〇地球・佐世保市・町食堂『星天』住居スペース──ユリカ

「はい、そう、ですか…。
 …無理もないですね。
 この状況では私達が無理に動くのも危ないですし…。
 冷たいと思われても仕方ありませんが、ここは我慢しましょうか。
 
 …アキトさんもやっぱり戻ってこれそうにないですか?
 です、よね…。
 分かってます…みんなを守ってあげて下さい。
 私はテンカワさんもナオさんも、北辰さんもいますから…。
 
 …こういう時くらいはそばに居たいです、けど…。

 はい、私は大丈夫です…」

ユリちゃんはアキト君との電話を終えると、小さくため息を吐いてうなだれた。
私達にも、アキト君たちの事…さつきちゃんとレオナちゃんの死亡の報告は届いていた。
ずっと気持ちが落ち込んでたけど、
ユリちゃんとアキト君が気落ちしているのを励ましたかった…。

でも木星に向かった夏樹さんの死亡をアキト君から聞いたって言われて、
さらに私達は沈み込んじゃった。
私達はさつきさちゃんとレオナちゃんのお葬式にも出れない、
夏樹さんの件だって直接草壁さんに会って謝ることもできない。
命を落とした人達を悼み、弔う権利さえないくらいに私達はピンチだもん…。
うっかりどこかに出かけたらどうなっちゃうか…。

「今までこんなことなかったのに…」

「今回は、さつきさんとレオナさんの件は巻き込まれた形だったとはいえ、
 北斗さんが離れざるを得ない状態を造られてしまうなんて…。
 …いえ、今までが異常だったのかもしれません。
 五年前に戦争を押し進めていた勢力はかなり力を失ったはずですが、
 戦争が終わるこの時期を狙って最後の戦いを仕掛けてきたんでしょう。
 
 それとも…因果律のせいかもしれないです。
 ここまで起こらなかった悲劇が、まとめてこれから起こってしまうかも…。
 まるで遅れを取り戻すかのように…。
 …例の因果律の件、分からないこと多いですから。
 
 そうだとしたら、さつきさんもレオナさんも、夏樹さんも…私達が殺したも同然です。
 死ぬはずがなかった、死ぬ必要がなかった人が死んでしまった。
 …そうなるかもしれないと思っていたのに、近くに居続けて…」

「…ユリさん、それは言い過ぎだよ。
 夏樹さんは未来ではその…相転移砲に巻き込まれて死んでたそうだし、そのせいかもしれない。
 さつきちゃんたちの事はわかんないけどさ…。
 
 …でもそうなったってことは、
 これから俺たちが因果律に引かれて同じように…」

部屋の空気が、また重くなった。
ラピスちゃんが何かしら警護策を打っていたはずなのに、夏樹さんが殺されて、
偶発的に起こった別の暗殺でさつきちゃんたちも…。

…でもそれが未来に起こったことと同じで、因果律の支配がまだ続いているとしたら。
アキトは人体実験に使われて、私はひどいことされて、最後は…。

「…ユリカ。
 俺は…世界一の王子様とはいかないけど…。
 でも、世界一の王子様より強くなったんだ。
 
 俺が、この手で絶対に守ってやる。
 
 …大丈夫、だよ」

「アキト…」

「ユリさんも…。
 ホシノが居ない間はばっちり守るから」

「…ありがと、テンカワさん」

アキトが力強く誓ってくれて、私はとっても安心できた。
ユリちゃんも少しだけ落ち着いたように頷いてくれた。
…でも、本当にどうなっちゃうんだろう。
私達身重だし、身を守るのも逃げるのも限度がある。
せめてナデシコAがあったらよかったのに…。
オーバーな身の守り方だとは思うけど、
それくらいしてもアキト君を守るには十分とは言い切れないくらいだし。
アキト君の心を守るためにも私達は無事でいなきゃいけないもん。

「…でも別の心配もあって」

「「え?」」

「…私って、アキトの親代わりしてたでしょ?
 そういう意味でもアキトを一人で放っておくの、今でもなれないの…。
 『未来のテンカワさん』の人格と一緒だから大丈夫なのは分かってるんだけど…」

「…。
 あ、はははは…」

「そっか…ユリちゃんは二倍心配なんだね…」

…ユリちゃんの雰囲気が変わって、急にアキト君を呼び捨てにしたから、
私もアキトも一瞬固まったけど、すぐに状況を飲み込んで苦笑いした。
そういえばもう五年くらい前に一回「この世界で育ったユリちゃんの人格」が前に出たっきりで、
ずうっと二つの人格が溶け込んだ状態で生活してるから思い出すのに時間がかかっちゃった。

…。
アキト君とユリちゃん、ラピスちゃんとラズリちゃん…。
そして私とアキト、ルリちゃんを取り囲む、数奇な運命…。
さつきちゃんとレオナちゃん、夏樹さんの三人が亡くなって、
運命を操る『因果律』との戦いが、ついに始まった。

…誰も死んでほしくなかった。
これからも誰も死んでほしくない。
アキト君を想う人も、アキト君たちが助けたいと思った人も、ナデシコのみんなも…。

ううん、たとえ敵対してきた人たちだって殺したくない、死んでほしくない。
戦いの火種を、二度と残したくないの。

でも私は…ミスマル家の娘の私は、
戦争が、争いが続く限りは誰かが死ななければいけなくなると分かっている。
人は誰にも…この世に生まれる以上、死を望まれて生まれてくるわけがない。
けど誰もが、生きていれば死を望まれてしまうこともある。

だからこそ、私達の子供たちが生まれる頃には…。
もう戦う必要なんてない時代が来てほしいな。
それがどんな遠い、叶えがたい望みであったとしても。

…遺跡にコピーされた私の人格が見てきた、
『アキトをめぐる物語』は、どうやっても変わらなかった。

もし、この物語を革命することが出来たとしたら。
私達だけじゃなく…人類の未来も切り拓かれるのかもしれない。

だから、信じたい。
私の愛した『アキト』が、自分の人生を愛せる世界が続くことを。
そして私達が紡いだ映画と同じように…。



人類が戦いを永久に捨て去る未来が来てくれることを…!























『機動戦艦ナデシコD』
第八十五話:die-hard&die-hard -頑強な抵抗者と頑固な保守主義者-その3






















〇宇宙・火星⇔木星航路・ナデシコC・ハーリーの部屋──ハーリー

『さようなら、夏樹さん。
 あなたの無念は、必ず果たして見せます。
 
 …黙祷を』

…ラズリさんの一言とともに、夏樹さんの遺体を乗せたカプセルが射出された。
ナデシコDに遺体を残したままにしても、遺体を保存すること自体は可能だったんだけど…。
夏樹さんの遺言で、宇宙葬にしてほしいということだったので遺体をカプセルに乗せて射出することになっていった。
スペースデブリの一つとしてカプセルは永遠にさまよい、どこかで衝突して粉々になってしまうだろうけど…。

…ラピスさんの考えた万全の警戒網でこんなことが起こるなんて思わなかった。
でも枝織さんも月臣さんも、ルリさんとラピスさんの専属の護衛である以上、これ以上人員を割くことは難しかった。
サブロウタさんや、保安部の人たちでも限度がある。
そもそもラピスさんが言っている通り、夏樹さんの存在を表立って公表しては返って危険が増えてしまうし…。
無謀、だったのかな…この旅に夏樹さんが加わるのは…。

…その後、僕たちは丸一日の休みをもらうことになった。
今はナデシコDで起こった、夏樹さんの暗殺事件から三日。
ルリさんもラピスさんも、寝ずの捜査に力尽きて眠って、目覚めてすぐ。
ナデシコC、ナデシコDは誰が犯人なのか疑心暗鬼になりかかっていたけど、
この休みの間に保安部が巡回強化、証拠を集めて回るみたいで、
クルーの部屋も15分程度、火薬類のセンサーを用いて探索することになっている。
喫煙者でさえも古いマッチは使っていないので個人装備の銃器以外は引っ掛かるはずがない。
だからどうってことないはずだったんだけど…。

『いやー参ったぜぇ、まさか銃をすり替えられてるとは思わなくってなぁ』

「……いい気味ですよ、全く。
 ナデシコDの副長の癖に、ナデシコCに遊びに行きすぎてるから」

『冷たくないか、ハーリー。
 そんなんじゃモテないぞ?』

「余計なお世話ですよぉ!」

サブロウタさんは、暇つぶしに僕に通話をしてきた。
…なんでも、クルーの大半が自室に引っ込んでるあの夜の時間に、
サブロウタさんはこともあろうにリョーコさんの部屋に遊びに行こうとして、
暗殺が起こった時間、唯一ナデシコDからナデシコCに移動していたので事情聴取と検査を行った。
けど夏樹さんの身体から検出された銃弾と、サブロウタさんの拳銃のライフリングが一致せず、
またサブロウタさん自身からも硝煙反応が出ず、
手持ちの拳銃を調べても『サブロウタさんの指紋が出なかった』から、
サブロウタさんは犯人ではなく、拳銃をすり替えられていた、
もしくは犯人の協力者である可能性があるとして、
完全な謹慎処分になってしまい、暇を持て余している。
はぁ…サブロウタさんが犯人じゃないかって言われた時はちょっとだけ疑っちゃったけど…。

でもサブロウタさんは女性との付き合い方はサイテーだけど、
自分に都合が悪いからと女性をののしったり、付き合ってきた女性の悪口を言ったりはしないし、
あくまで常に自分が嫌われる形で別れてるというのはもっぱらの評判だから、
どれだけ腐っても木連連男児の部分がある人だから暗殺に加担するようなタイプじゃないとは思う。
でも、まだ疑いはかかってる…。
それに…。

「…サブロウタさん、強がってるの僕でも分かりますよ」

『……はは、ハーリー坊やに見抜かれるようじゃ、
 俺もヤキが回ったかな』

サブロウタさんは、はぁとため息を吐くと、
昔、ラピスさんの救出の時に初めて見た、あの真剣な眼差しで僕を見てくれた。

サブロウタさんは…芸能界で遊び惚けていた自分を、
ナデシコという艦の独特な空気に甘んじていた自分を、
どこか苦々しく感じているのが僕にも分かった。

『…ハーリー。
 俺は気を抜いてないつもりだったんだ。
 こう見えて鍛錬はただの一日も欠かしたことはない。
 
 だが、あっさり出し抜かれて、利用されちまった。
 
 しかもこともあろうに…。
 熱血を教え、平和の大事さを改めて教え、
 地球と和解するきっかけを作ってくれた、草壁閣下の…。
 返しきれない恩のある草壁閣下のお嬢さんの命を守れなかった…。
 
 ……自分が情けなくて仕方ない』

「…でも、サブロウタさんは保安部でもないし、警護担当でもないじゃないですか。
 利用されたって話も、気を抜いてたからってわけじゃないですし…」


『だからって俺に責任がないとは言い切れないだろうがッ!!』


がんっ!!



サブロウタさんは部屋の壁に拳をたたきつけた。
普段のナンパな態度からは全く想像がつかない激情を目の当たりにして、
僕はサブロウタさんの、本当の情の強さを見た気がした…。


『正義と思っていた木連にも、
 どうしようもない人間がいるってのは火星に追い出された時に分かった…つもりだった。
 だけどな…!
 
 

 同じ木連の同胞が!
 
 
 仲間だと思っていた、熱血を愛した友が!
 
 
 思想や事情はどうあれ女性を一方的に撃ち殺すなんて、

 
 

 許して良いわけが、ないだろ!?』



僕は、息を呑むことしかできなかった。
サブロウタさんはり…本当はいろんな事を考えて生きていたんだと思う。
一番大事だった人と離れる事態になってしまって…寂しかった、のかな。
色んな感情を押し殺して、生きてきたのかな。

「……悪い、お前に当たっちゃ、ダメだな。
 お前に怒るのは筋違いだ。
 
 …俺は弱いよな」

「サブロウタさん。
 気にしないで下さい。
 そうまで想ってくれてるなら、夏樹さんも報われます。
 
 …だったら、これからやるべきことも、分かってるんでしょ?」

「…ああ」

「じゃあ、弱くないですよ。
 …僕だったら、もうふさぎ込んで立ち直れなくなっちゃいますから」

「…悪いな、グチ聞かせちまって」

「いえ…なんか、分からないですけど…。
 嬉しかった、です…。
 それじゃ、また」

「…ああ。
 ありがとよ、ハーリー」

僕はすぐに通話を切って、膝を抱えて考えこんだ。
僕より一回りも年上のサブロウタさんは…もうやるべきことが見えてるようだった。
決意は僕が聞く前からとっくにできてたんだと思う。
少しだけ僕に心を許してくれて…自分の弱い部分を見せてくれたサブロウタさん。

そのサブロウタさんを見て、僕は…。
自分が子供っぽい理想にしがみついて、うまくいかなくてごねていたんだと恥ずかしくなった。

真面目にやっていけば、きっと報われるって、思い込もうとしていたんだと思う。

理屈通り、理想通りに走っていけば夢は叶うって。
サブロウタさんもきっと昔はそう思ってたんだ。
でも…木連という故郷にも、自分にも何度も失望して、苦しんできたんだ。
「まっすぐに生きてぶつかっていけば何とかなる」なんて甘すぎる考えだとサブロウタさんはどこかで思ったんだ。

わがままに、自分の好きなことを叶える力が必要だって、
迷惑かけてもやっていこうって思って、あんな風になったのかも。
とても褒められたやり方じゃないし、「グレた」っていう方が正しい気もするけど…。

でも、ほんの少しだけサブロウタさんって人が分かった。
僕も焦っちゃいけないんだって、すぐに強くなろうとしたってダメなんだって、分かった気がした。

…僕の夢は、とても叶いっこなさそうだっていうのも、分かってしまった。
だけど、それでいい。
夢が叶う人の方が、本当は少ないんだから。
そうして誰もが大人になっていくんだって、言葉でしか知らなかったことを、分かった気がした。
ラズリさんの一件の時にも、それは分かっていたつもりだったけど、まだちゃんと呑み込めてなかったんだ。

……僕も頑張ろう。

サブロウタさんの後悔…。
出来ることをして来なかったと、そのせいで誰かが死んだと、思うような後悔を…。
しないためにも、一生懸命、出来ることを…!

僕も…!














〇宇宙・火星⇔木星航路・ナデシコB・ムネタケの部屋──ムネタケ
私は例の、木連の要人の一人である草壁夏樹の死亡報告に目を通していた。
彼女は木星トカゲ…いえ、アイアンリザードをたった一人で率いるヤマサキヨシオ博士の元許嫁で、
ヤマサキ博士の説得のためにひそかにナデシコDに乗り込んでいたってとらしいけど…。

…ラピスらしくない失敗だわ。
表立って動くと危ないからと隠していた人物を殺されるなんて。
あの狡猾で、悪魔的な手段を用いる天才的な策士のラピスが、
こんな手にひっかかるなんて想像もできなかった。
確かに自分の身を護ることに失敗した時はあったわ。
でも自分から敷いた、幾重にも積み重ねた警護を破られるようなマヌケじゃない。

…そもそもだけど、ナデシコCに乗せずにナデシコDに乗せるのが妙なのよね。

夏樹の顔を知っている者がいる可能性を考えれば、木連人中心のクルーを乗せているナデシコDには…。
とはいえ、ナデシコCに乗せたところで安全とは言い切れないけど。

まさか、夏樹を殺すつもりで?

…それこそあり得ないわ。
ラピスはホシノアキト以外に興味はないし、彼女が誰かに命令されて陥れるなんてこともまずありえない。
動機がないのよ、はっきり言って。
だからそのつもりはないはずだけど…。

…動機って言えば『ホシノアキトの代わりに戦争の終わりを見届ける』っていう、
ラピス、ラズリ、ルリの三人の動機も妙なのよね。
ホシノアキトが戦いの終わりを見届けたいと思うはずはないし、
戦争反対派で地球から出ないと決めるようなあの男が…三人を木星に送り出すこと自体、おかしい。
何か、特別なことが…。
考えられるのは夏樹を連れて行くことをホシノアキトが頼まれて、代行していたことくらいだけど。
でも、それならもっと万全の警護策をとるはずよね。
例えばマスクなどで変装して別人の振りをして乗り込むとか…。
夏樹の顔は乗船名簿にしっかり載っていたし、
乗船名簿はその気になれば全クルーが閲覧できる状態になっていた。

…ますますラピスらしくないわね。

暗殺騒ぎが一段落したら聞いてみようかしらね。
五年前の昔話でもする体で…別に真相を知る必要があるわけじゃないけど、ね。


















〇宇宙・火星⇔木星航路・ナデシコC・アリサとサラの部屋
アリサとサラは、ナデシコDの事件から休みをもらったのでゆっくりしていた。
だが、読書しているアリサと対照的にサラはまどろんでいるようで、苦しそうにしていた。

「…姉さん、まだ調子悪い?」

「…ええ。
 お腹壊すってきついわよね」

「騒ぎが収まらないからって無理して食べ過ぎるなんてらしくないわよね。
 …まだ事件も収束してないし、ゆっくりしてて」

「そうね…」

サラは、まどろむように目をつぶった。
それでも眠れないようで、気だるそうにアリサに問うた。

「…ねえ、アリサ。
 会いたい人と、二度と会えないのなんて…ごめんよね…」

「…そうね」

「会いたい、大事な人を…家族や恋人、友達を置いて逝くなんて嫌よね…?」

「そう、みんなそうだと思う…」

「だったらなんで…戦争なんて始めたのかな…」

「…自国の利益のためっていうのはよく聞くけど」

サラは小さく涙をこぼした。
利益のために消える命がある現実を虚しく、悲しく感じているようにアリサは見えた。

「大事な人を失いたくないから戦うっていうのもあるわよね。
 …姉さんは、いつも戦う私を怒ってたでしょ。
 そんな危ないことはしないで、女の子なのにって。
 私はそんな心配をしてくれる姉さん、父さんも母さんもを失いたくなかったの。
 だから戦えるようになりたかった。力が欲しかった。
 
 その気持ちには嘘はなかった。
 
 …でもそんなこと、みんな思ってる事なんだと思う。
 連合軍に入ろうとした人達も、木連の人たちもそう思ってたんだと思う…。
 
 五年前から、木連がもしあのまま木星圏にとどまってたらどうなってたか、
 計算上では血縁関係が近くなりすぎたり、
 無機物から有機物を作るプラントが持たなくなるかもしれなかったって…。
 
 …姉さん。
 私、五年前に姉さんが無理して一緒に戦ってくれた時、すっごく嬉しかった。
 
 …こんな力、もうこの戦いが終わったら要らなくなるって、知っちゃったのに、
 あの時の嬉しい気持ち、一生忘れないと思う…。
 
 戦うことについては絶対に分かり合えないはずだった、姉さんと心が通った気がしたの…」

「…。
 みんなが、そんな気持ちになったら、もう誰も悲しまなくなるのかな」

「…きっとそうだと思う。
 ずっと未来になったらわかんないけど…。
 私達が生きている間くらいは、きっと…」

「…アリサ、私、頑張る。
 生きて帰る」

「当たり前じゃない」

二人は、ただ静かに頷いた。















〇宇宙・火星⇔木星航路・ナデシコD・ラピスとラズリの部屋──ラピス


「…天誅ッ!」


ぷしゅっ!


「…なに!?」


「動かないで」


「!?」


私の部屋に、例の暗殺者が現れた。
シーツにくるまったラズリの髪の色のかつらを確認して、サイレンサーをつけた拳銃で撃ちぬいた。
でも、私もラズリもすでにそこには居ない。
逆に──体を任せてるラズリが接近して後ろから暗殺者にレーザーブラスターを突き付けていた。
気配もなく忍び寄って拘束しにかかったラズリに、呆気に取られる暗殺者。

「け、気配を感じなかっただと!?」

「…アキトに特訓してもらったんだよ。
 私とラピスちゃんはアキトと一心同体なの。
 だから身体能力では劣ってても…。
 ちゃんとした訓練をしておけばこれくらいの事、わけないんだから!」

「ちぃっ!」

暗殺者はラズリが引き金を引く気がないのを見抜いて、
ラズリの拘束をほどいて再び拳銃を向けようとした。


がちゃっ!


「な!?」



でもラズリの方が一枚上手だった。
拘束をほどかれる一瞬に、握られた自動小銃のマガジンリリースボタンを押してマガジンを滑落させ、
さらにスライドを引いて装填されていた弾丸を排莢させてしまった。
一瞬にして丸腰にされてしまって、暗殺者は一瞬動きが止まった。
ラズリは向けられた拳銃を握る手から引き寄せ、身体を回転させて肘を打ち込んだ。


ごきっ!


「げほっ!?」



暗殺者のあばら骨を粉砕して、そのまま後ろに回り込んだ。
痛みでうつむいた暗殺者の右腕を、両手でロック、
脚をかけて転ばせたあと、スイングする形で地面にたたきつけた!


「こ、これは木連式柔の禁じ手──!」


──木連式柔・禁じ手。
逆腕挫十字砕き!


どごっ!ぼきっ!びぎぃっ!


「げぶっ!?


 ぐっ…ぶぐあああああああああっ!?」



暗殺者は不意に木連式柔…硬式の、禁じ手を、硬式を覚えないはずの女の子に、
しかも地球側の人間に繰り出されて反応しきれず、
受け身が取れない投げに顔面を強打されるのと同時に、
容赦なく腕の骨、肩関節を破壊されて悶絶した。
アキトに比べると威力が不十分とはいえ、それでも筋力操作で破壊力は本来の身体能力の五倍近い力がかけられる。
それでも気絶しないあたり、本物の木連式柔で鍛えた猛者ってところなんだろうけど…。

アキトと死線を潜り抜け、本物の死闘を実体験として覚えてきた私達とは格が違うよ!


ぼきっ!



「ぐあっ!?
 や、やめろっ…!?」

!?
ラズリが今度は反対の腕をへし折った!?
や、やりすぎじゃない!?
もう行動できないでしょ!?

…!
ラズリの心がドス黒くなっているのが分かった。
これは、殺意!?

ラズリ、やっちゃダメだよ!
でもラズリは私の制止も聞かずに、両腕を折られて抵抗が出来なくなった暗殺者の首を締め始めた…。
それ以上はダメッ!


「ぐ…ぐ…ぐぅぅ…」


「…よくも、夏樹さんを…!」



「く、く…。

 我を、その手で殺す、か…。

 へ、平和主義者の…義妹が聞いて呆れる、わ…。

 彼奴も…世間も…さぞ、失望するだろうな…自ら手を穢すと、は…」



…!
こいつ、計算高い…!
で、でもラズリはもう、こいつを殺す気で…もう時間がない。

こうなったら強制的にラズリの意識をカットするしかない!

私達は別人格同士だから完璧な融合はできない。
脳の割合はラズリの方が多いから、ラズリがその気になったら私を押さえつける事はできる。
でも反面、意識が別の方向に向いていると、隙が出来る。
誰かに強烈な感情を向けながら、身体を全力で動かしている状態なんて一人じゃキープできない。
私にも決定を否決するくらいの権限がある。
まして頭に血の上ったラズリなら、奪い返すくらいわけない!

「うぐっ!?
 ら、らぴ…やめ…」

「くは……ぁ…」

「…。
 はあ、ギリギリセーフ…」


どさっ!



私はラズリから体のコントロールを奪い返すと、
暗殺者がかろうじて意識を失わず、死なずにいるのを見て、ホッとした。
脈拍も呼吸も、とりあえず安定してるから大丈夫。

私は暗殺者に手錠をかけて、拳銃を奪った。
このダメージならもう立ち上がれないだろうけど弱ったフリされると危ないし。
すぐに駆け付けた保安部の人は、暗殺者が爆発物を持ってないかを確かめて医務室に連れて行った。
私は大丈夫だったかを問われ、部屋の中の危険を一緒に確かめて、
ベットにめり込んだ弾丸が危険な薬品が混じってないかを確認して、シーツと毛布だけを交換してもらった。

本人の怪我のこともあって、詳しい事情聴取は明日に持ち越すことにしてすぐに眠ることになった。
艦内は暗殺者の確保でようやく安心して眠れることになった…。
共犯者や、暗殺目的の敵がまだいると困るんだけど、
サブロウタの謹慎は解いてないし、全員が部屋から出ていないのを確認すれば問題はないと思う。
この段階で保安部の巡回に引っ掛からずに再度暗殺を行うのは困難だし。

…で、私は嫌な冷や汗をかいていたのでシャワーを浴びていた。
真っ白い連合軍の士官服に、暗殺者の飛び散った鼻血が染みついていたし、
もうやんなっちゃうよ…。
パジャマは身代わりの抱き枕に着せてたせいで穴が開いちゃうし。

(……)

ラズリはまた自己嫌悪に陥ってるみたいだった。
私が身体の自由を奪わなければ、どうなっていたのかは明白だったから。
私を責めることも、謝ることもできずにだまりこんでいるだけだった。
…世話が焼けるよ、ホント。

(ラズリ、反省してるんでしょ?
 私は気にしてないから、いつも通りにしててよ)
 
(…嫌いになったでしょ、私のこと)

(なるわけないじゃん。
 こんなことで嫌いになってたらアキトと付き合えるわけないんだから)

(でも…。
 私って余計なことばっかりして…。
 挙句に衝動で人殺しをしようと…)

…はあ、分かってるようでわかってないんだから。
ううん、落ち込んでるんだから仕方ないか。

(ラズリ、あんたは『黒い皇子』のアキトよりは扱いやすいし、まともだよ。
 それを抑えるのも私の仕事だし、面倒事は慣れっこ。
 私はこれくらい計算に含んでるってば。
 まあ、私をルリと同じ妹分に思ってくれてるのは嬉しいけど、
 だからって気に病んでも仕方ないでしょ。
 
 …夏樹だってヤマサキに会えないのは残念だろうけど、
 そのせいであんたの手を汚させるようなことがあったら悲しむと思うよ)

(……)

ラズリは黙り込んで、また自分を責めてるようだった。
私の護衛策が失敗したんだから私を責めてくれてもいいのにね。

(ラズリ。
 結局アキトの因子のせいなんだから、アキトを責めてあげればいいよ。
 アキトの黒い部分、あんたが預かってるからアキトを放っといてここに居られるんだから。
 あんたの受け持ちの分のフォローくらいするってば。
 それに今回は未遂だし、状況的に過剰防衛とは言い切れないよ、
 どんだけ鍛えててもうら若き女の子なんだから。
 次があったら必死に我慢するって誓えれば誰も責めないから。
 きつかったら私が代わるし、いいでしょ?)

(ぐす…私、情けないよぅ…。
 味方を殺した相手であっても、私刑にかけて殺すなんて軍人失格だし…。
 大人なのにラピスちゃんにも迷惑かけてばっかりだし…)

(どこが情けないのよ?
 ちゃんと犯人を捕らえて、自分の身も守った。
 アキトに教わったことをちゃんとやりとげて、
 アキトのために生き残ったでしょ?
 私を守ってくれたでしょ?
 それだけでも百点満点じゃない。
 私がやってもよかったけど、怪我一つしないでいられたのはラズリのおかげだよ。

 …まあ、最後のことだけはちゃんと反省しよっか。
 昔のアキトだったらああしてたと思うけど、やっぱやっちゃダメだよね。
 ルリだって、ピースランドで自分の出生を離されて我を忘れたことがあったし、
 あの時のアキトは感情で人を殺したら後戻りできないって言ってたじゃない。

 それに、ラズリは分かってるでしょ?
 これからは味方を殺した相手とだって和解しなきゃいけない。
 例え、自分の最愛の人を殺した相手でさえも…。
 そうしない限り、戦争は絶対に続く。
 アキトが戦争に駆り出される未来を創っちゃうかもしれないってことが。
 
 …だから誰も殺しちゃダメだし、誰にも殺されちゃダメなの。
 
 今回はこれで全部おしまいだよ、分かった?)

(…うん)

(…元はと言えば私が夏樹を守れなかったせいなんだから、ね。
 これからも一緒に頑張ろ?)

(ありがと…。
 …そうだよね、ヤマサキさんを助けないと…)

(じゃ、もう寝よっか)

私達はシャワーを浴び終えると、すぐに眠った。
ラズリも切り替えがうまくできたのかすぐに眠ってくれたみたいだった。


・・・・・。
・・・・。
・・・。
・・。
・。


そして翌日、暗殺者の取り調べを行った。
本人は重傷ではあったけど、あまりに重大な事件だったので鎮痛剤を打って、
枝織の昴氣での軽い治療までしてもらって、話せる状態に持っていった。

犯人は、木連の元六連候補者の一人だった。

保安部のクルーとして…それも腕前があって保安部主任として乗り込んでいたため、巡回する側だった。
むしろ詳しい情報を得て、対策を与える側だったので、圧倒的に有利な状態だったらしいの。
ちなみに暗殺は命令されたわけではなく、単独犯。

五年前だったら光学迷彩は最新技術だったから秘匿されている技術だったから、
大企業や軍、もしくはウリバタケみたいな天才変態技術者じゃないと作れなかったけど、
今となってはとっくに既存技術で、
その気になればアキハバラで仕入れようとすることだって出来るくらいには広まっていた。
しかもこれに対する防御策はかなり限られる。
センサーが高額になりがちで、ビルの入り口など要所に決め打ちでおいておくのが限度になりやすい。
ナデシコDでさえも常時、センサーによる人間の熱源監視を続けるのは難しく、
そもそも問題として熱源監視が可能だったとしても、
誰と誰が会ってるのかまで調査出来てしまうとプライバシーを保護できなくなるので推奨されない。
そういう理由もあって、オモイカネ兄弟との密に連携している私達とルリの部屋だけが熱源監視を常時行っている。

それで暗殺者が暗殺に至った理由は…。
木連の全人口が火星に逃れた時に、『木連の正義』が崩れ、
木連自体の国体が持たなくなってしまった恨みだった。

あの事件以降、木連人は自分たちの誇りとアイデンティティを失い、
火星市民の贖罪のための人生を歩むようになった。
そのために木連全体が『自分たちの故郷を軽んじ始めた』と、暗殺者は考えていた。
木連優人部隊の主力の半分程度を地球に派遣してしまったことも、裏切りに見えた。
そして最近統合軍が火星の制空権の奪取以降には、火星に残っている木連人でさえも流出が止まらなくなった。

元々火星に住んでいた市民たちの暮らしを支える人間だけが残っているような状態になった。
木連の技術が入ったことで、火星市民の生活は飛躍的に向上して、
バッタでの生活の自動化で人が少なくても済む国として成長を始めたものの、
木連という国の体制は形骸化し始めてしまった。
このままでは地球に飲み込まれる形になり、
木連もゲキガンガーを愛した人間も消滅するという憂いからの犯行だった。

そのきっかけを作ったアキトと草壁の大事な人を奪うことが目的だった。
夏樹の後には私とラズリを殺して、ルリもできれば殺したかった。
でもナデシコCとナデシコDのドッキングが閉ざされればそれもできない。
ルリが殺せるか殺せ無いかは置いておいても、最終的にはヤマサキを制圧する場面に居合わせて、
木連の人たちを火星に逃したヤマサキを殺すつもりだったとか。

…ホントに支離滅裂だよね、こういう人って。
目的が単に怨恨だとホントに破滅的な手段しか取れない…。
アキトもそういうところあったから分からないでもないけど。

取り調べが終わって、暗殺者は独房に監禁された。
とはいっても、自殺防止のために拘束されて冷凍睡眠にかけられて独房入りなんだけど。
これを解除するためには私がナデシコDのマスターキーを使わないと無理。
ナデシコCとナデシコDはドッキング機構があるから、
マスターキーを抜いてもナデシコCが操艦権限を預けておけば、全艦停止せずに済むし。
こういうの結構便利だよね。
私とラズリが殺されるような事態になっても、ルリにナデシコDを守ってもらえるもんね。

…で、取り調べが終わったので再びナデシコCとナデシコDはドッキングし直した。

今回はあくまで単独犯だったのが判明したし、
改めてクルーの身元照会を地球にお願いしたけど、全員シロだった。

ちなみに暗殺者は地球で経歴を作り直したどさくさ紛れで身元をごまかしていた。
だから連合軍に入ることもできたし、元々護衛向けの能力があるだけに出世も早かった。

北辰とその関係者の経歴を偽装したタイミングに…。
私達が経歴偽装に手を貸した時に「変装用のマスクで違う顔を登録していた」ってことらしい。
元々、暗部が解体され、木連の護衛部隊として再編された際、六連とその直轄の部下は再編に入った。
次期六連候補のうち、地球に向かう木連要人の護衛部隊として派遣されたけど…。
その一部の人たちはまだ訓練が浅くて任を解かれた。
北辰が地球に向かう中で、一緒に連れて行くことになった、その時に不正な登録を行われたと…。
未熟な六連候補達の面倒を見たのが仇になったんだって…。

…はぁ、恩知らずって感じよね。
愛国心は大したもんだけど、迷惑。
最初っからチャンスをうかがってて、夏樹が木星に向かうのに合わせて乗ってきたわけね。

取り調べの最後に、私はこの暗殺者と取引をすることになった。

暗殺者自身は私達を殺してアキトと草壁にダメージを与えることを考えていたけど、
それも無理だとなった今、潔く処刑されるのも辞さないと話した。
けど結局、経歴偽装の一件は私達にも不利なことがかなり含まれている。

だから経歴偽装の一件を黙っていてもらえる代わりに、
『地球連合軍の形式にのっとった、統合軍の軍法会議』ではなく、
『木連軍の形式にのっとった軍法会議』にかけてもらえるように取り計らい、
草壁とも対話をする機会を与えるという取引を行った。
暗殺者も、意外そうな顔をしたがすぐに頷いてくれた。

艦長権限をかなり逸脱しているし、あまりに重大な事件を起こした相手に甘い処遇だけど…。
これは相談した草壁も納得して合意してくれたので、連合軍総司令のお父様の承認を受けて許諾された。
…こうして、すべてを闇に葬ることが出来た。
夏樹には悪いけどね…。

私はすべてが終わって、ルリの部屋に泊まりに来た。
ラズリが気落ちしてたし、事件の詳細を詳しく話しても置きたかったし。
色々話すべきことがたくさんあったから。
事件の経緯を説明したら、ルリはため息を吐いた。
暗殺者の一件は、私達のサポートが絡んでるだけに気に病むのは仕方ないことだった。

「二人が格闘術までアキト兄さんに習ってたっていうのは初耳でしたけど…。
 そういえば、ラピスはどうやって敵の接近に気付いたんですか?
 オモイカネダッシュだって敵のチャフが発された直後に気付くことはできるはずですけど、
 駆け付けるのに時間がかかっちゃったら同じ策でやられちゃいますし、
 通信でラピスに知らせることもできなくなっちゃいます。
 ラピスも寝てたら、さすがに気づけないと思ったんですけど…」

「一応、私も不安だったから保安部の人たちにも守ってもらってたんだけど…。
 …その保安部主任が犯人だったからちょっと危なかったんだ。
 警護体制もバレてるわけだし。
 それどころか私の部屋の警護担当も持ちまわってたんだ。
 しかもチャフが撒かれた段階の事って、記録には残らないし。
 
 …でも犯人は一つだけポカをやらかしたの」

「ポカ?」

そう、犯人は欲張った。
欲張って、私で終わりにしないで、
ルリとヤマサキの暗殺もやり切ろうとした。
それが仇になった。

「私の部屋を守るために自室からに向かう時、
 光学迷彩をまとってサブロウタの部屋のロックを解除したの。
 サブロウタが自室謹慎になったけど、そのキーは保安部も解除できるようになってる。
 独房に入れるまでのレベルにならないと艦長権限は使われない、ここがポイントだった。
 
 まず、自分の拳銃とサブロウタの拳銃をすり替えて暗殺を起こす。
 この暗殺が成功するにせよ、失敗するにせよ、サブロウタが容疑者になる。
 
 それでサブロウタの取り調べの時に、当然拳銃を調べられるでしょ?
 サブロウタが所持していた『暗殺者がすり替えた、暗殺者の拳銃』と、
 暗殺者が持っていた『夏樹を暗殺したサブロウタの拳銃』をすり替えた。
 容疑者とはいえ、別に犯人が居たらサブロウタは身を守れないから、
 どうしても拳銃を持っておく必要がある、そこに付け込け込んだのよ。
 保安部の新しい拳銃と偽って、『夏樹を暗殺したサブロウタの拳銃』を渡す。

 そして私を殺しにいく段階で、
 保安部のカードで、謹慎中のサブロウタの部屋のロックを解除しておく。
 その上で、私を『暗殺者がすり替えた、暗殺者の拳銃』で殺したとなれば…どうなるかな?
 しかも部屋の順序が、ちょうどいい具合なんだよ?」

「あっ!」

ルリは珍しく大きな声を上げて驚いた。
そう、敵は特殊なチャフのほかに光学迷彩を使っているということが判明してる。
しかも、保安部主任、エステバリス小隊長、副長、艦長の順番で部屋が並んでいる。

順序は、こう。

まず、暗殺者(保安部主任)は光学迷彩をまとって自室から出る。
正面からではなく責任者用の非常用の脱出通路を使う形で。
そしてサブロウタの部屋のロックを解除する。
と、同時にサブロウタの部屋の前に、光学迷彩を使って隠したチャフグレネードを設置する。
カメラに移りづらい色の糸か何かで、そのグレネードのピンを抜けるように設定する。

かなりの深夜なので、サブロウタは眠ってるからロック解除に気が付かない。
その後に自室に戻り、何食わぬ顔で自室から出る。
そして私の部屋の前で警備を交代する。
しばらくしてからチャフグレネードのピンを糸を引いて抜き、チャフを散布。
暗殺者(保安部主任)はチャフに気付いたふりをしつつ、
周辺の記録・連絡は一時停止するので、その間に私を殺す。
そして気絶した振りをして、サブロウタが犯人だと証言すればいい。

サブロウタの部屋のロックが解除され、
『暗殺者がすり替えた、暗殺者の拳銃』で私が殺されたとなれば、
その拳銃を所持していた犯人はサブロウタになる。

そしてサブロウタは拳銃をすり替えられたんじゃなくて、
足が付きづらいように誰かの拳銃を盗んでいたことにできる。
しかもサブロウタが現在所持しているのは『夏樹を暗殺したサブロウタの拳銃』。
そうなると『二件の暗殺を』『二つの拳銃で実行していた』と錯覚させることが出来る。
サブロウタ自身の足跡が廊下に少ないとか、硝煙反応がなかったとか、
チャフで記録が残っていない以上、そういう証拠はすっ飛ばされて、
状況証拠だけで犯人が決定してしまう。

オモイカネダッシュに監視されている謹慎中に、
証拠品の拳銃を手に入れることなど出来るはずがないけど、
保安部のカードでロックが解除された、というのもカメラには映っていないし、
あるいは保安部のカードをくすねていたってことにしてたかも。
そもそもサブロウタか協力者がハッキングで誤認させたと思わせる手口にもできる。
どのみち、時間稼ぎはできるっていうこと。

そもそも暗殺者が容疑者として疑われていない状況であれば、
サブロウタを犯人に仕立てるための証拠づくりは容易だし。
この場合、気づかれづらいことだったけど、普通のクルーでは銃器の持ち込みは難しい。
けど銃器の管理は厳密とはいっても、
保安部主任ともなると銃器の一つや二つ余分に持ち込ませることは不可能じゃない。
決定的な証拠がある状態だったら詳しい捜査はされずに済んでしまう。
だからこんな思い切った手段を取ったのよね。

見る人が見ればバレたかもしれないけど捜査側が犯人だったわけだし、
圧倒的に暗殺者側が有利だったんだよね。
で、ここまでの犯行をサブロウタのせいにできれば、
保安部の主任として大人しく時を待ち、
木星に到着した時にルリとヤマサキの暗殺までこぎつけることが出来るってわけ。

「…とまあ、ここまでは絶体絶命の状態で、
 さすがの私でも助からなかったかもって思うくらいの巧妙さだったよ」

「じゃあどうして気づけたんです?」

「犯人の誤算その1は、
 サブロウタが眠ってなかったってこと」

サブロウタは夏樹の死について責任を感じていた。
だから謹慎期間中は、私が眠っている時間は警戒して起きていてくれると私にひそかに伝えてくれていた。
異常があったらすぐに伝えてくれる手はずになっていた。
オモイカネダッシュと一緒に私の部屋の前をじっと見はってくれていた。

で、その最中に暗殺者は見事にサブロウタの部屋のロックを解除してくれた。
私の暗殺だけでつかまっていいと思ってない、欲張りな思惑でサブロウタを身代わりにするための策を講じた。
だからサブロウタが外からロック解除をされたと伝えてくれたわけ。

「だから私をすぐに起こしてくれたんだけど…。
 サブロウタは私を助けに行こうとまで考えてくれたんだ。
 でも下手をすると犯人の思うつぼだから、
 一切外に出ないでほしいってお願いしたの」

「…それは英断ですね。
 実際、ラピスが撃ち殺されてて、
 サブロウタさんが所持していた拳銃が現場に落ちてたら、
 駆け付けていたサブロウタさんが犯人にされますし」

「そう、でもサブロウタのおかげで私が起きることが出来たし、
 サブロウタが一歩も出てなかったことはオモイカネダッシュが証明してくれる状況になった。

 だからオモイカネダッシュには、
 『ロック解除のマークを出したまま、ロックし直して欲しい』って言っといたの。
 そうすれば、少なくともロックミスとかエラーだって思われるでしょ?
 ロック表示を誤魔化してもロックをかけた記録は残るし、
 オモイカネダッシュが謹慎中のサブロウタの部屋のロックを自主的に閉じたって言い訳もできるし」

「まあ、この時点で犯人の思惑は通らなくなってたわけですね。
 …で、身代わりに使ったラズリさんの髪色のかつらなんてどこで準備してたんです?」

「ほら、私とラズリって入れ替わる時に髪の色を変えるようにナノマシン設定しちゃったでしょ?
 だから私がラズリの振りをしなきゃいけない時に困るかなって、カラーコンタクトレンズと一緒に持ち込んであるの。
 逆もしかりで私色のかつらとカラコンもあるよ」

「…用意周到ですね」

「で、犯人の誤算、その2。
 私が想定外に強かったってことね。
 今回はラズリに任せたけどね」

アキトと訓練はしておいたけど、結構損なことをしてまで無理矢理準備したんだよね。
例のバーチャルシステム空間でデートする前に練習したり、現実世界でも時間をかけて身体づくりしたり。
まあ、ここで命が助かったから儲けものだけど。

「…夏樹さんの仇を取れてよかった。
 でもやりすぎてラピスちゃんに怒られちゃった…」

「…他人事じゃないですもんね、ラズリさんにとっては」

ラズリが私の代わりに前にでて、はぁとため息を吐いた。
そこまで気にしたって夏樹は喜ばないのにね。
私達に守られるってことに最初はためらいも持っていたし…。
それで意地を張るのもどうなんだかって今は思うけどね。

「でも、最後までやり遂げるよ。
 夏樹さんが望んだ通り、ヤマサキさんを助けないと…」


ぴっ。



『ラピスちゃん、ルリちゃん、お邪魔していいかなー』

「枝織ちゃん?
 それにアリサちゃんとサラちゃんまで…。
 どうしたの?」

『ちょっと護衛の手間がありすぎるから、しばらく一つの部屋で寝た方がいいかなーって』

「…いえ、それって逆に言うとまとめて全滅する可能性がありませんか?
 私とラピスとラズリさんは普段からよく一緒に寝てるのでちょっと説得力はないですけど…」

「あ、ごめんルリ、言い忘れてた。
 一応今後の警備計画の事もあるし、保安部の新しい主任を決定することもあるし、
 ちょっとだけ話しておきたくて私が呼んだんだ」

「…はぁ、ラピス。
 勤務時間外ですよ?」

「いーからいーから」

私がドアにキーカードを通すと、三人を迎え入れた。
これからのことをもう少しだけでも話し合っておかないと不安が泥沼だもん。
せめて夏樹の願いをかなえるためにも…ね。

…さてと、木星でヤマサキに会えるかな?

















〇宇宙・火星⇔木星航路・ナデシコD・トレーニング室──月臣
暗殺事件が落ち着いて、一週間ほど経った。
俺はラピス殿とラズリ殿の護衛が必要でない時には、鍛錬を続けていた。
ようやく通常通りの運航が再開できるとなって、改めて鍛錬を始めていたが…。

俺はホシノアキトとの戦い以降…更なる修練を積んで技を極めてきたつもりだった。
威力をのぞけば、ホシノアキト、テンカワアキト、影守姉妹にも決して引けはとらんはずだ。
五年の時を経てさらに磨かれた技の冴えは、影守枝織にも感嘆されるほどだ…。
…だが、何故俺には昴氣が使えん。
技も、精神も、極まり方が足りないとは思えんのだが…。

俺の才が足りないとでもいうのか、俺には纏う資格がないとでもいうのか。

…俺には分からん。
ここから先に進むための、昴氣を手にするための方法が…。

「失礼します」

俺が構えを取りながら、考えを止め、精神を研ぎ澄まそうとした瞬間、覇気を感じる声が届いた。
この声には、聞き覚えがあった。久しぶりに聞く声だった。

「…サブロウタか」

「稽古をお願いします」

一礼して道場に入ってきたサブロウタは、開口一番に俺に言い放った。
サブロウタが五年前に放っていた生真面目さとも、また違う…変化を感じる覇気を伴って…。
そして、染めていた長い髪はすべて黒く染め直し、昔のように短く切り揃えられていた。

「…気にしているのか、サブロウタ。
 今回の事は腑抜けたお前のせいではないと、誰もが言ったはずだが。
 それに夏樹殿を撃った犯人を捕まえ、ラピス殿の身を守るきっかけはお前が作った。
 …恥ずべき点は、ないだろう」

「…はい。
 分かってます。
 でも、俺…うぬぼれていたんだと気づいたんです
 大切な人を守りたいと願っていたのに…袖に振られて、いじけて心を研ぐのを忘れていた。

 …鍛錬を怠っていなかろうと、実力がどうであろうと、
 心が出来ていなければそれを扱うことなどできないと分かっていたはずなのに。
 
 俺が油断していなかったら夏樹さんも、もしかしたら守れたかもしれない。
 …こんな風に後悔する人生は、もうまっぴらなんです。
 
 

 俺は…これから守るべき人を守れる本当の強さが欲しい!

 
 

 だから、鍛え直したいんです…!」



…吹っ切れたか、サブロウタ。
そうだな…まだ危険が付きまとう状況だ。
暗殺者がまた現れるかもしれん。
保安部であろうとなかろうと、戦う必要が出るかもしれん。
そういう時に後悔をしたくないということか。

「よし、サブロウタ。
 お前が本気なのは分かった。
 
 …なら、お前の今の実力を出し切って見せろ。
 どれだけの鍛錬について来れるか、見定めてやる。
 
 

 …かかって来いッ!」


「押忍ッ!」


ばしゅっ!ばっ!だんっ!



…それから俺とサブロウタは十分以上の組み手を行った。
俺はサブロウタの技の冴えを見極めるために手をほとんど出さずに観察していたが…。
サブロウタの技は、鈍ってはいなかったが若干腰が引けていた。
それにまだ心には迷いがあるのが分かった。
誰かに相対するための勇気が足りないような、臆病さを感じた。
…だが、それでも逃げるつもりがないサブロウタの動きに、可能性を感じずにはいられなかった。


「隙ありだ!」


「げふっ!?」


どすっ!どさっ!



俺は加減しつつも、胴に突きを放ってサブロウタを倒した。
ここまででサブロウタの体力の限界、そして技の限界が見極められた。
これ以上の組み手は無意味だと考えて終わりに一撃で倒して見せた。
交差法で決まった突きに悶絶しながらも、すぐに起き上がろうとしているのには関心した。

「無理をするな。
 すぐに何とかなるものでもない」

「こんな…ことで…」

「立つな。
 組み手で俺に勝とうなど十年は早い。
 また明日、基礎からやり直すぞ。
 ハリに普段言ってる事を反芻して、考えをまとめておけ」

「お…す…」

サブロウタの状態からして瞬間的な護身は出来るだろうが、
自分以外の人間を守るにはやや不足だ。持久力が全く足りてない。
だが…技術的なところは問題がない分だけ早く戻せるだろう。
これからだな。


…心を研ぐ、か。

精神と言わなかったのには、また別の意味があるように感じるな。
サブロウタは何かをつかんだのか…。
俺にも、心を研ぐための何かが足りないのかもしれん。
…サブロウタを鍛え直す中で見えるかもしれんな。

俺も、サブロウタに学ぶとしようか。
















〇東京都・池袋・アイドルプロダクション『大和』合宿所──アサミ
さつきさんとレオナさんの葬儀から一週間ほどが経過しました。
私達も精神的に持ち直して、ダンスレッスンに参加するようになり、アイドル活動を再開しました。
イケダさんもふさぎ込んでいたけど、私達が活動を始めるというと少しずつ元気になってくれました。
私達も完全に心の傷が癒えるまでには時間がかかりそうだけど、
でもさつきさんとレオナさんの分まで頑張ろうって決めたから…!

「イツキ、ターンが遅い!
 アサミは振りが小さいわ!」

「「は、はいっ!」」

ライザさんの注意に、私達は体をこわばらせました。
ライザさんは自分では「可愛げがないからリーダーに向いてないのよ」と言っていたけど、
態度は冷静沈着、そ動きは完璧で、ほかメンバーの欠点を言い当てることには長けています。
正直、リーダー向けすぎます。
続きを踊って見せると、ライザさんは小さく頷きました。

「その調子よ。
 あとでビデオで確認しておきなさい。
 
 それじゃ二人とも、メイと文に代わって。
 メイ!文!…練習生だからって甘えないでよ」

「「はぁいっ!」」

私達はステージから降りると、二人の練習生と入れ替わりました。
この二人は、昨日から入ったゴールドセインツの練習生です。
私達がもし負傷したり暗殺されるようなことがあったら代わりに入れるように、訓練しているそうです。
ホシノアキトさんとライザさんを意識しているのか、髪の色は白く、瞳も金色です。
年頃は私より少し上の…高校三年生くらいに見えます。
…でも、私達はその実力に驚きました。
ゴールドセインツのメンバーと寸分たがわぬ動きを見せて…私達より上かもしれません。

「やるわね、一回で決めるなんて」

「やったぁ!」

「ありがとうございます!」

私達が何度も失敗したステップを、軽々とこなしています。
身体能力も、ライザさんに見劣りしてないですし…。
それに…どことなく、二人の体格や笑顔がさつきさんとレオナさんに似ている気もします。
さつきさんとレオナさんに比べると少し身長が高めでスタイルがいいです。

…せっかく正規メンバーとして加入させてもらったのに、ふがいない気持ちになります。
その後、ゴールドセインツのみんなは汗を流しに大浴場に向かっていきましたが、
私とイツキ姉さんは情けなくて落ち込んで、ステージを見上げる観客席から立ち上がれませんでした。
ちょっとした学校の体育館程度の大きさのある、この練習用の劇場で…。
私達はひどく孤独を感じてしまっていましたが…。

「…無理してるね、ライザさん」

「…うん」

少し離れたところで、アオイさんとメグミさんがライザさんの様子を見ていたようで、
どことなく辛そうな顔をして…つぶやいた言葉は、かろうじて聞こえる程度の声でした。
二人はすでに今日のレッスンを終えていたはずなのに、何時間もここにとどまってたみたいで…。

…そういえば確かにライザさんも、眠れてないみたいです。
さっきはちょっとだけ緩んだ顔も見せてましたけど…私達には失望してるかも…。

「二人とも、さっさと大浴場に来なさい。
 …あれくらいできてりゃ十分よ」

「「…す、すみません」」

ライザさんが戻ってきて、私達を呼びに来てくれた。
…情けないことばっかりしてますね。
でも、これから頑張っていかないと…。
まだ出来ることはあるはずなんだから…!

くじけてる場合じゃない、がんばれ私!

アイドルの一番星にならなきゃっ!!














〇地球・東京都・クリムゾン資本の新聞社

「だからぁ!
 ホシノアキト関係の記事はもっと苛烈に書けって!
 奴さんが弱ってるんなら追い打ちしろ!
 二度と芸能界に出てこれないくらい追い込めよ!」

「は、はあ…」

編集長は新人の記者に発破をかけて記事を書かせようとしているが、
まだ経験が浅く、思った通りの記事を書いて来ない新人記者にいら立っているようだった。

「あの、編集長ー。
 郵送されてきた記事の投稿があるんですが…」

「持ち込みだと?
 ンなものを今時使えるか!?」

「い、いえ、それが…。
 『カタオカテツヤ』と書いてあるんです。
 た、たしかウチの伝説の記者ですよね…」


「なぁにぃ!?
 
 寄越せっ!」



編集長は渡された分厚い茶封筒を開くと、
その文体からカタオカテツヤ本人の執筆した記事であることをすぐに見抜いた。
編集長は、クリムゾンからテツヤが戻ってきたら必ず連絡しろと言われている。
だが彼は戻ってくることなく、記事だけを掲載しろと一方的にたたきつけてきた。
死亡説も流れていたテツヤ。
彼は元々不正を暴いたり、辛辣で鋭い記事を書くことで有名だった。

編集長はクリムゾンの始末屋としての裏の顔も知っていたが、その記事の出来の方を評価してきた。
テツヤの記事の、一番のファンだとすらいえた。
期待を込めて封筒の封を切り、その内容をすさまじい勢いで読むと、
うめくような、しかし歓喜に満ちた含み笑いを発した。
そして目を見開いて、叫んだ。


「今すぐに三面記事を開けろ!
 
 伝説の記者の凱旋だ!
 
 お前らもこいつをよく読んどけ!
 
 クソミソにこき下ろすってのはこうやるんだ!
 
 こいつがジャーナリズムだ!
 
 世の中をつくるのは俺たちなんだっ!

 
 

 肝に銘じて覚えとけよッ!!」


















〇作者あとがき
どうもこんばんわ、武説草です。
今回は『ナデシコD・夏樹暗殺事件』の真相編でした。
登場人物の死亡が、いろんな人に影響を及ぼしてますってな回でした。
しかしまあ、ラピス&ラズリが鍛えられてたっていうのは結構紙一重な気がしないでもないです。
サブロウタも、まさかのナンパ男状態からの脱却。どこまで持ち直すのか。
とはいえどこまで本気で打ち込めるのかはまだまだ未知数。
イツキとアサミも立ち直ってはいるものの、まだまだ弱気。
そしてテツヤは、アキトへのさらなる追撃をしたくて危険を冒してまで攻撃開始。
地球に宇宙に、いろんな人達を揺るがしながら展開していきます!
さあ、フィナーレは(たぶん)もうすぐだぁ~~~~!
あ、そういえば2月26日はテンカワアキトの誕生日だっけか…。

ってなわけで次回へ~~~~~~~~!!













〇代理人様への返信
>目覚めろ、その魂(違)
平成ライダーシリーズは地味に追えてなくて、ディケイドしか見てないです。
しかもその理由がブラックとRXが登場するって理由で…。


>しかしこう言う暗殺ものを考えると、マジでA級ジャンパー恐ろしすぎる。
>ボソンジャンプ自体かく乱できない限り防ぐ手段が無いw
マジで何も防御策ないですよね。あれ。
A級ジャンパーってボソン砲使おうと思ったら無限射程になるし、本当に無敵。
火星の後継者にユリカが捕らえられてればこそ、そこまでしなかったんかなぁ。

…ただ今考えると、
ナデシコ二次創作における黒アキトの殺意の高さがあった場合、
ユリカとルリがどう思おうが世間がどう非難しようが、
マジでボソン砲で皆殺しにしてそうな気がしないでもない(爆

…そう考えるとユリカとルリ以外にはもうブレーキなかったんだろうなぁ、とも。















~次回予告~
ライザよ。
この五年くらいは暢気に過ごせていたし、後悔はしてないつもりだったけど…。
…ちょっとだけ死ぬのが怖くなってくるわ。
それに、あの新聞記事…テツヤの生存を教えるものだった。
…これからが本当の戦いになりそうだけど。
アキトはまだ弱ってるし、私達も大人しくしてるしかないのかしら。
とはいえそうそうほっといてもらえないのが、英雄サマってことなんだけどね。

色々辛いニュースがあったりなかったりしんどかったりするけど、
この一年でどんどん健康になってしまった作者が贈る、
いい加減百話以内には完結したい系ナデシコ二次創作、












『機動戦艦ナデシコD』
第八十六話:die-hard&die-hard -頑強な抵抗者と頑固な保守主義者-その4
















をみんなで見なさいよ!



























感想代理人プロフィール

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代理人の感想
うん取りあえずあれだ。
死ね。氏ねじゃなくて死ね。>編集長

犯人が捕まったのは良かったが、ラピスも人間離れしてるなあ・・・w


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