〇地球・西欧諸国・シャクヤク──オオサキシュン
「…隊長、暇なのはわかりますが、紙の新聞を持ち込んでブリッジをうろうろするのはやめてくれませんか。
 二十世紀のサラリーマンじゃないんですから」

「あーうるさい、カズシは黙ってろ。
 こちとらはぐれトカゲも出なくなってヒマなんだよ。
 木星に向かってる連中ほどじゃないっていうのも、今は虚しいけどな。
 …しかし、これで何日目だ。
 ホシノアキトたたきの記事がどんどん増えてるよな」

「あの一連の出来事は痛恨の一撃でしたね。
 …今までが奇跡続きすぎたんでしょうけど、さすがに気の毒だ」

俺たちシャクヤク隊は、木星に向かったナデシコ艦隊を見送って地球を守っていた。
アリサとサラの二人だけが木星に向かい、ナデシコ級がゼロになると危険と言うこともあって、
連合軍、統合軍通じても一、二を争うシャクヤク隊が残ることになった。

連合軍・統合軍共に、DFSオペレータとのタンデム編成は割合的には二割を超えている。
技量が高い部隊であればその割合はさらに高くなる。

うちのシャクヤク隊のピエールを隊長とした小隊は、アリサとサラが居なくてもかなりの戦力だ。
ちょっとやそっとじゃやられることもないが…。
もしチューリップが一基でも来た場合を考えると、
ナデシコ級を一隻も残さないと危険だということで、俺たちシャクヤク隊だけが地球に残された。
地球に残ってるのは五年前すでに木星トカゲに手も足も出なかった旧式艦だけだ。
あ。
あと一隻、明日香のお嬢様の持ってる民間のナデシコ級もあるそうだから、
緊急時は手を貸してくれることになってるから大丈夫だろうがな。
しかし、明日香のお嬢様も自分の名前を戦艦につけるってのは中々いい性格してるよな。

それで…ホシノアキト叩きが世間に蔓延し始めている件だが…。
一週間ほど前にクリムゾン系の新聞に、ホシノアキトを痛烈に批判する記事が掲載された。
その時の紙面は…。

『誠実なペテン師、ホシノアキトの軌跡』

だった。
この記事が掲載された新聞は売り切れが続出し、電子版も記録的な売り上げをたたき出した。
どういうことかと思って手に取った人が多かったんだろうな。
その内容はこんなもんだった。

『ホシノアキトという人間は確かに『英雄』と呼ぶにふさわしかった。
 彼は誠実に、正直にすべてを語り、戦争を否定しながらも戦い続けた。
 戦争の被害者ともいうべきネルガルの実験体…一時はすべてを失った彼の声に、
 そして彼が演じた「ダイヤモンドプリンセス」という映画に、
 世間が、世界が動いた。
 戦いを、戦争を放棄したいと誰もが望んだ。
 ホシノアキトの願い通りに。

 彼は自分が戦いたくない、戦いを終わらせて夢を追いたいという気持ちに嘘をつかなかった。
 間違いなく、誠実だったのだ。
 私も彼に出会い、彼の言葉の誠実さを見届けた。

 だが、ホシノアキトは結局、暴力に頼る方法をとった。
 自分の力と、エステバリスという力を使ってそれを達成した。
 戦いたくない自分を欺いて、外付けの憎しみをまとって戦い続けた。
 そのうち、協力者を集め、世間を味方につけ、世界を変えるだけの味方と力を得た。

 矛盾する内容を主張し、世間を、いや、「自分すらも」欺き、押し通した。

 最終的には人々を戦いに駆り立てるという方法で、自分が戦わないで済む方法を選んだだけなのだ。
 自分がしたくない事を他人に押し付け、夢を見せ、自分の利益を得ることに成功した。

 これをペテンと言わずして、なんと言うのだろう。"

 彼に熱狂させられた世の中は彼の思想に追いすがり、
 地球圏はその命を長らえることに成功するかもしれない。
 このまま戦争が終結したとしたら、彼は戦争を終結させた英雄にしか見えないだろう。
 
 ──だが果たしてそうだろうか?
 
 彼が生みだした戦士は、戦地に送られた人たちは、『本来戦うはずの無かった人たち』だ。
 五年前から女性の志願兵は過剰に増え始めた。
 その時点で例年採用される数の、五倍もの人数の女性兵士が集ってしまった。
 彼女たちはホシノアキトのために、現在も戦い続けている。
 この五年という時間の間…決して少なくない人数の女性兵士が採用されている。
 ホシノアキトという人間一人のために、女性が戦う羽目になっている。

 戦地に何も知らない女性が送られている。
 戦死者はこの五年で出ていない、
 奇跡的な状況ではあるが、彼女たちのあるべき人生を奪い、
 若い時間を浪費させてしまっている。
 それだけではなく、同僚の男性兵士や上級士官に乱暴されたものもいるはずだ。
 
 彼女たちが自分から志願したことで、
 ホシノアキトが声をかけたわけではないとはいえ、責任が皆無とはとても言えないだろう。
 
 そして極めつけが、今回の『ツインツイスター襲撃事件』だ。
 
 ツインツイスターのイツキとアサミを守るために、
 前に出たゴールドセインツのさつきとレオナが死んだ。
 
 ボソンジャンプがらみの実験の失敗のため、処分するついでに木連を貶める目的で、
 何も知らない木連の兵士をけしかけて起こされた事件だった。
 今回は巻き込まれた形だったとはいえ、無謀に暗殺者に立ち向かったゴールドセインツのメンバーたち。
 
 もしかしたら、彼女たちはホシノアキトの思想のために死んだのではないか。
 あるいは、
 「ホシノアキトが暗殺されそうになった時に、盾になるための訓練をしたのではないか」
 と私は考えている。

 不自然な彼女たちの最期…。 
 誰かが暗殺されそうになったからと言って、
 とっさに自ら盾になれるような女性がどれだけいるだろうか。
 ホシノアキトが自分可愛さのため、
 彼女たちを盾にするために近くに置いておいたと考えた方が自然だ。
 
 ゴールドセインツは、彼を守るための人柱にすぎない。
 
 いや、もしかしたらすべての女性を人柱にするつもりなのかもしれない。
 
 彼は自分のためだけに地球圏を陥れ、あなたの大事な娘を戦いに駆り立てたのかもしれない。
 
 ──それでもあなたはホシノアキトを信じますか?』


…とてつもなく馬鹿げた記事だと思って、俺は一笑に付した。
だが、この記事は俺の評価とは違い、大きな広がりを見せていた。
『ホシノアキト』という人間に対する、欺瞞を暴いたという評価が上がった。

この記事の通り、自分の娘が連合軍に入ってしまったことを苦々しく思っていた父親は少なくなかった。
連合軍に入った女の子と付き合ってたボーイフレンドもそうだし、
女の子を口説く男からも、デートの映画に出てくるホシノアキトを心地よくは思われていない。

ホシノアキトは世間から多大な評価を受けているとはいっても、
潜在的には『女子供』以外には嫌われている。

だが、この記事が公開された後の世論調査でも、
実際のところ世間の98%がまだ評価していた。
が、残りの2%は間違いなくホシノアキトを嫌っていた。

2%。
僅かな数字だが、地球圏100億の全人類の数の2%だとすれば、2億人だ。
百人居れば二名はいる。
決して無視できない、大きな数字だ。
六年以上地球圏を席捲するホシノアキトに対するフラストレーションが溜まっているとすれば…。
彼らがホシノアキト抹殺をもくらむ勢力に加担するようなことがあったとしたら…。
そして二件の、木連関係者の暗殺が続いたことからも考えてみると…。

…危ないかもな、あの英雄も。


















『機動戦艦ナデシコD』
第八十六話:die-hard&die-hard -頑強な抵抗者と頑固な保守主義者-その4





















〇宇宙・火星⇔木星航路・ナデシコB・ブリッジ──ムネタケ
あの事件の終息後…ナデシコ艦隊全体に不安が広がっていった。
ナデシコDの保安部の副主任が草壁夏樹を暗殺し、
次の事件でも返り討ちにされたとはいえ、ラピスに対して暗殺未遂。

それに加えて、地球側でもホシノアキト関係の失態があった。
ゴールドセインツのさつきとレオナが、別の暗殺に巻き込まれて死亡。

これは直接的にホシノアキトに落ち度は大きくなかったんだけど…。
神話のごとき完璧さを持っていたホシノアキトの人生に泥を塗り、
それに伴ってホシノアキトを嫌う勢力がここぞとばかりに押し込んでる。
…ホシノアキト自身も、かなり堪えてるし、敵を特定できないのか苦戦している。

この事件は木星に向かうナデシコ艦隊の、かなりの数の女性クルーがふさぎ込む原因になった。
マスコミもクリムゾン系新聞社の批難記事に便乗する形で、三割程度がアンチホシノアキトに傾いた。
…ちょっとまずいわよね、ナデシコ艦隊の士気がガタ落ちになるなんて。
それにもしこれでホシノアキトが倒れようものなら、
この数年で築き上げられた反戦の空気すら吹っ飛ばしかねない。
もっともホシノアキトもいくらくじけていたってそう簡単に死なない…とは言い切れない。
例のアギトとかいうホシノアキトクローンの存在も無視できない。
あいつはどっから来たんだか…。

まだ木星にたどり着くまでには時間がある。
だから立ち直るにはまだ時間がある、けど…。
逆に言うと、敵がホシノアキトを追い込む時間が、あるってことよ。

…どうするつもりよ、英雄。

そういえば…そろそろ全戦艦参加の、シミュレーター形式の模擬戦闘だけど、
この士気でやれるかどうか…。
ちょっと二人に発破をかけてもらおうかしらね。

「ちょっと、ナカザト。
 ルリ少佐とラピス少佐は、しゃんとしてるかしら」

「は?
 二人ですか?
 ナデシコCの食堂ですごい食べてますけど…」

私はモニターに映ったルリとラピスの、
大食いの映像を見かけて吹き出すように失笑した。

…ルリとラピスの状況は、彼女たちの部屋とトイレ、風呂以外、
随時すべてのクルーが、いつでも閲覧できるようになっている。

これはラピスからの提案で、全員が監視している状態であればうかつなことを企てる人間がいなくなること、
そしてちょっとした『ファンサービス』らしい。
このナデシコ艦隊で女性兵士、女性クルーをのぞけば、ほぼすべてが『jewelryprincesses』のファン。
たった一枚だけ出されたアルバムの名前の通り『電子の妖精』とも『電子のお姫様』とも呼ばれる二人の、
プライベート以外の映像はほぼ丸出し放映中。
…もっとも、兄貴分のホシノアキトにも負けないその食べっぷりに幻滅したクルーは数知れないけど。

とはいえ、あれくらい食べて気合入れられるくらいの状況になってれば発破もかけられるでしょうね。
不安がることなかったわね。











〇宇宙・火星⇔木星航路・ナデシコC・食堂──リョーコ

「もぐもぐもぐもぐ…」

「はむはむはむはむ…」

…あたしは呆然とルリとラピスの食事を見ていた。
も、もうそろそろ十人前くらい食べてるよな。
ホシノの奴並みに食べるようになってきたよな、最近…。

…いや、最近は二人とも頭も体も動かしてる。
ラピスとラズリは月臣と木連式柔の訓練をしている時間が長いそうだし、
ルリも武道はしないけど身体づくりをするようになっていた。
どうやらヤマサキ博士のところに乗り込む時に、危険を回避できるようにしたいとかで…。

しかもそれだけじゃない、二人は戦術シミュレーターも毎日やってる。
今まで持て余していた時間を、かなり当てて鍛え直してるようだった。

…夏樹の件が、堪えたのかな。

「ごちそうさまっ!」

「ごちそうさまでした」

「それじゃみんな!
 一時間後の全艦訓練に向けてしっかり準備しようねっ!」

「そうです、もう残り時間は短いんですよ」

…。
はぁ、ルリとラピスに背筋を正されるとはな。
この二人は気負ってる感じもしねぇし、艦長としてしっかりやってんだよな。
血はつながってなくてもさすがユリカの妹、って感じだ。
いや、あいつよりもずっとしっかりしてんだけどな。
…あたしも、ちょっと巻き込まれて落ち込んでただけだよなぁ。
何しろ、地球もこっちも…死人が出てる。

…さつきとレオナが、死ぬなんてな。

…集中しねぇと。
しっかりしねぇと、あたしまでおっちぬからな。


…そういえば、サブロウタの奴、最近はこっちに来なくなったよな。
あいつも、気にしてんのかな…。
いや、来れないなら来れないであたしに何も言わないってのはなかったんだけどな…。

…。















〇地球・ネルガル本社・会長室──サヤカ

「会長!
 次の会議を!」

「はいはい、分かったよ…まったく」

ナガレ君は言われるがままに次々に駆り出されていった。
私がエリナの代わりにナガレ君の秘書をするようになってだいぶ経過するけど…。
…最近はホシノアキト関係の話で、世間が不安がってしまってネルガルの株価にも影響があった。
直接的な関係はなくても、彼が築き上げた不敗神話が崩れるということは、
かつての敗色濃厚な時代の再来があり得ると恐怖している者は多かった。
木星との決着がつけばそんなことはあるはずがないと分かっていてなお、恐怖する。
地球圏はそれほどまでにホシノアキトに依存した状態で、この五年を過ごしてしまった。
…でも、私の不安はそれだけじゃなかった。

「ナガレ君、気を付けてね」

「もちろんだよ、サヤカ姉さん。
 …僕がホシノ君ほどじゃないにしても強いのは知ってるだろ?
 自分の身も、サヤカ姉さんも守るくらいわけないさ」

「だから心配なのよ…」

そう、だから心配なの…ナガレ君。
ナガレ君は本当に強くなった。
シークレットサービス顔負けの戦闘技術に加えて、
体格が段違いなゴート・ホーリーでさえも、素手の戦いなら互角以上に渡り合えるようになった。
それどころかサイボーグとすらも戦うことができるくらい。
さすがホシノアキトさんには及ばないけど、超一流の戦闘技術を持っている。

だから、あなたは守られる側ではなくて、守る側になろうとしてしまう。

自分の身を守るだけだったら、完璧に生き抜けるほど強いのに。
一人身の私なんかよりもずっと大事な身体なのに。
エリナさんのためにも、生きなきゃいけないのに。

私は、ナガレ君が幸せになる姿を見たいのに…。

「…ナガレ君、私が危なくなったら見捨ててほしいの」

「な…何を言うんだよ?!
 そんなことできるわけが…」

「違うの。
 …ホシノアキトさんだって守れない人がいるかもしれない。
 アギトって人が、襲いに来るかもしれない。
 私が、もしかしたら人質にされるかもしれない。
 
 今からそこまで考えておかないといけない状況になっちゃったのよ。
 …ナガレ君だって分かってるでしょ?」

「…それは」

「ナガレ君が居なかったらネルガルはどうなるの?
 エリナさんはどうなるの?
 それどころか、地球圏全体の問題にだって関わるのに…」

「…分かってる。
 分かってるけど…。
 
 そんなことをしたら、きっと僕は僕じゃなくなる。
 
 アカツキナガレでいられなくなる。
 
 ずっと…サヤカ姉さんを、見捨てたと自分を蔑んで、後悔して生きることになる。
 そんな生き方をするくらいなら、僕は…。
 
 …だから出来る限り、そうならないように僕のそばにいてくれ。
 そうすれば安全だから。
 僕一人じゃなくて、シークレットサービスもいる状態ならよほどのことがなければ大丈夫さ。
 
 お願いだ、サヤカ姉さん。
 
 …僕に、姉さんを守らせてくれないか?」

…ナガレ君。
こんな風に私に言ってくれる頼もしく、たくましく成長してくれるなんて。
…甘ったれの、かわいい頃が懐かしい。
もう私ができることなんて何もない、足手まとい、なんだから…。
だから──。

「──うん。

 信じてる、ナガレ君」

ナガレ君の言葉を信じてみようと思う。
きっとナガレ君は、完璧に私を守ってくれようとすると思う。
ううん、隣に居る限り完璧に守ってくれる。

でも、もしホントにナガレ君の足手まといになる時が来てしまったら…。
私は自分からナガレ君のために…命を投げ出す…。
そうならないことを、祈るしかない…。
それくらいに、今の私は無力なの…。

──ごめんね、嘘つきで。
















〇東京都・池袋・アイドルプロダクション『大和』合宿所・──イツキ
私たちのダンスレッスンが上達した頃、レッスン以外にはじっとしてるか、
室内で遊んでるか自習するかしか許されない状態になって、段々と力を持て余し始めた。
体力が増していくにつれて、気持ちも上向きにはなっていったけど、
体力を発散する機会に恵まれず、悶々としてしまう日々…。
『第二次熱血ロボット大戦』のゲームを借りたりして時間をつぶすものの、
圧倒的に長い時間が余っている私達には、不満を解消するほどには楽しめなかった…。

そんな中、眼上さんに『アイドル活動の再開』を宣言された。

どうやって、という言葉を発する暇もないほど手早く、計画を畳みかけるように話された。
眼上さんは『動画でのアイドル活動』『生配信によるリモートライブ』を計画していた。
トレーニングの様子、ダンスレッスンの様子、この合宿所の小さなステージで行われる演劇、
演出は弱いけどライブも、そしてアキト様の語る今だからこそ言える裏話が語られるラジオに至るまで、
さまざまなことをネット経由で発信することになった。
しかもこれは無料で行われた。
チケットを買ってもらうことも可能ではあったけど、
人前に出れない上に、テレビ局も噛めない状態であることもあって、
短めの時間でテレビ局に配慮をしつつ行われる、全人類へのサービス放送。
アイドル活動の休止からしばらく経ってからの活動再開に、
ファンの人たちも何とか持ち直してくれたようで…。
私とアサミもこの活動でだいぶ心が和らいだ。
何しろやることがないと落ち込んでしまう状態ではあったから。
でも…。

「視聴数は稼げてるけど、
 やっぱり世間の心象はまだまだ良くないわね」

ミーティングで集まった中で、眼上さんは少しため息交じりに報告した。
元々ホシノアキトさんのファンだった人たちは、この動画での配信を楽しみにしてくれたけど…。
ホシノアキトさんへの批難はむしろ増していた。
アイドル活動の休止を当面中止と言っていたのに舌の根の乾かぬ内の活動再開、
加えて私達ツインツイスターをゴールドセインツに吸収したことに関する反発は大きかった。
それどころか、ホシノアキトさんがゴールドセインツに私達を加えて、
ライバル潰し、自分の勢力の力を増強することを目論んだと評価するマスコミすらいた。
批判者はホシノアキトさんの批判に使えるものはすべて使い、追い落とすことに躍起になっていた。

ホシノアキトさんの「不敗神話」が崩れるとともに、
批難も批判もほとんど意味をなさなかった、「聖域」が次々に踏み荒らされていた。

「…回復できないなら仕方ないっすよ。
 俺は別にアイドル活動なんて柄じゃないし、このまま終わったって構わないんです。
 事情的に今はそうできないってだけで。
 …いつものことですよ。
 みんなが巻き込まれているのだけはちょっと気になりますけど」

「「「アキト様…」」」

「ホシノ、君もそんなに卑屈になることはないさ。
 僕たちだって君のせいだなんて思ってないし」

「全くだ。
 こんなことでお前の英雄ごっこも終わりかよ?
 だったらしばらく田舎にでも引っ込んでた方がマシだろうがよ?」

「カエンさん、そんな言い方ないですよぅ」

ホシノアキトさんもさすがに弱気になっているのか、控え目にため息を吐いた。
やっぱり、まださつきさんとレオナさんの事を気にしてるんです。
…アオイさんとカエンさん、メグミさんがそれぞれ励ますように話しかけているけど、
ホシノアキトさんの表情は優れないです。
いえ、ここにいる全員がそうですね…。

ホシノアキトさん、アオイさん、カエンさん、天龍さん、地龍さんのユニット…『Peace Walkers』。
メグミ・レイナードさんとホウメイガールズの合体ユニット『食の恵』。
そして今は亡きさつきさんとレオナさんを欠いた、私とアサミが加わったユニット『ゴールドセインツ』。
影響の大小は違えど、みんな同じに落ち込んでる。

…私たちの立場は非常に微妙なところにいるようになり始めた。
ホシノアキトさんはまだ直接的に市民からの反発は受けてない。
でも常に良い方向にしか評価されてこなかった英雄の中の英雄だけに、
今までは表に出てこなかったホシノアキトさんを邪魔に思って居る人たちの反発が、
抑え込まれていた分が強く吹き出してしまう形になっていた。

主に、戦争を継続すればするほどもうかる企業、勢力が中心となって、
マスコミをけしかけているんだとは思うけど…。

なんでもここにいるアイドルグループは「バトルアイドルプロジェクト」っていう、
ホシノアキトさんの敵ににらみを利かせるためのプロジェクトだったってこの間聞かされたけど…。
こうなってくると逆効果になってるような気もしてきます。
何をしても、外部からのフォローもできないわけですから。
でも、護衛の観点からこうしていた方がいいという話もありますが…。

「…いや、カエンの言う通りだよ。
 本当は俺もそうしていた方が多少は楽になる。
 でもこのまま引っ込んだら、それこそ敵の思うつぼなんだよ。
 俺の様子を見るために誰かを殺したり、さらったりするかもしれない。
 
 …こっちからも、敵の様子を見る方法があればいいんだけど」

「ホシノ、君だけが孤立するつもりかい?
 それこそ敵の思うつぼなんじゃ…」

「それもそうなんだけど…」

ホシノアキトさんの考えを見抜いたのか、アオイさんは警告をしました。
…ホシノアキトさんは一人で全部背負う癖があるから支えなきゃって、
ゴールドセインツのみんなが言ってたけど…まさにそんな感じ。
でも、どうすればいいのかなんて…誰も分からない。
敵が見えないんだもん…。

「ホシノ、こんな招待状が来たんだが…」

「うん?」

「天龍と地龍、それに俺宛てにもだ」

北斗さんが会議室に入ってきた。
そして何通か、赤い封蝋が施された手紙を持ち込んで…。
送り主は…アクア・マリンさんから来たみたいですね。
四人ともそれぞれ手紙を開封してみて、唖然としました。


「「「「全世界統一・王子様決定戦の参加招待状!?」」」」


「「「「「「「「ええっ!?」」」」」」」


私達は全員変な声を上げてしまいました。
どういうわけかどういう事情かは分かりませんが…。
その手紙をいち早く再起動した地龍さんが読み上げると、全員が状態を理解しました。

文句なしの『世界一の王子様』と呼ばれたホシノアキトさんの人気にあやかろうと、
この五年ほどの間、国、事務所、個人法人問わず、
次々に『自称王子様』のアイドルは次々に世に出てきました。

さらに言えば「ホシノアキトを超える」ことを目指し、
取って代わることを考えたものは数知れません。

華奢な薄幸の美少年系、ビジュアル系は言うに及ばず、マッチョ、タフガイ、カウボーイ、etc…。
もはや色物と言って差し支えないほど、そのジャンルは広く広く広まっています。

しかしそんな対抗馬が居れば居るほど、逆にホシノアキトさんの評価は上がってしまいました。
何しろ、

「世界最強のエステバリスライダー」「格闘技・銃の腕も超一流」「ミステリアスパワーの使い手」
「興行収入ランキングを塗り替えた男」「戦争を止めた男」「人体実験に使われ、恋人を失った薄幸の美青年」。

そんな肩書を、追い落とせる人などいるはずがないので…。
と、なると、逆に今更「世界一の王子様を決定する戦い」に、なんの意味があるのか分かりませんね。

「…俺の手紙にだけ、一枚多めに入ってるな。
 ……。
 
 そういうことか…。
 
 俺がピンチの状況だからこそ、
 最強の王子様だともう一度知らしめるために、
 気を遣ってこんな大会を開催するつもりになったらしい」

……。
ホシノアキトさんは、一枚余分にはいった部分の手紙を読みました。
それによると『世界一の王子様』の座を危ぶまれている今こそ、
真の王子様は誰か、有象無象を倒して証明して、示して見せるのがいいと…。
そうしなければ弱みを見せてしまうことになると…。

そ、そんな理由で?

「…どうするの、アキト君。
 まさか出るつもり?」

ホシノアキトさんはじっと考えていたものの、すぐに頷きました。

「今更『世界一の王子様』の座なんてどうでもいいけど…。
 …敵の出方を見るにはちょうどいいかもしれない」

「何か仕掛けてくるかもってことよね…?
 危険すぎないかしら?」

「このままじっとしてるのも危険な状況です。
 今のままだと、何か敵が大きな手を打ってしまったらまとめて全滅ってことにもなりかねませんし…。
 だったらいっそのこと敵が狙いやすい状況を作って、様子を見ましょう。
 
 …もちろん、備えは万全にしますけど」

…ちょっと怖いですが、ホシノアキトさんの言う通りかもしれません。
ホシノアキトさんは殺気を感じる能力があるそうですし、
アクアマリンさんも、ホシノアキトさんに手を貸すつもりでしょうし。
準備するにも色々困らないでしょう、きっと。

「だったら、俺も出よう。
 …お前と久々にやり合えるんだったら出る価値はあるだろう」

「…手ごわいな。
 お前が出てくるってなると」

「当然だ。
 お前が料理にかまけてる間、俺はずっと鍛錬を重ねてきた。
 …せいぜい致命傷にならないように、勘を取り戻しておくことだな」

「ふ、手厳しいな」

…ひ、火花が飛んでます。
敵の様子を見るっていうのに、ずいぶん乗り気ですね、二人とも…。
北斗さんは、性同一性障害があるって噂を聞いたことはありますが…。
…そういえば北斗さんって、ボディーガードなのにそこらのアイドルより人気があるんでした。
ゴールドセインツに常に同行しているし、男装していることが多いのでメディア露出も多いです。
何気にゴールドセインツをむりくり手伝わされた時は、
動きがカクカクしすぎてギャップがあったりでウケてしまったり…。
だ、だから招待状がきたんですかね?王子様属性って感じはしませんけど。

「それじゃ俺も。地龍も出るよな?」

「うん、敵いっこないけどやられっぱなしでいるのもつまんないし」

ダブルドラゴンの天龍地龍兄弟まで…。
な、何かみんな火が付くようなことがあったんでしょうか?
男の人って、よくわかんないです。

「…あ、すまん。
 アオイの分もあった」

「僕も…?
 か、かませ犬になるのが目に見えてるのに…」

…だったら出なきゃいいんじゃないですか、アオイさん。
アオイさんも25歳のやや遅咲きのアイドルですが、ソロアイドルとしてはぶっちぎりです。
ホシノアキトさんをのぞけば、間違いなくトップレベルです。
しかしIFSも入れてないですし、格闘もできないですし、薄幸なタイプですし。
割と「永遠の王子様候補」って世間で言われてる程度にはモテてますし。
とはいえ、招待状の届いた人たちには勝てる要素はなさそうですけど…。
…借りにも連合軍士官なんですけど、それを感じないほどに華奢なんですよね、アオイさんは。

「いいじゃねぇか、別に。
 俺は招待状も来てねぇから、ホシノアキトをボコれる権利もねぇんだぞ」

……なんか剣呑としてますね、カエンさん。
でもバンド組んでるくらいだからそこそこ仲がいいはずなんですけど…。

…事情はともかくとして。
この『全世界統一・王子様決定戦の参加招待状』への参加は、四人決定しました。
アオイさんだけは辞退をするってことになって…。

…なんかよく分からないうちに、変なことが始まりそうです。
ああ、さっきまでの深刻な空気はどこへ…。



「こんな時に…バカばっか…だよな…。

 俺が一番バカだけど…」



















〇宇宙・火星⇔木星航路・ナデシコD・トレーニング室──リョーコ
…サブロウタが、あたしに会いに来なくなった。
夏樹暗殺事件の容疑者になってからずっと、私に何も言わずに会いに来なくなったのが気に入らなかった。
あれだけアピールしといて、冷たいもんだよ、ったく。
あれからナデシコCとナデシコDを行き来するのはルリとラピスとその護衛の月臣と枝織くらいのもんで、
用がない限りは厳戒態勢でいる、という暗黙のルールが生まれてしまった。
サブロウタはそれに従ったつもりなんだろうが、白々しいよ。
フるつもりがあるならあるで、ちゃんと一言あってもいいだろうに。ちくしょうめ。

だからあたしは無理してこっちからナデシコDに乗り込んだ。
ライオンズシックルの

ラピスに頼み込んで、わざわざラピスと枝織に付き添ってもらって、だ。
…痴話げんかになるのは目に見えてるのに、態々付き合ってくれた二人に感謝していた。
けど…。


「うおおおおおおおっ!!」


「いいぞサブロウタ!
 早くも体力を取り戻してきたようだな!」



入ってきたあたしたちに全く気付く様子もなく、
必死に組み手に打ち込んでいるサブロウタと月臣が居た。
サブロウタは髪を短く切り、染めていた髪も黒く染め直していた。
あたしはサブロウタの変貌に唖然とするしかなかった。

「すごいや…サブロウタさんって、ホントにすごい…」

あたしはぼそっとつぶやいたのが聞こえて、ハーリーの方を見た。
ハーリーも汗で髪がびしょびしょに濡れてしまうほどの練習をした後だった。
…なんなんだよ、揃いも揃って。


・・・・・。
・・・・。
・・・。
・・。
・。


それからニ十分ほど、ノンストップの組み手が続いた。
最後は月臣の手刀が寸止めされて、サブロウタが降参して終わった。
とんでもない組み手の後でその場にへたり込んだサブロウタ。
あたしは話しかけるのをためらっていた。
…別人じゃねぇか。
何が、あったんだよ…。

「ぜえ…ぜえ…あ…スバル…さん…」

「ッ!!」

あたしはサブロウタの他人行儀な物言いにカッと来た。
…勝手に口説きに来て、勝手に唇を奪っといてそれかよ!


ぱんっ!



あたしは躊躇なくサブロウタの頬を張った。

「お前…最低だな…」

「…無礼な真似をしたのは承知です。
 俺は…許嫁とすれ違って、袖に振られたことに傷ついて…。
 …自分の寂しさを紛らわせるために、女性とみだりに交際を繰り返して来ました。
 恋愛は相手の合意があるから、分かれてもお互い様で済みますから…。
 挙句の果てに、スバルさんにつきまとっていたのを利用されて夏樹さんまで死なせた…。

 最低だと…自分でもそう思ってます。
 だから…」

「違うッ!!」

違う、そんな言葉じゃない!
あたしが、聞きたい言葉はそんなんじゃない!
あたしが怒ってるのはそんなことじゃないんだよ!

「勘違いしてんじゃねえ、バカサブロウタ!
 あたしだって、お前のことは嫌いじゃねぇよ!
 
 …ッ!クソォ!
 あたしが怒ってんのはな…! 
 勝手に口説きに来たくせに、
 フりもしないで、つまんねぇ態度であたしを呼んだことだ!」

「…」

「自分のしたことが分かってんのかよ!?
 責任取りもしないくせに、他人の心を弄びやがって!!」

あたしはラピスと枝織、月臣が居るのも忘れてサブロウタに今までのことをぶつけた。
好き勝手にあたしをからかい、弄び、その気にさせてきたことを責め立てた。
ほとんどあたしがサブロウタに真剣に惚れちまっていたことを白状するような内容だったが。
サブロウタは正座で身を正して、ただあたしの罵倒を受け入れた。

「はぁ…はぁ…。
 …お前に、心残りのある許嫁があるかどうかなんて知るもんかよ。


 あたしは!
 
 お前に本気で、生まれて初めて、
 
 誰かを、本当に、す、好きだって…思ったんだよ!
 
 お前がそうした!
 そうなるように追い詰めた!
 
 あたしも本気で追いかけたくなった!
 
 
 応える気があるのかどうか言ってみやがれ、バカ!」



「…それは」

サブロウタは、はっきりと言えなかった。
…本当にどうしようもねぇバカだこいつ。
本当に自分本位のことしか考えてなかったのかよ…。
救えねぇくらいのバカだ…。
でも…イズミの言う通りだよな…惚れた方の負けだ。

……いや。

「…もういい。
 ファーストキス奪われたくらいで、
 いい歳した女が、勝手に盛り上がったってことで終わりでいい。
 
 …だからせめてちゃんと振ってくれ」

…サブロウタが即答できなかった時点で、あたしはもう失恋してるんだ。
あたしに恋愛なんて無理だったんだ…。
…別に、分かってたことだ。
不器用で、男に対抗することしか考えてなくて、
その癖、臆病で相手をちゃんと見ることもできないから…当然の結果だ。
不真面目な恋愛してるやつに、からかわれて全部終わり。
それがあたしの限界、なんだから…。

ラピスも枝織も、月臣も黙って見てるみたいだ。

「リョーコ、さん」

「…なんだよ」

「…俺、本当は見ての通り情けないてつまらない奴です。
 自分の弱さに気付いて、初心に帰ろうとしている今…。
 今までみたいにあなたをからかったりはしたくないと考えてます。
 
 あなたが好意をもったサブロウタは、もう死んだと思って欲しいんです。
 
 …それでも、いいんですか。
 俺みたいな、最低で、卑怯で、つまらない男が本当にいいんですか」


「…ッ!」


ぱぁんっ!



あたしは、もう一度サブロウタの頬を張った。
今度は逆の頬を。
サブロウタのバカさ加減が嫌いになりそうだ。
でも、そういうところが…。
本当はそういうやつなんだってところに、あたしは気付いてたんだろう。
そういうところが、なんかわかってたんだ。

根がバカで、正直で、そいであたしと同じで臆病で…それを隠すために強い振りをしていて。
どうしようもない部分があるけど、でもちゃんと強くなるための努力をしてる、
テンカワにも少し似てるところのある…そんなところが。

…あたしは好きなんだよ。

「…極端なんだよ、おめぇは。
 自信家のフリすんのか、極端に真面目ぶるのか、どっちかしかできねぇのかよ。
 …ったく。
 
 …お前は最低だったのをちゃんと反省して、自覚して何とかしようとしてるだろ。
 それに…あたしが自分からうまく言えない言葉も、気持ちも引き出してくれる。
 
 そういうところが好きなんだよ、あたしは。
 
 …なんも言わないで勝手に離れたのはムカついたけどな。
 言われねぇと、分かんねぇか?」

「あ……」

サブロウタは、小さく涙を流した。
その辺の女みたいに弱々しい、表情で。
…サブロウタも、悩んでたんだな。

きっと、いろんなことに…。


・・・・・。
・・・・。
・・・。
・・。
・。


それからあたしとサブロウタは、返事を保留することにした。
お互いの気持ちはほとんど決まったけど、サブロウタは許嫁に報告するつもりでいるらしい。
どうも許嫁のヤツはすでに別のヤツと結婚しているらしく、そんな必要ないだろと言いたかったが、
サブロウタの決心がついてくれるならそれでいい…ホントは意外と律義な奴なんだな、こいつ。
…元々グレてたのは神経質すぎる自分に嫌気でもさしたのかもしれねぇけどな。

──あたしとサブロウタの奇妙な恋愛関係が、始まりそうになっていた。














〇地球・都内某所・ラジオ局

『え~続きまして…コーナーが変わります!』

『A子と!』

『B子の!』


『『「かしらかしらご存知かしら?のコーナー」でぇ~~~~す!』』



『みんな~~~!
 元気だったかしら!?
 もう五年以上アキト様を追いかけてきた私達だけど、
 さすがにネタ切れ感が否めなくて、ついに先日打ち切りになっちゃったこのコーナー!
 でも、強力なスポンサーのおかげで何とか再開することが出来ました~~~~!

 粉砕、玉砕、だいかっさーーーーい!』

『ホントにアクア様様だわよね~。
 アキト様も、ネタ切れになるくらい出がらし状態なのに、
 ぜーんぜんファンの人気は落ちないわよねぇっ!』

『でもねぇ、例の「アギト」っておっかないライバルが出てきたそうじゃない!
 アキト様のクローンってことだけど、生意気にもアキト様の命を狙ってるって!!
 コピーの分際で、にくったらしいわよね~~~~!』

『でもでも奥様、アキト様もいろんなところでペテン師扱いされて、
 敵対してる人たちは勢いづいて、世論を動かそうとしてるわよね!
 こっちも小賢しいっていうか図々しいのよホントに!』

『さすがのアキト様も板挟みじゃ絶体絶命!
 それでもここまで起こった奇跡を考えれば、また生きて帰ってくるはずよ!
 
 ファンのみんな!最後の最期までアキト様を信じていきましょうねぇっ!』

『…しっかしまー、私達も調子がいいのかしら。
 最初は剃刀メール送られるくらいには辛辣にしてたのに、結局五年以上付き合っちゃうんだからねー』

『手のひら返しって笑うかしら?
 ちゃんと相手を見て、相手が悪くないって分かったらごめんなさいして仲直り。
 それくらいできなきゃ、恋も人生もうまくいくわけないでしょ!』

『あらら、ずいぶんいい子ちゃんよね。
 でも、そんな子だとモノホンのペテン師に出会ったらあっさり騙されちゃうんじゃないのかしら?』

『ちっちっち、モノホンのペテン師はペテンにかけたことも気づかせないのよ。
 そこそこちゃんと利益を与えて、損しない程度にして、
 自分の逃走経路を邪魔されないようにしてトンズラかますのよ。
 フラれて被害者ヅラして泣きわめいても、ごはんおごってもらった回数が多かったら、
 そりゃお互い様ってことになっちゃうんじゃないかしら?』

『…あらー、考えてみればそうかもしれないわねぇ。
 今時、「女の子だからオゴって」って平然としてたら愛想尽かされて当然なのかしらねぇ?』

『…で、ちょっと脱線したけど。
 
 アキト様に解放の鐘が鳴るのを祈ることしか私達にはできないんだから!
 
 どんなことになっても、アキト様の言う通り、

 みんな、自殺なんかしちゃダメよ!』

『アキト様のお願いを裏切ったら、ファン失格よ!
 落ち目になろうと、個人になろうと、大事な思い出!
 
 本当のファンだったら…。
 

 アキト様の言葉を、姿を思い出して、しぶとくやってくのよ!
 
 人生は、最後の武器なんだからっ!』


『ご存知かしら!

 
 最後の別れと思ってもね!


 いつかはまた出会うのよっ!


 諦めたらダメなんだからっ!』




『かしらかしら!』



『かしらかしら!』




『『ご存知かしら~~~~~!!』』
















〇???
所在の分からない、隠しドック。
かろうじて機動兵器を一台整備できる程度の小さな格納庫に、赤いブローディアがたたずんでいた。
その前に、蔓のように無数のコードが纏いついた白いパイロットスーツを着込んだアギトが居た。
彼は目を細めて、赤い龍王騎士を見つめた。

「次の戦いで、すべてが決まる。
 …結末はどうあれ、これで世界は変わるだろう。
 出番は近いぞ…。

 ──いけるか、ワレモコウ」

アギトはワレモコウと名付けられた赤いブローディアをそっと、撫でた。
まるで愛おしさすら感じているように…。
























〇作者あとがき
どうもこんばんわ、武説草です。
今回は二件の暗殺事件後の彼らの様子を書いてみました。
ちょっとずつ敵の姿も見え隠れ、果たしてアキトは敵を引きずり出すことができるのか?
しかし少なくない影響を与えてしまっている状態なので、
ピンチなのは継続しつつ~な状態ですね。
そいで突拍子もなく始まる『天下一王子様トーナメント編』(多分何話もつづかない)。
これを開催する予定を考えてた時、だれがいいかって考えたらやっぱアクアしかいなかった。
そういうキャラを別で知ってたんで、前例あるしと採用。
アクアって、何かと便利な奴…。
そしてシリアスな空気がそんなに続かないのもナデシコっぽいということで。

ってなわけで次回へ~~~~~~~~!!













〇代理人様への返信
>うん取りあえずあれだ。
>死ね。氏ねじゃなくて死ね。>編集長
思い上がりまくってる編集長を書いてみたらこんなんなりましたw
いやぁ、ホントにこの編集長は死んでほしい人に仕立てたかったんで嬉しいですw

>犯人が捕まったのは良かったが、ラピスも人間離れしてるなあ・・・w
きっかりアキト半分分くらいの戦闘能力として描くとこうなりましたw
ちょっとやりすぎかとは思いますが、今回のラピスはアキトの代理人ということですね。














~次回予告~
アクアですわ。
アキト様もちょっと落ち目扱いされているけど、あの人に追随できるような方は今だいません。
おじいさまの目論見も気になりますけど、
ここでアキト様の格の違いというのを見せつけて下さいませ♪
あ、例のアギトってクローン、説得出来たらウチで雇いたいですわね♪
アキト様の代わりにこれ以上ないくらい役立ちますし。
色々楽しみです!


あったかくなってきたのでそれなりに筆が進みやすくなってきた作者が送る、
アクアってレギュラーにすると大変だけど突然出しても違和感ないな系ナデシコ二次創作、












『機動戦艦ナデシコD』
第八十七話:die-hard&die-hard -頑強な抵抗者と頑固な保守主義者-その5
















をみんなで見て下さいませ!



























感想代理人プロフィール

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代理人の感想
うーん世の中クソだ。
そしてアクアの頭の中は別の意味でクソだwwww
なんかこう・・・あるだろ!w


>きっかりアキト半分分くらい

ラピス「私、能力値は平均値でって言ったよね!?」

こうですねわかります(ぉ


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