時の流れをめぐり現れたテンリョウ・アキコ。 

彼女はテンカワ・アキトの未来の姿である。 

しかしそれすらも数え切れないパターンの一つ、時間軸の一つからこの時間軸に現れたに過ぎない。 

彼女はー後悔する。 

ユリカを置いてここへ来たことを。 

時を逆行してきたアキコは思う。 

あのときの悲しい未来は絶対に作らない・・・! 

 

 

 

 

第3話「っつーか(パイロットの)女性比多すぎだ」 

 

 

 

 

ルリがサツキミドリにエマージェンシーコールのウイルスを流している間にアキトとアキコは 

トレーニング室で試合をしていた。 

機動戦においてどれだけの反応ができるのか今の体の限界を見極めるためだ。 

とはいえ、今はエステのシミュレーター(ウリバタケ作)で戦うのだ。 

エステのスペックではアキコはもちろん、体が完全ではないアキトの動きすら捉えることはできない。 

肩慣らし程度だったが、二人には十分な鍛錬になり、そして体の限界が分かった。 

まず、アキトはサレナには乗れない。 

体を壊すだろう。 

逆にアキコはエステには乗らないほうが良い。 

エステの反応速度ではアキコの運動能力では追いつかない。 

女性化したとはいえ、その技の切れにはいささかのかげりも無い。 

これからの課題は・・・・・ 

1.アキトは体を鍛える。 

2.アキコはルリ、ウリバタケとともに新エステの開発をする 

(戦力の底上げ、そしてアキコの専用エステも作っておく。 

→サレナを使うのは最終手段としてとっておく必要があるので。もちろんサレナタイプの開発もする) 

3.積極的にパイロットとのトレーニングをする。 

要するに戦力の強化が必要であり、機体およびパイロットの強化が必要であるってことだ。 

必死に戦うことだけ考えていた過去のようにいくわけには行かない。 

それでは未来を変えることなど不可能だ。 

とにかく未来への道は過去以上に果てしなくなるようだ・・・・・。 

 

 

 

その後にプロスが入室してきた。 

アキトとアキコは演習を終え、スポーツドリンクを飲みながら話していた。 

「アキコさん。あなたの実力のほどを見ておきたいのですが?」 

「え?」 

「一応、パイロットを兼ねるのであれば能力の査定をしたいのです」 

アキトは先の戦闘で実力を把握できた。 

だが、アキコは未知数とされていたのだ。 

「当分はコックで行きたいんです」 

「そうは言われましても・・・パイロット不足ですので」 

アキコはこれからの行動の制限を受けたくは無かったので一応パイロット兼任と名乗っていたのだ。 

「分かりました。シミュレーターで動きますので勝手に見ていてください」 

「では・・・」 

すると、アキコはフリー・トレーニングのボタンを押す。 

格闘ゲームで言うトレーニングモードだ。 

アキコのエステは軽いアクロバット飛行、ダミーの破壊などを行ってみる。 

エース級、とまではいかないがスムーズな動きを披露する。 

「ほぉ・・・なかなかですね」 

プロスも感嘆の声を上げる。 

手加減はしている。しかし、平均以上の能力であると言うことは明確である。 

「分かりました。あなたは戦闘においてはヤマダさんと同等の動きができるようですね。 

しばらくヤマダさんの代わりを務めてください」 

「はい、分かりました」 

アキコは気軽に返事を返す。だが、本当は奥の手は最後まで残していたいようだ。 

 

 

 

話は飛んで・・・サツキミドリのエマージェンシーコール(ルリの仕業)で脱出して 

ナデシコに乗り込んできたリョーコ・ヒカル・イズミの三人組が出てきた。 

「ねえねえ!ここのパイロットは何人いるの?」 

「とりあえず三人います」 

ヒカルにアキトは普通の返事を返すものの、後ろにはルリとユリカが見張っているので 

うかつな会話ができないようになっているのはお約束だ。 

「一人は名誉の負傷で入院。俺と・・・アキコだ」 

「よろしく。エステパイロット補欠、テンリョウ・アキコです」 

「補欠?」 

リョーコは疑問の声を上げる。 

「俺はあくまでコックメインです。実力は未知数ってことで。アキトはその逆でパイロットがメインのコック見習い」 

見習いと言うところにアキトは思わず反応する。 

まあ・・・同じ程度の実力でそうは言ってもらいたくは無いものである。 

「そんなことよりサツキミドリに残った0G戦フレームの回収をしましょう」 

プロスの一言によりサツキミドリに向かうこととなったパイロット一同だった。 

 

 

 

移動中。 

リョーコは皆に通信を入れた。 

『おい、テンカワとか言うの』 

『なんだいリョーコちゃん』 

『けっ。もうチャン付けかよ』 

『気に障るんだったらさん付けで呼ぶよ』 

『・・・リョーコでいい。一応パイロット同士で仲間だからな、他人行儀は苦手だ』 

『了解』 

『じゃあ私もヒカル、でいいからねアキト君!!』 

ヒカルも通信に割り込んで来た。 

『はいはい、了解しました』 

『・・・リョーコ、テンカワ君に何が言いたかったの?』 

『・・・あ、そうそう!! テンカワ、お前超凄腕のパイロットだな!!地球圏脱出の戦闘記録見せてもらったぜ!!』 

一瞬どもるリョーコ。 

『そうだよね〜、とても人間業とは思えない腕前よね』 

『・・・同感。ドラ○もんに出てくる空き地にあるのは・・・土管』 



ぴきぃぃん。 



イズミの放った駄洒落により時が止まった。 

・・・スタンドはザ・ワールド? 

『イズミ!いちいちダジャレにするんじゃねー!」』 

『ふふふ・・・ダジャレ・・・漢字で書くと駄洒落・・・ 

駄菓子と酒を落とす・・・ふふふふふふふふふふふ』 

もはや自分の世界に入ってしまったようだ。 

『っと、二人とも気にするなよ。こいつについていこうとすると精神崩壊しかねないからな』 

今までどんな所業をやらかしてきたのやら・・・ 

AAコンビ(めんどくさいのでアキトとアキココンビの略称)は 

やれやれというしぐさを見せる。 

『ところで二人の得意技は何だ?』

 


『『突撃。』』

 

 

『へ?』 

リョーコは呆気にとられる。

『『突っ込んで敵を倒し続ける』』 

『おいおい・・・死に急ぐなよ?』 

『『心配しなくてもいいよ。必ず生き残るから』』 

『そういう問題じゃ・・・まあいいか。よし!! 俺が先頭で案内するからな!!』 

『りょ〜かい!』 

『お仕事お仕事』 

『『了解』』 

そんなことをぼやいていると一機のエステが落ちてきた。 

 

どん!! 

 

『あれ・・?エステ?』 

『・・・良く見なさい』 

イズミが呟くと、そのエステの頭上に付いていたバッタが赤い目を光らせた。 

『うわぁ!デビルエステバリスだ〜!!』 

あまりにも安直なネーミングのヒカルを尻目にエステ隊の面々は攻撃を開始しようとする。 

だが。 

『『そこだ!』』 



どどっ。 



AAコンビの同時攻撃が決まる。 

ラピッドライフルの一撃が・・・いや、二つの火線がデビルエステの頭部を一撃した。 

『うそぉ!?』 

『もう終わりかよ?!』 

『二人ともやるわね』 

早々に終わってしまったため、三人組のコメントのみが機体の中に響く。 

 




その光景を見ていたブリッジではさまざまな会話がされていた。

「わあ、二人とも凄い!」

「・・・凄いで済むの?」

「・・・・・どちらかというと達人芸を見ている気分ですよね」

ユリカの一言にメグミとミナトは呆れた顔をしていた。

それはそうだ。

一流と呼ばれてスカウトされたはずの3人のパイロットが慌てる中、飛び入り参加の二人が一撃で敵を倒してしまったのだから。

「・・・ミスター、我々はとんでもない奴らを味方にしてしまったのではないか?」

「・・・いい買い物をしたと思えばいいんですよ。

彼らはいい腕をしています。

それに性格にも問題というほどの問題もなさそうですし」

プロスは不敵に笑いながら返事を返した。

「・・・・・だが、あの二人、今の状況でもナデシコを落とせそうだ。

・・・いや、コロニーですら落とす事もできるかもしれん。

そんな奴を味方にしておいて良いのか?」

「では、ゴートさん。あの二人が敵に回ったほうが良いと?」

「む・・」

ゴートはその一言にたじろいだ。

「少なくとも、あの二人は敵ではないでしょう。

敵であればもっと曇った目をしています。ですがお二人は澄んでいる。

・・・その裏に激情を垣間見たのは確かですが」

「激情だと?」

「ええ。あの二人はあの実力の下に何か恐ろしいものを隠していると思うんです。

敵意こそ見えませんが、何か裏があることには賛成しますけどね」

「ううむ・・・そこまで見抜いているのか、ミスター」

「私だけじゃありません、提督も見抜いているでしょう」

「そうなのか?提督」

「・・・それなりにだがな」

蚊帳の外だったフクベが一言だけ、零した。

「・・・・むう、俺もまだ未熟か・・・」

「・・・僕の立場は?」

・・・流石に、ジュンからすれば戦闘は素人同然で、あのアキトに張り合おうとしたのだから立場は無くて叱りだろう。

(・・・何でお二人ともこんなに飛ばしてるんですか。私には分かりかねます)

ルリは怒っているが・・・当然だろう。

何しろ何も考えないでやっているのだから。

・・・達人が何も考えないで戦闘したら瞬殺してしまうのはおかしくないが。

(少しお話を聞いたほうが良いですね)

そう言ってIFSから通信命令を入れる。

 


ぴぴっ。 





アキトとアキコのエステに秘匿回線が入ってきた。 

『お二人とも・・・よいのですか?』 

『『なにが?』』 

ルリの回線に二人は気の抜けた返事を返す。 

この二人のハモリっぷりは見事だ。 

『問答無用で倒していますけど・・・実力は隠すのでは?』 

『アキコはともかく、俺は役に立つことだけでも強調しておかないとね』 

『・・・そうだな。今回はやりすぎたか』 

『気をつけてくださいよ』 

小さいため息をつくルリ。 

・・・二人の考え無しは今に始まった事ではないが。 

 

 

火星に着くまでのナデシコ内。 

ルリ視点。 

今回はサツキミドリで死者が出ることは無かったのでユリカさんは暇をもてあましています。 

「う〜暇だよ〜ルリちゃ〜ん」 

「艦長、邪魔です」 

「うえ〜ん」 

泣きまねですか。20の女性が相手では関係ありません。 

むしろ私がやったほうが現実味がある・・・んですけど。 

なんで少女にこんなことしますかね。この人。 

私は新・サレナのプログラムで忙しいんです。 

どいてください。 

「アキトはず〜っとトレーニングしてるし〜」 

そう、アキトさんは皆をつれてトレーニングをしているのです。 

艦長も暇なら見に行けば良いじゃないですか。 

「艦長、やることが無いならゲームでもしていてください」 

「う〜ん」 

「オモイカネ、データひらいて」 

『ok。ルリ』 

すると、何万と言うゲームの一覧が出ます。 

20世紀後半から21世紀前半のゲームが中心です。 

容量が軽いので。 

あ、恋愛シミュレーション開いてます。 

ユリカさんらしいといえばらしいですけど。 

 

 

そのころのアキトたち。 

「おらおらー!!」 




どどどどどどどどどっ。 





エステのライフルが火を噴く! 

しかしその弾はピンクのエステには被弾しない。 

「こっちだよ」 

赤い、リョーコのエステにディストーションフィールドをまとったアキコの 

ピンクエステの拳が突き刺さる! 




がん。がん。・・・・どごっ! 




「う、うあああ!!」 




どかーん・・・。 




「「GAME OVER」」 




ぷしゅー。 





「・・・っかー。たまんねえな。こちとらエステの適正テストでSSランク獲得って言われたのにな」 

「ははは。まぐれですよ」 

「・・・まぐれで16連勝もすんなよ」 

アキトが体を鍛えている間、アキコはエステパイロットの訓練をしている。 

「なー、アキコ。お前本当はアキト並みの腕があるんじゃねーか?」 

「え?アキトが本気になったらまだこんなもんじゃないですよ?」 

「・・・まーだ上があんのかよ」 

「リョーコ、ほら」 

「サンキュ。ヒカル」 

ヒカルはリョーコに向かってスポーツドリンクを投げる。 

「あー・・・しかし腹減ったな」 

「食堂でも行く?」 

「そうしたいけどな・・・ちょっと風呂入ってくる」 

「俺も」 

アキコはリョーコとともにトレーニング室を後にした。 

「ね〜イズミ」 

「・・・気づいてたの?」 

イズミが静かに現れる。 

「アキト君とアキコちゃんてそっくりよね」 

「・・・ええ」 

「腕もいいし・・顔もそっくりで」 

「・・・名前もそっくり。まるで兄妹みたい」 

「でも昔同じ研究所に親が勤めてたってだけなのかな?」 

「・・・あの二人には同じにおいがする。何か重いものを背負う後ろめたい雰囲気もあるわ・・・」 

「私たちも行ってみよ」 

「そうね」 

二人は大浴場に向かった。 

 

 

 

「なー・・・アキコ。お前なんであんな上手いんだ?」 

「リョーコさんもちょっと練習すればすぐですよ」 

廊下で話をしている二人。 

「嘘つけよ。あんなんがちょっと練習しただけで身についたら、今頃は連合軍は無敵だぜ?」 

「・・・昔から親にほったらかし喰らって暇だから色々習い事やらゲームして遊んだりしてたら 

こういうことが得意になったみたいです。後は・・・13の時に研究所につれてこられて 

エステの実験機みたいなのがおいてあってそれのデータ取りやらやらされたり」 

「へえ・・・そんならなんとなく分かるな」 

「じゃ、俺は自室に・・・」 

「?大浴場でいいじゃねえか」 

「え、その、あの」 

アキコは口ごもる。 

流石に元男では気が引けるのだろう。 

自分の体は見慣れてるがー他人のはわけが違う。 

それにーもう一つ気がかりなことがあった。 

「いーからこい!」 

「わわわっ」 

強引に引きずられるアキコ。 

「あ、あの着替えを・・・」 

「汗一つかいてねーだろ!」 

「・・・」 

あきらめたのか返事が無くなる。 

大浴場。 

「ほら、脱げよ」 

「・・・いいんですね?」 

「あ?」 

「驚きませんね?」 

「あ、ああ」 

「・・・・・」 




ぱさ・・・・。 





「!?」 

不覚にも驚いてしまったリョーコ。 

それもそのはず、アキコの体は某・ブラックジャックのごとく体が分かれた後があったのだ。 

針の跡こそ見えないが、それはまさに悲劇を物語るものだった。 

「お・・・お前」 

「訳は聞かないでください」 

「・・・ああ。人の古傷をえぐったりはしねえよ。すまなかったな」 

「いいんです」 

「・・・・・」 

罪悪感に駆られるリョーコ。 

流石にショックは大きい。 

 

かぽーん。 

 

「背中、流すぜ」 

「すいません・・・」 





ごし・・・ごし・・・。 





「なあ、アキコ」 

「なんですか?」 

「哀れむつもりはねえがー俺たちは味方だ。心配事があったらなんでも相談してくれ」 

アキコは笑顔で言い返す。 

「リョーコさん、俺は・・・皆の事が好きです。俺もリョーコさんの味方です。 

戦場で背中を預けられる人だと俺は思ってます。これからも・・・お願いします」 

「はは・・・こちらこそ」 

二人は豪快に笑った。 

 

「・・・な〜んかタイミング逃しちゃったね〜」 

「・・・」 

ヒカルとイズミは出るタイミングを完全に逃してしまっていた。 

「やっぱり影があったようね」 

「うん・・・。それにアキコちゃんの笑いには悲しみが見えるね」 

「そうね。彼女は本当に何か背負ってるわ」 

「でも・・・私たちのことを信頼してくれてる。まるで戦争をともに生き抜いた旧友みたいに」 

「・・・私には出来ないわ。あんな悲しい笑顔。・・・明るい笑顔も出来ないけど」 

イズミにはアキコの笑顔の闇を垣間見ていた。 

彼女が救われる日はー訪れるのだろうか。 

 

 

 

「うおー!俺はいつ退院できるんだー!!」 

病室では一人の男が叫び続けていた。 

「ヤマダお兄ちゃんうるさーい」 



ぷすっ。 



「ぐおおおおぉぉぉ・・・」 

マッドサイエンティスト・アイの薬によりガイは深い眠りについた。 

アイは当然のように病室の手伝いをしている・・・・。 

母が看護士をしていたときに色々手伝わされたって言う名目で。 

もちろんプロスと交渉し、給料もちゃんと出ている。 

ルリがオペレーターなのだからさして問題は無い。 

「お兄ちゃんもお姉ちゃんもルリちゃんも手が離せないって言うんだもん。ぷー!」 

一人で頬を膨らませるアイ。 

精神年齢はかなり下がっている。 

もともと少年少女の年であるルリ、ラピス、ハーリーと違って元は大人なのだが、 

不満だらけの生活の反動か、こんな姿となっている。 

「はぁ・・・お兄ちゃん・・・」 

アイはこっそりと隠し撮り(オモイカネ撮影)の写真をじーっとみつめる。 

彼女はこの瞬間が心休まる瞬間なのだ。 

「・・・・くー・・・くー・・・」 

さすがにこの体では退屈になると寝てしまいやすいのだろう。 

アイは夢の世界に入る。 

もちろん、大好きなお兄ちゃんとお姉ちゃんと遊ぶ楽しい楽しい夢を・・・。 

 

 

 

 

作者より一言。 

えー(汗)。今回はアキコ中心のストーリーで。 

いや、ホント勘弁してください(何?)。 

オリジナリティがかけらも無いのは勘弁してください。 

一応、これでも「時の流れ」に準拠しているキャラクター造形です。 

そんで、第一章のイメージはシリアス:ギャグ=8:2くらいで行こうと思ってます。 

では次回へ。

 

改定後の一言。

えーと、文体を変えたかったので加筆しながら進んでいるわけですが・・。

ブリッジの描写が無いという事でそこを中心に加筆しました。

04年2月22日武説草良雄。

 


管理人の感想

武説草良雄さんからの投稿です。

見事に周囲の心配を省みず、突っ走っていますねダブルアキトw

ま、考え無しなのは今に始まった事じゃないですし。

ガイの出番が無いなlぁ・・・と思っていたら、最期に登場(苦笑)

テンポはいいのですが、ブリッジクルーの描写が一度も無いというのはどうでしょうか?