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イツキがさらわれた事が判明する少し前・・・・

西欧方面最前線基地近く・・・

『ドッゴーーーーン』

急に洋館から爆発が起こり、その中から六個の人影が出てくる

「任務完了・・・と」

「まさかダミーと思ってたのが本命だったとはね・・・・」

「まあいいじゃないか、これで我が軍の補給物資も多く調達できた」

「もって帰るのが一苦労だけどね・・・」

「それより大佐はどうしたんだ?」

「さあ・・・・・そろそろ出てくるんじゃないか?」

六人がそれぞれ一言ずつ口にする、それと共にもう一つ・・いや二つの人影が新たに現れる

「すまん、少してこずった」

「大佐。その少女は?」

最後に出てきた黒尽くめの男の側には透き通るようなエメラルドグリーンの髪の少女がいた

「保護した、何かはわからんが腹が減ってたようなので御握りをやったら懐かれてしまったが・・・」

「(また落としたんだな)」×四

「(く、またライバルが増えたの!?)」×二

黒尽くめの男・・・・龍斗の言葉をきき呆れる者四人、少女に対し敵対心を持つ者二人

「さて・・・・今回の戦果を聞こうか・・・・まあお前たちも食うといい」

そう言うと龍斗はマントから人数分の御握りを入れた箱を取り出した・・・・

そして、ここに、史上初であろう破壊した施設の前で御握りを食べながらの戦果報告が始まった・・・







機動戦艦ナデシコif
『新たなる刻の歌』
西欧編第三話 それは、世界の『選択』



「まずは・・・・光龍、闇龍のペアから」

「はい。私達はネルガルから連合軍に渡されたと言うDFSなる物の詳細データを回収しました」

「それと共にその連合軍にDFSを扱うエースパイロットの存在を確認、これです」

闇龍からの報告の後、光龍が回収したパイロットデータを龍斗に手渡す

「蒼銀の戦神か・・・・奴を相手にするのは得策ではないな」

「大佐はこの男と接触したんですか?」

「ああ・・・・草壁の依頼を受けた時に一度手合わせをすることになったんだが・・・・

間違いなく強い、昴氣とは別の力を奴は保持しているようだ・・・・

正直、今の俺でも奴相手に確実に勝てる自信はない」

「それほどの男がいながら・・・・なぜここまでこの大陸の攻略が上手くいってたんだ?」

龍斗の言葉を聞き、悟刻が疑問の声を漏らす

「いや。この男がいたからこそあそこまでしか攻略できなかった・・・・と言うほうが正しいだろう

それにこいつを恨んでいる腐った連中は多い」

「なるほど・・・・足を引っ張られた・・・・ってわけですか?」

「そうだ、次は俺からだ。見ての通り俺は妖精の保護に成功した

この少女はどうやらマシンチャイルド『ホシノ・ルリ』を凌駕する存在として生み出されたらしい

俺たちのターゲットはこの少女で間違いなさそうだ、名前は『翡翠』(ヒスイ)らしい」

龍斗の言葉に全員はその少女の姿を見る

翡翠と呼ばれた少女は嬉しそうに龍斗の手作りの御握りを食べていた

「翡翠は俺の養子にすることにした、データから見ても跳躍には耐えられるようだ・・・・

そこで今から約「グッ、ウォォォオォオオォオオオ」・・・ほう?」

龍斗の話は突如聞こえてきた何かの叫び声らしき物に中断させられることになった

「今の声・・・・人間・・・・ですよね?」

光龍が不安げに訊ねる

「ああ、かなりの気だな・・・・怒りと・・・悲しみと・・・殺意と・・・喜びが混じったような・・・」

「ふむ・・・・・お前たちはクリムゾンの部隊と合流して跳躍石の準備をしておけ」

龍斗はそう言うと声がしてきたと思われる方向を見る

「大佐はどうするんですか?」

「俺はあの気を持つ者を見てくる」

その言葉と共に龍斗の姿は見えなくなっていった

「やれやれ・・・・大佐のあの性格はどうにかならないかね?」

「仕方ないですよ、私達は命令に従いましょう」

「そうだね・・・・・おいで、私達と一緒に行こう」

光龍のその言葉に翡翠は大人しく従いすぐ隣に行く

翡翠が完全に隣に行った時、その場に存在する者は誰もいなくなった







西欧方面某所

「ふぅ・・・・・・あなたの王子様は物凄い方ですねえ」

反地球連合軍組織『フォックス』のリーダーはイツキに向かってそう呟いた

「まさに・・・・・怪物とよぶに相応しい」

リーダーはそう言うと再び防衛についている部下達からの報告に眼を向けなおした

「こちら、第二防衛ライン!!奴の進行を止められません、増援を・・・・」

これはリアルタイムの情報である・・・・先ほどまで報告していた男はその身体が二つに分かれていた

そして・・・・・新たに映るその服を朱に染めた一人の男・・・・・・・・

その男の顔には何の表情も浮かんでいなかった・・・・・・・

「単独で防衛ラインを突破しますか・・・・・・とんでもないと思いませんか?」

リーダーはイツキにその報告の全容を見せた

報告内容

『敵、テンカワ・アキトによる単独強襲の現在の被害状況

設置トラップ、第二防衛ラインまで全て破壊

警備兵、同じく第二防衛ラインまでの五十人が全員死亡』


その報告は時がたつに連れて少しずつその被害数を増やしていく・・・・・・・

それを見て、イツキの心の中にはアキトに対する恐怖感が蘇った・・・・二度と蘇る事がなかったはずの感情が・・・・

しかし・・・・・それと共に一人の友人との会話も心の中に蘇った・・・・・・

自分の愛した人・・・・アキトと酷くよく似た境遇の少年を愛した同じ年の友人のことを・・・・・・



そう・・・・あれは・・アキトとその少年が二人で考えられない程の反乱軍を倒した時のことだ

イツキは、そのときの二人の戦い振りを見て恐怖を覚えた

そして、共に後方で支援していたその友人にそのことを打ち明けたのだ・・・・

『ねえ・・・・貴方は怖くはないの?』

『怖い?なぜ恐れねばならん、二人があそこまで戦ったのは後方にいる私達の為だぞ

むしろいつものように前線で戦わせなかったことに怒りを覚えているくらいだ』

その少年と少女は初陣の時から共に最前線で戦っていた・・・・・

そのころの火星は反連合軍組織が多く、学徒兵の最前線投入まで行っている場所まであった

イツキとその友人とがあったのも、その最前線に向かう部隊だった

『ふふふ・・・・・・ねえ・・・・もし・・・・もしだけど・・・・あの二人が・・・敵にまわるような事が会ったらどうする?』

『ふん、愚問だな。少なくとも、私はあいつを敵にまわすつもりは無い

もしあいつが連合軍に牙を向くと言うのなら私もついて行くつもりだからな』

『・・・・・本当に?』

『無論だ、腐りきった軍を相手にせねば我らの目的は果たせん

私は・・・・必要とあらば世界を敵にまわしても戦えるぞ?』

『世界を相手に・・・・ね・・・・随分と大きく出たわね?』

『・・・・・あいつとともに歩めるのならそれくらい安い物だ・・・・・』

『そう・・・・・・・』





その後、アキト達が来た為そこで話は終わった・・・・・・

しかし・・・・そのときの出来事はイツキに一つの決心をさせた

それは・・・『世界を相手にしてでもアキトの側にいる』・・・・だった

イツキはあの時の決意を思い出すと再びその情報をその目に入れた

それでも・・・・・恐怖感は無かった・・・・・ただ・・・アキトが来てくれている・・・・

その事がイツキの心を落ち着かせていた

その間にもアキトの進行は続いていた・・・・・

前に立ちふさがる敵を、なんの躊躇いも、感情も無く破壊していく・・・・

それは、イツキの部屋の守りを行っているもの達にも充分すぎるほどの恐怖だった

しかし・・・・イツキの表情は最愛の人を待つ女性の表情であった

そして・・・・・アキトの快進撃は続き、ついにアキトはイツキの捕らえられている部屋へとたどり着いた



「イツキを・・・・・返してもらう」

その服を朱に染めたアキトがイツキのそばにいる男を睨みつけながら言う

「ただで返すわけにはいけませんね・・・・・・どうでしょう、交渉といきませんか?」

そのアキトの姿に恐れる様子を微塵も見せずにアキトに話しかけるフォックスのリーダー

「・・・・・いいだろう」

アキトはイツキの身の安全を最優先し交渉を受けることにした。無論、隙あらばイツキを助け逃げる覚悟でいたが・・・・・

「さて・・・・此方から望むことはただ一つ、あなたを我々の部隊に加えることです

あなたもよくわかっているでしょう?どこまで上層部が腐りきっているか・・・・・・

まともな軍人はもう一握りしかいません、その一握りもいつ腐るかわかりません・・・・・

そこで・・・・我々は決意したんですよ、もう腐った軍人に任せられないとね・・・・・・

しかし、腐ったとはいえ軍人は軍人、真っ向からぶつかって勝てるわけがありません

そこで、軍の象徴ともいえる貴方に協力してもらいたいんですよ」

「・・・・・・それを言うためだけにイツキをさらったのか?」

アキトが発する殺意を高めながら言う

「ええ・・・・・・手荒な真似はしたくなかったのですがね・・・・・・

蒼銀の戦神は我々とよく似た意見を持っているようですが協力は断られましたからね・・・・・

貴方との話し合いは確実に行いたかったんですよ・・・・・我らの正義の為に・・・・ね」

「・・・・くだらん正義だな」

「なんだと!!貴様、この女の命は俺たちが「止めないか!!」リーダー・・・・・」

アキトの言葉に怒った男がイツキに銃を向けようとした瞬間、リーダーの男がその男を一喝した

「失礼、確かに正義と言う言葉ほどくだらないものは無いかもしれませんが・・・・・・

それでも・・・・・私たちにとっての『正義』はこういうやり方なんですよ・・・・・・」

「・・・・・・俺の『正義』とはそりが合いそうに無い『正義』のようだな」

「そうですか・・・・・・・・済みませんが・・・・・・・ここで始末させてもらいますよ」

今まで銃を構えていなかった男たちが一気にアキトに銃を向ける

それと共にイツキの隣にいた男がイツキにその銃口を向ける

「・・・・・・」

「申し訳ありません、しかし・・・・ここで貴方を放すくらいなら殺した方が得になりますからね

抵抗さえしなければ貴方の姫君には手を出しません、それだけは私の名にかけて誓いましょう」

「アキト!!私のことは気にしないで!!」

「くっ・・・・・・・・・」

アキトは強襲行動に関してはそれなりに自信がある、単独で300の歩兵相手に互角に戦ったこともある

しかし・・・・・この状況下で二人共無事に帰還させれる自信は無かった

今の状況で命を救う事ができるのは片方のみ・・・・・二者択一・・・・・・

大人しく撃たれイツキの身の安全を図るか

それともイツキを気にせず攻撃に移り自らの身を守るか・・・・・・・

これが・・・・他の人間・・・・ただの同僚程度ならアキトは間違いなく後者を選んだであろう・・・・

しかし・・・・・・・今の人質はイツキである・・・・・・アキトの選択はすでに決まっていた

『ゴトッ』

手にもっていた拳銃を床に落とし、アキトはじっとイツキのほうを見た・・・・・・

「そちらを選ぶんですね・・・・・・・・・わかりました、姫君は約束どおり無事に届けます」

リーダーがそう言うと全員がアキトに向かって狙いを定める・・・・・その瞬間

「女を人質に取るか・・・・・・・・気にいらんな」

突然そんな声がしたかと思うとイツキの隣に立っていた男が倒れ、別の男が現れた

全身黒尽くめの男・・・・・・・木連最強といっても過言でない男・・・・・黒河龍斗がそこにいた

「(なッ!!あいつはまさか・・・・・・ホップ、聞こえるかホップ!!)」

「(ああ・・・・間違いないようだ・・・・・・あれが僕が言っていたもう一人のアキト・・・・『闇の王子』だ」

闇の王子・・・・・龍斗はまさにそう呼ばれても違和感が無いほどの存在感があった

その場にいるだけでそこに存在している全ての物に威圧感を与える・・・・そんな存在感が・・・・

「く・・・・・撃て撃て!!」

その部屋にいた一人の男がそう言うと全員が一斉に龍斗に向かって射撃を開始した・・・しかし!!

『キィン、キィン、キィンキィンキィン』

イツキの前に立った龍斗はその弾丸全てを弾き返していた

「ふむ・・・・・・試作品の割にはよく動く・・・・・・飛厘に改良させれば充分完成品になるな」

「デ・・・・・ディストーションフィールド!?」

アキトはその光景を見て驚いた、まさか携帯用のフィールド発生装置が存在しているとは思っていなかったのだ

「では・・・・・・此方の番だ!!」

『ガァン、ガァン、ガァン、ガァン、ガァン、ガァン!!』

龍斗が隠し持っていた拳銃で次々と部屋にいた男たちを撃つ

その弾丸は確実に標的の急所に当たりその命をうばっていった・・・・・・

「今よ!!」

どこからともなく女性の声が響き、急に何人もの黒服の男たちが部屋に乱入してくる

窓、通気ダクト、ドア・・・侵入できるところから何人もの男たちが侵入してきたのだ

流石に何倍もの敵が相手では勝ち目はない、

フォックスに所属する男達は隠しておいた非常口を使い次々と脱出していく

侵入してきた男たち・・・・・クリムゾンのSSはその男たちの追跡を開始した

「どうやら間に合ったみたいだな」

「僅かに遅刻じゃないか?」

ナオとテツヤが部屋に入ってきながら呟くように言った

「二人とも大遅刻よ、すでに追撃に入ってるわ」

侵入開始を告げた女性・・・・・・ライザはその二人をなじるような眼で見ながら言った

「・・・・・・・怪我は無いな・・・・・・歩けるか?」

「あ・・・はい、すいません。(どうしてだろう・・・・この人・・・・何処かアキトに似ている・・・・)」

その頃龍斗はイツキを束縛していた物を破壊しイツキの身体を気遣っていた

「・・・・・・・助けてもらったことに感謝します・・・・・しかし・・・貴方は何者ですか」

アキトはイツキの近くまで行くと龍斗と正面から向き合いそう言った

「それはどういう意味だ?」

龍斗も何処か挑むような感じでアキトに質問を仕返した

「貴方は今先ほどまでここにいた全員に気付かれずにイツキの側まで移動していた・・・・

それだけでも並みの人間では無いと思いますが」

「気を消して近づいただけだ、お前にだってできるだろう?」

「・・・・・・そう簡単には行きませんよ・・・・」

二人の間に何処か近寄りがたい雰囲気が流れ出す・・・・・

「・・・・・・少なくとも今はお前の敵では無い・・・・・」

「・・・・・・・・・その言葉信じさせてもらいます」

その瞬間二人を覆っていた空気は消えていた・・・・



一方、ナオ、テツヤ、ライザの三人は・・・・・死んだ人間の情報を回収していた

「・・・・・・・・駄目ね、どいつもこいつも雑兵レベルだわ」

「・・・・もとより捨て駒か・・・・・・・・奴らを一網打尽にできると思ったんだがな」

「まあ次の行動までは時間が空くな・・・・・・早いうちにミリア達を説得しないとな」

ナオがそう言い出口の方に向かおうとした時・・・・・・

「ナオ!!危ない!!」

『バー――ン』

『ドサッ』

「く・・・・・・なんだありゃ!?っておい!!なにやってんだお前らしくねえ!!」

テツヤがナオを狙った銃弾からその身を盾にし、ナオの身を守ったのだ

そして・・・・・次の瞬間ナオの目に映ったのは・・・・腹部に銃弾を受けたテツヤの姿と・・・・

頭を打ち抜かれているはずの男が起き上がり銃を構えている姿だった・・・・・・

「く・・・・こいつ!!」

『ガァン、ガァン、ガァン!!』

ライザがテツヤの仇と言わんばかりの勢いで起き上がった男を撃つ

その男は銃弾を受けその身体を動かすが・・・・・倒れることなくアキトの方向に向きなおし始めた

「な・・・・!?さっきの銃弾は急所に当たっているはずだぞ!!」

アキトは自分のいる方向に向きを変えているその男を見て驚いた・・・・

確かに・・・・ライザの弾は全弾急所に入ったはずだった・・・・頭、肩、心臓部分・・・・・・

しかし・・・・男は平然と動いていた・・・・生前に比べればやや遅いが確実に身体を動かしていた

「銃弾を受けながら動く死人人形か・・・・・・・・なかなか面白い物がここにはあるんだな」

アキトの隣にいる龍斗は驚くどころか逆に感心していた

イツキはそんな龍斗に微妙に呆れていたりする

「くっ!!」

『ガァン、ガァン、ガァン!!』

アキトは男に向かって銃を放つ、しかし、男はその行動を止めることはなく、確実にアキトに狙いを定め始めていた

「ふむ・・・・・・銃弾を受けて無事か・・・・・ならこいつならどうかな」

龍斗はそう言うとマントから二つの日本刀を取り出し両手に持つ

そして・・・・・・・男に向かって跳びかかった

男も龍斗に反応しその向きを変えようとしたが僅かに遅く龍斗は男の懐に入り込んでいた

「剣技、八首之蛇龍!!」

『ヒュン、ヒュヒュヒュン、ヒョヒュォン』

『ドサッ・・・・・ドサドサドサッ・・・・・・』

龍斗が叫んだ後・・・・・聞こえたのは何かが空を切る音だけ・・・

そして・・・・・・その音が止んでまもなく・・・・・立っていた男はバラバラになっていった

「流石にここまでやればもう復活できないだろう」

龍斗はそう言うと日本刀をしまいはじめる

「(アキト・・・・聞こえるかアキト)」

その光景を見て恐怖の感情に縛られそうになっていたアキトはホップからの呼びかけで意識を呼び戻した

「(ああ・・・・・・一体なんだったんだ今のは・・・・・)」

「(おそらく・・・・・火星の守護者が送ってきた奴だな)」

「(・・・・・・どういうことだ?)」

「(守護者のおもな役割は歴史を大きくゆがめる存在の消去・・・・・

今まで行動を起こさなかったのはあらかた歴史に沿っていたからだろう

しかし・・・この西欧への出向、そして・・・・同一人物が顔をあわせたこと・・・・・

この二つの要因が大きく歴史をゆがめる原因となったのだろう・・・

その結果・・・・・・歴史をゆがめる根本原因である僕・・・

そして僕の宿主であるアキトを消去する為に動き出したんだろう)」

「(・・・・・・どうして死んだはずの人間が動いていたんだ?)」

「(・・・・原理は簡単さ、人間は電気信号により行動命令を全身に伝えている・・・・・・

ナノマシンがすでに停止した脳の代わりを果たし電気信号を全身に送ればいいだけ・・・・

外部の情報はその肉体の光学機関を利用するか、遺跡からデータを転送すればいいだけ

今みたいに中枢部分と切り離さない限り動き続けるよ)」

「(・・・・・生きている人間も操るのか?・・・・・他の人間に危害を及ぼす可能性はどれ位だ)」

「(生きている人間・・・・ようは精神力の勝負だね、生きる気力にみちた人間はそう簡単には操れない

逆に何らかの要因で気力がない人間は行きながらにして人形にされる

本来、こういった暗殺者用のナノマシンは死人に利用するんだ・・・・・

少しでも確実に標的を葬る為に耐久力の高い死人にね・・・・・・

その分判断レベルなどは低い、ただ標的だけを狙うように造られているからね

今回は・・・・・はっきりいって不幸としか言いようがないよ・・・・・

多分・・・・久しぶりに暗殺用プログラムを起動したから遺跡が試運転をしたんだと思う・・・

本当なら標的以外は狙わないように造られてるはずだからね・・・・)」

アキトがホップとリンクで会話している間・・・・・・

ライザ、ナオ、龍斗の三人はテツヤの傷を見ていた

「テツヤ!!大丈夫・・・しっかりして!!」

「ちっ・・・・・・俺らしくないな・・・・・・よりにもよってナオを庇っちまうとはな・・・・・」

「・・・・銃弾は貫通してるな」

「・・・・・・・(包帯を傷口周辺に巻いている)・・・ひとまずこれで大丈夫だろう

しかし油断するわけにもいかん・・・・・そこの女、このあたりの病院はどこだ」

「え・・・・・・・・・私が連れて行くわ、彼を車まで運んで頂戴」

「わかった」

龍斗はそう言うとナオを促しできるだけ傷に響かないようにテツヤを運び始めた

イツキはその光景をただ見ているしかなかった・・・・



約六時間後・・・・・・・・・

とある病院の手術室前・・・・・・・

そこにはアキトとライザ、ナオとイツキがいた・・・・・

龍斗はテツヤを運んだ後、いつの間にか消えていた

「貴方達が付き合う必要はないのよ」

ライザがナオ、アキト、イツキを見ながら言う

「テツヤのおかげで俺は助かったんだ・・・・・・このまま帰ったら後味が悪すぎる」

「・・・・・俺もナオさんと同意見だ・・・・・・彼のおかげでメティちゃんは助かったんだからな・・・」

再び場に沈黙の空気が流れる・・・・・・・・かと思われた瞬間

「ランプが・・・・・消えた」

イツキの声と共にその場にいる全員が身構える、それと同時に中から医師が出てくる

「テツヤは・・・・・大丈夫ですか?」

ライザが本当に心配そうな表情で医師に話し掛ける

「はい・・・・・一命は取り留めました、綺麗に貫通していたのが幸いです

しばらくは入院してもらいますが無茶をしない限り大丈夫でしょう」

その医師の言葉と共に全員が胸をなでおろした

それと共にアキトのコミュニケに通信が入る、アキトは軽く詫びの言葉を言うと病院のトイレに入っていった

「はい、テンカワです」

「おお・・・・・・こんな時間にすまないな」

通信相手は西欧方面軍総司令グラシス中将だった

「いえ・・・・・・しかしどうしたんですか」

ちなみに今の時間は早朝六時である

「うむ・・・・・・先ほど君のナデシコへの帰還が決定した

クリムゾンの方もしぶしぶながら承諾したよ。

あと・・・・・つい先ほど入った情報だが・・・・ナデシコは単独で敵大部隊との交戦を命じられたようだ」

「・・・・・・・敵の数はどれくらいですか」

「・・・・現在確認されているだけでチューリップが五つ」

「伏兵が合った場合・・・・・・十は超えそうですね」

「うむ・・・・・・ナデシコの発進は今から二時間後・・・・・君たちは準備が整い次第出てもらおうと思っている」

「・・・・・わかりました、イツキと共に基地に戻ります」

「うむ・・・・・すまないな・・・・・西欧の守りは任せてくれ・・・・君のおかげで戦況は立ち直った

あと・・・・・・何か必要な事があればいってくれ・・・・・できる限り協力させてもらう」

「ありがとうございます」



その後・・・・アキトとイツキはナオとライザ、テツヤを残して基地に戻りナデシコへと向かっていった





「あれが白騎士か・・・・・」

「噂よりは強いようだが・・・・・大佐の言っている通りか」

「それより俺たちも戻ろう、跳躍体制が整ったそうだ」

アキトたちを見ていた三つの影・・・・・それらは誰にも気付かれることなく再び消えていった





アキトは・・・・ナデシコに向かう高速輸送船の中でホップが言った言葉を思い返していた

『(これから先・・・・どんな干渉があるかわからない・・・・・・最悪・・・・マルス自ら動いてくるかもしれない

そうなったら・・・・・・人類の未来が絶たれる恐れすらある・・・・・・

火星の守護者は・・・・それだけの戦力を保持している・・・めったに使われることは無いけど・・

でも・・・・・遺跡の干渉が強くなればどうなるかわからない・・・・・・・・

もう歴史は・・・誰の物でもなくなった・・その分・・・・これから先は激しい戦いが続くだろう・・・・

守護者達は歴史を修正しようと動くだろうし、闇の王子がどう動くかもわからない

アキト・・・・・・これから先・・・・なにがあっても言いように少しでも多くの力を手に入れるんだ

信頼と言う力・・・・信念と言う力・・・・・どんな物でもいい、歴史の濁流に飲まれないだけの力を手に入れるんだ

そうすれば・・・・・・確実に歴史は変化する・・・・多分・・いいほうに向かって)』

「(歴史の濁流に飲まれないだけの力・・・・・か)」

「どうしたのアキト?」

「ん・・・・・・・何でもない」

イツキはやや不思議そうな顔をしていたが特に気にする様子は見せなかった





歴史と言う史上最高にして最悪の劇の舞台は再びナデシコへと戻っていく・・・・・

その劇を台本どおりに進めようとする『守護者』

それをよしとせず自らの力で劇をより良い方向にもっていこうとする『逆行者』

そして・・・・・『守護者』に牙をむき『逆行者』の手助けをする『反逆者』

どちらにもつかず、ただその存在が大きく歴史を動かす原因となっている『異端者』

今は・・・・『守護者』と『逆行者』『反逆者』の争いでしかない・・・・・

しかし・・・・たった一つの存在である『異端者』・・・その存在が加わる時・・・・・その劇は大きく変化を起こす

今はただ・・・・・その来るべき変化の時に備え・・・・時は流れていく・・・・・

劇のフィナーレはどのような形になるか・・・・・知る者はいない・・・・

ただ・・・・・・『時』だけがその終焉に向かって流れていた・・・・・・













後書き

今回・・・・はっきり言って無理やり詰め込んだ感じです

ちょっと身の回りで色々な事が起きているので今まで小説に専念できなかったので

相当腕が落ちてしまったようです・・・・・・・・・・・・・

後・・・・今回出てきたイツキの友人と蒼銀の戦神は・・・わかる人はわかるでしょう

正直に言います・・・・・そのゲームにはまってます!!

それも遅くなった要因の一つです・・・・・・・待っていただいた方、申し訳ありません

上の二人は特に出場予定はありません・・・・・もしかすると出るかも知れませんが・・・・・

次回・・・・アキトとイツキのナデシコ合流あたりで一度切れると思います

では・・・・・少しでも早くあげれるよう頑張りますので見捨てないでくださいませ



追伸

諸事情により現在通学中の高校の寮に入ることになりました

そのため更新速度が一層落ちるかもしれません、どうか御了承ください

そして・・・・・・最後まで書き上げるつもりですので見捨てないでくださいませ

以上で・・・・・追伸報告を終わります

 

 

管理人の感想

B-クレスさんからの投稿です。

西欧編はここれ終了ですか。

確かに、かなり展開を急いで書かれたみたいですね。

それにしても学校の寮ですか?

色々と規則とかがあって大変だと思いますが、頑張って下さいね!!