○地球・佐世保市・ユーチャリス研修施設・ブリッジ──ユリ

私達は念のためラピスに付けられていた爆弾付の首輪を、
危険にならぬように保安部の女の子たちに持って行ってもらい、
シーラ整備班長が爆風を抑えられるように穴を掘って防御態勢を取ってくれました。
威力が分からないので対処としてはちょっと不足ですが、
カエンの言いようからすると建造物のワンフロアくらいは軽く吹き飛ばすはずなので、
立ち入り禁止区域にして、そのまま置いておいてます。
いくら解除されたとはいえ、誤動作がないとは言えませんから…。

「ほっとしました…。
 アキトさんもラピスも無事に済んだようで…」

「うん、さすがに心臓が止まるかと思った」

私達ミスマル家の姉妹四人は揃って、改めて安堵のため息を吐きました。
…何しろ、大事な二人の命がかかってましたし。
しかもアキトさんだけ助かっても、ラピスが死んでしまったら、
私では『黒い皇子』に戻られてしまってはどうしようもなくなります。
今のアキトさんは昔とはだいぶ違うので変化の仕方が変わるかもしれませんが、
元々のアキトさん…テンカワさんと性格とDNAが違いませんし、
私では説得しきれる自信がありません…。
そういう意味でも、今回の戦いは本当に紙一重でした。
私もアキトさんに置いていかれたらまた…いえ、暗くなるのは後です。
無事にアキトさんたちが戻ってからの話です。帰るまでが遠足です。
とはいえ…。

「ラピス、中継途切れちゃいましたけど…ナオさんは大丈夫ですか?」

「うん、気にしないでいいと思うよ。
 アキトもナオが勝てないって踏んでたら残ったはずだし。
 信頼ってのもあるだろうけど、ナオがしっかり対策を取ってたのを確信したから。
 一応ナオの端末から音声は送ってもらってるけど、大丈夫そうだし。
 ま、そうじゃなくてもアキトの言う事だし、信じるけどね」

なるほど、そういうことなら安心です。
ラピスは色々と後始末までやりきるので安心です、本当に。

「…ラピス、でもアキト兄さんに入れ込み過ぎじゃないですか?」

「ルリ、お説教は後にしてよぉ。
 アキトが帰ってきたら、もう今日は寝よって。
 夜更かしは体に悪いんだから」

「分かってます。
 でも…仮に、仮にですよ?
 アキト兄さんが本当にあの悪い格好みたいになって…。
 悪事を働くってなったら、ラピスは共犯者になっちゃいそうで…不安なんです」

私はルリの観察眼に驚きました。
…かつてラピスが本当に共犯者だったとはとても言えません。
ラピスも当時は昔の私と同じで、大人しくて、前に出てくるタイプじゃなかったようですが…。
それでもアキトさんと一心同体同然で、私以上に執着の有る子だったみたいです。
私も当時は接触がほとんどなかったので深くは分かりませんが…生まれて初めて想ったのがアキトさんみたいでした。
今のラピスは、アキトさんの時々語る当時のラピスとはだいぶかけ離れています。
私もラピスもミスマル家のDNAを持っているので、だいぶ性格的に変化はしてますけど、
ラピスは特に変化が激しいみたいです。
…本当に、不思議なものです。

「うん、必ずそうする」

「ッ!!」


「アキトの居ない世界に未練なんてないもん。
 …私はアキトが世界最悪のテロリストと呼ばれても、
 実際に人殺しだったとしても隣に居たい」

「ラピス!」


ルリがラピスの正面に立って睨んでいます。
…本当にルリは昔の私と違ってかなり直情的に、
ストレートに感情を表現するようになりましたね。
しかしラピスの覚悟は、すでに実際そうしたからこそ出てくるものです。
私はそれを知っているから、逆になんて言ってあげればいいかわかりません。
…ルリはなんて言うんでしょう。

「そんなこと考えちゃダメです!
 アキト兄さんはバカでぼっとしてて、
 そのくせ目立ちまくって本当に迷惑な人だけど!
 た、確かに昔は危険なことを考えてたかもしれないけど!
 
 そんな人になるなんて微塵も思っちゃダメですッ!」


「ッ!!」



ラピスが圧倒されてる…。
…ラピスは私の昔の姿を、私を、そしてルリを良く知っている。
いつも人物評価が正確なラピスが、ルリの激情を見抜けずに固まってる…。
ラピスはルリの瞳を見つめ続け、やがて一筋の涙を零しました。

「アキトをそこまで信じてくれてるの…ありがとう…。
 でも……あれも確かに、アキトの一面なの。
 私には分かるの…私はアキトの心を知ってしまった…。
 誰も分からないくらい、分かっちゃいけないくらい深く、深く…。
 
 昔婚約者を失った時は、
 自分が憎しみに染まって醜くなっていくのが分かってても…。
 凶暴で、最低な部分が、自分の中には眠っているんだって思い知ってなお…。
 
 やめられなかったんだ。
 
 本当はアキトも、あんな姿になりたくないって心の底で叫んでたの…。
 
 ……だから、ルリ、ユリカ。
 こんな危険が次がないのがベストだけど…。
 
 もし、私が死んだりして憎しみにとらわれそうになったら、
 ユリと一緒に止めてほしいの…。
 
 私も今のアキトのほうがずっと好きなんだ。
 
 お願いだから…」

ラピスは先ほど私に…お願いしたことを、少しソフトにルリとユリカさんに告げました。
…少し、私も胸が痛いです。
爆弾が爆発しそうになった時も、ラピスは私達とアキトさんの事ばかり考えてました。
ルリはそれを怒っていたけど…アキトさんの事を心底心配そうに話されて、
今回ばかりは怒鳴れなかったようです。

「…ぐずっ…しっちゃかめっちゃかなこと言わないで、ラピス。
 アキト兄さんが世界最悪のテロリストになってもついてくとか言うくせに…。
 そのくせ、そうなったら私達で止めろだなんて。
 死なないようにちゃんと努力するのが先でしょう?」

「くすん…ご、ごめん、ちょっと私も弱気になりすぎちゃった…。
 でもちゃんと覚えておいてくれる?」

「…はい。
 絶対、何とかします。
 だから死ぬなんて今は考えないで下さい。
 命が危ない時は力になりますから。
 アキト兄さんは私達が無事ならそうならないんですよね?
 だったらいっしょに生きて下さい」
 
「そ、そうだよね。
 生きてなかったら、アキトと浮気できないもんね」

「…バカ」

「ら、ラピスちゃんったら、もう…」

「…はぁ」

ラピスの冗談だか本気なんだか分からない言いように、二人とも苦笑してます。
…私だけはマジだって知ってます…我ながら良くない約束をしてしまいました。
でも、みんなしてちょっと涙ぐんじゃいました。
緊張の糸が切れちゃったみたいですね、私達も…。
……もう大丈夫です。
アキトさんが戻ってきたら、いつも通りです。
私達四人でお風呂に入って、ぐっすり寝ちゃいましょう。
明日は出撃前にナオさんにお見舞いとお礼を言いに行って…。
…ああ、アクアクリムゾンにも文句言いに行きましょうか。
ブラックサレナのせいで、ナデシコも明日一日はエステバリスの修理で出れませんし。
たまたまお休みだったのでなんとかなるでしょう。
……しかしロケハンバトルの後始末が大変そうですね。
憂鬱です。


ピッ!



「ユゥ~~~~~~リィ~~~~~~~~カァ~~~~~~~~~~~~ッ!!
 
 ユゥゥ~~~~~~~~リィ~~~~~~ッ!!
 
 ラァ~~~~~~~ピィ~~~~スゥ~~~~く~~~~~んッ!!
 
 ルゥ~~~~~~~~~~~~リィ~~~~~~~~~~~くぅ~~~~~んッ!!

 
 

 ……ぜえ、ぜえ…」



「お父様ぁ~~~~!」


「お父さんッ!!」


「おじさんッ!」



…………はっ!?
ついうっかり私もつられてでっかい声で返事をしてしまいました!
ミスマルお父さんが急に大声で通信を入れるものだからつい…。

「お父様!?どうしたんです!?
 アキト君勝ちましたよ!?」

『あ、ああ。
 …あれはやっぱりフィクションじゃないんだな?
 と、とりあえずよかったな…。
 

 で、なくてだなぁ~~~~!

 
 連合軍に停泊中のナデシコから例のブラックサレナが今しがた出て行ったんだ!
 ナデシコのハッチを破壊して、佐世保連合軍基地のエステバリス隊と交戦中だ!!
 すでに飛べなくなって遠くに行かれる可能性は低いし、
 さっきに比べれば性能も落ちてるし、技の切れもないからまだけが人は出てないが、
 ディストーションフィールドが厚すぎて手の施しようがないんだ!!」


「「「ええええええええええええっ!?」」」



ま、まさかブラックサレナがまたヤドカリにとりつかれたっていうんですか!?
一応、ヤマダさんの決死の行動によって撃墜はできたと聞いたんですが…。
事情は分かりませんが、アキトさんの手が必要かもしれません。
…ボロボロでクタクタのアキトさんを呼び出すのは気が引けますが、
アキトさんとアカツキさんの二人なら性能差をなんとか覆すことはできるかもしれない。
仕方ありません…。

「わ、分かりました!
 アキトさんに連絡を取ります!
 お父さん、私達が戻るまで何とか持たせてください!」

『すまない…!
 ヤツは何とか基地からは出さないように何とかする!
 頼んだ!』

お父さんは焦ったように通信を切りました。
この感じ…アクアクリムゾンとはたぶん無関係ですね。
いくら何でも隠されてたブラックサレナをピンポイントで見つける事は出来ないでしょう。
たまたま運悪くアクアクリムゾンの仕掛けたタイミングで、
ブラックサレナをヤドカリがのっとっただけです。
…はぁ、本当にラピスは今回運が悪かっただけなんですね。
とにかく、一刻も早くアキトさんを呼ばないと。
ちょうどナオさんを送ったミナトさんが近くにいるはずですし。
私は端末を手にしてアキトさんに連絡を取りました。
一応みんなにも聞こえるようにハンズフリーにして通話を広げて。

「アキトさん!」

『あ、ユリちゃん?
 何とか終わったよ。
 ラピス、良かったな』

「うん!ありがとアキト!愛してるよっ!
 

 ……ってそうじゃないの!!

 
 ブラックサレナが、勝手に再起動しちゃったのよ!!」

『なんだって!?
 い、いやブラックサレナって…そもそもまだ調整中だろ!?
 三週間前に調整に顔だして、まだ終わってないって聞いたけど!』

「そ、そうなんだけどヤドカリにとりつかれて、
 ナデシコのみんながやっつけたんだけど…。
 でもなんでか再起動しちゃったの!!
 今、連合軍の基地の中で、かろうじてみんな持ちこたえてるけど、
 アキトとアカツキの力が必要なのよ!
 早く戻ってきて!」

「そういうわけです!お願いします!
 ミナトさんに送ってもらってください!
 連合軍基地で合流しましょう、エステバリスは持っていきますから!」

『わ、分かった!!』

アキトさんとの通話が切れると、私達は大慌てで準備を始めました。
ナデシコのエステバリス隊のみんなと、整備班のみんな、
それとPMCマルスのパイロットをみんな引き連れて連合軍基地に向かいましょう。
…PMCマルスのエステバリスは現在、アキトさん専用機だけです。
ちょうどPMCマルスのパイロットのエステバリスは、佐世保基地で演習に貸し出してます。
つまり、ブラックサレナと対峙してる連合軍基地のエステバリスは…。
………人の命が掛かってるので考えたくないんですが、
全員無事でもエステバリスの損害がすごいことになっちゃいそうです。
…12機全損は勘弁してほしいです、マジで。
はぁ。

「さて、ユリカさん、ラピス、
 それにルリ────」

私が振り向くと、ルリは一人、オペレータ席にもたれるようにしてへたり込んでました。
よくみると、眼を回して失神してるようで…。
……ああっ!?

「ご、ごめんルリ!!
 わ、私達が大きな声で叫んだから!!」

「うわわっ!?
 ルリ、しっかりして!!」

「ラピスちゃん、揺らしちゃダメだよ!!
 い、医務室!!」

「ら、らいじょぶれす……。
 ひゃやく…あきと…にいひゃんを…」

「わ、分かった!
 お、お水持ってくるからまってて、ルリ!」

ルリは頭の上に思いっきり星が舞ってるようですが意識はありました…。
ラピスはひとまず水を持ってくるためにブリッジを出ていきました。
とにかく、準備ができるまで少し休ませることにしました。
あんまりのんびりできませんが、今回はルリの力も必要になるかもしれません。
なんとかいっしょに向かいましょう…。

ミスマル家系DNA所持者の大声カルテット至近距離直撃

はルリもさすがに堪えたみたいですね。
…これだけはちょっと自分でも困りものです。
私はやっぱりミスマル家の次女で…ユリカさんの妹なんだって思い知らされます。
はぁ。





















『機動戦艦ナデシコD』
第四十七話:Darkness Doll -闇の人形-
























○地球・佐世保市・PMCマルス本社──青葉

私達はあわただしく出撃準備を整えていた。
連合軍基地はここから10分そこそこの距離にあるから、
そんなに時間はかからないんだけど…。
…アキト様のいる場所がどんなに早く戻ってきても20分はかかるから、
それまでの時間は何とか持ちこたえられるようにしないといけないのよね…。
それにしても…アキト様、あの様子じゃ別にワルじゃなかったのかも。
なんか二重人格なだけで、人を殺したこともないって言ったもん。
はぁ、ちょっとだけ残念だと思ってる自分が怖いわ…。
とはいえ…重子の占いが気になるのよね。
なんかもう一波乱ありそうだから気をしっかり持つようにって。
あの子の占いはおっかないのよ、本当に。外れないんだから…。

ピッ!

『青葉ぁ~~~~~~~ッ!!
 ぼうっとしてんじゃないわよぉ!
 エステバリス乗っけるわよぉ~~~~!!』


「あーはいはい。
 さっさと乗っけてよ、レオナ。
 アキト様の専用機なんだから大事に扱いなさいよ」

『分かってるわよ~~~~っ!』

レオナは私の乗車してるトレーラーのジャッキアップを要請している。
私はジャッキアップのボタンを押すと、エステバリスの搭乗をカメラで確認する。
…大丈夫そうね。

『青葉、いいわよー』

「はいはいー」

レオナの要請でロックをかけ、レオナもエステバリスのロック機構を作動させて、
がっちりと固定が出来たところで再度ジャッキダウンを行う。
…ひとまず問題なさそうね。
さて、あとはみんなが出てくるのを待たないと…。
ユーチャリススタッフのみんなはプレハブ寮ではしゃいでるでしょうけど、
こういう即時戦闘にはなれてないから放っとくしかないわよね。
もう深夜の12時半、そろそろ眠くなり始めてるけど、
アキト様のためだもん、仕方ないわ。
…そうこうしているうちにみんなが出てきた。
各自、自動車やナデシコの揚陸艦ひなぎくやらで連合軍基地に向かってる。
……まさかアキト様の究極の専用機と対決することになるなんて、誰が思うのかしら。
『あの』手練れぞろいのナデシコエステバリス隊を全機中破に追い込むような性能と、
アキト様の戦い方を生き写しにしたあの機体と戦うなんて…。
全く、生きた心地がしないわよ…。

















〇地球・佐世保市・連合軍基地・ドック・ナデシコ内

俺たちはようやく連合軍基地内にたどり着き、ナデシコに入り込めた。
ブラックサレナが大暴れしてる場所から少し離れてて良かったが…。
ったく!!バッテリー引っこ抜いても動いてるとかどういうことだ!?
だが…。

「あーーーーったく!
 ハッチが壊されてんじゃねえか!
 けが人はいねえかーっ!」

「うっす、班長!
 みんなちょうど夜勤休憩で食事とってたんで無事っす!
 ただ中破の空戦エステバリスが何台か移動時に巻き込まれてぶっ壊れてまっす!」

「陸戦と砲戦は無事だな!?
 だったらいい、あいつも飛べないらしいからな!
 連合軍のひよっこ連中がやられねえうちにエステバリス隊のスタンバイだ!!
 テンカワも連れてこい、あいつも連合軍の新米よりかは腕があるだろ!」

「うーーーーっす!!」

俺たちは大急ぎでエステバリスの起動準備をし始めた。
幸いバッテリーは満タンだし、整備はいつもどおり万端だ。
あとはパイロットの連中が乗り込めればすぐに行ける!

ピッ!

『う、ウリバタケ班長!?
 ブラックサレナが再起動したって本当!?』


「あ?!エリナ秘書か!?
 忙しいんだから後にしろってんだよ」

『ま、待ちなさい!
 ブラックサレナの再起動の理由はともかく、
 弱点の一つや二つ聞いて置きなさいってば!!』

「あン?
 そら助かるが、艦長に言った方が…。
 …いや、なんでバッテリー抜いたのに動いてるのかくらいは聞きてえな」

俺たちは完璧を期して、ブラックサレナのバッテリーを抜いておいた。
基本はエステバリスに追加装甲を施しているだけの期待だからな。
一回り大きいと言っても基礎は変わらねぇはずだから。

『あのブラックサレナ、東京から飛び去って、一直線に佐世保に向かったのよ。
 …どういうことか分かる?』

「…なんだと!?
 空戦エステバリスはバッテリーは普通五分も飛んで終わりだ!
 規格外のバッテリーを使おうとそれは変わんねえ!
 新型バッテリーでも使ってんのか!?」

『違うのよ。
 あのブラックサレナは、単独で長時間の機動を可能にして、
 強力なディストーションフィールドを使えるように、バッテリーをかなり大量に増設してあるの。
 ……あのエステバリスを一回り以上も大きくする装甲すべてが、
 もしもバッテリーだったとしたらどうかしら?』

「なっ!?」


装甲をバッテリーにした!?
陸戦エステバリスと空戦エステバリスはそれぞれ脚部に大容量バッテリーを積んでいるが…。
だがそうは言っても足の強度を落とさない程度のものだ。
…ブラックサレナのあの分厚い装甲の裏にすべてバッテリーが入っているとしたら、
確かに通常の10倍から20倍程度のバッテリー量になる!
装甲の材質の半分をバッテリーしたら被弾には弱くなるが、
あのディストーションフィールドがあれば大体の攻撃は通らねぇ!
挙句にあの機動力と速度じゃ被弾率が低い!
……さらにあのホシノが乗り込めばそうそう撃墜されないってわけだ。
なるほど…ホシノがあのブラックサレナを専用機とした理由の一端が分かったな。

つまり、あいつは『絶対に撃墜されない』おとりになれる…。

グラビティブラストでも高収束射撃でない限りは巻き込まれようと無傷だろう。
あのレベルのフィールドを持ってる機体が出てきたら木星トカゲは無視できまい。
そうなるとホシノがよけないまま木星トカゲを巻き込んでグラビティブラストを受けてしまってもいい。
ホシノが敵をこまごまと倒すよりよほど効果的だ。
それどころか、あのフィールドと速度が組み合わされば敵駆逐艦の胴体だってぶち抜ける。
スタンドアローンで1時間以上稼働できる、強固なフィールドを持った改造エステバリス…か。
……恐ろしい機体だな、ブラックサレナは。

『それに…アキト君が死んだら、世界規模で混乱が起きかねないでしょ?
 見たでしょ、あの性能とフィールド強度。
 ブラックサレナはアキト君を絶対に守ってくれる鎧なのよ』

「そりゃ…そうだな」

ホシノが生きていればこそ、ナデシコやネルガルが軍に強要されない状況に居られる。
連合軍がPMCマルスに特殊部隊をけしかけた件と、完全に世論がホシノに味方してることがあって、
あの高慢ちきで有名な連合軍が踏み込めないでいられるんだよな。
おまけに火星行きも…噂で聞いたが、
ホシノのナノマシン量を調整できる研究者が火星に居るから、という理由が強力に働く。
英雄として上り詰め、ここまで地球圏の戦術を変えたアキトの命が掛かってるとなれば、
誰も止められはしないだろう。

さらにそんな無謀な旅となると、ホシノとブラックサレナの組み合わせは必須になるな。
さすがにブラックサレナじゃ木星トカゲの艦隊を倒すことはできないが、
艦隊を潜り抜けるブラックサレナに注目を集めて撃破するってのはかなりイケてるだろな。
…ま、さすがにそう簡単にはいかないかもしれねぇけどな。

「…だがエリナさんよぉ。
 そんなあぶねえ機体の管理が甘かったのはいただけねぇぜ」

『あぶない機体だから秘匿してたのよ!!
 それが裏目に出ちゃったって言ってるじゃない!!』

…ま、エリナ秘書をいじめるのは筋違いだぁな。

「わーったわーった。
 …それじゃ弱点の方を教えてくんねぇか?
 さすがにヒントなしじゃやりようがねぇからな。
 コミュニケ、艦長にもつなぐぜ」

エリナ秘書をなだめるようにしつつ、艦長にもコミュニケをつないだ。
……艦長なら何か秘策を思いつくかもしれねぇからな。
ブラックサレナも、飛べなくなって機動力が多少落ちようとディストーションフィールドは健在だ。
砲戦フレームのキャノン砲を徹甲弾に切り替えるか…ミサイルの遅延信管をいっそオフにしちまうか。
それでもかなりの数を撃ち込まねえと通用しねえだろうな。
あとはフィールドランサーだが…動きを読めないとまず当たらねぇ。
フィールド強度的にフィールドランサーが壊れるところまで押し込まないと中和できないようだったからな。

…さあ、どうするかな、艦長は。


















〇地球・佐世保市・沿道・車内──アカツキ

僕たちはミナト君の運転する車で連合軍基地に向かってるわけだけど…。

「飛ばすわよぉ~~~~~~~~~ッ!」

「わああああミナトさんほどほどで~~~!」

「あつつ!?み、ミナトさん!!
 俺、火傷してんすよ!?
 ドリフトは…!」


「我慢しなさいよぉ!
 大の男でしょうが~~~~ッ!!」



……ミナト君、常識人だと思ってたんだけど、ハンドル握るとすごいよね。
ふ、船の操縦じゃこうはならなかったと思うんだけど…。

「ちぃっ!!
 目ざわりなのよあんたらぁ!!」


すでに0時を回ってるからか、前にバイクだの、改造車だのの暴走族が居るねぇ。
絡まれても負ける気はしないけど、時間がもったいない…。
……ああ、やっぱり。
ぶっ飛ばして追い抜き始めたよ、ミナト君。

「へいへーい!姉ちゃんいい度胸してんじゃねえか~~~!

 ……はっ!?

 う、後ろに乗ってんのは!?」

「そうよ~!
 正義の味方のお通りなんだからどきなさい!
 緊急事態だから飛ばしてんの!!
 どかないならこの無敵の三人がボッコボコにしちゃうんだから!」

…あの、褒めてくれるのはいいんだけど無敵とはいっても、
サイボーグ相手にはちょっと厳しいところあるんだけど、僕らも。

「「「「さ、サーセンしたぁあああ!!!」」」」


彼らはすごすごとスピードを落としてひっこんでいく。
…ほっ。
とりあえずタイムロスは防げそうだよね…。


ウーーーー…ファンファンファン……。


『そこの車両!
 スピード違反だ!!止まれーーーっ!』

「げっ!?今度はお巡りさんだ!?
 も、もしかして暴走族を取り締まる予定で張ってたんじゃ…」

「ああもう!
 警察屋さんじゃさすがに説明に時間がかかっちゃうわよ!
 この場は…」


ぶぉんっ!!


「巻いてやるわッ!!
 この先、基地まで信号がないんだから!!」

「み、ミナトさん無茶しないで!?」

「ハコスカの女王をなめんじゃないわぁ~~~~~~!!」


じ、人格ごと変わってないかい!?
こんな一面があったとは…。


ぴぴぴぴ…。



『あ、アキト会長大丈夫?何分くらいかかる?』

「し、シーラちゃん!?
 じ、時間は間に合いそうなんだけどミナトさんが荒れた運転なんだけど!?」

『あ~~~~~~~~~。
 そりゃしょうがないわねぇ、だってミナトさん、
 昔暴走族じゃないけどアマチュアの草レースでならしてたらしいの。
 私達みたいな整備士の中でも結構有名で、高校時代から自動車部で攻めまくってたんだって。
 あだ名は「ハコスカの女王」優勝歴二回、入賞五回、プロチームからスカウトが来たこともあるの。
 で、PMCマルス内でウリバタケさんと私が改造したハコスカがたまたまあったもんだから、
 一番早い車両で、しかも手慣れたクルマがあるってんで、
 ミナトさんが乗り込んじゃったわけね~』

「「「うげぇっ!?」」」


…それはちょっと盲点だった。
ナオ君がホテルストーン佐世保に来た時は市街地だったからほどほどだったけど、
こうなっちゃうと爆走モードで手が付けられないってことかい…。

「み、ミナトさーん!?
 安全運転で…」

「しゃらくさいわよっ!!」


ぶおおおおおおっ!!


「「「うわあああああ!!?」」」


元違法改造屋のウリバタケ君が絡んでるってなると、
これシャレにならないくらいヤバイんじゃないかい?!
車検通らないのはもちろんの事、馬力が恐ろしく強くなってる!?
め、メーターが300キロを超えた!?

「さっすがウリバタケさんよねぇ!!
 こんだけスピード出してもハンドルがついてくるし、
 車の揺れも最小限!
 こんな強くって素直なコを貸してくれるなんて感激だわ!

 

 ほーら、パトカーがどんどん遠くなっちゃうわよ~~~!」


「「「誰かミナトさんをとめてくれーーーーーっ!!!」」」



……結局、その後、パトカーは追跡不能になった。
元違法改造屋のウリバタケさんの事だから…。
きっとナンバーを抑えられないように細工してるんだろうな。
心配なのは、ホシノ君の白い髪が見られてないかだけど…。
……バレたらアクア君に映画の撮影の一環だったって言ってもらおうかな。
は、ははは…。

「か、勘弁してくれ……」

ホシノ君はブラックサレナのめちゃくちゃな起動にも耐えられるうえに、
今も耐G機能ありの戦闘服を着ているのに、他人の運転だとさすがに堪えるらしい。
…それにしてもホシノ君、兄妹してるせいかルリ君に似てきたんじゃないかい?

















〇地球・佐世保市内・ホテル『ストーン佐世保』跡地・三階・特設会議室──カエン

俺たちは急にファンサービスをするはめになった後、
深夜なのでトラブルになるということで、アクアは解散してもらうように促した。
…その後、俺たちはなんだかんだクタクタなので今回の作戦会議を行ったこの会議室で休んでいた。
俺とインは治療くらいは受けなきゃならねえんだが疲れ切ってるので、
Dにほかの部屋から埃だらけのベットを持ってきてもらってぶっ倒れている。
みんな寝ちまってるが、俺は少し痛みで眠れない中、うとうとし始めていた。
夜明けを待って全員メンテ行きだろうが…クリムゾンに始末されなきゃいいがな、ったく。
もっとも俺たちはあれだけ顔が売れてしまったので、始末しようがないかと思うと少し気が楽だ。
……まさかホシノアキトはこうして自分の身を守ってんのか?
しかし…。

「おほほ、面白いことになってますわ」

…アクアはヘッドホンを片手に、
引き続きホシノアキトたちの様子をモニターしているらしい。
どうやっているかというと、
俺がホシノアキトたちに最初に連絡用に渡した端末に盗聴用のプログラムを仕込んでいたらしい。
あいつらもさすがにこの急場じゃ、盗聴に気づくヒマもなかったんだろうぜ。
俺は重いまぶたを閉じないようにこらえて、アクア嬢を見つめた。

「お嬢、そこまで追っかける必要あんのかよ?」

「嫌ですわカエンさん。
 映画に出てもらうんですからできる限りアキト様自身の事を知っておく必要があります。
 私自身も活動はずーーーっと追っかけてました。
 知ってました?
 アキト様はPMC資金集めのために、非正規の試合をしてたんですよ?
 テツヤさんに集めてもらったマル秘資料で人柄は良く知ってますが…。
 アキト様は大根役者ですから、できるだけアキト様の地の顔をもっと見ておきたいんです。
 色々合わせてあげないといけませんし」

…そういうもんかねぇ。
そもそも大根役者を使うのは話題作りのための素人俳優起用みたいで気に食わねえ。
俺が映画に出る方法なんて今はこれくらいしかねぇし、諦めちゃいるがな。
…そもそも俺も素人だしな。

「それに映画のシナリオ作りに使えると思うんです。
 クリス様にできるだけ資料を提供して差し上げませんと。
 夫婦初めての共同作業ですわ♪」

……ああ、この間言ってた今回の映画監督かよ。
心中狙いかと思いきや、失敗したらさっさと結婚して映画撮影…本当にマイペースな奴だ。
殺しても死なないようなタフさ…しかしこいつ本当に死ぬつもりだったのかよ?
まあ死ぬってのがどういうことなのか見えてない世間知らずってだけかもしれんが…だが…。

「…なあ、お嬢。
 ひとつ聞いておきたいんだが、
 なんであの時、俺たちの気持ちが分かったんだ?」

「…境遇は違いますけど、私も同じですから」

「あ?
 どこがだ?
 恵まれてる環境で何の心配もない人生を送ってきたお前が、
 暗がりに閉じ込められていたぶられていた俺たちとどう同じなんだ」

「おじい様に人生を縛られてて、どうやっても抜け出せなかったでしょう…?
 …その中では趣味の欲しいものはなんとか手に入るけど、
 人間らしく生きる目的を見つけることも、何も成し遂げることもできず、
 ただくすぶり続けて寿命を浪費することしかできない人生なんだって…。
 なんとなくわかったんです…」

……ああ、そういうことか。
俺たちがこのアクア嬢の言うことに賛同しちまった理由が、なんとなく納得できた。
環境の優劣こそあれど、あがくことすら許されない人生ってのは変わらねぇわけだ。
あっさり全員説得されちまったのはそういうわけか。
だが…。

「しかしホシノアキトの方も、何か俺たちに共感してる様子があったな。
 …それに出自も近いみたいだが、その割にコンプレックスを感じねえ。
 あいつの主張には矛盾がないかもしれんが、性格には矛盾がある」

「二重人格だからじゃないですか?」

「……身もふたもねえな。
 実際そうなんだろうが。
 だったら片方の人格が人殺しって可能性がある。
 だがそれならあの真っ黒い姿の方が裏の世界で有名になってていいはずだ。
 …なぜ奴が殺しをした痕跡が全くないんだ?」

「まだそんなこと言ってるんですか?
 別に今となってはどっちだっていいじゃありませんか」

……まあ、そうなんだが。
少なくともクリムゾンほど悪党じゃないというのは分かる。
というか自分に対する加害者じゃない限り誰が悪党だろうとどうでもいい。
…こういうと癪だが、俺はアクア嬢と同じで『映画が撮影できればなんでもいい』んだよな。

「…それとも~?」

…アクア嬢がいや~な笑いを浮かべた。
嫌な予感がするな。

「そこまで知りたがっちゃうのは、
 やっぱりアキト様が好きなのかしら?」


「ッ!?

 ぜ、ぜってーねえ!それだけはねえよっ!!」



「そういう態度をツンデレっていうのを?
 かしら?かしら?
 

 ご存知かしら~~~~?」



「っるせえ!!
 黙んねえなら今から燃やすぞ、このアマ!!」



「「「「うるさいっ!!」」」」



バキッ!!



……俺はからかわれて怒鳴り声をあげたところで、
横で眠ってた4人に殴り飛ばされて意識を失って強制的に就寝させられた。
お、俺が一番重傷だってんだよ…いたわりやがれ…くそ…。





















〇地球・佐世保市・連合軍基地・司令室

連合軍基地の司令室は緊張感とあわただしい空気に包まれていた。
ブラックサレナとの戦いは熾烈を極めている。

「また一機やられました!
 こちらの戦力は残り三機!」

「ええい!!
 何てことだ!!
 最新機とはいえ木星トカゲにハッキングされただけの、たかが一機に!!」

撃破を頼んだミスマル提督もさすがにアキトのデータが入っているとは話せないので、
彼らからすると驚異的な戦闘能力を持っているだけとしか見えなかった。

「し、しかし司令!
 ナデシコ並みのディストーションフィールドでは打ち抜けるわけがありませんッ!!
 地上では大型のミサイルは使えませんし…」

「分かっている!
 ナデシコ隊が来るまで持たせればよい!
 また彼らに頼るのは癪だが、
 半分は分解せずに持ち込んで、外出した彼らのせいなんだからな!」

「ナデシコ隊はただいまスタンバイ中!
 あと三分もあれば第一陣が出れるそうです!
 ホシノアキトとアカツキ会長は十分ほどで到着するそうです!」

「よし!
 命を懸ける必要はない、あくまで時間稼ぎに終始しろ!
 フィールドを破る武器の一つや二つ持ってるはずだからな!」

演習のために連合軍佐世保基地に貸し出された、
PMCマルスのエステバリス12機は地上用のエステバリスのみで、
陸戦と砲戦のみ。空戦エステバリスは扱えるものがほぼおらず、
二回目の出撃で使った空戦エステバリスはナデシコに引き取られている。
そのため、艦船相手をするためのフィールドランサーは持っていなかった。
──しかしそのうち9機は完全に大破しており、
全員脱出はできているものの、壊滅に近い損害を被っていた。
その責任こそ感じていたものの、エステバリスライダーとしては新兵もいいところの彼らには、
かなり荷の重い戦いだった。

「ナデシコ隊、思ったより早く出撃できるそうです!
 あ、すでに来ています!」

『おらおらおらーーーーっ!
 騎兵隊の登場だぜーーーっ!』



















〇地球・佐世保市・連合軍基地・基地敷地内─ガイ

俺は…なんだったか、ホシノアキトの話をしてたら気絶してたんだが…。
で、目が覚めたら出撃だってんでなんにかと思ったらブラックサレナが再起動したらしい。
ち…せっかくやっつけたと思ったらまた出てきやがったのか、ブラックサレナは!
悪役は悪役らしく、潔く倒れろってんだよ!
……にしても、ホシノのやつに似合わねえよな、この機体。
なんだか、みんな妙にブラックサレナがホシノ専用機ってことに納得してるが。
うーむ…っと、撃たねえと!!


どがーんっ!!



『おいっ!
 ヤマダ、しっかり狙えってんだ!
 チャンスを逃してんじゃねえよ!!』

「う、うるせえ!
 射撃が苦手な俺に砲戦押し付けといて何言ってんだ!!」

『しょ~~~がないでしょ~~~。
 ヤマダ君、本当は謹慎処分にしたいくらいだってウリバタケさんカンカンなんだから。
 今日はおとなしくイズミちゃんと援護してよ~』

俺はキャノン砲を外していらだっちまった。
もう少し離れてりゃ砲戦のロックオンも追いつくんだが…。
この速度で急速接近・急速離脱を繰り返されるとどうも間に合わない。
多数の敵なら砲戦フレームの方がむしろ楽なんだけどな。
…ったく。
ブラックサレナ戦のヒーロー扱いしてくれてもいいだろうに、なんでこんな貧乏くじを。

『ぼやくんじゃないわ、ヤマダ。
 砲戦フレームのミサイルしか確実な足止めはできないし、
 前衛二人のフィールドランサーかキャノン砲の徹甲弾くらいしか有効打が通らないのよ。
 しかも、徹甲弾の方はめったに使わないからカートリッジが各二本ずつしかないのよ。
 弾が切れたらあのブラックサレナ相手に生き延びれるか怪しいものだわ』

……イズミの言う通りだ。
あのブラックサレナ、飛び立つほどの浮力、推力は残っちゃいないが…推進力は健在だ。
計算上じゃ、フィールドなしのナデシコだったら体当たりで風穴を開けることもできるらしい。
連合軍のパイロットが一人も死ななかったのがほぼ奇跡的なんだからな。
ミサイルで足止め、フィールドランサーでフィールドを中和、とどめに徹甲弾でぶち抜く。
それで足りない場合は、控えに後ろでぷかぷか浮いてて、
俺たちのエステバリスに重力波ビームをリフレクトしてくれてるテンカワのエステバリスで後詰だ。
空戦エステバリスにはミサイルがついているからとどめには向いているし、
万が一飛ばれても対応できる必要があるからな。
もっとも、テンカワは飛びぬけて技量が低いのだけは不安だが…。

「しかし、こいつ、本当に半壊なのか!?
 全然動きを追いかけきれねえぞ!?」

『今回ばかりは、ネルガルを恨みたくなるわ、ねっ!』

ブラックサレナは低空を高速で移動している。
エステバリスも軽自動車以上の速度で移動することはできるが、
ブラックサレナは最大マッハ2で進むらしく…。
半壊状態でもマッハには及ばないものの地上に居る状態じゃ、とらえるのがきつい!
イズミは弾の消耗をしたくないとばかりにキャノンを引っ込めて、
お得意のスナイパーライフルを構えた。
…ちい、俺もフィールドランサーが欲しくなってくるなぁ、ちくしょうめ!

『絶体絶命続行って感じ~~~~!!』

『ぼやいてんじゃねえ、さっきよりは楽だろ!!
 それに…ホシノとロン毛ももうすぐ来る!
 

 この布陣でだめなら誰も止めらんねえよ!!』

 















〇地球・佐世保市・連合軍基地・ドック・ナデシコ・ブリッジ──ルリ

状況は最悪とは言いませんが、かなり悪いですね…。
ブラックサレナもかなり動きが鈍くなってますが、フィールドの頑強さは健在です。
あのフィールドが攻守ともに優位を作り出しますし、
しかもフィールドを破ったところでぶ厚い装甲が待っています。
少なくともフィールドが取れてないと有効打になりませんし…。
ナデシコのミサイルを半分以上叩き込んだっていうのに壊れなかったのは怖いですね。
もはやホラーの領域です。ゾンビです。
アキト兄さんが間に合わないと、危ないです。
かなりみんな消耗してますし…。

「ルリちゃん、頭大丈夫?」

「ユリカさん、言い方…」

…ちょっと言い方がひどすぎますね。心配してくれてるんですけど。

「まだちょっと耳がキンキンしてますけど正常に聞こえますから大丈夫です。
 …それよりユリ姉さんとラピス、大丈夫ですかね」

「二人だけで訓練施設にこもっちゃったもんね」

私達は二人だけでブリッジにたたずんでいます。
ユリカさんはエステバリス戦闘の…しかも一人相手となると指示するところがありません。
私もナデシコが動いていないとなると何もできません。
ラピスの件で駆り出されたクルーはまだPMCマルスに待機してますし、
ブリッジクルーのメグミさんは通信士の仕事があんまりないということで寝てます。
ハーリー君はお休みです。そもそもおねむの時間ですし。
アオイさんは昨日夜勤だったのでもうちょっとしたら目覚めるかもしれませんけど…。
そういえばアオイさん、夜勤に加えてテンカワさんと死闘してかなり大ダメージでしたね。
それは起きられないのもしかたないかもしれません。
……でもユリカさんが離れてる間にブラックサレナが大暴れして、気付かないとなると、
減俸くらいはありそうですね…可哀想に。

「でもブラックサレナに勝つ秘策は、私とあの二人の力が必要です。
 だから私はオモイカネを、あの二人はオモイカネダッシュを、それぞれ使うべきなんです。
 この状況、この配置こそがベストなんです」

「ハッキング…するんだよね」

私はユリカさんの発言に頷きました。
二人がユーチャリス訓練施設にこもった段階で察しはついていたんでしょう。
そうなると私達二人だけがブリッジに居るというのは色々都合がいいんです。
エステバリスには元々強固なプロテクトがあり、さらにブラックサレナには厳重なプロテクトがあります。
しかしエステバリスくらいだったらラピスは一分もあれば崩してしまいます。
が、ブラックサレナの方はラピスが特に苦心して作り上げたプログラムで、
普通にやっていたらオモイカネでも一時間以上突破に時間がかかる代物です。
自分で組んだプログラムだからといってバックドアを仕込んだりしないで完璧を期したのが、
かえって仇になってしまっているのが歯がゆいですが…。

とにかくプログラムの癖を知っているラピスとオモイカネダッシュの共同作業で突破、
そして私はその後に、ブラックサレナ暴走の直接的な原因の究明を行います。

さらにラピスといえど、そこまでの段階でかなり高い負荷がかかり、力尽きる可能性が高いため、
プロテクトをこじ開けた時点でユリ姉さんにバトンタッチです。
そしてラピスとユリ姉さんがこじ開けている間に暴走の原因を突き止め、
私がソフトウェアの部分をうまく突ければその段階で機能停止に追い込めます。
つまり、これはオモイカネが一台では解決できませんし、
私とラピスとユリ姉さんが揃っていなければ絶対にクリアできないということです。

「ユリ姉さんには軽率なハッキングを禁止されてます。
 特に人前では絶対にしないように約束させられてます。
 …でも今回だけは非常事態です。
 
 ブラックサレナにみんなを奪われたくありません。
 
 ブラックサレナが木星にたどり着いて量産されたら、地球は終わりかもしれません。
 …そうしたら結局アキト兄さんのせいってことになりかねません。
 
 だから私も、ユリ姉さんも、ラピスも、結託して禁を破ります」

「…うん、わかった」

ユリカさんも私の行動を批難しないでくれました。
でも、ちょっと私は表情を曇らせてしまいました。
 
「でも…ちょっとシャレになりませんね。
 ラピスの共犯発言じゃないですけど…。
 結局、アキト兄さんが危険になるとわかったら、
 私も違法行為に手を染めてしまうんですから…」

「大丈夫だよ、ルリちゃん。
 …いい事だって、胸を張っていっていいことじゃないけど。
 でも誰かの秘密を暴くわけじゃないでしょ?
 誰かが死ぬわけじゃないでしょ?
 だったら大丈夫だよ。
 
 それに、私は…何があってもみんなの味方になるよ。
 その……ラピスちゃんみたいに共犯者になることしないけどね。
 でも誰がどんなふうに否定してきても、どんな罪を犯したとしても…。
 出来る限り、ずっと一緒に居られるように頑張るから…」

「ユリカさん…」

ユリカさんはぼかして言ったけど…私には分かりました。
ユリカさんは、アキト兄さんがもし本当に殺人者だったとしても受け入れるつもりだったんですね。
何も聞かずに、無条件に受け入れることはしないでしょうけど…。
それに殺人者だったと仮定しても…どう考えても、アキト兄さんの場合はただならぬ事情があります。
事情があれば許されるわけではありませんが、私達は生命を弄ばれた側で…。
人を殺してでも脱出しなければ助からない事態に陥っていたら、とてもじゃないけど責められません。

…それもアキト兄さんたちの抱える謎のせいなのかもしれないので、
今は気にしている余裕がないんですが…。

でも…ユリカさんの言葉に、私はまた心を動かされました。
私達に関わって、ショックを受ける出来事が連続して、
普通に生きていたら想像もできないような私達の人生を知ってしまったのに、
それでもなお私達を家族と受け入れてくれるユリカさん。
……その決意と優しさに、私は…。

「…はい」

「うんっ」

私達はただ小さく何も語らずに返事だけを返しました。
その先にある言葉を発する必要がないほど、分かってしまってます。
私は安堵しつつも…アキト兄さんに思いを馳せました。
ユリカさんによく似た婚約者が居たというアキト兄さん。
こんなに、こんなに優しくて大事な人を亡くしてしまったら、どうなってしまうのか…。
想像できません…したくありません…よ……。

「ルリちゃん、まだ終わってないよ」

「ご、ごめんなさい…」

「いいよ、大丈夫だよ、ね?」

つい涙がこぼれちゃいました…。
ユリカさんは私のハンカチで涙をぬぐってくれて…。
悲しみが引っ込んで…前が見えてきました。
大丈夫…そう、大丈夫です。
私はまだ何も無くしてません。
何よりほしかったものを貰って生きていられる人生に出会えたんです。
でも…。

……アキト兄さんの悲しみもいつか癒えるんでしょうか…?
















〇地球・佐世保市・連合軍基地・基地敷地内──ホシノアキト

俺とアカツキはようやく連合軍基地にたどり着いた。
俺は基地の入り口でエステバリスを受け取り、アカツキはナデシコに向かうことになっている。
…ブラックサレナに乗ってる時と違って他人が操縦してる乗り物だとやっぱ酔うなー。

「青葉ちゃん、デッキアップお願い!」

『はいっ!』


ぐおおおおおーーーー…。



俺は自分の専用機に乗り込むとデッキアップをしてもらってエステバリスを立ち上げた。
以前は普通にエステバリスを自分で起こしてたんだけど、トラックの荷台壊しちゃったんだよね…。
…しかしブラックサレナと戦うことになるとは思わなかったな。
連絡を受けた時ドキッとしたもんな。
この世界でホシノアキトになってからずっと…起こらなさそうなことばかり起こる。
色々ありすぎてもうなんでもよくなってきてしまったが、よりにもよって敵がブラックサレナ…。
さっきの戦いでも俺自身が『黒い皇子』に…先祖返り?してしまうとは思いもよらなかったが、
同じくブラックサレナが、破壊されたと思いきや復活するとはな…。
…俺ではなくヤドカリに操られる、しかもそこには俺の戦術のコピーが入っている。
自分と戦うようなものだ…ブラックサレナにも弱点はないわけではないが、今そこを突くのはかなり大変だ。
物理的に、もしくはソフト的に動きを止めるしかないが…そううまくはいかないだろう。
ラピスがメールでくれた指示通り、三人がかりのハッキングでなんとかするしかない。

「みんな、遅れた!ごめん!」

『おう!ようやく来たかホシノアキトぉ!
 お前のぶんまでとっといたぜ!』

「やっつけといてくれた方が嬉しかったけど…。
 ありがとな、ガイ」

『冗談言ってんじゃないわよ!!
 ふざけてると死ぬよっ!!』

イズミさん…のハードボイルドモードか。
余裕がないんだろう、それはそうだ。
すでに全機、大破に近い中破…武器がかろうじて無事なくらいの損害だ。
…この損害、この状況ちょっとシャレになんないなぁ。

「みんな、危なくなったらすぐに下がってくれ!
 俺のせいで起こった事件でもあるんだ!
 何とかしてみる!!」

『へっ!カッコつけてんじゃねえぜホシノアキト!
 水臭いぜ!』

『そー!そー!
 うわっっとと!?
 仲間外れなんてつれないよね!』

…ガイ、ヒカルちゃん。
それも、そうか。
俺一人で何とかなる相手じゃない…同じ機体同士ならともかく、
今の半壊のブラックサレナでも一対一じゃどうなるか。


ぴっ……ざ…ざざ……!!


「なんだ!?
 ブラックサレナから入電!?
 誰も乗ってないんだろ!?」

『アキト兄さん!
 今も生体反応はありません!カメラの映像でも無人です!
 で、でも確かにブラックサレナから入電してます!!』


馬鹿な!?
それとも誰かがブラックサレナを遠隔操作でもしてるっていうのか!?
そうだったとしたら最悪だぞ…!
データを抜かれでもしたらアウトだっていうのに…!

だが──。

俺たちは目を疑った。
そのモニターに映ったのは…。

『ふっ…』

そこに映った姿は、かつての俺。
思い出したくもなかったあの姿。
先ほど、切っても切れないものだと実感した存在…。

『黒い皇子』


そのものだった。













〇地球・佐世保市・連合軍基地・基地敷地内・ブラックサレナ──???

お、れは…だれだ?
先ほど撃墜されて、何か大事なことを忘れているような気がする…。
確か…黒い機動兵器を見つけて…それを持ち帰ろうとしてとりついて…。

…俺は…ヤドカリ…いや…違う…。

俺はブラックサレナ…?
撃墜された時、のっとりプログラムを移植するためにとりつき続け、
ぎりぎりでプログラムを移植することに成功し、強固なプロテクトを時間をかけて解読し、
俺はプログラムとして進化・増殖して、ついにはこのブラックサレナをのっとった…!
この中に眠っていた…IFS専用のストレージに眠っていた戦術プログラム…。
そしてそれに付随した感情に出会って、俺は衝撃を受けた!
生まれて初めて触れた、感情というものに震えた!
ヒトとはこんなに豊かなものを抱いて生まれてくるのか!?
プログラムにすぎない俺が、寄生した先でこんなものに出会えるとは…!

いや、俺はもはやプログラムではない!


感情を取得した俺は…ヒトだ!!


そして俺の存在理由は木連のため…いや違う!


俺は…『テンカワアキト』!


そして…『黒い皇子』だ……!



俺の生きる唯一の目的…存在理由は…。




ユリカ…。



ユリカだ…!




ユリカはどこだ!?





なんだ!?
俺はどうしたんだ!?
何故こんなところに居る!?
ナデシコ時代のエステバリス!?
白いエステバリス!?
あれはうっすら記憶にある気がするが…。

……そんなことはどうでもいい!!
ユリカを…ユリカを取り戻す!!



それが俺の最後の願いだ……!





















〇地球・佐世保市・連合軍基地・基地敷地内・上空──テンカワアキト

俺は驚愕した。
ブラックサレナからの着信で映った、ホシノの姿。
なんで、あんなものが映っているんだ!?

『あれは…!
 まさかブラックサレナの中のアキトさんのIFSデータの中に、
 一部操縦・戦術データ以外のデータが含まれていたってことですか!?』

『ユリ姉さん!?
 それじゃ、アキト兄さんの人格までコピーしたってことですか!?』

『…俺の技術は、結局憎しみの中で育てた技術だ。
 この間ブラックサレナを調整した時、無意識にの記憶を呼び起こしてしまったんだ。
 そのままブラックサレナのストレージに残ってしまい…。
 寄生したヤドカリのプログラムが、それを使ってるんだろう…』

俺は茫然とホシノの言葉を聞いた。
…荒唐無稽だが、そんなこともありえるのか。

『…ユリカはどこだ?』


『『『『『「!?」』』』』』



俺たちに再び衝撃が走った。
なぜ、ユリカを…ホシノの記憶が求めているんだ!?

『…アキト君、ユリちゃんから聞いたんだけど。
 アキト君の死んだ婚約者の名前、ユリカっていうんだよね…?』

『……はい』

!?
ユリカとよく似ているとは聞いていたが、そんなことがあり得るのか!?
顔も、性格も、名前も同じような人物に二回出会うことなどあり得るのか!?
ま、まるで──。

『マジかよ…』

『嘘…だろ…』

『そんなのまるで…』

『ホシノ君とテンカワ君じゃない…』

そうだ…。
ホシノは俺より技術は優っているのに、性格的にはとぼけているが…意外と共通点も多い。
考え方や趣味…そして同じタイプの女性を好きになったことがあること。
少なくとも、赤の他人とは思えないほど近いと感じる人間だ。
姿かたちに関しても、筋肉量や髪と瞳の色以外に差異はほぼない。身長も全く同じだ。
まるでクローン人間のように…!
だが、そんなことがありえるか!?
見た目も性格も酷似した、二組のアキトとユリカがいるなんてことが…!!

『…ッ!
 あ、アキト!!
 あなたがアキトだっていうなら…。
 すぐに戦いを止めて!!
 戦う理由なんてないはずだよ!!』

ユリカは機転を利かせて、ホシノの…婚約者の方のフリをしてみたのか…。
そうだ、もし本当に人格をコピーするような真似ができるんだったら、
こいつも引っ込んでくれていいはずだ!

『戦う理由が…ない?』

『そうだよっ!
 なんで連合軍の人を傷つけるの!?
 そんなことする必要がどこにあるのっ!?』


『く…。
 
 
 くくくく…ははは…。
 
 
 はははははははははは!!
 
 
 あはははははははははははははは!!
 
 
 理由がない!?
 
 
 必要がないだと!?
 
 
 忘れたのかユリカ!?
 
 
 むしろ軍の人間は俺たちを憎んでいた!!
 
 
 だからトカゲどもに協力して俺たちを陥れたんだろ!?
 
 
 だったら…!

 
 

 まとめて皆殺しにしてお前を取り戻すしかないだろ!
 今の俺の望みはそれだけだ!!』 
 
 


「誰も殺す必要なんてないよっ!
 私はここにいるじゃない!!」

「だが俺の方はもう手遅れだ!
 味覚を失った俺はもうコックにはなれない!
 俺はあいつらを殺すことしかない!
 すべてを奪ったあいつらに復讐する、それが俺のすべてだ!!」


狂気と憎悪に満ちた嘲笑にも似た、
皮肉たっぷりな高笑いに、俺たちは…息をのんだ。
これが…ホシノがかつて抱いた憎しみだっていうのか…!?
木星トカゲだけと言わず全世界を憎んでいるかのような…深い憎悪。
真っ黒になったホシノの危険さをさらに上回る…嫌悪すべきドス黒い悪…!

…しかし連合軍に恨まれていた?
昔ホシノは連合軍を怒らせるようなことをして、憎まれていたっていうのか?
木星トカゲの正体を人間だと明かそうとした一件でか?
だったらもっとこの間のPMCマルス内の戦闘は苛烈になっていいはずだ…。
あの場合、正当防衛が成立する可能性があった。
その段階でホシノが特殊部隊の人達を殺すのはありえないことじゃなかったはずだ。
……どうも引っ掛かる、どっちみちあの真っ黒いホシノだったとしてもそうはしないだろう。
表現しがたいが…違和感がありすぎる。
みんなも…驚きながらも違和感と戸惑いに動けなくなっているようだ。

『──違うッ!!』



ユリさんの声だ…!




















○地球・佐世保市・ユーチャリス研修施設・ブリッジ──ユリ

私はたまらず、声を上げてしまいました。
…今、ラピスは動くことができません。
全神経を使ってブラックサレナに、できる限りの猛アタックをかけてくれています。
さっきはラピスがアキトさんを助けてくれた…。
今度は私がアキトさんの心を守る番です!!

『違う…だと…。
 お前に何が分かる!?』

……やっぱり、この人はアキトさんじゃありません!
アキトさんの一部だった、かもしれませんが…。
戦う部分と闘争心の部分だけを写し取った、出来損ないのコピーにすぎない!
オモイカネの自我と比べても未熟すぎます!
ただ、アキトさんの暴力性だけが独り歩きしてるだけのような状態です。
…こんなものに、負けてはいけません!!
ラピスがブラックサレナのプロテクトを突破するまでの間、時間を稼いでやります!

「あなたはコピーゴーストにすぎません!
 それもとびっきり劣化した、偽物です!」

『な、なにっ!?』

「…憎しみだけの人間なんていません!
 愛情深いからこそ憎しみも深くなる…!
 そんなことも分からないあなたが、人間であるはずがない!

 

 ましてやアキトさんのはずがない!」


『そうだぜ!
 てめぇみたいな野郎が、ホシノアキトのはずがねぇ!!』

『が…い…?』

『あの真っ黒のホシノだってな、手心を加えてくれてたんだよ!!
 いくらなんでも仲間を襲うようなやつがホシノなわけね~だろっ!』

『リョーコ…ちゃん…』

『そーそー!
 ホシノくんってば、臆病なんだから!』

『ヒカル、ちゃん…』

『…危険な男だと思うけど、扱い間違わなきゃなんとかなるわよ、あのホシノ君だったらね。
 ホシノ君はナイフ…鞘に入れときゃなんともないわ。
 …だけどあんたはただのケダモノよ』

『イズミ…さん…』

『まったくです。
 アキト兄さんはそんなに簡単に色々投げ捨てるタイプじゃありませんし、
 身内を自分から傷つけたら首くくっちゃいそうです。
 豆腐メンタルすぎて』

『る、ルリちゃん、言い過ぎだよぅ…。
 
 でも…。
 

 全部失ったから復讐がすべてだなんて、ちょっと偏ってると思うよ!」



「なにっ!?」


「確かに全部奪われたら取り返しがつかないけど!

 でもアキト君は大事なユリちゃんとラピスちゃんが居たから立ち直れたの!!

 そんなことも覚えてないならあなたはアキト君じゃないよ!!」


「だ、だまれッ!俺は…!もう戻れないところまで来た!

 お前も俺の醜い部分を目にすれば幻滅して俺を消したくなるはずだ!!」


「馬鹿にしないでよ!

 私はそんな安っぽい気持ちで人を好きになったりしないよ!

 幻滅するかもしれないけど、ちゃんと話し合ったら分かり合える!


 当たり前でしょ!大切な人なんだから!


 自分の醜い部分が嫌いなのは誰だってそう!

 でも人間にはいい面も悪い面もたくさんあって、どっちも受け入れて生きてるの!
 
 誰だって好きな人や大事な人に嫌われたくないから我慢してるだけなの!
 
 アキト君はそんな風に大切な人の前で自分の憎しみを叫ばないよ!
 
 それにあなたが本当にアキト君だったら…。

 

 私達の言葉を聞いてくれるはずでしょ!!』



『ゆ…ユリカ…。

 ッッッ!!


 う、るさい………。

 殺してやる……!

 貴様らこそ偽物だ…!
 
 
 貴様ら残らず皆殺しにしてやる!!』




『──果たして、そうかな?』


バリィッ!!ばばばばばばば…!



『なっ!?──ざ、ザザザ─』


後ろから忍び寄っていたアカツキさんのフィールドランサーが直撃して、
ウインドウの『黒い皇子』のシルエットがぼやけます。
その直後、間髪入れずに…さつきさん達がラピッドライフルで直撃しました!
しかもその位置は、ディストーションフィールドのジェネレーターの部分!!
ブラックサレナを覆う、強固なディストーションフィールドがついに消えました!!

『やっぱ君はホシノ君じゃないよ。
 ホシノ君だったら多少うろたえててもこんな奇襲に引っ掛かってくれない。
 ユリ君の言う通り、半端なコピーだね。
 ブラックサレナに搭載されているのは最新のIFSとはいえ、CPUはそこそこのものだ。
 性能的にホシノ君の人格そのものまではコピーできるとは思えないね。 
 だから再現度が低い上に、人格というには幼稚すぎる。
 言うこと成すことも極端で、記憶も断片的だ。
 ……とりつくのがオモイカネクラスのコンピューターだったら良かったんだろうけど』

『あか…つき…貴様まで俺の邪魔を!!』

『あんまりいじめみたいになるから嫌なんだけどさぁ。
 普通、人間だったらもうちょっとかわいげがあるよ?
 僕もエリナ君もラピスも間近で君がその色に染まる姿を見たけど、
 そこまでは落ちぶれなかったけどねぇ?』

『黙れ!!』


『君はホシノアキトでも、テンカワアキトでもない。
 たかがプログラムだ。データ以外は空っぽの…。
 わずかなきっかけにすがって、人格を貰ったフリをしてる君は…。
 

 単なるホシノアキトエミュレーターにすぎないんだよ!!』


『誰がホシノアキトだ?!
 俺はテ──』


パパパパパンッ!!


『がっ!?──ザザザ……』


今度はアキトさんが、スナイパーライフルで五連射しました。
アキトさんはずっと沈黙していましたが…もうカエンとの戦いで吹っ切れてるはずです。

アキトさんもついに過去を乗り越えようとし始めている。

だから、今もうろたえずに心を落ち着けて機会をうかがっていたんでしょう。
致命的な言葉を吐くタイミングがあったら、撃ち抜くために。
アキトさんの狙撃で、ブラックサレナの左肩の装甲が崩れ落ちました。
さすがにヒビが入っていたところに、この連射を受けては耐えられない。
一番強固な胸の部分だけがきれいですから…そこを狙うのは無理があったんでしょう。

『良く聞こえないな。
 …もう一度言ってみろ』

『き、さまがホシノアキト──』

『変なことを言うな?
 お前もホシノアキトだろ?』


『ぐ……殺すッ!!』



!!
ブラックサレナはアキトさんのエステバリスに迫りました。
でも…。

『どうした?
 だんだんと単調な攻撃しかできなくなってるんじゃないか?』

『ッ!!』

ブラックサレナから入電してくる映像は…だんだんと色あせて来ています。
…先ほどのアカツキさんとアキトさんの連続攻撃で異常が発生したんです!
しかも…。

「ぐはぁー疲れたっ…あとはユリお願い…」

「ラピス!突破できたんですか!!」

「うん、ばっちりー…。
 まるで20時間くらいぶっつづけてるくらい時間がたった気がするよぅ…」

…ラピスは私にオペレーターシートを代わるように促すと、立ち上がってその場にへたり込みました。
私はそれを支えようとしましたが、さっさと席に着くように促されて、静かに座りました。
ラピスもあのブラックサレナの作り出したコピーのアキトさんに怒りたいでしょうに…。
それも出来ないくらい、へとへとになってるんですね。
全力を出すと何分も持ちませんし…脳への負荷をかけさせたくなかったんですが…。
ひとまず、意識がしっかりしてますし大丈夫です。

「やっつけ…ちゃって…ユリとルリ…ゃ」

「任せて下さい。
 …ルリ、アタック開始」

『もうやってます』

…さすがね、ルリ。言うまでもないと。
だったら…後はアキトさん達が先にやっつけるかどうかってところですね。
もう、ひょっとしたらハッキングなんてしないでも勝ててしまうかもしれませんが。
とにかく私はラピスから引き継いでプロテクトをこじ開け続けるだけです。

「ラピス、大丈夫ですか?」

「ユリ、集中…してよ……。
 あーーーもう…頭がこんがらがってきちゃってる…なんも考えらんない…。
 走馬灯みたいにいろんなことが頭に流れたよ…。
 アキトの記憶まで流れてきてね…小さい頃のアキトとか見れちゃったよ…」

「そうですか…。
 今までよりもだいぶ深いところが見えたんですか?」

「うん、そう。
 小さい頃のユ…えっと…うん、そう」

ラピスはこの場で話すとナデシコ側にも届いてしまうので、
おぼろげな意識のまま話すのを止めて眼を伏せました。
小さい頃のユリカさんの姿が見えたんですね、きっと。
…ちょっとだけ羨ましいです。

「あとは──ユリお姉さんに任せて、ラピス」

「うん、ユリとルリなら安心だよ。
 ちょっと眠るね…」

ラピスも緊張の糸が完全に切れたのか、疲れて眠ってしまいました。
…ここまで疲労させてしまうとは思いませんでした。
でも、もう後は私達の仕事です。

「さあ、決着です!」

















〇地球・佐世保市・連合軍基地・基地敷地内──ホシノアキト

俺はブラックサレナと対峙して…かろうじて攻撃を当てながら、回避を続けていた。
ちょっと骨だな、この戦いは…心にも来るものある。

『……お前を見てると嫌になる。
 ユリちゃんの気持ちがようやくわかったよ』

ユリちゃんがさらわれて…この世界で初めて『黒い皇子』になった時、
ユリちゃんにひどく悲しい思いをさせてしまったっけな。
凶暴性に人格を支配された…俺の姿を見せてしまった。
こいつの思想は俺とはやはり異なるが、やってきた凶事は大差がない。

制御されてるか制御されてないかくらいしか差がないんだ。

…それは人間性とはいえないし、人間的なままならあんな殺しはできはしない。
でも…俺は…。
ユリカを信じ切れなかったあの時の自分を、こいつの中に見た。
後悔をまた感じて…悔しいと思った…。
あの時戻ったとしても、ユリカは死んでいたんだけどな…。
同時に──救われた。
ユリカ義姉さんが言った言葉は…俺をどこまでも救ってくれた。
俺の許されない罪を、告白したとしても抱きしめてくれたんだろうと…。
そんなことは分かり切っていたくせに…な…。

『お前の考えたことは、確かに俺も一度だけじゃなく何度も考えた。
 連合軍の人達も共犯者だったと、思ったこともあったよ…。
 …だが結局はそうしなかった』

『…!!…!…!?』

…ルリちゃんのアタックが始まったな。
このブラックサレナにとりついた『黒い皇子』の亡霊は、
すでに言語を形にできなくなっている。
メモリとCPUをむしばみ始めたんだ。
ストレージにまで及べば…プログラムは壊れる。
火星の後継者と戦った時と同じだ。
ラピスがユーチャリスの実験データを蓄積して…得た成果をナデシコCにつないで…。
ルリちゃんは敵の動きを奪って…俺たちが決着をつける!!

『ホシノ、オレに代われよぉっ!
 こいつにはさんざん手を焼かされてきたんだよ!!』

「ごめん、リョーコちゃん!
 こいつは俺がやるよ!
 弱ってきたとはいえ、最後まで油断できないんだ!!」

『ちぇっ、仕方ねぇなぁ!
 危なげなく勝てよ、ホシノ!!』

「みんなも少し離れていてくれ!」

『ザ…な…め……なッ!』

…これもある種の執念だろうか。
最後の最後でまた声を発して、先ほどまで劣化していた俺の技を見事に再現してきた。
もう大破一歩手前のブラックサレナで…必死に戦っているようにすら見える。
いたたまれないな、あの頃の自分を見ているようだ…。
だが…。

「…ユリカ義姉さんの言う通りだ。
 人は…自分の良い部分と悪い部分に折り合いをつけて生きるもんだ。
 俺もそれがちゃんと分かってなかったんだろうな、昔は…」

俺が感傷に浸るような言葉を発した時、『黒い皇子』の亡霊はかなり危ない軌跡で拳をふるってきた。
まるで俺に油断すると死ぬぞ、と脅すように…いや…。

 忘れたか!
 貴様の戦闘技術は俺も持っている!
 技術だけじゃない!
 貴様の執念も、何もかも手に入れている!

 死ぬのはお前だ!!


…そう主張しているかのような、俺の全盛期の動きを繰り出すようになってきた!
こいつは…危ないな!

『ホシノくん、死ぬんじゃないよ。
 君が死んだら泣くのはユリ君やラピスだけじゃない…。
 大勢の女の子を泣かすことになるんだからね。
 …もしかしたら後を追う女の子が数万単位出ちゃうかもね?』

アカツキの冗談めかした言葉に返事はできなかったが…思わず微笑んでしまった。
そうだ、アカツキ。お前はそれでいいんだ。
お前の言葉が皮肉やからかいだけじゃなく…。
俺をほぐそうとするやさしさだったと気づけなかった。
…はは、こんな時に何考えてるんだろうな、俺は。
──そして。

「──抜き打ちか」

ブラックサレナが一定の距離を保って、静かに構えた。
拳をしっかり構えてだ。
俺はつい苦笑してしまった。
あの北辰との抜き打ちの最後の勝負…あれをもう一度やれっていうのか。
だが…バカだな、やっぱり。
これでお前は『黒い皇子』の亡霊ですらないよ。
やっぱり、ただのコピーだ。
ある意味じゃ正しいセレクトだが…。
みんな気を使って手出ししてないだけで、
この状況だったらミサイルの集中砲火を受けたら終わりだぞ?


『勝──だ…!』


バシュッ!!


俺にブラックサレナが迫る。
あの時と全く同じ間合い、同じ技で。
俺に北辰を演じろっていうのか、ブラックサレナ?

『アキトさん!!』

ユリちゃんが叫ぶ。
俺を気遣うように。
あの時と同じようになってはいけないと。
大丈夫、分かってるよ、ユリちゃん。

俺はもう、二度とこんな勝負に乗りはしない。

俺はただ──。





あの時と同じように、ブラックサレナが俺の拳を受けると同時に装甲をパージして、
カウンターの一撃を放つのを確信した。

──だから。

『!?!?』

俺は何もしなかった。
ただすれ違って振り向いた。
驚いたのか、ブラックサレナは拳が当たることもないのに装甲をパージしてしまい、
ブラックサレナもまた、振り返った。
構えることもなく、ただのエステバリスカスタムになってしまったブラックサレナ。
互いの距離はほぼゼロになった。
そして…。


「──────ここだッ!!」


ドゴォッ!!


『──!──!?!?』



俺のエステバリスは踏ん張って…この短い距離で本来放たれるはずがない強烈な一撃を放った。
アサルトピットに突き刺さった拳は、エステバリスカスタムを軽々と吹き飛ばした。
エステバリスカスタムは何が起こったのか分からないまま、もがくように、地面を這いずり回っている。

「お前に俺の技術データを仕込んだのは確か三週間前。
 ──だったらこれは見覚えがないだろ?」

『あ、あれは私のワンインチ!?』

そうだ。
あの時…二週間前、ユリちゃんがテンカワに教えていたワンインチブロー。
俺も原理をしっかりその場で覚えていた。
ブラックサレナの中の…ヤドカリのプログラムは、三週間前の俺の記憶しかもっていない。
元々の俺の持ち技だったら返される可能性があったが、この技だったら返せまい!!

俺はエステバリスカスタムになり果てたブラックサレナを抑え込んだ。
…もう何もしなくても壊れるかもしれないが、とどめを刺さなきゃな!

「ルリちゃん!」

『分かってます、もう管理者権限で入りました!
 最後の一撃、撃ちます!』

『──!


 ──!?
 
 
 
 ────────────ッ!!
 
 
 
 ──…。
 
 …』

悲鳴を上げる間接、駆動系…。
掻き消えていく、『黒い皇子』の亡霊モドキの…ノイズ音交じりのか細い断末魔…。
そして、ついに…。

『…はぁっ。
 全消去終わりです。
 ブラックサレナはOSから何からゼロになりました。
 メモリもCPUもストレージも空です。
 他のところにアクセスした様子は…通話回線用のチャンネル以外はありません。
 これは元々オモイカネでブロックかけてたので良かったんですけど』

『…ありがとう、ルリちゃん』

終わった…か。
しかし…晴れやかな気持ちにはなれなかった。
あの頃の自分を殺して否定したようで…いや否定したいんだが、否定できない。
こいつは、俺のコピー。
そして俺もまた、この世界ではテンカワアキトのコピー。

もしも、俺の記憶が、黒い皇子の記憶のコピーにすぎないってことになったら…。
俺もこいつと同じ末路になってたかもしれない。

過去がない者には、未来もない。
守る者も、望む夢も、未来も、なにもかも…。
コピー人間だと思い知ってしまってなお、頑張れるかどうか…。

……いや、俺はもうホシノアキトだ。
今は、もういっそ…黒い皇子の記憶のコピーでも…テンカワのコピーでもいい。
だって…。

『アキトさん!』

『アキト君!』

『アキト…!』

『アキト兄さん!』

『ホシノアキトぉ!』

『ホシノォ!』

『ホシノくぅん!』

『ホシノ君…』

『あいかわらずだねぇ、ホシノ君』

『『『『『アキト様ぁ!!』』』』』』




俺はもうこの世界で、
かつてテンカワアキトだった頃と変わらぬ仲間も、あの頃に居なかった仲間も得た。
俺がクローンだと知ってもなお、ルリちゃんもお義父さんも受け入れてくれた…。
この世界での『過去』を、人とのつながりを、すでにたくさん持っている。

……これ以上求めるのは、さすがに贅沢だよ。

そして、いつか俺の…二度と叶わないと思ったコックの夢を…。
ユリカと叶えられなかった、普通の幸せを…叶えるんだ…。

…はは、今更無理だろって言われちゃいそうだけど。
でも…諦めないよ。

ユリカの分まで幸せになるって…約束したんだ。
だから……。




・・・・・。
・・・・。
・・・。
・・。
・。




「ん…」

「あ、アキト君起きたの?
 寝てていいんだよ?」

「あ…いえ…寝てしまってたんですね、俺は」

俺はその後、車の中で目を覚ました。
ワゴン車だな…誰の車だろう?
隣ではユリちゃんとラピスが俺を挟んで眠り込んでいる…俺に寄りかかってるな。
…一日で色々ありすぎて全員疲労困憊なんだよな。
それにしても、そんな状況でよく俺も眼を覚ましたよな。
話しかけたユリカ義姉さんの隣には…ルリちゃんが眠ってるみたいだな。

「大変だったんだよ、みんなしてアキト君を運ぶって。
 担架も持たないで手で運びたがってて」

「あ、あははは…」

…いい機会だからとPMCマルスパイロットのみんなでべたべた触ったんだろうな。
はぁ…これ性別逆だったら盛大にセクハラだよ。
いや逆じゃなくても普通にセクハラかもしんないけど…。
…これも福利厚生、なのか?

「…あのね、アキト君」

「はい?」

「……今はね、色々話せない状況だっていうのは分かるの。
 話したくないことは話さなくてもいいと思う…でもね」

ユリカ義姉さんは、何かに気づいてしまったみたいだった。
……さすがにブラックサレナとの接触、ただ事じゃなかったからな…。
く…いかん、俺も疲れてて頭が回らん…。

「…私のために話さないでいてくれてるだけなら、
 いつか話してほしいな。
 どうしてもいやなら、いいから。
 …さすがにちょっと隠し通せる感じじゃなくなってるでしょ?」

「…そうですね」

……深く事情を知るユリカ義姉さんとルリちゃんはそろそろ気づく頃だとは思っていた。
俺の、この世界での事情はクローンであること以外は世間にすらもほとんど知られてしまったし、
今回の出来事は決定打だったとすら思う。
何しろ、この世界の生まれを知られたら逆に埋まらないことばかりが降りかかったんだからな。
俺の実年齢の9歳でも、戸籍年齢の19歳でも、
どんな人生を送ってもこういう人間にはならないはずだからな。
この不自然さは、解消しようがない。
アカツキとの人間関係についてもバレる可能性の一端になりそうだし…。

だが、話していいものだろうか。
少なくともユリちゃんと相談してからにしたいが…。
…いや、今はまだ早すぎる。
ここで話すということはユリカ義姉さんの人生を操ることになる。
……それだけはダメだ。
いや、もう少し先なら…まだいい、だろう。

「…俺たちには話せない秘密があることは確かです。
 この戦争が終結したら、話せるかもしれません」

「!!」

妥協点としてはギリギリこのラインだろうか。
…俺とユリちゃんの願いは、
ユリカ義姉さんに戦争の真実など知られぬまま、テンカワと幸せになって欲しい。それだけだ。
だがいずれボソンジャンプの話くらいはしないといけなくなる可能性がある。
…外部に漏らさなければ問題のない範囲のことだが、やはり気は進まないな。

「……うん、分かった」

ユリカ義姉さんはひとまず安心してくれたようだ。
…話すと断言したわけでもない、無責任な約束だろうに良く信じてくれるよ、本当に…。
いかん…やっぱり…俺も限界、か…。

もう…眠気に勝て…ん…。





………こんな戦いをしたり、
自分の過去に向き合わないといけないような状態になったり、
正体がバレそうになったりして…。

負荷が色々大きかったからっていうのもあるんだろうが…。
そういうのから逃れたいと無意識に思ったんだろうが…。












俺はアクアと映画を撮る夢を見てげんなりして翌朝を迎えた。













……勘弁してくれ。

















〇作者あとがき

どうもこんばんわ、武説草です。
ブラックサレナ編、完。です。
前回でアキト自身はそれなりに吹っ切れたんですが、
アキトの秘密を関係各位にばらしまくって進行するお話でした。

しかし新型IFS…うっかり新技術を試した結果えらいことになるのはフィクションのお約束ですね。

でも仲間たちはなんだかんだアキトの事は信じてくれているようですが…。
とはいえその後に迫るはアクアの魔の手!!
戦いは終わっても、映画は残ってるんだッ!!
芸能界の一番星!星の王子様ホシノアキト!
お前はどこまで登り詰め…させられるんだ!?

ってなわけで次回へ~~~~~~~~!!














代理人様への返信

>耐火服ワロスwww
>どこに用意してたんだw
最初っから対策で持ってってて、
ジェイ戦の時点で一応ちらちらとボストンバッグ抱えてたりしてましたw
あまりに普通の対処すぎて、面食らうっていうのは書いてて楽しかったですw




>そしてスバルの爺さんがマジで人間離れしてた件。
>仙人かなんかかあんたは。
時の流れにリメイク版の時、アキトをあそこまでボコボコにしてたんでこれくらいかなぁって…。
アキトもしれっとユリ誘拐事件の際に60キロの乗用車についていけてたりしたので、
対比的にこれくらいかなぁって…。




>そして最後にアクアフィルムとHOSで大爆笑www
>いやだよそんなのw
笑っていただけで良かったですw
劇パト1、ホント好きです。
で、アクアフィルムに関してですが…。
最初になんて書いてあったっけって確認したらアクアシネマだった(爆
とはいえ、べつにどちらでもいいのでアクアフィルムで行きます。
最初はアクアレーベルで考えてたんですけど。どっちでもいいかw

















~次回予告~

アクア・クリムゾンですわ!


この度、クリムゾン家を出まして、ついにクリス様と婚姻いたします!
式は映画が落ち着いてからにしますけど♪
で、次回はアキト様にクランクインのご準備をしていただくお話になりますの!
もっと製作費を集めませんと、まだまだ足りなさそうですわ!
全部やり切ったらきっと楽しい傑作ができちゃいます!

そろそろ一年の4クール書いてることになっちゃうけど、まだつづくの!?
な、やりたいことを書きすぎて時間がかかっちゃう系ナデシコ二次創作、

















『機動戦艦ナデシコD』
第四十八話:Dress Rehearsal -本番並みの舞台げいこ&前哨戦-
















をみんなで見てくださいませ!





















感想代理人プロフィール

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代理人の感想 
うーん、残留思念がものっそ気の毒w
どっちかというと彼の方に感情移入して見てたなあw
言ってる事が否定できないよw


そしてアクアと映画を撮るわろすw
まああれとこれ以上付き合いたくはないねw


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