〇???
とある特殊な暗号化されたプライベート回線に通話が開かれている。
軍の上層部の人間をも含む、かなりの大企業の要人、政府要人などが集まっている。
クリムゾンを筆頭とする、木連と手を結んで利益を共有するために同盟を結んでいる人物たちである。

「佐世保市民をけしかけて暴動が起こるように仕向けてこのありさまだと!?
 ここまですれば和平交渉だって決裂するだろうに!
 私刑同然に木連の連中を殴らせる暴挙を侵しながら、
 逮捕されもせずに無罪放免、それどころか草壁も木連本国も抗議なしだと!?
 
 どうなってるのだ一体!?」

「貴様が抜け駆けして佐世保市民をけしかけたのがそもそもの間違いだ。
 手段としては良かっただろうが、結果はこの通りだ。 
 …ゲキガンガーだか熱血だかなんだかしらんが、
 木星の奴らはどうもフィクションと現実をごっちゃにし過ぎる節がある」

『ホシノアキトのこともそうだろう。
 映画で世界を革命してしまうなどと誰が考える。
 
 …地球では『ダイヤモンドプリンセス』、
 木星では『ゲキガンガー』か。
 
 どうやら現実から目を背けたい連中ばかりのようだな』

『もはやホシノアキトが望めば殺人すらも許容しかねないな。
 それも英雄らしいといえばらしいが。
 本当はそれで戦争を起こすのが好ましいところだが、奴はなびかないだろう。
 
 …もはや我々の方が現実から目をそむけたくなってきたがな』

彼らは呆れては居たものの、以前のようなため息交じりの会議ではなくなっていた。
その理由はクリムゾンの冷静な態度だった。
今までもこの会議の中心人物として引っ張っていたこともあるが、
ここまでの事態になっていてなお、策が有効であると主張し続けていたからだった。
そして今回も──。

『だったら、ズタズタに引き裂いてやる。
 例の始末屋の考えた策に少し手を加えてやればいい。
 それだけで地球と木連の間を完全に引き裂き、
 ホシノアキトも起不能になるほど打ちのめすことができるだろう』

『ずいぶんと自信があるようだが…大丈夫か?』

『ああ。
 蟻地獄に落とし込んでやろう。
 …連合軍に手を回させろ。
 

 木連の奴らに「禊ぎはまだ終わっていない」と伝えろ…!』


















『機動戦艦ナデシコD』
第七十話:Dance!-舞踏会-その2



















〇地球・東京都・アカツキ邸──ホシノアキト
俺は少し二日酔いで頭が痛いのを我慢して軽く身支度を済ませた。
かなり早い段階で寝てしまったので睡眠時間は足りてる。
とはいえ早朝に出なければ間に合わないからな……だが。


『アキト兄ィーーーッ!
 迎えにきたよぉーっ!』



「おおーブローディアのサポートOSのディア、良い仕上がりだねぇ。
 オモイカネシステムほどじゃないけど、
 ハッキングや自衛機能の判断力を持たせる上では、
 人格を持たせた方がいいっていう話は疑問だったけど、
 こういう時に便利だね」

「ブローディアが危なくなっても逃げさせたり、停泊させたりするのも容易になるでしょ。
 だから無理に採用してもらったの」

「アキト君の座標が分かればどこでも呼び出せるシステム…。
 …ここまでしてもやりすぎじゃないっていうのは気が重いでしょうけど」

……全くだよ。
こんな近所迷惑な送迎があってたまるか。
もっともアカツキの家の周りの人は察しがついたのか歓声が聞こえてきた。
どこへ行っても注目される立場ってのは困ったもんだ。
そして俺は、佐世保に向かってブローディアを飛ばした…。

そうだ、ブローディアの中なら一人だしラピスに連絡をしておくか。
ここんところ、夢での会話もできなくなってたのは気になるけど…。
幸い、緊急連絡用に例のペンダント型通信機はまだ持ってる。
ラピスもいざという時のためにまだ持ち歩いてるはずだ。
通話のセキュリティ強度も申し分なかったはずだし…。
だったら…。

「ディア、ちょっと通信するから話しかけないでくれるか?」

『んー?
 構わないけど?
 それじゃオートパイロットで操縦しとくから。
 あ、一応航空機と連合軍の航空管制にも連絡は行ってるから。
 行きも騒ぎにならないようにそのへんはバッチリだよ』

「あー…ありがと」

…そういえばその辺気にしたことなかったな。
ブラックサレナで佐世保からミスマル家に戻る時も気を回してもらってたし…。
お、俺ってやつは周りにおぜん立てされすぎだろ…。

「ラピス…?
 起きてるか、ラピス?」













〇地球・ピースランド・王城・ラピスの部屋──ラピス
…眠れないなぁ。
明日みんなが迎えに来てくれるっていうから、楽しみで眠れない。
帰還パーティと映画大成功のお祝いもするっていうし。
でも、結局アキトとユリちゃんにどんな言い訳をすればいいか思いつかなかった…。
思い返せば思い返すほど自分の愚かな考え方にため息が出ちゃう。
…アキトとユリちゃんが笑って許してくれるのを期待している私が居る。
そんなバカな私がとっても嫌い。
それでもそんな自分への嫌悪感も吹き飛んでしまうほど、
二人と会えるのが嬉しかった。

私は生きている。
それも、誰も呪わないで居られるくらいには安定した心を取り戻して。
……嬉しくないわけないよ。
二度とこんな風になれないって思ってたもん…。

『ラピス…?
 起きてるか、ラピス…?』


「あっ!?
 あ、あ、あ、あ、アキッ…」



アキトの声…!
ずうっと聞きたかった…。
二度と聞けなくなるはずだった、大事な大事な愛しい声。
私はバタバタと慌てて、枕元に置いておいたペンダントをひっつかんだ。
間違って通話を切らないように気を付けて、しっかり握りしめた。
アキトが自分から連絡くれるなんて滅多にないもん…。
しかもユリちゃんは隣に居ないみたい。気を遣ってくれたんだ…。

『……ごめん、すぐに会いに行けなくて。
 トラブルがいっぱいあってさ…。
 ……大丈夫か…いや、大丈夫じゃないよな…。
 …俺のせいで、ラピ…ユ…」

「う、ううん、いいの。
 ラピスでいいよ、誰かに聞かれたら困るもん…。
 それより……聞いちゃったの?
 私がしようとしたこと…」

『…ああ。
 オモイカネダッシュに怒られたんだよ…。
 みんなに遺す予定だったメッセージビデオを見せられてさ…』

胸の奥がぎゅってなった…。
知られたくなかった…こんなひどいことを考えていた私のことを…。
こんなバカで、どうしようもない私のことを知られちゃったなんて…。
私ってみじめ…何をやってもうまくやりきれないんだもん。
これじゃ愛想つかされても仕方ないよ…。

「ひっ…ぐずっ…」

『…泣かないでいい。
 俺のせい、だから…』

「違うよぉっ!
 私があんなひどいこと…。
 勝手にしようとしたんだから、アキトは関係ないよ…」

……アキトのためにしようとしたことだってもうバレてるなら、
こんなこと言ってもなんのフォローにもならないって分かってる。
アキトは自分のせいで私がひどいことをしようとしたって、やっぱりそう思ってるんだ。
でも私の考えてた救いのない、ひどい計画をアキトが背負うなんて間違ってる…。

『……いや、違うんだ。
 そっちに行ったら詳しく話すけど…。
 とにかく、ラピスのせいじゃないんだ』

「違わないよ…。
 私、ひどい子だもん…」

…ミスマルユリカとしてナデシコに乗っていた頃。
自分の行動の重さに、責任の重さに気付けなかった。
そして、人が相手だと分かった時に…退く選択だってできたはずなのに。
それをしないで、私らしくあることを優先した結果が、あの虐殺だもん。
威力のある兵器を使えば人が死ぬって、分かり切ってたのにね…。
引き換えせるタイミングなんてたくさんあったのにそうしなかった。
そんな愚かな私が、アキトに気遣ってもらう資格なんて…。

『…。
 ラピス、聞いてくれ。
 お前は俺のどうしようもないところを押し付けられたんだ』

「え?」
 
『ボソンジャンプの時、意図的そうされたんだよ。
 …俺が、どうしてこんなに立ち直って…能天気に生きてこられたか、分かるか?
 お前が俺の狂った部分を持って、抑え込んでくれてたからなんだよ。
 ……そのせいで、ひどいことを考えてしまっただけなんだ。
 
 こんなの、こじつけとか推測だと思うだろ?
 そうじゃない…そうなってしまった理由があるんだ…。
 そっちに行ったらちゃんと全部教えるから。
 
 だからラピスは気にしないでいい。
 
 お前を泣かせたくないからとか、
 励ましたいからとかで嘘をついてるわけじゃないんだ。
 理由が分かったら、気にしないでいいってわかるはずだから…。

 ……頼む、俺を信じてくれ』

「あっ!?
 え、えっと…」

アキトは、昔の…不器用な頃が嘘のように、男らしくっていうか…。
冷静で温かい、優しい言葉で私を諭してくれた。
私はただ、そんなアキトの力強い言葉にうろたえて戸惑うことしかできなかった。
この世界ですごい変わっちゃったのは分かってたけど、こんな風に言ってくれるなんて…。
嬉しくて、頼もしくて…でもなんて答えていいか分かんなくなって固まってしまった。

『…ダメかな、こんな俺じゃ…』

「う、ううん!
 ユッ…ラピス、信じちゃう!
 アキトは昔から嘘つけないもん…。
 あ、アキトがそんな風に言ってくれるなんて夢にも思わなかったから…その…」

『うん、ありがとう…。
 …俺が情けないのは昔と変わんないけどさ。
 お前を助けるのは、王子様の大事な仕事だろ…?』

「う、嬉しい…よ。
 でも…ゆ、ユリちゃんに悪いよぅ…」

『……いいんだ。
 俺は二人の王子様だから』

「!
 う…ひぐっ…ぐ…ん…うぅう……っ」

アキトはよどみなく、堂々と答えてくれた。
あ、ああ…嬉しい。
アキトが私の王子様だって自分から、こんな風に言ってくれるなんて…。
アキト、そんな風に言っていいの…?
私、ますますアキトを諦められなくなっちゃうのに…。
この言葉だけで、もう…死ぬなんて考えられなくなっちゃう…。

こんな風に二股宣言してるアキトを、ホントは怒らないといけないのに。
内容は屁理屈ばっかりで、何一つ、責任感なんてなさそうな言葉なのに。

アキトが私に何が何でも生きていてほしいと、
私の何もかもを背負ってくれるって気持ちが…伝わってくる。
涙が止まんない………嬉しくて死んじゃいそう。

「ぐす…アキトっていつからこんな王子様らしくなったの…?
 ホントに世界一の王子様になっちゃったの…?」

『……よ、よせよ。
 そんな渾名どうでもいいんだって…』

「くすっ、ごめんね。
 …ありがと、アキト」

アキトが昔の照れた返事で、不器用に答えてくれて…。
私まで昔に戻れたように感じて…すごく安心した。
さっきまで天にも昇りそうなほど嬉しかったのも本当だけど…。
私の…暗い記憶さえも完全に消え去ったように、幸せな気持ちでいっぱいになった。
もう二度と、こんな気分になれないと思っていたのに。

……本当、魔法みたい。



・・・・・。
・・・・。
・・・。
・・。
・。



その後、ほんの十五分くらいだけ、アキトと最近のことを話した。
お父様が撃たれたのを防げなかったとアキトは謝ったけど…無事だったし、
回復が早いって話もちょっと気になると言ったら、
アキトはそのあたりも今度話すから、とちょっと照れくさそうにしていた。
…何かまた魔法でも使ったのかなぁ?
悔しい、もっとお話ししたいのに…。
アキトの優しい声に…うとうとし始めちゃった…。

『それじゃ、また明日な。
 …元気な顔を見せてくれ、ラピス…』

「…うん。
 おやすみ、アキト」

『おやすみ』

私は瞼を閉じて…すぐに眠りに落ちていった。
前の世界からラピスちゃんの体に間借りして…。
この世界でユリカの意識が目覚めた時から、悪夢のせいでずっと浅い眠りを続けてきた。

こんなに幸せな気分で眠るなんて、どれくらいぶりだろう。

ううん、前の世界のひどいことも、きっと忘れられる。
私もアキトみたいに、明るく笑えるようになる。
まだ大変なことがいっぱい残ってるのに、楽しみで仕方なかった。

…だから、ラピスちゃんも早く起きてね。
いっぱい謝って、たくさんお礼しないといけないもん。
この命が助かったのも、誰も傷つけずに済んだのもラピスちゃんのおかげなんだから。

明日が楽しみだなぁ…。













〇地球・太平洋・海上・ブローディア──ホシノアキト
…ラピスの寝息が聞こえる。
大丈夫、そうだな。
後悔はありそうだったけど、もう死ぬのを考えてる様子じゃない。
少なくとも、すぐにどうこうってことは絶対ないだろう。
…ピースランドなら絶対安全だしな。
俺は通信を切って、満たされた気持ちになってため息を吐いた。
火星に行くときも、もっと他愛なく…毎日通信してやればよかったな。
それくらいできたはずだ。俺が臆病なだけだったんだよな…。
…オモイカネダッシュが怒るのも無理ないよな。

『アキト兄ぃ~~~~?
 浮気現場、取り押さえちゃったよぉ?
 どうするつもりなのかなぁ~~~~?』

……しまった、ディアには聞かれてしまっていたか。
よ、弱みを握られたか?

「……黙っててくれるか。
 色々事情があるんだ」

『別にいいけどぉ?
 私はOSだしぃ?
 週刊誌に話したところでなんの利益もないわけだしぃ?』
 
「そ、そりゃよかった」

『でも~~~?
 私に写真のサービスくらいしてくれないかな?』

「は?」

『私だって女の子だも~ん♪
 世界一の王子様のいい写真の一枚や二枚、くれてもいいんじゃない?』

……ど、どうして女の子の人格とはいえ、OSにまで好かれなきゃならないんだ。
が、ボヤいてしまうとさすがに不利になると踏んで…俺は黙って従った。
ネットワークに接続されてばらまかれたら最悪、身の破滅になりかねん…。
眼上さんのフォローがあるにしても身内から情報をばらまかれたらどうなるか…。
…その後、しばらくの間、内部カメラによる撮影をされてしまった。
移動中だというのに…百枚弱とられたか…。

か、勘弁してくれ…。

















〇地球・佐世保市・PMCマルス本社・ユーチャリス訓練施設──ユリ
私は突然、白鳥さんともどもお父さんに呼び出されて、訓練施設まで来ました。
ここは基本的に訓練施設なのでユーチャリスの内装を再現しています。
本物も使っているところがあり、ここなら連合軍の人たちとも通信できます。
レーザー通信ほどじゃありませんが、それなりに通信強度の強い通信機が使えるので十分です。
それで通話を始めたわけですが…。

『そういうわけで、木連の方たちにも共同戦線を張ってほしい、ということになったのだ。
 この間の事件のことは大々的に報じられて、世間でも受け入れに対する意欲は高まってはいるが…。
 木連が地球に対して味方しているところを知らしめて、
 より決定的な和平への意思を示したいということらしいのだ』

『私達も同感だ。
 白鳥少佐、ぜひ協力してくれはしないか』

「ええ!喜んで!」

お父さんと草壁さんはそろって私達に依頼してきました。
草壁さんもうなずいてますし、まだ傷跡が消えてない白鳥さんも眩しい笑顔を見せて頷いてます。
なるほど、連合軍と木連軍の共同戦線を張る姿を見せる…確かにダメ押しとしては十分ですね。
でも急ですね…。

「ちょっと待って下さい、私達はナデシコで同行できません。
 ユーチャリスはそろそろ動けますけど、
 明日はラピスをそろそろ迎えに行く予定で…」

『うむ、それも聞いている。
 ナデシコの件も報告は受けているし、
 ピースランドの方も私のところにも招待状が来ているからな。
 
 この場合、共同戦線を張るなら注目されやすいナデシコかユーチャリスがいいのも確かだが…。
 ナデシコもユーチャリスも激戦につぐ激戦で、クルーは疲弊しきっている。
 我々連合軍も、貸しを作りっぱなしになってしまっている都合もある。
 世間も我々もユリたちには休んで欲しいと思っているのだ。

 そこでユーチャリスでかつて月の戦線で戦っていた、
 サンシキ少佐の部下だったクルーを再度呼び出し、サンシキ少佐の編成でユーチャリスを動かす。
 お前たちが正式に艦を降りるまでにはまだ少し時間があるが、
 連合軍に再びユーチャリスを貸与する形になるかもしれんし、
 今日の休みの間は改めて連合軍クルーのみでの運用をしようということなのだ。
 
 ユーチャリスとかぐらづきと、さらに連合軍の艦隊で共同戦線を張る予定だ。
 その道中、ナデシコとPMCマルスの一同は、ユーチャリスに乗ってピースランドまで向かう。
 帰りは逆のことをすればいい。
 そのまま作戦が終わって、再びそろって佐世保に戻る。
 
 どうだ、悪い話じゃないだろう』

「ちょ、ちょっと柔軟すぎませんか、それは…」

…お父さん、ちょっと悪い意味で私達に影響を受けすぎてませんか?
まあ、私達はそこまでして労われるくらいには働いてるとは思いますけど…。

『まあ、なんだ。
 木連の方を引き連れてピースランドに向かうつもりだったんだろう?
 彼らを放っておいて休むのは気が引けるのはわかるが…。
 
 我々もかなり無理を言って木連の人たちの受け入れを頼んでしまって、
 アキト君でも十分な対処しきれないようなトラブルが起こってしまった。
 あのまま和解できなかったら、危うく外交問題になるところだっただろう。
 
 …そのあたりの詫びもあるのだ、ユリ。
 気兼ねなく、出かけてほしい。
 ラピスもいい加減ピースランドに置いたままではいかんだろうしな』
 
…そういうことですか。
確かに木連のひとたちの中に敵対してる勢力のスパイがいるかもって話にはなってますし、
ピースランドにアキトさんのファン(木連女子)を連れ込んでも気を遣うことになるでしょう。

……ほんのちょっとだけ、なにか別の思惑を感じるところもありますが、甘えてしまいましょう。

何しろ私達はラピスの中に居るユリカさんを説得して、
私とアキトさんで脇をがっちりつかんで連れて帰らないといけないですし。
あの口下手で不器用なアキトさんですし、負担は少しでも少ない方がいいでしょう。

何より、ユーチャリスのサンシキ副長は信頼できる人です。
ムネタケ提督とのコンビは中々のものだそうですし。

『それでは、また後でな。
 私も、もうすぐ佐世保で合流する』

……帰還パーティに来る気ですか、お父さん。
いえ、嬉しいんですけど。
む、昔に比べてもノリが軽くなってる…。














〇地球・佐世保市・連合軍基地・ドック・ユーチャリス──ムネタケ
私達はユーチャリスでピースランドを目指した。
…よくもまあこんなことを連合軍が許したわよね、英雄の帰還とはいえ。
まさかピースランドで帰還パーティと映画の成功を祝うパーティのために、
こんな風な運用が許可されるなんてね…。

…ただ、ちょっとだけきな臭い匂いがするのよ、今回の共同戦線と絡めると。

今までナデシコもPMCマルスも…どちらかが艦を持ってる状態で、戦力も潤沢なわけだけど…。
戦力のほぼすべてから切り離された状態で彼らはピースランドに置いて行かれることになる。
一応ブローディアだけはピースランドに持ち込むそうだし大丈夫だとは思うわ…。
仮に敵が多少集まったところで蹴散らすホシノアキトだから。

それはそれとして、この段階で彼らが戦力と分断されるっていうのはちょっと気にかかるわ。
しかも木連の将校たちを、ホシノアキトから切り離すのも危険な気がするけど…。

…いえ、それはないわ。
ただでさえ注目の的の木連の将校たちを軽く扱うことは、どの勢力が意図しても致命傷になりかねないもの。
木連に対する完全な不信を払しょくするためにも、共同戦線を張ることになっている。
そして不信がまだぬぐえていないからこそ、今回の戦闘は全世界に放送されることになっている。

ホシノアキトが居ない連合軍の作戦だから、
軍事行動は放送はされないのが普通だけど、思い切ったことを考えたわね。
今回の共同戦線そのものが木連の意思を世間に表明するために与えられた機会だもの。
せいぜい、気張ってやるわよ、こっちもね。
それにしても…。

「…ハーリー、本当にあんたまで残るの?」

「はい、僕が居ないとユーチャリスは動きませんし…。
 僕は映画出てませんから…」

「別に残らなくてもいいわよ
 無理にここに残らなくても、パーティが終わってから戻っても艦隊の招集には間に合うわよ?」

「それを言ったらムネタケ艦長だって。
 緊急時に備えて、少しでも早く出られるように備えてるんでしょう?
 僕はもうすぐユーチャリスを降ろされるからこそ…。
 今日は大事な日だから、僕が代わりにここにいるべきだって思うんです。
 …ラピスさんたちが気兼ねなく楽しんでもらいたいんです」

「相変わらず言うじゃない、ハーリー坊や」

何か急に堂々とし始めたわね、ハーリー坊やは。
今までも元気いっぱいについてくる子だと思ったけど…。
急に一丁前の顔するようになったわね。年相応にだけど。

「…それに僕、決めたんです。
 
 将来、連合軍に入って、ラピスさん達が戦わないで済むようにしようって。
 僕だけで十分です、戦うためのマシンチャイルドは…」

…何かあったわね、この子。
度胸っていうか覚悟っていうか…一皮むけた感じだわ。

でも、これは中々将来有望になりそうよね。
マシンチャイルドのオペレーターさえいれば、通常のIFSオペレーターの数倍の速度を出せる。
マシンチャイルドの戦艦への乗船は、年齢的にも禁止される可能性が出ているけど…。
この子がまっとうに連合軍士官学校を出て配属される分には、それでいいものね。

「だったら、せいぜいそれまでに色々経験して役に立てるように努力なさい。
 もっともそのころには思ったより平和な世界になってて席がないかもしれないけどね」

「それならそれで嬉しいです。
 …悲しい話なんて、もう聞きたくありません」

ハーリー坊や、ホシノアキトに影響されてきたのかしらね。
こんな風に思う子、そうそういないわよ。
普通はこの年頃じゃ強い姿の方に憧れるもんだけど。
…まあいいわ。
この子、きっと大成するわ。
戦術的なことはともかく、これくらい肝が据わってるならなんでもできるわよ。
この歳で自分のやるべきこともしっかり分かってるような優秀な人材だものね…。

「そういえば、ハーリー坊や。
 そのペンダント、ルリがつけてるのと同じね」

「ええ。
 さっきアキトさんが預けてくれたんです。
 これ、衛生通信機になってるそうなので緊急連絡が必要な時のために、
 ホットラインがあった方がいいからって」

「へえ、なかなか気が利いてるわね、ホシノアキトも」

コミュニケがあれば普通は通信が出来るけど、作戦行動中には通常回線が使えない可能性もあるし…。
何より、ピースランドでも軍につなげる通信設備を使うんじゃ準備に時間がかかりすぎることもある。
ブローディアの出撃が必要になったら即時呼び出せる状況っていうのは重要よね。
いい判断だわ。

…ま、そろそろ働きづめの英雄には舞台を降りてもらいましょ。
それくらい働いたわよ、あの子たちは。
後はのんびりできるようになるといいけど…。

けど…。
ラピスラズリ…あの子のまとっていた不穏な空気、異常な戦術能力…。
そして何か薄暗い過去を背負っているようなことを自分で言っていた。
あの子の目論見について、私はまだ説明されていない。
何を考え、そして何を託すために私に戦術を教え込んでいたのか…。

…ま、あの子も戦いから降りるのに頷いたっていうから、そんなに気にすることないかしらね。
あの子とゲームで対戦する中で極めた戦術と、このユーチャリスで戦って、
ホシノアキト達に借りを返してあげなきゃね。
















〇地球・ピースランド・街道──ホシノアキト
俺はあの後、ユーチャリスに着艦して少し仮眠をとった。
二日酔いはほとんど抜けていたが、まだ疲労は抜けきっていない。
久々の芸能界は俺に想像以上に負担をかけてきてて、昴氣なしじゃ危なかった…。
…早く引退したい。

そして俺たちは昼過ぎにピースランド入りした。
…当然、ルリちゃんと俺の生還は大々的に公表されてしまって…。



うわああああああ……!!


「「「「「ルリ姫ーーーーーッ!ご無事で感激ですーーーッ!」」」」」



絶叫、熱狂、紙吹雪が乱舞する街道を、パレードしながら王城に向かった。
俺たちは後続するトレーラーの荷台に乗ったブローディアとともに、
凱旋を祝ってもらってしまった。
しかも、映画の衣装まで持ち出して…。
は、はずかしい…。
当然、俺たちだけじゃなくてナデシコとPMCマルスのみんなもパレードに参加している。
さすがにどんちゃん騒ぎ大好きなみんなだけに、ノリノリだ。

「…勘弁して」

「うう…なんでこう、俺たちは…」

「アキトさん、諦めましょうって…」

「あ、あはは…」

「俺たち…色々大事なものを失ってる気がする…」

…くうっ、言うなよテンカワ。
ちなみにテンカワだけ極端にマッシブになったもんだから、黒い戦闘服を羽織っている。
本人もちょっとあんまり体を誇示したくないらしいので、作中のパイロットスーツも嫌がった。
ああ…俺だってこんなにマッチョになった自分を見たくなかったよ…。

…あ、遠目にお義父さんが撮影してるな。
すごいスピードでいろんな角度から…。
ラピスを欠いた状態だけど、いい記念になるって思ってるんだろうか。病み上がりなのに。
それと…ああ、木連から入国を許されてる白鳥さんたち三人組と、
優華部隊の人たちまでビデオカメラで追っかけてる。
…頼まれたな、ここに来れなかった木連の人たちに…。

か、勘弁してくれ…。


・・・・・。
・・・・。
・・・。
・・。
・。



「お~~~~~~~よくぞ戻ったなルリ!!
 そしてホシノアキト殿とミスマル家の方々!!

 
 こんなに嬉しい日は、ルリがここに来てくれた時以来だ!!」



「お帰りなさい、ルリ」


「「「「「お帰りなさい!ルリお姉様!!」」」」」



「…お、お帰り、アキト…ユリちゃん…」

……そして俺たちはそのまま王城で国王たちに迎えられた。
死地から帰還した親子の再会…。
そして俺たちも万感の想いを胸にしたラピスとの再会だったが…。
感動の再会といって差し支えないほどのこの状況でさえ、俺たちは恥ずかしくてそれどころじゃなかった。
俺たちは映画の衣装そのまま、しかもやたらにド派手に迎えられて今の今まで緊張し通しだったし、
ラピスはラピスで、国王たちの並びに座らされて完全にお姫様扱いされてる。
ダイヤモンドプリンセスの劇中のルリちゃんのドレス姿に、ちょっとだけ和柄アレンジされた瑠璃色の柄が入ってる。
泣かないように必死に我慢しているのと、王家に巻き込まれてるのが居心地悪くて声が出ないのと両方のようだ。
……プレミア国王が事情を知らないとはいえ、これはちょっと困ったな。

「た、ただいま…父、母、弟たち…ラピスも…」

「うむうむ、よくぞ戻った!
 さすがアキト殿だ!
 約束通りルリを守り通してくれた!
 それどころかこの戦争が無事に終わりを迎えられるように和解するきっかけを作るとは!
 まさに英雄と呼ぶにふさわしい活躍、ご苦労だった!」

「は、はあ、恐縮です…」

「アキト君、胸を張っていいんだぞ」

ぼそっとお義父さんが俺にささやいた。
俺の一歩前にはルリちゃん、その後ろに俺とユリちゃん、
ユリカ義姉さん、テンカワ、そしてお義父さんが並んでいる。
この謁見は家族会議的なところもあって、一応親族関係の俺たちが並び立つことになった。
そしてプレミア国王と王妃は俺たちにねぎらいの祝辞と、簡単な報告をした。
ほんのちょっとだけだったけど…。
俺はどうにも、ラピスとの会話をお預けされてるようでそわそわする。

…ええい!

一日千秋の想いだったとはいえ、ほんの半日前に話したばかりだろ!?
俺はガキか…いや九歳のガキなんだけどさ。
うう、ユリちゃんに横目でジロって睨まれた…。
……でも嬉しいよな。
こうして、生きて会えるんだから…。

「なるほどな…。
 では、そろそろ帰還パーティの準備をしようか。
 ナデシコとPMCマルスの人々も待たされて、さぞ退屈しているだろう」

「いえ、遊びに出てるから気にしないでもいいかと…」

「む、そういえばそうか。
 では国内放送で一時間後、ここに集まるように伝えておこう」

…ここは国土のほとんどがテーマパークだから。
ナデシコのみんなも恐らく、テーマパーク内で盛大に労われてるんだろう。
そして国王たちは、部下に話しかけると、高台の王座から降り始め、
俺たちにパーティまでの時間を茶会でもして過ごさないか、と提案してきたが…。

「待って下さい、父。
 ホシノ兄さんとユリ姉さんが、ラピスとお話したいそうなんです。
 …パーティまでお時間をくれませんか?」

「む?
 別に構わないが…。
 英雄の土産話を楽しみにしていたんだがな」

「あなたっ」

「む、むう、すまん。
 ではラピスさんの部屋に茶を持っていかせよう」

…助かった。
火星での出来事はあまり口外したくないし…。
ルリちゃんとユリカ義姉さんならそうそう下手なことは話さないだろうし。
ラピスは、まだ不安そうな顔をしているな。

「大丈夫だよ、ラピス」

俺はラピスの肩をとん、と叩いて、小さく頷いた。
ラピスも頷き返してくれた。
ユリちゃんはラピスに安心してほしいと励ますように、微笑んだ。
ラピスもそれにこたえるように微笑み返した。

…大丈夫なんだ。
もう、何もかもが。
これからのことは、大変なことはたくさんあるだろうけど…。

俺たちは五体満足で、一番安全なこの場所にたどり着き、再会した。

『これから』がある。

『失いたくなかった人』が隣に居てくれる。

…それだけでいいんだ。

人殺しの俺も、
英雄の俺も、
世界一の王子様と呼ばれる俺も要らないんだ。

……この大事な大事な二人を、二度と離さない俺で居られればいい。
絶対に、どこの誰にも…渡してやるもんか。
何を言われても、諦めない。離さない。

だって…。

俺には…運命の人が二人居たんだから…。



















〇地球・ピースランド・王城・ラピスの部屋──ラピス

「久しぶりだね、ふたりと…もっ!?」


がばっ!ぎゅうぅぅぅぅっ!



私はアキトとユリちゃんを部屋に招き入れた。
すると、二人はすぐに私を挟み込んで抱きしめてきた。
ちょ、ちょっと…く、苦しいよ…!

「ごめんな、ユリカ…。
 辛かったろ、ずっと…会いたかった…」

「ユリカさんっ…ユリカさん…!」


ふ、二人とも嬉しいのは分かったけど、息が出来なくなっちゃうよぅ!
…でも心配かけちゃったのもあるし気持ちはわかるけど。

「う、むぅ~~~~~っ!
 ふぐぐぐぐ~~~!」

「あ、ご、ごめんな。
 苦しかったよな」

「あ、すみません」

「ぷはぁっ!
 ひどいよう、二人とも!
 せっかく生きて会えたのに殺すつもりなの!?」

私がばたついて振りほどいて抗議すると、
二人は申し訳なさそうにしょぼんとしちゃった。
そんな二人の様子を見て、私も次の言葉が出てこなくなって…。


「あ…ははははははは…!」


「ふふ、ふふふっ、おかしい…!」


「くすっ…あはははははは!」



それから一分くらい私達は見つめ合って…笑い転げてしまった。
嬉しいんだか、おかしいんだか分からないように、泣き笑いみたいになって。

…二人が我慢できなくて抱き着いてくるなんて、昔じゃ考えられなかった。

私がどんなに好きだって言っても、なかなか振り向いてくれなかったアキト。
私がどんなに甘えさせようとしても、控え目に接してたルリちゃん。

この世界に来て生まれ変わった二人は、本当に昔と全然違う。
昔と同じなはずなのに、変わっちゃったんだなぁって思う。いい方向に。
私ばっかり、おかしくなっちゃって。もう。

…でもいいの。
この二人と居られるだけで、私ってとびっきり幸せなんだって思い知らされちゃった。
二度と、どこにも一人で行きたくないって思っちゃうほど。


……私はアキトとユリちゃんが大好きなんだ。


・・・・・。
・・・・。
・・・。
・・。
・。


しばらく笑ってたら、従者の人が紅茶をもって現れた。
ようやく私達は落ち着いてお互いの顔を見ることができた。
そして、ダイヤモンドプリンセスの映画のワンシーンのように、ひっそりと私達は話し始めた。
明るく話せる話じゃない、大事だけど悲しい、私達のお話を…。
…私のやろうとした、ひどい計画のことなんて全然触れないまま…。

二人の話したことは、私の想像をはるかに上回ることばかりだった。

草壁さんと完全に和解したこと。
ニュース通りヤマサキさんが木連の戦力を奪っていたこと。
私の脳髄がやっぱりユリカ本人の脳髄とラピスちゃんの脳髄だったこと。
さらに私の意識が遺跡の演算ユニットにコピーされた『遺跡ユリカ』が居ること。
遺跡ユリカが私達の結末に納得せず、16216回も同じ時を繰り返したこと。
…アキトはどの未来でも『黒い皇子』になって、人を殺したこと。
それどころか私やナデシコのみんなすらも殺していたことがあったこと。
16216回もの繰り返しのせいで因果律が狂って、アキトの結末をさらに救い難い方向に向けてしまったこと。
『漆黒の戦神』という、今のアキトとは別路線の英雄に成り果ててしまったこと。

そして…。
この世界では因果律を調整するために、ホシノアキト、テンカワアキト、そして私に分散して、
ホシノアキトには『ホシノルリの因子』、
ホシノユリには『ミスマルユリカの因子』、
ラピスちゃんには『黒い皇子』の因子を与えたこと…。

……そっか、私の脳はちゃんと入ってるけど、記憶の方は全部コピーだったんだ。

だからあんなに妙にはっきりと悪夢を見たんだ…自分の記憶とはいえ、
『黒い皇子』の因子を継承するための、コピーの記憶で苦しめられてたなんて滑稽だよ…。
全部聞いて、納得したけど……。

「…ひどい…ひどいよう…。
 やっぱり私って人でなしじゃない…」

「ゆ、ユリカ、落ち着いてくれって」

「だって、だって…。
 結局、私ってひどい子じゃない…。
 自分が納得しないからって、リセットできるからって、
 みんなにひどいことをできちゃうんじゃない…大切な人を、ゲームキャラみたいに弄んで…。
 私がこの世界でアキトのためにしようとしたことだって同じようなことだし…」

希望が見えてきたと思ったら…。
私は遺跡ユリカのしでかしたことが、
ミスマルユリカという人間が根本的にどうしようもない人間だと証明したように感じて、愕然とした。
…こんな私じゃ、アキトとユリちゃんの隣に居たら、やっぱり不幸にするだけじゃない…。

「…だからその自虐もアキトさん譲りなんですって。
 遺跡ユリカさんの方はともかく、ラピスの中に居る今のユリカさんの考え方は…」

「…ああ。
 俺が『黒い皇子』として考えていたことに近い。
 ユリカだってそれは分かってるだろ?
 お前は、俺の因子だけと記憶のせいだけじゃなく。
 元々ラピスとして俺の隣に居続けたことで、かなり影響を受けていたんだ。
 
 きっかけは遺跡の中のお前の意識のせいだったかもしれない。
 だけど、俺の因子せいでお前が苦しんだんだ。
 …俺の身代わりになってな」

「け、けど…」

「『黒い皇子』のテンカワアキトは死んだ。
 『火星の後継者に虐げられた』テンカワユリカも。
 『電子の妖精』のホシノルリも。
 
 …死んでしまったんだから、罪には問えない。
 そして、この世界で生まれ変わった。
 
 ホシノアキトも、
 ホシノユリも、
 ラピスラズリも、
 
 まだ誰も手にかけてない。
 だから幸せになる資格がある…だろ?」

「へ、屁理屈じゃない…」

「屁理屈なもんですか、正論です。
 この世界では未遂はありましたけど、誰も殺してません。
 裁かれるべき人間じゃないんです、ラピスは。
 …まあちょっとばかり迷惑な子ですけど。
 その中に居るユリカさんも生きていていいんです。
 
 人殺しだからダメ?
 ひどいことを出来る人間だからダメ?
 リセットできるからって大切な人をゲームキャラみたいに弄ぶからダメ?

 そのどれもまだなされていないこと、今は可能性にすぎないんです。
 だったらそうならないように努力すればいいんです。
 アキトさんもそうしてます。だからいいんです。
 これからもそんな風にならないために、知恵を貸してほしいんです。
 
 私達はラピスの力なしにここまでこれなかったんですよ?
 
 ラピス自身もユリカさんに無意識に引きずられていたはずです。
 未来の世界でも、今の世界でも、何度も命を救われてます。
 
 ユリカさんも、ラピスも二人とも居ないと困るんです。
 私達の気持ちも、家族関係的にも、状況的にも、何もかもです。
 
 罪の話ばっかりしないで、権利の主張をして下さい。
 …そうでないと、ラピスの方がユリカさんのふりして全部持ってっちゃいますよ」

「う…ラピスちゃんはそんなひどい子じゃないよぅ…」

「だったら、いいじゃないですか。
 ちゃんともらえるものは貰ってください。
 一緒に居たいって思ってくれてないんですか?」

「…い、居たいよ?
 居たい、けど…私じゃ…」

私はうつむくしかなかった。
…ひどいことを考える私じゃだめだと思う、自信失くしちゃったよ…。
二人にどんなことを言われても、うなずきたくてもうなずけない。
せっかく立ち直ってもこれじゃ…。
 
「…それに、私がアキトさんを奪ったことだって文句の一つも言う権利あるんですよ。
 アキトさんにもエリナさんとのことも叱る予定だったんでしょ?
 変に我慢されて、変に暴発されても困ります。
 いい加減にしないとひっぱたきますよ」

「う、う~~~~。
 ユリちゃんそんな風に言わないでよぅ…。
 私がユリちゃんに後を託そうと思ったのは、
 二人に幸せになってほしいだけだったんだから…」

ある意味じゃ昔以上に容赦ないユリちゃん…のお説教。
うう~…涙が出てきちゃった。
こんな風に怒られたことなんてなかったもん…。
お母様に叱られたらきっとこんな感じなのかな…お母様は私がちっちゃいころ死んじゃったけど。
アキトもちょっとだけびくっとしてる。
アキトもこの世界でユリちゃんにお母さん代わりをしてもらってたもんね…。


「言いますよ!

 ホントはいっぱいアキトさんに抱きしめてもらいたい癖に!好きだって言われたい癖に!

 変に強がって、突っ張って!自分に嘘ついて!

 そのままじゃまた激戦真っただ中に飛び込んで逃げ出すとかしかねないです!

 せっかく助かった命をムダにしないでくださいっ!

 
 

 …そういうのが一番私達を不幸にするって言ってんです、バカッ!」



「ううっ…。
 そこまで言うことないじゃない、ユリちゃんのばか…」

「ゆ、ユリちゃん、もうそれくらいに…」


「アキトさんは黙ってて!」



「ひゃいっ!」



私が胸の奥を見抜かれてべそかいてるそばで、
注意されたアキトは背筋をぴんと伸ばして黙り込んじゃった。
本当に頭が上がらないんだね…アキト…。
ううん、未来でもアキトも同じように離れようとしてたから他人事じゃないんだよね、きっと。

…それからしばらく、私たちはユリちゃんのお説教を聞かされた。
いつの間にかアキトまで巻き込まれて、床に二人して正座させられた。
立場がまるっきり逆転しちゃってるよね…私達いい大人なのに…。

「…まったく!
 二人して、どうして死ぬかもしれないところに勝手に行こうとするんですか!?
 私がどれだけ二人と過ごす、あったかい生活に飢えていたか分かってるんですか!?
 引き取ってれた時、すごく嬉しいって思ってたのに!」

「「ご、ごめんなさい…」」

ユリちゃんの未来での苦労、この世界での苦労、
そしてアキトと私に対する溜まりに溜まった想いと、怒り。
アキトも私も、涙がぼろぼろ出るだけでなんも言えなくなって…。
うう…本当は私がユリちゃんのお母さん役になるつもりだったのに情けなくて情けなくて…。

「……はぁ。
 私の言いたいことは全部言いました。気が済みました。
 もう椅子に戻っていいですよ。
 …頭に血が上って、ほじくり返し過ぎました。
 二人も悩んでたのに…私こそごめんなさい」

「う、うん」

「ごめんね…」

私とアキトは顔を見合わせておどおどと椅子に戻った。
私はこんな風に怒ったことないけど…。
ユリちゃんはきっと私の、ユリカの因子ですごい激情家になっちゃったんだね。

……今後はユリちゃんには絶対に逆らわないようにしようって、思った。
冷めきってしまった紅茶をすすって気持ちを落ち着かせて…。
もう情けないこと言う気分にもなれなくなっちゃった。
ここまで言ってくれる大事な妹…今はお姉様だけど…に、あんまり変に気を遣う方がよくないかな…。

…ええっと、帰還パーティまであと十分くらい?
ずいぶん長いことユリちゃんにお説教されちゃったね…。

「…ユリカさん、もう二度とどこにもいかないですよね…?」

「う、うんっ」

そんなつもりはもうないって心に決めてたけど…。
…私の脳内に、次にどっか行ったら丸一日お説教されちゃうんだなって浮かんできちゃった。
でも、ユリちゃんの言葉に、どこか懇願するような、か細い弱さを感じて…いじらしいなって…。
だから私は心の底から頷けた。
自分にも、他人にも嘘をついていいことなんて何もないもんね…。

「俺も…」

「アキトさんはもうわかってます。
 ちゃんと約束してくれましたから」

「は、はは」

アキトは照れくさそうに頬を掻いた。
ユリちゃん、完全に私達の中で主導権を握ってるよね。
こういうの、カカア天下っていうんだっけ…言ったらまた怒られそうだからやめとこっと。

「…だったら、アキトさん?」

「ん…あ、そうだよね」

アキトとユリちゃんは顔を見合わせて、何も言ってないのに気持ちが通じてるようだった。
…悔しいなぁ、そんなに仲良くなっちゃって。
本当にお似合いの夫婦だもんね…と、思ったらアキトは私の前にひざまずいた。
…え?

「ユリカ。
 …俺たちが帰るまで生きててくれた。
 それだけでもう百点満点だよ…」

「あ、の…アキト?」

「…ユリカ。
 俺が情けないばっかりに、お前はたくさん辛い思いをしたよな…。
 もう、迷わない。
 お前を…一秒だって多く幸せにしたい…」

「わ、わわわあっ!」

アキトはそっと私を椅子から抱き上げると、顔をすっと近づけてきた。


あ、あああ!?


近い!すっごい近い!


それにアキトの瞳がうるうるしてる!


こ、これって、これってぇぇえぇ!?


アキトがキスしようとしてるぅ~~~~!?




「…今はこれが精いっぱいだけど。
 俺の気持ちを…受け取ってほしい…」


「ちょ、ちょ、ちょっとぉ!?

 アキト、タイム、タイム、タイムっ!

 ユリちゃんの前でしょ!?

 何してるの!?」



「あ、私そっぽ向いてますから、ご勝手にどうぞ」

「ゆ、ユリちゃぁあ~~ん!」

助け舟を出してもらおうとしたのに、
ユリちゃんはさっきまでのお母さん的な説教が嘘のようにアキトをけしかけて、
そっぽを向いて知らんぷりし始めた。

ちょ、ちょっと待って…!
わ、私だって、キスしなかったの後悔してたけど!
だけど…!
こんな急にされちゃうと、も、もう…。

「…ユリカ、嫌だったか…?」

「い、嫌じゃないけどっ!
 こ、こころの準備がっ…」


「そんなに待ってられないって。
 もうすぐパーティが始まっちゃうだろ?
 俺は二人の王子様になるって決めたんだ…。
 二度と離れたくならないように、二度と暗い気持ちにならないように。
 幸せになれるおまじないをしてやるからな…」

あ、あ、あ…。
だめ…だめなのに…アキトが私と離れたくないって目で訴えてる。
元気の出るおまじないじゃなくて…幸せになれるおまじないって…。
ああ、ホントにだめ、今されちゃったら、もう、もう…!
我慢できなくなっちゃうよっ、それでもいいの!?

「今度こそ逃がさない…離してやらない…」

「ま、待ってよ!?
 ラピスちゃんの体なんだよ、これ!?
 アキト、ロリコンって言われちゃうよ!?いいの!?」

「黙ってればバレないだろ」

「っ!?
 ラピスちゃんにだって許可貰ってないし、
 まだラピスちゃん起きてくれないし!」

「こうしたら喜んで起きてくれると思うけど」


「アキトのばかっ!

 浮気者っ!

 エリナさんとのこと、反省してないのね!」


「ユリカ!」



アキトが少しだけ強く、私を呼んだだけで…私は動けなくなってしまった。
私がいろんな理由をつけて臆病に逃げ追うとしてるのを見透かして…。
そうっと私の言葉を封印するように、唇を人差し指で撫でると、真摯な瞳で私を見つめた。

「…もう後悔したくないんだ」

アキトがささやいた言葉が、私の脳内にリフレインした。

後悔したくない……。

私が死の淵に立った時にした…たくさんの後悔。
ミスマルユリカとしてのたくさんの失敗を後悔してきた。
少なくとも不幸にはならずに済んだかもしれない、引き返せたはずのたくさんのタイミング。
そしてこの世界でも…後悔するようなことをして…。

…アキトは?
アキトも、未来の世界での後悔を取り戻すためにずっと戦ってきた。
ユリちゃんを、私の分まで幸せにできるように頑張ってきた。
私なんかより、ずっと立派な考え方してるよね…。

…確かに、後悔したくない、ね。

ラピスちゃんが言ってた通りなのかも…。
浮気してでも、最低になってでも私を助けたいって、
私をどうしたって、何とかして幸せにしたいって、
私が逃げちゃったら、死んじゃったら、アキトが本当に悲しむって。

…アキトとユリちゃんに悲しい顔、してほしくないなぁ。
だったら、アキトも私に笑って欲しい、よね…。

つかんで、いいんだよね…。
アキトの手を…幸せになれる道を…。
……浮気、してでも。

横目でユリちゃんのほうをちらっと見た。
そっぽを向いてるはずのユリちゃんはちょっとだけこっち向いてて、目が合った。

ユリちゃん、笑ってる。

テレビドラマでしか見たことのない、
家を出る子供たちをいってらっしゃいって送り出す、お母さんみたいな優しい笑顔だった。

…情けないことばっかりしてちゃダメだよね。
私も、勇気を出さなきゃ。

私はアキトの目を見て…瞼を閉じた。

心臓が爆発しそうなほど高鳴ってる。
昔アキトに初めてキスしてもらえた時よりもすごいかも…。
こんな風に想ってくれる二人と居られれば…。
私は…。



ばーんっ!



「ラピスお姉様!アキトお兄様!ユリお姉様!

 パーティ会場の準備ができましたよーっ!」


「うわぁっ!」

「きゃあっ!」


どたーん!


「わわっ!?大丈夫ですか!?」



「あ、あのジャック王子…ノックくらいして下さいね…」

「はっ!?
 僕ったらなんて紳士にあるまじき無礼をっ!
 ごめんなさい、ラピスさん、アキトさん!
 再会の抱擁をお邪魔してしまって!」

「あ、はははは…だ、大丈夫だよ…。
 ちょっとびっくりして倒れちゃっただけだから…」

……うう、ショック。
私が覚悟したところでジャック君が入って来て、アキトは私を抱えたまま横に倒れ込んだ。
さすがにキスする姿を見せるわけにもいかないので、わざと…。
アキトは私が上になるように倒れてくれたので痛くはなかったんだけど…。
完全にムードも状況も何もかもぶっこわしてくれて…恨むよ、ジャック君…。

「分かりました、すぐに会場に向かいましょう」

「…参ったな」

「はぁ…」

私達はそのままジャック君について行くことになった。
……どうして、私達ってこう間がよくないかなぁ。
ううん、こんなことでへこたれちゃだめ。
アキトとユリちゃんがここまでしてくれたのに、私が受け身でいいわけないもん。
だから私はアキトに耳打ちした。アキトは少し顔を傾けてくれた。

「…?」

「あ、あのね、アキト…。
 私ね、本当は、すごくすごーく、嬉しかった。
 
 だ、だから…。
 帰ったらいっぱい、キスして。
 私もいーっぱい、お返しのキスしてあげるから…!」

「…!
 ああ…ありがとう…」

アキトはすっごくうれしそうに、にこーって笑ってくれた。
アキトのこんな笑顔、見たことない…。
私も嬉しくなって…また泣きそうになっちゃった。
ユリちゃんも何を言ったのか気づいてニコニコ笑ってた。
…浮気しようとしてるっていうのに、なんでこんな感じに嬉しくなっちゃうのかなぁ。
私達って変なの。
でも…幸せだからいいかな。

「ラピスお姉様、アキトさん、こちらにどうぞ」

あれ?
なんか会場が真っ暗で、ちょっと足元に場所を確認するような明かりはあるけど…。
それを頼りにして、私とアキトは真ん中くらいの場所に連れてこられた。
あ、ユリちゃんはどこ?途中から居なくなっちゃった。

「ラピスお姉様、今宵…いえ、まだ日は高いですけど、
 今日は少し趣向を凝らしてみました。
 パーティの前に、『星空の舞踏会』などはいかがかと」

「ぶ、舞踏会?」

戸惑う私をしり目に、ジャック君は合奏指揮者のタクトを取り出すと、
足元の明かりが消え、同時に天井に薄暗い群青色が光り始めて…星が一つ、また一つと広がった。
プラネタリウム、みたい。
その中に月が現れると、満月の光よりもやや明るくなって私達を照らし始めた。
…!
よく見ると、私達の衣装がぼんやりと輝き始めてる!
アキトの顔がはっきりと見えるくらいには明るくなって…!

「夜光塗料か…」

「ラピスお姉様、ちょっとしたサプライズです。
 アキトお兄様と踊って下さい!」

「ええっ!?」


パチパチパチパチ…!



ゆ、ユリちゃんを差し置いて、一番最初に!?
って、よく見るとみんな…ナデシコのみんなも、PMCマルスのみんなも居るじゃない…。
すごい拍手の中、私の手をアキトが取った。

「…ラピス、俺たちが戻るまでの間、いっぱい頑張ってくれたからな。
 ご褒美じゃないけど、なんて言うか…な。
 お前も王子たちと練習したんだろ?
 俺もユリちゃんとちゃんと練習してきたんだ。
 
 …踊ってくれるか、お姫様」

アキトは慇懃に一礼してひざまずいて、私の手の甲にキスをした。
…ドキッとしちゃった。
こ、こんな…本物のお城で、王子様のアキトにこんな風にしてもらえるなんて…。
また胸がきゅーっとしてきちゃう…!
私なんかに、こんな幸せなことあっていいのかな…。
でも…。

「で、でも…アキト、ユリちゃんが…」

「私も後で踊ります。
 ラピスは頑張ってくれたんですから、遠慮なくどうぞ」

ユリちゃんの声が少し遠くから聞こえた……また気を遣われちゃった。
嬉しい…嬉しいことばっかり…。
さっきキスできなかったのはちょっとがっかりしたけど、帰ったら…。
私はアキトの手を取って、握り返した。
大変なことはまだ残ってるけど、きっと幸せな日々が待ってる。

決めたもん、アキトとユリちゃんと幸せになるって…!

「…はい。
 王子様、私でよければぜひ踊って下さい。

 あなたを、お慕い申しておりました」

「光栄です、お姫様」

私は演技がかったアキトに乗っかる形で、堂々とアキトに好きだと伝えて見せた。

私ったら、何を気にしてたんだろ。
アキトもユリちゃんも私と居たいって、どうしたって幸せにしたいって思ってる。
ラピスちゃんはいつもこんなこと言ってるし。

…アキトを好きと言っちゃいけない、好意に応えちゃいけない。
横恋慕する私が、二人と一緒に居ちゃいけない…。

…そんな風に思ってたのは私だけだったのかもね。





















〇地球・ピースランド・王城・大広間──ピースランド王子・ジャック
ラピスお姉様とアキトお兄様の、二人だけの舞踏会が始まった…。
アキトお兄様には、僕たちがラピスお姉様と一緒に練習したダンスを予習してもらったけど、
さすがに体術に心得のあるアキトお兄様だけあって完璧だった。
とてもじゃないけど、誰も立ち入れないような…二人だけの世界が、目の前にある。
ラピスお姉様はアキトお兄様を想っているそうだったけど…。
アキトお兄様も、ラピスお姉様を大事に想ってるのが分かった。
僕なんて到底及ばないくらい、深い感情があるんだ。
この美しい二人の舞踏を見て…二人がとても遠くに居るように感じた。

……その時、僕の胸が強く痛んだ。

何か、大事なものを失ったような気分になった。
これ…僕はラピスお姉様に、恋をしていた、のかな…。
失恋、しちゃったのかな…。
あ、あれ…涙が…。

「ジャック、ハンカチを」

「あ、あの、お母様…」

「今はしっかりあの二人を見ていなさい」

お母様に言われて、僕…大声を上げたい気持ちを押し殺して、二人を見つめ続けた。
どんなに僕が願っても、あのラピスお姉様と僕があんな風に踊れることはないんだって。
気付いてしまった、思い知ってしまった、悔しかった、辛かった…。
でも…なんで?
アキトお兄様はユリお姉様と結婚しているのに…あんなに情熱的なダンスを…。

「……な、なんでみんな泣いてるんだ?」

「ぐす…ジュンさん、空気読んでください」

僕が振り向くと、ルリお姉様、ユリカお姉様とユリお姉様、
それにブリッジクルーのミナトさん、メグミさんまで泣いている。
よく見るとラピスさんの部下のPMCマルスの十二名のパイロットの人たちまで…。
テンカワアキトさんは、感慨深そうに二人を見ているけど。
どうしたんだろう…失恋したって感じじゃないけどみんな涙をこぼして…。
みんな…ラピスお姉様を心配してた…のかな?


ばしゅーっ!



そして、舞踏曲が終盤に向かう中…。
二人が居る踊り場が下からライトアップされ、
踊り場を囲うように仕込んでいた噴水が噴き出した。
これもお母様と僕が考えた仕掛けだった。
曲に合わせて連動する、鮮やかな噴水と魔法陣のようにライトアップされる床。
水しぶきが蛍のように舞い、光を反射して二人を彩っている。
歓声は上がらず、みんなのため息だけがかすかに聞こえた。
大成功だ…大成功、だけど…。

…僕は、少し、悲しい気持ちを抑え込んで、ラピスお姉様の姿を見続けるしかできなかった…。

二人は曲の最後に、抱きしめあって…舞踏会を締めくくった。

ラピスお姉様も、アキトお兄様も、微笑みあって…涙を…。


わーーーーーーーーーーっ!



そして噴水が止まり、ライトアップも消えて…会場に照明が戻ると、
今まで黙り込んでいた人たちが、一斉に歓声を上げた。

ラピスお姉様の、満面の笑みを見れて嬉しい気持ちと、
恋敗れた喪失感で…僕はどんな顔をしていいかもわからず、
ただ拍手をしていることしかできなかった。

……僕じゃ、きっと幸せにすることなんてできないんだと思う。
ならせめて、これからもラピスさんを助けられる男になろう。
テロリストに暗殺されかかったこともあったんだ。
二度とラピスさんが命の危険にさらされないように、頑張ろう。
僕が出来るのは、きっとそれくらいだから──。

……ラピスさん、お幸せに。















〇地球・ピースランド・王城・大広間──ジュン

『それでは、
 ナデシコの地球への帰還、木連との和解、
 そして映画の成功を祝して…。
 
 乾杯っ!』


「「「「「「乾杯っ!」」」」」」



舞踏会が終わって、テーブルとともに軽食が運び込まれた。
プレミア国王の音頭とともに、ついにパーティが始まったけど…。
なんだったんだ、ホシノアキトとラピスちゃんのためだけの舞踏会は。
何か特別扱いされてるのは分かるけど、なんか妙な空気があったな…。
…なんて言うか浮気なステップって感じだったよ。
それを見て泣いてる人達が多かったのもなんでなのか…。
ちょっと事情が呑み込めないけど…。

…まあ、僕には関係のないことだけどね。
メグミ君と別れてしまって踊る相手も居ないことだし。
と、思ったら以外とPMCマルスの女の子たちに話しかけられて…。
なんでかと問うと、やっぱりホシノアキトファンでも恋は別口だそうで、
意外とPMCマルス内ではナデシコの男性クルーは人気があるって話になって…。
だけど、ちょっとミーハーな空気に疲れてしまって、少し距離を置くことにしたところで…。


『皆さんこんばんわ!
 
 私はアクアクリムゾン、改め、アクアマリンになりました!
 
 映画の大成功もありまして、

 アクアフィルムも映画製作会社として立派にやっていけるところまで来ました!
 
 皆様のご協力に感謝しております!
 
 そして今日、簡単にではありますけどこの場を借りて先延ばしにしていた、
 
 クリス様との結婚式を上げさせていただくことにしました!』


「「「「「おおおお~~~~~?」」」」」



アクア社長…便乗の形でえらいことを考えたね。
ピースランドの王城で結婚式をするのは世界でも指折りのセレブにしか許されてない。
会場資金だけでもそこらの企業を買収できるくらいは払う必要があるし、
かなり信用がないとさせてもらえない。
そんじょそこらの社長では無理で、国を代表する大企業の幹部レベルか、
全世界の業界を牛耳るレベルの企業幹部、政府関係者じゃないとできっこない。
彼女の本来の家、クリムゾングループだったらできるかもしれないが…。

「本来はこのような席でとは思ったのですが、
 プレミア国王に式がまだでと言ったらせっかくだからとお誘いいただきました♪
 おめでたいことはたくさんあった方がいいからと。
 会場費も私達が便乗する形になるのでぐーっとお安くしてくれましたわ♪」


どっ!!



…笑いは取れたが、やや受けみたいなリアクションが多かった。
ちゃっかりしてるな、アクア社長は…。
彼女のわがままによる迷惑で映画がつくられたっていうのに、
ずいぶんのんきだよね、ホシノアキトって男はさ。

…いや。
自分を意のままに操ろうとした相手と、敵対していたはずの人と、
こうして笑い合えるようになる…これが分かりあうってことなのかもしれないね。
…僕が彼に敵わないのは、そういうところからなのかもしれない。

アクアの結婚式は、一時間もしないくらいさっくり行われた。
パーティの邪魔をし過ぎてはいけないからと、彼女らしくない謙虚な態度だった。
でも、ずいぶん年の離れたクリス監督と本当に幸せそうに…。
こういう恋の形も、あるんだなぁ…。
…。












〇地球・ピースランド・王城・テラス──ジュン
僕はメグミ君と別れたのを、少し早まったかなって思った。
道が違うし、合わないと思ったのは事実なんだけど…。
あれだけ歳が離れていても、お互いを想い合ってるように見えたあのクリス監督とアクア社長。
とっても…羨ましかった。
あんな風にユリカと生きられたらって、僕は思っていた。
彼女を支えられる人生が、彼女が僕に頼ってくれる人生があればってずっと思っていた。
ひょっとしたら、メグミ君とだって同じようにできたかもしれないのに、
僕は自分に自信が持ててなかっただけ、だったのかもって思い始めた。

僕に足りなかったのは…やっぱり勇気だったのかな…。

アクアは自分から告白して、付き合い始めたって言っていた。
そんなアクアの姿が…メグミ君と被って…僕は…。

…そんなことを考えて、一人悩んでいたら会場に居づらくなってしまって、
酔いを醒ますために解放されているテラスにたどり着いた。
ここなら、自分が浮かれてただけなのかどうかわかるだろう…。
熱に浮かされてるというか…思いあがってるだけだったかもしれないし。
冷静になろう…。

と、思ったらテラスには先客がいた。
あのピンクの髪は、ラピス君だ。
…ちょっと気まずいな。引き返そうか。

「あれ、ジュン君?」

「…どうしたんだい、ラピス君」

ラピス君は一瞬はっとした顔をしたけど、どこか困ったような顔をして笑った。
何か、僕の顔に懐かしさを覚えているかのような印象を感じた。
僕自身も、なぜかその表情に既視感を覚えた。

僕とラピスちゃんとの接点はあまりない。

入れ代わり立ち代わりに入れ替わるオペレーターの一人としか僕は思ってない。
ルリちゃんとラピスちゃん、そしてハーリー君は幼いながらに活躍してくれている。
僕の中の印象はそれだけだ。
懐かしさを覚えるなんてことはことは、あり得ないはずなのに…。

「んーん。
 アキトとユリちゃんの邪魔をしたくないなって」

「ああ、舞踏会の第二部が始まったからね。
 …でも君らしくもない、気を遣うなんて」

「これも私の『私らしく』だよ、ジュン君」

僕は既視感の正体に気付いた。
ラピスちゃんはユリカにそっくりなんだ。
顔は違うけど、喋り方も表情もそっくりだ…。
義姉妹になったとはいえ、こんなにそっくりになるものかな…?

「ジュン君こそ、まだパーティは終わってないでしょ?
 誰かと踊ってこないの?」

「この間メグミちゃんと別れちゃったから、
 踊る相手が居ないんだ」

……って僕は何を子供に話してるんだ。
たしかに12歳そこそこの子は大人びてくる頃だけど、恋愛を話すような相手じゃ…。
ユリカに似てるように感じて油断したのはあるかもしれないけど、
僕はユリカに対して恋の話をするような勇気はないし…。
いや、メグミ君と付き合ってちょっとだけ僕自身が変化したってことなのかもしれないけど。
それにしてもなんていうか、どことなく安心するんだよ…この子…。

「へ?
 ジュン君ってメグミちゃん好きだったの?」

「本当はユリカが好きだったんだ。
 …でもユリカって僕のこと、全く目に入ってなかったみたいで…」

「…え」

ラピス君は妙にびっくり…いや、完全に硬直していた。
先ほどまでの話しやすい空気ではなく、ある意味年相応な反応だった気がするけど、
ラピスはユリカに似てるかもしれないけど、ユリカ本人じゃないのに。

「ど、どうしたの?」

「そ…っかぁ…そうだったんだ…」

ラピス君はうろたえるように目線をそらして、うつむいた。
な、何か変なことをいったかな、僕は…。

「じゅ、ジュン君…会場に戻って、ちょっとだけ私と踊ってみない?」

「え?どうしてだい?」

「ユリカお姉様が好きなら、私とも相性がいいかも知れないよ?」

……んん?
なんか話が見えてこないな…。
ラピス君は僕に気がある…ようには全く見えないけど…。

あ、やっぱり…同情されてるんだろうな…僕ってやつは…。

「ラピス君、同情ならしてくれなくていいよ。
 …僕が決めて、僕が諦めた恋なんだから。
 それに君はまだ幼すぎるよ、さすがに」

「あっ…そ、そうだよね!
 ごめんね、ジュン君!」

ラピス君は焦ったようにうんうんと深く頷いた。
……癖まで似るものかな、家族になったからって。

「そう、だよね…。
 私はラピスちゃんだし…ラピスちゃんに怒られちゃうよね、
 無理にアキトを諦めようとしたり、半端に別の人を見たら…。
 自分に嘘ついちゃダメだし…何言ってんだろ、私…」


「え?」

「あ、なんでもないの。
 ご、ごめんね。
 …でもジュン君、悩み事でもあるの?」

「あ、うん…さっきの続きで、メグミ君の事なんだけど…。
 …ミスマルおじさんを助けようとして発砲したらメグミ君に怒られちゃって…。
 人を殺すところだったんだって、どうしてわからないのかって。
 それが原因で別れたんだけど…ちょっと後悔しちゃっててさ…。

 ……メグミ君はナデシコを降りて芸能界に行くからって、
 僕はマネージャーに誘われたのに、断っちゃったんだ。
 まだ、戦うことに未練があってさ…。

 でもメグミ君に言われたんだ…僕はやさしいから戦うなんて向いてないって。
 …そうかもしれないって、メグミ君を助ける生き方の方がいいのかもしれないって、
 少しだけ思い始めてさ…」

「ジュン君…」

「戦うことって重要だけど…。
 僕みたいな、勇気のないやつが居られる場所じゃないのかもしれないって思うんだ。
 だから…」

僕の中で、ずっとくすぶっていた…メグミ君の言葉。

僕は正しいことを貫き通したかった。
そうやって生きていこうと心に決めていた。

そして誰かを助けられる、世のためになることをしたかった。
それが、どこからかユリカを助けることと混じってしまって…。
テンカワが現れて…ユリカと人生を共にできない、副官として以上の関係は築けないと悟って、
さらに僕の中の正義が揺らぐ事件が起きた。

人を殺してでも守るべきものは確かに存在すると思う。
あの場はまさにそういう場面だった。
多分、メグミ君以外の人はまず誰も責めないような状況だった。
…だけど僕の正義は、メグミ君の一言で揺らいでしまう、脆いものだった。

人を殺す。
相手の人生を奪い去る。
その重大さを知っているつもりで、何も分かってなかったのかもしれないって…。

「…ジュン君。
 自分に嘘をついちゃダメだよ。
 後悔を取り戻せるうちに急いで取り戻さないと…辛いよ。
 ずっとずっと引きずるよ。
 メグミちゃん、まだ気にしてそうじゃなかった?」

「…うん、引きずってた」

「じゃあ急いで戻って伝えなきゃ。
 大丈夫、ジュン君ならマネージャーばっちりできるよ!」

「そ、そうかなぁ」

「うん!
 だって…。
 
 

 ナデシコ一の器用貧乏だもん!」


ずこっ!



…僕は思いっきりずっこけてしまった。
そう、だよね…。
マネージャーって、色々出来なきゃいけないし、器用貧乏な僕には適役か…。
なんだかんだで中間管理職的なところもあったナデシコでの経験も生きそうだよね。
…あんまりにも的確過ぎる評価に、僕は頬に汗が伝ったのを感じた。

「は、はは…」

「ほら、急いで急いで!」

「…うん。
 ありがとう、ラピス君」

「お礼は後でいいよぅ。
 急いでいかないと、パーティ会場で誰かにとられちゃうよ!」

「わ、わかった!行ってくる!」


「お礼はナデシコ食堂のイチゴパフェでいいよ~~~~!」



走り出した僕は、また足を踏み外しそうになってしまった。
ちゃ、ちゃっかりしてる!
さすがPMCマルスの裏番長だ!
でも…助けられちゃったな、僕は…。
っとぉ!?


がしゃっ。



「あ、ご、ごめんなさい。
 こぼしませんでしたか?」

「いえ、大丈夫です。
 それでは」

僕は目の前に出てきたワゴンを運ぶ給仕さんにぶつかりそうになってブレーキをかけたけど、
結局軽くぶつかってしまって、ワゴンが小さく揺れた。
上に載っているワインは倒れなかったようで、良かった。

金髪の給仕さん…。
美人だけど、ちょっときつい感じのする人だな。
っと、急がないと…。


・・・・・。
・・・・。
・・・。
・・。
・。



僕は、メグミ君を会場で発見すると、
話しかけようとした男性整備員が居たのでずいっと割り込んでメグミちゃんを引き留めた。

「メグミ君、ちょっとだけ時間いいかな…」

「…はい」

メグミ君も、僕の目で何かを感じ取ったのか、静かに頷いてついてきてくれた。
再びテラスに戻ったけど、ラピスちゃんはすでにどこかに移動していたようだった。
多分、お手洗いにでも行ったんだろう。
僕は気にせず、メグミ君に話をすることにした。

「…メグミ君。
 あれからずっと考えていたんだ。
 僕は…本当に戦うべき人間なのかどうか。
 …人を守るために戦うのが、本当にいいのかどうか」

「…」

「確かに、自分と大切な人を守るために、戦わなきゃいけないことはあると思う。
 でも…君の言う通り、殺さないでいい方法を最初から捨ててはいけないって、
 相互理解を捨ててはいけないって思うんだ」

「はい…」

「ごめん、メグミ君…。
 僕は…人を撃つ…人の命を、未来を奪うことを軽く考えていたんだ、きっと。
 …誰かを死なせて平然としてるような人間に、なりかかっていたんだよ…」

メグミ君は静かにうなずいてくれた。
そして僕の目をじっと見てくれた。

「謝ってくれてありがとう、アオイさん…。
 …私こそ、言い過ぎました。
 ごめんなさい。
 
 感情的になってばかりじゃいけないって思って…。
 地球に戻ってから、色々調べたんです、ゴム弾を使えば本当に無傷で済むのかどうかを。
 …弾の性質にもよりますけど、打ち所が悪いと死亡したり重症化することも、
 決してあり得ないことじゃないそうです。
 
 実弾の場合でも、足や手を狙うのは、難しすぎますし、
 私も医療には心得がありますから、動脈に当たったら同じ事ですし。
 ミスマル提督だって、助からない可能性がありましたし…。
 
 …みんなにも聞いたんです、アオイさんの判断は間違っていたかどうか。
 
 やっぱり、アオイさんの方が正しいってみんな言ってました。
 私が無理なことを言ってたんです…。
 
 失礼なことを言ってごめんなさい、アオイさん」

…メグミ君は深々と頭を下げてくれた。
あれから二週間ほど経過したけど、メグミ君も必死に僕のことを考えてくれていたんだ。
お互い様、かな。
僕も深々と頭を下げて、謝った。

「僕もごめん。
 …一緒にナデシコを降りよう。
 マネージャー、やるから…僕も一生懸命やるからさ。
 色々教えてくれると、助かるな」

「はいっ!」

メグミ君は目を潤ませていたけど、にこっと笑ってくれた。
…かわいい。
僕は…こんなまっすぐな子を、見捨てようとしてたんだ。
ちょっとした機嫌の悪さだけで…。

…やりなおそう!


僕達の新しい道を、二人で切り開くんだ!



「踊りましょう、アオイさ…ジュンさん!」

「うん!
 メグミ…ちゃん!」

僕たちは、パーティ会場に戻ると舞踏会の第二部になだれ込んだ。
立食パーティが並行でされる中、ロクに練習してないでたらめなダンスで、
ちょっとみんなに笑われながらも、楽しんだ。
ホシノアキトもユリさんと軽やかに踊っていたし、
ユリカとテンカワも…カップルになってる人は大体踊っていた。

……僕に同情するように手を取ってくれたメグミちゃんが、
僕を…想像以上に深く見てくれていた。
二週間も放っておいたのに、振り向いてくれた。
分かり合って…ここまで想ってもらえるなんて、考えもしなかったよ。

こういうのが、幸せ、っていうのかな…?


…そして、僕たちが舞踏会の第二部を最後まで踊り切ると、時刻はすでに19時を過ぎていた。
最初の二人だけの舞踏会始まったのが15時だったからずいぶん経過したな。
どれくらいまでやるんだろうか。
プレミア国王は、夜通しでもいいと笑ってたけど…。


ざわざわ…。



「なんか騒がしいね」

「どうしたのかな…」

僕とメグミちゃんは軽食を食べながら二週間の時間を埋めるために他愛ない話をしていたが、
どこか会場内がざわめき始めて…僕たちは周りを見た。
従者の人たち、給仕の人たちも右往左往しているし、
ホシノアキトとユリさん、ユリカとテンカワ、ルリちゃんまであわただしく…。
なにが、あったんだろう。


「ラピスがどこに行ったか知らないか!?
 王城のどこにも姿が見当たらないんだ!!」



ホシノアキトの必死な…悲痛な叫びが、
和やかで楽しいパーティの空気を切り裂いて、響き渡った。
































〇作者あとがき
どうもこんばんわ、武説草です。
ジャック王子の失恋、ジュンの復縁、
ユリ、愛と怒りと悲しみの大説教。
そして甘々&ボケボケのアキト&ユリとラピスの再会でお送りしました。
ラピスが行方不明になった理由は、さてさて。
そして何かラピスがジュンに脈がありそうな風だったけど、
ジュンに見抜かれたように別に脈があるわけじゃなくて興味があっただけっぽい。
危ない状況になりつつありますが、詳しいことはまた次回、順を追っていきます。

ついに動き出した、クリムゾン率いる敵対連合の策とは一体!?

ってなわけで次回へ~~~~~~~~!!














代理人の感想
>・・・アホかーっ!
>何木連の人間を衆目にさらしとんのだ!?
>配慮以前の問題だよこれ!
>いやほんと、この事件だけでも普通に戦争再開まったなしやで・・・

この辺すごく悩んだんですが、書いてたらこうなってしまって(汗
確かに木連の人たちの受け入れを慎重にやるべきだったんですが、
すでに木連との和平会談の件もかなり大々的に明かされつつあり、木連の人についてもバレてます。
この辺の描写不足も響いてそうですが、それ以前かなとは我ながらちょっと思ってます。

今回は地球の政府および連合軍が押し付け的にアキトに受け入れをさせた結果として、
どうやってもPMCマルスのところから情報が洩れてしまうという問題点を(私が)解決できなかった、と。
監視カメラ、盗聴器、外部からの望遠レンズでの監視、およびアキトとPMCマルスに注目する人たち、
さらには遅かれ早かれプレハブ工事の規模、食料発注の数、PMCマルスの社員の動きなどからバレてしまい、
アキト達は人員の不足、外部の人員リソースを使えない諸事情から、手が回らず、事故ってしまったと。

描き方間違ったのもありますが、根本的に私が外交に関して良い判断が出来なかったのが主因です。
本来あるべき外交より個人の気持ちを優先してしまった感が…。
…で、今回の話では敵の方が突っ込む展開にしてみました。今回は敵の方が正常っていう。









>……名だたる芸能人、アイドル、下は5歳から上は60歳くらいまで…。
>死んだ祖母(明治生まれ)が尾崎豊の追っかけしてたんですよねえw
>当時既に70過ぎで、ファンクラブ最年長だったって自慢してましたよw
すごい豪傑だったんですねw
いや、女性の好きなものに対するバイタリティーっていうのはすごいものがありますね。
もちろん男性もすごい人はいるんですけど、なんか本当どうなってんなくらいの感じに。
そこんとこいくと今作のアキト、ホントアカンことになってきているような。
すでに全世界的に英雄以前に大スター、どころか木連にもファンができちゃって、
生き馬の目を抜く芸能界を走る、強い女性たちでさえもとりこにしてるって…影響がでかすぎる。

……木連禊ぎ暴力事件がかろうじて和平交渉にヒビが入らずに収まった理由って…まさか……。










~次回予告~
ラピスちゃん…いえ、ユリカです。
…感無量、って言葉がしっくりくるかな。
私は…世界中どこを探しても見つからないくらい愛情深い二人に想われてる。
ユリカとして生きた、勘違いと間違いだらけの一生を悔やむんじゃなくて、
このとっても大事な二人のために、これからも一生懸命生きようって決めた。
……それが一番幸せなんだって、思い知ったんだ。

ラピスちゃん。
私の今の気持ちを伝えたら、仲直りしてくれるかな?
バカな私だけど、アキトとユリちゃんと、ラピスちゃんと…。
この世界のアキトと私、ルリちゃん、そしてお父様と幸せに生きていきたいの。
自分の本当の気持ちを隠しても、自分に嘘をついても、何の意味もないって分かったの。
大事な人達と一緒に生きられる道を見つけるから…。

…だから、早く戻ってきてよぅ。

在宅勤務で体が弱って肩が重くなりすぎて前より打鍵速度が落ちてる作者が贈る、
急転直下式脳天杭打ち系、ナデシコ二次創作、
















『機動戦艦ナデシコD』
第七十一話:Dance!-舞踏会-その3


















をみんなで見てね。








































感想代理人プロフィール

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代理人の感想
アキトくん立場よわーいw
まあ日頃の行いのせいではあるがw

そしてめでたしめでたしと思ったら・・・おいおい。(頭を抱える)

>木連禊ぎ暴力事件がかろうじて和平交渉にヒビが入らずに収まった理由
・・・否定はできないかな(真顔)





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