かんなづき級戦艦・・・・『みなづき』

木連優人部隊総司令官、東舞歌の乗る優人部隊の旗艦である・・・・

本来・・・めったなことでは揺らぎもしないその戦艦が今は大きく揺れ動いている・・・その理由は・・・

「消えろ、黒龍!!」

「甘い!!その程度で俺がやられるか!!」

『ズッドーーーーーン!!!!』

つい三ヶ月ほど前に表舞台に戻ってきた北斗と黒龍との戦闘訓練のせいだったりする・・・・







機動戦艦ナデシコif
『新たなる刻の歌』
サイドストーリー2 動き始めた大いなる『歯車』

「うう・・・・皆・・・大丈夫か?」

「ええ・・・大丈夫です」

「しかしあの二人は化け物か・・・・」

「いえ、あのお二人の力はこんなものではありませんよ」

「おいおい・・・マジかよ・・・」

「本当だ、以前二人が限界まで戦ったときはこの艦の機能が2、3日麻痺したぞ」

「それですんだのが幸運だったぐらいだしね」

先ほどから会話をくりひろげているのは黒龍と北斗の訓練を見ていたときに、

その余波で吹き飛ばされかけた優華部隊の面々と月臣、九十九、三郎太といった面々である

「ふう・・・準備運動はこれくらいでいいだろう、そろそろやるか」

「そうだな、たまには出さないと感覚が鈍りそうだ」

黒龍と北斗は互いにそう言うと構えを取り集中しだした・・・・

そして互いの体から漆黒の炎と朱金の炎が上がり始めた

「な!!あれは何だ!!」

「木連式柔・・・口伝・・・『武羅威』・・・だそうです」

「武羅威?・・・・何だそれは」

「あの二人が纏っている光は魂の色を発現した気・・・『昴氣』

その昴氣を発現させる技が・・・武羅威・・木連式柔に伝わる伝説の技だそうです」

「おいおい・・・あの二人は伝説の技を会得したってのか?」

「その通り・・・今の二人では私たちがどれだけ束になって闘おうとも決してかなわないだろうな」

ふぅぅぅぅ・・・・・・いくぞ北斗」

はぁぁぁぁ・・・・・・・・こい」

互いの体を包む昴氣がより一層大きくなる、それと共に部屋に伝わっている圧迫感もよりきつい物へと変わる

「ぐ・・・何だこの気は・・・・これが人が出せる気か?」

「な・・・・!?ふ・・・震えが止まらん」

「すげえ・・・こんな気は初めてだ・・」

「はああああああ!!」

「おおおおおお!!」

『ドゥッゴン!!』





凄まじい気の奔流でまともに二人のぶつかり合いを見れていた者はいなかった・・・・

気の奔流が治まり・・・・全員が二人の姿を確認しようともとの視線に戻した時

その場に立っていたのは黒龍だけだった、北斗は腕を抑える形でうずくまっていた

「く・・・なぜだ・・・武の力量はそう大差ないはず、なぜ昴氣のぶつかり合いで俺は勝てないのだ!!」

北斗が本当に悔しそうに、辛そうにそう嘆いていた

「確かに・・・純粋に技だけならお前のほうが上の部分も多いだろう、だが今のお前の心では俺には勝てん」

「く・・・この俺の心が弱いとでも言いたいのか!!」

「ああ、その通りだ。少なくとも己を偽っている以上は俺には勝てん、過去がない俺にはな」

「俺が・・・自分を偽っているだと!!」

「違いといいたそうだが・・・・なら聞こう、お前はなぜ男にこだわる、なぜ枝織を消そうとする」

「枝織は俺にとって有害な物でしかない、それに俺はこだわってなどはいない!!」

「そうかな、枝織の気殺は俺達を遥かに凌駕している。その気の断ち方さえわかればそれだけで気殺の技術は上がる

それにこだわってないのならなぜお前の中の女の人格である枝織を消そうとする」

「く・・・・・」

「北斗、お前はある意味もっとも弱く、もっとも強い存在だ・・・

だが・・・・今のお前はもっとも弱い存在でしかない」

「俺が・・・もっとも弱い存在だと!!」

「ああ・・・もっとも強い存在といったのはお前の中には北斗、お前と言う男の意思と・・・

枝織と言う女の意思が宿っているからだ・・・・

男の方が強いと思われがちだが真実は違う、男も女も等価の存在でしかない。

男には男の、女には女の、それぞれの強さがあり、またその個人個人の人格でその強さの形も違っていく

その中で北斗・・・お前は男に近い意思をもち、その強さを『武力』に向けた・・・

そして・・お前の中に宿るもう一つの人格、枝織は少女の心を持ち、その強さを『技術』の面へと向けている

お前たちがその選択をするしかなかった理由も知っているが・・・・

北斗、お前が武人としての極みを目指しているのならお前ほど恵まれている存在はそう無い」

「俺が・・・恵まれているだと?」

先ほどまでとは違い、まるで自分自身に問い掛けるかのように言葉を口にする北斗

「そうだ、今のお前は力だけで闘い、技を自ら殺しているだけだ。

技と力、それが一つになってこそ真の力は発揮される物だ

今まで長い間枝織とぶつかり合ってきたようだからそう簡単にはいかんだろうが

せめて、枝織を自らの一部と認めるか、枝織という独立した存在として認めるかをした方がいいだろう

枝織のほうはお前が語りかけてくるのを待っているのだからな」

「・・・・・枝織を認める事が・・・・お前に勝つ近道だと言うのか?」

「そうだろうな・・・だが危険な所業になるぞ、お前と枝織の力はほぼ同等

お前が無理に取り込もうとしたら・・・・」

「ふん・・・それぐらいはわかっている」

「なら構わん、だが俺もそう簡単に負けてやるつもりは無いぞ」

「そうでなくては面白くない」

互いに顔を見合わせにやりと笑いあう

「・・・・千沙さん、先ほどから話に上がっている枝織とは誰のことなのですか?」

「北斗殿の身体に宿るもう一つの人格です」

「男の身体に女の心か・・・不思議な物だな・・・・・」

「いえ・・・北斗殿は一応女性なのですが・・・」

「へ?・・・・おいおいマジかよ」

「そう言えば最近黒龍殿と舞歌様が何か話していたがもしかしてこの事か?」

「北ちゃん・・・」

『プシューー』

「皆やっぱりここにいたのね、舞歌様が呼んでるわよ、急いでブリッジに来て頂戴」

三姫が急に訓練室に入ってきて全員に聞こえるように行った

「そ、れ、と。三郎太さん、ある筋から貴方がまた女性を口説いていたと聞きましたけど

このことについて詳しい説明をしていただけますか?」

ちょうど出て行こうとした三郎太の腕を掴み微笑みながら言う三姫

他の面々は我関せずといった表情で訓練室から出て行った

「ち・・・ちょ・・・黒龍さん、助けてください(涙)」

「自業自得だ、諦めろ」

「そういうこと・・・さあ・・・舞歌様から欠席していいって許可ももらってるし

たっぷりと説明していただきましょうか

「ひ・・・ひえええええ」









「三姫も変わったわよね」

「それはそうでしょ、やっと許婚が見つかったんですから」

「けどあそこまで変わるものか?」

「言葉づかいとかも完全に変わってたよね」

「あれが本来の三姫だったんじゃないのか」

「黒龍殿はそう思いますか?」

「ああ、三姫はどこか強がっているように見えてたからな」

「ほう・・・お前は人を見る目もどこかで養っていたのか?」

「さあな・・・・・記憶が戻ればわかるだろうがな」

訓練室を脱出してきた面々はそれぞれ思い思いのことを口にしていた

「お・・俺が悪かった!!だから・・・・その拳を収めてくれ!!」

「おい北斗、お前は何所に行くつもりだ?」

「む?・・・こっちがブリッジじゃなかったのか?」

「北斗殿、そちらは食堂の方角ですが・・・・」

「・・・・真紅の羅刹は方向音痴だったのか?」

「ええ・・・・それも重度のです・・・・一度一人でブリッジにいって六時間後に零夜が連れてくるまでブリッジに一度もこなかったほどです」

「・・・・・・ところで何所で見つかったのだ・・・その時は」

「・・・・機関部で瞑想を始めていたそうです」

「ぎぃいやあああああああ!!」

・・・・全員時折訓練室から聞こえてくる叫び声を無視しながらブリッジへと向かっていた





みなづき、ブリッジ

「皆集まったわね、今回集まってもらったのはちょっとした事件がおきたからよ」

「・・・・・また何かくだらんことでもしたのか?」

「言うわね・・・・・今回の事件は私の指揮下にあった一個大隊が草壁閣下の指揮下に移動することよ」

「なっ!!どういうことですか舞歌様!!」

「閣下が言うには『戦力の均等化を行う為』らしいわ」

「戦力の均等化?」×黒龍、北斗以外の集合した面々

「そう、黒龍殿と北斗が伝説の技『武羅威』を会得した事があちらにも知られたらしくてね

ただでさえ二人の力は戦略級だったのにそれがさらに強くなったものだから私の部隊の戦力が大幅に上方修正されてね

その結果、一個大隊を引き抜くことで戦力の安定化を図ろうとした、と言うわけね」

「ふん、くだらん。言うことは立派だが、所詮舞歌の戦力を割くためだけの引き抜きだな」

「おそらく情報を集めたのは親父の配下だな・・・・」

「はあ・・・・・これで舞歌様の指揮する部隊数が大きく減りましたね」

「・・・・舞歌様、我々はどちらに所属しているのですか」

九十九が姿勢をただし舞歌に訊ねる

「白鳥殿の部隊はそのまま私の指揮下においてるわ、けど・・・閣下からの要請で私の部隊を二つに分けなきゃいけなくなったの」

「ふん・・・二つに部隊を分散させるか・・・その後でどちらかを切り崩すつもりだろうな」

「ええ・・・・・そこで・・・黒龍殿に頼みがあるわ」

「俺にか?」

「ええ・・・・もう一つ作られる部隊の総指揮官になってほしいの」

「俺が・・・・指揮官だと?」

「そう・・・・といっても私の指揮下にあるから閣下の指揮下に入るわけではないわよ」

「・・・・なるほど、表向きには戦力をわけ、その実は舞歌のもとに全戦力を集めておく・・・・と言うわけか」

「いくら閣下でも貴方が指揮官になるといったら断るわけにもいかないでしょうしね。

艦のほうは・・・・悪いけど白鳥殿の戦艦に乗ってもらえるかしらもうそろそろゆめみづきも修理が完了するでしょうしね」

「では・・・私は艦長の座から降りるのですか?」

「いいえ、黒龍殿には提督として乗ってもらうわ、それと共に戸籍を作る必要ができたわけだけど・・・何か希望はあるかしら?」

実を言うといまだ黒龍は戸籍を会得してはいなかった。

本人が要らないと言い切っていたためであるが、流石に指揮官が戸籍無しでは色々と不都合がある。

『黒龍』の名も特別な呼び名としてならいいとしても、本名として呼ぶのはさすがにいただけないだろう

「そうだな・・・・名前は・・・・『黒河龍斗』(クロカワ・リュウト)にしてくれ」

「黒河龍斗ね・・・・・別に構わないけど名前にこだわるのなんて珍しいわね」

「ああ・・・・・なにかその名前に重大な何かが隠されているような気がするんだ、ふと頭に浮かんだ名前ではあるがな」

「まあいいわ、後もう一つ、これはクリムゾンからの依頼なんだけど・・・・

いくつかの研究所の破壊工作を依頼されたわ」

「何所の研究所なのですか、舞歌様」

「クリムゾンのよ。なんでも反会長派の人間がとんでもない研究をしてるらしくて

そのデータを持ってネルガルに接触しようとしてるらしいのよ

そこで私たちにその研究所の破壊を依頼してきたってわけよ

データさえ破棄してしまえばこちらの自由にしていいそうよ

物資を奪っていくもよし、データを回収していくも良し、研究員を拉致するのもよしってね」

全員・・・いや、北斗と黒龍・・・龍斗(以降龍斗で固定)以外の人間はあからさまに不満を顔に出していた

「ふん・・・・誰もやりたがるやつはいないようだな」

「当然だろう、木連の軍人は自らの正義を重んじる。

だが・・・・あの会長にしては随分と大盤振る舞いだな、よっぽど危険な橋と見た」

「我々木連はこれを断るわけには行かない、すでにあちらから敵が開発しようとしていた機動兵器のデータをもらっているからね。

そのデータも今、地球が前線で使っているものよりは落ちるとしても今の私たちの機体よりも遥かに高性能・・・

そのデータの交換条件がこの依頼・・・・・・・」

「・・・・その依頼、俺が受けてやろう」

「黒龍殿!?」×北斗以外の全員

その場にいたほぼ全員が驚いた、今まで龍斗は自分から依頼を受けたことはなかった

草壁から何か交換条件が出されて始めて動き始めていたのだ

一度目の交換条件は舞歌の安全の確保、二度目は北斗並びに自分の釈放

三度目は舞歌の部隊との合流、と言うようにそれ相応の利益があって始めて動いていたのだ

「・・・何を驚く、俺とてたまには自分から仕事をすることもある」

「まあ貴方なら安心して任せられるわね、ちなみに研究所は西欧方面の各地に散らばっているらしいわ、ダミーも含めてね」

「その本命を叩けばいいだけか・・・・ダミーに手を出すわけにはいかんか」

「そうね・・・後、今回の依頼を受けるにいたって特殊部隊を預けるわ

皆、姿をあらわして頂戴」

『ザッ!!』

その言葉と共に舞歌の目の前に六人の人間が現れた

「なるほど・・・先ほどからかすかに何者かの気配がしていたがこいつらだったか」

「そうよ・・・皆、自己紹介をしてあげなさい」

「はっ、私の名は悟刻、東舞歌親衛隊・影の隊長であります」

「私の名は刹那、東舞歌親衛隊・影の副隊長をしております」

「俺の名は羅刹、東舞歌親衛隊・影の隊員だ」

「僕の名は修羅、刹那、羅刹とは三つ子の兄弟です」

「私の名は闇龍、まあわかってるとは思うけど私たちの名はダミーの名前だからね、本名は捨てたから」

「私の名は光龍、闇龍は双子の姉です」

それぞれ六人が自己紹介をしていった

「この子達は私が小さいころから使えてくれていたの、その分信頼は高いわ。

腕も当然一流よ、そうね・・・・この中で一番弱い光龍でも今の九十九殿も同じだけの力を持ってると思うわよ」

「・・・・舞歌、お前は大丈夫か?」

「あら・・・・嫌な質問ねそれ、私の頭は正常よ」

「そうじゃない、影を俺に預けると言うことはお前の守りが疎かになると言うことだぞ」

「ふふふ・・・・それは大丈夫よ、北斗に側にいてもらえば北辰だって追い返せるわよ」

「そういうことだ、舞歌は俺が守る、お前はとっとと仕事を終わらせて帰って来い

相手がいなくては訓練も面白くない」

「わかった・・・・で・・・移動手段は?」

「これを・・・・・・」

舞歌はそう言うと青い石を龍斗に手渡した

「・・・・こいつらは跳躍処置を受けているのか?」

「ええ、飛厘に頼んだわ。特級跳躍者である貴方ならそれだけで充分でしょう?」

「帰りを考えると一個だけでは辛いんだが・・・・・

まあ、帰りは壊れた跳躍門から適当に回収するとしよう」

ちなみに木連の中でも龍斗が跳躍石(C・C)のみで生体跳躍が可能なのを知っているものは一握りの高官か

優華部隊並びに九十九達木連三羽烏と三郎太だけである

跳躍処置の方は龍斗の跳躍情報をもとに一応完成している

(山崎が一度黒龍を捉えて人体実験をしようとしたが当然の如く撃退されている)

「とりあえず、ここに跳躍して頂戴」

そう言うと舞歌は一枚の写真を差し出してきた、そこには工場が映っていた

「ここはすでに破棄された工場らしいから」

「わかった、俺と共に行くもの以外は少し離れていろ。

・・・・・・・・・・・跳躍」

その言葉と共に石から発生した光は収まり、その場に龍斗たちの姿はなかった

「誰も巻き込まれてないわね?」

「はい。全員の安全を確認しました」

同時刻・・・・ナデシコから白騎士、テンカワ・アキトが西欧方面に向かっていることを知るものは誰もいなかった

白騎士と黒き龍、この二人は予期せぬ形で顔をあわせることとなる

二人の会合の時、何が起こるか・・・・・まだ・・・誰も知らない・・・・













後書き

最近今ひとつネタが固まりきりません、そのため自分でもなかなか質の向上に励めていないと悟っております

そのため今回も見ずらかった部分があったかもしれませんが・・・・・

そこは容赦なくご指摘してくださって結構です、と言うよりドンドン言ってください

しばらくへこみますが(マテ、さらにやる気があがりますので

次回は西欧編に入ります、すでにアリサたちの処遇は決定しました、どちらになるか楽しみにお待ちください

なお、羅刹達三兄弟はスパロボα外伝のイーグレット兄弟

光龍、闇龍はディアナとキエルを想像してください(外見)

 

管理人の感想

B−クレスさんからの投稿です。

とうとう始まりますねぇ、西欧編!!

ある意味、投稿作家さんの試練の場でもありますからね西欧編は。

メティの扱いが特に、ね(苦笑)

B−クレスさんがどう話をまとめるのか、楽しみに待たせてもらいますね!!