〇地球・東京都内・ウリバタケ家──ホシノアキト
ヤマサキの宣戦布告から一夜──。
俺たちは、かねてから考えていたPMCマルスの廃業をするかどうか悩んだ。

あの鳥獣機という新型機動兵器の威力を見た以上、
俺たちが戦いから降りるという話を延期する必要があるんじゃないかと思った。
このままでは地球全体が不安に陥ってしまっていても不自然じゃないから。
だが、ラピスの一言でこの相談はまとまった。

「重子の占いを信じるならこのまま引退でいいはずだよ。
 重子もこれだけのことが起こったら占い直してくれてるだろうし…。
 あ、やっぱメール来てる。
 引退しても大丈夫だろうってさ。
 いくら機動兵器が強くても、
 ナデシコ級のやユーチャリスのグラビティブラストで勝てない相手じゃないと思うし、
 アキトがうかつに戦死するような状況を作る方が世間は嫌がるし、
 連合軍もそろそろうんざりしてるから大人しくしてほしいのは変わんないだろうし。
 もうアキトが気を回すようなことってあんましないと思うよ」

「それもそうですね」

「で、でも俺がエステバリス教官を続けた方がいいんじゃない?」

「…それこそ思い上がりもいいところですよ。
 アキトさんもマンツーマン指導は得意ですけど、
 多数の人を教えるのはそんなに上手じゃないでしょう?
 それにアリサさんの作った教習マニュアルが好評で、もう出る幕ないです」

「時が来るまで、大人しく自分の夢を追っかけてていいんだよ、アキト。
 準備は私とみんなが続けておくし。
 ちっとは喜びなよ」

「ぎゃふん…」

俺はぐうの音もでないが、ぎゃふんと言わされてしまった。
…実際、鳥獣機はエステバリスだったら「勝てない相手」ではない。
攻撃力についてはかなりのものだが、基本速力はバッタより2割増し程度で、
翼で切り裂くために最高速を出そうとすると戦闘機と同じ弱点が出る。
あの感じだとエステバリスほどは小回りが利かないので、戦い方によっては問題なく勝てるだろう。
ましてグラビティブラストに耐えられるほどは強くないはずだ。
ヤマサキも何か研究をしてただろうが、使える技術はこの時代に準拠する。
そもそもあいつはB級ジャンパーのための遺伝子研究が専門で、ボソンジャンプもそれに関わる形で研究したらしい。
草壁さんの受け売りだけどな。

そしてPMCマルスそのものは廃業せず、
さつきちゃんたちに日本防衛の手伝いをしてもらうことで、
存在感は出しつつも、俺には戦闘業務を請け負わせないことで決定した。
もっとも日本周辺はもうチューリップはなくなってるから、はぐれトカゲを迎撃する手伝いくらいだけど。

…ついでに芸能界は引退不可能ということで決まってしまった。
理由は言うまでもなく、敵に対する睨み、プロパガンダ系のアイドルの参入に対する防衛策だ。
俺が芸能界に居続ける限り、彼らもそうそう簡単に戦争推進をできなくなるからだってさ…。
そのほかにもラピスはまだまだ作戦があるそうで、今からげっそりしている。

しかし、大変に見えて、これはメリットもかなり多かった。
今までよりはぐっと芸能活動時間を短くしてもらえることになった。
芸能活動をしてると一日十二時間から十五時間の労働という日が多かったが、
芸能活動を一日五時間という制限を設け、さらに週四日に絞ることになった。
これはテレビ局的にはかなり手痛い譲歩だったらしいが、完全に引退されるよりはマシだと。
年数を追うごとに少しずつ減らして、ゼロにはできないかもしれないが何とかしよう。

なぜこんな半端な案を通せたかというと、俺の調理師免許取得がかかっているという言い訳が作れたからだ。
表だってこのあたりの事を話しつつ、妥協案という形で交渉したらしい。
芸能活動が終わったら休憩をはさんで、
調理師免許の取得には週に四日、一日六時間以上の食堂勤務をする必要がある。
ここまでの通算の食堂従事の日数は通算で一年と四か月程度。
コスプレ喫茶、PMCマルス内食堂、ナデシコ食堂と続けてはいたものの…。
…うう、テレビ局の食堂でもう八か月は頑張らないといけないのかよう。
飲食店を始めるにあたっては不要だけど、料理人としての信頼にも関わるし、ほしいんだよなぁ。

…で、このプランで労働日を週四日に絞り、
芸能活動を一日五時間、食堂勤務を六時間。
週の労働時間は合計四十四時間と、週四日だがそこそこな労働時間になる。
その間はユリちゃんとラピスが一日事に代わる代わるマネージャーをしてくれることになって、
当然食堂にも付き合ってくれる…ラピスはまだちょっと不安はあるけど、
ラピスの中のユリカは未来でぎりぎり料理ができるところまでは何とかたどり着けたし、訓練次第だ。

二人はすぐに食堂ができないことには残念がっていたが、
それでも今までに比べれば段違いに長い時間一緒に時間を過ごせるので喜んでくれた。
…戦争がまだ一段落してないことだし、時期尚早ってところだな。
もろもろ勘案して、ひとまずこれで落ち着くことになった。
そのほか、まだ準備と対策をしてるところだけどな。

…で、今日、俺たちは、ウリバタケさんの家を訪れていた。
ウリバタケさんは一時、ナデシコから降りることになっていた。
というかナデシコもオーバーホールは終わったものの、
ルリちゃんが下りるためにオモイカネなしでのシステム評価が必要ってことで、
ネルガルと連合軍系のスタッフによる運用が開始された。
そのため、一時ナデシコクルーは特別有給で一ヶ月ほど休暇をもらえた。
火星から戻ったことと、ラピスの救出と連続した大活躍で、アカツキが大盤振る舞いしてくれた。
…一方、俺たちPMCマルスは有限会社だもんで、そこまでの余裕はないので、
ラピス主導の下、今後の経営計画についても一考しているところらしい。
ああ、俺はまたこうしてラピスに頼っている…情けない…。

で、なんでウリバタケさんのところを訪れたかというと…。

「いよっ、ホシノ。
 ユリさんにラピスちゃんも。
 連絡ありがとな。
 俺に仕事を頼みたいってなぁ、どういう用事だ?」

「どうもっす。
 実は屋台を作って欲しくて」

「屋台だぁ?
 なんでまたそんな酔狂なモンを」

「…ちょっとした武者修行みたいなもんです」

「武者修行ねぇ…。
 ホウメイさんお墨付きのお前がそんなことする必要はねェだろうが…。
 
 いや、俺も男だ!
 つまんねぇ~理屈はなしだ!
 英雄の頼みだ、断れねぇぜ!
 

 俺に任せとけ!」



「ありがとうございます!」

「お願いします。
 …で、内容なんですけど、ウリバタケさんにやりかたはお任せしますけど、
 こんな感じでお願いします」

ユリちゃんが差し出した要望書をじっとみて、
ウリバタケさんはニヤッと笑った。

「いいねぇ~~~!
 まさに俺が考えていたようなもんじゃねぇか。
 …だけどよぉ、本当にこれでいいのかよ?」

「いいんです。
 私たちは顔が売れすぎてますし、出来るだけ身を守れるヤツをお願いします。
 機銃の類まではさすがにまずいですけど、これくらいは必要だと思います。

 ……ただし自爆装置は外してくださいね」


「………。

 お、おうっ!
 
 英雄に自爆なんて似合わねぇからなっ!」


……やっぱりつけようとしてたな、ウリバタケさん。



俺たちは、ユリちゃんとラピスが骨折していることになっているこの二ヶ月間、
かつて俺がテンカワアキトとしてラーメン屋台を引いていたころを再現して生活することにした。
当時と同じに安いアパートを借り、ウリバタケさんに作ってもらって、三人で生活する。
二人が入院していることになってて、俺も付き添って看病していることになってる。
嘘をついてこんなことをするのはちょっと気が引けるものの、
今くらいしかこんなことを出来る機会がない。

…俺だって自分たちの立場を分かってないわけじゃない。
何しろ正面切って俺が堂々と屋台を引いていたら人が殺到して危ないし、落ち着いてできない。
そんな場所で暗殺狙いの連中に襲われたら困る。
来店した人にできるだけ秘密にしてほしいとお願いして、
かつ、できるだけ外部から屋台の内部が見れないようにして、屋台自体に防御力を持たせる必要がある。

だから過去にラーメン屋台の作成をお願いした時、
ウリバタケさんが最初に見せて却下された試作品である、

『ディストーションフィールド搭載型、全天候型自走式耐熱耐寒屋台』

をあえて注文して防衛策にしようと試みたんだ。
…ちょっと不安ではあるけど、逆に言うとそれくらいしかユリちゃんとラピスを守る方法がないんだよな。
屋台をやりながらだと二人を同時に守り切れる自信がない。
しかも今回は通常の屋台ではなく、防衛策が取りやすくするために、
外から見えない形にするため、お客さんも入れる大型のキッチンカーとして作ってもらうつもりだから、
移動も困らないし、逃げるのにも向いてるし、ある程度俺たちの姿を見られないで済む。
屋台らしさはちょっと減るのが残念だけど…対処としては悪くないと思う。

「それじゃ注文は承ったぜ。
 完成まで楽しみにしてな。
 さっさと帰らないと騒ぎになるぞ、ウチの家族だってお前と話したがる…」

「わぁっ!かーちゃん!
 ホシノアキトさんが来てるよ!」

「あらまぁ!
 いらっしゃい!
 お茶でも飲んでいきませんか?!」

「…これだよ、ったく」

「は、ははは…急いでないんで、ごちそうになってきます…」

「あーしゃーねーな。
 …ま、俺は材料の発注いってくら。
 オリエ、あんまし長く引き留めんなよ」

「あんたも仕事なんだからふらふらしてないでさっさと戻ってきな」

「へーへー」

ウリバタケさんは手をひらひらと振ると、電話をかけてすぐに出かけた。
…で、俺たちはオリエさんとウリバタケさんのお子さんに取っ捕まってしまった。
もっともウリバタケさんの働きぶりについて本当のところを聞きたかったそうで、
ちょうどよかったみたいだけど。
嬉しそうにしてるし、良かった。

「あの人、すぐに仕事だっていいながら趣味に金使うもんだから貯蓄がなくて大変で…。
 子だくさんだっていうのに、ナデシコに乗ってる時ぐらいしか安定した収入もなくて…」

「それは大変ですね。
 …アキトさん、ちょっとお子さんと外で遊んできてくれませんか?」

「へ?いいけど」

……俺はラピスともども子供部屋でお子さんの相手をしてしばらく過ごしていたが…。
オリエさんとの話が済んだのか、ほどほどで俺達は帰ることになった。
ナオさんが運転してくれる車に乗って、帰ることになったけど…。

「ユリちゃん、何の話をしてたの?」

「実は…」



・・・・・。
・・・・。
・・・。
・・。
・。



「…ウリバタケさんちの家計が火の車っていうのは聞いてます。
 それで、ウリバタケさんのことですから税金とかの手続きもオリエさんがしてますよね?
 あの調子だと領収書とかもうまく整理できてなさそうですし」

「っ!
 ず、ずばりです…」

「…お互い、夫には苦労させられてるみたいですね。
 うちのアキトさんもそういう細かいこと苦手なんです。
 
 それで今回のことなんですけど…。
 まず仕事の代金振込はウリバタケさんの計算通りの額を、通常通りの通帳に。
 それと、このカードを差し上げます」

「私の名前の入ったカード?ピース銀行の?」

「ちょっと無理をいってルリにお願いして作ってもらいました。
 …ウリバタケさんはたぶん最低限しかお金を取らないと思うんですが、
 それだととてもじゃないですけど生活に困ると思います。
 だからそちらのカードに、通常通りの通帳に振り込む額と同じだけ振り込みます。
 ちょっと手間ですが、窓口で本人確認しないかぎり絶対に降ろせない仕様にしておきました」


「!!!」



「…ウリバタケさんは腕は確かですが、
 ちょっとそこんところのねじが外れてる人なので、
 それでご家族が苦労されては可哀想ですから」

「ユリさんっ…!


 ありがとうっ!ありがとうございますっ!」




・・・・・。
・・・・。
・・・。
・・。
・。



「ってことがありまして」

「…ユリちゃん、どうしてそこまでするの?
 ウリバタケさんちの家族事情に首をつっこんじゃ…」

ユリちゃんはおせっかいでそこまで人の面倒を見るタイプじゃなかったと思うんだけど…。

「いいんです。

 別に全部オリエさんに同情したからってわけじゃないです。
 半分くらいの理由は以前ウリバタケさんの手を借りようとした時に、
 出産と被って渋られたことがあったからです。

 こういう貸しを作っとけば、二つ返事でウリバタケさんの力が借りられます。
 っていうか、夏祭りとかピースランドの時とかもオリエさんを呼んだり、
 夫婦円満とはいかないでもちょっとくらい融通が利くように仕組んだりしてたんです」

「ゆ、ユリちゃんってそういうところの根回し得意なの?」

「別に。
 もう半分はマジで不器用な旦那を持ってる同士の同情ですから」

「うっ…」

「…ユリ、あんたも大概腹黒いよね」

「ほっといてください。
 そうでもしてないと生き残れるか不安です。
 二人はこういうところ気づけないんですし、打てる手は打っておきましょうよ」

「…ああ、なんか恨みを買うわけじゃないけど、人として許されないことをしてる気がする…」

「どこがですか。
 誰も不幸になってないですし、誰も損はしてませんよ」

……いや、俺はたぶん損することになると思うんだ。
何しろ今回の屋台…いやキッチンカーの準備は、俺が費用を持つことになってる。

ってことはだ…。
月二万円(芸能活動時の外食費用は別清算)の小遣いしか出てない俺は、
貯金がない。払える見込みがない。

大型のトラックに、それに見合うディストーションフィールド発生装置とか、特殊な改造、
さらに装甲とかジェットエンジンとかつけそうだし…。
…下手すると一億とかいっちゃうんじゃないかな、改造費。
それにウリバタケさんの技術費、人件費とか消費税とか入って…。
さらに二倍だから二億円以上払うことになる…。
わずか一ヶ月か二ヶ月の間のラーメン屋台の売り上げで賄える額じゃないし…。

……ってなると、また芸能界のギャラで払わないといけなくなる。
うう、すぐ返せるとは思うんだけど、また借金地獄に陥ったような気分になって辛いぞ…。

「アキト、くよくよしないでよぅ。
 せっかくまた一緒にラーメン屋台できるのにぃ」

「そうだけど、そうなんだけど…うう…」

…嬉しいが、嬉しいんだが昔とやり方がかなり違うし、芸能人やらないといけないのが辛い。

こんなことをしなくても、俺が店を持とうとすればそれなりにすぐに実現するだろう。
だけど状況的にできないからこんなことをするわけで、
しかもこんなふうにこっそりやるので余分にお金がかかる。
ある意味じゃ道楽同然と言われても仕方ない状態だから、なんか一部分すごい虚しい。

「……アキト、お前なんで座席真ん中なんだ?」

「…聞かないで、ナオさん」

俺はユリちゃんとラピスにがっちり両脇を固められている。
当然振りほどこうとすれば出来るが、二人ともまだべったりしたい気持ちがあるらしくて…。
…何か察してくれたのかナオさんは苦笑いをして前を向いた。
うう…ナオさんにも事情を話さないとややこしくなりそうだな…。

「そりゃいいが…そういえばルリちゃんを送ってきたが、
 あれでよかったのか?」

「あ、うっす。
 俺たちは一応身動きができてないってことになってますし、
 ルリちゃんもやりたいことがあるんで出かけただけです」

「まあ、そうだろうが…」














『機動戦艦ナデシコD』
第七十七話:『drop out-引退する-その1』



















〇地球・ピースランド・王城・王室──プレミア国王

「──そういうわけで、しばらくお世話になります」

……。
私達はポカンと口を開けてルリの言っている言葉をかみ砕いて理解しようとした。
これは…どう、考えるべきなんだろうか。

ルリはラピス君救出作戦の際の、ステルンクーゲルの購入費の捻出のお礼を改めて言いに来た。
ただ、それとは別のお願いをしに来たのもあった。

私達に借りたステルンクーゲル購入費を返すためにもと、
今後使うこともないステルンクーゲルをオークションに出して売り出した。
あの世界を震撼させる事件に使われたとかですごい高値がついたものの、
輸送費や税金で数万ドルほどは不足してしまったということだった。

ナデシコに乗ってる時の給与のたくわえはあるものの、
こちらは個人的に蓄えたいので出来ればナデシコが運用評価中の今に、
ピースランドで働いて返しておきたいと、ここに来たというのだ。

「だが、ルリ…。
 数万ドルくらいは別に貸しにしといてくれても構わんが…ぐっ!?」

何とかルリの突然のお願いに呆然としていた私は、ルリの気遣いをあまり気にかけてなかったが…。
私は言葉を継ごうとしたところで、王妃のハイヒールが私の靴をぶち抜いてきたので悶絶した。
威厳を落とすまいと、悲鳴をなんとかかみ殺して表情を崩さずにこらえた。

「ルリ、続けなさい」

「はい。
 時期的に今がちょうどいいんです。
 ホシノ兄さんとユリ姉さんとラピスが三人だけで休暇を楽しんで欲しくて。
 あの事件の時、負傷してることにはなってますけど、もう実は治ってます。
 こういう時じゃないと手が空かないってことで、いい機会なので。
 ユリカ姉さんもちょっと別件で忙しくなっちゃうとかで、
 このままだと、私ひとりぼっちなんです。
 
 …それとも、ご迷惑ですか?」

「迷惑なはずありません!
 一ヶ月、私達と暮らしてくれるなんて嬉しいわ!
 ね!あなた!」

「お、お、おお…
 も、もちろんだ、とも…」

「ありがとうございます。
 そいじゃ、遠慮なくお世話になります。
 
 あ、これは私とユリカ姉さん、ホシノ兄さんとラピスとで考えた、
 新しい王城の警備用の計画書です。
 光学迷彩に対しては無防備というのが明らかになっちゃいましたし、
 衛兵さんたちと協議して利用してください」

「す、すまんな…何から何まで…」

「ルリ、働くのは明日からにして、今日くらいはゆっくりなさい。
 マスコミに毎日駆り出されてるのは知ってます。
 弟たちも喜んでくれるでしょう。
 ルリの部屋はいつ帰ってきてもいいように、この間のままにしてありますよ」

「ありがとう、母」

そしてルリは嬉しそうにうなずいて、従者に連れられて部屋を出ていった…。
…私は痛みから解放されて息も絶え絶えにうなだれた。

「お、お前…なんてことするんだ…」


「なんてことするんだ、じゃありません!

 せっかくルリがまたしばらく一緒に暮らしてくれるというのに!

 もし、数万ドルくらいどうってことないって言ったら、

 ルリは『邪魔だったんだ…』って悲しんで、

 もうここに来てくれないかもしれなかったんですよ!?

 ナデシコでの蓄えのことだって、あえてああ言ったのが分からないんですか!?
 
 口実がないとここに来づらい別れ方をしちゃったから、
 
 せっかく口実を自分から作って勇気を出してくれたというのに!!

 あなたは、ルリがあの時のことを気にしてるってなんでわかんないんですか!?」


「うおおおおおお!?

 わ、分かった!!

 私が悪かった!!
 
 み、耳元で叫ばないでくれえぇ!?」


…王妃は私が無神経な応対をしたことをひどく怒っていた。
言われてみれば、ルリはそういうところは少し不器用というか、
甘えるのが下手な方だったというか、あったな。
確かに言われてみれば女の子らしい、ちょっとツンデレなところのある可愛さを感じるな。
王妃はそういう奥ゆかしいルリの精一杯の甘えを察したんだろう。

……まあ男の私は、正直に言ってくれればいいだろうにとは思ってしまうが。


「さて、あなた。
 ルリがせっかく働いてくれるからには、私達も応えましょう?
 また『ダイヤモンドプリンセス』の企画でもやりましょうか」

「……いや、ラピス君が警備計画のついでに、
 その辺の企画の提案書まで紛れ込ませてくれてるな。
 私もメールで元々やり取りしてたが、本格的なのをくれたようだ」

「あら、相変わらず手回しのいい」

…全くだ。
本当にラピス君は抜け目ない。

そして結局、ラピス君の企画書どおり、
『ダイヤモンドプリンセス』関係の企画を多くやることになった。
王妃も「ルリが直々にショーに出てくるとあれば来場者も喜びましょう」と笑っていた。
ルリとは親子ではあるものの、短期契約をしっかり結び、
完全週休二日制で一日六時間の勤務を、一か月間継続することになった。
この日数と労働時間で数万ドルは破格と言わざるを得ないが、
ルリの人気を考えると逆に安すぎるというのも事実だった。

……この一ヶ月の間、ルリがアトラクションに参加するということで、
ピースランドは更なる来場者数の倍増が起こり…平均で去年度と比較で五倍、
最終日に至ってはお別れイベントまで発生して、十倍の来場者数を記録してしまった。

…恐らくホシノアキト君がここに来ない限りは絶対に破られないであろう、最高記録を更新した。
ふ、ふふ…我が娘ながら恐ろしい。


















〇地球・太平洋上プラント・連合軍総会会議場・連合軍上層部会議室──ミスマル提督
……私はかなり疲れていた。
すでにヤマサキの宣戦布告から一週間ほどが経過している。
私たち連合軍将校は連合軍の再編に追われていた。
戦闘機との混合部隊もまだあるもののエステバリスの配備はほぼ完了し、戦力的な問題は解決しつつあった。
一方で日本と西欧はほぼ解放されたものの、それ以外の地域についてはまだ苦戦を強いられている。
ナデシコ級、ユーチャリス、そして『翼の龍王騎士』タイプの偏重がこれをさらに進めていた。
そのため、連合軍艦隊をほかの地域に応援に出す必要があり、
またエステバリスの運用や鳥獣機への対抗策、グラビティブラスト搭載艦への改造などなどが急務だった。
この一週間、寝る時間を惜しんで様々な計画を立てていた。

『えー、このように敵チューリップは小康状態を保っております。
 恐らく、まだ戦力の再編には至っていないようすです。
 しかしながら、やはり手出しすると鳥獣機が出てきて、被害を加えてきます。
 現在のところ、死者は出ておりませんが、攻勢を強めた時にはどうなるか分かりません。
 
 エステバリスでも練度によっては一人一殺でしか倒せないような状況です』
 
戦力分析について発表している将校がいるが…。
敵チューリップにちょっかいを出してみた将校達は、茫然として帰ってきた。
重傷者すら出さずに全員帰ってこれたあたりから推測するに、
恐らくヤマサキという男は…。
あくまで自分がこの戦争の責任を被るつもりでいるだけで、死者を出すつもりはないのだろう。
コックピット狙いをしないプログラムでも組んでいるのか…。
アキト君たちの話の通りであれば、だが。

『そこでナデシコ級で多大な戦果を挙げた、
 ミスマルユリカ元大佐とアオイ元中佐に、
 このデータと映像を踏まえた戦闘についてお話をお聞きしたいとおもいます』
 
「はぁ~いっ!」

「ゆ、ユリカ…あんまり大声だすなって」

「テンカワ君、君はユリカに付き添え」

「う、うっす」

…壇上に呼ばれたユリカとアオイ君だったが、
護衛はユリカが優先なので付き添ってもらって、私はひとり席に残った。
テンカワ君も、あれほど強ければこの場で何が起こっても防げるだろう。


ざわざわ…。



「あれがホシノアキトに匹敵する力を持つテンカワアキト…」

「ホシノアキトのクローンではないのか?」

「いや、さすがにそれは…」

「だがユリカ嬢はナデシコ級あっての活躍だろうに。
 しかもホシノアキトなしでやっていけるほどとは思えんが…」

「どのみち若造と小娘じゃないか、
 我らが話を聞く必要など…」


……相変わらず言いたい放題だな。
今回は特に重要な会議なので、将校だけではなく連合軍上層部の老人たちも出てきている。
彼らは通常、私達の会議の前提と、会議後の調整をするのみで、ここには姿を現すことはないのだが…。

ナデシコ級の威力があってこそというのは事実だが、ユリカの天才的手腕なしには不可能だ。
しかもテンカワ君も、すでにアキト君を超えている。
これからもまだ戦ってくれると言っているし、ユリカとの仲を許した甲斐もあるというものだ。
それに、まさかテンカワ君じゃなくてアキト君の方がクローンだとはさすがに気づけまい。
ひがんでいればいい、状況の見えぬ老人どもめ。


『ご紹介に預かりました、ミスマルユリカですっ!

 
 ぶいっ!』


「「「「「「なっ!?」」」」」」


ふっ、いいぞユリカ。
出鼻をくじかれて唖然としている年寄りどもを手玉に取り始めたな。
半分は素だが、自分のペースに乗せるのが得意なのは私譲りだな。

『ナデシコ級の基本戦術は皆様のご存知の通り、
 グラビティブラストという主砲を最大限に利用し、
 強力な艦載機で敵を集めて一掃する、というところにあります。
 
 この鳥獣機相手にも十分に同じ戦術が取れるとは思いますが、
 エステバリスと互角以上の戦いをする敵機動兵器を相手に、
 どこまで通用するかは未知数と言わざるをえません。
 ナデシコ級も、現在のところ台数が限られているので、
 今のままでは苦戦はするというのが私の見解です』

「そうだろうそうだろう」

「若輩者には倒しきれまい、ナデシコ級を譲り給え」


『そんなわけなので、ネルガル製の新兵器であるDFSの一般生産をお願いしちゃいました!
 相談に行ったところ、ネルガルからも幾つか提案がありました。
 
 『翼の龍王騎士』の戦闘データから派生させた、
 DFSを利用できるネオ・エステバリス。
 タンデムアサルトピットを採用していて、DFSオペレータが乗ることで、
 二人三脚での戦闘が可能になるそうです。
 やや大型化しましたが、機動性は大差はないそうです。
 エース機として、生産数は絞りますが生産するのは決定しそうです。
 
 それとナデシコ級、ユーチャリス級の量産が、
 月を取り戻したことで可能になったので、
 ぜひ検討していただきたいと、いうことでした!』


「な…」


「「「「「なにぃぃぃぃいいい!?」」」」」



…ふ、老人どもは資料をちゃんと読まなんだな。
ほとんどの将校は黙って話を聞いていたがな。
このあたりについては配布資料にもちゃんと書いてあるだろうに。
ユリカの独断ではなく、私も話は通したし、連合軍上層部にも通達はしてある。

『…えー静粛にお願いします。
 ミスマルユリカ元大佐、ネルガルの宣伝はほどほどにお願いします』

『あ、すみません。
 けど、現状の打開策としてはこれ以上のものはないと思います。
 まずは敵の戦力を数上で上回ることが、兵法としては外せないところです。
 かといって建造にかなりの時間を要するのに、黙って見ていることもできません。
 
 幸い、敵も数が限られているようでチューリップを活発に動かす気配はありませんから、
 一つのチューリップを破壊するために、通常の六倍程度の戦力を注ぎ込み、
 こちらの被害を最小限にとどめ、グラビティブラストの一撃で破壊するのが良いと思います。
 
 時間はかかりますが確実ですし、消極的な敵の戦闘態度を利用して、
 こちらも戦力の確保に努めるという方針が好ましいと考えます』


「「「「「ろ、六倍!?」」」」」」



ユリカの発言に、再び老人たちは驚いていた。
だが、これ以上に確実な方法もあるまい。

敵を倒すにあたって、単なる力押しというのは唾棄されるべき愚策だが…。
反面、過剰ともいえる戦力は相手の取れる選択肢を狭め、奇策による敵の自滅も起こりやすくなる。
しかも降伏を引き出しやすいという利点も大きい。
そしてフレンドリーファイアの危険さえ回避できる陣形を取れれば、こちらの戦力の損耗も抑えやすい。

……そして敵は、チューリップという門からしか出てこれないのだ。

こちらが戦力的に劣っている時であればいつでてくるか怯える存在だが、
互角以上の力を手に入れた場合は、その一方向からしか出てこれないという欠点をついてやれば、
あっさりと勝利することすらできるだろう。

…その後もユリカの独壇場が続いた。
元々、ユリカはかつての士官学校時代からの評判があり、実戦でも遺憾なく実力を発揮し続けた。
平坦な時代の戦争しかしてこなかった老人たちと桁が違うのだ。
どれだけ喚いても、ユリカの方を将校たちは評価してしまうだろう。
…とはいえヤマサキ博士の都合を理解しているというズルはしているがな。

そしてユリカが、テンカワ君もとアオイ君と共に、会場から出ていった。
かろうじて応急修理が済んだブローディアで、三人乗りで帰るそうだ。
一度ネルガルに寄るとも言っていたな。
本来はナデシコ整備班の管轄だが、一度ネルガルに持ち帰ってあの激戦のデータを回収したいらしい。

そしてその後、ネルガルのアカツキ会長を呼び、
再びユリカの言っていた量産プランについて話し合った。
ネオ・エステバリスプロジェクト、コードネームはアルストロメリア。
こちらは現行のエステバリスのタイプ違いとして作り、
さらに左手に実体の爪を持たせて、イメージの難しい剣ではないのでDFSをより使いやすくなるという。
こちらは再来月には生産が開始できるとかで、隊長機としての利用も期待できる。
量産型エステバリスのバージョンアップも近いそうだし、期待できそうだな。

そしてナデシコA’という、ナデシコの廉価版を考えたそうだ。
ダッシュがついてるのでなにかバージョンアップに見えるが、
オモイカネシステムとミサイル装備をオミットし、
代わりに量産型エステバリスの空戦フレームタイプを砲戦エステバリスに近い新型タイプのものを積んで、
艦載機として、動くミサイル庫として運用することでフォローするつもりだという。
確かに艦隊規模で動く場合はあくまでグラビティブラストが重要で、周りが支援すれば済むことも多い。
そしてディストーションフィールドという最強の盾がある以上、旗艦としての利用もしやすい。
…思い切った方法をとったな、アカツキ会長。

さらにユーチャリスⅡという巡洋艦を作るという。
こちらは廉価版ではなく、バージョンアップだ。
元々アキト君が使う予定で作られていたため、民間向けにかなりレクリエーション用の施設が多く、
その部分をある程度オミットして、軍用向けのチューニングを施したものだ。
陶磁器のような白い塗装も、部分的にやや薄く鮮やかなライムグリーンが混じるものに変更してある。
ちなみに、ナデシコA’より数を多く作る予定らしい。
理由としては戦艦クラスより足が速く、サイズや構成から比較的安価で作れる、
人員が少なくて済むなどの長所があり、
しかも相転移エンジンの数が同じでグラビティブラストの威力が変わらない。
などのメリットが多いことに加え…。

……そして『英雄・ホシノアキトの船』として有名なため、
連合軍にパイロット志望で入った女性兵士からの圧倒的な要望が、ネルガルに届いたためだったらしい。

上記メリットの通り、生産する意義も大きく、世間芋なじみのある船であることで、
ネルガルも連合軍も大幅なイメージアップを図れるということもあって、
アカツキ会長が頼みに行ったらアキト君が折れてくれたらしい。

……アキト君、すまん。


それと、明日香インダストリーとの共同開発の報告も上がった。
相転移エンジン搭載艦、『戦艦カグヤ』がロールアウト近いという。
これも映画から名前をとったそうだが、性能はナデシコとほぼ同等、
ディストーションフィールドに対抗するための火器として機銃やレールガンを増やしてあるという、
堅実なバージョンアップを感じさせる、明日香らしい艦に仕上がったそうだ。
こちらは三隻も作ってくれたようだが、うち一隻はオニキリマルカグヤがナデシコのような私的運用をするとか。
やれやれだな。


その後、DFSを扱える人間を増やすということで、連合軍内、
そして世間一般でも若者がIFS(アキト君と同じ試作タトゥー柄)を導入することが増えているので、
DFSオペレータを一般公募するなどのプランが話された。
このプランはクリムゾン派の噂がある将校からの提案だったので警戒したが、
これ自体は却下しがたい内容なので、抗議はせずにそのまま通した。
どうもエステバリス関係のディストーションフィールド特許に関する独占禁止法違反についての話も出ているし…。
追い落とすつもりの連中が連合軍内外にやはりいるということだろうが、
どのみち、これは避けられまいよ。

とにかく義息子の…いや、愛娘と義息子たちのためにも、だな。
みんなの平穏な人生のためにも、私も頑張らねばな。
















〇地球・東京都・代々木公園周辺・特製キッチンカー内部──ユリ
私達がラーメン屋台…というかラーメントラックで営業するようになって、早二週間が経過しました。
かなり大型のトラックなので、駐車するスペースがあるところだけでの出店になりますけど、
この点についてもかなり綿密に調べて、警察署にお願いしたりとか大変でした。
騒ぎになるのを嫌って、警察の人たちもかなり協力してくれたので何とかなりました。
これも情報が漏れるのが怖かったんですが、口留め料として出前やら、
警察のイベントに出る約束を取り付けたりだとか、二次的な仕事が増えてしまったものの、
私達はあの頃を再現…とは言い難い、だいぶ近い生活を出来るようになりました。


「アキト様ぁ!ごちそうさまですぅっ!
 ラーメン美味しかったです!
 私、今日のこと一生忘れません!
 写真、絶対送って下さいね!」



「あ、あはは…あ、ありがとね…」

アキトさんは来店してくれた女子高生に握手を求められ、営業苦笑いで見送ります。
私達はこの状況を外部にばらさないように厳重なる口留めを一人一人にお願いしてます。

そして口留めの対価として、アキトさんとツーショット写真を撮れるという特典を付けました。
これはラピスの案で、老人だろうとサラリーマンだろうと主婦だろうと学生だろうと、
『ホシノアキトのシークレットラーメン屋台で食事した』という証拠は欲しいものです。
そのツーショット写真を、現物として送付する条件で、
送付されるまでは一切口留め、言いふらしてはいけないという約束をするというものです。
今までのところ、誰一人としてこの条件を断っていません。

しかもこの案のすごいところは、全員の氏名と住所を確保できるのである程度相手の身分を割ることが可能なことです。
もし不審な点のある人間が現れたらその時点でこのラーメン屋台は終了、という線引きがしやすいという点です。
スジモノの人たちがショバ代を取り立てに来たこともありましたが、
アキトさんの顔を見るとうろたえながらすっこんでしまいました。
…アキトさんに手を出すということは、テレビ局などのマスコミ、アキトさんファン、和平賛成派と反戦派、
ついでに連合軍とピースランドまで敵に回すことにほかなりません。
そこまでのリスクを負ってまでつっかかってくる相手はそうそういません。
暴力団とかかわりのあるテレビ局の人たちも結構いますけど、
眼上さんが取ってきてくれる仕事がその辺の人をはじいてくれていたため、
そう言う人達はアキトさんに取り入れません。
ホント、眼上さんにはお礼をいくら言っても足りませんね。

「…私達、こんなことしてていいのかなぁ」

お客さんが居なくなって、そろそろ店仕舞いの頃合いになった時、
ぽつりとラピス…がつぶやきました。
強気じゃない言葉からユリカさんの発言だとすぐにわかりましたけど…。

「ラピス、いいんだって。
 俺たちが戦地をうろうろしてた方がかえって迷惑だ。
 先々の準備のことだって、俺たちが動いてない方が都合がいいのは分かってるだろ。
 それにユ…ラピスだって、こうしたかったんだろ?」

「それは…そうだけど…」

「…ラピスが幸せだと思えるならそれでいいんだ。
 十二歳の子供が戦いに加担するなんて間違ってるさ。
 俺たちが十分戦ったから、みんながこの貴重な時間をくれたんだ。
 今くらい、本当にやりたかったことを叶えていいんだ。
 それでいいじゃんか」

「うん…」

ラピスは申し訳なさそうに、でも嬉しそうにもじもじして頷きました。
幸せで幸せで仕方ないんですね…私もです…。

ちなみに、他に誰もいないのにラピスと呼んでいるのは…。
私達しかいない時はユリカさん呼びでもいいかと思ったんですが、
お父さんに言った通り、ユリカさんが二人いるとややこしかったり間違えたりすること、
あくまでユリカさんは『ラピスとして生きる』ことでアキトさんと結ばれるという決心をしたからです。
どっちが本体とか、見た目がどうとかいう禅問答はひとまずおいて、この世界での役割を徹底しよう、と。
因果律や因子のことを考えると、そっちのほうが生存確率も上がる可能性があると。
…その中にはアキトさんとの関係を、必要以上に進展させないものも含んでいるようにも思いますけど。

でも、ラピスの考えたことは決して大げさなことじゃないんです。

「…ま、気になる気持ちもわかるよね。
 まさか、あの『翼の龍王騎士』がねぇ…。
 でも、あの様子じゃ逆にアキトも出る幕ないんだから、
 気にするだけ無駄だよね」

ラピスはふぅとため息を吐くと、コロッと態度を変えて見せました。
いつも通りの辛辣さを含む言葉の先にある、先を見据えた言葉が出てきました。

──そう。
『翼の龍王騎士』はすでに無敵じゃなくなったんです。















〇地球・西欧地方・市街地──シュン
…俺は呆然とアリサとサラの『翼の龍王騎士』の戦いを見つめることしかできなかった。
突如、現れたその冗談のような敵に、部隊の人間すべてが唖然としてしまった。

今目の前で起こっている光景は『ダイヤモンドプリンセス』という映画の、完全なる再現だった。

『翼の龍王騎士』と『ヤマタノコクリュウオウ』の戦い。
三部作の三作目、最後の戦いに酷似している激戦。

作中とは違って、一進一退ではなくほぼほぼ互角の戦いをしている。
やや『翼の龍王騎士』の方が押しているが、『ヤマタノコクリュウオウ』に似た敵機は、
ディストーションフィールドをキャンセルする武装を持っていた。
そのために性能的にはほぼ互角なものの、
火力ではDFSのために勝っているはずの『翼の龍王騎士』が押し切れない。
しかも装甲も強固で、格闘に持ち込んでも撃墜できる様子がない。
まるで意思を持っているようにふるまう、『ヤマタノコクリュウオウ』。
この相手に、アリサとサラも、疲労の色は濃かった。

攻守ともにDFSは重要な役割を持っているが、敵よりは装甲が脆い。
触れればディストーションフィールドを完全にする剣の攻撃が、
二人にかなり過大なプレッシャーを与えていた。

『くっ…!
 厄介な敵…』

『…実体弾の方が効果がありそうね。
 空戦エステバリスのライフルを借りて来ましょう』

『アリサさん、サラさん、援護します!
 一度、下がってライフルを…』


どぎゅぁあぁっ!


『きゃぁっ!?』


『『ぐ、グラビティブラスト!?』』



「し、しかもかなり黒い帯…こいつはかなり高収束のグラビティブラストだ!
 あのサイズでこれほどの威力を!?」

イツキがアリサたちを援護して、後退しようとした途端、
『ヤマタノコクリュウオウ』はかなり短いチャージ時間で、
高収束のグラビティブラストをぶつけて交代を阻止した。

まるで、邪魔はさせないと言わんばかりの態度で。

『イツキさん、私達がやるわ!
 この機体は私達が狙いみたいだから!』

『鳥獣機の相手をお願いします!』

『は、はいっ!』

アリサたちは、『翼の龍王騎士』の実体剣を持ち出して構えて見せた。
これはDFSを使う時にベースにするための張りぼて同然の、切れ味の鈍い鉄の塊にすぎない。
これでやり合うつもりなのか!?

『『たああああっ!』』


ばしゅしゅしゅしゅしゅっ!




直後、『翼の龍王騎士』は、いつも通りDFSの羽根を羽ばたかせて、
さらに羽根のようにかたどられたディストーションフィールドの塊をそのまま飛ばして、
『ヤマタノコクリュウオウ』にぶつけ始めた!
そ、そんなことができるのか!?

しかし、やはり飛翔していく最中に少しずつ形が崩れ、
『ヤマタノコクリュウオウ』にぶつかる時にはほとんど威力が無くなった。
しかも、その羽根はディストーションフィールドキャンセラーを搭載してると思われる剣で打ち払われて…。
いや!これは!


「「隙ありっ!」」


どぎゃっ!ざんっ!



翼をぶつけ、身動きが取れなくなった『ヤマタノコクリュウオウ』に近づき、
剣同士で打ち合って、剣をかちあげて無防備になった胴に、
機体を回転させてDFSの翼を使って切りかかった!?

『ヤマタノコクリュウオウ』は真っ二つになり、大爆発を起こした。

やった…!

『ぜぇ…ぜぇ…か、間一髪…』

『う…』

『ね、姉さん!?』

いかん、サラが集中しすぎて失神したか…!

『アリサ、一度艦に戻れ。
 そのままでは『翼の龍王騎士』の本領は発揮できないだろう。
 そうだな…イツキと組んで再出撃できるか?』

『…了解!
 私はまだやれます!』

『はっ!了解しました!』

アリサもサラほどじゃないがDFSを発生できる。
通常のDFSの刃を発生するなら問題ないだろう。
戦力減は否めないが、今『翼の龍王騎士』を欠いて戦うのは厳しい。
士気がだいぶ下がってしまうしな…とはいえアリサもかなり消耗している。
『翼の龍王騎士』もかなりのダメージで、大幅な修理が必要だ。
適当なところで下げなければ、つぶれてしまうだろう。

…その後、かろうじて敵を撃退して、チューリップの破壊には成功した。
チューリップが積極的な攻撃をしてこないので威力偵察として、
現在最強の戦力である『翼の龍王騎士』を有する通称『Moon Angels』と呼ばれる我がシャクヤク隊が呼ばれた。
上層部も、世間も、俺達の圧勝を期待した。
俺たちも、苦戦はしないと踏んでいた。

だが、結果はどうだ。
世界最強とうたわれた『翼の龍王騎士』をここまで痛めつけ、
搭乗者の二人も危ないところまで追い込まれている。
他の鳥獣機との戦いも、死者こそでなかったが鳥獣機と相討ちになって撃墜される者が多かった。
アリサ中尉を筆頭に、西欧、いや連合軍全体で見ても一、二位を争うこの部隊でも、
ここまで追い込まれてしまうとは…。
…連合軍も戦い方を考えなければならないだろうな。

──だが、俺たちのこの見通しはかなり甘かった。

その後、『翼の龍王騎士』がチューリップに攻撃しようとするたびに、
『ヤマタノコクリュウオウ』は出現し続けた。
まるで『翼の龍王騎士』を倒せないまでも、足止めして、俺たちを圧勝させないような形で。
三度の出現を持って、連合軍も、『翼の龍王騎士』がいる場所だけを狙って奴が現れると結論付けた。

そしてこの『ヤマタノコクリュウオウ』を量産されたら…。
いや、二機同時に出てくるだけでも『翼の龍王騎士』を撃墜できるのに、
何故敵はそうしないのかと、疑問を持ちながらも…。

ひとまず、『翼の龍王騎士』の出撃を凍結し、
ナデシコのミスマルユリカ艦長の提案通り、
通常の六倍の戦力での攻撃という安全策をとることに決まり、様子見を続けることになった。
アリサとサラはむくれていたが、
修理の終わった『翼の龍王騎士』を持ち出して、緊急スクランブルに対応出来る形を保ちつつ、
ひとまず休暇ということで、決着がついた。

……とはいえ、何ヶ月もそうしているわけにはいかないだろうがな。











〇地球・東京都・古びたアパート──アキト
俺とユリちゃんは、二人きりの時間を過ごしていた。
そう、二人きりだ。
一日、それなりに身を隠しながらデートを楽しんで、今もゆっくり…。
…もう三週間かぁ、屋台を始めてから。
その間、俺たちは穏やかな時間を過ごしていたけど…。
俺とユリちゃんがそわそわしているのを見て、ラピスはむっとしながら俺たちに言った。

「今のアキトとユリちゃんは夫婦なのに、私に遠慮してデートも何もしないのはダメでしょ?
 毎日毎日ラーメン作って、みんなで居られるのが幸せなのは分かるけど、
 そんなのダメダメだよ。
 明日はおやすみにしよ?
 私はアカツキさんちに遊びに行くから、二人きりでしっかり過ごしてよぅ。
 …私、二人の邪魔になるの、我慢できないもん。
 ちゃんとアキトの仲は継続するって、そういう約束だったでしょ?

 …。
 
 そーだよ、アキト。
 ここまで休みなしで頑張ってきちゃったんだし。
 私もエリナとアカツキに色々話したいことがあるし、
 ユリカもエリナにお礼言わないとって思ってたんだよ。
 …大事なことを我慢でなんとかしようとするの、やめないと将来的に辛いよ?」

……俺たちは、一日でも、一瞬でも多くラピスと一緒に居ようとして、
無理な我慢を続けていたのがバレバレだったのを反省した。

ユリちゃんと俺は夫婦生活が長いが…時間も疲労も余裕がない状態が結構あって、
デートの回数も、いわゆる『夜の生活』も時間も限られていた。
余裕がない時は我慢するまでもなく、ぶっ倒れてることも多かったんだけど…。
こうしてそこそこ余裕が出てくると、別な欲求が色々出てくる。
…ラピスとわずかでも離れることに怯えている気持ちで抑え込んでいた欲求が。
この生活は今までにないくらい幸せな反面、俺たちに別の強烈な我慢を強いていた。
それを見抜かれて、ラピスに気を遣わせてしまった…なんかこの関係は変わってないな、ホントに…。
それで、今は…。

「ゆ、ユリちゃん?大丈夫?」

「…か、加減して下さいって…」

……俺は相変わらず抑えが効かずに、息も絶え絶えのユリちゃんを介抱していた。
そしてようやく落ち着いてきたところで、二人きりになれたので先々の話をし始めた。
ラピスの考えた作戦のこともあるが、そこそこ落ち着いてやっていけるようになるから。
…夢の始まりが近くなっていく。
昔、がむしゃらに追いかけて必死になっていた頃は感じなかった、幸せをかみしめていた。
あの時、許されなかった夢が、少しずつ現実になろうとしている。
今すぐには無理でも、頑張れば何とかなるところまで…。

「アキトさん、子供何人欲しいですか?」

「……ちょ、直球だね…」

「早く決めないと、体力的に余裕がなくなってからじゃ大変ですよ。
 ま、将来的にアキトさんの立場がどうなるか分かりませんし、
 今はアキトさんとの時間をめいっぱい楽しむつもりですけどね」

「…うん、もうちょっと時間をくれる?
 立場のこともだけど、食堂をなんとか始めて軌道に乗ってからじゃないと」

「そうですね。
 ウリバタケさんちみたいになるとちょっと困っちゃいますし」

俺は計画性があんまりないからな…こういう話になるとちょっと先延ばしになってしまう。
…ウリバタケさんはもっと計画性なかったと思うけど。
作ってから何とかする性格が家族計画に出ちゃってるっていうか…。

……いや俺も、ラピスとの関係みたいに、急になんか出来事で決定しちゃう気がするんだけどな。

「…でも、ラピスもちょっと心配です。
 うなされてる姿は見ないんですけど、夜中に起きてるみたいですし、悪夢はまだ…」

「…ユリちゃんも気づいてた?
 眠ってる間は意識がつながるから、その時は助けに行くんだけど…。
 眠りの周期がずれると助けに行けないみたいで、
 夜中に起きられるとうまくいかないんだ…」

「…そうですか」

「…それに俺が助けに入るって言っても、
 ラピスが悪夢を見て、ひどいことが『起こった後』なんだ。
 『起こる前に』何とかできない限り、ラピスは毎日傷つくことになる…」

ユリちゃんは小さく唇を噛んでうなだれた。
ラピスの悪夢の件は、まだ終わっていない。
元気そうに振舞っていても、日常生活の中でさえもちょっとした時にらしくないミスをする。
それが睡眠不足と心の不調によるものだと、俺たちは気づいていた。
これだけ近い場所に居て、スキンシップを重ねて、夢を語り、幸せな生活をしていても、払えないんだ。
…あの未来の出来事は。
それが分かっていたから…未来では俺がルリちゃんの元から去ろうとしたんだ。
ラピスに、とんでもない我慢を強いているのは分かっていた。
でもそれに抗う方法を、どこかで見つけないといけない。

でも、どうすれば…?

「一応、イネスさん…じゃなくてアイちゃんに、健康診断をお願いしといた。
 …でもこのままじゃいけないね。
 もしかしたら、またなにかのはずみで…」

「……アキトさん、止めましょう。
 私達専門家じゃないですし。
 取れる手段はすべて取りますけど、ここで悩んでてもしょうがないです」

「うん、アイちゃんに任せよう」

アイちゃんに連絡した時、何かいいアイディアがありそうなことを言ってたけど…。
俺たちも協力してほしいとは言われたけど、どうするんだろう?

















〇地球・東京都・ネルガル附属病院──アイ
私はラピスの健康診断を行って…。
…寝不足から起因する、かなりの不調が見当たったのにため息を吐いた。
もっとも、それ以外はまだ健康の範疇ではあるけど…どこでばたっと不調が連鎖するか分からないもの。

「…ユリカさん、まだ辛い夢を見てるのね」

「ぐず…。
 夢の中でアキトに助けてもらえるけど、やっぱり悪夢自体は見ちゃうんです…。
 でも、これ以上贅沢言えないもん…」

「…ラピス、あなたは大丈夫なの?」

「…あんまし大丈夫じゃない。
 もう私も他人事に感じない悪夢になっちゃったから…」

ラピスも無理をしてユリカさんの悪夢を引き受けたことが災いして、かなり苦しそうな表情をしてる。
これは、重症ね…。
鬱症状の治療薬で多少は和らぐけど、
例の『遺跡ユリカ』が刻み込んだ記憶は強力みたいで、完全に消えることはない。
これは精神的に強烈なショックを受けたことのある人、トラウマを刻まれた人しか分からない。
幾度とないフラッシュバックを日常のちょっとした瞬間に引き起こすようになる。
その苦痛の大きさたるや、自殺という選択肢が常に見えてしまうほどだったりするもの。
しかも、それはいまだ、この科学の進んだ世界においても解決できていないこと…。
…このあたりの技術って、逆に言うと洗脳すら可能になるものだから進めがたいのよね。
でも、対策がないわけじゃない。
やるしかない、あの手を!

「…一応、対策はあるにはあるの。
 もう作り始めてるし、成果も出てるのがあるの」

「ホントですか!?」

「もうちょっと時間をくれるかしら。
 未来で、アキト君が無事に戻ってこれたら使うつもりの手段だったんだけど…。
 この方法だったら、もしかしたら…」

「イネス、具体的にどれくらいかかりそうなの…?
 結構きついんだよ、私達…」

「システムは既存のものを応用するからそんなに時間がかからないけど、
 コアになる部分は一ヶ月くらい調整が必要だし、
 協力者が必要だから全員のスケジュールが合った時になるわ。
 最短で一ヶ月半くらいかしらね。

 …それまではめいっぱい甘やかしてもらいなさい、ちょっとはマシになるでしょ?」

「…それもそっか。
 アキトとユリが遠慮なく関係を持つ代わりに、
 私とユリカももっといっぱい甘えよっかな」

「そうしなさい」

「…ちょっとは気持ちが軽くなりました。
 ありがと、イネスさん」

「どうも。
 …それじゃ、ちょっとは子供らしく遊びに行きましょう?」

「は、はい」

「硬いわよ、ユリカさん。
 らしくないわ」

「うう…。
 ラピスちゃんの体だけど、子供時代からやり直しってつらいよぅ…」

「贅沢言わないんでしょ?
 …ほら、さっさと準備準備!」


「…説明おばさんがすっかり子供っぽくなっちゃった」



「何か言った!?」


「な、なんでもないでーーーーすっ!」


……全く、中身年増なのは同じな癖に。
ま、ちょっと冗談言えるくらいならまだマシよね。

…さて、今日が終わったらまた徹夜仕事になっちゃいそうねぇ。
一時間で八時間分の睡眠効果が得られるようなベットでも作ろうかしらね?



























〇作者あとがき
どうもこんばんわ、武説草です。
今回はズル休みしてラーメン屋台をするアキト君、ナデD版b3y編ですね。
無理くり引退するアキト君、そして刻々と表情を変えていく歴史、
前倒しで登場するアルストロメリア、漫画版のようにナデシコ艦隊が完成しそうになり、
さらに翼の龍王騎士でさえも抑えられてしまう現象などが多段的に起こりました。
ラピスの件については引きずりすぎるのもなんですが、
正当な方法で行くとまだ助かるわけがない。(アキトが黒い狂気を引きずり続けるのが多いように)
ので、ちょっとだけ延長します。

明らかに引退してる場合でもないけど、アリサ&サラも引退に追い込まれそうな状況?
になっててどうなるんだか、な状況です。
さあ、続きを書こう。

といったところで次回へ~~~~~~~~~!















〇代理人様への返信

>二キロ先って千里眼だなもうw
もはや察知能力については類を見ない状態でしたw
ホシノアキト君は必殺技がない分だけ時ナデ版アキト君より弱いですが、
サバイバビリティ能力に関しては群を抜いてます。
ちょっと盛りすぎたかもしれませんがw





>そして反省会ワロスw
もはやお笑い担当になりつつある敵対同盟。
とはいえ、まだまだ油断してるとどうなるか分からん状態なので、油断はできない。
再び、最後の一手を打ってくるか!?
…打てるんかなぁ。



>>ラピスも僕にください
>クソ野郎www
本人は誠実なつもりだけど、もうこれだけでクソ野郎確定の一言w
どーしても言わせたかったw
マスコミに聞かれたら単なるスキャンダルじゃすまないレベルのことをいいやがりましたね。
状況が状況だけにミスマルおじさんも許すしかないとはいえ、
言い方は考えて慎重になれと言わざるを得ない。
その辺に関して今一つ判断が正確じゃないアキトのせいで、ユリもラピスも苦労し通しですね。







>>『機械帝国アイアンリザード』
>(爆笑)
>この人もゲキガンガー文化で育った人なんだなあw
本作の劇中劇、『ダイヤモンドプリンセス三部作』から敵名の引用になりますが、
こういうの大好きなのがやはりゲキガンガー文化で育った人のサガ。
悪役になるということを完遂しようとしたら、当然こんな感じのスタイルになります。

ユリカをうまく操るためにうるるんを持ち出したり、ナデシコに負けず劣らずのユーモラスさといい、
こういうことをやらせたらヤマサキは楽しんでるんだろうなぁと。
と思って堂々と冗談じみたことをさせてみました。

ああ、いまだかつてこんな堂々と一大勢力の長になるヤマサキがいただろうか。

いや、ない!(断言










~次回予告~
ラピスです!
あ、(ユリカ)を付け忘れてますけど!
ってそんなことはいいんですけど!

ええっと、そろそろ私も心身のリハビリが必要だということで、
本格的に治療をしなきゃいけないってことになりました。
地球の戦況は決していいとは言えないけど大丈夫なのかなぁ?
でも、ヤマサキさんの考えてる事、なんとなく私とこの世界の私は気づいてるの。
その理由までは分かんないんだけどね。
それにしてもユリちゃん、いいなぁ…うう~~~~!嫉妬しちゃうよぅ!



ウリバタケさんによく似た友達を持っているからやたらリアルさを感じている作者が贈る、
無理に正しいをぶつけても治らないが無理に無理をぶつけりゃなんとかなるだろう系ナデシコ二次創作、
















『機動戦艦ナデシコD』
第七十八話:『drop out-引退する-その2』












をみんなで見て下さい!
























































感想代理人プロフィール

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代理人の感想
一難去ってまた一難ぶっちゃけありえない~
ユリカのアレについては戦力揃えられれば苦労はねえってもんなんですが、まあできるんだろうな・・・w
というかディストーションフィールド付き屋台って客はどうすんだ客はw



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