〇地球・ストックホルム市街地・廃墟ビル周辺・ユーチャリス・ブリッジ──ムネタケ
私達は、倒壊した廃墟ビルを呆然と見つめていた。
すでに爆発から十五分が経過していた。
爆発する前にラピスラズリとホシノユリが脱出したようには見えたけど…。
直後小型チューリップが落下して、二人を助けに入ったブローディアに当たったようにも見えた。
さらにそれを助けに行った装飾付きのエステバリスと、PMCマルスのステルンクーゲル隊が居たと思ったけど…。
もしかしたら、全滅…。
…私達からは土煙がもうもうと立ち込めて様子は見えないままだった。

「お、オモイカネダッシュ!
 生体探知は!?」

『だ、ダメだ!
 チャフの効果がまだあるから分かんないよ!』

…何てこと。
あれだけ時間と戦力を注ぎ込んで、間に合わなかったって言うの…。
私達はつかず離れず、別の敵が来た時に備えて待機していることしかできなかった。
ビルを傷つける危険があっても、廃墟ビルの周りの戦力を排除するのに加担するべきだったかしら…。

…まだ結果は出てないわ、諦めるには早すぎる!


「うろたえてんじゃないわよ!!
 まだダメと決まったわけじゃないわ!
 最後の最後まで、確認するまで目を背けるんじゃないわ!」


「「「「……!!」」」」



私が一喝するとブリッジの空気が引き締まった。
泣きべそをかき始めてたハーリー坊やも、茫然としていたかぐらづきの三郎太艦長代理も。
しっかりとモニターを見つめてくれているようだった。
そして…。

『み、見えた!!』

オモイカネダッシュの言う通り、土煙がようやく晴れ始めて…。
そこには、かろうじて多数のステルンクーゲルに支えられていたブローディアがいた。
装飾の付いた、ナデシコのエステバリス隊が借り受けたらしいエステバリスも。
それとちょっと逃げそびれたように、
熱血バカの陸戦エステバリスに守られたユーチャリスの救助隊の揚陸艇も、姿が見えた。
各自がそれぞれ、ゆっくり動いて状況の確認をしている…!


「……全員、無事みたいね!」


「や、やった…!」


『『『『「「「「「うおおおおおおおおっ!!!」」」」』』』』



直後、連合軍の艦船から無数の通信ウインドウが送られてきて、
ユーチャリスのブリッジを埋め尽くしてしまった。
……ず、ずいぶん余裕よね?
いえ…さっきシャクヤクに続いて、『翼の龍王騎士』も到着したそうだから、
ほとんど敵は片付いてたみたいね。
…こりゃ、この調子じゃ残りの敵は気の毒なことになりそうね。
士気がさっき以上に上がってしまったものね…。

『あっ!?
 ようやく通信がつながった!
 みんな、聞こえるか!?
 ちょっと目を回してるし大けがしてるけど二人とも生きて帰って来たぞ!』


『『『『「「「「「「うおーーーーーっ!!」」」」」』』』』



さらにホシノアキトから入電が確認されて、もはや怒号のような大歓声が響き渡った。
たぶんピースランドの国用船とユーチャリスにだけ送った通信が、
この回線を通じて連合軍全艦に届いちゃったみたいね。
ふふ。

「ちょっとホシノアキト。
 大変そうな顔してるけど、両手に華って感じで余裕じゃない」

『は、はは。
 恐縮っす…』

目を回して気絶しているユリとラピスラズリを両手に抱えて苦笑いを浮かべるホシノアキト。
…何が恐縮なのよ、バカね。
当然、この回線を開いている者たちはニヤニヤ笑っている。
半分はからかいの感情だろうけど、助けられた喜びが残り半分だわね。


ぴっ!


『アキト!アキト君!無事でよかった!
 ユリちゃんとラピスちゃんも無事!?』



『はい。
 二人とも両腕骨折で大けがですけど、命に別状はなさそうです。
 …テンカワ、包帯取ってくれ。
 ユリちゃんの右手の出血は止めておきたい』

『おう』

『よ、よかった…。
 ホシノ兄さん、良かったですね…』

『…うん』

『アキト君…君には感謝してもしきれん』

『よしてくださいよ、お義父さん。
 …二人を危険にさらした原因も、俺にあるんですから…』

『そう言ってくれるな。
 君は私から娘を奪ってでも幸せにしてくれると言ってくれた男だ。
 …君をうとましく思ってる連中の思う通りになる必要はない』

『…はい…っ!』

『それに、君が英雄である以前に一人の男として誠実に戦ってきたからこそ、
 君の仲間たちは命を賭けて手伝ってくれたんだ。
 …君の戦いに同行したのは初めてだったが、これほどとは思わなかった。
 それぞれが、自分のできることを精一杯、考え抜いて尽力していた。
 
 君が一人の力で何とかしようとしていたらユリたちを助けることも叶わなかったろう…』

『そうですね…。
 俺は世間で言われるほど、強くはありません。
 こんなやり方をされては手も足もでないところでした。
 みんなが、ナデシコのみんなが、PMCマルスのみんなが、
 そして連合軍のみんなが、手を貸してくれたからこそ二人を助けられたんです。
 
 ……こんなに助けてもらえるのが、嬉しくて仕方がありません…。
 
 ありがとう、みんな…』

ホシノアキトは照れくさそうにしながら、礼をいって頭を下げた。
ミスマル提督の評価…さすがに的を射ているわ。
これだけの人数が支援してようやく成り立つ救出劇だったものね。
しっかし相変わらず、ホシノアキトは変に生真面目っていうかなんていうか…。
責任感があるっていうか背負い込むタイプなのよね。
でも抜けてるところはとことん抜けてるから助けてもらえる。
…本当に奇跡的なバランスしてるわよね、この子の周りは。

『二人の怪我もありますが…ブローディアも限界です。
 ほとんど動けなくなってしまって…。
 できればユーチャリスに収容をお願いします』

『…ムネタケ艦長、娘たちと息子を頼む。
 関係者で重傷者が出ているので同じく治療してほしい。
 まだ危険があるかもしれんが、アキト君とテンカワ君が居れば護衛は問題ない。
 手続きは後回しでよい』

「了解致しました」


ぴっ!



『ムネタケ艦長、こちらバールだ。
 『翼の龍王騎士』の活躍でチューリップは破壊され大勢は決した。
 あとは細やかな雑魚の掃討のみだ。
 ユーチャリスは負傷者の救出後、戦線離脱しろ』

『はっ!』

十分前に…24時5分に到着したばかりの『翼の龍王騎士』が、
まだ十基もあったチューリップをあっさり蹴散らしたという報告があった。
……相変わらずとんでもないわね。
彼女たちだけで放っておいたら一ヶ月くらいで地球上のチューリップが無くなるんじゃないかしらね?
そうすれば…ついに木星に攻め込んで戦争は終結、地球は平和になる。

とんとん拍子とはこのことだわ。
そして…私も。
…ここまでそこそこやってこれたし、戦争が終わってからも連合軍でやっていけると思うわ。

でも…。
今は、この英雄たちを…。

しばし、守ってやるのが私達の一番の仕事かしらね…。
























『機動戦艦ナデシコD』
第七十五話:『Diamond is Unbreakable-ダイヤモンドは砕けない-』その1



























〇地球・ストックホルム市街地・戦艦インパチェンス・ブリッジ──バール少将

「戦闘終了の報告をしますか、バール少将」

「うむ、頼む。
 負傷者、撃墜機の改修もいそげ」

ふ…ふふ…やった…。
敵を殲滅し、ホシノアキトもラピスラズリも生き残った。
もはや心配あるまい…これでいい。
これで、私の地位は壊れない。
いや、それどころかこのラピスラズリを助けた功績を世間的に認められるだろう。
木連との共同戦線の成功も加味すれば中将になることもありえる。
ふふふ…運が回ってきたようだな。

そしてクリムゾンを追求する証拠もまだ、艦内の自室と、自宅と、それぞれある。
奴らとて、ここまでのことをしでかしたのだ。無事に済むまい。
…しかし、しくじったのはこの作戦前の通信を録音していないことだ。

録音しておればいざとなれば相討ちに持ち込むことも出来たろうにな…。


「!?
 バール少将、回線が自動で全オープン状態に切り替わりました!?」


「なに!?何があった!?」

「さ、さあ…」

『ザ……』 

『少佐、少し良いか』

『こ、これはこれはバール少将!』



なっ!?
こ、これは──。
ホシノアキトを暗殺するために特殊部隊を突入させたときの、少佐との会話!?
盗聴されていたのか、私の会話は!?

ま、まさか──この作戦でラピスラズリを助けられたとしても、このテープが流れるようになっていたのか!?
私に口封じをするために…!

『PMCマルスについて、良くない情報が入った。
 彼らは木星トカゲとつながりがある、テロリストらしい。
 今回の戦いで戦果を上げ…連合軍にも一枚噛んで内部事情を探るつもりらしい。
 できれば今夜、彼らを全滅させてほしい』

『な!?』

『方法は問わないが、建物を破壊するとテロリスト集団であるという証拠がなくなるらしい。
 秘密裏に奇襲してしまうしかないだろう』
  
『し、しかしこの注目度ですよ』

『案ずるな。
 どんなに内通していようが、あの小さな部隊にどれほどの余力があろうものか。
 戦闘が終わればマスコミを引き入れる余裕などあるまい。
 その間に倒してしまえばよい』
 
『は、はあ…』


…ブリッジの空気が変わった。
先ほどまでの勝利に酔いしれる雰囲気が消え失せ、私に視線が集まった。
殺意が多分に含まれた、視線が。
確かに私が犯人かと疑われていたが…事実だとは気付かれないようにしてきた。
証拠は何一つ残さなかったのだから…。
だが、これで噂にすぎなかった、無実として開放された私の悪事が暴かれてしまった。

ブリッジだけではない。
通信ウインドウが次々に私を囲んで居るのが分かった。
そして鬼のような形相で──特にミスマル提督の顔が恐ろしかった。
こ、このままでは──。

『このレベルの武勲であれば、君も大佐になり、ジキタリスの艦長になる事だろう。
 情報元はいつも通り秘匿しろ。
 証拠は襲撃したら必ず見つかる。
 …分かっているだろう?』

『は、はいッ!
 いつも正確な情報をありがとうございますッ!』

『ならよい。
 富士で演習中の特殊部隊を呼べるようにしてある。
 彼らも1900には佐世保に到着できる状態だ。
 早めに連絡しろ、帰還してからでは動かせなくなる。
 必ず成功させろ。
 それではな』


テープがすべて流れて停止した時。
私は、力なく艦長席にうなだれることしかできなかった。
そして、オペレータが…怒りに任せて拳銃を向けてくるのが分かった。

「ま、待て──!」


「…この卑劣漢がッ!!」



そしてオペレータはセーフティを外し、スライドを引いて装弾…引き金を…。


『待って下さいっ!!』



直後、ホシノアキトの通信が、割って入ってオペレータの指が動かなくなった。
私は一瞬だけ死の瞬間が遠ざかったが、荒くなる呼吸を抑えきれずに悶えていた。
そして…。

その後、ホシノ兄妹による説得によって、この場は何とか収まったものの…。
私の失脚は確定してしまった。
独房に連れていかれて、私はうなだれることしかできなかった。
…。

…もう、何もかもおしまいだ。
私を消しに奴らがやってくるだろう。
取り調べが始まる前に、消されるのは間違いない。
終わった…なにもかも…。

……不正で成り上がった者の末路などこんなものか…。

才能もなく、ただクリムゾンを有利にするためだけに生き続けた半生…。
虚栄心を満たすためだけに、他人を蹴落として、挙句に何人殺した…?

首をくくって死ぬ勇気すらない私には、似合いの最後だろうが…。
振り返ってみれば…私の人生には、なにも残っていない。
他人の人生を喰らって、私が何を成したというのだ?

「くくく……。
 考えてみれば不毛で空虚なものだ…。

 少将になって、大物ぶっても…。
 …こうなった誰も私を心配する者などいなかったのだからな」

この期に及んで…私してきたことが空しいことばかりだったと気が付かされた。
何一つ実を結ばぬ…私とクリムゾンだけが得をすることばかりをしてきた。

……絶望する余地すらない。
虚栄心で出世に囚われ、不正をも恐れなくなったまま時間を浪費した、
ただの空っぽの人間だったと…思い知った。
ふ…ふふ…。

「……く。
 くく…はははは…ああ…」

虚空を見つめて、私は力なく笑うしかなかった。

私は…何がしたかったんだ…。















〇地球・ストックホルム上空・シャクヤク──シュン
俺とカズシは、バールが連れていかれる映像を見ながら複雑な表情を浮かべていた。

──バールが自滅した。
恐らくは、あいつに手を貸していた勢力の口封じのためだろう。
俺は…いつかあいつに俺の家族を奪った報いを受けさせたいと思っていたが…。
……やはり、呆気ないもんだな。
不正はいつか白日の下に晒されると思えるほど、信心深くはないが。
死の運命すら捻じ曲げるくらいの大物を相手だったら通用しないと思わされた。
…ホシノアキトという英雄はとんでもない強運の星の下に生まれたんだろう。
バールの闇を照らして暴いてしまった…なんて奴だ…。

「隊長…」

「カズシ、一杯やるか。
 ……別件逮捕だから、祝杯というのにはちょっと苦々しいが…。
 
 …連合軍内部での不祥事での逮捕となれば、余罪の追及もできる。
 奴のことだ、不正は山ほどしているだろう。
 ようやく俺の……家族の仇を討てるかもしれない…」

「…朝までお供しますよ。
 みんなと英雄たちの生還を祝ってからですが」

「…ああ」

まずは、はしゃいでいるブリッジクルー、
そして帰還してきたパイロットたちと、奇跡の生還を祝ってからだ。
どのみち、この大規模作戦の後は補給と修理が必要だからな…。

……英雄が起こした奇跡。

フクベ提督に続くチューリップの二度目の撃破。

陸戦兵器で二隻の駆逐艦を静めたこと。

木星トカゲに圧倒される地球を救う兵器の発見。

地球と木連の和解。

絶対に助からないと思われたラピスちゃんの救助。

そしてガトル義父さんの力をもってしても、
決して暴くことが出来ないと思っていた…バールのクソ野郎の悪事を暴いた。
結局はバールの仲間が切り捨てるためにやったことだろうが…こうも簡単にな。
相手が悪かったってやつだが…。

「…持ってるやつはどこまでも持ってるってことだな」

「そりゃあのお嬢さんたちもでしょう」

「まあな」

…まさかあのアリサが、姉のサラと一緒にホシノアキトを超える戦闘能力を持つなんて思いもしねぇよな。
こんないいことづくめ、めでたいことづくめの日が来るなんて思っちゃいなかったが…。

……今日は素直に杯を打ち鳴らすとするかな。























〇地球・ゼーデルマルム・スポーツバー──テツヤ
俺は結果を確認するためにバーに入り込んで、テレビ放送を確認していたが…。
煙草を灰皿ではなく、ナッツの皿に落として、呆然としていた。


わーーーーーーっ!


「ヒューーーーッ!
 やりやがった!」


「やったぜぇ!
 さっすが英雄!」


「ストックホルムも取り戻したし、この辺も復興が進むぜぇ!
 めでてぇめでてぇ!」


「祝杯だーーーーーッ!」


う、うかれやがって…。
そこかしこでグラスやジョッキを打ち鳴らす音が聞こえてくる。
俺は俺で、調子を合わせないと不審がられるのでそこそこに応えつつ、
あの状況を打開する方法があったかどうかを計算していた。
確かに助けられる可能性はゼロじゃなかったが…ゼロに限りなく近いはずだ。

…この場合、疑問になるのは『22時の爆弾』をどうやってクリアしたかということだ。
あれだけで決着がつくようにして、そうでなくても24時の爆弾で後詰の予定だった。

…あの爆弾の爆破時刻までに、手順を間違えずに解体するのは不可能だ。
確かに不発の可能性もありえるが…。
ライザがあの後生き残っていたとすればありえないことじゃないが…助からない状況にして置いてきた。
どんなに治療が早くても、動脈を撃ちぬいた以上、数分であの世行きだ。
あの状況で救急車を呼んでも助からん。
即座に輸血すれば助かる可能性もあるが、B型のRH-の血液を輸血するには、
あらかじめ輸血の準備が出来ている必要がある…。

じゃあ、あのPMCマルスの連中とアオイジュンの乗ったバンが駆けつけた?
…なんのためにだ?
最初からライザが裏切っているならあり得るが、奴の絶望の表情は本物だった。
ということはあいつらとライザが通じてることはまずありえねェ…。

……ちっ、死体の確認に戻るか?
いや…。


『どどどどどどどどどっ!』


『!!
 敵の残党と思しきバッタが現れ、爆撃を始めました!!
 な、ナパーム弾です!!』

『急げッ!焼かれるぞッ!』


「クレイジー!
 この場面で隠れてたやつらが出てくるかよ!?」


「地球の勢力がやったかもってお姫様が言ってたが、
 証拠隠滅のつもりか!?
 このバッタも地球製だっていうのかよ!?」



…ち。
予定通りの空爆でビルが消し炭になっちまった。
証拠もなくなったが、これでライザの生死は不明になっちまったな。
こんなことになるなら心臓を撃ってやるんだったか。
愚かなあいつにゃベソかいてるのが似合いだと思って致命傷を与えて放っといたつもりだったが…。
……いや、奴が生きてるわけがない。
ホシノアキトがいくら甘いとはいえ、奴に情報を吐かせたあと放っておくようなバカじゃねぇだろう。
あいつらしく馬鹿正直に司法取引のように協力者として表に出したらクリムゾンたちが消しにくるはずだ。
どのみちあいつが生きる道なんてひとつもありえねぇんだ。

ライザがしくじって失敗しただけだと一度捨て置くしかねぇ、急がねぇと俺も命が危ない。

…にしても、旗色が致命的に悪くなってきたな、クリムゾンの連中も。
地球側の妨害が、明確に世間に意識され始めた。
ってことは、一番最初に疑われるのはクリムゾンだ。
一番ホシノアキトとネルガルに恨みがあるのはクリムゾンしかいねぇ。
こんな酒によった連中でも気づくようなことを、全世界がほっとくわけがない。
もっとも証拠は上がらねぇだろうがな。

だが、俺もこのままじゃ無事には居られねぇだろう。
これだけ色々出させて失敗したとあっちゃ、クリムゾンも黙ってねえ。
クリムゾンのシークレットサービスは執念深いからな…。
いや、クリムゾンに協力した連中からも何か報復されるかもしれねぇ。
生き延びる方法には自信はあるが…ここまで積み上げてきたもんが無くなっちまったな。



クソッ…ライザの奴、しくじりやがって…。
















〇地球・ストックホルム市街地上空・ピースランド国用船──ルリ
──私達はみんながユーチャリスに収容された直後起こった、
大規模な爆発に目を細め、呆然と見つめていました。
ストックホルムにはすでに人がいませんが…。
私達を、そしてライザさんを救助したというマンションを狙って集中的に、
ナパームミサイル弾を満載したバッタが数十機現れて、街を焼き尽くしました。
このピースランド国用船も、ユーチャリスすらも全く意に介さずに。
そして最後に、バッタがすべて自爆して証拠を隠滅して消えていきました。
…それは木星ではなく地球の勢力が仕組んだものだと確信させるものでした。

通常のバッタは、地球の環境を壊さないようにしたいのかナパームなんて積みません。
それどころか、このナパームは通常のナパーム弾とはけた違いの威力です。
徹甲弾の性質すらも持ち、建造物を貫通しながら進み、
爆発すれば火球を発生させて燃焼というよりは融解を引き起こすものです。
地球側でなければこういう兵器の研究はされていないでしょうが…。

こ、これでは証拠は何も残らない…!

とはいえ、これを早く出されていたらラピスも助かりませんでした。
チャフが通じないところを見ると、あくまで証拠隠滅のために準備した、時限式だったんでしょう。
ネットも閉じてますし、遠隔操作というわけではなさそうです。

……ラピスは、地球と木連との間を切り裂くための生贄にすぎなかったんでしょう。
木連の艦船のグラビティブラストによる死亡、ないし、連合軍と木連の無能のために死んだ、
と取りやすい殺し方をしたかったんでしょう。

「み、ミナトさん、緊急離脱!」

「はいはい!」

ピースランドの国用船は、大した装甲がありません。
ディストーションフィールドはありますが、戦闘用じゃありませんからおまけ程度です。
あえて言えば、国際的事情に強い政治的装甲を持っている程度です。

そしてユーチャリスに近づいて、ひとまずの安全を確保しました…。

「…やったね、お父様、ルリちゃん」

「…はい」

「…ああ」


「「「「「「やったぁあぁぁああ~~~~~っ!」」」」」」


「「「「「「よっしゃああああああっ!!」」」」」」



静かに、小さく嬉しさを表した私達と対照的に、
ピースランド国用船に、満載された全員が歓声に沸き立ちました。
いえ、この国用船だけじゃありません。
恐らく連合軍の艦も、この場面をテレビ放送しているために全世界が揺れてます。
もう、完全にネットが不通です。
敵も身動きができない状況になってくれるように仕組んで正解でした。
この状況であれば、私達もうまく逃げ延びられますから…。

「…うむ。
 ひとまず、ピースランドに戻って船とエステバリスを返して来よう。
 その上で、またユーチャリスに乗り込んで日本に戻ろう。

 ……この状況でこの場に長居するのも危険だ」

「はい!」「はい」

ミスマル父さんの言うことに頷いて、私達はピースランドに向かうことにしました。
早くユリ姉さんたちと会いに行きたいところですけど…。
…今は、三人だけでそっとしてあげましょうか。
ユリ姉さんとラピスが二人とも両腕骨折じゃ、何ヶ月か療養が必要かもしれないですけど。
…そういえば何か、その怪我のことで何かあったような。

…ま、どうでもいいです。
















〇木星・都市・プラント制御室──遺跡ユリカ

「やったぁ~~~~~~~!

 ヤマサキさん!
 
 見た!?見た!?
 
 アキトがついにやったよぉっ!!」


「わ、わ、わ、わ…。

 ちょ、ちょっとまってくれ遺跡ユリカ君…。
 
 僕、華奢なんだからさぁっ…」



私はあまりにも嬉しくてヤマサキさんに抱き着いちゃった。
ヤマサキさんは支えきれないで倒れ込んでしまったけど…。
そんなの関係ないもん、頬ずりしちゃえ。

「…ついに運命に打ち勝ったってところかな、彼らも。
 でも前倒しで起こったこととは言え…同じことがまた起こらないとは言い切れないんじゃないかい?」

「もうっ、ヤマサキさんの意地悪。
 素直に喜んでくれてもいいんじゃない?
 確かにヤマサキさんの人生には関係ないことかもしれないけど、
 一応恋人の、私の夢が叶ったんだよ?
 ちょっとくらい祝ってくれたっていいでしょ!?」

「こ、恋人…そ、そりゃそうだけどさ…」

「それじゃ、はい!これ!」

私はすっとボソンジャンプでワインを取り寄せて、
ついでにワイングラスも取り寄せた。

「…それ、かなりいいワインじゃないの?
 盗難されたほうが可哀想だよね」
 
「いーのいーの。
 これ、クリムゾンさんの秘蔵の逸品だけど何本かあるやつだし。
 グラスはクリムゾングループの飲食店から持ってきたし。
 
 クリムゾンの人たちも『ユリカ』の一件に絡んでるんだし、
 無一文の私なんだから、これくらい迷惑料でもらっていーの!」

「……この世界だと、みんなが仕組んだことでクリムゾンがぼろぼろだと思うけどね」

「いいから、ほら、乾杯しよ!」

「はいはい…」


ちぃぃん…。



私はヤマサキさんにワイングラスを押し付けると、小気味いい音を立てて乾杯した。
ホントはこれマナー違反何だっけ?まあいいかな。

「うわっ、これすごいおいしいねぇ。
 酒はたしなむ程度だったんだけど、それでも分かるくらいおいしいよ」

「サイコーの祝杯だよ、ヤマサキさん。
 絶対に叶わないと思った夢が叶ったんだもん」

「そうしてると悪の秘密結社っぽいけどね」

私はうっとりしながらワイングラスの中のワインを弄んだ。
ヤマサキさんは冗談めかして私を見つめていた。
実際、悪の秘密結社もいいところだけどね。
これからは私達の戦いが始まるし。

……。


……おめでとう、アキト。


















〇地球・ピースランド・王室──イセリア王妃

「よかった!ラピスお姉様が無事で!」

「ホントです!
 それにユリお姉様、すごい勇猛でかっこいい方です!
 ルリお姉様が慕うのがよくわかりますよ!」

「あなた、ルリにカードを渡しておいてよかったですね…。
 連絡が来た時はびっくりしましたが…」

「うむ、うむ…良かったな…」

私達は胸が締め付けられる思いを感じながらも、テレビ放送を見つめ続けていました。
口々に彼らの活躍に感銘を話していました。
本当に奇跡を起こしてラピスさんを助けていました…。

けど、私の中にはほんの少し、疑問が残りました。

ホシノアキトさんとラピスさんとがこの舞踏会で踊った時…。
二人の間に、明確に『深い愛情』を感じました。
ホシノアキトさんとユリさんの間にある愛情と同じくらい大きな…そしてお互いを大事に思う気持ちが。
さっきの救出劇の最中も、彼らの表情がそれを語っていました。
ユリさんも、ラピスさんに義理の姉妹以上の感情を抱いているように見えました。
なぜそんな風に見えたのか…まさか本当に…。

…でも、私が口出しするようなことではないわね。
彼らが本当に素晴らしい人で、とても愛情深いのは分かっています。
もし不倫などに発展したとしても…お互いを慈しみ合うような関係になれると、思えてしまうほどに。

…ルリも、あんなに一生懸命になって三人を助けようとしたんです。
信じましょう…あの三人を…。


そしてしばらくするとナデシコとPMCマルスのみなさんが戻ってきて、
国用船とエステバリスを返して、何度もお礼を言ってくれました。
ホシノアキトさんは重傷の二人に付き添っているので通信で申し訳ないと謝罪してくれた。
…こんな人なら大丈夫だわ、きっと。

「王子たち、明日はお寝坊さんを許します。
 早く眠りなさい」

「「「「「はぁ~~~~~い…」」」」」

王子たちも緊張が解けて急激な眠気に襲われたのか、目をこすりながら自室に戻っていきました。
私と王は二人きりで、見つめ合って彼らのことを想い…そして…。

「…本当に彼らの敵は多いな」

「ええ…。
 ルリも、このままでは無事でいられないかもしれません…」

ホシノアキトさんは、敵の策を完璧に打ち砕きましたが…。
これで敵が引き下がるとは思えません。
それどころか、さらに苛烈に彼らを追いかけるかもしれません。
ルリも、はっきりと地球側にも敵がいるのではと思っていると明言してしまった。
…今まではピースランドの姫で、ホシノアキトさんの妹としか思ってなかったでしょうが、
これで不利益を被った敵勢力の敵意を増させてしまったかもしれません…。

「一度、彼らと話をしなければならないな。
 ことと次第によっては、彼らと話し合ったプランを今使わねばなるまい」

「いえ、あなた。
 それは最後の手段です。
 彼らをかくまうなら表だってピースランドで匿った方がいいでしょう」

「ふむ…。
 そうだな、あのプランで匿っては突き止められたら後がなくなるか」

敵の尻尾をつかめるとは限らない状況である以上、
最後の手段はとっておきたいですね。
もっとも…このピースランドですらも鉄壁の防御ではないと分かってしまった以上、
表だって匿うのもノーリスクではありません。
防御策についても話し合う必要があるでしょうね…。

とにかく、彼らの回復を待ってからになりそうです。
ルリにも連絡をとってアポイントメントを取らないと。















〇地球・佐世保ドック・ユーチャリス・医務室──ラピス(ユリカ)

「…ラピスちゃん…お願い、出てきてお話してよぅ…」

「…何よぅ」

「ごめんね、ラピスちゃん…。
 いっぱい謝ろうと思ってたけど、呼んでも出てきてくれなかったから…。
 私のせいで、いっぱい迷惑かけてごめんなさい…」

……私は意識を失った後、夢の中でラピスちゃんを呼んだ。
すごく疲れ切ってる、怒った声だったけど、出てきてくれた。
今までは声しかしなかったけど、
お互いの像がはっきり見えるように、会話できるような状態になれた。

…それから私は、いっぱい謝った。
ピースランドで一人になったことも、
ラピスちゃんが私の代わりに悪夢を受けてしまっていたことも。
私なんかよりラピスちゃんが前に出てた方がずっとアキトのためになるし、
これからは私じゃなくてラピスちゃんが主人格になって、くれていいって。
それで悪夢は全部私が受けるからって。

でも、黙って全部聞いてくれたラピスちゃんの第一声はため息だった。

「はぁ…。
 あんたやっぱりバカね」

「うっ…」

私は何も反論できなかった。
バカなことしかしてないもん…。
言葉に詰まって、そのままラピスちゃんの言葉を待つことしかできなかった。

「そんなことして、ホントにアキトが喜ぶと思ってるの?
 私も嬉しくないよ、そんなの。
 半分こするか、アキト達みたいに意識を融合してうまく暮らせばいいでしょ」

「…でも、私ってひどいことしかしないし…」

「自信失くしてんじゃないわよ、バカユリカ。
 あんた、頭脳の割にドジで、たまにアキト並みに鈍くて頑固なんだから。
 あの二人が、そんな些細すぎることに気を遣うと思ってんの?
 
 織り込み済みに決まってるじゃない。
 私だってそうだよ?
 そうじゃなきゃあんたみたいなバカ、アキトかジュン以外貰い手ないんだから。
 見えない場所に行くのが一番悪いってだけで、取り戻せないミスじゃなかったでしょ」

「…そ、そうだけど」

そうかもしれないけど、結局私ってなんどもラピスちゃんに迷惑かけてる。
私が絶望するほどのあの悪夢を肩代わりさせてるのなんて、サイテーだよ…。

「いい、ユリカ。
 私があんたを助けたのは、別にアキトのためだけじゃないの。
 半分はユリカへのお礼だったんだよ」

「え…?」

考えてることを見透かされて…。
ううん、私達、もう一心同体だから読まれちゃうのは当たり前かな。
ラピスちゃんは、今度は照れくさそうに、私を見てくれた。

「私じゃアキトを助けるなんて、
 五感を支えてオペレーターとしてやってくだけで精いっぱいだもん。
 
 あんたの頭脳を借りられたからこそ、私は何度もアキトもみんなも助けられたの。
 
 アキトのために、私じゃできないことを一杯できるようになったのはユリカのおかげだもん。
 お礼をしなきゃって思ったのは事実なの」

「でも、私自身はラピスちゃんにひどいことを…」

「…言い過ぎたの謝るから。
 気にするんじゃないの、ユリカ。
 私はアキトにいっぱい利子付けて返してもらうから、いいの。
 
 そうじゃなくてもユリカと一緒に居たらうまくやれば、
 あんたが受ける分には私もアキトに愛されてるのと同じように感じられるはずなの。
 
 あんたがメインの脳を持ってるんだから、
 悪夢だけじゃなくて気持ちいいことも共有できるはずでしょ?
 
 そしたら悪夢の分くらいはチャラに出来るかもしれないじゃない。
 そもそもね、それ言ったらアキトの方がよっぽどひどいんだから。
 
 アキトやエリナ、アカツキとイネスは私を利用した。
 ただのアキトの身体補助パーツに成り果てて。
 挙句、脳もほとんどユリカにとられちゃったし。
 そのせいでアキトを『ほとんど無条件に愛しちゃう』性格になっちゃったし」
 
「でも…」

「いいことも悪いことも、順番は変えられないの。

 自分が動いた結果、何をもたらすのかなんて計算できる人間の方が少ないんだってば。
 
 アキトがあんたを取り戻そうとしなかったらラピスラズリはなにもしないで死んだ。
 こんな風に人格が生き残るってこともあり得なかった。
 草壁とヤマサキ、アキトとイネスの愚かな戦いが、願いがなかったら、
 実験体の私なんて死んだらゴミみたいに燃されてその辺にポイだよ?
  
 もしみんなの愚かな戦いと願いがなかったら、
 私はこんな面白おかしい人生にたどり着けなかったの!
 
 アキトだってそうだよ。
 『黒い皇子』になってなかったらここまでたどり着けない。
 人を殺すひどさを知って、誰にも負けない強さを持ってなきゃ、すぐ死んでたよ。
 この世界のホシノアキトと融合しなかったら本当に救いがなかったかも。
 
 私もユリカの頭脳がなかったらこんなに明るくて頭のいい子になれないの。
 本当の私は、も~~~~っと根暗で、ルリより不愛想で、分かりづらい子なんだから。
 
 …ルリっていうタイプを最初に見てたからみんな甘やかしてくれたけどね。

 何もかも、自業自得って言葉通り!
 
 みんなみんなみ~~~~んなそう!
 
 いい事も悪い事も受け入れて生きてくに決まってるじゃないっ!」


「ラピスちゃん…」

私は、ぽかんと口を開けてラピスちゃんの言葉を受け入れるしかなかった。

…そうだよね。
いびつな私達の過去…誰一人としてまともな人生を歩むことはできなかった。

アキトは私を助けるために史上最悪のテロリストになっちゃうし、
ラピスちゃんはそれに加担してたし、
私は木連の人を相転移砲で虐殺したし、
ルリちゃんだってあんな電子制圧したってなれば、危険視されただろうし…。
草壁さんもヤマサキさんもそうだし…。
戦争なんてなかったら、もうちょっとマシな人生だったと思うけど。

前の世界に比べたら、今の状況って…敵は多いけどずっとまともなんだよね…。
私達のことって二股一つでなんとかなる状況だし。
…この考え方もちょっと問題あるし、ヤマサキさんだけは一人で悪役になっちゃったけど。

「…だからいいの。
 アキトの代わりに『黒い皇子』の因子を持っとけば一生アキトに貸し作れるんだから。
 
 

 上等じゃない!
 
 アキトじゃなくてあんたの目に、耳に、手に、足になってやるわよ!

 それが一番アキトとユリカとユリを幸せにできることで!
 
 私も幸せで!
 
 私も本来もらえなかった取り分をもらえるんだから、問題なしっ!」
 

 
「ぐす…ごめんね…」

私はラピスちゃんの決意に、涙が出てきた…。
ラピスちゃんは自分の身体を、人生を、時間を差し出してこんなに頑張ってくれてるのに…。
…私はなんでこんなに恵まれてるのに頑張れなくなっちゃったのかなぁ。
自信なくなっちゃうよ、ホントに。

「そこはありがとでしょ!
 もう、なんで私がユリカの部分使って、ユリカが暗くなっちゃうかなぁ。
 
 ……とにかく!
 
 いいから三角関係まとめて来なって!
 私とユリカは切り離せないんだから!
 ユリカがまとめてくれないと権利を主張しづらいんだから!

 私とも浮気させてもらえるようにうまく説得してよ!」

「う、うん、分かった。
 ありがとね…」

「頼りにしてるよ、ユリカお姉様!
 …それにね」

「なに?」

「今回のことでもそうなんだけど、
 アキトも私も、ユリカも、もう大丈夫だと思うよ?」

「へ?なんで?」

私は気の抜けた声で、ラピスちゃんに返事をしてしまった。
まだこれからも敵は多いっていうのに…。
それにまだ因果律とか因子も落ち着かないと思うけど…。

「結局、私達は半分ずつしか因子を持ってない訳でしょ?
 ってことは、アキトも私も『黒い皇子』の因子は多く見積もってもそれぞれ半分ずつ。
 
 だからアキトみたいに完全な黒い道には落ちれなかったんんだよ?
 
 アキトも、きっかけがなければ…ううん、私が、ラピスラズリが死んで、
 因子がアキトの方に移らなければぜったい大丈夫なの」

「あ…」

私、なんで気づかなかったのかな。
そういえばそうかもしれない。
因子が有限…そして誰かが別に因子を持ち続けているとしたら、
死ななければ移っていかないとも考えられるね。
確定じゃないけど、説得力がある。

…だったら、私達が懸命に死なないようにするのが一番大事だよね。

「アキトがユリに惹かれたのだって、ユリカとルリの因子が半分ずつあるし、共感できたから。
 大事な人が遠くに行っちゃったり、死んだ時の悲しみを思い知ったからだよ。
 
 ルリが、アキトやアキトと自然に義理のはずが本物の兄妹、姉妹のようになれたのだってきっと因子の力。
 自分に近いものを感じる要素がたくさんあったからだと思うの。
 
 きっと因子が『運命を変える力』じゃなくて、
 『お互いをひきつける力』に変わったんだよ」

「そういう…ことかな…」

「それにね、あんたもユリもこの世界のユリカも絶対不幸にならないよ。
 
 だって、あんたは私なんだよ?
 もう『ミスマル・ラピス・ラズリ』、ミスマル家の三女。
 
 いくらユリカ本人の中身が入ってて、同じDNAを持っていたって、
 ミスマルユリカの運命が適用されるわけないじゃない。
 
 ラピスラズリとして生きてる現在があるから、あの悪夢のような未来を避けられる。
 でも、テンカワユリカとして生きた過去があるから、アキトに抱きしめてもらえる。
 
 それでいいじゃない!」

「……!
 そ、そっかぁ!」

確かにそうかも。
この世界の私はこれからも一番守らないといけないかもしれないけど…。
ラピスちゃんと一体になった私の中には…。

私、ユリカ、『黒い皇子』のアキト。

三人分の因子と因果律が絡んでるから予想しづらいけど、
それぞれ三分の一になってるから、半端にしか再現されない。
どれかに完全に傾くことも、この先は絶対にありえない。
だから今回も助かったのかもしれない…!
だったら、もう怯えることもない。
 
「あんたは『黒い皇子』の因子を使って、
 アキトと同じように、私を利用して愛しい人を助けに行く。

 そのためだったら浮気もする。
 それも未来のアキトとおんなじことでしょ?
 
 私はアキトが幸せな未来を得られるなら、どんな手だって使うんだから!」
 
「ラピス、ちゃん」

「それに、アキトの苦しみを私達が二人で分かつ代わりに、
 アキトに幸せにしてもらうの!
 利子いっぱいつけてもらってね!」

「うん…でも…アキト、負担にならないかなぁ」

「あの身体だったら大丈夫だよ、絶倫だよ?
 ユリがへとへとになっちゃうくらいなんだから!」

「ぜ、絶倫って…」

…ラピスちゃん、私のせいなのかアキトのせいなのか、エリナさんのせいなのかちょっと耳年増…。

「…それに、二人の真心を無下にしていいわけないでしょ。

 勇気出して、ユリカ!

 あんたは大事な人の手を取って、奇跡を起こすのを選んだんでしょ!?
 今更引っ込もうとするなんて、逆に良くないよ!」

「…うん!」

「分かったらとっとと起きて!
 結構な時間寝ちゃったでしょ!
 説得お願いね!」

「…ありがと、ラピスちゃん。
 いっぱい、これからアキトとユリちゃんと…思い出を作ろうね…」

「うん!」

ラピスちゃんがにっこり笑ってくれたのが見えた後…。
私の意識は急速に覚醒に向かっていった。

…ラピスちゃんに救われちゃった。
でも…本当に、ラピスちゃんと私が分かれていられないのだけは残念。
いっぱい抱きしめてあげたいのに…。

ううん、ラピスちゃんの言う通りだよ。
順番は変えられない。

ラピスちゃんと一体だから私は生き返った。
ラピスちゃんがひどい目に遭い続けないと私達はここにたどり着けない。

絶対に完全に全員が満足できる、不自由のない生活なんて無理だもん。
本当は普通に生きてたって無理難題なんだ。

私がアキトと結ばれたら、ルリちゃんはアキトを諦めなきゃいけない。
ユリちゃんとアキトが結ばれたら、私とラピスちゃんはアキトを諦めなきゃいけない。

本当はそこを捻じ曲げたりはできないし、しちゃいけない。
でも、努力の仕方次第で、何とかできる可能性はあるの。

それは、全員が協力して足りないところを埋めて、
我慢するところは我慢して、ようやく叶う、『全員が幸せになれる道』。

そう、それが──。
戦争を捨て去って、太陽系に住む人類がもう一歩先に進むための、条件。

恋は戦争、だもんね…。




















〇地球・ストックホルム上空・ユーチャリス・医務室──ラピス(ユリカ)

「ん…」

私は真っ暗い病室の中で目覚めた。
周りを見渡すと、アキトが椅子に座って寝てて…。
その向こうのベットにはユリちゃんが眠っていた。
一晩中、ずっと守ってくれてたんだね、アキト…。

私は夢じゃないか怖くなって、頬をつねりたかったけど両手を骨折してて手が出なかった。
痛み止めのせいか手は痛くないんだけど、口の中を軽く噛んで現実だと確認してホッとした。

「はぁ…」

ようやく安全地帯に戻ってこれてホッとしたところで、また心臓の鼓動が早まった。

…本当に怖かった。

あんな状況になるなんて考えもしなかった。
奇跡的にうまく帰ってこれたよね…。

「…ラピス?」

「あ、ユリちゃんも起きてたの?」

「はい…ユリカさんですね、やっぱり」

「うん。
 でもラピスちゃんも無事だよ…。
 さっき夢の中で怒られちゃった。
 変なこと気にし過ぎだって」

「まったくですよ。
 でも、嬉しいです。
 こうやってみんな無事に帰ってこれたんですから…。

 ぐす…夢みたいです…」

「…ごめんね」

「もう、いいって言ってるでしょう?
 そういう風に言われたほうが怒りたくなっちゃいます」

「でも私がさっさと頑張ってたら、
 ユリちゃんボロボロにならなくて済んだもん…」

「反省してくれればいいですから。
 …そういえばあの時、急に頑張ってくれましたけど、どうしたんです?
 応えてくれたのすっごくうれしかったです…」

「あ、うん…。
 ユリちゃんが私のために必死になってくれてたおかげもあったんだけど…。
 
 …ラピスちゃんにアキトの因子が入ってるって話を思い出して、気づいたの。
 私がしてきたことがアキトらしさ、そして『黒い皇子』らしさを持っていたとしたら…。
 
 因子と因果律を、運命を覆す方法が一個だけあるって気づいたの。
 
 アキトができなかったことをすればいいんじゃないかって思ったの。
 自分のしてきた罪の意識、最低な自分に失望して、大事な人から遠ざかろうとする運命。
 16216回、同じことをしてきたアキトの因子を持った私が…。
 ユリカの因子とルリちゃんの因子を持ったユリちゃんの手を取ろうと頑張れば、
 起こらない奇跡だって起こるんじゃないかって、思ったの」

「…!
 なるほど、それなら納得です!
 アキトさん並みに意固地に私を帰そうとしてたのに、
 急にあんな風になるなんて思ってなかったです!」

ユリちゃんはうんうんと何度も深く頷いた。
…外から見たユリカとそっくりだよね、こういうところ。
でも、私はその納得の仕方にちょっと複雑な気持ちになった。

「…ユリちゃんって、アキトにあんまり信用ないの?
 ユリちゃんの献身に打たれたからじゃないのか怒ってもいいと思うよ?」

「その辺の信用はありません、マジで。
 ……起きるタイミングをつかめなくて狸寝入りしてる人のことなんて」

「うぐっ?!」

…あ、アキト。
起きてたんだ。
顔を真っ赤にして、組んでいた腕をほどいて頬を掻いてはにかんでる。
……アキトの顔をこうしてみられるだけでも幸せ。

「…ごめん」

「まったく、最愛の妻が二人戻ってきたのに、冷たいです」

「そ、そう言わないでよ…。
 俺、三日三晩ずっと二人を守ってたんだから…」


「「ええっ!?三日もっ!」」



「ぬ、ぬおおぉぉ…。
 途中テンカワに代わってもらって食事とかトイレくらいは立ったけど…ね…」

アキトは耳が痛そうに悶絶していた。
私とユリちゃんは絶叫にも近い叫びを上げて、飛び起きちゃった。
確かに怖い目にいっぱい遭ったし、全身全霊で脱出するために頑張ったし、
怪我もすごいからあり得なくはないけど…。
そういえば点滴もされてるし…ちょっと頭かゆい。
時間が結構経過してるのが分かった。

「あ、ごめんなさい…。
 …すみません、アキトさん。
 そうとは知らず、当たってしまって」

「…い、いいんだ。
 それくらい元気になってくれればこっちも嬉しいよ。
 それにこの世界で、俺が二ヶ月も昏倒してた時に比べたら大したことないよ。
 あの時も心配かけたし…」

「…そういえばそんなこともありましたね。
 ま、いいです。
 とにかく…アキトさんはさっさとやるべきことがあるでしょう」

「…うん」

アキトは私の方に振り向くと…両肩をがしっとつかんだ。
私はこうされてしまうと、両腕が骨折しているのでギプスで固定されていることもあって、
全然逃げられない状況になってしまう…。
う…アキトの、暗がりでもよく見える金色の瞳が潤んでるのが分かる…。
今度は、逃げちゃ、だめ…だよね…?
あ…でも…。

「まって、アキト」

「どうした?緊張したか?」

「違う、違うのアキト。
 こ、この体、ラピスちゃんのだし…。
 私はファーストキスは、アキトにしてもらったでしょ?
 女の子のファーストキスって、やっぱり大事でしょ…?


 だ、だからね!


 ラピスちゃんに、先にしてあげて欲しいの!」


「「「ええっ!?」」」


びっくりしたのか、私の体が一瞬ラピスちゃんに主導権がわたって、
三人分の驚いた声が病室に広がった。

…だって、それくらいの権利あるくらいラピスちゃん頑張ったもん。

あんなに助けてもらって、励ましてもらったのになにも返せないの悔しいもん。
それにファーストキスを私が横取りしちゃダメだもん。

「アキト、お願い。
 ちゃんとしてあげて」

「け、けどな…」

「私、もうラピスちゃんと離れられないんだよ!
 どうやっても二人で半分こしないといけないの!
 

 だからここだけは、絶対譲らないよ!
 
 ラピスちゃんにキスできないアキトなんてだいっきらい!
 
 ラピスちゃんを好きになれないなら、私を好きになる権利なんてないんだよ!」



「そ、そりゃそうだけど…」


「それともアキトは、好きでもない女の子の体で私とキスして、それで満足なの!?

 またラピスちゃんを利用してどうこうするつもりなの!?
 
 そんなの最低最悪じゃない、アキトのばかっ!」


 
「ゆ、ユリカさん…」

「…はぁ。
 お膳立て下手だよね、ユリカは」

「ラピス…」

久しぶりに前に出てきたラピスちゃんを前にして、アキトは嬉しそうな顔をして…。
でも、どこか落ち着いてきた感じもする…。

「…でも、ユリカの言うことも正論、かな。
 アキト、私をどう思ってるの?」

「…俺は」

「いいよ、アキト。
 正直なところ聞かせてよ。
 私は嫌われてなければなんでもいいから」
 
「ば、ばか…嫌いになれるわけないだろ…。
 ……俺のこと、こんなに命懸けで助けてくれて、
 好きだって言ってくれる子のことを…」

「ふぅん。
 それだけ?」

アキトは少しだけ、言葉を選ぶように黙り込んだけど、
すぐにラピスちゃんをじっと見た。

「……。
 映画を撮るきっかけになったあの事件の時に、
 公認浮気をするってなった時から、じ、実は意識するようになってた…」

「あ、意外。
 アキトのことだからしょうがなくって思ってたのに」

「…やっぱりエリナさんのこと引きずってますね」

「面目ない…。
 お、俺…割とそういうところだらしない自覚はあるから…」

…やっぱりエリナさんの件については後でちょっとだけ怒っておこうかな。
エリナさんにはちゃんとお礼を言わないといけないけど。
でもアキト、ラピスちゃんを巻き込んだことを気に病んでる様子じゃないし、
いい感じかもしれないね。

「ま、そりゃそっか。
 私はエリナの妹か子供みたいなもんだもんね。
 っていうか、割とアキトの好きな人のタイプって、
 
 『自分を好きで居てくれる人』なんだよね」

「あー…妙に納得しました。
 ユリカさんにデレるわけですね、それは」
 
「う、ううう…」

二人にボコボコにされて、アキトは頭を抱えて唸っていた。
反論のしようがないもんね、ほとんど。
…!
で、でも、そうだとしたら…!

「…ってことは、
 今回私とユリちゃんが死ぬようなことがあった場合、
 意外とファンの女の子をとっかえひっかえしちゃうってこと!?
 アキトは傷心を慰めるために、アキトは毎晩毎夜女の子を連れ込んで…。
 

 ああっ!?
 
 もしかしてPMCマルスの女の子全員に子供を産ませて最強の軍隊作って、
 世界中を破滅に追い込む『黒い王様』になっちゃうとか!?

 
 そ、そんなことになったら……」


「何考えてんだ!?」「何考えてるんです?!」「バカなの!?」



……怒られちゃった。
は、発想が下品すぎるかな…私ってばこういうところまで最低…。

じゃなくて!
 

「って、そんな妄想はどうでもいいの!

 アキトはラピスちゃんの気持ちに応えるつもりがあるみたいだし!
 
 良いからラピスちゃんのファーストキスを奪うの!
 
 後がつかえてるんだから早く!早く!
 
 ほら、私、引っ込むから!

 
 
 
 ……え、ええっと…。
 あ、あのねアキト…無理、しなくていいから…」

「…俺に任せてくれないか」

アキトはもう一度がしっとラピスちゃんの肩をつかんだ。


頑張れラピスちゃん!

アキトと浮気するってずぅっと言ってたんだからためらっちゃだめだよ!

世界一の王子様がこんなにしてくれる女の子、そうそういないんだから!



「でも…。
 まだ私にほれ込んでくれてるわけじゃないんでしょ…?」

「…いいんだ、ラピス。
 恋愛なんて、最初は手探りだし、未熟な愛でも、愛情だから…。
 育てるつもりがあるかどうかだろ?」

「…そうだよね。
 アキトは…エリナと愛情を育てるのを、躊躇ってたもんね…」

……アキトって、意外と恋愛慣れちゃってるんだよね。
昔は不器用だったのに…さすがにムッと来ちゃう。
でもラピスちゃんが感じている胸の高鳴り、胸の奥のきゅぅぅっとする感覚が分かる。
……私までつられてうっとりしてきちゃった。

「最低、だよな」

「最低でもいい。

 私、アキトが好き。
 
 本当は二号さんでも三号さんでも構わないの。
 一緒に居て、アキト。

 こんな形でも、アキトが振り向いてくれるなんて、私…夢みたい…」

「…ありがとう、ラピス。
 俺も、お前が好きだ…」

アキトがゆっくりラピスちゃんに近づいて…。

ああ…!

私のバカッ!

アキトのバカバカバカっ!

分かってたけど、私が勧めたんだけど!

もう嫉妬しちゃうよぅ!


ちゅっ。



私もラピスちゃんと同じ感触を味わってるから…。
すごい胸がいっぱいになって…。
でもラピスちゃんに対して言われてるから、ちょっとだけ物足りない。

やっぱりこれでいいんだ…。
今は二人それぞれ別に、こうしてアキトと付き合っていた方がいいんだ。
…いつか私達はアキト達みたいに二つの人格が一つになって、
どっちがどっちだか分からないような状態になれれば…。
そうなれば…きっと。


・・・・・。
・・・・。
・・・。
・・。
・。


しばらく、ラピスちゃんがアキトにしっかり抱きしめられて…。
ラピスちゃんの幸せな感情が私にも分かって、つい嬉しくなった。

「ん、いいよアキト。
 
 私、いっぱい幸せ!
 
 えへへっ!
 
 …次はユリカにもしたげて」

「…ああ」

「はうっ。
 あ、アキトぉ…」

私もアキトの感触にうっとりしてたから、主導権もらっても脱力してた。
そんな私に気付いて、アキトはにっこり笑って、強く抱きしめた。
ちょっとだけギプスがきしんだけど、私の方はもう余裕がない。

「ユリカ…愛してるよ…」


「うぅぅう~~~~っ…!!


 わ、私も……あっ、アキ…とぅ……」



アキトの万感の想いのこもった、愛の言葉…。

ピースランドではユリちゃんの前だったのもあってここまで言えなかったみたいだけど…。

私も、何年もアキトの隣で自分がユリカだって気づかないまま、お預けを受けてて…。
アキトがユリちゃんと結ばれて、もう二度とこんな風になれないって諦めてて…。
そして悪夢に囚われて、自分をすべて諦めなきゃいけなくなって…。
もう、死ぬしかないって思ってたのに、こんな、こんなに嬉しい気持ちになって…。

私、こんな風に言ってくれるだけで…。

もうダメ…何もできない、動けない、なにも考えられない…。


アキトが好き!


二度と遠くに行きたくない!


死ぬまでずぅっと一緒に居たい!


こうされるだけで幸せ、幸せっ!



ちゅ。



私の唇に、アキトの唇が触れた。
動けなくなってる私の全身に、甘い甘い電流が走り抜けた。
アキトから初めてキスしてくれた時よりもすごいかも…!


……ああっ!?


だ、だめ…!


それ以上しちゃ、だめぇ~~~!!


「んむぅ~~~~!?」



「んぐ…んぐ…」


それはだめだよぉ!!

ラピスちゃんも同じ感触味わってるんだよぉ!?

大人のキスは…アキト、そんなことしちゃダメだってばぁ!


あ、あ、あ、だめ…。



(…はぅっ)


あ!ラピスちゃんが失神した!?


も、もう私も…。


タップしようにも手が動かないのにぃ~~~~!



「あ、アキトさん、ちょっとやりすぎです…」

「!
 
 ぷあぁっ…。
 
 あ、だ、大丈夫か?
 
 ごめん、感極まっちゃって…」

「はひぃ…はひぃ…」


アキトはユリちゃんに止められて、私を解放してくれた。
呼吸をかろうじて整えたけど、もうほとんどもうろうとしてる感じで…。
体中がふわふわしてるのとしびれてるのと両方でおかしくなっちゃった。
うう…アキトばっかり経験があるんだもん…加減してほしかった…。
でも、信じられないくらい幸せだった…。

「…あぅ~~~。
 こんなことされたらバカになっちゃうよぅ…」

「慣れれば大丈夫ですよ」

「ほら、ユリちゃんも」

「ふふ、ありがとアキトさん」


ちゅっ。



むぅ、ユリちゃん、現本妻の余裕って感じでずるい。
あ、二人ともすっごく自然にキスしてる。
慣れてて仲良しな感じがすごいもん。
いいなぁ、いいなぁ。

「…じゃ、ちょっと食事作ってくるね。
 お腹減ってるでしょ?」

「「は~~~い」」

アキトはユリちゃんとのキスと抱擁が終わったら、
私達の護衛のためのナオさんを呼び出して、ユーチャリスの食堂に向かった。
その間、ナオさんは部屋の前で番をしてくれた。

私達はというと、三人で話し込んでいた。
二人ではなく、三人で。
アキトが火星に向かう間にあった出来事を、ちょっとずつ話してた。
遺跡ユリカのことはいの一番に聞いたけど、こっちはあんまり話してなかったから。
…でもこの世界のアキトがそんなに強くなったのって、やっぱり因果律のせいかな?
そういえば…。
私とラピスちゃんは一つの身体だから不便するかと思ったけど、そんなに不便しないね。
この調子なら、うまくやっていけそうだよね。

…でも、私達はちょっとだけ忘れてる事があった。

「はい、あーん」

「あ、あのアキト?
 う、嬉しいんだけど…はずかしい…」

「ほら、早く食べないと口移しにしちゃうぞ」

「うううっ!?
 あ、あーん…」

私は両腕手首を骨折、ユリちゃんは右の拳を複雑骨折と左の肩を脱臼および骨折。
両腕が完全に使えない状態なので、食事にも介助が必要だった。
うう…めちゃくちゃ嬉しいんだけどめちゃくちゃはずかしいよぅ…。

「ユリちゃんも、あーん」

「あ、あーん」

二人して顔を真っ赤にして、チキンライスを咀嚼するしか出来なかった。
うう…これが骨折治るまで一ヶ月とか二ヶ月以上続いちゃうの?
か、勘弁してよぅ…。

「一応、ちゃんと介助の方法は教えてもらったから二人のことは俺が見るよ。
 食事もトイレも入浴も、身の回りのことも」


「「ええっ!?」」



私とユリちゃんはびっくりした。
そ、そんな長くアキトに看られちゃうの!?
嬉し恥ずかしの状態で!?

「本当は看護婦さんにお願いしたいんだけど、時期が時期だろ。
 できるだけ、俺が介助してアイちゃんに診察してもらわないと危険が回避できないから。
 とりあえずこれからネルガルの附属病院に移ることになってる。
 護衛計画もそっちで詰めようか」

「そ、そんなぁ…」

アキトと一緒に居られるのは幸せだけど、
うう、また身動きできないまま監禁同然の暮らしじゃない…。

「…とりあえず、ここで骨休めをしようよ。
 俺も二人の面倒見るくらいだったらずぅっと楽だからさ。
 将来の予行練習も兼ねてさ」

「「予行練習?」」

「ほら、ユリちゃんと約束したろ。
 一日でも多くユリちゃんより長生きするって。
 ナノマシンの効果で俺は百歳まではなにもしないで生きるって話だったし、
 多分そこまで一番体力が持つと思うから、
 そうなったら二人の介護は俺がしなきゃだろ」

「…それは安泰ですね。
 そのためにもボケないで下さいよ」

「はうぅっ…。
 おばあさんになってもアキトにこうされちゃうのぉ…」

…一生かけて、アキトが私達を幸せにするって、そこまで具体的になってるの…?
あうう…くらくらしてきちゃうよぅ…。

「まあ、将来設計はユーチャリスを降りてからにしましょう。
 まだ身の安全の話も、アキトさんが戦いから抜けるのもまとまってませんし。
 お父さんとも家族会議もしないといけないでしょうし」

「うん…一度、お父様と話し合わないとだよね…」

「…事情を話して真っ向から行かないと説得できないだろうしね」

……私達の中で、ある程度しなきゃいけないことは決まったけど、
あくまで私達の三角関係のことだけだもんね。
現実的にはお父様を説得できないことには再婚しようにも、
ミスマル家を出ていかないとできないみたいになりかねないし…。
…二人には苦労かけちゃうなぁ。気にしないとは決めたけど。

「それもだけど、アキト、ユリ。
 まずはみんなにお礼言ってからじゃないの?
 
 それに、私をさらった…ええと、給仕のカッコした人も処遇決めないとだし。
 …あとPMCマルスパイロットの子たちもかなり奮闘してくれたし、
 ボーナスでも出してあげないと。
 
 どんどん片付くことはやってかないとなんも終わんないよ」

「……頭痛いや」

「……私もです。
 こんなんばっかです、私達…」

ラピスちゃんの言葉に、二人はがっくりとうなだれた。
…そうだよね。
地球と木連の和平のこともまだがっちりとまとまってはいないし。はぁ。

「とりあえず入院前にみんなに連絡とって、集まって方針を決めようよ。
 これからのことも重子にも占って欲しいし。
 敵のことも考える必要があるでしょ?」

「そうだな…テンカワにみんなの招集を頼んでもらうか。
 ナデシコ、PMCマルスの事情を知ってる人たちと、アカツキたちと…。
 テレビ通話じゃなくて、集まらないとちょっと危ないかな。
 …お義父さんはちょっと時間を空けたい」

「そうですね…。
 例のバール少将の処遇で手いっぱいでしょうから」

…そうだよね。
バール少将さんに、私達殺されかかったし。
お父様、あんまり無理しないで欲しいけど…。

アキトは、この世界のアキトを呼ぶと連絡するようにお願いしに、一度部屋から出た。
部屋の前で話してるみたいだから大丈夫そうだけど…。

……どうなっちゃうのかな、私達。


「…なぁ、ホシノ。
 お前、昴氣で二人の怪我は治せるだろ?」

「あー…忘れてたわけじゃないんだけど…。
 緊急時じゃないし、変な治り方するかもしれないから控えようかなって」

「…けど、ユリさんはともかく、ラピスちゃんの面倒を見るのはどうなんだよ?
 護衛の観点から必要なのは分かるが、バレたら世間的にまずいだろ?」

「テンカワ、ユリカ…義姉さんが同じことされたらなんて言うと思う?」

「え…?
 食事はともかく、トイレも風呂もだろ?
 
 …『もう、お嫁に行けない』とか?」

「だろ。
 もう誰のところにも行かせたくないから、
 ここでそう思わせておくんだよ」

「……お前、ちょっと性格悪くなったか?」

「…かもしれん。
 何故かわかんないんだが、妙に独占欲が出てきたみたいで…」



……思ったより戻るの遅いけど、アキト達、何話してるんだろ?































〇木星・都市・プラント制御室──遺跡ユリカ
ラピスちゃんの救助作戦から数日たって、次なる作戦のための準備に急いでいた。
アキト達の戦いはひとまず終わったし、
みんなの離脱が確定してから仕掛けることになると思う。

…だからここまで急ピッチで仕込んでた計画を、ついに動かさないといけなかった。
ヤマサキさんもちょっとだけ遺伝子をいじって、体力を増してあるけど限度があるから。
戦力的な準備は間に合った。
生産ラインの変更も、順次行って…それから、時期を見計らって仕掛けよう。
そんなに急ぐ必要もなかったかもしれないけど、これで大丈夫。

「とりあえず君の希望通りに仕込めて良かったね。
 だけど、まだアキト君たちはまだ危険な状態じゃないかい?」

「確かに、あんな状態じゃこれからの未来でもまだアキトは危ないのかもしれないけど…。
 でもね今回みたいにみんなの力を借りて切り抜けることが出来るんだ。
 
 未来でルリちゃんがナデシコのみんなに協力を仰いだ時みたいにね」

私達は再びクリムゾン系列の飲食店からワインをボソンジャンプで盗んで、
お疲れさま会で乾杯していた。

中々いいのを扱ってるんだよね、クリムゾンの系列店って。

「なるほどね…たしかに彼女を助けるために、
 最後の時まで『黒い皇子』のテンカワ君とラピスは力を貸したりしたもんね」

「そうそう。
 …あれ?」

私は、ちょっとした違和感を覚えた。
そう…ルリちゃんのこと。
ルリちゃんは…あの時もそういえば、そうだった…!

…そういうこと!?
なんで今まで気づかなかったの?!


「分かった!」



「わっ!?
 なんだい急に!?」

ヤマサキさんはびっくりしてた。
でも、私はもっとすごいことに気付いてびっくりし続けていた。

そう。
考えるところが間違っていたんだ。

どうしてこんなことに気が付かなかったの。
私はアキトがすべての起点だとおもって助けるために躍起になってたけど…。

アキトが起点じゃなかったんだ!


「ヤマサキさん!
 どうしてこんなに今回うまくいったか、気付いたの!
 アキトの持ってる『ルリちゃんの因子』がカギだったんだよ!」

「え?なんで急にそんなことを?」

「あのね、ヤマサキさん。
 私、アキトがいつも中心人物だと思い込んでたの」

「…そりゃ君から見たらそう見えるだろうけど」

「そーじゃないの!
 …いい、ヤマサキさん。
 この世界に来る前から、ナデシコという船は何度も奇跡を起こしていたの」

「?和平とか?」

「そう、そういうところ。
 ……でも、その起点はたった一人の少女、『ホシノルリ』だったの」

「は?」

そう。
ルリちゃんの因子が、アキトの運命を捻じ曲げたというのは間違いない。
でも、それはルリちゃんの本当は穏やかで、
子供っぽいところもあって、人の目を引くカリスマがあったからだと思ってた。

それがちょうどアキトの黒い部分を中和してくれているとしか考えてなかった。

でも、違ったんだ。

「…あのね。
 ナデシコが、私…ううん、遺跡を外宇宙に放逐しようとした時…。
 その一歩前で、木連との和平交渉をしようとした時、地球からナデシコで単独で飛び立った時ね。
 
 ルリちゃんが最初に全クルーに呼びかけたの。
 
 アキトが最初じゃないの。
 アキトだけだったらどんな後悔があったとしても、
 戦争を止められなかったことを悔やみながらずっと町食堂で働いていくのが限度だったと思う。
 
 ルリちゃんはコミュニケを通じてナデシコを復活させるために呼びかけて、
 そのためにナデシコに残ってこっそりオモイカネを守ってたんだ。
 
 それだけじゃない!
 遺跡を破壊しようとしたユリカを止めて、
 思い出をチャラにしたくないって説得して止めて見せたのもルリちゃんなの!
 あれがなかったら、きっとユリカは遺跡を壊してボソンジャンプの結果をリセットしてたと思うの」

「あ…」

「もっとも、それがなかったらあの悲劇もなかったのかもしれないけどね…」

アキト達は、あんなひどい目にあって世界をめちゃくちゃにするようになっても…。
遺跡にだけは手を出さなかったんだよね…。
矛盾してるけど、アキトってそういうリセットは許せなかった。

ナデシコの最後の戦いで、ルリちゃんが遺跡を壊さなかったから。

それは…ルリちゃんがアキトにかけた『呪い』だったのかもね…。

「そして火星の後継者の鎮圧も同じだった。
 ルリちゃんが働きかけたら、みんなが動いてくれた。
 
 協力しないと言いながら、じつは裏でこっそり協力してくれた人ばっかり。
 
 アキトでさえ、最後の最後でルリちゃんと組んだ。
 
 その後でさえも、アキトはラピスちゃんと一緒にルリちゃんを助けようとした。
 
 ……こんな連続した、奇跡的な出来事ってある?
 ルリちゃんを中心とした出来事が次々おこるんだよ?
 ありえないよね?
 
 つまり…」

「つまり…?」

「ルリちゃんの、本当にすごいところは…。


 『自分の望む方向に世界を革命する』因子、そして因果律を持っていることなの。

 
 女王、女帝の素質と言っても過言じゃないかもしれない。

 誰も彼もが、ルリちゃんの言うことに従うしかない、
 ルリちゃんの前では、物語のわき役になることを運命づけられちゃうくらいの…。

 最強の運命を持っているって言ってもいい。
 それくらいすごいものなんだよ、きっと」

「…そりゃおかしくないかい?
 そのルリ君を持ってさえ、『黒い皇子』の暴走は止められなかったはずだよ。
 君の繰り返した歴史の中では、自分が死ぬ運命すらも、変えられなかっただろう?」

「そう、そこなの。
 ……その最強の運命を、最悪な使い方しちゃったの、ルリちゃんは」

「んー?」

ヤマサキさんは首をかしげて私を見た。
理解しがたいことを聞いてるように。

「…ルリちゃんはね。
 
 本当はすっご~~~~く嫉妬深いの。
 
 できればユリカにずっと死んでてほしいくらい。
 この世界の、ユリちゃんと同じような気持ちで最初は居られた。
 アキトがユリカともう一回くっついてほしいって思えてた。

 でもアキトが戻ってこない時間の中で、ルリちゃんもまたアキトと同じように狂った。
 
 ユリカはアキトを追いかけられないほど弱り切っているのに生きている。
 ユリカが死なない限り自分には順番が回ってこない。
 
 だから無意識に、アキトに『黒い皇子』で居続けてほしいって思い続けたんだ」


「なっ!?」



「アキトはボロボロではあったけど五年生きられる体だった。
 でもユリカは二週目以降は、無機物との融合で一年持たないことが多かったの。
 そんな状況で、ルリちゃんは無理にでもアキトを呼び戻すことを選ばなかった。
 
 ユリカを殺そうというつもりは全くなかった。
 でもアキトを信じてるという甘えでユリカを時間切れで死なせて…。
 そして狂ったアキトを抱きしめる、そんなことを繰り返すケースも結構あったの。
 
 逆行させるために、ユリカの寿命が尽きる前に追いかけるように因子を弄る前は特に多かったの。
 家族愛と恋愛が混じった、時間が経ちすぎてコールタールみたいにドロドロになった、一つだけの愛情を追った。
 
 未来から逆行しても、それは変わりがなかった。
 ルリちゃんは、優しいアキトで居てほしいと願う、でも裏では絶対にユリカとくっついてほしくない。
 そしてそれを叶えてしまう物語に、運命を捻じ曲げていく…無意識のうちに…。
 
 本当は、三人で過ごすあの時代をもう一度叶えたいって気持ちの方が大きいくせにね。
 
 …アキトの性格も救えないけど、ルリちゃんもたいがいだったってこと」

「……そこまで導き出せて、いままでよく気が付かなかったね」

「恋は盲目っていうけど、分からないもんだね…自分でも呆れちゃった…」

アキトに夢中になりすぎて、そして強い英雄になる因果律に注目しすぎて、
私は気が付かなかったんだ……バカすぎるよね、こんなの。

「でもその理屈だと、ルリ君が歪めばまた未来は歪むんじゃないかい?」

「そうはならないと思うよ。
 何しろ、アキトとユリちゃんがルリちゃんの因子を持ってる以上、ある程度相殺されるはずだし。
 『黒い皇子』の因子もアキト、この世界のアキト、ラピスちゃんと、
 それぞれ何分割もしてあるからだいぶ削られてたし。
 
 なにより、ルリちゃんが本当に欲しかった形の家族を手に入れられた。
 
 ユリちゃんが本当の姉みたいに居てくれたことが始まりになってくれたの。
 孤独すぎる11年の人生を埋め尽くすのには十分すぎる家族がすぐそばにいる。
 肉親も、血のつながりがなくても運命のつながり、因子のつながりをもった家族も。

 だから、『二股で間違ってるけど』お互いを尊重する、
 奪い合いじゃない、歪んでない愛情を目の当たりにして、またルリちゃんは変わっていくの。
 
 …ミナトさんはいい人だけど、ルリちゃんを根本的に変えられる人じゃなかったし。
 私の見てきたルリちゃんは、正しい愛情を覚えられずに歪んでいったの。
 
 あ、ルリちゃんは一つ前の世界からお父様に引き取られてるけど、
 本当はミナトさんに引き取られる予定だったんだよ?
 
 それで愛情に飢えてて、でも声に出すこともうまく求めることもできずにいたの。
 好きだった人は遠くに行くし、もう娘や妹にも戻れなくなって。
 …狂うまでは何も自分から求めることが出来なかったの。
 
 アキトも似た境遇を持ってたから、二人とも直しようがなくてね。
 二人が狂う前にユリカが居ればそこそこバランス取れるんだけど…。
 
 あそこまで安定して、本当の意味での正直さを出せるようになったのは今回が初めて。
 …本当に、奇跡的だと思う。
 
 きっと私の意図してない世界の設計を、アキトとユリちゃんがしちゃったの。
 世界を自分の思い通りに変えてしまう因子によって…」

「…大逆転だねぇ、そりゃ」

「うん、大逆転ホームラン。
 延長に延長を重ねた16216回ウラ、ツーアウト満塁、フルカウントの状況でね。
 ベッタベタの逆転劇を演じて勝っちゃったの」

「ま…僕も木連の人間だからさ?
 復讐劇よりは勧善懲悪の方が好物だよ。
 ハッピーエンドなら言うことなしってところだ」

「…それじゃハッピーエンドを、
 地球と火星、木連の人たち全員に届けようよ。
 そろそろ、私たちも本格的にやらなきゃね」

私はワインをもう一度二つのグラスに注ぎ込んでヤマサキさんに差し出した。

「…そうだね。
 死出の旅だけど、ここまでずいぶんいい夢を見させてもらったし。
 人でなしなのはここでも変わらない僕が…。
 君みたいな美人ともう何年かいられるなら、僕にしては上出来さ」

…素直じゃないなぁ、ヤマサキさん。
少しくらい素直に…。
…ううん、私を想ってくれてるから言わないでいてくれるんだよね。

「遺跡ユリカ君は…どうするんだい?
 僕が死んだあとは…。
 一人きりで、遺跡としての君を見つけられないように逃げ回るしかないんだろう?」

「気にしないで。
 ヤマサキさんが死んだあと、アキト達の生涯を見届けて、
 その後もちゃんと世界が回ってくれるか見届けてるよ。
 私は地球上をのぞき見するなんて簡単なんだから、そうそう退屈しないよ。
 それで、いつか壊れる時が来そうになったら…。
 
 …古代火星人の人たちと合流して、メンテしてもらいに行くよ。
 ボソンジャンプのログを使えば簡単に
 もしかしたら私を人間にしてくれるかもしれないし」

「…そっか。
 確かにそうなれば君が壊れても、
 もしかしたらボソンジャンプの結果はキャンセルされないかもね」

古代火星人の人たち、自分たちに追いつかない地球人類に失望しそうだけどね。
これからは本当の意味で『私達の戦争』が始まるんだから。
──さあ、頑張らなきゃ。


「──咲く前に手折られれば、花は実をつけず朽ちていく」


「我らは鳥だ」


「人々は花だ」



「花を手折る者もまた、花だ」



「ならば」



「自らのために他の花を手折る心を」



「手折る翼で羽ばたこう」






「「世界を革命する為に!!」」

































〇作者あとがき
どうもこんばんわ、武説草です。
ちょっと甘々すぎたかもしれない、そしてアキトはちょっと最低度上がりすぎたかもしれない、
そんな回でした。
ついに報われたラピス(とユリカ)…これくらいはいいかなと。
これでようやっと未来に進めるようになったということで、一つ。

そしてついにバール少将、失脚。
彼がいい奴になるのはテツヤがいい奴になるくらいあり得ない。
絶望の中で、死の運命を目の当たりにして、失意に落ち込むことになってしまいました。
まあ自業自得でした。

テツヤも逃亡を余儀なくされる展開ですが、
彼が死んでないってだけでもけっこー不安要因な気がしないでもないですね。

そしてこのお話で重要な内容である「因子」と「因果律」について、
ラピス、遺跡ユリカがそれぞれ別個に語ることになりました。
最初はここまでこの要素が食い込んでくる予定はなかったんですが、
ナデシコと時ナデの分析を進めていったらこういうことになりました。

ルリちゃんが願ったことは叶っちゃう。
人、それをスーパーヒロイン属性と呼ぶッ!

ナデシコではメインヒロインのユリカより目立ちながらも、
本人が育ちのせいで肝心な時以外は自分の意思を伝えない。ツッコミはするけど。
でも、肝心な時は全員が力を貸してくれる。
彼女が物語上で願うことは叶うように設計されている、それがナデシコの世界であると。

そしての因子を半分受け継ぐホシノアキトとホシノユリ、二人が同時に願ったら、絶対に叶う。
ルリまで願ったら、200%叶う。
そんなお話でした。

下手するとこっから消化試合になってしまいそうなところはありますが、それはそれ。
物語を終わらせるにはまだまだまとまってないことが多すぎですし、
もうちょっとだけお付き合いください。

…ついにヤマサキと遺跡ユリカの本当の戦いが始まってしまうことになりました。

彼らの思い描いた野望、そして結末はどうなるのか!?
そしてアキト達の三角、いや四角関係は!?
さらに別の戦いが、また始まる!?

ってなわけで次回へ~~~~~~~~!!



















〇代理人様への返信
>「パリは燃えているか!?」を思い出した今回のサブタイトル。
>クリムゾン会長あたりに言わせればぴったりかなw
そういえば見たことないな、と思って軽く調べてみたらぴったりですねw
今回はタロットで崩壊を示す『塔』を倒す必要があるという意味を込めた回でした。









>後テツヤは冷酷を気取ってる割に詰めが甘いw
>とどめ刺さなかったのがライザに対する情けとも思えないしね。
助けに来るはずがない状況なので十分と思ってるにしてもちょっと甘すぎたかなーとは思いましたw
多分即死を狙わなかったのは、心底人の心を追い込むのが大好きなサディストだからなのかもですが。









>というかライザよりジュンの方が悲惨な境遇に思えてきたわ今回w
ライザのその前までの境遇が良く無さ過ぎて気付きませんでしたが、
考えてみたらフリでも愛情を返してもらえなかったという点においてジュンの方が悲惨ですねwww
ジュンはメグミちゃんと付き合ってから人間的にまともになってきたので気づいてしまったという。
器用貧乏で人がいい、だけじゃなくて本気で好きとか嫌いとか考えられるようになった結果、
ジュンは自分の状況を死ぬほど冷静に分かっちゃったし、ライザにも同じものを感じたという…。

…でもこんな奇跡の起こし方、嫌だなぁw
(書いといてなんだけど










>>腹黒ルリちゃんのことと合わせて考えると、
>>危ない橋を渡らせること自体が弱みを実は握っている状態になっている、とか考えてそうですね。
>・・・確かに!w
>まあこの兄ちゃんも三百億ぽんと貰っておいてそれ以上何かやるようなら情け無用のJ9ですがw
なんか政治家とか違法スレスレを攻める黒い企業とかがやりそうな手段ですわw
ルリちゃんが74話ではアキトが政治家とかには不向きと評してましたが、
ルリちゃん自身は政治家とか向いてるんでしょうね。ピースランドの女王になる素質が抜群です。

…そのせいか75話では、当初予定のネタバラしよりもだいぶ元々ルリちゃんが黒かったという話を入れてしまいました。
私は、ルリちゃんが複雑な環境やら戦争やらなんやら潜り抜けた割には、
結構いい子には育ったと思ってたんですけど、掘り下げたらやっぱ黒い部分が見えてしまった。
劇ナデのテーマは『不倫』だったとどっかで聞いたんですが、それを聞いてから、
ルリちゃんがハーリーと一緒に寝るシーンで、
ジュディ・オング『魅せられて』の歌詞を思い出すようになりましたw







~次回予告~
ホシノアキトっす。
…いい加減ミスマル呼びの方がいいか迷ってるけど、
ちょっとどうなるかわかんないんで、とりあえずホシノっす。

…で、色々円満にまとまりつつはあるんだけど、まだまだ対処しないといけないことも多いわけで。
ひとまず、休みたいかな…一ヶ月くらい…。

俺の希望はさておいて、次回は元の生活に戻るかどうかを悩む回になりそうだってさ。
ユリちゃんとラピスの治療とか護衛のこともあるし、うまく行くかどうか。
そこにとんでもない報告が飛んできそうな予感もしてる。

…ヤマサキが、このまま何もせずにいてくれるなら、一年以内には決着がつくはず、なんだけど。




ちょっときっかけがあって『無敵鋼人ダイターン3』を完走した作者が贈る、
メガノイド北辰というパワーワードに戦慄する系ナデシコ二次創作、
















『機動戦艦ナデシコD』
第七十六話:『Diamond is Unbreakable-ダイヤモンドは砕けない-』その2










をみんなで見よう!


…ちなみになんでダイターン3を?

「スパロボRでユリカがソルジャーに改造されそうになるシーンがあったもんだから、
 もしそうなったらどういう展開になるのか妄想が進んだ結果、見ないといけなくなった」by作者






ユリカ&ユリ&ラピス&ルリ「何考えてるの!?」「「何考えてんです!?」」「バカなの!?」







………たぶん、メガノイド基地かデスバトルをドジで爆発させると思うぞ。




























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代理人の感想
ダイヤモンドはハンマーで叩くと簡単に割れます。これ豆知識(ぉ
「固いけど脆い」の究極系みたいな鉱物なんでw
ちなみにこの弱点がないであろうと言われている&ダイヤより硬いのが
キン肉マンで一気に有名になった純粋ロンズデーライト。
もっとも純粋ロンズデーライトは自然にはほぼ存在しないそうですが。

それはともかく、まあ大体収まるところに・・・収まったのかなあ?w
バールも悲惨ちゃ悲惨ですが、まあインガオホーw


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