テンリョウ・アキコー彼女はテンカワ・アキトである。

スミダ・コウタロウー彼はテンカワ・ユリカである。

スミダ・シェリーー彼女はテンカワ・ルリである。

スミダ・マリーー彼女はラピス・ラズリである。

テンリョウ・アイー彼女はイネス・フレサンジュである。

この5人は逆行者。

つまり時を遡って来た人物達だ。

そのうちの4人、彼らの目的はーアキコを戻らせる事だった。

それも成功し、彼らは選択を迫られていた。







第2話「私らしく誇らしく」


「・・・ぁ」

アキコが目覚めた。

彼女はー自室にはいない。

コウタロウの部屋にいた。

アキコはーそれを事実として認識するのに数十秒の時間を要した。

何故、男と眠っているのか。

何故、裸なのか。

(・・・あっ・・・コウタロウはユリカで・・・再会した後・・・やっちゃったんだ・・・)

自分で思い出しておいて顔を赤くするアキコ。

二人は一線を越えた。

過去にすら越えられなかった所を。

アキコはーコウタロウを受け入れた。

コウタロウはアキコの事を愛し、

アキコはコウタロウを愛した。

その結果だ。

それでしかない。

しかし・・・

(・・・痛い)

アキコは体のところどころにある痛みに眉を歪める。

・・・特にー大事な部分が。

体中に違和感がある。

疲労感もある。

アキコが時計を見るとー

まだ午前3時だった。

(温かい・・・)

アキコはコウタロウの胸に顔をくっつけた。

(なんて温かいんだろう・・・。立場が逆転しちゃったな・・・)

彼女はその温かさに思わず、自分の一種の情けなさを思ってしまった。

(昔は俺がユリカを救いたくて追いかけていたのに・・・。

今度は俺が救われた。

ユリカは俺を救ってくれた。

永遠とも思える深い闇から。

今は・・・甘えていいのかな?)

彼女は頼られる事はしても、頼らなかった。

それは、今までの彼女の行動がそれを裏付けている。

アキコはーコウタロウの腕の中でもう一回眠ろうとした。

これ以上の幸福はなかった。

彼女にとってもっとも望んだものであるから。

彼女の幸せはそれだけで保障されるから。

「・・・♪」

幸せそうな笑みを残し、彼女はコウタロウの体温を感じて眠った。











午前7時。

再び彼女は起床した。

「・・・ふぁ〜」

少し、眠い。

疲労感こそ消えうせたが、

何故か眠かった。

「ほら・・・起きて」

「う・・・う〜ん」

コウタロウを揺すってみる。

すると・・・。

「あっ・・・あっ」

・・・なんか知らんが甘い声を漏らしている。

「起きて〜お〜い」

頬をぺちぺち叩いてみる。

「ん・・・あ・・・アキト」

「もう朝だよ」

「そう・・・か」

「俺は食堂に行って来るね」

「あ・・・うん・・・」

アキコは部屋から出て行った。

「はぁ・・・あの時でも越えられなかった場所越えちゃったんだよねー」

コウタロウは感慨深そうに呟いた。

「さてさて、男のたしなみ、っと」

顔を洗いに行こうとするコウタロウ。

だが、洗面所には・・・。

「・・・え?」

「すー・・・すー・・・」

「くーくー」

・・・シェリーとマリーが眠っていた。

「二人とも、どうかしたの?」

コウタロウはシェリーを揺すって起こした。

「う・・・う〜ん。あ、コウタロウさん。おはようございます」

「何でこんなとこで眠ってんの?」

「・・・ってコウタロウさんのせいじゃないですか!」

「え?」

「酷いですよ!みんなでアキコさんに正体を明かそうって約束したのに自分だけ正体明かして押し倒して!

おかげでこっちは心臓バクバクで見守ってたんですよ!・・・・あ」

「・・・へえ、見てたんだ」

「え、あ、あの、その」

「・・・」

そっぽを向くコウタロウ。

こういう時は口を聞いてくれなくなってしまうらしい。

・・・だが、顔を赤らめているためにかえって可愛らしさを強調する以上のことは無かった。

「・・・ごめんなさい」

「・・・私もシェリーちゃんのこと忘れてたからあいこだよ」

「・・・わかりました」

・・・なんとなく釈然としない物の、シェリーはなんとなく安心したように溜息をついた。





こちらもー。

「ふぁ〜・・・。おはようございます」

「おはよう・・・ルリお姉ちゃん」

アイは昨夜、ルリの部屋に泊まっていたらしい。

何となく心細くなったそうだ。

「さて、オモイカネに寝ている間に艦内に異常が無かったか聞いておきますか」

ルリはオモイカネのウィンドウを開いた。

「オモイカネ?」

『・・・えらー・・・』

「オモイカネ、起きてますか?」

すると、オモイカネはなぜか銀髪の少年をウィンドウに現した。

『人間の行動はまさに神秘的だね』

「え?」

『芸術に値するほどだよ』

「え??」

『綺麗ってことさ』

「何かあったんですか!?オモイカネ!?」

どうやら昨夜の二人の好意・・・もとい行為を見てしまったらしい。









「・・・・・?」

アキコは朝食を作るために食堂に向かった。

が、何故か他のクルーの視線が気になる。

「テンリョウ」

「はい?」

ホウメイが声をかけた。

「・・・何かあったな?」

「え?俺は何もー」

「嘘いいな。朝っぱらからそんなニコニコされちゃ、こっちは気になって仕方ないよ」

アキコは無意識であったが笑っていた。

「え〜と、少し悩みが解消されたもので」

「ほ〜。なんだい?」

「・・・秘密です」

アキコは顔を赤くして俯いた。

見えないようにしたつもりだろうが、ホウメイガールズにははっきり見て取れた。

朝食が終わり、アキコは食堂から出た。

「お、アキコ。今日から出れるようになったのか?」

「ええ、おかげさまで」

「じゃあ、リハビリがてら演習でもしねえか?」

「いいですよ」

「今日は負かしてやるぜ〜お前が寝てるあいだずっと練習してたんだからよ!」

「ふふふ・・楽しみにしてます」

二人はトレーニングへ向かった。





トレーニングルームにて。

「そりゃー!」

アキコのエステに向かってリョーコはラピッド・ライフルを放つ。

アキコは冷静にいつもどおりの回避をする。

だがーこの後が違った。

いつもならアグレッシブに接近戦を挑むところだ。

ところが。


どどん。


アキコのエステはミサイルを放った。

リョーコのエステはそれに反応できず、

爆散した。

「GAME OVER」

「・・・?」

リョーコは少し疑問そうな顔をしていた。

確かにミサイルのほうが確実ー

とはいえ、アキコの性格からいくと、

弾切れを気にしてーというより

弾を温存して、より多くの敵を倒す戦い方取るはずなのに。

「アキコ、そんな攻撃したことあったか?」

「え・・・?」

急に戦法が変わった。

そんな感じだった。

「変・・・ですか?」

「いや、無理をしないだけだと思うぜ」

リョーコはアキコの戦い方をこう理解した。

危険な戦法を避ける戦い方だと。

無意識下だが、帰るべき場所を意識しやすくなった。

彼女には帰るべき場所があるのだ。







「お姉ちゃん、少し話があるんだけど」

「ん?なに?」

昼の食堂の仕事も終わり、休憩をとったアキコのそばにアイがよって来た。

「・・・とにかく来てよ」

「あ、うん」

どこか真剣な話し方なのでアキコはアイについてきた。

そして、コウタロウの部屋に入っていく。

「あ、ユ・・・コウタロウ」

「アキト、少し話があるの」

「え?ああ」

コウタロウはアキコに椅子を勧め、自らはベットに腰掛けた。

「で?二人とも話って?」

「実は全部仕組んだの」

「・・・・・・・え?」

「お姉ちゃんが悪いのよ」

「えっ?え?」

アキコは何がなのかよくわかっていないようだったが驚いていた。

「何を仕組んだの?よく分からないよ、アイちゃん」

「・・・気付かないの?」

「何に?」

「何で私がユリカさんであるコウタロウさんの部屋にお姉ちゃんを呼んできたか、分からないの?」

「あ・・・・・もしかして」

「そう。最初から分かってたの。お姉ちゃんが女になれば精神状態が不安定になり、自然と自分のしたことに後悔を覚える。

それを分かっていたのよ。

だからお姉ちゃんを死なせないでユリカさんから完全に引き離せばいい。

その為に私はこの時代に、大袈裟な理由をつけてお姉ちゃんを連れてきた。

一方ではユリカさんをこの時代に送り込んだ。

今、ユリカさんが何で男になっているかというと、

一つは正体を隠せるから。

ナデシコに乗り込んだ時に、こっちのユリカさんに瓜二つであると言う事を悟られないために」

「もう一つは軍で正当な評価を受けるため。

まだ男女差別が激しい時代だから。

軍でいい評価を取ればナデシコに乗り込むチャンスは必然的に増えるから。

今回は西欧戦線に他の世界から来たアキトが居たから運がいいことにここに来れたけど。

・・・って私は思ったんだけど」

「私はそれは考えてなかったけどね。

最後に、お姉ちゃんと再会したときの事を考えて」

「え?何で?」

「・・・じゃあ一つ聞くけど、レズがしたいの?」

「ごめん、言い過ぎた」

わけがわからないが何か納得しているアキコ。

「騙してたんだ・・・・・・怒った?」

アキコは一息入れて、

「・・・ううん。俺がユリカの元に戻れたのは二人のお陰だから」

「私達だけじゃないよ」

「え?」

すると、後ろのほうからシェリーとマリーが出てきた。

「お久しぶりです」

「アキト!」

「ルリちゃん!ラピス!二人も!?」

「そうだよ、アキト。私が一人で来たってここまで来れなかった。

二人が手伝ってくれたから、私はここまで来れたの」

「・・・ごめん、迷惑ばかりかけて」

申し訳なさそうに頭を垂れるアキコ。

「いいんですよ、アキトさん。私達はアキトさんが戻ってきてくれる事だけが望みなんです。

それにはどんな犠牲でも払います。

・・・それに私には失うものさえないんです。

アキトさんとユリカさん、そしてナデシコの思い出しかありませんから・・・」

「アキト、私はアキトの手、アキトの足、アキトの目、アキトの耳。

だから何処へでもついて行く。それがアキトの為なら、私の為でもあるから」

「みんな・・・」

アキコは涙ぐんで、一言呟いた。

「みんな・・・ありがとう」

涙が頬を伝い、流れ落ちた。

「こんな俺の為に、ここまでしてくれるなんて・・・」

「いいんだよ、私たち家族でしょ?」

「そうです」

「アキト」

「新しい家族も増えたし」

コウタロウはアイを撫でた。

「うん・・・」

アキコは胸が一杯だった。

もう、何も要らない。

この暖かい家族が居れば、他には何も要らない。

そう思った。

昔はあって当然だった存在が、ほんの数日前は手の届かない場所に行ってしまった事を悔やんでいた。

今日は、それが目の前にある。

それがアキコには感動的で、嬉しくて、このまま居られたら、と思っていた。

「どうしよう・・・嬉しいのに、こんなに嬉しい気持ちを味わったのは初めてなのに、涙が、涙が止まらないよ。

ユリカが・・・みんなが見えないよ・・・」

涙を流しつづけ、俯くアキコをコウタロウは抱いた。

「今はアキトは女の子なんだよ?泣いていいんだよ?」

「う・・・うあぁ・・・うっく・・・・・・ユリカ・・・・・・」

涙で前が見えないことが、たった一つ、恨めしかった。

彼女は、愛しい家族をもっと見たかった。

出来ないならば、とコウタロウの胸で啜り泣く。

彼女はそれでも良かった。

自分達以外の時が止まってしまえばよいのにと思った。

「えっく・・・ユリカ、ルリちゃん、ラピス、アイちゃん・・・・・みんな・・・大好きだよ・・・」

彼女は最大の幸福を手にする事が出来た。

自分も、家族も、仲間さえ捨てたと思われた男は、

女となった時にそれを後悔した。それを求めた。

もう一人の自分を同じ目にあわせないために戦った。

それが鍵だったのかもしれない。

元々仕組まれた事でも、場合によってはコウタロウは死んでいたかもしれない。

アキコは、自分が悲しみ、戦い、求め、生きた分だけの幸福を手に入れたのかもしれない。











「・・・・・・」

アキトは自室で何も無い宙を見つめていた。

(・・・あいつは、ユリカと合流できたんだな)

コウタロウとアキコのことを思う。

(・・・・・俺も本心を言えばユリカと居たかった)

自分の境遇と比較してみた。

(だが・・・俺はどこで道を誤った?

ユリカを好きになった時か?

テロリストになった時か?

ユリカの元に帰らなかった時か?

・・・どれにしても情けないな。

月臣に鍛えられた時、一人きりで復讐しようとしたのが間違いだったのかもしれないな。

一人で復讐してたといってもラピス、アカツキ、月臣、ゴートさんの力を借り、

ルリちゃん、リョーコちゃん、ミナトさん・・ナデシコのみんなに心配をかけてきた。

・・・・なら最初から力を借りるつもりで居ても良かったんじゃないか?

北辰に勝つ事が出来なかったかもしれないが・・・それが最善策だったんだな。

その結果が・・・過去に精神を飛ばされる・・・か)

相変わらず情けない自分の境遇に溜息をつく。

(アイツはどうだ?

・・同じ境遇ながら、運がいいとも言えるかもな。

五感を戻す薬が出来て、それを拒否した事が間違いか。

だがその結果が反省できて、自分の罪も飲み込めて、最後には大団円・・か。

・・・俺もユリカに会いたくなったな。

あの時、拒否したのは間違いだったか?

いや、大罪を犯した上に寿命の短い俺なんて・・・)

自分の考え無しに溜息をつく。

そしてぼやく。

「・・・はぁ。

女になる位で全て収まるならそうしたいよ・・・」

「・・・・!」

横で寝ていたラピスが体を震わせて起きた。

「あ、ラピス。ごめん、起こしちゃったかな?」

「アキト、それ何の話?」

「・・・ああ。アキコっているだろ?アイツ、俺なんだ」

「・・・へ?」

目を点にして呆気にとられるラピス。

「あー・・言い方が分かりづらいか。

簡単に言うと、「違う世界から来た俺」でね。

ちょっとパターンは違うけど俺達と同じ境遇なんだ」

「そうなの?」

「ラピス、そういうアニメ見たこと無いか?えーと、平行世界とか」

そう言われて、ラピスは記憶をたどってみる。

「・・・・あ、あるある。クレヨンしんちゃんだったっけ。違う世界で入れ違う話があったよ」

「多分そんな感じで・・・まあ、別次元の俺と言えばいいかな?あとはルリちゃん、ラピス、ユリカ、イネスさんが居る」

「・・・そんなに?」

・・・流石に多いと思うだろう。

「ルリちゃんとラピスは分かりやすいけど・・・ユリカとイネスさんは分かりづらいな。性別と年齢から違うから」

「・・・・らんま2分の1?」

「・・・それは世界観が違うんじゃ?」

何故知っている、アキト。

「ラピスと一緒に見た」

・・・・さいですか。














クリスマスパーティ当日。

ウリバタケが色々と準備している姿が目に入った。

いや、クルー全員が一丸となって準備をしている。

だが・・・アキコはぼ〜っとしていて、

コウタロウは少し目が充血していた。

・・・二人とも腰を痛めてたりするのはご愛嬌(笑)。

そしてーパーティ開始。

コスプレパーティと言うことで、それぞれ変わった服装で登場。

もちろん、ウリバタケのコレクションが大半を占める。

アキトとジュンは女装させらていた。

声を聞かなければ分からないほど完璧に。

逆行組は・・・

「アキトさん、アキトさんはコスプレしないんですか?」

メグミはアキトに話し掛ける。

「はい?」

だが振り向くとアキコだった。

「あ、アキコちゃんのコスプレだったの(汗)」

「はは、驚きましたか」

「あれ?じゃあ横にいるのは?」

「アイです」

ルリだと思っていたのは実はアイだった。

こっちでもー。

「はぁ・・・僕はどうしてこうなんだろう・・・」

流されるまま、女装をさせられたジュンがため息をついていた。

「まあそう嘆かないでください」

「ああ・・・・って君は誰だい?」

ジュンが顔を向けると横にはいつもブリッジにいるときの自分がいた。

「わ・・・俺は軍から来たスミダ・コウタロウです」

「あ、確かあの義理の妹が二人いるって言う・・・」

「そうそう、それです」

「その二人は一緒じゃないのかい?」

「あの二人なら誰かの変装をしてその辺にいますよ」

「コウタロウさん」

「あ、ほら来た」

そこに居たのはユリカ・・・ではなく、ユリカの格好をしたシェリーであった。

「シェリーちゃん、マリーちゃんは?」

「アキコさんを探しに行ってしまったようですが・・・」

「アキト!」

「・・・俺はアキコだよ」

・・・まだアキトと呼んでいるらしい。

「はい!ちゅうも〜く!」

エステバリスのコスプレをしているユリカが一人の女性を連れてやってきた。

「今度、ナデシコに配属になった、イツキ・カザマです。パイロットを務めます。

以後、よろしくお願いします」

「うおおおおおおお!!!(整備員魂の叫び)」

「あと三人配属予定です。

遅れて到着するそうですが・・・」



びーびー。



「敵襲!?」

「総員、戦闘配置!」

パーティの穏やかな雰囲気が消え、

ナデシコのクルーは各持ち場に向かった。

・・・が。

「ユリカ、こっちこっち!」

「わわっ!私はシェリーです〜〜〜!」

まだボケていた。





『ゲキガンガーだと!?

この俺にそんなモンぶつけてくるとはいい度胸だ!』

ヤマダはエステのモニターに向かってほえる。

何故、ゲキガンガーなのかは考えずに。

「パイロットの皆さん、気をつけてください。

相手は大型の上にグラビティブラストを持っています」

ルリは冷静なオペレートをする。

ここまではー普通だった。

が。

「!ビルの屋上に人がいます!」

「な!?」

コウタロウは思わず声を上げる。

作戦参謀の位置にいる以上、こういうことに敏感に反応するのだ。

ビルの屋上にいるのは女性だった。

革ジャンにズボンと、男性の服装だ。

「誰か救助してください!」

そんなルリの言葉とは裏腹に、女性は動こうとしない。

すると・・・女性は腕を天高く掲げる。

人差し指から指を握り締め、最後に親指を閉じる。

そして・・・。

高く飛び上がった。

人間の足でも、ロボットの足でも跳躍できない高さに。

そして、ジンシリーズに突っ込んでいった。

「!!」

「衝撃のぉ!

ファ〜〜〜〜スト・ブリッドォ〜!」










どごんっ!









女性は拳を振るい、ジンシリーズの腕を破壊した。

「なんだ!?」

遠めに見ていたから分からなかったが、

女性の手には装甲のようなものがついており、

肩にあるブースターのようなもので突進した。

「・・・スクライド」

ラピスは思わず呟いた。

彼女の見たアニメにそっくりだったのだ。

この女性の行動そのもの、装甲のような物も。

「大型機が接近してきます!・・・味方です!」

今度は何かと思ったら・・・

武器コンテナを装着したようなエステが来た。

ジンシリーズより大きい。

その上に、さっきの女性は飛び乗った。

『こちらミリア。着艦を求めます!』

「ミリア!?」

ナオはミリアが乗ってるとは思わなかった。

いや、そこにいたメンバー全員がそうだった。

『アキトおにいちゃ〜ん!』

・・・メティも乗っていた。

「どうしてここに?」

『着艦してからにしてください!オートパイロットですし、戦場で世間話なんかしているひまありませんから!』

「りょ、了解」

ルリは少し驚きながらも着艦指示を送る。

「はいらねえんじゃないか?」

ウリバタケは呆れたような声を上げた。

何しろ、全長40Mもあるエステなのだから。

何とか入った・・・が、他のエステを入れるときにいったん出す

必要があるほど大きい。

ジンシリーズの回収も成功して、三人の紹介が始まった。

「・・・と、さっき生身で敵を破壊してたっぽく登場したあなたは?」

「私の名はシーラ・カシス!

16歳、職種はパイロット兼、整備士兼、開発部!

趣味はゲームとアニメビデオ収集、音楽鑑賞と新兵器の開発。

サツキミドリ出身です!」

サツキミドリ出身・・・彼女は歴史上では生きていない人物だった。

白いー白銀の髪。

プロポーションは歳相応だ。

「さっきどうやってあのデカブツの手を破壊したんだ?」

ウリバタケは生身の人間がディストーションフィールドを破る所を見てしまった。

「私は、相転移エンジンの小型化を研究していたんです。

先日、かなり小型化できて個人レベルでも使用が可能なんです。

ただ、さっきご覧になったように一撃しか使えません。

後は安全に離脱するぐらいしかできません」

「・・・その機体は?」

「大型機動砲戦フレーム、通称デンドロバリス!

私が開発した小型相転移エンジン4台によって、戦艦以上のディストーションフィールドと、

グラビティブラストと、エステバリスの1.5倍の機動力を実現!ミサイルは最大搭載数1000!

ワイヤーを引っ張り、その斜線上にあるものを全て破壊する爆導索!などなど空飛ぶ武器庫です!」

とんでもない物だった。

エステは本来小型化を優先している。

火力的にはサイズ以上のものが保障されているのだがー

恐らく、このエステはナデシコ並の火力を誇ることになる。

そもそも彼女の性格いかんは置いておくとしても、

彼女は5年先の技術を作っていた。

小型相転移エンジン。

史実の世界で彼女がもし生きていたら、

このような物が出回ることになっていたのだろう。

・・・彼女は逆行者ではないのだ。

危険な物を作ってはいるが。

この技術にウリバタケは鼻息を荒くしている。

この相転移エンジンはサレナのものより完成度が高い。

「私はミリアです。

食糧管理の担当をします。

趣味は読書。

出身はヨーロッパです」

ヨーロッパは国名ではないが。

「私はメティ!

アキトお兄ちゃんのお嫁さんになりたいで〜す!」

ライバル出現!

・・・の予感。

「で、アキトお兄ちゃんはどこ?」

「いや実は・・・」

ナオはアキトがどこかに飛ばされたことを伝えた。

「・・・・・」

「メティちゃん?・・・」

手を目の前でぶんぶん振ってみる。

が、反応は無い。

「?」

顔色が悪い。

当然と言えば当然だが。

「ちょっと失礼します」

アイがメティの肌に触れる。

「!みゃ、脈が無いわ!」

器用な事に、アイは倒れないまま心臓を停止していた!

「おい、医務室へ運ぶぞ!」

「気をつけて!頭を振りまわさないで!」

ナオは慌ててメティを担ぐ。

「心臓マッサージお願いします!」

「アイちゃん、人工呼吸!」

メティ!せっかくテツヤに殺されずにすんだのにこんな所でその若い命を終えるのか!?

ガンバレメティ!負けるなメティ!死ぬな!メティ!

「ぷはっ・・・」

「息を吹き返しました!」

「良かった・・・」

「はぁはぁ・・・死ぬかと思った・・・」

胸に手を当てて深呼吸をするメティ。

「メティちゃん驚きすぎ」

ナオは安心して一息ついた。

「ごめんなさい、心配をおかけしました」

「こっちの心臓が止まるかと思ったよ・・・」

「アキトお兄ちゃんは?」

「さっき月に居るって連絡があったよ」

「よかった・・・・」

本当に良かった。

無駄な犠牲が増えるところであった。







ナデシコは月へとジャンプしたアキトを迎えに行くために宇宙へと上がった。

「白鳥さんが来た?」

「だってさ」

アキコとコウタロウが食堂で遅めの食事をしていた。

クリスマスパーティの後片付けが意外と長引いてしまったらしい。

無論、アキコの手料理だ。

「・・・なら呑気に食ってる場合じゃない。行こう」

「まあ待って。腹ごしらえしてからじゃないと」

「・・・相変わらず呑気だね」

アキコはここに来てからも相変わらずのんびりしているコウタロウに少し笑みを見せる。

「ま〜相手は白鳥さんだし、焦らなくてもうまくいくかな」

アキコはのんびりと食事を続けようとした。

だが・・・その背中に衝撃が走った!

あまりに大きい・・・悪の気。

「どうしたの?」

「これは・・・まさか!」

「アキト!」

マリー、つまりラピスが食堂に入ってきた。

誰もいなかったのが幸いだが。

「あいつが・・・あいつが来た!」

「やはり・・・二人ともここで待ってて!」

アキコは食堂から駆けていった。







作者から一言。

どうも、はじめまして。代理人さん。

俺の名は武説草良雄です。

俺の作品を全て読んでくれましたか?

読んでくれたらありがとうございます。読んでなければ出来れば読んでください。

今回の解説行きます。

ついに完全オリジナルキャラが登場しました。

彼女は俺の優秀なアシスタントです。

まあ、第三章のマスコットは彼女ですが。

彼女が役を果たしたアキコの代わりになるはずです。

多分、恐らく、パーハップス。

でも、相変わらず主役はアキコなんだよなあ・・・。

あと無理矢理登場したミリアとメティですが、ぶっちゃけおまけです(爆)。

デンドロバリスの牽引兼、ナオを喜ばす役どころです。

でもアキコのお仕置きとかとかって女性限定のものだと思うのは俺だけでしょうか。

やはり、女性化が進んでいるらしいです。

あー。俺は・・・もう死んでいる(何?)。

では次回へ。





改定後の一言。

えーと、代理人さんとノバさんに突っ込まれたところを修正しました。

いや、無ければいい話なのになー・・・とかいわれちゃあ・・・。

つーか自分で読み直して釈然としなかったんで。

デンドロバリスは使いたいので置いときます。

04年2月28日武説草良雄。


 

 

代理人の感想

そもそもアキトの性を元に戻せばよかろーなのではなかろうかと思うのですがすがすが。

理由としてはちと弱いかなー。

まぁ、作品としては倒錯のほうがメインだからこれはこれでいいのかなー(爆)。

 

>それは女性の考えだった。

・・・・そーゆーもんかなぁ。

帰る場所を意識するのはねぐらをもつ生物全ての習性だと思いますが。

 

>無駄な犠牲が増えるところであった。

えーと・・・・・笑うところですか?