〇地球・東京都・アカツキ邸──エリナ

「う…もう朝か…」

「ふぁ~~~~~~…。
 …今夜もまた徹夜仕事になりそうよねぇ…」

私とナガレ君はようやく目を覚ました。
あのラピスの誘拐、暗殺未遂事件からすでに数日が経過していた。

あの時、私とナガレ君はピースランドの国用船に乗ってはいたんだけど…。
…入手困難でも、エステバリスを何とか回してもらえないかどうか、
西欧圏の連合軍にエステバリス納入を行ってるネルガル関係の業者に連絡して回っていたけど、
結局どうやっても間に合わないってことになってしまって、ラピスを助けるのに貢献できなかったのよね…。
あんまり情けないからアキト君に謝ったんだけど、当の本人は、
出発前に私達に気合を入れてもらったからそれで十分だよと笑ってた。
……はぁ、さすがに二人して自己嫌悪になるわよね。

「…これから、何ヶ月このあたりの事が続くやらね。
 支度して朝食は外でとろうか」

「ええ、そうね…」

昨日の夜にようやくユリとラピスはネルガルの附属病院で、
アキト君に守られながらVIP待遇で回復を待っている状態になった。
イネス…いえ、アイ曰く、もう一週間ほど時間をかけて昴氣を使った治療をすれば回復するみたいね。
アキト君はなぜかちょっとだけ渋ったけど、
アイが気功術の類で回復するというデータを取りたいとかで押し切ったみたいね。
ユリとラピスも、アキト君に四六時中面倒みられているのが恥ずかしくて耐えきれないからと頷いた。
私達もちょっと見舞いに行こうかと思ったけど、
あの三人の幸せそうな顔を見たら、私達が心配するのもバカらしいので、
メールで一報だけ入れて、回復後に今後のことを話し合うことで決定した。

「しかし、いつまで持つかねあの三人は。
 そのうちアキト君をとりあって大ゲンカするのは間違いないだろうけど」

「……それは思っても本人の前じゃ言うのやめなさいよ。
 その場で大ゲンカになりかねないんだから」

結局、あの三人…いえ、オリジナルの方のラピスも含むと四人よね。
事情が事情なだけに今は大人しくしているだろうけど、
ずうっと大人しくしているとは考えづらいのよね。
何しろ、ユリが現在アキト君と正式に結婚してるわけだから。
…未来のユリカさんも、完全に安定してるかどうかはまだ分からない。
どこかで気持ちが爆発したり、また危うい方向に行かないとは限らないもの。
ラピスだってそう。
冷静に見えて、実は我慢してるだけってところもあるし。

それに例の『因子』と『因果律』の件については未知数なところが大きい。

運命が変化するというのもそうだし、人格の変化も伴っているのは見てわかるわ。
二人の人格が入った「ラピス」という人間には特に強力すぎる『黒い皇子』の因子がある。
いくら本人に自覚があっても、影響を完全に防げるとは考えづらいものね。

「分かってるよ。
 過去にも未来にも絶対類を見ないだろう、
 『数万年の宇宙的規模のロマンス』を、僕が傷つけるわけにもいかないだろ?」

…ホントに分かってんのかしらね。

「とにかくまずは専門家の意見を聞こうよ。
 イネス…いやアイちゃんも、未来で心療内科やメンタルケアの勉強をしたわけだし。
 ラピスの心身の経過観察をしながら、何とか治療のめどを立てていこう」

「それしかないわね」

懸念通り、アキト君はメンタルケアすっ飛ばしてラピスに愛の告白しちゃったそうだし。
ま…あのユリカさんだったらそれだけでもずいぶん回復しそうなもんだけどね。

──きっともうすぐ戦争も終わるし、平和に過ごせるわよ、きっと。




















『機動戦艦ナデシコD』
第七十六話:『Diamond is Unbreakable-ダイヤモンドは砕けない-』その2






















〇地球・東京都・テレビ局・ニューススタジオ──眼上
私はあれからアキト君たちに先んじて日本に戻り、
直接アキト君がテレビに出ないで済むように色々と手配していた。

PMCマルスのパイロットのみんな、天龍地龍兄弟のダブルドラゴン、
アクアちゃんとアクアフィルムのみんな、
時にはユリカさんやルリちゃん、ミスマル提督まで、
次々にスタジオに呼び出した。

事件当時の様子をニュース番組などで取材してもらうことで、
アキト君がテレビ出演できないことに対する、テレビ局側からの不満を緩和していった。

死ぬような目に遭ったユリさんとラピスちゃん、
そして二人に付きっ切りで居たいアキト君の願いを叶えてあげなきゃね。

ちなみに私の隣にはガードのナオ君がいる。
ルリちゃんの護衛に最適な人間は限られるから。
私達もあんまりふらふらしてるとどうなるか分からない状況だものね。

「えーそれではかなり現地では大変だったんですね?」

「はい。
 見ての通り、生放送が入った時点ではほとんどやることが終わってしまっていて、
 ラピスの危機を伝えるのが精一杯だったんです」

「それにしてもステルンクーゲルを現地で購入して駆け付けるとは。
 さすがピースランドのお姫様ですね」

「どってことないです、ぶい。
 すでにネット上でも話題になってますが、
 ゼーデルマルムのディーラーさんには助けてもらいました。
 『my road, run』というお店です。
 ぜひ、お話を聞きに行ってあげて下さい」

ルリちゃんは涼しげに当時の様子を語ってくれているわ。
本人はアキト君の代理人扱いで、呼ばれる回数が特に多いのが不満そうだけどね。
でも本当に、ステルンクーゲルがなかったら最後の瞬間も危なかったわよね。

今回のことでステルンクーゲルも爆発的に売り上げが伸びたそうだけど、
一方では今回の事件の首謀者じゃないかって言われてて批難も浴びてる。
世間も混乱してる状態だから、最後まで追及されるかは微妙って感じね。

「というわけで、両手骨折のユリ姉さんとラピスはしばらく休養です。
 それに付き添ってホシノ兄さんの方もこちらには出てこれませんので、
 どうぞよしなに、です」

「えーホシノ…いえ、ミスマル・ルリさん、ありがとうございました。

 それでは続いて、
 週末討論『人類の敵は誰か!?』に続きます。
 チャンネルはそのままでお願いします」

「…はい!お疲れ様でした!」

ディレクターの声とともに、番組がカットされて、
コマーシャルの時間の間に、
ルリちゃんは周りにぺこりと頭を下げてセットから出てきた。

「…お疲れ様、ルリちゃん」

「どうも。
 なんてことないです」

「それじゃユリさんのお見舞いに行くかい?」

「いえ、一週間くらいで戻れそうならいいです。
 …それにあの空気にあてられるのは妹でもちょっときついです」

…あれはちょっとねぇ。
三人とも『幸せいっぱいラブラブ新婚夫婦』みたいな空気で二十四時間だものねぇ。
ほほえましいんだけど、過剰というか完全に自分たちの世界に入ってるって言うか、
事情を知らなかったら二股かけてるだけにしか…いえ、もう二股決定みたいだけど。

ユリさんとラピスちゃんは両手骨折してるからアキト君が四六時中面倒見てて、
二人もだんだん慣れてきて甘えて、べったべただものね。

まあ、あれだけのことがあったわけだし、未来で起こったひどいことを考えたら、
一週間くらいはそのままそっとしておいた方がいいわ。
ラピスちゃんも病んでたし、心身共に最高の療養になるわけだしね。

「……でもな、あれでアキトの奴、敵の察知能力は落ちてねぇんだよな。
 暗殺者が来るのを二キロ先から感知しやがって、俺かテンカワがやっつけてんだけどさ」

「…相変わらず人間離れしてますね」

「ナオ君とテンカワ君はその察知能力はないの?」

「あ、あるわけないっすよ、眼上さん」

……戦闘能力ではすでにテンカワ君に一歩譲ってるそうだけど、
そこはまだまだ勝ってるのね。
やっぱり死線を潜り抜けて来たら全然違うってことかしらね?



















〇???
とある特殊な暗号化されたプライベート回線に通話が開かれている。
軍の上層部の人間をも含む、かなりの大企業の要人、政府要人などが集まっている。
クリムゾンを筆頭とする、木連と手を結んで利益を共有するために同盟を結んでいる人物たちである。
この数日、会社を持っている者は社内で疑心暗鬼な空気が漂っており乱高下する株価に、
軍部、政治に属している者はマスコミや市民の対応で疲弊しきっていた。
この集まりは、完全にラピスラズリ暗殺失敗について反省会と化していた。
意気消沈の状態で、強い言葉はほとんど出てこなかった。

『『『はぁ……』』』

『…何がいけなかったのだ』

『一石二鳥を狙い過ぎたのではないか…?
 いや、あれくらいしなければ事態を覆せなかっただろうが…』

『ラピスラズリを単に殺しておいておくべきだったのでは?』

『…いや、あの誘拐はテツヤの一存だ。
 事前の方針設定はともかく、実行中に私が横やりを入れるのを奴は好まんだろう。
 奴の始末もそのうちつけるつもりではあるが…はぁ…』

『あそこまで追い込んで無理なら無理だろう…』

『もはや、ホシノアキトのことは、
 もう構わないでいないとかえって大けがするかもしれんな…』

『『『『『はぁ……』』』』』

彼らは完全に戦意を喪失したようにうなだれていた。
彼らもクリムゾンに対して批難を浴びせたい気持ちはないわけではなかったが、
あそこまで完璧にアキト達を手玉に取り、ギリギリまで追い込んだテツヤの策を絶賛した手前、
そこまで強気な態度をとれるわけもなく、かつ、状況が状況だけに落ち込むしかなかった。

『…ひとまず、我々も態勢を整えるしか無かろう。
 幸い、名指しでの批難でなかっただけマシだ。
 全員が致命傷を受けたわけではないのだからな。
 何とか持ち直して、それからだろう。
 さしあたっては…』

『…バールの暗殺だな。
 それは私に任せてほしい。
 あの事件についてのことであれば、連合軍本部に来てからでなければ取り調べは始まらん。
 そこまでに移動する前に事故を装って暗殺してやろう』

『頼むぞ』

『ホシノアキトについても、本人はすでに引退したがっているという。
 なら、引退してから策をめぐらす方がいいだろう。
 奴は目立つ。
 それにいかに奴が強いとはいえ、連合軍特殊部隊の隊員八名相手なら単独では倒せん。
 ブーステッドマン達相手もかなりきつい様子だった。
 ならば…』

『なるほどな。
 状況を整えればなんとかなるか。
 
 今まではエステバリスのあるPMCマルスの敷地内や、人の多すぎる芸能関係、
 空に浮いているユーチャリスやナデシコの内部だったから手が出なかったが、
 それ以外の場所であれば、条件も整うかもしれん。
 
 シークレットサービスの連中をかき集めれば何とかなるかもしれんな。
 それにブーステッドマンに限らずパワードスーツの類であれば対抗できる。
 引退後、孤立している状態の奴を狙えば勝ち目もあろう』

『ああ。
 できれば木連にゆかりのある勢力の仕業にしたいところだが、この際贅沢は言えん。
 まずは奴を潰し、テンカワアキトも、その後グラシス中将の孫娘二人を潰す。
 そうすれば地球が勝てるという確信が無くなって、人々の心のバランスも崩れるだろう』

『グラシス中将の孫娘は、ホシノアキトたちに比べれば直接殺すのが容易いしな。
 もっとも、ホシノアキトたちを殺さねばあの二人を殺しても意味はあまりない。
 テンカワもアキトも同様だ。
 
 ホシノアキトという英雄が死んだあとに追撃しないと意味がない。
 それどころか彼らが死んだらホシノアキトが戦いに復帰してしまって逆に損だろう。
 順序を間違えないことだな』

『そういえば未確認なんだが…。
 連合軍と木連の共同作戦中、二機のブラックサレナがDFSをふるって奮闘したという話がある。
 あの二機のパイロットは女性であるということ以外はすべて不明だ。
 
 …奴らの情報も必要になるな。
 DFSという武器を扱える奴はこちらに引き込むか、
 殺すかする必要があるだろう』

『そうだな、DFSを使えるパイロットというのがこちらにもいればよいのだ。
 …いや、エステバリスの導入がここまで進んでしまったのだ、
 だったら連合軍兵士全員にDFS適性を見てやればいいだろう。
 それにグラシス中将の孫娘のうち一人は、元々パイロット経験もなしにDFSを使ったという。
 IFSを導入した、ホシノアキトファンの新兵がいるなら利用できなくはないのではないか?
 
 そういえばネルガルがDFSを独占するのを、独占禁止法違反で訴えるのはどうだ。
 パイロットの方が確保できれば、技術的には追いつけなくはないだろう』

『…そうだ、我らもホシノアキトに対抗できるアイドル的なパイロットを発掘してはどうだ?
 ホシノアキトに叶わないまでも、世間を沸かせる人間が一人いれば、
 それだけでもだいぶ違うんじゃないか?』

『何だ、まだあきらめるには早そうだな』


ざわざわ…ざわざわ…。



彼らも話していくうちにまだできそうなことがあることに気付いて、
だんだんと議論が活発になっていった。
…ただし、ろくでもない議論であることには変わりない。

だが彼らが見落としている点がいくつかあった。

まず、ホシノアキト、テンカワアキト、そして影守姉妹には『昴氣』があり、
この『昴氣』を自在に扱えた場合、その戦闘力は通常状態の比ではなく、
ブーステッドマン達にも勝てる可能性が出てくるほどの威力がある。
これを自在に操れるようになった場合、ライフル狙撃はおそかバズーカ砲やミサイルの直撃すら防げる可能性がある。
このため、すでに彼らを直接的に暗殺するのが極端に難しくなってしまっていたこと。

テツヤをもう一度使おうという発想がなく、始末する対象にしてしまったため、
彼のような巧妙で狡猾な、直接的な方法をとることは二度とできない状態に気づいていないこと。

実はすでにホシノアキトの成功例を真似しようとしている芸能プロダクションは山ほどあり、
彼らの思いつくアイディアのほとんどは、世間でも思いつくような内容だったこと。
そのバックに政治家、軍部、思想家、企業などがこっそりくっついている。
このプライベート回線を使っている人物たちは、そういった手段には比較的疎く、
彼らが利用する下の立場の人間たちが提案してくることに頷くにすぎないことも多い。

と、言うことはそのあたりに詳しい眼上とラピスはとっくに気づいており、
それに対抗する手段も考えてある状態だったと気付けなかったこと。

さらに言えば──。
『黒い皇子』の容赦のない戦略と、『テンカワユリカ』の頭脳を持つ、
恐らくは状況さえ許せば世界でも最悪最強の女帝になる可能性がある、
ラピスラズリという少女の本質を見抜けず、
さらに彼女を完全に敵に回していたことに気付けなかったこと。

これらが同時に、かつ巧妙に襲い掛かってくると彼らには想像ができなかったのだ。














〇地球・東京都・ネルガル附属病院・ユリとラピスの病室──さつき
私たちはアキト様たちの様子を見にわざわざ佐世保から飛んできた。
とはいっても、ユリさんたちはもう両手は完治、わずかなリハビリを残しているくらいで、
もう今日の夕方には私達と一緒に生還のお祝いパーティに行くことになってる。
だから蛇足っちゃ蛇足なんだけども…。

「それにしても私達までテレビ屋さんに呼ばれるとは思わなかったわよね」

「確かにあの場で支援してたのは事実だけど、
 眼上さんがアキト様の代わりにって呼ぶのにはちょっとパンチが弱い気がしたけど」

「いいじゃない、別に。
 マスコミが納得しようがしまいが知ったこっちゃないわ」

…それもそっか。

で、病室に来た感想は……。
…ルリちゃんの言ってた通り、あんまりにも甘ったるい空気が漂ってた。
私達が来ている時にこんなにべったり二人がアキト様の腕をとってるなんてね…。
この場面だけ見たら、女の子二人をはべらすマフィアの幹部みたいな危ない人に見えなくもないわね。
片方が12歳のラピスちゃんだから怪しさ倍増だし。

「あ、あのユリちゃん?ラピス?」

「勝手に話しててください。
 せっかく両手が自由になったんですから」

「そうだよぅ。
 …アキトにお風呂まで面倒みられちゃったんだから責任取ってよぅ」

「は、はは…」

……なんていうか、アキト様も自業自得だって分かってるせいか苦笑いしてるだけなのよね。
こんなじゃ、普通の感覚だったら甘ったるくて胸やけ起こすとこだけど…。
私達はラピスちゃんの、未来のユリカさんの境遇を知ってるから、なんて言うか…。


尊いわ。この光景。



私達はアキト様と、アキト様の大事な二人を助けることに力添え出来て、本当に嬉しくてね…。
ラピスちゃんはともかく、
ユリさんが人前でアキト様にべったりしてる姿なんてそうそう見られないし。

「みんなにもお礼を言うのが遅れちゃってごめんね。
 ユーチャリスでこっちに戻るまでの間、付きっ切りで護衛してたもんだから…。
 
 …ありがとう、みんな。
 俺もこの二人を亡くすことがあったら…。
 ええと、事情を知ってるって聞いたけど、その、なんていうか…。

 …『黒龍の呪い』に囚われて、戻ってこれなかったかもしれないんだ。
 君たちはユリさんとラピスだけじゃなく、俺の未来を守ってくれたんだよ。
 命を賭けて、危ない目に遭わせてごめん…。
 
 ホントに、ホントにありがとう…」


((((((((((((ああ…助けられてよかった…!))))))))))))



私達の心はもはや一つだった。
まさに感無量。
アキト様に感謝の言葉を言われるなんて思わなかった。
一筋の涙をこぼして、映画に例えて自分の未来を守ってくれたと言ってくれるなんて…!

私達はここまで、ほとんど役立たずで、
アキト様たちに甘えてばっかりだったのに。
肝心な時に、しかも一番大事な時に力になれた。
こんなに嬉しいことないわ…。

それだけじゃなくて、すでに社内でもユーチャリスのスタッフみんなにも私達は絶賛されている。
特に大車輪の活躍を見せた重子は、もはや崇拝されつつあるレベル。
ライザさんはまだ処遇が決まってないので、このネルガルの附属病院で軟禁状態だけどね。

「…なにか、お礼をしないといけないよね」


「「「「「「「「「「「「い、いいえ!お礼なんてとんでもない!
            これからも守らせてくれるだけでいいです!」」」」」」」」」」」」



「…で、でも、悪いよ…」

「そうですよ。
 少なくともボーナスくらいは受け取ってもいいくらいの働きですよ?」


「「「「「「「「「「「「これほどの栄誉と喜び以上のものはいりません!
            お願いですからそばにおいてくださいっ!!」」」」」」」」」」」」


「だ、だからそばにいていいからお礼くらいは…」

私達はもう、これ以上ないくらいのお礼を受けてしまっていると思ってる。
だからアキト様の惑いは分かってても、受け取る気分にはなれなかった。
自分たちの心のままに、願いをかなえるために奮闘したんだもん…。
そう言われてもこっちが困っちゃうよね。

「まあまあ、アキト、ユリ。
 お金や物を返してもらうのは気にしちゃうんなら一回保留でもいいじゃない。
 別に返す方法なんていくらでもあるんだから。

 みんなもさ、ちょっと落ち着こうよ。
 世界一の王子様がさ、自分の未来を救ってくれたってお礼がしたいって言ってるのに。
 断ったらそれはそれで失礼だと思わないの?」

「あ、うん…」

「「「「「「「「「「「「う…」」」」」」」」」」」」」

久しぶりに前面に出てきた、ラピスちゃん。
最近は未来のユリカさんが表に出てるから中々見れなかったけど、元気そうでよかった。
相変わらず、反論の余地のないくらいの堂々っぷりだよね。

「じゃ、間をとって、私とアキトがみんなが喜ぶスペシャルプレゼントを準備しておくよ。
 日取りは来年、年開けてから。
 いいアイディアが浮かんじゃったんだ♪」

「ら、ラピス?
 あなたは、また変なこと考えてませんか?」

「べっつにぃ?
 そこそこまっとうな折衷案だと思うから大丈夫だよ。
 協力してくれるでしょ、アキト」

「あ、ああ。
 俺のできることだったら…」

「じゃ、決まり」

…ラピスちゃん、いつもこういうところ正確だから期待しちゃうけど…。
でも、どういうアイディアなんだろ…。

・・・・・。
・・・・。
・・・。
・・。
・。

それから私達はアキト様たちに先んじて、先に生還のお祝いパーティの準備に向かった。
アカツキ会長の提案で、例のエステバリスパイロット養成訓練施設に集まることになった。
あそこはもうすでに使っている人が居ないということで、ぼちぼち建て替える予定だったけど、
せっかくなのでそこを使ってパーティすることになった。セキュリティも守れるし。
またピースランドに行くのは、ピースランド側の都合もあるけど、この間の事もあってちょっとためらわれたから。

でも会場にはナデシコのみんなと、ユーチャリススタッフのみんなが先乗りしてるからやることは少ないんだけど…。
パーティ前に、アキト様の今後のことを話し合う必要があるから、その準備で私達は先乗り。
…そういえば。

「重子、あのライザさんのことって占ってあるの?」

「ああ、うん。
 今の状態で生存できるかどうかだけ占ってあるわよ。
 ひとまずこのまま流れで大丈夫って分かってるから」

そっか。
まずは大丈夫そうなんだ。

「でもそっから先のことって占ってないのよね。
 ちょっと視てみましょうか」

重子はさっとタロットカードを切ると、一枚のカードを引き当てて…。
ぐらっと地面に膝をついた。

「ど、どしたの!?悪いの!?」

「わ、悪くないんだけど、ちょっとめまいが…」

私は覗き込んでみたけど…一番よさそうなカードじゃない?
それとも、それが問題になるのかしら?

「ちょ、ちょっと待ってて…すぐに追っかけるから」

重子はふらふらしながら自販機に向かって水を購入して、
一息に飲み干して、深呼吸をしてこちらに戻ってきた。
ライザさんの運命については、しばらくノーコメントだって言ってたけど。
なんなのかしらね。















〇地球・神奈川県・元アトモ社ボソンジャンプ実験場・特別会場──ユリ
私達はようやく、夕方ごろになってこの会場に到着しました。
……アキトさんにずいぶんダメ人間にされてしまってましたが、いい加減立ち直りました。
じ、自分でもあんなになっちゃうとは…たぶんユリカさんの因子のせいです。
ラピスも、ラピスの中のユリカさんも、もうべっとりで…。
いい加減にそろそろ平常運転に戻さないといけないです。
あのままだと本当に、一生を棒に振るレベルのダメ人間になるところでした。
アキトさん、ほとんど介護状態なのに全く嫌がらないんですもん…。
…じゃなくて。

『…本当に、みんなありがとう。
 たくさん助けられて、一緒に居られて…。
 俺、みんなと出会えて、幸せだと思ったんだ』


ぱちぱちぱち…!



アキトさんはみんなに乾杯の音頭、そして改めてお礼をみんなにスピーチしてます。
昔以上にボケボケして頭が悪いのが難点ですが、ずいぶん子供らしく素直になったので、
こういう時にちゃんと気持ちを伝えられるようになったのは本当に美点です。

…その分、ラピスの中のユリカさんがちょっと控え目になって危ないことになってましたけど。
でも今後はもう大丈夫です、今度こそ大丈夫です。
私達が隣に居て、精神的に持ち直しつつあるんですから大丈夫に決まってます。

ちなみに、このパーティの前に何を話したか、ですが…。

重子さんの占いをもとに、今後のことを分析して、行動指針を決定することになりました。
信頼のおける…特にアキトさんの事情を知っている人であれば、
ナデシコ、PMCマルス、そして木連関係なく、
パーティの準備がほどほどに整ったところで召集をかけました。

ここでもラピスがずんずんと発言して中心に居続けました。

そしてクリムゾンはやっぱり真っ黒で、それを大々的に暴くにはラピスの計画が必須だと。
占いの内容からもラピスはキーパーソンになり続けると出ました。
隠れて出てこない敵を何とか引きずり出して、逃げ出せないくらいに追い込む。
この計画が成功しない限り、アキトさんはまっとうなコックにはなれません。

…でもこの戦いも何年も続くかもしれない…もしかしたら一生続くかもしれない。

矢面に立って、英雄として戦争に関与してしまった副作用ともいうべき、
アキトさんに対抗しようとする、戦争を放棄したがらない人たちとの戦い。
自分たちの人生を生きながら、この戦いもしなければいけないということです。
果てしない道になりそうですね…。

…でも一番私達の心を揺らしたのは、アキトさんのこの言葉でした。

「…もし死ぬような目に遭っても、
 また味覚を失うようなことがあっても、生きて帰ってくる。

 例え…Dたちみたいに、機械仕掛けの体になろうともな」

アキトさんの決意の固さに、私は肩を震わせました。
『自分たちの夢を失っては意味がない、全員が無事でないと意味がない』
とは今のアキトさんは言えないんです。

アキトさんかラピスが死ぬことは、『黒い皇子』の因子がどちらかに偏るということ。
そうなった時に、すべてを滅ぼしても復讐する可能性をまだ残しています。
逆に言えば多少身体に問題が出ようとも、
生きて帰って共に天寿を全うすることを貫きとおすのであれば、
そこまでになんとしても敵を倒すことを考えないかもしれません。

でも、私達も結局人間です。
大事な人が傷ついたら狂うかもしれないのは、アキトさんに限ったことではありません。
アキトさんが傷ついたら私も、ユリカさんも、ラピスも黙っていられないかもしれません。
そこまで行儀よくなれる自信は、はっきり言ってありません。
だからこそ、アキトさんはどんな姿になっても戻ってくると誓う必要があると思ったんでしょう。

……とはいえ、すぐに動かなければいけないことは少ないので、
まず、計画の準備を進めるためにも、関係者が全員がある程度安全な状態に持っていくことが必要で、
そのためにも、私達が一度世間と敵の目から逃れる必要がある、という結論に至りました。

私達の所在がつかめないままであれば、彼らはそうそう手出しができません。
ナデシコで戦い続けるメンバーはある程度安全ですし。
それ以外のメンバーの身辺警護が重要になりますが、こちらも考えがあるそうです。

とにかく明日からは少しずつ準備しないといけないですが、
今日くらいはお祝いを楽しむという結論になりました。

それで…。
ラピスを二度も助けたということもあって、重子さんの占いは伝説になりつつあります。
パーティのこの場ですらも、占ってもらおうという人が殺到してます。
…残業手当くらいは出してあげた方がいいでしょうね。

ちなみに今ひとりで地球に攻撃を仕掛けている、
木星に居るヤマサキ博士のことについてですが、重子さんでも占えないそうです。
戦争の行く末などの、人々が多くからむ話や大きな出来事については確定的に占えないとかで。
この手の話は重子さんの実家の本家が詳しいそうですが、そっちでも細かくは占えないそうです。
あと、純粋に対象者が遠くにいすぎるので運気がつかめないのではないかという推測があるそうですが…。

あ、アカツキさんとエリナさんが占ってもらってますね。

「……アカツキさん、近い将来に浮気しますね」


「「へっ!?」」



アカツキさんとエリナさんは唖然としました。
ついでに周りがざわつきました。
アカツキさんはこの一年半ほど、この世界に来てからというものエリナさん以外に手出しをしたことがありません。
二人の息の合いようは誰もが認めているほどです。
アカツキさんもそんな素振りはなかったですし…どういうことでしょうね。


「ナーーーーガーーーーーレーーーーくぅぅうううんっ!!」



「わあああああっ!?
 何も起こってないうちに怒らないでくれたまえよぉぉおおっ!!」


「「「「「「ほんとに何か起こす気かあんたは!?」」」」」」



……エリナさんも苦労しそうですね、全く。



















〇地球・東京都・立川市・ミスマル邸──ミスマル提督
…ラピスの誘拐事件から事件から三週間が経った。
あれから私はバール少将の取り調べに立ち会うようにいわれていたが…。
バール少将の乗っていた護送船が何者かによって襲撃、
自殺防止のために冷凍睡眠処置を受けていたバール少将のカプセルが強奪されてしまった。
護送していた者たちは空調に仕込まれた睡眠ガスで一人残らず昏倒した。
この事件は前代未聞の事件として、連合軍の汚点として記録に残ることになるだろう。
…外部の人間ではここまでの不祥事を起こすことなどできん。
恐らく連合軍の内部に協力した者がいると考えるべきだ。

…敵の手が長いとは推察されてはいたが、ここまでとは。

核爆弾を持ち込まれていたという話もある。
護送していた者たちを責めるわけにも行かず…。
連合軍のメンツがどうこうと上層部は騒いでいたがな。
…いや、今は考えまい。

今日は大事な日だ。
ユリとラピスが、アキト君とともに顔を出してくれるというので待っていた。
本当はまだ退院などできない時期のはずだが、すでに二週間前の段階で二人の治療は終わっていたらしい。
私を助けたあの『昴氣』によって、治療速度を加速してだいぶ早く完治させることに成功した。
ただ、治療を担当した者曰く、早く回復すれば細胞の分裂回数を消耗するため、寿命が縮むらしい。
やはり緊急時以外は多用しないようにとくぎを刺していたらしい。

…そうだな、私の時のような場合じゃなければうかつに使用すべきじゃないだろう。
とはいえ、二人が身動き取れないままというのも問題がある状況なので今回は適切だろうがな。

そんなこんなで、私の予定が空く頃に顔を出したいと言ってくれたので、
ユリ、ラピス、アキト君の三人が今日来てくれた。
今日は私も別の大切な用事があるが…。
取り急ぎ話したいことがあるというのでその前に来てくれることになった。
だが…。

「…なんだユリ、かしこまって」

「…ちょっと大事なことを話さないといけないんです」

三人とも正座して、やたら緊張したようにしている。
もはや私達は家族で、ここまでされる覚えはないんだがな…。
本当に激闘に次ぐ激闘で疲れ切っていただろうに。
年末同様、もう机に突っ伏していても怒るつもりもないくらいには信頼してるんだが。

「え、えっと…お義父さん…」

「うむ?なんだ、アキト君」

どこか、すごく申し訳なさそうに、アキト君は私に問いかけようとしている。
なにか頼もうとしてるようだが…遠慮などしてるようだ。
今更水くさいことを。
君ほどの男なら、何を言われても大概許せるというのにな。

「も、申し訳ないんですが……。


 ら、ラピス、を…。
 
 
 
 
 
 

 ラピスも、俺に下さいッ!」







「…………。


 ……。
 
 
 …。



 なッ!?

 

 
 
 
 

 何ィィィィィイイイッ!?」
 
 
 



「言い方を!」「考えてよ、アキトのバカッ!」




ぱーんっ!ぱこーんっ!



「ぐああっ!?」



私が呆気にとられて叫ぶ中…。
どこから取り出したのか、ユリとラピスのハリセンがアキト君の左右の側頭部を挟み込むように炸裂した。

な、何を言い出すんだ!?アキト君は!?


・・・・・。
・・・・。
・・・。
・・。
・。


……私はしばらく、ユリとラピスがアキト君に説教するのを茫然と見つめていた。
アキト君は、基本的にはちょっと抜けてるところもあるが丁寧に気を遣おうとしてくれる。
誠実で、優しい男…その上、生身でもエステバリスでも戦わせたら右に出る者はほぼ居ない。
ミスマル家の家督を継ぐにふさわしい男だと思っていたが…。

あまりにも急で、何を血迷ったことを言っているのかと、怒ることもできんかった。
とはいえ、ユリたちの怒り方は『言った内容』ではなく『言い方』に怒ってるようだ。
目の前でこう、激怒している娘たちがいると私の方が怒りづらいんだが…ううむ。
……ユリは二股かけるのを許容してるとでもいうのか?

「ぜー…ぜー…。
 大事なところで失敗してどうするんですか…」

「ホントだよ…」

「ご、ごめん…」

「も、いいです。
 私が説明します」

「ユリちゃん、お願いね」

ユリはむすっとしていたが、すぐに気持ちを切り替えて私に話を始めた。
それからしばらく、私は奇想天外な…。
SF話というか、下手すると妄想じみてるかもしれないような話を聞かされた。

ボソンジャンプによる時の逆行が起こる前の…この戦争のあるべき形について。
そしてボソンジャンプによる歴史のリセットは、
一度ならず16216回繰り返した歴史だったと、驚くべきことが語られた。

アキト君は、元々テンカワ君で…テンカワ君のクローン。
ユリはルリ君で…。
ラピスは、ラピスラズリという少女の体と記憶の脳髄、未来のユリカの脳髄が入っていた、
この世界に来てからは『ラピスラズリの見た目の、ユリカクローン』になったと。

…再び、私は茫然と聞き入ることしかできなくなった。

そんな…そんなことが…。

「…だからお願いします、お父さん。
 私、アキトさんと離婚してでもユリカさんを…。
 ラピスをアキトさんと結婚させてあげたいんです。
 
 ユリカさんからアキトさんを奪って、私だけ幸せになりたくないんです。
 
 幸せになるなら、二人とも…」

「…お願いします、お義父さん!
 こんなことを考えて、お義父さんに許しを請うなんて間違っているのは分かってます!
 どれだけ迷惑をかけるのか、最低の男と世間に後ろ指をさされるのかも!


 それでも俺は、今度こそ二人とも自分の手で幸せにしたいんです!」



私は腕を組んで、目をつぶった。
そして、ひどく悩んだ。

こんな…こんな数奇な運命があっていいのだろうか。
ユリカという…私の大事な愛娘がたどるはずだった悲劇、救われない運命。
それを覆すためにユリカの意識がのこったボソンジャンプの演算ユニットによるリセットが幾度も起こり…。
『火星の後継者』が始め、ユリカを奪われ『黒い皇子』と化したアキト君が救いのない結末を導き続けた。

つまりユリカを中心に、このボソンジャンプの連鎖が起こったということだ。

…これを妄想話と跳ね返すことが、私にはできなかった。
あまりに、納得がいくことが多すぎる。

私とユリカを見る、懐かしいものを見るかのような目線、大事な人だと最初から思ってくれたこと。
テンカワ君のクローンでありながらここまでの力と技量を持っていたこと。
誰も知らなかったはずのルリ君の過去を知っていたこと。
PMCマルスの主力兵器としてエステバリスを選び、自在に操ったこと。
そして木連の指導者、草壁と戦争終結の説得が滞りなくできていたことも。
アカツキ会長との関係も。

…未来から来た、となればすべて納得がいく。
アカツキ会長も、草壁も、そしてヤマサキ博士でさえも、未来から来た。
そしてそれぞれの後悔を取り戻すために、懸命に戦っていた、ということなら…。

正直、この戦争の終結のスムーズさには不自然さすらも感じるところがあった。
木連はヤマサキ博士にすべてを押し付けて、火星の虐殺を塗りつぶそうという意図ではなかったかと思った。
そうではなかったのだ…。

「お父様…」

「分かっている、ラピス…いや、ユリカ。
 
 …ナデシコが火星に発った後、お前がユリカに似てきた時、違和感を覚えていた。
 それにわがままを通すために、こんな絵空事を話すユリだとは思わん。
 
 嘘をついているとは思っていない。
 
 お前が未来のユリカで…結婚したばかりで凄惨な仕打ちを受けたとなれば、
 アキト君が狂うのも、そのために強くなったのも…。

 私に語ったこと、そして世間に話したこと、婚約者の件も、
 すべてが実話に基づくものだったということになる。
 
 …タイムスリップとは想定外だったがな」

「じゃ、じゃあ…」

「…ユリカ、お前の心を救いたい一心で、二人が懸命に決断したことだ。
 私には止められんよ。
 
 それにアキト君は、ユリとの仲を認めなかったら私から奪ってでも、
 命に代えても守り抜く、幸せにすると言い切った男だ。
 
 …無理に愛娘を奪うような真似を、君にさせたくないのだ」

私にも二人が、いや三人が真剣に自分たちの関係に悩んでいるのが分かる。
正面から説得しに来ているのが、逆にそれを物語っていた。
若い時にありがちな、無理な主張を通そうとする内容にも感じるところもあるが…。
自分たちのことしか考えてないのであれば、私に黙って不倫なりなんなりしようとしただろう。
だが何故、作り話と切り捨てられるかもしれないと分かっていて、私に事実を伝えたのか。

三人全員が、私に祝福してほしいと願っているんだろう。

もし…本当に黙って奪うことを選択したら、私はアキト君を認められなかったかもしれん。
未来で果しえなかった、ユリカと歩む人生。
私も渋りながらも、ユリカの幸せを願って結婚を許したはずだ。
…たった今も、テンカワ君を認めていいのか迷っているようにな。

だが、あくまで許しを得て祝福されて結ばれるのでなければダメなんだろう。
私と袂を分かって、喧嘩別れして、勘当されては意味がない。

…それがどういうことか。
どういう気持ちでそれを考え、この場に来たのか。

分からないわけがない…!

「ユリ…ユリカ…。
 お前たちはあくまでミスマル家の子として、アキト君と結ばれたいんだな…? 
 アキト君となら、絶対に幸せになれるから信じてほしいと、私に頼みに来たんだな?」


「「…!はい!」」



「…っ!」

私は二人の返事を聞いて、目頭が熱くなった。

ユリカは、自分が死んだことで未来の私を泣かせたことを悔やんでいたのだろう。
今はラピスとなってミスマル家に入ったとはいえ。実の娘として振舞えないからと悩んでいたのかもしれん…。

ユリも、未来では私に引き取られたと言っていたが…。
あの最初に会った時の態度からすると、正直な気持ちを隠して居たのではないかと思う。
戸惑ったあの態度…お父さん、と呼ぶ機会を見失って、後悔していたのではないか。
今から思えば、容易に想像できる。

そんな二人が、あくまでミスマル家の子で居たいとこだわってくれている。

…断れるわけがない。

どんなに方法が間違っていようと、親としてこの二人の願いを叶えたい…!

「分かった、ユリ、ユリカ。
 …お前たちの気持ちはよぉく分かった。
 何も気にすることはない!
 
 

 たとえ神が許さなかったとしても私が許す!」


「「!!」」



ユリとユリカは、顔を抑えて押し殺したような嗚咽をこぼした。
二人とも不安だったんだろう…だが話してくれて良かった。
これ以上、不幸な目に遭わせて溜まるか…!
この二人の心を救い、そして現実的に守れるアキト君がいてくれる。
それだけでいいじゃないか…!

「…お義父さん。
 認めてくれて、ありがとうございます。
 でも…一つだけ、俺は嘘をつきました。
 
 …俺はユリカを取り戻すために、火星の後継者との暗闘の中で、数百の人を殺したんです。
 
 そしてラピスのことも…戦うために利用してきました。
 失った五感を補うための補助として、オペレータとして。
 ラピスの中に、ユリカの脳髄が入っていることも気づかないまま…。
 
 …そうするしかなかったと、言い訳が出来るような内容じゃありません。
 
 いえ、それどころか遺跡が言う通りだったら…。
 …俺は一回の歴史の中で数万人以上殺すこともあった。
 それどころかユリカとルリちゃんにも、ナデシコの仲間にも、もしかしたらお義父さんも、
 手をかけていたこともあったはずなんです…。
 
 そこまでした男を、認めてくれるんですか」

…今度はアキト君の…懺悔だな、これは。
アキト君も、自分のしでかしたことに悩んでいたんだろう。
そして消え去った未来のことを、なかったことにして私に嘘をついたことを悔いているのだろう。
……アキト君の『黒い皇子』としての、悪夢のような悪行…信じたくはなかった。
だが…今ならわかる。

ユリとラピスがあの廃墟ビルに囚われた時、
私は『黒い皇子』と同じ気持ちになったんだと思う。

かけがえのない大切な人を奪われそうになった時、敵が居るのだとしたら、
私は冷静であれたかどうか怪しい。
あの時、ラピスを誘拐した敵に対して叫んだことは、決して誇張ではなかった。
もし世界すべてが敵だとしたら、すべてを滅ぼしてでも報復しようと考えたかもしれん…。
…私にもまた、アキト君を責める権利などないのだな。

「そんな風に言ってくれるな、アキト君。
 ……確かに、そこまでしたとなれば認められんだろう。
 だが、君はその過ちを後悔して、繰り返さないように努力してきた。
 人を殺すことを良しとせず、命懸けの戦いの中でもそれを曲げなかった。
 ユリを守り、そしてこの世界のユリカを、テンカワ君を助けてきた。
 
 …そんな君を責め立てることなど、誰が出来る?」

「……すみません」

「謝るな、アキト君。
 君は自分の意思でこの世界を救い、自分の大切な人を守ったんだ。
 
 まして君が未来で犯した罪も、犯す予定だった罪も、今は可能性にすぎない。
 起こっていないことを裁くような真似は、神にだって出来はせんよ。
 …そしてこれからはその力を、自分たちの夢を叶え、守るために使うんだ。
 
 ……この先の、地球圏を守る戦いは私達の仕事だ。
 もう、君が戦いに関与する必要などない。
 二人を、頼む。
 
 

 世界中の誰よりも、幸せにしてやってくれ!!」


「はいっ!」


「お父様ァッ!!」


「うおっ!?」


がばっ!?


私は突然、ユリカ…ラピスに抱き着かれてよろめいてしまった。
綺麗な金色の目にいっぱいの涙をためて、ぼろぼろとこぼれ落ちるそばから涙が…。


「ぐずっ…わ、わたし…っ!

 お父様とお別れなんて嫌だったの!
 
 ずうっと悔やんでたの!
 
 大事なお父様と、またお別れしたくなかったの!
 
 アキトとのこと認めてくれてありがとう、お父様ッ!!」



「お、おおう…」

私に抱き着く…いやしがみつくように、ラピスは私を離さなかった。
そうか、未来で私を泣かせたという後悔の念だけじゃなく、
二度と会えなくなった私と離れたくない、もっと一緒に居たいと思うようになっていたのか…。

…なぜ私は、あの時に気づいてやれなかったんだ!

「すまん、ユリカ…。
 お前が本当にユリカだったと気づけなくて…」

「い、いいの、お父様…。
 私だって、意識を中々取り戻せなかったし、
 ラピスちゃんの人格のほうがいつも前に出てたんだもん…気付けなくて当然だよぅ…」

…私はラピスを強く抱きしめた。
ラピスという人間が別に存在して、無理矢理脳髄をつぎはぎされて作られて…。
こんなむごいことを、誰が思いつくというのだ…。

「でも、ごめんなさい、お父様。
 ユリカは悪い子です…。
 幸せいっぱいのユリちゃんからアキトを奪うんだもん…」

「だから気にしないで下さいってば…」

「うんうん…大丈夫だ、ユリカ。
 お互いを大事にする気持ちを無くさなければ、大丈夫だ。
 アキト君、二人の…いやラピスも別人格だから三人か。
 三人の幸せは君にかかってるんだから平等に接するんだぞ」

「は、はいっす…」

アキト君は冷や汗をかきながらうなずいていた。
この調子なら何とかなるだろう。

「…ユリカ。
 どんな辛い目に遭ったのか、その顔を見れば分かる。
 三人ともアキト君にいっぱい幸せにしてもらいなさい」

「はい!」

「はい。
 …でもお父さん、ちょっとだけ違います。
 
 私はアキトさんに幸せにしてもらうだけじゃなくて、
 アキトさんも、ユリカさんも、ラピスも、私が幸せにするつもりです。
 
 そうでないと、とてもじゃないですけどどっかで喧嘩しちゃいます」

「あ…そうだよね。
 家庭ってそういうものだよね。
 私も、アキトとユリちゃんを幸せにする!
 ラピスちゃんとも仲良くやって幸せになるもん!
 さっすがユリちゃん!
 
 …ま、今日は蚊帳の外だったけど私もおおむね賛成だよ、アキト。
 私も、ユリとユリカとはやっていけると思うよ。
 でもユリも、ユリカも、私の分を残さないと許さないんだから!」

「ふふ…私が心配するまでもないようだな。
 任せたぞ、アキト君」


「はい!
 一生かけて三人を幸せにします!」



「うむ、よくぞ言ってくれた。
 …それと、スキャンダルになるようなことがあっても、胸を張っていてくれ。

 もはやミスマル家に恥じない生き方などを選ぶ必要はない。
 
 一生をかけて我が愛娘を幸せにすると言い切った君だからこそ、
 ミスマル家に残る資格があるんだ。
 
 …ただし約束してくれ。
 もうこれ以上は誰にも手を出すなよ。

 特に…ユリカには…」


「し、しませんよ!?」



「なら構わん。
 君のことは信用してはいるが、念を押させてもらうぞ。
 ユリカはテンカワ家に嫁ぐといってるからな。
 ルリ君も、ピースランドの家族のことがあるだろう。
 好き放題してミスマル家内々で話が終わらないようなことをしたら追い出すからな」

「は、はい…」

私はため息を吐き出した。
……ユリとラピスのことは任せてもいいと思えるが、ユリカとルリ君のことだけは心配だ。
何しろ、一番最初に愛したユリカがそばにいる状態だからな。
テンカワ君と結ばれた後に、アキト君が横恋慕するようなことがあった場合、さすがに収拾がつかん。

ルリ君も、明らかに兄妹関係になってるから手出しはしないだろうが、
ユリが前例になっていると考えると可能性はゼロではない。

……普通はこういう心配をあえてする必要もないのだが、なまじ同一人物だからな。

「大丈夫です、お父さん。
 私かユリカさんかラピスが常時横に居るようにします。
 そうなればユリカさんやルリに手を出すどころか、別の女の人だって近づけません。
 アキトさんは残りの人生で一人きりになれる場面がないようになっちゃいます。
 っていうか、そうしないと私もラピスも身を守れませんし」

「うん、そうだよね。
 私達を守れるのってもはやアキトか、この世界のアキト、ナオさんくらいだもん」

「そうだな。
 …改めて頼む、アキト君」

「はい!」

うむ、それは分かる。
なら今のところ問題はないだろうか。
四六時中アキト君の横に居れば問題はない。
対人関係についてもそうだし、ユリとラピスの護衛についても万全だろう。
あとは…。

「あ…そういえば、今日ですっけ。
 テンカワがユリカ義姉さんにふさわしいか見極めるテストの日って」

「うむ。
 もうそろそろだな」

「…もうしなくてもいいんじゃないですか、お父さん。
 テンカワさんがアキトさんと同一人物であると分かった以上、
 そこまでする必要あるんですか?」

「いや、実力をつけた経緯が違う以上、テストはするべきだ。
 クローンでも双子でも、まして同一人物でも育ちや生き方で実力が異なるだろう。
 それにユリカを守れる実力があるかをこの場で見定めたい」

「おじ…お父様、テストするにしてもちょっと甘いんじゃない?
 こんな真っ向勝負のテストじゃ護衛のテストには向いてないよ」

「む、ユリカ…じゃなくてラピスか。
 さすがに直接狙撃するわけにもいかんだろう。
 とりあえず様子を見るにはちょうどいいとは思うのでな」

「ふーん。
 
 …でもお父様、あの人たち、ただものじゃないんですよね?」

「む、今度はユリカか…。
 アキト君と戦った連合軍特殊部隊の八人に加え、
 特殊部隊員でも敵わないくらいのが混じってるぞ」

…しかしややこしいな。
ラピスの中に未来のユリカと、ラピスのオリジナルの人格が二人いるというのは。

「あ、私もラピスちゃん扱いでいいですよ、お父様。
 結局この体、ラピスちゃんのですから。
 ユリカが二人も居ると、色々ややこしいですもん」

……顔に出てたか。
それを言ったらアキト君とテンカワ君も大概だが…。
と、とにかくだ。
本当にアキト君並にテンカワ君が強くなっているかどうか、見極めてやろう。

……アキト君に二股、いや三股を許可した後というのがどうもしまらんが。




















〇地球・東京都・立川市・ミスマル邸・門外──ユリカ

「アキト、だいじょーぶ?
 重くない?」

「は、はは…大丈夫だけど…。
 昴氣なかったらあぶなかったかも…」

私は特別性の装甲服に身を包んで、アキトにお姫様抱っこされていた。
これ、装甲服っていうよりはパワードスーツって言った方がふさわしいんだよね。
私も着る時にすごい大変だったし、関節保護のために固定されてるところが多くてほとんど歩けないもん。
合計重量、二百キロ超えてるっていうし。

…これはお父様の無茶苦茶な条件をすべてかなえるとこうなっちゃうの。

お父様はアキトが私にふさわしいかどうかのテストとして、
私を護衛して敵中突破をするのを条件にしようとした。

対するはアキト君と戦った連合軍特殊部隊の八人と、
この間、年末に帰省する時に護衛してくれたキリュウさん達四人の混合チーム。

ペイント弾でマーキングされたら、撃たれた場所に関わらず戦死扱いで、
アキトも私も一切の被弾なしに敵中突破してお父様の居る場所にたどり着くっていうルール。

最初はペイント弾ってことで私も無防備でいるつもりだったんだけど…。
でもプロ中のプロが相手で、多少の訓練は受けたといっても射撃以外は実戦経験が薄くて、
素人よりはマシ程度の私が混じるとなると危険が増すってことで…。
嫁入り前の娘が傷物にされては困るってお父様が猛抗議して、
最初はプロテクターから始まって、お父様が納得するところまで色々試したら、
総重量が150キロもする特殊スーツを渡されちゃったもんだからもう大変。

普通は抱えるだけでも腰が死んじゃうし、抱えたまま動くなんてもってのほか。
私もこの恰好だと腰の曲がったおばあさんみたいな速度でしか動けなくなっちゃって…。

でも、アキトが昴氣を使って平然と私を抱え上げたので、これでスタートになっちゃった。
アキトはハンドガン一丁と、マガジンが五つ。
すごい不利だけど、せいぜい片手しか使えない可能性も高いしこれでいいって。
…アキトも素直に付き合わなくてもいいのにね。

「…とりあえず、正面からは危ないな。
 射撃姿勢で構えてる人が何人かいるみたいだ」


「ええっ!?そんなこと分かるの!?」



「ホシノほどじゃないけど、俺もこの辺の練習はしてるんだ。
 …もっとも、八人分しか読めないところを見ると、残りの四人はすごい人たちだ。
 俺なんかじゃ勝てるかどうか…」

そ、そんなにすごいの!?
私はびっくりしてアキトの方を見ようとしたけど、首がうまく回らなかった。
うう、この装甲服安全だけど苦しいし不自由だよぅ。

「…先手を取られたらアウトだ。
 まず、八人を倒さないと…」

「アキト、一度私は置いてって」

「バカ、俺が一人で行ったら狙い撃ちだぞ。
 ……信じてくれよ、ユリカ」

「…うん」

……アキトがそこまで言ってくれるなら、私は引っ込むしかなかった。
でも、アキト君でも苦戦するような人たちに…。
…ううん、アキト君も強くなって、アキトはそれ以上に強くなったもん。
大丈夫!きっと!















〇地球・東京都・立川市・ミスマル邸──ラピス(ラピス)
私達はアクリルの盾を持って、テンカワの死闘を見守っていた。
でも、なんかすごいことになってきちゃったね。

「はー、テンカワもやるな」

「…アキトさんのんきしてる場合ですか?
 なんかもう、殺し合い一歩手前に来てますよ?」

「…お義父さん、そろそろ止めませんか?
 テンカワも、余裕が無くなったらケガさせる技を使いますよ」

「む、むぅ…」

…アキトの言う通りだよ。
すでにテンカワは八人の連合軍特殊部隊の人たちはやっつけてて…キリュウの部下も二人倒した。
残るはキリュウと、キリュウの部下一人。
でも厄介なことに全員弾丸を使い果たして、泥仕合の様相を見せてる。
キリュウの部下の一人がナイフファイトに切り替えて…竹のナイフだけど、
テンカワの服をあっさり切り裂いて、傷をつけてる。
紙一重でしっかり避けてるけど、テンカワ優位かな。
何しろ…。

「お父様、テンカワも昴氣をセーブしてるけど、
 攻撃に転化すると威力がありすぎて殺しちゃうからセーブしてるんだよ。
 …手加減してるのはテンカワの方だよ」

「……そうか」

お父様は、中止を合図しようとした。
でも、そこでキリュウがすっと前に出て、部下を制した。

「マウロ、代われ。
 …俺がやる」

「…!」

キリュウはどこからか取り出した木刀を持ち、テンカワの前に出た。
あれ…あの構えどこかで…。


どうっ!


「うっ!?」


そして、十メートル以上離れていたテンカワに向かって、衝撃波を!?
テンカワはとっさに昴氣を展開して防御したけど…。
ち、違う!
あれは…昴氣とは少し違うけど、気の一種だよ!

「本気で来い、テンカワ君。
 …今ので俺の師匠が誰か分かっただろう?」

「…りょ、リョーコちゃんのおじいさんか!?」

「ご名答。
 少しは俺も気の扱いには慣れてる方なんだ。
 …本気で来た方がいいよ、テンカワ君」

「…はい」

……私達は茫然と二人の空気が変わるのを見つめることしかできなかった。
まさか、こんなすごい人が隠れていたなんて…!
その後、キリュウって人は衝撃波のような気弾のような何かをぶつけてきて、
テンカワは昴氣をまとった両手でうまく防いでるけど、防戦一方に見える…!

!ううん、テンカワの方が少しずつ詰めてる!
ユリカの歩行速度に合わせるようにゆっくりとだけど!

「ほう…我慢強いね、君は」

「おかげさまで」

「あ、アキト…」

「ユリカ、俺に合わせて進め。
 大丈夫だ」

私達には理解できないところがあるけど…テンカワもかなりすごい防御の仕方をしてるんだ。
キリュウはすごい関心しながらも気を緩めてないし…。

二人の距離は…あと三メートル…。
一足飛びで届いちゃうくらいの距離に来て、二人は動きを止めた。

…それからしばらく、二人の間に沈黙が訪れた。
この場にいる全員が、次で勝負が決まるって分かった。

テンカワは飛び道具を使えないだけ不利だけど…。
たぶんだけど…キリュウも次は真っ向勝負で、

飛び道具じゃなく一刀で勝負を決める!

!動いた!


ばきっ!



気の密度が高いのか、目に見えて白い気を放つ木刀がテンカワを襲う、瞬間。
テンカワが昴氣を右手に宿して、手刀でキリュウの木刀をへし折った。
そして──。


どんっ!


「かはっ!?」


…どさっ!



「…ふうっ」


その直後、テンカワはその手刀をすっとキリュウの水月あたりに持ってって、
手のひらを当てると、大きな音がして、キリュウがぶっ倒れた!
…起きない。
か、完全に昏倒しちゃったよ…!?

「な、何が起こった!?」

「あ、あれは…浸透勁!?
 いえ、もっと直接的に気を使ってるような…」

「…そうか、テンカワは昴氣を直接撃ち込んだのか。
 昴氣は人の体を治癒させるように、元来人間には無害だ。
 一時的に大量の気による過負荷をかけて、急激に体内の機能を活性化したんだ。
 あまりに急激な体内の変化に、脳のほうが耐えきれずに意識の方をカットしてしまうってことか…」

……アキト、頭悪いのにこういう時、たまになんか降りてくるよね。
テンカワもだけど。

「…隊長が勝てないんじゃ、俺も勝てないかな。
 参ったよ、テンカワ」

キリュウの部下たちはキリュウの状態を見て、
命に別条がなさそうだと判断してほっと溜息を吐いた。
そしてそのままキリュウを介抱していた。

「…ってことは、お父様!
 アキトの勝ちだよね!」

「む、む…」

えへへ、お父様ってば、タジタジだよね。
ま、いんじゃない?
テンカワとユリカが結ばれるっていうのは、アキトも、ユリも、私達も望んでたことだし。
……?

…アキト?

「…行きますか、お義父さん」

「…行ってくれるか、アキト君」

「屋敷が壊れても恨まないで下さい」

「かまわん!」

!?
あ、アキト、何考えてるのよ!?
アキトが本気になったら、いくら何でもテンカワじゃ敵わないよ!?

「あ、アキト、やめてよ!」

「…ラピス、悪いな。
 俺も、テンカワが…本当に俺を超えてくれたか確かめたいんだ。
 昴氣を持つもの同士だったらそんなにひどいことにはならないさ。
 
 …手加減なしだぞ、テンカワ」

「…ああ!」

な、なんで急にバトル漫画みたいなことを言いだすのよ?!
でも、二人ともキリュウたちと特殊部隊の人たちが下がると、
さっさと戦い始めちゃって…うわっ!?
もう拳の打ち合いで衝撃波が出てあぶないじゃない?!


どごぉぉんっ!
















〇地球・東京都・立川市・ミスマル邸──ユリカ
私はようやく装甲服から解放されたんだけど…。
…私達は、アクリルの盾をにぎりながら、茫然と二人のアキトの戦いを見つめるしかできなかった。
お父様でさえ、昴氣をまとわせた二人の激闘に唖然としている。
本当に二人の力がとんでもないところまで来ちゃってるよね…。


どんっ!どんっ!どごぉぉんっ!



「……あの、お父さん?
 これ見ても認めないんですか?
 止めましょうよ…」

「い、いや、そろそろ止めたいと思い始めてるが…。
 二人ともこちらの声が届くか怪しい状態だな…」

…すでにお屋敷が半壊しそうなところまで来ちゃってるもんね。
私達の方だけを器用に避けてるけど、こ、これは…。


「そらそらそらそらっ!」


「うおおっ!?
 飛び道具かよぉっ!?」


ぱぱぱぱぱぱぱっ!



「し、指弾…」

ユリちゃん、カンフーちょっと詳しいからか技名を言ってるけど…。
アキト君は庭園の玉砂利を両手に握ると、昴氣をまとわせて連続ではじき出した。
アキトもそれを器用にはじき飛ばして回避してるけど、
それが塀や石灯籠に直撃して、あっさり砕いてる。
こ、怖い…。

あっ!

アキト君が、隙をついて突撃して…!


ばきっ!



あっ!?アキト君が吹っ飛ばされた!
アッパーカットで地上四階くらいの高さに…!
あ、危ないっ!


「ホシノ!?
 し、しまった、やりすぎたか!?」


ばっ!


アキトは頭から落下しそうになったアキト君を受け止めようと飛んで…。
ああっ!?


どかっ!


「し、死んだふりかよっ!?」


「気を抜きすぎだぞ、テンカワッ!」



アキト君はアッパーカットが直撃したにも関わらず、
全然ダメージは足りてないみたいで、気絶してなかった。
それどころか、飛び上がってきたアキトに反撃のかかと落としまで!
目で追うのがやっとなのに、この攻防を一瞬で…。


だんっ!



アキトは地面にたたきつけられそうになって、受け身を取った。
でも、そこにアキト君が自由落下の重さを使った二度目のかかと落としを…!


「アキト、避けてっ!」

「だりゃぁっ!」


「ぐあっ!?」


がつんっ!



「サマーソルト!?」

アキトが、受け身でかがんだ状態から飛びあがり、アキト君のカカト落としとすれ違うように、
蹴りをしながらバク宙でアキト君のあごを狙った!?
アキト君はしっかり両手でガードしたけど、それでも威力が高くてすごい勢いで回転して、
受け身をとれずに地面にたたきつけられた!

「ほ、ホシノ!?」


「油断するなって言ったろ、テンカワッ!」



アキト君はアキトに檄を飛ばして、注意した。
結構ダメージはあるみたいなのに全然倒れる気配がない…。
こ、このまま続けたら二人は…!

「アキトさん、やめて下さい!
 これ以上やる必要は…!」

「そうだよアキト!
 もう十分だよ!
 お父様だって、もういいでしょ!?」

「う、うむ。
 ……こんな嵐のような戦いをする者に、手出しできるものなどそうそう居まい。
 もういい、分かった」

「……ホシノ、もういいだろ」

「……そうだな。
 命拾いしたのは俺の方、だ…な…」


ざっ…。


「あ、アキトさん!?」



あ!?アキト君が身体を崩して膝をついた!
ユリちゃんとラピスちゃんがアキト君に駆け寄って…。


「アキトさん!?アキトさん!?」


「アキト!?
 嘘でしょ、アキト!?」



「う……」

アキト君がぐったりして…た、大変!

「救急車を呼ばないと!」

「だ、大丈夫っす…」

「でも!」

「無理しちゃダメです、アキトさん!」

「しっかりして、アキト!」

「ち、違うんだって…。


 は…。


 腹減っちゃって…」


……え?


「「「「「だああああっ!?」」」」」


「「バカーーーーーーッ!!」」




特殊部隊の人たちと、キリュウさん達…そして私達までずっこけちゃった。
ユリちゃんとラピスちゃんは本気で心配してたのにと怒ってた。
毎度のことだけど、アキト君ってガス欠起こすの忘れてたね…。

……アキト君、ホントぶれないよね。

こうして、お父様のテスト中止とアキト君のガス欠で、アキトと私の婚約が決定した。
お父様も修理費の請求に冷や汗をかいていたけど、もう知らないもん。
場所をここにしたのはお父様なんだから。
それで…。

「テンカワ兄さん、ユリカ姉さん、婚約おめでとうございます」


「「「「「おめでとーーーーっ!」」」」」



実は様子を見に来てたルリちゃん、それからナデシコクルーたちも乗り込んできて、
ボロボロのミスマル家の庭園で婚約祝いのパーティーが始まった。
ホウメイさん達も、ウリバタケさん謹製のどこでもキッチンキットを使って、
お祝いの料理を作ってくれた。
特殊部隊の人たちもキリュウさん達も参加して、とってもにぎやかなパーティになった。
最近、こんなパーティばっかりしてる気がするけど…でもおめでたいことはたくさんしてもいいよね。
うん、そうだよね!私達の門出だもんっ!


「ホシノ兄さん、今日の食材の請求書です。
 テンカワ兄さんとユリカ姉さんのためですし、持ってください」


「うげぇっ!?」


「…アキトさん、今日はアキトさんだけで50人前も食べてるんですから、
 これくらい持ってくださいよ」


「うう…またしばらく芸能界に行かないと…」





















〇地球・佐世保市・PMCマルス本社・運動場──白鳥九十九
…ラピスちゃんの誘拐事件からすでに三週間が経過した。
私達は時にかぐらづきによる連合軍との共同戦線を行うこともあるが、
基本的には地球の人たちと文化的な交流を行ったり、
マスコミとのコミュニケーションをお願いされたりが多かった。
当然、ギャランティも出る。
そして通常の勤労よりはだいぶ時間的な余裕があった。
私達は、木連のためにと訓練と敵対心を燃やしてきたのが日常だっただけに、
ホシノアキトが平和をとりもどしたこの地で平和にすごすことで、少しずつ堕落している感覚があった。
娯楽も、基本的にはゲキガンガーのみだった木連と違い、充実したものが多く、
無料のテレビジョンでさえも優れた番組がたくさんある。

草壁閣下も、私達に考える時間を持てと積極的に休むように言ってくださったが…。
このままではいかん、と定期的に木連に居たころと同じ訓練を行うことで精神を研ぎ澄ませた。
だが…。


どさっ!



「う…う…」

…ほとんどの木連将校が鍛錬から引き揚げた後、北斗が夏樹殿を鍛えていた。
夏樹殿は、ヤマサキ博士をなんとか止めたいと思い、悩みぬいた末、自分の力を鍛えて、
この戦争の首謀者として逮捕されるにしても、自分の手でと思っていたようだった。
地球に向かう中で、心を閉ざしがちだったが、ついに未来に進もうとしている。
後悔しない生き方をしようとしている…あのヤマサキ博士も、こんなよい許嫁を持っていたんだ。
一途で、男社会である木連の中にあってさえ…ここまでしようとするなんて…。

「…夏樹、もうやめろ。
 お前には戦う素質はない。
 どんなことをしてもヤマサキを助けることなど、無理だ」

「ま、待って…」

「はぁ…。
 …続けるにしても、今日はもう休め。
 一日あたりの鍛錬には限度がある。
 それに肉体を酷使するだけが能じゃない。
 …言ってる事分かるよな。

 ……よく考えることだな」

「う…はぅっ…」

夏樹殿が倒れたまま気絶して、私は介抱に入ろうとしたが、
枝織殿が近寄って抱き上げた。

「…痛ましいな」

「…九十九さん、あまり肩入れしない方がいいよ。
 夏樹さんは、ヤマサキ博士が死刑になるって分かっててもこうせずにはいられないんだ。
 …一人でやんじゃうよりはマシだけど、優しい九十九さん達だと引き込まれちゃうから」

「…すまない」

夏樹殿はこの一週間、必死に北斗殿に食らいついて己を鍛え続けていた。
ただ…北斗殿の評価は残酷な者だった。
気力で何とかついて来られているものの、根本的な体力が足りず、身体能力が低すぎると。
薬物などのドーピングなどをしても、絶対に足りることはない…。

木連式柔を学んだもの、いや武に関わるものすべてが分かることだ。
誰でも達人になれるということはまず、あり得ない。
素質がわずかでも足りなければどこかで必ず行き詰まる。

つまり、この鍛錬そのものが無意味。
北斗殿の判断は間違ってはいない。
そして最後のアドバイス…あれは操縦者になれ、ということだろう。
機動兵器操縦者としての訓練を優先すべき、なるほど的を射ている。
体術が得意な者の方が、人型機動兵器操縦者を動かす上で有利だが…。
逆に体術が得意でない者でも、操縦者としての素質はあることも多い。

いずれ木星に向かうであろう地球艦隊に紛れ込んで、
ヤマサキ博士を説得する役割を得て…わずかでも彼と時間を過ごしたいという願いを叶えるには。

…それしか、ないだろう。

もっとも、ヤマサキ博士と関係があるというだけで断られる可能性も高いのだが。

「…う…」

「夏樹さん、寝てなよ。
 北ちゃんにしごかれてそれくらいで済んでるのが奇跡的なんだから」

「眠っていたくても…全身が痛くて…」

「医務室で痛み止め貰って来ようよ。
 ううん、ちょっと医務室で診てもらお?
 このままじゃ鍛錬するのもおぼつかないんだから」

二人は医務室の方向に向かおうとした。
この調子では、どれくらい持つか怪しいものだが…。
私はこれを見ていることしか、できることはなさそうだな…。


「九十九!
 夏樹殿もそこにおられるか!?」


「なんだ、月臣!?」



突然現れた月臣は、ひどく驚いている様子だった。
そして私と夏樹殿を探していたのか、ちょうどよいとばかりに私達を呼んだ。

「どうし、ました…?」


「や、ヤマサキ博士が…!

 ヤマサキ博士が、テレビジョンをジャックしている!

 お、おそらく宣戦布告をするつもりだ!」



私達は、呆気にとられた。
ヤマサキ博士が一人で木連の兵器群を操っている首謀者として知られてはいる。
すでに地球でも火星でも、認識のずれはない。
月の独立戦争以来の恨みを持つ木連の代理人として…一度の宣戦布告もなしに彼が地球を襲ってきた。

…だが私達はそうではないことを知っている。
未来から来たことで、木連を救うために一人で罪を被ろうとしている。

草壁閣下は…私達に事情を話すにあたって、こう言った。
木連の民を本気で救うのであれば、そもそも開戦してはならなかった、と。
そして開戦してしまった以上、ヤマサキ博士の手紙どおりに、首謀者を一人にするしかない。
木連の民が、火星での虐殺を目の当たりにして戦争を放棄することを選んだと伝えるしかないと…。

…そしてついにヤマサキ博士は、首謀者として前に出ることを選んだ。
もう、取り返しがつかない。


──地球圏とヤマサキ博士の戦いが、本当の意味で始まる時が来たんだ。
















〇地球・佐世保市・PMCマルス本社・事務室──夏樹
私は全身の打撲の痛みも忘れて、ヨシオさんの姿を茫然と見つめていた。
元気そうな姿とはとても言えない…目にクマがあり、少しやせてしまった、ヨシオさん。
どうやったのかテレビ局と通信をつないで、インタビューに応えているけど…。
黒いマントを羽織ってワインを揺らして、悪役らしさを感じさせるような姿で…。
…冗談としか思えないような、ヨシオさんらしくない言葉で。

『…それでは、ヤマサキさんは手柄をすべて自分のものにしたいからと?』

『もちろんさ。
 今となっては木連にも正義がなかったのが分かったからね。
 まさか地球人と和平を望むなんて、腑抜けた真似をするとは思わなかったよ』

『手柄、なんかのために…!?
 地球人には正義がないとでも言いたいんですか!?』

『そうとも。
 ゲキガンガーに倣う通り、正義の味方、そして信じる正義は一つだけさ。
 …だけどね、僕にはゲキガンガーにさえ正義を守る者としての不備を感じだんだ』

『と、言いますと?』

『悪を倒すと言いながら…どこか彼らは分かり合える要素を持つように感じた。
 それでは正義の味方として不完全ではないかと思った。
 
 何故、敵と分かり合おうなんて馬鹿げた真似をしたのか。
 
 それは三位一体という、ゲキガンガーの本質にある。
 本来、性質の合わない三人がまとまることで、状況に応じて敵を倒せるようになる。
 
 言い換えれば『三つの正義を組み合わせる』という現実に起こりえないことをしなければ、
 ゲキガンガーという物語は成立しないんだ。
 
 …正義は一つだ。
 敵の犯した罪を清算し、滅ぼす存在でなければならない』

ヨシオさんはワインを少し煽ると怪しく微笑んで…。
私はその目に、狂気を感じた気がした。

『…残念ながら、僕が火星に戦力を仕向けた後、
 木連はその正義の行いを残酷だと悲しんだらしい。
 だから火星に閉じ込めてあげたのさ。
 腐っても同胞だ、殺すのは忍びない。

 …あくまで僕が滅ぼすのは、
 月の独立戦争で、女子供が居ようと、容赦なく攻撃してきた連合軍、
 そしてそれを知らぬままのうのうと生き抜いてきた、地球人類だ。
 
 人間の本質なんてそう変わるものじゃない。
 権力を持った人間の考えることも…烏合の衆の考えることも。
 
 僕は正義のための悪を成して、真なる悪を滅ぼす。
 
 そう自覚しているだけ、ずぅっとマシだと思うけどね?』

『…あなたはッ!
 地球全土が、そして火星が、戦争を放棄するといっても、
 そうやって戦争を続けるつもりですか!?
 あなたは、この地球の世論の状態をわかってない!』

『分かっているさ、十分にね。
 チューリップを介して行き来する機動兵器に電波の傍受を頼んで、
 マスコミのこと、ネット上のことも知り尽くしているつもりだよ。
 いやぁ、寝不足になるほど機動兵器の生産にかまけていたからねぇ。
 そこまでするのは大変だったよ。
 
 例えば…ホシノアキトという英雄の伝説も。
 『翼の龍王騎士』を操る、アリサとサラという姉妹のことも。
 彼の映画が、地球全土の思想そのものを転換してしまったこともね。
 
 …だが、やはり綺麗事だよ。
 
 ホシノアキトに戦争の愚かさを教育されようが何をしようが…どうやっても罪はそそげない。
 それにこれも所詮ブームにすぎない。
 もしホシノアキトが誰かに暗殺されればあっさり崩れる戦争放棄ブームさ。
 信念のない、尻軽な君たち地球人類ではそんなもんさ。
 
 …地球人類のしでかしたことは、どうやってもそそげない。

 僕は地球人類を滅ぼし、火星だけ残して…。
 それが終わり次第、役目を終えてすべての兵器を破棄するつもりさ。
 
 恐怖に恐れおののけ、咎人の末裔たちよ…!』

『くっ…!』

ニュースキャスターの人も、感情的になってヨシオさんを睨んでいるけど…。
…こんなことを考えるヨシオさんじゃない!
技とこんな言い方をして自分を悪役に仕立てるなんて…!
演技じみたこの言葉でさえも、戦争の首謀者として印象づいてる今、誰も疑わないもの…。

『そして…。
 そろそろ君たちも戦力的には充実してきたようだし、
 僕たちもこの一年半で蓄えてきた技術集積で、機動兵器をバージョンアップしようと思う。
 
 …デモンストレーションを見せようか!』

ヨシオさんが手をバッと振ると、背景のモニターが切り替わり、チューリップの様子が映った。
そこから次々にバッタが出撃して来て、ゆうに二百を超えるほどの群れを成した。

その直後、バッタの数倍もの大きさを持つ、鳥の姿をした機動兵器が現れた!
僅か十機という数で、翼でバッタたちを引き裂き、銃撃で蹴散らし、さらに大型のミサイルで爆散させた。

…一分足らずで、バッタは完全に居なくなってしまった。

エステバリス操縦者でもかなり熟練していないと十機でこの数を倒しきるのは難しい。
それを、人工知能を積んだ機動兵器があっさりとやってのけた…。

『な…』

『これが、わが木星が誇る新型機動兵器『鳥獣機』だ。
 バッタを喰らう、つまり虫を喰らう鳥をイメージして造った最新鋭機だ。
 専門家の意見など聞かないでも、このすごさがよくわかったろう?
 
 この性能の通り、バッタほどは早く作れないが時間をかけて十二分な量を確保した。
 
 …火星の初戦の惨敗と同じ体験を味わわせてあげよう』

『こんなもので…!』

『ふふふ、どんなに強がっても、今まで通りの戦いとはいかないだろう。
 僕の作った鳥獣機たちは自信作だからね。
 …この軍団を持って、今度こそ『本当』の木連の悲願だった地球人類への復讐を成す。
 もはや僕の下にたどり着くどころか、地球から出ていくことも叶わないだろう!』


『そうは行くか、たった一人の勢力でそんなことができるものか!!

 名もなき貴様の軍は、地球…いや、地球圏すべての、

 平和を望む者たちによって打ち倒されるのだ!!』
 

『…威勢のいいことを、おいぼれさんがいうよねぇ。
 あ、そういえば僕の軍には名前がなかったね。
 せっかく戦線布告しようと思ったのに、これじゃ恰好がつかないや』

『何を言ってる!?』

テレビ局の通信に割り込んできた、連合軍の…たしかグラシス中将。
彼の言葉に、満足そうにヨシオさんは笑った。
そして何か思いつくように、手を打った。

「それじゃ…こんなのはどうだい?

 世界中で空前のヒットを飛ばした映画にちなんで…。



 『機械帝国アイアンリザード』




 ………なんてのはどうだい?」




そして──。

ヨシオさんの言葉に世界が揺れ始め。
鎮火するはずだった戦争が、再び燃え始めた。

私が一番望まない形で…。

























〇作者あとがき
どうもこんばんわ、武説草です。
アキト達の地球側との戦いが続いて、戦争そのものは鎮火するかなーというところで、
ついにヤマサキ(と遺跡ユリカ)の、仕掛けた作戦が始まろうという展開になってきました。
そりゃただじゃおわらんわな、と。

アキト君はこのタイミングで本当に引退できるのかどうかあやしいですが、
物語もそろそろ終盤に差し掛かっているので、
ちょっと前倒し気味にアキトズの二人には恋の決着をここでつけてもらうことにしました。
いや、ここまでが長かった。

普通は最終回にするようなことではありますが、
ナデシコではたどり着けなかったエンディングにたどり着くには、結ばれてエンドではいけない。

ここんところは映像でやると映像の文法的に無理になりやすいんですが、
小説でやると割と大丈夫なので、書きたいように最後までやります。

で、何気に時ナデリメイクからキリュウさんがちょっと参加してますが、
昴氣を持ってる状態のアキト相手だと厳しい、な話になっちゃいました。

敵対連合についての話も、彼らは遅まきに盛り上がってますが、そうはうまくいかんかなぁ。
と、そんな具合にもろもろ進捗しつつ、アキトの三股は本当に丸く収まるのかどうか。
ここがまとまらないと、実は地球の存亡のような感じになるのはまだありそうですが…。

と、そんなところで次回へ~~~~~!















〇代理人様への返信

>ダイヤモンドはハンマーで叩くと簡単に割れます。これ豆知識(ぉ
>「固いけど脆い」の究極系みたいな鉱物なんでw
ガラスと同じで頑丈ではあるけど一定以上の衝撃が与えられたり、
より硬い物、重量があるものに弱い上に熱には弱いんですよね。

ちなみに私はゴルゴ13の巨大なダイヤを狙撃するのを思い出しましたw
結晶方向に逆らってピンポイントで打撃を与えると弱い、と教えるダイヤカット職人の指導の下、
狙撃するあの話はかなり印象的ですね。
サブタイトルは単にジョジョ四部からの引用ですがw






>ちなみにこの弱点がないであろうと言われている&ダイヤより硬いのが
>キン肉マンで一気に有名になった純粋ロンズデーライト。
>もっとも純粋ロンズデーライトは自然にはほぼ存在しないそうですが。
あれ、そんなのあったっけ…と思ってググったら、最近連載されてるほうのキン肉マンでしたか。
私は王位継承編のアニメをリアル視聴してたのでプリズマンの印象がありました(あれは何か特殊なガラスっぽいけど
個人的に超人強度の話をしたとき、ロビンマスクがサラっと、
『私は普段から超人硬度9の鎧をつけてるから、分かるんだ!』
っていったの、ずるいと思いましたw

希少性が高いが故に硬貨なのがダイヤモンド。
ダイヤより硬いもので、希少性がさらに高いとなればさらに高価…?
ググっても値段が出ない!









>それはともかく、まあ大体収まるところに・・・収まったのかなあ?w
アキト達の事情は、どうしてもこうするくらいしか方法がない…というと言い過ぎですが、
いつも逆行時おいていかれがちなユリカが生きて参加してるとなるとこうなっちゃうかなと。
容量的には収まり切ってはいなさそうですが、とりあえず収まった、ということでw

揃いも揃って若気の至りと言うかなんというか、心持と勢いだけで押し切る流れです。
ある意味ナデシコっぽさもあるけど、結局将来の展望とか考えなしではあることには変わりなし。
ユリちゃんがもし、未来ルリちゃんのまんまだったらえらいことになってたかもしれないですねw










>バールも悲惨ちゃ悲惨ですが、まあインガオホーw
自分がすべてを賭けて尽力してきたことが、自己満足ですらなかった時、人は何を想うのだろう。
なことを書いてる途中に考えてました。
因果応報どころか、意味がなかったかもしれないというのは救いがない。
救いがない物語を他人に与えすぎてきたバールにはこれがお似合いの最後でしょう。
とはいえ彼を裁ける証拠が敵によってもたらされたこともあり、各人、かなり複雑な心境のようですね。
バール、連れ去られた後どうなったんかなぁ。

















~次回予告~
ラピスだよ!あ、未来のユリカの方じゃなくて、普通にラピスだよ!

次回はこんな状況の中、とりあえずアキトが戦いから降りてみるってことになったので、
この一年半くらいの間ずぅっと我慢してたことを、アキトとユリと私でやろうってことになったの。
一度芸能界からも、PMCマルスからも、ナデシコからも完全に離れて、
みんなの準備を進めようって話なの。
でもヤマサキの仕掛けた機動兵器、めちゃくちゃ強いみたいで今から不安だけどね。

とにかくやってみなきゃわかんないから、頑張るよ!



スパロボDDでゲッターノワールが出てきて、設定的にまた攻めたところでいったなと感心した作者が贈る、
ちょっとネタが被ったというか、ネタ的にありふれてるだけじゃないの系ナデシコ二次創作、













『機動戦艦ナデシコD』
第七十七話:『drop out-引退する-』

















をみんなで見ようっ!














































感想代理人プロフィール

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代理人の感想
二キロ先って千里眼だなもうw
そして反省会ワロスw

>ラピスも僕にください
クソ野郎www

>『機械帝国アイアンリザード』
(爆笑)
この人もゲキガンガー文化で育った人なんだなあw






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