【時刻─20:20】
〇地球・バルト海上空・ピースランド国用船──さつき
この国用船は本当はせいぜい60人くらいしか乗り込めないのに、
ナデシコのメインクルーと整備班の半数と、PMCマルス戦闘メインスタッフ112名、
さらにアクアフィルム御一行様に加えて、ミスマル提督まで乗り込んでるもんだからかなりぎゅうぎゅうづめ。
一応格納庫が存在するくらいの大きさはあるからかろうじて乗れなくはないんだけど…。
こんなんで戦闘しようもんなら、被弾したら装甲を破られなくても下手すると頭打って死亡もあり得るわね…。
…ピースランドで待ってりゃよかったかしら。
でも手が必要になりそうだし、心配だし…。
そして私達は廊下に並んで落ち込んでいる重子を見ていた。
何度も自分を責めてる様子だった…。

「…不覚だったわ。
 アキト様と一緒に居ればこんなこと起こるわけがないって思ってたもの…」

「だからあんなの読めないって、落ち着きなさいって」

「せめて一回占っておけばよかった…」

「だったら今からでも占いなさいよぅ。
 まだ終わってないでしょ?
 これからも読めないんだから」

「そ、そうね」

重子は顔を上げると、慌てるようにタロットカードをシャッフルし始めた。
みんなは固唾をのんでその様子を見ている。

「…私達がやるべきことを、はっきりさせておくわよ」

そして私達にカードを引くように言って、私と青葉とレオナが三枚のカードを重子に見せた。
重子は再び、ひどく驚いてうろたえた。

「……ちょっと気合入れないといけなさそうね。
 ブリッジに行くわよ」

「ええっ!?」

「驚いてる場合じゃないわよ。
 私達が動かなかったらラピスちゃんが助からないわ!」

やっぱりこれ占いっていうより予知よね。
……重子ってマジに神の啓示受けてんじゃないかしらね。


・・・・・。
・・・・。
・・・。
・・。
・。


そして、それから重子はこれまた窮屈なブリッジにたどり着くと、
ユリさんに重子、私、青葉、レオナは別行動を取ると告げた。
さらにそれから数人、アイちゃん、メグミちゃん、そしてアオイさんを貸してほしいと言った。
…人選が謎だわね。

「それは構いませんがどうするつもりですか?」

「ラピスちゃんをさらった犯人を私の占術で探し出します。
 占いによると、彼女から情報を聞き出さないとラピスちゃんが助かりません。
 …またスパイに疑われそうなことを言いだしているのは承知です」

「いえ、あなたのことは全面的に信頼してます。
 これまでのことも、ラピスの一件も、助かりました。
 …お任せします。
 当てはあるんでしょう?」

「はい」

ユリさんはユリカさんの方を見る。
同意しているのか、ユリカさんも深く頷いた。

「重子ちゃんの占いと活躍ぶりはすっごいよね。
 それに船頭多くして船山に上るっていうし、ちょっとみんなで来すぎちゃったよね…。
 現地についてから、混乱しないためにも役割分担もお願いしたいし。
 犯人の人にも一言言わないと私達も気が済まないもんね。
 …うまく捕まえてきてくれる?」

「はいっ!
 装甲服もありますし、とりあえず大丈夫です!」

ユリカさんはうんうんと何度もうなずいて私達に別行動の許可を出してくれた。
重子の占いを私達はあてにしてるけど…世間に聞かれたら卒倒されそうよね。
こんな命懸けの状況で占いなんて。
まあ知らぬが仏、知られないほうが重子のためにもなるし、アキト様のためだもの。


ぴっ!


『ユリちゃん、ユリカ義姉さん!
 こちらブローディア!
 敵の大艦隊に接敵した!

 しばらく食い止めるから、ルートを変更して先行してくれっ!

 必ず後から追いかける!!』


「「「「「!!」」」」」


私達が話し合いをしているそばでアキト様の通信が入って、ブリッジの空気が揺れた。
アキト様から送られてきたデータでは、20ものチューリップが大艦隊を成して迫っていた。
火星軌道上の戦いにも引けをとらないほどの物量に、全員が息をのんだ。

こんな時に…!



















『機動戦艦ナデシコD』
第七十三話:Dark Prison-闇の監獄-その2
























【時刻─20:20】
〇地球・バルト海上空・ピースランド国用船──ウリバタケ

「てめぇら~~~~~~!!
 わかってんだろうなぁ~~~~ッ!?

 今回はある程度整備が行き届いてるから点検を優先して、
 残りの時間はパイロットの癖に合わせたチューニングだぁ!
 できるだけ遜色なく動けるようにしてやるんだ!

 あと40分しかねぇぞ~~~~~~!」


「「「「うーーーーーーっすっ!!」」」」



俺たちは限られた時間で、出来るだけの整備が出来るように気合を入れて整備を始めていた。
最も、資材も限られているのでチューニングが限界ってのが手痛いが…。
それでも空戦エステバリスなので、十分に扱えるようにはできる。
予備パーツはせいぜい一機分しかねぇし、改造パーツが使えないのは仕方ねぇ。
あとは…と。

「父ちゃーーーん、がんばれーーーっ!」

「がんばれー!」

「たー!たー!」

「だぁっ!?
 なんでお前らまでついてきてんだよ!?」

「子供たちにあんたの働きぶりを見せに来たに決まってんじゃないか」

「余計なことしてんじゃねえっての!」

俺は一瞬だけ横目で、ついてきたオリエと俺のガキたちを見て、
さっさとエステバリスの膝関節の様子を見続けた。
気が散るってんだよったく。

「あんた、子供の運動会にも授業参観にも来ないじゃないか!
 だったらこっちから見に来てやろうって言ってんだよ!」

「そうだそうだぁ!」

「そーだー!」

「たーたー!」


「ちぃっ!

 だったらその目に焼き付けやがれってんだぁ!

 そうそう拝めるもんじゃねぇぞ!

 このウリバタケセイヤ様の、超絶整備技術をなぁっ!

 俺と、ナデシコが誇る整備班が居なきゃぁ…!
 
 あのホシノアキトだって戦えやしねぇんだぜぇっ!」



俺はメガネレンチを手元で軽く弄ぶと、ボルトを軽くたたいて緩みを確認すると、
手早く締めて、そのまま関節部に次々と確認して油をさし始めた。
ったく、腕がなってねぇんだよな、ピースランドの整備員は!
見た目ばっかりこだわって、大事な関節の油までケチってやがる!
実地で習ってんのかったくよぉ!

「…班長燃えてんなぁ~」

「普段の態度と裏腹に、意外と家族思いだよなー」


「ッるっせえ!

 口じゃなくて手ぇ動かせ、バカヤローッ!」



















【時刻─20:20】
〇地球・ストックホルム市街地・高層廃墟ビル──ラピス
私は再び一人きりになって…。
ビルの周りにバッタがうようよし始めて、絶望的な気分に揺られている。
…ハーリー君との通話が切れて心細くなってきちゃった。
たぶん、チャフかなんかが撒かれちゃったんだと思う。
ユーチャリスも迫ってるけど、ビルの倒壊を恐れて攻撃が出来ず、
つかず離れずでバッタと戦ってるみたいだけど、消極的すぎて戦いになってない。

で、でも、諦めちゃダメ…頑張らなきゃ…。


ごりっ、ごり…。



私は地道にペンダント型通信機のボールチェーンを使って、手錠の鎖が切れないか試した。
普通のボールチェーンだったら無理だけど、ウリバタケさん特製の特殊金属製だからもしかしたら…。


ぶちっ!



「だ、だめかぁ…」

でも、手錠の鎖の方が頑丈な金属だったらしくて、ボールチェーンがちぎれた…。
ううぅ…意地悪…。

「うぅうう~~~~っ!
 ぐずっ…この腕くらいなくなってもいいから逃げさせてよぅ…」

私は右手が痛むほど、骨がきしむほどもがいて手錠が取れないかどうかとあがくものの、
僅かに排水管がきしむだけで全然取れる様子がない。無理かなぁ…。
ううん、最後まで諦めちゃダメ、頑張れ私!

私が頑張らなきゃ、アキトもユリちゃんもダメになっちゃうんだからっ!
ラピスちゃんの未来を、私が奪うわけにもいかないもんっ!

「ちょっとずつでも、可能性を引き寄せないと…!」

今度は手錠の鎖を使って、手錠が引っかかってる排水管の金具の方を削り始めた。
こんなものじゃ意味がなさそうだけど、こうしてないと焦りで心がダメになっちゃう!
特殊な金属でできてるなら、排水管の金具くらいは壊せるかもしれないもん!

でも、あと一時間半くらいしか…!
早く、助けてよぉ…っ!














【時刻─20:20】
〇地球・ストックホルム市街地・廃墟のマンション──テツヤ
俺はラピスラズリの様子を望遠鏡で確認した。
手錠の鎖の材質に気付いたのか、今度は金具の方を削ろうとしているな。
いいねぇ、必死にあがいてる姿ってのは。
もしかしたらあと何時間で脱出できるかもしれんが、それまでにはタイムアップだ。
助かるわけがねぇんだよ、この状況じゃな。
救助隊が駆けつけるにもバッタがうろついてて、
バッタを蹴散らすにもパイロットの腕がなけりゃ巻き込んでお陀仏だ。
そして確実に助ける支援のできるナデシコとPMCマルスの連中は、ピースランドに居る。
どんなに急いでもピースランドからじゃ一時間はかかる。
エステバリスをすぐに準備もできないだろう、ナデシコもオーバーホール中で持ってこれない。
ブローディア用の足止めに、虎の子の『地球側に与えられた』チューリップ四十基のうちの半数も寄越した。
ホシノアキトも負けないまでもボロボロになるのは目に見えてる。
それまでには時間切れだぜ。
どこをとっても奴らには万に一つの勝ち目もねぇ。

…それにしても、まさかペンダント型通信機とはな。

中々しゃれたものをもってやがった。ちょっと幼稚だがな。
それでも確実に地球と木連の間を割けるはずだった一撃を回避しやがった。
連中もやるじゃねぇか。

しかしそれもすでに無効だ、チャフを撒いたのは正解だったな。
タイミングよくラピスラズリの意識を覚醒させる調整、ライザもいい仕事をするぜ。
しかしチャフを撒いた状態ではこちらからも爆破はできんし、
トカゲどもにラピスラズリの抹殺指令が出せなくなってるのが手痛い。
ま、蟻地獄に囚われてる状態ではどうしようもねェがな。

「ククク…ライザが戻るまでしばらく楽しませてもらおうじゃねぇか。
 踊れ踊れ、お姫様気取りがよ」

10時の爆弾を回避できても、12時には魔法が解けることになってる。
囚われのシンデレラにはお似合いの最後だろうぜ。


















【時刻─20:25】
〇地球・バルト海上空・ピースランド国用船・ブリッジ──ミスマル提督

「お、おい艦長、出撃しねぇのか!?」

「スバルさん、ダメ!
 あの兵力に構ってたら、時間切れでラピスちゃんが死んじゃうよ!
 それに重力波ビームもないんだから、戦ってたらみんなも危ないし!
 だから遠回りしていこう!
 アキト達は大丈夫、いざとなったら逃げてくれるはずだもん!」

ユリカはパイロット達の焦りを静めるように冷静に判断を下した。
うむ、さすが私の娘だ。
冷静で的確な判断力を持っている。
この国用船での戦闘は自殺行為だ。
ただでさえ人員がぎゅうぎゅう詰めで来てしまっている。
少しの衝撃が死亡につながりかねない。
エステバリスもユーチャリスの重力波ビームの圏内に行くまでは慎重にならざるを得ない。
それにアキト君なら大丈夫だろう。
あの火星での死闘をかいくぐった二人なら問題はまったくあるまい。

「…でもちょっと戦力が心もとないね。
 エステバリスも四台きりじゃ…」

「空戦エステバリスが多いのはいいんですが、弾薬も足りませんし…。
 PMCマルスの初期の戦力と大差ありませんからね…」

「弾薬はユーチャリスの借りればいいと思うけど、それだけで何とかなるかな…」

ユリカとユリは二人で考え込んでいたが、結論は出ていないようだ。
あっちについてからの戦力不足、だな。
ユーチャリスが居るといえ、連合軍のエステバリスを借りるわけにもいかん。
私でも手続きなしにそんなことはできん。
さすがに空戦エステバリスがあるとはいえ、ちょっと厳しいだろう。

「あっ」

ルリ君が席にもつかず、ユリの隣で考え込んでいたが、
何かを閃いて端末を操作して確認を取り、電話を始めた。
むむ、騒ぎ声で聞こえんが…。

「ユリカ姉さん、ユリ姉さん、ちょっと…」

そしてルリ君は二人に耳打ちをしてごにょごにょ話し始めたが…。

「うん!いいねそれ!
 ルリちゃんさえてるぅっ!」

「それなら間に合うかもしれませんね。
 ルリ、あなたに任せます」

「ぶい。
 先方には悪いですが、緊急事態なので出てきてもらうことにしました。
 私はナオさんとPMCマルスの残りのパイロットのみんなを借ります。
 あと天龍兄弟も、連れて来てください」

「お、おい、何をしでかすつもりなんだ、ユリカ、ユリ、ルリ君」

ユリカは手を打ってにっこり了承したが、
私は経緯がつかめず、うろたえることしかできなかった。

「私はストックホルムの一つ前の、ゼーデルマルムで途中下車します。
 ちょっと戦力の現地調達に行ってきますんで。
 それでは、人を集めてきます」

…戦力の現地調達?
そんなことができるのはゲームくらいのものだと思うが。
その辺に都合よくスティンガーミサイルがあるとか…。
い、いやそんなことはどうでもいい。

「ユリカ、ユリ、いいのか行かせて!?」

「ルリちゃんがここで途中下車するのは敵も知らないはずですよ、お父様」

「そうです。
 さすがにすぐに邪魔に来れるとは思いませんし。
 ボディーガードもついていきますし」

「し、しかし…」

「それにルリも私も、オモイカネシステムのない船では役立たずですから」

「そんなことはないぞ、ユリ。
 お前の働きぶりはみんなが認めているだろう。
 ルリ君だって、気を利かせてくれる。
 
 …それはそれとしてだ、戦力が少ないのは問題だろう。
 連合軍も厳しい戦いだろうが、戦力を回してもらってだな…」

「あら、そんなのダメですよぅ。
 今回は木連との歴史的な共同戦線ってことでテレビ中継されてるんです。
 連合軍だって、生放送の最中で誰かを死なせるような戦い方はできませんし、
 ラピスちゃんだって、自分のせいで死人が出たってなったら悲しみます。
 あくまでラピスちゃんの件は、私達で何とかしましょう」

「そうです。
 ラピスの救出にテレビ中継が気づかないうちにさっさと片を付けます。
 …ま、実はそっちもあてがあるんですけど」

「なに?」

……いつの間にそんな仕込みをしておいたんだ、ユリは。
ま、まあ…我が娘ながら二手三手先の準備が得意だからな、ラピスもだが。

そして、ついにゼーデルマルムに到着して、時刻は21時だ。
ついでにエステバリス隊も出撃した。
もう距離的にすぐ到着できるポイントに来てくれたからよかった。
ここから駆け付ければ十分間に合うだろう。

さらに犯人探しをするというPMCマルスの社員に、なぜかアオイ君たちまでついていった。
ここで君たちも降りるのか…本当に犯人はつかまるんだろうか…?

















【時刻─20:50】
〇地球・ストックホルム市街地上空・かぐらづき──三郎太
戦闘が始まってそろそろ小一時間か……きついな。
敵の戦力の多さもだが、地球製の艦載機、戦闘機が不利になりすぎる。
我らのゲキガン兵器による攻撃で多少有利にはなるが、数の不利を覆せない。
このままではジリ貧になるぞ…!

「マジン三番機、中破っ!後退します!」

「このままでは不利だな…。
 …仕方ない、こちらの艦載バッタを使って敵バッタをうまく誘導してみろ!
 時間稼ぎにしかならんだろうが、うまくやれば特攻させることも可能だ!」

艦載バッタは補充のアテがないのであまり使いたくなかったが、この際仕方ない。
…人命には代えられんからな。
それにしても、あのバール少将…。
俺たちにグラビティブラストを撃たせようとしたのは、故意なんだろうか。
やはり地球人は悪だというのか…?

いや、違う。
善悪はやはり個人に依存する。
バール少将も誰かに命令されてのことかもしれない。
ムネタケ艦長が危険を察知して制止した時、彼もうろたえていたからな…。
この期に及んで迷うようでは、俺もその程度の男だ。


男を見せろ、三郎太!

俺がやらずに誰がやるっ!


「各員に通達する!
 改めて言うが、君たちを失うわけにはいかない!
 草壁閣下が、我々をどれだけ案じていたかを考えろ!
 そしてラピスラズリも、自分を救助するためにユーチャリスが離脱したことで、
 戦力不足に陥って死人を出したとなれば自分を責めてしまうだろう!
 
 か弱き少女を悲しませるような戦いは、木連優人部隊の恥だぞっ!
 
 必ず生きて戻れよっ!」


「「「『『『応ッ!!』』』」」」



ふ…たくましい連中だぜ。
だが、どうする!?
さすがに連合軍の艦隊も疲労の色が濃い…このままでは…。


「か、艦長代理!」


「どうした!?」


「格納庫に、虚無僧の笠をかぶった四人組が現れて、

 念のために預かっていたブラックサレナに乗り込みました!!」


「なにっ!?」


「す、すでに起動しています…!」



ホシノアキトたちは、私達を信頼してもしもの時のためにブラックサレナ二機を預けていった。
この二機を使わなければいけない時が来るかもしれないからと…。
ユーチャリスに預けるほうがいいかと思っていたが、なぜだ!?
鍵は俺が預かっている鍵以外は、ホシノアキト達だけが持っていたはず、なぜ起動してるんだ!?


ぴっ!


『三郎太艦長代理、発艦許可をお願いします』


「「「「じょ、女性!?」」」」



そしてそのブラックサレナから聞こえてきた声は女性、声の質からして妙齢の女性だと思うが…。
虚無僧笠の女性は、胸を張って堂々たる姿で後部操縦席に座っている。
ちなみに、前の座席に乗っているのは作務衣の男だ。
こちらもかなりの風格を持った…熟練の戦士のように見える。

『ホシノアキトさんから代理を申し付けられました。
 素性は言えませんが、緊急事態に備えて乗り込んでいた者です。
 敵を押し返すのに力添えさせていただきます。
 電子電報でこの艦にも連絡が来ているはずです』

「た、確かに緊急時に虚無僧姿の人間がブラックサレナに乗り込むと連絡がありました!
 ホシノアキトのアドレスから来ています!
 緊急時になるまで開けるな、と書いてあったのでまだ開封してはいなかったんですが…」

「な、なんだって…」

ホシノアキト直々の連絡があった、だって…。
この事態に対応する策をあらかじめ準備していたとは、恐れ入る。

「…では発艦許可を出します。
 ホシノアキトの推薦であれば、確かです。
 …それにあなたはこの状況下で、我々の止める隙もなく乗り込める人です。
 敵であれば許可もなく出ていったことでしょう」

『感謝いたします。
 

 …では、参りますッ!』


どうっ!



虚無僧笠をかぶった女性は、堂々たる掛け声とともに、出撃した。
ブラックサレナが持ち込まれた時、色が変わってると思って驚いたが…。
彼女は深い紅色のブラックサレナ、そしてもう一台のブラックサレナは鮮やかな桜色になっていた。
ユリさんは、『ちょっと印象が悪役っぽいので変えてみました』と、言っていたが…。

いや、そんなことはいい。
あの火星軌道上での死闘を生き抜いた高性能なブラックサレナであれば、
どんなレベルのパイロットであれ、役に立たないということはない。
ましてホシノアキトの推薦とあれば半端な人間であるはずがない。

俺たちも負けてられないぞ!

「俺たちも遅れるな!
 艦載バッタの準備急げっ!」

俺たちも急いで準備を進めようと声を掛け合っていたが、直後…。


どどどどどーーーーんっ!


「な、なんだぁっ!?」



「二機のブラックサレナは、例のDFSという武器を使って敵戦艦を多数撃破!
 敵バッタと戦艦が警戒して殺到しています!」

直後に聞こえてきた爆音に気付いてモニターを見たが、
操艦手の言葉通り、激闘するブラックサレナ二機の雄姿が見えた。

嘘だろ!?
あの武器は制御が難しく、ホシノアキトとテンカワアキト、
それにMoonAngelsのアリサ、サラ姉妹しか使えないという話だったが…。

「天は我らに味方せり…ってところだな。


 彼らに後れを取るなよ!

 助けられてばかりでは木連将校のメンツが丸つぶれだッ!」


「「「『『『応ッ!!』』』」」」



…しかし女性の兵士でこんなに強い人がいるとは。
木連の優華部隊も中々の実力を持っているが、今回は控えの状態だ。
ということは、おそらく地球の兵士だろう…。
もしかしたら火星のスタジアムで戦っていたあの北斗、枝織姉妹の可能性もあるが…。
あれはショープロレスだったという噂の方が濃厚だからな。
いや、片方の桜色の方はそうかもしれないが、
深い紅色のブラックサレナには妙齢の女性と男性が乗り込んでいる。
そんな二人が居るという話は木連の内部では聞かない。
そうなると、やはり地球人の説が濃厚だろう。
木連の兵士であるなら名を聞かないはずはないし、
素性を明かして堂々と乗り込んで説明するはずだ。
地球人がこの時期に木連の船に乗るとなると問題があるので、素性を言えないということだろう。

とにかく、俺たちが持ちこたえないとラピスラズリの救出もままならない!
やるしかない!





















【時刻─20:53】
〇地球・ストックホルム市街地上空・紅色のブラックサレナ・アサルトピット──北辰

「あなた、もう少しマシな変装はなかったんですか!?
 もしものために潜んでおくってことだったとはいえ、
 怪しすぎです!」

「ぬ、ぬう…。
 せっかく我がよなべして作っておいたというのに…」

「そういう問題じゃありません!
 怪しまれて拒絶されたらどうするつもりだったんですか!?」

「だ、だから戦況が危なくなるまで引っ込んでいたんだろう!?」

…我は激闘の最中、我的にはどうでもよいことで怒られていた。
すでに脱ぎ去っているが、先ほどの虚無僧笠についてだ…。

実際、難ありと言われるとそんな気もしてくるが、へるめっとというのは性に合わん…。
兜の準備もあるが、あれは顔が出てしまうからな。それに我の分しかなく、さすがに兜は作れん。
しかし、予想通りというかさな子はさすがだ…。
我でもここまで見事なDFSの刃の生成はできぬというのに。

さな子はDFS生成師を努めるためだけにIFSを入れてくれた。
我らがブラックサレナに乗るのは今回、この一回きりになるかもしれないというのにだ。

十年以上ぶりになるというのに、我がブラックサレナで出撃すると言うと、
元来のブラックサレナの火力が貧弱だということで、すぐに準備をしてくれた。
DFSを発生させるのは我でも至難の業、一人では相当の集中が必要だった。
だが…さすがだな。

「さすがだな、さな子。
 十年以上も開きがあるというのに、その精神の鋭さは変わらずか」

「当たり前です!
 病床から戻った後、あなたの力になれるように回復に努めてきましたから!
 あなたと北斗、枝織が危機に陥った時にいつでも助けられるようにと!
 

 それに、木連式柔一本筋だったあなたに剣を教えたのは私です!

 
 空に剣を思い浮かべるなど、造作もありません!」

「そうだな…」

…さな子は機動兵器の操縦は覚えておらぬが、剣術の腕前は木連でも随一だ。
それが表沙汰になっていないのは、木連刀を扱う武道を禁じたことにある。

絶対数が少ない木連にあって、柔以上に直接人を死に至らしめる剣の道は忌避され、
代わりに暗殺のための武器として、刀への防御手段を持たせぬまま攻撃できるように法を作った。
そのため、さな子は我と結ばれる前は『里』の指導教官であったことすらある。

そして我も、北辰一刀流の家元である影守家の家督を継ぐというので、
婿養子になって改名し『北辰』を名乗ることになった。
これは『里』で随一の実力を得た我に与えられた、最高の栄誉だった。

だが、暗殺者として名が知れてしまい、木連を離れることになった今となっては、儚いものだ。
我の築いたものは、脆くも崩れ去り、地球でただの男に戻らざるを得なくなってしまった。
…いや。

「さな子…。
 この死んだ街に、幾つ、我らのような家族があったろうな。
 時代に、国家に、戦争に、引き裂かれた者は数知れんだろう」

「…ええ」

そしてこの悲劇は木連が引き起こしたものだ。
ヤマサキにすべて背負わせて我らが無罪放免とはならない。
木連の、真の戦いはこれからも続いていくだろう。

これまでは木連を背負う気概を持って、我も戦っていた。
こんな悲劇を引き起こすことが分かっていながらな。
だが、それも終わってしまった…。

いや、我はただの男で良い。
妻と、娘二人のために生きるだけの男で良い。

そして今は…この瞬間だけは…。
自分の意思で、木連のため、地球のためにも戦おう。
その後は…。

「……なあ、さな子」

「なんですか、あなた」

「…すまなかった」

「謝っていただくことなんて何もありませんよ」

…謝罪の言葉は、要らぬか。
ならせめて──。

「では、ことが落ち着いたら、しばらく暇をもらおうか」

「ええ…。
 話したいことは、たくさんありますから」

…そうだな。
さな子は、我にはもったいないくらいの女だ。
苦労を掛けた分は、せめて温かな時間を過ごそう。
我には、そんな資格などないと思っていたが…。
そのためには…。

「行くぞ、さな子」

「ええ」

「…生きて戻るぞ」

「…はい」

それ以上、必要はない。
この戦いでは生きて帰るだけが望み。
それだけの機体を預けてもらった。
未来の宿敵であった、あのアキト殿の機体を。

そうだ…これは…。

多くの幸せを奪った木連の…。
信念のために外道と成り果てるはずだった草壁閣下の…。

…そして我の、償い。

ホシノアキトの…我のあずかり知らぬ『あるはずだった未来』。
我が奪った、奪うはずだった未来を…。



今度は我が、貴殿に届けて見せる!!

















【時刻─20:53】
〇地球・ストックホルム市街地上空・桜色のブラックサレナ・アサルトピット──枝織

「枝織、お前ってやつは…!
 こんな恥ずかしい色にしやがって、何を考えてる!?」

「ええ~~~~?
 だって北ちゃんが悪いんじゃない。
 色が気に入らないならお父様の方に乗ればよかったのに。
 せっかくだからかわいい方がいいじゃない」


「ぬぁ~~~~馬鹿をいうなぁ~~~~っ!
 
 あのクソ親父と一緒に乗れるかぁっ!!」



うふふ、北ちゃんってばからかい甲斐があるよね。
男の子として育てられたせいでちょっと変なプライドがあるんだよね。
お父様にすっごい対抗心燃やすんだもん。
お母様が生きてたからそれなりに許してるくせに。反抗期かな。

「で、どうする?
 イライラしてるんなら、そろそろ代わろっか?」

「…ッ。
 操縦を寄越せ!」

「はいはい~。
 軽くやっつけちゃおうか。
 ここに来るまでの間でも、シミュレーターで遊んでたもんね~」

「遊び気分でやってる場合か。
 さっさと蹴散らすぞ!」

「分かってるよ~」

とはいえこんな雲霞みたいな敵の数じゃ、何時間かかっちゃうかなぁ。
私達が代わりばんこにやっていけばそれなりにやっつけられるとは思うけどね。

「…こんな風に親父と、母上と、お前と戦うなんて思ってなかった。
 あの日に、俺たちのすべてが変わったんだよな」

「アー君とテン君のおかげだよね♪
 あ、草壁閣下もかな?」

「…まあ否定はしないがな。
 もしあの三人が未来から来てなかったら…俺たちはどうなってたんだろうな?」

「…うん。
 お父様と草壁閣下相手じゃどうしようもなくって、
 一生ずうっと離れ離れだったかも」

救いがない未来しかないなぁ、それじゃ。
北ちゃんは退屈な警護の仕事をずっと続けてて、
私はお父様の後を継いで暗殺業一本筋。
二人とも仕事がない時は座敷牢でごろごろしてるだけの、つまらない生活。
それじゃ嫌になっちゃって、やめちゃってたかもね…。
そういえば…。

「北ちゃんは、零ちゃんがどうしてるか知ってる?
 最近会ってないの」

「…ああ。
 零夜はあっちでは俺の面倒を見てくれたが最近は会ってない。
 俺たちに久しぶりに家族水入らずの生活をしてほしいって気を遣ってるが…。
 
 …そろそろ、また会ってやるかな」

「じゃあ、一緒に出掛けようよぅ!
 地球っていっぱい娯楽があるし、おいしい物もいっぱいあるんでしょ!」

「…らしいな。
 ナデシコ食堂には負けるっていうが、それでも木連とじゃ段ちだろう。
 火星の食材はちょっとはマシだったけどな。
 お前のことだがまた女っぽいところに行くんだろ…まあ、付き合ってやるよ。
 
 …ただし、誰か地球人を連れて来い。
 方向感覚が悪い俺とお前じゃ迷うだろ」

「じゃあじゃあアー君がいい?テン君がいい?」

「バカ、既婚者連れて遊びに行けるか。
 それにホシノじゃ目立つだろ。テンカワでいい。
 名が売れて失敗するなんて親父と同じ轍を踏むのも癪だ」

「ぶーーっ!
 アー君の方が私はお気に入りなのに!」

…ったく、戦いながらする話じゃないな。
まあ、明日の予定なんて考えたこともない俺たちだ。
ちょっとくらい普通な生活を夢見たって、罰は当たらないだろ。

…腑抜けたかな、俺も。














【時刻─21:00】
〇地球・ゼーデルマルム・ロボットディーラー『my road, run』──ナオ
俺と、ルリちゃん、アイちゃん、メグミちゃん、アオイ副長、
重子ちゃん、さつきちゃん、青葉ちゃん、レオナちゃん、PMCマルスのパイロット八人、
そして天龍兄弟が降り立って、ぞろぞろとこのロボット・ディーラーに進んだ。

「…でなー、ストックホルムが襲撃受けて人が居なくなっただろ?
 このあたりも危ないっちゃ危ないんだが、小型チューリップは休眠状態だし、
 かろうじて生活はできてても、経営の危機なんだわー。
 せっかくステルンクーゲルminiのヒットで起動に乗り始めたってのによぉ」

「そら災難だわなぁ。
 …おい、客だぞ。
 さっき電話のあった人じゃねぇか?」

「あん?」

外でステルンクーゲルminiの整備をしていた、ちょっと柄の悪い男たちが振り返った。
こいつら店員みたいだがどうやら会話の通り、不景気らしいな。
……まあ、これは一気に持ち直しそうだが。

「こんばんわ、ホシノルリです」


「「なっ!?
 ピースランドのお姫様がなんでこんなところに!?」」



「ちょっと諸事情ありまして、戦力が欲しいんです。
 ひいふうみい…ステルンクーゲルが十台ですか。
 ステルンクーゲルminiはちょっと危ないですし、ステルンクーゲルだけでいいですね。
 …売ってくれますよね?」

「そっ、そりゃもちろんっすけど…。
 でも書類とか、法的な所とか、
 もろもろの手続きがあるんで今日すぐってわけには…」

ルリちゃんの言いように、店員はすぐに戦力が欲しいということを察したのか、
断りたくもなさそうにしながらも、焦っている様子だった。
ステルンクーゲル十台っていやぁ…確か陸戦エステバリスの半額で、日本円で一台当たり五億円だ。
十台で五十億円。整備費用コミで考えたら、おそらく五十五億円になるな…。
いや、税金とかも考えたら六十億から七十億超えるくらいか…。

…いくら困ってる状況でも、この場で売れって言われたら冷や汗かくだろうな。

「今すぐ売ってください。
 一分一秒ムダにできません、私の大事な家族の命がかかってます」

「で、でも──」

ルリちゃんはいら立ったのか、一歩前に進んで、座った目で男を睨んだ。

「急いでます。
 多少違法行為かもしれませんが、いざとなったらミスマル提督、
 私のお父さんの名前を出していいです。なんとかなります。
 
 それにPMCマルスはPMCの免許があります。
 戦力補充のための外国での、ロボット公式ディーラーでの購入は許されてます。
 そもそもPMCマルスに売るなら誰も文句言いませんよ。

 お金も心配いりません。
 不満なら私の今動かせる三億ドル、すべて払ってもいいです」


「「「「「さ、三億ドル!?」」」」」



「あ、税金とか手数料とか込み込みでお願いします。
 私これ使っちゃうとほとんど無一文なので」

ルリちゃんの爆弾発言に全員が叫ぶしかなかった。
ルリちゃんの取り出した、子供らしい可愛らしい財布から出てきた、ピースランドのカード。
ピースランドのカードは国際信用が極端に高く、
クレジットカードでもないのに即時引き落としができるようになっている。
あまりに高額だと即時連絡が本人に届くようになっているが、先行してピースランドにも電話済みらしい。
…ルリちゃん、抜け目ないな。

「あと、これは純粋に脅しなんですが。
 …ここで私達の頼みを断ったら、店がつぶれるだけですみますか?」

「「うっ!?」」

「……ルリちゃん、緊急時とはいえ脅しちゃダメだろ」

「でも事実ですし、仕方なくないですか?
 まあ売らなくても私達は咎めませんが、事実を広めるくらいはします。
 仮にここで補給できないで、私達がラピスを失ったと知れたらどうなるか。
 分からないわけじゃないですよね?おにーさん?」

……まあ、考えうる限り最悪の中の最悪の結末が来るな。
暴動の果てに、ここに置いてあるステルンクーゲルたちを奪われたり、
私刑にかけられるなんて事態もあり得る。
ルリちゃんの育ての両親も、人体実験にルリちゃんを使ってたと知られた時危なかったらしいもんなぁ。

「う、う、う…ら、ラピスちゃんが危ないんすね…」

「はい。
 代わりにラピスが助かったら、恩人だっていっぱい宣伝してあげますよ。
 どうしても欲しいんです、お願いです。
 なので購入額の何倍も払うので危ない橋を渡ってほしいんです。

 あ、ついでにそこの車両も二台もらっていいですか。
 移動手段が必要なので、おまけに」


「ぐう~~~~~~っ!!

 そこまでお姫様に言われちゃ俺たちだって引き下がれるかっ!
 
 英雄の助けになって、宣伝にもなるんだから断れねぇよ!

 どうせストックホルムの小型チューリップを壊しに行くんだろ!?
 

 だったら願ったり叶ったりだってんだ!
 不景気な街で人生終わるのはごめんだぜ!
 もってけ、ドロボー!
 じゃなくて、もってけ、お姫様!
 
 絶対やっつけてくれよ!!」



「…!
 ありがとう!」

「書類はこっちで何とかするから、契約書にサインと、決済だけ頼むぜ!」

「はい!」

男は真っ白な紙に、サイン記入欄だけ準備してある書類を寄越した。

……おいおい、まさか普段からサインだけさせて、あとから契約内容を印刷してんのか?
今回は助かったが、あんまりアコギなことしてると長続きしねぇと思うんだが…。
それから、俺たちは大急ぎで準備をし始めたが…。

「ルリちゃん、準備に時間かかるわよね!?
 私達はこのワゴンで先行するわよ!
 事務員さんを助けに行かないと!」

「…捕まえるんじゃなくて、助けに行かないといけない状態なんですね?」

「そうなの!
 占いにばっちりでちゃってんのよ!
 だから医療に詳しい二人と、医療キット、なだめる役割のアオイさんを呼んだの!」

「ぼ、僕ってなだめる役なのかい?」

…PMCマルス名物、重子ちゃんの占い神託だな。
まあ、本当に当たっちゃうんだから怖いよな。
あの後こっそり聞いたが、ラピスちゃんのウイルスの時もこの占いで何とかしたそうだし…。

……本物っているんだよな、居るところには。

「では準備しますから、乗り込んでください」


「「「「「「「「「「「「おーーーーーーっ!!」」」」」」」」」」」」



・・・・・。
・・・・。
・・・。
・・。
・。


「じゃあ、行きますよナオさん」

「おう」


ぶろろろろ…。



俺たちは超大型のトレーラーにありったけの弾薬を積み込み、走らせた。
ステルンクーゲルはローラーダッシュでついてくる形になった。
一応ステルンクーゲルも重力波ビームには対応しているらしいので、現地に到着すれば何とかなる。
だが…。

「ルリちゃん、どこで三億ドルも…いや想像はつくけどよ…」

「父と母にピース銀行のカードを渡されました。
 ナデシコのお披露目会の時に。
 こういう、会社が危ないとか、
 家族が危なくなったり、どうしようもない時に使えって」

「やっぱりか…。
 だが、本当に必要になるなんてな。
 さすが一国一城の主ってところか、先見性がある」

「ええ、本当に。
 これがなかったら父でもすぐには動けないでしょうから」

緊急時とはいえ、直接国王がディーラーにお願いするのは諸事情を鑑みると厳しいだろう。
あくまでPMCマルスって会社ありきで交渉しないと無理があるんだろう。
少なくとも通販の許可なしに電話一本で販売したらまずい業態だからな、兵器商やロボットディーラーってのは。
ストックホルムの近くに、直談判できる店があったのが幸運だったんだろうな。

「とにかく、ちょっと心もとないですけど戦力が手に入りました。
 あとはユリカ姉さんに作戦指揮をお願いして、
 出来る限り敵をひきつけて撃破するように努めましょう。
 
 ……ただ、もう爆弾の爆発まで時間がありません。
 ラピスの捕らえられてる場所は百階建ての建物の中段、五十一階みたいですし、
 ある程度敵戦力を減らして救助隊がビルに突入、
 さらに行って帰るまでの時間を考えると、本当にギリギリです」

「だよな…。
 だけど、こんな時に重子ちゃん達は犯人を捕まえに行ったんだろ?
 俺も行かなくてよかったのか?」

「重子さんの占い、本当に当たるんで大丈夫だと思います。
 必要ならナオさんも呼ばれてるはずですし」

「そりゃま、そうか」

「…とにかく飛ばしてください。
 私もちょっと、あんまり心が持たないんで…」

「…おう」

…ルリちゃんはかなり焦燥感に駆られてる。
どんなに頭が回るすごい子でも、まだ子供、しかも女の子だ。
胸がつぶれるような気持ちになっているのは間違いないな…。


……生きてろよ、ラピスちゃん!


















【時刻─21:02】
〇地球・ストックホルム市街地上空・ピースランド国用船──ユリ

「ムネタケ提督、ラピスちゃんは無事ですか!?」

『ええ、まだ生きてるわよ!
 望遠で確認できてるわ!』

私達が近づいてきたのに気付いて、ユーチャリスは少しだけ廃墟ビルから離れて通信してくれました。
そしてユリカさんとムネタケ提督の会話に、私達は胸をなでおろしました。
まずは一安心です。油断はできませんけど。
ようやく私達はついにストックホルムに到着しました。
しかし時限爆弾のタイマーは一時間を切っています。
何とか助けないと…!

「エステバリス隊のみんなは出撃してください!
 分かってると思いますけど、
 敵をビルから遠ざけてから撃破しないとダメですよぅ!」

『任せろ艦長!』

『はいは~~~い!』

『おっとり刀で登場したらおっとりになってひきつけるってね…。
 あは…はっはははは…』


『ちょっと待った~~~~!?

 なんで俺が陸戦なんだよぉ!?』


「ヤマダさんはこういう細かいの苦手ですから、救出隊の警護お願いします!」


『な、納得いかん!』



……いえ、どの口がそんなこと言ってんです?
射撃下手がラピッドライフル振り回してたらどうなるか…。
いえ、そんなことはどうでもいいです。本当にどうでもいいです。

「この状況では全滅させるのは厳しいかもしれませんが、
 救出隊が乗り込めるくらいに蹴散らせば十分です。
 あとは脱出時にもエスコートが必要ですけど」

「そうよね~。
 できればホシノアキトくんが迎えに来てくれるのがベストだけど、
 そうもいかないかもしれないし、ヤマダ君頑張ってね~」

『ちっくしょう、やるっきゃねえか…』

ミナトさんの軽口にヤマダさんはがっくりと肩を落としてしまいました。
さすがに期待されてないのが分かってるからでしょうね、今回は。
ご愁傷様です。

そして、戦闘が始まりましたが…。
やはり連合軍のパイロットではこの状況では全く歯が立たないでしょうけど、
さすがに練度が違います。
リョーコさんとヒカルさん、イズミさんは小型チューリップから途切れもなく出てくるバッタに押し負けません。

『へっ!のろいのろい!』

『ちょっと砲戦フレームのキャノンが欲しくなっちゃうね~~~!』

『スナイパーライフルの方がマシよ、この状況じゃ』

そういいながらも、ラピッドライフルでどんどん数を減らしていきますね。
でも戦闘開始十分でこの減り方では、間に合うかどうか…!


ぴっ!



『ユリカ姉さん、ユリ姉さん、こちらも間に合いました。
 ステルンクーゲル十機、特急便でお届けです』

「ルリちゃん!
 ありがとう、これなら敵も引き付けられるよ!」

ちょっとだけ遅れて、ルリの買い込んできたステルンクーゲルが届きました。
……しかし、敵方の兵器が市販されている状況とはいえ、あのクリムゾンの兵器を買うことになるなんて。
まあ、別に気にはしてませんけど。ラピスが助かる方が重要です。
別にステルンクーゲルが売れようがどうしようが苦労するのはアカツキさんですし。

ともかく、練度的にも十分な我がPMCマルスの専属パイロットが八人、ばっちりいます。
天龍地龍兄弟はあまり練度が高くありませんが、ステルンクーゲルをまだ個人所有していて、
出身の孤児院でよく遊んでるらしいので、支援くらいは十分できるでしょう。
それでも、結構冷や汗ものですけどね…!


ぴっ!



『そろそろ救出隊を出すわよ。
 人員はこちらで準備はしてるけど、護衛が必要になるわ。
 陸戦エステバリスは今回こちらにつんでいないので支援してもらえると助かるわ』

「分かりました。
 私が陣頭指揮を執ります。
 ヤマダさん、私と…そうですねDさん、カエンさんを連れていきます。
 ユリカさん、エステバリス隊の指揮をお願いします」

「ゆ、ユリちゃん?!
 ダメだよ、ここに残ってなきゃ!」

「いえ、今回はそれなりに人と機動兵器の連携の経験がある人が居ないとうまくいかないでしょう。
 PMCマルスの最初の戦闘二回の時と同じようにやれば大丈夫です。
 援護もありますし。
 
 …それにラピスが危ない目に遭ってる時に、黙ってられません」

「ユリちゃん…」

……ちょっと無謀なことを考えてるのは事実ですが、話した内容も事実です。
現代において、陸戦と言えば白兵戦を意味します。
エステバリスの登場まで機動兵器陸戦というのはあまり意識されないことが多かったです。
なにしろ、戦車がポピュラーな兵器でなくなって相当時間が経っています。
だからこそ木連の陸戦機動兵器というのはかなりの脅威でしたが…。

つまり、こういうエステバリスと人間が組み合わさった作戦の経験は連合軍にもなく、
今回のような陣頭指揮は前例が少なすぎて私がやるしかないんです。

ユリカさんは私をじっとみると、ぎゅっと抱きしめてくれました。

「…生きて帰ってきてよ、無理しちゃダメだよ」

「しませんよ、私は救出隊じゃないんですから。
 立ち会うのと現場の戦闘指揮だけです」

無理に私が出る必要はないかもしれないですが…一応責任者ですからね、PMCマルスの。
それに、ラピスのことを考えると居ても立っても居られません。
ちょっとでも力になれることをしたいんです。

……ユリカさんはすぐに離れると、涙ぐんで私を見てくれました。
隣にいるお父さんも、私を止められないと分かってくれているみたいです。

「…うん、分かった。
 いってらっしゃい」
 
「ユリ……。
 私はお前に、まだ何も返せてはいない。
 お前だけじゃない、アキト君にも、ラピスにも返しきれないほどの借りがある。
 必ず戻ってきてくれ」

「はい、行ってきます」

一分一秒が惜しい時ですが…。
…できればこの場に、一秒でも多くとどまりたい。
でも、今はそんなことをしても仕方ない。私は思い切って駆け出しました。
涙がこぼれるのを気にしている余裕もなく。

生きて帰らないとダメなんです。
一秒と言わず何年も生きて、人並みに温かな人生を享受したい。
ここに残って、二人に心配をかけたくない。
でも今は立ち止まっちゃいけない。

私の願いを、夢をかなえるためにも。
そして私自身の、最後の後悔を取り戻すためにも。

私は、走っていきました…。
















【時刻─21:20】
〇地球・ストックホルム市街地・廃墟ビル前──ユリ
私とDさん、カエンさんは、ヤマダさんのエステバリスにタンクデサント状態で乗り、
廃墟ビルに近づきました。
時を同じくして、PMCマルスのステルンクーゲル部隊に支援されて、
ユーチャリスの揚陸艦が、救出隊を連れて登場しました。
敵の数はまだありますが、ステルンクーゲル部隊の半数が敵をひきつけています。
何とか救助隊が入る余裕がある状態になりつつあります。


『ユリです!各機に通達!
 ビル裏手口から侵入するので、そこまでの導線を確保してください!
 敵は人間サイズには興味を持ちません!
 できるだけひきつけて下さい!』


『『『『『『『『了解!!』』』』』』』』



ヤマダさんのエステバリスのスピーカーに有線マイクで接続して指示を通達しての指揮を開始しました。
チャフで通信が使えないっていうのは困りものですね…。
艦内用のバッタには言語を理解する機能があるものもあるそうですが、
戦闘用のバッタにはそもそも集音マイクの類はついてないそうなので、大声で通達したところで問題ないです。
これはこの世界で和平に至るにあたって、情報提供があったので私も知ってます。
未来ではサブロウタさんもそのあたりの事は話してくれませんでしたから、さすがに。

『ユリさんよぉ、俺が参加した方がいいんじゃねぇか』

「ダメです。
 私達を護衛してくれないと困ります。
 ビルに突入してからしばらく敵をひきつけてもらうことにはなると思うので、
 その時はお願いします」

相変わらずヤマダさんは戦闘バカですね。
いえ、むしろバカなフリをしてますね、今は。
この世界ではゲキガン・クロス・オペレーションみたいな真似はしてないですけど、
必殺技のアッパーを繰り出してエステバリスを修理させた案件もありましたが…。
最近はそこそこ冷静に戦うようにはなってくれたので、今は暴れたくてわがまま言ってるだけですね。
本人もそれは分かってるようですが、分かってるだけタチが悪いともいいます。
自分のバカさを利用して都合よい提案をしてるわけですから。
まったく。


・・・・・。
・・・・。
・・・。
・・。
・。


それからものの五分で、救出隊が突入する余地が出来ました。
私達はヤマダさんのエステバリスから降りて、Dさんとカエンさんの護衛のもと、
廃墟ビルに接近する余裕ができてくれました。
このペースなら間に合うかもしれませんね。
…しかし、その先が困りものでした。

「ちぃっ、どこも入れなさそうだな…」

「周囲もちょっと厳しいか…。
 あんたらサイボーグなんだろ、何とか上れないか!?」

「無理だな…俺なら飛べなくないかもしれんが、
 体重が重すぎて着地の衝撃でがれきが崩壊したら目も当てられん。
 俺もこの重さのがれきに埋もれたら無事でいられるか分からん」

救助隊の人たちは様々な機器を持って周りを探索していますが、入口が見つかりません。
ビルの本来の入口は分かっているんですが、がれきに阻まれてますし、
そのがれきも三階ほど積もっています。
おそらくチューリップが最上階に落ちた時に落ちてきたものでしょう。
分量が多いので、周囲のビルの残骸もだいぶ混じってるようですが…。

「いや、まて、ここは通れそうだ。
 …えーっとサイボーグのあんた…」

「Dだ。
 …ぶち抜けばいいんだな?」

「た、頼む」



「ふっ!」


どごっ!!



救助隊員さんが、スキャナーで通り道程度の穴をがれきの先に発見しました。
Dさんはずいっと前に出ると、その丸太みたいな太い腕を引いて拳を握り、
噴き出す蒸気とともに、一撃を放ちました。

「通れるか!?」

「いや、まだダメだ!
 もう一発行けるか!?」

「待て!
 これ以上打ち込むとがれきが落ちてしまう!
 そうなるとここはもう…」

「俺が焼いて広げるか?」

「石が解ける温度で、どうやってとおるんだよ!?
 冷める時間を考慮したら間に合わないだろ!?」


Dさんの提案も、カエンさんの提案もちょっと無理そうです。
いえ、もしかしたら…!

「待って下さい。
 この幅なら救助隊の人たちは無理でも、私なら通れます。

 …私が行きます!」


「「「ええっ!?」」」



「待て、エルを連れてくる。
 あいつの方が器用だし、ビルの外から登るのは無理でも、
 降りるのはあいつの能力を使えば何とかなる」

「それも十分はかかりますよね。
 …タイムアップが近い状況じゃ、無理です。
 賭けてみる価値はあります」

私の言葉に救助隊員さんは一瞬考えましたが、すぐにうなずきました。

「では、この手錠を切るための工具を。
 爆弾の一時凍結用の冷却スプレーと…。
 最後に念のため、脱出用のパラシュートが二つです。
 敵がいますし、ビルからの傘下は難しいですが、
 ここのがれきが崩れないとも限りませんし、
 時間切れが近くなったら困ります。
 ないよりはマシでしょう。
 五十階ほど上に向かうことになるので重いかもしれませんが、持っていってください。

 それと、その服では足に傷を負うかもしれませんが…」

「最初だけです、がれきがあるのは。
 …何とかやってみます」

私は着替えもなく、着替える暇もなかったので舞踏会のチャイナドレス姿のままです。
危険極まりないですが、行ってみるしかないでしょう。
そしてその小さな穴からほふく前進の形で通り抜け、パラシュートと工具箱を受け取りました。
小石で少し膝と肘を切りましたが、かすり傷です。
…ラピスの方がよっぽど苦しんでるはずです、急がないと!

「…ご武運を!」

「はい!」

私はかろうじてビル内に入ることが出来ました。
周囲を見ると…中もかなりがれきだらけですね。
小型とはいえチューリップが上に載ってるってことは、倒壊する危険は常に付きまといます。
ホコリが漂うエントランスを見て回ると…エレベーターは当然止まってます。
非常階段も、がれきで埋まってダメそうですね。
一度戻って指示を仰ぎましょうか……!
いえ、これは!

「工事用の簡易階段が生きてましたか!」

私は非常階段の反対側の壁に、工事用の階段があるのを発見しました。
金属の螺旋階段…ツイてます!
こういうものは普通は残さないものではありますけど、このビルにはまだ使用された形跡が少ないです。
恐らく、建設途中で木星トカゲの襲撃を受けて放棄されたんでしょう。
それでこの階段も残ってたんです。
本来は非常階段をもう一つ作る予定で、入れ替えに作るつもりだったんでしょう。
こういう方法はあまり聞きませんが、今回に限っては助かりました!

でも、強度が不安ですね…。
階段は鉄製ですが、ここは天が見えてしまってます。
工事用の簡易階段としてもやや不安定で、錆が浮いてる箇所がたくさんあり、ぐらついてます。
…四の五の言ってる場合じゃありません!さっさと向かいましょう!


かん、かん、かん、かん…。



ぐらつく階段を何とか上っていますが、あまり揺らすと崩壊しかねませんね。
走りたいところですが、今は落ち着いていくしかないでしょう。
リミットは…あと三十分ですか…。
あと五十階は登らないといけないので、
一階あたり三十秒だったら二十五分…一階あたり十五秒で駆け上がっても十二分半…。

…!走らないと間に合いません!

ヒールで登ってるのもあって重労働ですが、急がないと!
私は二段飛ばしで階段を上り始めて、一階あたり二十秒くらいの速度で上がっていきました。
このペースでいけば16分半くらいです!
何とか爆弾を凍結して離れて飛ぶくらいの時間は残ってます!
幸い、ユリカさんに付き合ってダイエット三昧で体力はばっちりです!
間に合います…と、私が思ったところで…。


ぐら…。


「ッッッ!!」



私は肝が冷える気持ちになりました。
階段を上る間、だんだんと眼が回ってくるな、と思ってたんですが…それとは別のぐらつきを感じました。
階段が、あきらかにぐらついてます。
先ほどまでとは比べ物にならないほど、明確に。
あ、あと二十階くらいだっていうのに…!

「も、もう少し持って…!」

私は先ほどまでよりはだいぶペースを落として、それでも速足で駆け上がりました。
まだ、間に合います、あと二十分はあります!


がつっ!…がらん…。



「あぐっ!?
 …そんなっ…!?」

そんな私の皮算用をあざけ笑うように、階段の一段が抜けました。
そして、階段の下がちぎれ、私から離れた壁にもたれるように離れていきました。
落下しそうになって、手すりにしがみついてしまい…。
両手に持っていた工具と、片方のパラシュートを落として…。
背負っていた、私用のパラシュートだけが無事です。

私は必死になりすぎて上を見過ぎてしまっていました。
一部の階段が完全に腐っているのに気が付きませんでした。
うかつすぎます、焦りに気を取られてこんなことになるなんて…。

…もう、戻れません。
階段は使えませんし、パラシュートもここでは使えません。
さらに工具箱がなければラピスを手錠から解き放つことはできません。
こ、こんなところで…!

いえ、まだ…まだです!

爆弾を窓から放り投げるなりなんなりしてなんとかすれば、あとは手錠だけです!
それに、敵が減るか、打ち止めになるか、アキトさんがたどり着けば、
直接ここに助けに来れるかもしれません…!

で、でも──せめてアキトさんのブラスターを借りとくんでした!
鎖くらいなら何とか撃ちぬけたかもしれないのに!

…私は、先ほどに比べても不安定になってしまった階段を歩き始めました。
この階段は螺旋階段になっているので、中心のポールが無事であればまだ持ちます。
もっとも、そのポールが持つか分かりませんけどね…でも少しは安定してきてくれました。
手すりにつかまって急ぎましょう…!

…運命とか、神様とか、あんまり信じたい方じゃないですけど。
でも、運命を左右する因果律と人の因子を操る…ボソンジャンプの神様みたいな人と出会った。
この世界で、あり得ない奇跡を何度も目の当たりにしました。

だから、信じます。

ラピスの…未来のユリカさんを助けられる未来を!

引き寄せてみます、私達の手で!!


諦めずに待っていてください!!






















〇作者あとがき
どうもこんばんわ、武説草です。
テツヤの策に翻弄されながらも、何とか抵抗するユリたちのお話でした。
ユリが救出に行くのは結構無理筋かもなと思いながらも、無理をせずにはいられない状態でゴー。
しかし、ラピスを救う手立てがあまりになさすぎる!
どうするんだ、ユリ!?たどり着けるのか、アキト!?
そんな話でした。
そして北辰一家がここまで出てこなかったのはこういう緊急時に備えてのことでした。
連合軍の管理になったユーチャリスに余分にエステバリスを乗せる余地はなく、
代わりにかぐらづきだったら別に乗せててもおかしくない上に、北辰たちがこっそり乗り込んでても、
それなりに誤魔化せるというのがあったそうです。
まあ、不審すぎる変装はご愛敬ですがw

そしてついにナデシコお披露目の頃に渡されたピースランドのカードが火を噴くっ!
この話はあのあたりからずっと使う予定だったので、普通に買って、普通に増援として出撃!
皮肉にも、クリムゾンがステルンクーゲルを一般販売してなかったら助けにいけなかったっていう。
とにかく、次回もまだせめていくぜぇ!

ってなわけで次回へ~~~~~~~~!!


















代理人様への返信
>まさかのバール君大奮闘www
呉越同舟、どころか今後の人生まで握られて奮闘せざるをえなくなるというw
このあたり、彼らしくて面白いかなーとおもって堂々と入れました。

>> だが私もここまで上り詰めたの立場を失うわけにはいかん!
>> 今後の私の地位のためにも、ラピスラズリを助けなければなるまい!
>いやー、笑った笑ったw
よかったですw
実際ここまですがすがしくゲスくてコスくて小物すぎるのって、
中々見られないなと思ってやってみました。
第一人称視点形式の利点ですねw
書いててめっちゃ楽しかったですw



>>自分の名前のフォルダが
>あー、わかるw
>確かに嬉しいわそれw
感想をいただけるのが一番嬉しいですけど、
明確に読んでる人が居るって分かるだけでもそれはそれはめちゃくちゃ嬉しいですね。

そんなわけで、感想掲示板に感想いただけるとめっちゃ嬉しいです!(露骨

あと地味に更新チェックサイトみたいなのに更新乗ってるだけでも地味に嬉しい。


















~次回予告~
…ユリカさん。
私、やっぱりバカですね。
無謀で、危険に飛び込むバカです。
こんな危なっかしいことするようなタイプじゃなかったと思ったんですけど。
でも私、やっと気付いたんです。

あなたと生きていたいって。
この気持ちに嘘をつくくらいなら死んだ方がマシだって。

アキトさんと、私と、一生かけたって、あなたにもう一度、笑って欲しいって考えてるって。

…『黒い皇子』相手だったら、そんな気持ちも届かなかったかもしれません。

それでもあなただったら。

アキトさんのためにすべてをなげうてるあなたと、ラピスだったら。
どんなに傷ついても完全には非情になり切れない、優しいあなただったら。
頑張ろうとすればするほど失敗する、ドジでほっとけないあなただったら。

きっとアキトさんと一緒にいれば、戻ってこれます!


私はアキトさんとユリカさんが大好きなんです!!


















次回、
『機動戦艦ナデシコD』
第七十四話:『』














どんなに頑張っても、誰一人泣かないような優しい時代は来ません。
でも、だからこそ、私はあなた一人を泣かせないために、すべてを賭けます。



あなたと生きられる未来を、アキトさんと引き寄せてみます!








































感想代理人プロフィール

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代理人の感想
うーん王道。
そして戦闘サイボーグはやはり災害救助には向かないな。
ここはやはりレスキューポリスを開発せねば!


>これは純粋に脅しなんですが
ばろすwww
この腹真っ黒の妖精めw

しかしこのディーラーの兄ちゃん、税込み70億円を3億ドル(300億円以上)で売るわ、
サインと決済だけして後はこちらで!とか、また後でどうにかされそうだw


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