・・

君達が言う並行世界は・・・遺跡を作った人達が描いた微妙な違いによって生じる物でしかないんだ

根本は・・・全て同じ・・古代の研究者達の・・・狂った欲望の結果でしかないんだ

歴史の終焉は全てが同じだった・・・ボソンジャンパーが研究材料にされ・・

生き残ったジャンパーかジャンパーの知り合いが復讐の刃を振るい

そして・・・多くの人たちが死に絶える、それが終わったあと・・・やっと遺跡の監視から抜け出せるんだ

そして・・・火星の守護者はその際に生じかねないイレギュラーを消滅させる為に作られたんだ

遺跡の監視から抜け出した世界からイレギュラーが来た場合

台本通り歴史が動くように僕たちが修正する、そのためだけに創られたんだ

そして・・・・今回人類に宣戦布告したのは・・・もはやイレギュラーが止められないからなんだ

僕たちに与えられた最終プログラム・・・歴史が思うとおりに動かない場合の処置方法

それが・・・・太陽圏内に生存する人間の抹殺なんだ」

「なんだと・・・?俺たちはその腐った科学者連中に踊らされていただけだと言うのか?

しかも・・・・思い通りに動かなければ人類を消せだと?・・・・冗談ではない」

龍斗が・・・静かな口調でそう言った

しかしその心の中では怒りの感情が荒れ狂っているのがその場にいる全員がわかっていた

理解できた理由は別に特別な事ではない、ただ・・・・自分と同じなだけだ



・・・・しばらく・・・・・静寂の時が続いた・・・・

「・・・・・で、奴らの戦力はどれくらいなんだ」

龍斗が・・・酷く冷静な声でその静寂を破った

「わかった・・・・順に説明するよ

まず・・・ランク外の防衛用無人兵器部隊・・正式名『ヒノキ』花言葉は不滅

まさに無数ともいえる大軍だよ・・・・・しかも・・・一機一機の性能がエステバリスと同等なんだ

次に・・・ポーンランクが乗る『イトシャジン』花言葉は従順・・そして服従

思考能力は人間に比べれば低いポーンランクだけど・・・

八機全ての戦力を合わせれば・・・・今のナデシコのエステ隊とブローディアが合流してやっと互角・・・

それくらいの力は持ってるよ



次に・・・以前現れたアフェランドラ・・・そしてもう一人・・・『勝利』の花言葉を持つシュロが該当するナイトランク

アフェランドラ専用機に『アキレア』花言葉は・・・『戦い』と『勇敢』

シュロ専用機に『トリカブト』花言葉は・・・『騎士道』

この二人は・・・一人一人が・・・今のアキトと・・北斗クラスの力を保持しているんだ



次に・・・ルークランク

彼らは戦闘能力を保持してはいない・・・その代償に桁違いの守備力を誇っているんだ

彼らは・・・マスターキーをもつ存在以外は決して通そうとはしない・・・まぁ戦争では無視しても構わない相手だよ

遺跡の守護だけが目的だからね



そして・・・もはや存在していないランク・・・・僕がいたビショップランク

ビショップランクは・・・・僕のほかにもう一人いたけど・・・過去のイレギュラーとの戦いで戦死しているんだ

そして・・最後の一人である僕が裏切った・・・もうビショップランクは恐れる必要は無いよ





最後に・・・火星の守護者最強の・・・・マルスが該当するクィーンランク

機体名はオメガ・・・はっきりいって・・・一騎打ちで勝てる可能性は限り無くゼロだよ

僕が得ている情報だけででも・・・・マルスの戦力は異常すぎる

黒河龍斗、テンカワ・アキト、影護北斗、影護北辰、イツキ・カザマ、そして僕・・・・

この五人が同時にかかっても・・・勝てる確率は五割程度・・・・

でも・・・僕はマルスの全力を知らない・・・だから・・・もっと確率は低くなると思う」

「・・・・悪いんだけど・・・・敵の配置状況はわからないかしら?」

一瞬静寂が訪れるかと思ったが、舞歌がそれをあっさりと崩した

「あ・・・うん、基本的にこの配置が遺跡守護に適しているから多分今回もこの陣形だと思う」

そういってホップが見せた陣形は・・・遺跡を中心にした円状の布陣だった

遺跡付近・・・中心部分にマルス、それから少し離れたところにナイトランクの二人

その二人からさらに離れたところにポーンランクが一定距離を開けて円状に配置されており

そのポーンランクより外側には無人兵器が無数に・・・円状に配置されていた



舞歌は・・・その陣形を見て溜息をついた

「確かに厄介な陣形ね・・・・一部分を崩しても・・・他の部分がすぐに埋めてくる

包囲殲滅しようにも・・・・敵の数が多すぎるわ・・・・・強攻策しかないかしらね・・・」

「舞歌・・・今はそんなことを考えても仕方ないだろう、とりあえず・・・こいつを動けるようにして

全戦力が集まってから考えればいい」

舞歌が自分の思考に沈みかけた時、龍斗がそう声をかけた

舞歌は龍斗の言葉に頷き、すぐにシャクヤクに連絡をとり整備員をこっちにこらせるように命令をだした

それとともにナデシコに連絡をとり、ナデシコ側の整備員もゼロの整備に向かわせた



一応動作はするが、戦闘に使うには危険な部分が多かったため

整備員達はナデシコ、シャクヤク用に持ってきていた予備パーツを使いどんどん改修していった

しかし・・・改修できない部分もあった・・・主砲部分とエンジン部分である

その部分は余りにも技術が開きすぎていたのだ、さらに老朽化もさほど進んでいない事もあり

その部分は殆ど手付かずのままにされたのだ

改修が一通り終了したのは・・・・結局全戦力が集結する一日前だった

しかし・・・改修を終えたナデシコ・ゼロには大きな欠点もあった

主砲の威力は確かに強力であったが・・・主砲発射後・・エンジン暴走の可能性が高い事がわかったのだ

エンジン暴走を抑えるには・・・守備に回すENを従来の30パーセントカットしなければならないのだ

安全に戦うには主砲発射後は一時前線より後退し、エンジンの安定化を待たなければいけないのだ

その新戦力を考えたうえで・・・・地球と木連の智将たちは作戦を立てることとなった・・・・



会議開始から約一時間後・・・・

「ふむ・・・・やはり強攻策しかないか・・・・」

「はい・・・・持久戦となれば・・・期限がある以上こちらが不利です

敵無人兵器部隊に穴を空け、その穴から最強部隊を投入し、敵の大将を討ち取るのが最善だと思います

この際・・・敵大将に影護北斗、影護北辰、黒河龍斗、テンカワ・アキト、イツキ・カザマ、ホップといった面々をぶつけます

次に・・・ナイトランクにアカツキ・ナガレ率いるナデシコエステバリス部隊と優華部隊

さらに・・・白鳥九十九、高杉三郎太、月臣元一朗、秋山源八郎といった面々をぶつけます

そして・・・ポーンランクに・・・黒河龍斗が直々に鍛え上げた精鋭部隊・・・私の影の親衛隊である

悟刻、羅刹、刹那、修羅、光龍、闇龍の六名、そして・・・ナデシコに所属するブローディアパイロット・・サツキ・カザマをぶつけます

他の面々は無人兵器部隊を外部から攻撃します」

舞歌が敵陣形図と、予想される攻撃進路を表示しながらその策について述べた

「ふむ・・・しかし・・・その作戦ではエステバリスのエネルギーをどうするつもりなのかね?」

そう・・・この作戦の最大の欠点はそこだったのだ、エネルギーが無くなれば・・エステはただの鋼鉄の人形になってしまう

しかし・・・舞歌は笑みを浮かべて、その意見に対する答えを述べた

「安心してください、強行軍に参加する予定のエステバリスには既に夜天光の小型エンジンを積み込んでいます

このエンジンがやられない限りはエネルギー切れはそう簡単には起こりません」

その舞歌の意見を聞き・・・今まで口をふさいだままだった人物・・・草壁春樹がその口を開いた

「準備は万全・・・・時間が立てば敵はハッキングを開始するか・・・・・もはやこの作戦しかありますまい」

草壁は・・・その場に集まった全ての将を見渡しながらそう言った・・・その場に集まった将は・・誰一人反論しなかった

「では・・・戦争開始は明後日にしましょう、明日は・・前線に立つ者達の戦争前の最後の休息の日としましょう」

その草壁の提案に反論する者はいなかった・・・・これも・・・草壁のカリスマによるものだろう





戦の前の最後の休息・・・・それぞれの決意と困惑が交差しあうとき・・・・

しかし・・・・全ての人が・・・戦いの後の平和を夢み・・・その為に戦おうとしている

今・・・歴史は確実に・・・新たなる刻へと向かい・・その流れを進めている























後書き

更新・・・・遅くなってしまい申し訳ありませんでした

今回も・・・繋ぎです・・・次回・・初の一人称に挑戦していきます

朝、昼、夕くらいに三話に分けれたらいいなと思っています

次回・・・少しでも質を向上させその人の心の動きがわかるように頑張ります

八月中には最低一話はアップする予定です・・・では・・・・次回お会いしましょう

 

 

代理人の感想

取りあえず閑話休題、と。

一回挟んで最終決戦ですか?