これは・・・・・ある世界において『黒龍』と呼ばれた男の過去である・・・・・・

『黒龍』と呼ばれた男・・・・テンカワ・アキトはたった一人の愛すべき女を守る為にいくつものコロニーを破壊して

何百もの人間を殺めてきた・・・・そして・・・・・ヒサゴプラン最後のコロニー・・・・『アマテラス』

ここで・・・・彼は望まぬ再会を果たし、それと共に事件は急速に動き出した・・・・







機動戦艦ナデシコ劇場版〜The prince of darkness〜if
『新たなる刻の歌』外伝
『黒き龍の系譜』





「ボース粒子の増大反応!!」

ヒサゴプランで造られた最後のコロニー、『アマテラス』のオペレーターが叫び声をあげる

「識別不能!!相手、応答ありません!!」

その言葉と共に今まで何も無かった空間に漆黒の鳥のような機体が現れた・・・・・

「・・・・・・・・行くぞ」

その漆黒の鳥に乗るパイロット・・・・・・『テンカワ・アキト』はそう呟くとアマテラスへ突撃を開始した

「迎撃開始!!」

その声と共に配置されていた戦艦とステルンクーゲルが一斉に迫ってくる漆黒の鳥に向かって攻撃する

「邪魔を・・・・・するな!!」

『バシュン、バシュン、バシュン』

『ガキ、ガキ、ガキィン、ドッゴーーン

「敵、機動兵器より攻撃、戦艦が一隻沈みました!!」

「くっ・・・・・あの機体は戦艦のフィールドを貫けるだけの火力を持っているのか!!」

統合軍中佐、シンジョウ・アリトモがそう嘆いた

「第一防衛ライン突破!!このままでは最終防衛ラインを超えられるのも時間の問題です!!」

オペレーターが報告している間にも次々と防衛ラインをは突破されていく

「肉を切らせて骨を絶ぁつ!!」

「な・・・・准将!?」

アマテラスの警備を任されている統合軍准将、アズマがエレベータと思わしきもので司令室に来ながら言う

「コロニー周辺、並びにコロニー内での戦闘を許可する」

「なっ!!准将、それではコロニーが・・・・・・」

「多少の犠牲はやむをえん!!」

『おっしゃああ!!』

急に赤いパイロットスーツを着た女性が司令室に通信を入れた

それと共にコロニー近くで待機していたエステバリス達が次々と姿をあらわしていった

「いくぜ!!しっかりついてこいよ!!」

「おう!!」


「リョーコさん、あんまり無茶しないでくださいよ!!」

「言われるまでもねえよ、お前こそ無茶すんなよ!!」

アマテラス防衛部隊『ライオンズ・シックル』・・・・その隊長は皮肉にもかつてアキトと肩を並べていたスバル・リョーコ・・・・

そして・・・・副隊長は・・・・・アキトが愛した女性・・・イツキ・カザマの妹・・・・サツキ・カザマだった・・・・・



「(赤いエステカスタムに緑色のエステカスタム・・・・リョーコちゃんにサツキか・・・・・・)」

「まちやがれ!!」

「・・・・・(どうしてこんなにも簡単に迎撃できてるの?・・・・敵の狙いはいったい・・・・)」

「こぉら!!邪魔すんな!!そいつは俺の獲物だ!!」

戻ってきている漆黒の鳥を落とそうと攻撃していたステルンクーゲルにリョーコは愚痴をもらす

「(そろそろか・・・・・・ラピス、リンクレベルを上昇させろ)」

「(わかった・・・・・・・)」



「敵、第二防衛ラインまで後退!!味方攻撃部隊、なおも追撃中!!」

オペレーターがどこか安堵の雰囲気を漂わせながら報告する

「見たかね、シンジョウ君。これこそ統合軍の力、新たなる力だ!!」

「はぁ………」

すでに勝った気でいるアズマにやや呆れながら返事を返すシンジョウ

「宇宙軍のやつらめ、戦争の時はデカイツラしてたが、今は違う!!

地球連合統合平和維持軍万歳!ヒサゴプラン万歳!!」

「ボース粒子の増大反応!!」

「えっ?」

オペレーターの報告と共に白亜の戦艦がアマテラス防衛部隊の側面にジャンプしながらグラビティブラストを放つ

その攻撃により油断していた統合軍の戦艦は次々と沈んでいった

「守備隊の側面にグラビティブラスト、被害多数!!」

「質量推定・・・・・戦艦クラスです!!」

『ギュオオオオオン・・・・・ズバシュウウウウウウ!!』

オペレーターが報告している隙に白亜の戦艦・・・ユーチャリスはもう一撃ブラストを放っていた





そこから先は統合軍も猛反撃を開始した、しかし・・・・

ユーチャリスから発進するバッタに次々と統合軍の船や機動兵器は落とされていった

「ちぃ!!俺の相手は奴だ!!お前らなんかじゃねえんだよ!!」

襲い掛かってくるバッタをさばきつつ赤いエステは目標に向かっていた

「そこだ!!」

バッタの包囲網を抜けたリョーコの乗るエステは降下していく漆黒の鳥に向かってレールガンを放つ

『ガキン、ガキィン・・・・・ドッゴーン!!』

三発放ったが、二発はフィールドに防がれ、一発は回避され勝手に爆発した

「へったっくそ!!」

「お供します!!」

「リョーコさん!!単独で動きすぎないでください!!」

「へへ・・・・なら追いついてきな!!」

サツキの言葉に軽く笑いながらリョーコはエステをさらに高速化させる



「(・・・・・・・そろそろ振り切らせてもらおう・・・・装甲除去)」

『ガォォン!!ガォン、ガォォォン!!』

漆黒の鳥がその姿を大きな機動兵器へと変えてゆく、

「くそぉ!!お前はゲキガンガーかよ!!」

「(・・・・あの機動兵器・・・・エステに似ている?)」

先ほど、鳥の姿から変形する際に外された追加装甲に当たり、リョーコとサツキ以外のパイロットは脱出していた

「うちおとせぇえ!!撃って撃って撃ちまくれええええええ!!」

アズマ准将が急に大声を上げながら漆黒の機体が向かっている先に待機している 砲戦フレーム部隊に伝令する

しかし、漆黒の機体は容易く銃撃をかわし、その後に続いていたリョーコとサツキが砲撃に晒されるはめになった

「こらあ!!てめえらは邪魔なんだよ!!」

「何をお!!今はそれどころではない!!お前こそ邪魔だーーーー!!」

砲戦フレームにレールガンをぶん投げて黙らせた後、リョーコはアズマに抗議していた

「二人共、落ち着いてください」

サツキがその二人をなだめようと通信を入れる、その時

「ゲート開いてますよ、良いんですか?」

ナデシコB艦長、ホシノ・ルリが通信を入れてきた

「え?」×3





「十三番ゲートオープン!!敵のハッキングです!!」

「十三番・・・・・何だそれは、ワシャ知らんぞ」

「それがあるんですよ・・・・・准将」

「む・・・どういうことだ!!」

「茶番は終わり・・・・・と言うことです」

シンジョウはそういうと、誰に言うでもなく呟いた・・・・

「人の・・・・・執念」



そのころ、リョーコ達は漆黒の機体を追い、謎の無人機に攻撃を受け撃退し、さらに奥へと進んでいた

「敵、第五隔壁に到着!!」

「プラン乙を発動!各地に打電、『落ち着いていけ』。」

シンジョウが、敵の行動に対し指示を出す

「離せ!わしゃ、逃げやせん!!」

部下に抑えられているアズマが尋ねる

「シンジョウ中佐!何を企んでいる?君らは一体何者だ!?」

「地球の敵、木連の敵、宇宙のあらゆる腐敗の敵……」

そこまで言うとシンジョウはアズマのほうを振り返り統合軍の制服を脱ぎ捨てながら言った

「我々は火星の後継者だ!」

そういったシンジョウの服には、その火星の後継者の旗印らしき物が入っていた



『アマテラス』第十三番ゲート第五隔壁

「よーーし、そのままそのまま!!」

そういいながら壁を崩しながら出てくる赤いエステ、後ろには緑のエステもいる

赤いエステは有線通信用のワイヤーを漆黒の機体に向かって発射した

「俺は頼まれただけでね。この娘が話をしたいんだとさ」

リョーコが漆黒の機体に向かって通信を入れる

「こんにちわ。私は連合宇宙軍少佐、ホシノ・ルリです」

リョーコの言葉の後にルリの通信が入ってきた

「無理矢理ですみません。貴方がウィンドウ通信の送受信にプロテクトを掛けているので、リョーコさんに中継を頼んだんです。

・・・・あの・・教えてください。・・・・・貴方は・・・・誰ですか?」

漆黒の機体のパイロットは顔色一つ変えず言葉を無視するかのように沈黙していた

「貴方は・・・・・・・」

「スサノオ、パスワードを解析」

『(イエス、マスター)』

アキトの頭に直接返事が返ってきた、スサノオとは・・・・アキトが乗る漆黒の機体・・・・・

ブラックサレナと夜天光を原型としたダークネスサレナの支援用AIである

戦闘中はアキトとリンクを繋ぎ、アキトの戦闘補助をしている

『パシューーーー』

ダークネスサレナの腕辺りからマジックハンドが飛び出し、パスワード解析装置の前でいくつにも別れた

そして・・・・そのマジックハンドでパスワードが入れられていく・・・・・・

パスワードは・・・・『VALKYRIE』

パスワードが入力され、扉が開いていく・・・・その扉の奥にあったものは

「なにぃいい!!」

「そんな!!」

リョーコとサツキが思い思いの言葉を口にし急いで奥に向かう

「ルリーー!!見てるか!!」

「リョーコさん・・・」

「・・・・・なんなの・・・あれは・・・」

「サツキさん・・・・」

「何なんだよあれは!!」

「リョーコさん落ち着いて」

「そんな・・・・どうして・・・・」



リョーコとサツキは今、自分が見ているものに驚きを隠せなかった

「形は変わっていますが間違いなくあの遺跡です」

ルリがナデシコBで確認した情報を伝える

「この間の戦争で地球と木星が共に狙っていた火星の遺跡・・・・・ ボソンジャンプのブラックボックス・・・・・・

ヒサゴプランの正体はコレだったんですね」

「その通りだ」

漆黒の機体・・・ダークネスサレナもゆっくりと奥へと進んでいく

「ルリちゃん・・・・」

「え?」

サツキの・・・呟くような声にルリが疑問の声をあげた

「これじゃあ・・・・お義兄ちゃんとお姉ちゃんが浮かばれないよ・・・・・・・」

サツキは・・・・悲しみを押しつぶすような声で呟いていた・・・・・・

「なんで・・・・これがここにあるのよ・・・」

「それは人類の未来の為!!」

「なっ!!草壁中将!!」

「リョーコちゃん!!サツキ!!右だ!!」

「なに!!うわあああ!!」

黒服の男・・・・テンカワ・アキトの声に反応したリョーコ達だが、僅かに遅く丸っこい機動兵器・・六連の猛攻にあった

「くっ!!」

ダークネスサレナは二機のエステをかばうように動き六連をエステから離していく

その手には・・・・漆黒の剣・・・・イミディエットソードが握られていた

『ガキィン、ガキィン・・・・ガシャァァァン!!』

六連はダークネスサレナの攻撃に耐え切れなかったのか距離を大きくとった

それと共に、ダークネスサレナは二体のエステの前に降り立った

「あんた達は関係ない、早く逃げろ」

「今やってるよ!!」

リョーコ機とサツキ機はそれぞれ腕部などを切り離しながら少しでも動こうとしていた

その瞬間、アマテラスに振動が走り始めた

「な・・・何!?」

『シャリーーーン、シャリーーン』

その中で、はっきりと響く金属音・・・・・それと共に空間に穴が空き、真紅の機動兵器がボソンジャンプしてきた

「一夜にて、天津国まで伸び行くは、瓢のごとき宇宙の螺旋」

何者かから全体に通信が入り、二機の六連が闇から新たに現れた

『シャリーーン』

「女の前で死ぬか?」

『コォォォォォォォォォ・・・・・・・』

その言葉と共にダークネスサレナが僅かにひかり、乗っているアキトの顔にナノマシンの光が走り始める

それと共に、遺跡がまるで花のように開き始め・・・・・・

「お姉・・・・・ちゃん?」

その中央部分には・・・・・・遺跡に取り込まれたイツキ・カザマの姿があった

「お義兄ちゃん!!お義兄ちゃんなんでしょ!!だから私のことをサツキって・・・・お義兄ちゃん!!」

必死なサツキの呼びかけにもアキトはまるで動じず、真紅の機動兵器を睨んでいた

「(北辰!!・・・・・・今日こそ!!)」

「滅」

北辰のその言葉と共に六連が一斉に動き出す

『ドガッシャアアアアン!!』

「久々の登場!!」

スーパーエステバリスに乗っているサブロウタがそんなことを言いながら突入してきた

「そこのお前、その足手まとい二人を連れてとっととされ」

アキトが六連たちの攻撃をさばきながら言う

「あらら・・・・参戦しなくて大丈夫?」

「こいつらは俺の獲物だ、余計な手出しはするな」

「はいはい・・・・・んじゃ、また会えたらあいましょうや!!」

サブロウタは外部から二人のアサルトピットを射出させそれを持ってナデシコへと帰っていく



「お願いサブロウタさん!!引き返して!!お義兄ちゃんとお姉ちゃんが!!」

「艦長命令だ、悪いね」

「ルリちゃん!!聞いてたでしょ!!見てたでしょ!!生きてたんだよ!! お義兄ちゃん達生きてたんだよ!!

また・・・・見殺しなの・・・・・また・・・・・・」

「・・・・・・戦闘モード解除、タカスギ機回収後、この宙域を離脱」

「了解」

サツキの悲しそうな声を、あえて聞かないふりをしてルリは命令を下した



「くくくくく・・・・・貴様もまだまだ甘いな」

「貴様らを殺すのは俺だ、今日こそイツキを返してもらうぞ」

「くくく・・・・それは困る、今回の目的は遺跡の確保なのだからな」

その言葉と共に遺跡の周りに集まっていた六連と真紅の機動兵器・・・夜天光がジャンプ体勢に移る

「く!!」

「さらばだ、テンカワ・アキト」

その光が収まった後、その周辺には何も存在していなかった

「くそ・・・・ラピス、ジャンプフィールド用意、リンクレベル10まで上昇」

「(わかった・・・・・・・フィールド展開完了、リンクレベル10に上昇)」

「・・・・・・・イメージ、ネルガル月第零ドック、・・・・ジャンプ」

その言葉と共にユーチャリスとダークネスサレナはジャンプしていた・・・・・

なぜユーチャリスまでジャンプしたかと言うと、アキトの体内に入っている遺跡のナノマシンと

オモイカネ『ダッシュ』を通じてのリンクに原因がある

リンクを通したラピスのイメージをアキトが処理し、そして、アキトのイメージを遺跡が処理する

アキトが間に立ち、ジャンプイメージをラピスからの物としたうえで、自分の周りにフィールドを形成する

これにより、遠距離間でのボソンジャンプが可能になったのだ





月、ネルガル第零ドック

そこに、漆黒の機動兵器と白亜の戦艦がジャンプによりその姿をあらわした

「お帰りなさい、アキト殿」

一人の女性がサレナから降りたアキトを出迎える

「舞歌か、補給の方を頼む」

舞歌と呼ばれた女性・・・・東舞歌・・・・元々は木連の四方天の東を務める人傑だった

しかし、その才能と草壁と反する思想の持ち主であった為、戦争終結後に暗殺されかけた

だが、彼女を守っていた『影』達がその計画に気付き、影武者として死んでいったのである

その後、彼女は身を潜め、自らが信頼する仲間を集め。草壁に一矢報いようとしてきた

そんな中、アキトが捕われていた研究所を強襲し、アキトを救助。

その少し後にやってきたプロス、月臣率いるネルガルSSと接触、手を組むことになった

今ではアキトの補佐役として火星の後継者達の情報を集めていた

ダークネスサレナに応用された夜天光の技術は舞歌達、反草壁派の面々が集めた情報であった

「ええ、わかったわ。どう?ダークネスサレナの調子は?」

「ああ、ブラックサレナよりよっぽど使いやすい」

「あの機体ね・・・・まあ、もう修復は不可能だったからちょうどよかったわね」

実はブラックサレナはすでに一度造られていた、しかし、夜天光と六連の前に大敗を喫したのであった

その後、ブラックサレナの欠点を夜天光の技術を応用することで補い、ダークネスサレナが完成した

「まあな・・・・・うっ・・・・ゴホッゴホッ・・・・グハァ・・・」

「アキト殿!!」

アキトは急に咳き込み、手で口を隠すが・・・・・最後に溢れ出てきた血はその手の間から僅かに漏れた

舞歌はアキトの手の間から出てくる血を見るとすぐに駆け寄る

「アキト殿、しっかり。今イネス博士を・・・「必要ない」けど・・・」

「舞歌も知っているだろう、俺に残された時間はどちらにしてもあと僅かだ。

なら今は立ち止まっている暇など無い」

「アキト殿・・・・・・・・」

「ふぅ・・・・・俺は地球に行く」

「急にどうしたのアキト殿」

「あの子達には伝えておくことと渡しておきたい物がある、

アカツキにはCプロジェクトを開始しろと言っておいてくれ

あとは・・・・・・しばらくラピスを頼む」

「わかったわ・・・・・・」

「後・・・・あいつらの調子はどうだ?」

「二人共もう大丈夫よ、確実に戦力になってくれるわ」

「そうか・・・・・・・そう言えば『墓参りの時期』になっていたな・・・・・・月臣にそう言っておいてくれ」

「・・・・わかったわ、・・・・・気をつけてね」

「言われるまでもない、イツキを取り戻すまでは死ぬつもりなどはない」

アキトのその言葉に舞歌は僅かに苦笑を浮かべた

「イメージ・・・・・・・ジャンプ」

アキトはすぐに地球へと向かった、後に残されたのはユーチャリスから今降りてきたラピスと見送った舞歌だけだった







数日後・・・・・・・とある墓地・・・・・

アキトはイネス・フレサンジュとかかれているひときわ小さな墓の前に立っていた

「(ふっ・・・・・生きながらにして墓を持つか・・・・・複雑な物だな・・・・・

しかし・・・・・エリナから聞いた話だとやつらはボソンジャンプを攻撃に使用したと言うが・・・・

まさか・・・・・・・イツキが落とされたとでも言うのか?『カラァァン』・・・・来たか)」

「アキト・・・君?」

「今日は・・・・三回忌でしたね」

その音のした方向にはサツキ、ルリ、ミナトの三人が立っていた



『ゴォォォォォォン』

立ったまま微動だにしないアキトの前でルリが、両脇にサツキとミナトがお墓に向かって手を合わせていた

「・・・・・・もっと早くに気がつくべきでした」

ルリが急に口を開いた

「あの時死んだり行方不明になったのはお義兄ちゃんやお姉ちゃん、イネスさんだけじゃあなかった・・・・」

その言葉にサツキが続く

「ボソンジャンプのA級ランク、目的地のイメージを遺跡に伝える事が出来る人、ナビゲーター・・・・」

「皆・・・火星の後継者・・・・・草壁達に捕まっていたんだね・・・」

ルリ、サツキが打ち合わせでもしたかのように交互に話を繋ぐ

「捕まっていた?」

ミナトがサツキの口から出た言葉に反応する

「この二年余り、アキトさん達になにがあったのか私は知りません」

「知らないほうがいい」

今まで沈黙を保っていたアキトが口を開いた

「私も知りたくないよ・・・・でも・・・・・どうして教えてくれなかったの・・・・・生きてるって」

「・・・・・・・・・教える必要が無かったから」

「そう・・・・(ですか)」

アキトの言葉に悲しみを込めてサツキとルリが応えた

『パシッ!!』

ミナトがアキトの頬を思いっきり叩いた

「あなたなんてこと言うのよ!!それでよくあの時この子達を引き取るなんて言えたわね!!

二人に謝りなさいアキト君、謝って!!」

ミナトは怒りをあらわにしながらアキトに向かって話していた

「この子達はね、本当はアキト君のことを!!」

『カチャリ』

「あ・・・・アキト・・・くん?」

いきなり突きつけたられた銃にミナトは驚く、しかし、アキトはそのまま違う方向に銃口を向ける・・・・そこには

『シャリーーン』

「迂闊なり、テンカワ・アキト」

編み笠にマントを羽織った赤い目の男・・・・・アキトの最大の敵、北辰が立っていた

「我々と一緒に来てもらおう」

その言葉と共に六人の男が後ろから出てきた

「な・・・なあにあれ?」

『ガァン、ガァンガァン、ガァン、ガァン・・ガァン!!』

アキトは六発全ての銃弾を北辰に向かって放つがその全てが見事に弾き飛ばされていった

「重ねて言う、一緒に来い」

「アキト君」

不安そうな声でアキトの名前を呼ぶミナト

「手足の一本は構わん」

その間にアキトも銃弾を込めなおす

「斬」

その言葉と共に六人組が小刀を構える

「あんた達は関係ない、とっとと逃げろ」

「こういう場合、逃げられません」

「そうだよね」

アキトの言葉を以外に冷静にルリとサツキが返した

「女は?」

「殺せ」

「小娘どもは?」

「二人共捕らえよ、一人は我らが求めしナビゲータ、もう一人は人の技にて作り出されし白き妖精・・・

地球の人間はほとほと遺伝子細工がすきと見える。

汝は我が結社のラボにて栄光ある研究の礎となるがいい」

その言葉にルリが一つのことに気付いた

「あなた達ですね、A級ジャンパーを誘拐していた実行部隊は」

「そうだ」

まるで、何事も無いように北辰が応える、その応え方にルリとサツキが怒りの感情を見せる

「我々は火星の後継者の影、人にして人であることを捨てた外道」

「全ては新たなる秩序の為!!」

「ふははははははははは」

北辰と六人組は背後から聞こえてきた謎の笑い声に反応し後ろを振り向いた

「新たなる秩序笑止なり!!

確かに、混沌の果てに新たなる秩序は生まれよう、それゆえ産みの苦しみがあるのは必然

しかし・・・・・草壁に徳なし!!」

「ほう・・・・・・洗脳を解きおったか・・・・・・・さすがだな、白鳥九十九」

「九十九・・・・・さん?」

北辰達の背後に立っていた男は、かつての和平会談の席で銃弾を受け、死んだはずの白鳥九十九だった

「ふん・・・・・・貴様らによって新たに得たこの命、真の悪を倒す為に使わせてもらおう」

「くくく・・・・裏切り者がよく言うわ」

「確かに・・・・木連を裏切り、友を裏切り、そして今・・・草壁を裏切る!!」

その九十九の言葉と共に、墓地の周りから白服の男達が大量に出てきた

「ほう・・・・・行方不明の優人部隊か・・・・」

北辰がその男達を見て一言もらした

「え?・・・・え?・・・・『ガコォン』きゃあ!?」

「テンカワ、後は俺たちに任せろ」

「月臣か・・・・・北辰は残しておいてくれ」

いきなり出てきた男達に驚いているミナトを置いておいて、イネスの墓から出てきた月臣がアキトと話していた

「ここは死者が眠る穏やかなる場所・・・・北辰、投降しろ!!」

「投降しない場合は?」

「先に地獄に行って貰おう」

「そうかな?・・・・・・烈風」

「おう、きぇええええええええ!!」

北辰の言葉に応え一人の男が九十九に向かって突撃する・・・・が

「木連式抜刀術は・・・・・・暗殺剣ではない」

九十九はその男の顔面をその手で捕らえ、新たに動こうとした男二人に捕まえていた男を投げた

「うっそ・・・」

ほとんど動きなしで男を投げたのでミナトが驚きの声をあげた

「邪なる剣では・・・・・・私の柔は破れはしない・・・・北辰、投降しろ!!」

「跳躍」

北辰のその言葉と共に北辰の周りが光に包まれだした

「なっ!!ボソンジャンプだと!?」

「ふはははははは・・・・・・・・・・テンカワ・アキト・・・・・また会おう」

「単独での・・・・ボソンジャンプ・・・・」

「どうやら・・・・・イツキは落とされたようだな・・・・」

「え?」

「草壁の大攻勢も近い・・・・・・だから二人に、渡しておきたい物がある」





月へと向かうシャトル内

「二人共、アキト君に何を渡されたの?」

「私はテンカワ特製ラーメンのレシピです」

「私はテンカワ特製チャーハンのレシピです」

ちょうど隣の席になっている二人がミナトの方をむいて言う

「そう言えば九十九さんは・・・」

「ああ・・・・・『全てが終わったら帰る』って言ってたわ・・・・・ユキナには内緒ね?」

「わかりました」

二人はそう言うとレシピを渡された時のことを思い出していた・・・・・



「私、こんなもの受け取れません!!これはアキトさんがイツキさんを助けた後に必要な物です!!」

「もう必要ないんだ・・・・二人の知っているテンカワ・アキトは死んだ

彼の生きた証・・・・・・受け取ってほしい」

「それ・・・・カッコつけてるよ」

サツキがルリ同様怒りをあらわにしながら言う

「違うんだよ・・・・二人共、奴らの実験で頭の中をかき回されてね・・・・それからなんだよ・・・」

そういいながら、アキトはつけていたバイザーを外す・・・・・そこには・・・・・

ナノマシンによる光が顔全体を覆っている・・・・・アキトの顔があった

「特に味覚がね・・・・駄目なんだよ・・・・感情が高ぶるとボウッっと光るのさ・・・・漫画だろ?」

アキトが自嘲気味な笑顔を浮かべる

「もう・・・・二人に料理を作ってあげることはできない・・・・・・」





その後、シャトルは案の定火星の後継者の猛攻を受けたが見事に逃げ切った・・・・

と思った瞬間・・・・目の前にジャンプアウトされ・・・・ここまでか・・と思った瞬間

「新たにボソンジャンプ反応・・・・大型機動兵器です」

「なっ・・・・・あれは・・・」

「ゲキガンガーー!?」

ちょうどその機体を見た全員が同時に同じ言葉を叫んだ

「だぁっはっはっはっはっは!!ダイゴウジ・ガイ、ふっかぁぁあああつ!!」

「な・・・あれは・・・」

「ヤマダさん!?」×宇宙に行く前のナデシコクルー

「ちがう!!俺はダイゴウジ・ガイだ!!」

そんなことを言いながらもゲキガンガーは次々と敵を葬っていく

「さらにジャンプ反応・・・・戦艦クラスです」

「なに!?」

次のボソンジャンプしてきたのはどこか見慣れた機動戦艦・・・・ナデシコCだった

ナデシコCはそのままグラビティブラストを放ち敵を壊滅させた

「みなさーーーーん!!私がナデシコC提督のミスマル・ユリカです、ブィ!!」

「艦長!?」

ナデシコCからの通信に映ったのは・・・・・・死んだはずのミスマル・ユリカだった





月、ネルガル第零ドック

そこに、ラピスを従えたアキトとエリナが立っていた

「ルリちゃんとナデシコCが合流したそうよ」

「勝ったな」

「ええ、オモイカネとルリちゃんが一つになればナデシコは無敵になる」

「俺たちの実戦データが役にたったわけだ」

「・・・・・どうしてもいくのね?」

「ああ・・・・・俺たちの戦いはそこで終わりじゃない」

「復讐・・・・・昔の貴方には一番似つかわしくない言葉だったわね」

「昔は昔、今はいまだ、補給、ありがとう」

「いいえ・・・・・私は・・・会長のお使いだから」

「最後に・・・・舞歌に伝えておいてくれ、『確実に叩いておけ』・・・とな」

「・・・・・・・わかったわ・・・・」

アキトはそういい終わるとユーチャリスに格納されているダークネスサレナへと向かっていった





そこから先は・・・・急展開の連続となった・・・・地球の各所が制圧されていたが・・・・

九十九の説得、そして・・・・南雲率いる別働隊と舞歌率いる制圧部隊との戦争

そして・・・・・・・・ナデシコCのジャンプ

「ラピス・・・・戦況はどうだ?」

「地球の方はほとんど終わった・・・・西沢って人が南雲と相打ちになったって舞歌から報告があった」

「あいつが・・か・・・・また一人惜しい人間がなくなったな」

「火星の方も今決着がついた・・・・・ジャンプフィールドは用意できてる」

「そうか・・・・・・・イメージ・・・・・・・・・・ジャンプ」

漆黒の宇宙を漂うように動いていたユーチャリスとダークネスサレナが火星に向けてボソンジャンプを行った





アキトがジャンプした所には、ちょうど北辰達がナデシコに向けて動いている最中だった

ユーチャリスはその身体を北辰のほうへとむける

それと共に、ユーチャリスの船首部分に乗っていたダークネスサレナが剣を構える

「決着をつけよう」

北辰が夜天光を浮上させながら言う

アキトの顔は、それの呼応するかのようにナノマシンによる光が強くなっていく

『ズッ、ズッバシュウウウウウン!!』

全く同時のタイミングで夜天光に六連、ダークネスサレナが空へと飛んでいく

『ギュオオオン・・・・ガキィン!!ガッ、ガッ』

アキトは夜天光を狙い一気に加速し切りかかるがそれを錫杖に防がれ、六連たちの攻撃で距離を開かされる

距離が開くと同時に、夜天光とダークネスサレナは同時にミサイルを放つ

互いのミサイルがぶつかり合い、爆発を起こし、その中から漆黒の機体が夜天光に向けて加速をする

ダークネスサレナ、六連、夜天光、全ての機体が傀儡舞を用い、互いに互いを牽制しあう

しかし・・・・・僅かな隙を突かれ、ダークネスサレナは夜天光に押される形で鍔迫り合いをすることになった

「ふははは・・・・怖かろう、悔しかろう?たとえその身に鎧を纏おうとも

心の弱さまでは守れないのだ!!」

「くっ!?・・・・・・!!」

北辰の言葉を聞いた瞬間・・・・アキトの脳裏にはイツキの・・・家族の笑顔が映った・・

夏祭りでサツキ、ルリと一緒に四人で夜店を回っていた時の幸せそうな笑顔・・・・・

結婚を申し込んだ時の照れたようなイツキの笑顔・・・・

そして・・・・・・・・・・ナデシコで一緒に料理を作ったときに失敗をして罰の悪そうな笑顔・・・・

「く・・・・おおおおおおお!!」

それらはアキトの原動力となり、逆に夜天光を抑える形になっていったが、

夜天光はサレナを蹴り、再び距離を稼ぎなおす、その距離を縮めようとアキトは再び加速する

その後ろを六連が追うが・・・・・・横からの急な銃撃にサレナを追う事を中断させられる

その銃撃が行われた方向には・・・・六機のエステバリスがいた

「手前ら、男同士のタイマン邪魔するのは野暮ってもんだろうが!!」

「お前の言うとおりだ、男同士のタイマン邪魔する奴は馬に蹴られて三途の川だ!!」

「馬その一、ヒヒ――ン」

「その二のヒヒ――ン」

「お義兄ちゃんの邪魔は・・・させない!!」

「一人一機・・・・・ちゃっちゃと終わらせちゃいましょうか!!」

ガイ、リョーコ、ヒカル、イズミ、サツキ、サブロウタの六人は六連を相手にするべく各機散開していく

六人が六連を相手にしているときダークネスサレナは夜天光と対峙していた

「人の執念・・・・・見せてもらった」

「・・・・・・勝負だ!!」

二人が最後の決着をつけるべく互いの武器を持つ、夜天光は錫杖を、ダークネスサレナは剣を構える

二体は、六連の最後の爆発音を合図に互いに接近する・・・・

「終わりだ、テンカワ・アキト!!」

夜天光が錫杖を斜めに振り下ろす・・・・その軌道にはコックピットが見事に入っている

「甘い!!」

アキトはその錫杖を右手の剣で受け、その軌道を変えさせる・・・・そして

『ズバシュゥゥゥゥゥン・・・・・・・』

左手に隠し持っていたDFWの柄からコックピットめがけてその刃を伸ばす・・・・

「グハァ・・・・・・見事・・・・だ・・・・・さな子・・・・今行くぞ・・・

『ギュオオオオオオオン・・・・・・・ガシャアン』

DFWの刃が消えると共に夜天光はその機能を停止し、火星の大地へと崩れ落ちた・・・・

「はぁ・・・・はぁ・・・はぁ・・・・・」

アキトは・・・・宿敵を倒し・・・・安堵の為に身体をシートに預けていた

『マスター、お疲れ様です』

「スサノオか・・・・・・」

アキトは自分を気遣うAIに少し苦笑していた





「あ・・あれ・・・ここは・・・・・?」

「お姉ちゃん!!私の事がわかる!!」

「サツキ?・・・・・そっか・・・・・やっぱり夢だったんだ・・・・

アキトは・・・アキトは何所?アキトが助けてくれたんでしょ?アキトは?」



火星、イワト周辺

「さよーーーならーーーー」

サツキ以外のパイロット達がボソンの光を放つユーチャリスを見送っていた

「なあ・・・・本当に行かせてよかったのか?」

サブロウタが誰にでもなく尋ねる

「さぁな・・・・・アキトのことはアキトに任せるしかねえだろ」

ガイがその言葉に応える

「でも・・・・あいつこれからどうするつもりだよ」

リョーコが悲しそうな顔をしながら呟く・・・・

「帰ってきますよ、あの人は」

「ルリルリ?」

「そうだよね・・・・・お義兄ちゃんは帰ってくるよね・・・」

「帰ってこなかったら追いかけるまでね・・・アキトは・・・私たちにとって」

「大切な人だから!!」

ルリ、サツキ、イツキの三人は声をそろえて言った・・・

それは・・・・・ある意味、逃亡していったアキトへの宣戦布告でもあった・・・・・・





ユーチャリス内部

「アキト・・・・本当に良かったの?」

ラピスが心配そうに訊ねた

「ああ・・・・・会えば別れが辛くなるだけだ・・・・・・月に向かう」

「分かった・・・・」

「(ふぅ・・・・もう俺の身体はもって一ヶ月か・・・・あれをラピスに託しておくか・・・・・

当面の問題は・・・・ラピスの説得・・・これは・・・エリナと舞歌、あと千沙にも手伝ってもらうか

残存部隊の殲滅は・・・舞歌に任せるか、月臣達もやるだろうしな

最後は・・・・・死に場所・・・・か・・・・・・・・・まあこれは最後に考えるか・・・)」

アキトは一人思考を深めていた・・・・・

その思考に気付いた物は・・・・・アキトとリンクをしているダッシュとスサノオだけだった・・・・





ひとつの物語は終わり、それは新たなる物語の始まりとなる・・・・・

その新たなる物語が・・・・・新たなる時を開く物になるとは・・・・まだ誰も気付いていなかった











後書き

劇場版、黒龍・・・黒河龍斗編でした

今回カットした部分は劇場版と全く同じ事があったと思ってください

後・・・黒アキトがなぜ舞歌達にあっさり親しくなったのかは今回の話から推測してください

この作品は・・・・アキトがランダムジャンプをした時のことを書くエピローグがあります

ですから・・・・この作品は・・・二作立て・・・・と言うことになります

多分・・・・新たなる刻の歌と並行作業なので西欧が終わってしばらくしたらアップすると思います

それまで・・・・・皆さんどうかお待ちくださいませ

 

 

管理人の感想

B-クレスさんからの投稿です。

ほ〜、劇場版を基本にして私の作品とオリジナルの設定を、微妙に混じらせていますね〜

なるほど、これが龍斗がランダムジャンプをした経緯ですか。

しかし、九十九も生きてたんだな(苦笑)