第2話Bパート「Astro emotion」





















南アメリカ大陸のとあるスタジアム。

その屋内試合場で着々と準備が進む中、シーラは持っているトーナメント票と睨めっこしていた。

かなり険しい表情をしている。厳しい勝負になっているようだ。

「ん?どした、シーラ」

「眉間に皺寄ってるわよ?」

そこに二人が現われた。

「あ、いけない」

ライザに指摘された眉間をゆびでちょいちょいと揉み、シーラは険しい表情を少しは和らげる。

しかし、以前厳しい表情で二人の顔を見た。

「・・いえ、実はですねー。

個人参加なんですが、このチーム、侮れませんよ」

「どれだ?」

彼女が指差す先にはこんな事が書いてあった。

ちなみに、次に対戦するチームのようだ。

『チーム名・ウリバタケ研究所。

出場ロボット名・リリーちゃんダブルツインマークUセカンドツヴァイデュオ二式』

「・・・2が沢山だな」

呆れたようにヒロシゲはシーラの方を向いた。

だが、シーラは唸りながらどうするか考えていた。

「でもあのウリバタケさんですよ?

想像も出来ないギミックを搭載してくるはずです」

「ついでに、こっちは有給でやってるのに、あっちは趣味の時間でもやってるって事だな。

・・・まったく、頭が上がらねえな」

そしてベンチにあらかじめ置いてあったスポーツ・ドリンクをくい、と飲む。

「・・・もっとも、ウリバタケさんだからこそ、訳の分からない物を出してくる可能性もあります。

一代目のリリーちゃんはあの同盟に破壊されたそうですけど・・・」

「なんだよ、『あの』同盟って」

「あ、ヒロシゲさんは知らないんですよね。

アキトさんが20人くらいの女の人に好かれているからって混乱が起きないように好きな人で組んだ同盟です。

・・・って言っても、やってることはアキトさんが他の女の人に取られない様に管理するだけですけど」

「ほー・・・」

「とにかくです。ウリバタケさん達がどういうロボットを出してくるかによって対処も変えなければいけません」

「でも試合のビデオも何もとってないからいつも通り作戦は行き当たりばったりなんだろ?」

「・・・そうですけど」

「なら、大丈夫だろ。

行こうぜ」

そして彼らは試合場に歩き出した。

『さあ、本日のロボットバトル決勝大会準決勝!

戦神が乗っていた戦艦、ナデシコの名メカニック対決!

「ウリバタケ研究所」VS「Heart of bullid」の試合が始まろうとしています!

・・・あっ!』


ぱしん。


リングのど真ん中で司会者が喚き、アナウンスが響く中、ウリバタケはつかつかと近寄ってマイクを引っ手繰った。

『シーラちゃんよぉ、今日はお互いに敵同士だ。

遠慮なくやらせてもらうつもりだ。

・・・何より』

ウリバタケはシーラを指差し、叫んだ。

『ナデシコNO.1のメカニックは俺だ!

そこんとこをはっきりさせてもらおうじゃねえか!

情けで負けてもらおう何て思うんじゃねえぞ!』

言い切ると踵を返し、司会者にマイクを返して自分のセコンドに戻った。

司会者は呆然としながらマイクを口元に近づけた。

『な・・・・。


なんと、前代未聞ッ!


静かな勝負の世界だと思われていたロボットバトルで!

こんなマイクパフォーマンスをやってのけた!

プライドです!誇りです!技術屋魂です!漢です!


ここに来て見せつけたぁ、ウリバタケ・セイヤッッ!!』



ウオオオオオオオッッ!!



司会者の興奮気味のアナウンスに煽られて、観客たちもいきり立つ。

そして、シーラもつかつかと司会者の前に立ち、手を開いてマイクを寄越すように促す。

それに気付いてマイクを渡すと、彼女はその小さい唇を動かし始めた。

『・・・ウリバタケさん、私は・・・あなたの誇りにも、経験にも、勝てる気はしません・・・』

打って変わって静かな囁きに会場は静まり返った。

『ナデシコでウリバタケさんに出会い・・・メカニックとしての誇りを教えられました。

でも・・・私は、あなたを超えたい・・・!』

視線をウリバタケに向け、背筋を伸ばして口上を述べる。

『あなたに勝って、私は存在の証明をして見せたい・・・!

あの男に・・・そして、この世界に!

だから・・・!

私は、今、この瞬間に、全力をぶつけます!

この胸に息衝いた気持ちを!

弾丸に変えて!

あなたに!

荒々しいまでにッ!

心の弾丸を放つッ!!』

司会者にマイクを投げつけると、シーラはセコンドの方に戻った。

『おおおぉぉ!熱い、熱いぞぉ!

この二人、かくも熱い!

ナデシコと言う艦で出会った二人!

そして今、プライドをぶつけ合おうとしている二人!

師として誇りを教えたウリバタケ・セイヤ!

弟子として誇りを身につけたシーラ・カシス!


さあ、ぶつかりあえ!


その誇りを胸にぃーッ!!」


オオオオオオッ!!


「・・・は、青臭い台詞言ってくれるな」

盛り上がっている会場を尻目に、あくまで冷静に努めるヒロシゲ。

腕を組んでウリバタケの方を見ている。

あちらのセコンドには整備班の人間が数人。家族は居ないようだ。

「・・・セレス、お前、自信はあるか?」

背中を展開して整備を受けているセレスは横に首を振った。

「・・・正直、ありません」

「何言ってるの、シーラちゃんを信じられないの?」

「いえ!そうじゃなくて・・・何て言うか・・・。

私・・・同じロボットを壊すのが・・・怖い・・・」

「・・・!」

シーラはセレスの呟きに反応した。

そして、セレスの背中をパタンとしめた。

「戦っている時は感情が邪魔だ、邪魔だって思えるのに・・・。

今、こうして戦うのを待っている間は・・・何故か・・・。

いざとなったら躊躇ってしまうんじゃないかって思って・・・」

「・・・セレス、そんなに嫌なら棄権してもいいよ・・?」

「・・・いいえ、私は・・・お母さんの意思に従うだけです」


きゅっ。


自らのシューズの靴紐を締め、セレスは立ち上がった。

「行って来ます」

「セレス・・・」

「私はロボット・・・ロボットの意味は奴隷だから・・・」

「!?セレスっ!」

セレスがステージに立つとゲートが締まる。

そしてディストーションフィールドが展開され、一切の侵入が不可能となった。

「あなたに隷属する。

そして、あなたの願いを叶えるのが・・・私のこの世に生まれて来た意味だから・・・」

「セレス・・・何で、そんな風な言い方を・・・」

「もういいでしょう?

ここからは戦うしかないんだから・・・」


びーーーーーっ。


セレスが言い切ると、試合開始のブザーが鳴り響いた。

シーラはセレスに何も言えないで考え込んでしまった。

(感情プログラムが・・・進化してる?

確かにウリバタケさんに見てもらったし・・・ルリちゃんも弄ってくれた・・。

ブロス達より低性能だから極端な判断をしてるけど・・・人間に近くなってる・・・)

「おい、シーラ!セレスが押されてるぞ!」

「え・・?あ!い、いけないセレス、セレス!」






−セレス−

私は・・・ロボットなんだ。

恋も、平和な時間も・・・ある訳がない・・。

お母さん達は、それを欲しがってる。

だから・・・私はここを死に場所にしたい。

私は・・・戦うことしか出来ないから・・。

私は邪魔にしかならないから・・・・。

「リリーちゃん、やっちまえ!」

「了解です」

話に聞いていたリリーというロボット。

見た目はマネキン同然だと言っていたけど、そうでもない。

見る限りは・・・私に近い、アンドロイドモデル。

だけど、完全な人間の四肢は形成されていない。

足はついてない、けどホバリングによる高機動は見て取れる。

人間の動きを基本とした私には少し荷が重い気がする。

今までは一撃を中心にした大型機だったからシェルブリットで何とかなったけど・・・。

今回はそうも行かないみたいだ。

・・・AIは積んであるのだろうか、私のように感情はあるのだろうか。無ければ少しはやりやすい。

今まで壊してきたロボット達はみんな捨てられるのだろう。

私も、きっとそう。

今この前に居るリリーだってそう。

あの、元々は人間だったって言うブーステッドだってあるいは−。

そういう運命にあるからこそ私は・・・壊す事をためらってはいけない。

壊される事を・・・恐れていてはいけない・・・。

「あなた、言葉は分かるのよね?日本語で」

ごちゃごちゃ考えていた隙に、リリーは一方的に話し掛けてきた。

どうやら・・・私と同じで感情はある。

・・・・いよいよやり難くなって来た。

「ええ、分かるわよ。

でもここは決闘の場所じゃない?

社交場じゃない、おしゃべりがしたいんなら帰りなさいよ」

「ところがどっこい、そうも行かないらしんだね。

棄権はセコンド側しか出せないし、会場が許してくれそうに無い。

−何より、こういう場所に立ったからには戦うしかないでしょ?」

「・・・そんなこと」

「分かってる」

「なら」

「けど、あなたには覚えておいて欲しいの、人間と共に生きたあなたに。

私みたいにこの大会の為だけに作られたロボット達の事を。

人間にも色々な人間が居るように、ロボットだって・・・」

「あなた・・・」

「握手・・・」

「ええ・・」


ぎゅっ。


私は歩み寄り、手を差し出して握り合った。

「あたたかい・・・」

「・・・生憎、私はセンサーが多くないの。

お父さんは、私を戦闘用に作ったから・・・ごめんね」

「いいよ・・・心がある、それだけ分かれば・・・」

この温かさは・・・人間とロボットじゃ分からない。

人間と人間同士じゃないと分からないように、ロボットとロボット同士じゃないと分からない温かさ。

リリーだって、きっと分かってる。

肌で感じられなくても、ロボットにも心って言うものはあるんだろうと・・・理解できた。

この気持ちが誰かに否定されるのは嫌だけど、仕方ない。

そう・・・ロボットだから、涙も流さない、戦いに徹する、そして、権利は無い。

私達の存在意義は・・・これしかないんだから・・。













二人は、ロボットバトルのステージ上のはずの場所で、どこか異質な空間を築いていた。

試合の前に固い握手をするという、今時は流行らないかもしれない古臭い行為をしていた。

だが、それがかえって本物の人間より人間臭く見えた。

「おい、握手してるぞ」

「・・・あいつら本当にロボットか?」

「はやくやれー!」

会場がざわめき、野次が飛んでくる。

リリーは困惑したように眉をひそめてセレスを見つめた。

「・・・やっぱり、止めた方が良かったかな」

「馬鹿な野次馬は放っておこう。

・・・じゃあ、力比べから始める?」

セレスの提案に、リリーは眉を潜める。

「ここから?」

「ここからよ」

「・・・いいわ、やりましょう」

呆れたようなリリーの妥協に、セレスは心底嬉しそうに答えた。

「なら遠慮なく」


ばんっ。


二人は一度握手を交わしていた手を弾き飛ばし、改めて両手で組み合う力比べの体勢に入った。

プロレスラーならば似つかわしいかもしれないが、二人は細腕、片方は足すらない女性を模ったロボットである。

似合わない構えをとったまま、重苦しい金属の喘ぎ声、モーターの咆哮が響き渡った。

観客達はそれを暫し静観していたが、やがて元の騒がしさを取り戻す。

「やれー!」

「・・・いわれなくったって」

「やる気だよ・・」

一人の観客の声を聞いて二人は呼応する。

「こっちは制限時間が・・・15分しかないんだから・・・」

そして、リリーはやや苦しい声で話し掛けた。

どうやら基本的に連続的なパワー運動は苦手のようである。

「じゃあ、こっちが15分粘れば自動的に勝ちって事?」

「ええ、そうよ。

そうするつもり?」

「冗談」

にっこりとセレスは笑う。

不敵で、どこか嬉しそうな−強いて言えば、スポーツマンが最好調のコンディションで試合に向かうような。

そんな嬉しそうな笑顔で。

だが、同時に自信に満ちた、勝利を確信しているような笑顔で。

「そんなことをしたら失礼だよ。

何より、勝った気がしない」

「もう勝ったつもりでいるの?」

そのセレスの表情を見て、不服そうにリリーも返事を返した。

それと同時に少し力を入れて、怒りを表すようにした。

「そういうつもりも、全く、全然、無いっ。

ただ・・・そろそろ次に行こうかと思ってね」

「次・・?」

一瞬、リリーは訳がわからなくなった。

今、明らかに自分が下に立っているのに、セレスが何故このまま攻め立てないのか。

それが理解できずに、一瞬フリーズしたように止まる。

「ホバー・・・あなたにはそっちの方が有利でしょ?」

「・・・・あなた」

リリーが、一瞬困ったような顔になったが、すぐに小さい笑みを浮かべた。

それはセレスの言いたいことをやっと理解した事を意味する。

彼女は、自分が勝るポジションから始めたのだから今度はリリーに譲ろうと。

仕切りなおし、そこから勝負をはじめよう、というのだ。

「なら・・・手加減はしないから!」


ぎゅっ。


リリーはセレスの腰に抱きつき、下半身のバーニアを全開にした。


どごっ。


「くぅっ!?」

セレスはリリーのバーニアのパワーに驚きを感じた。

確かに基本バーニアのパワーで勝って居る事は確かだろう。

シェルブリットとなれば逆に超える事も出来るだろうが、状況が限定されすぎる。


ぎゅりっ・・・ぎゅりりりぃぃぃぃぃーーーーっ!


足元をすくわれないように踏ん張るものの、後にずり下がってしまう。

スニーカーの靴底に使用されているゴムが摩擦で煙を立ち上らせる。

嫌な匂いが辺りに立ち込めるが、二人にはそれは察知できない。

やがて、セレスが踏ん張りきれずに吹き飛ばされる形で二人は低空で飛行する。

ステージ周りは強力なディストーションフィールドで囲まれており、直撃すればかなりのダメージになる。

さらに、ステージの中心に吹き飛ばされてしまう為、相手を優位に立たせてしまうだろう。

しかもこの場合、直撃した後、リリーが押し続ければセレスのボディは間違いなくフィールドで削り取られる。

そうなってはギブアップか、さもなくばフィールドに全てを消滅させられてしまうだろう。

「けど」

それでもセレスは余裕を崩そうとはしない。

体勢を整え、リリーを抱え、跳躍した。

強引に方向を上に向けて、逆さのもず落としのような体勢でステージ上部のフィールドに当てるように。

「・・・!?嘘ッ!」

「心中する?」

「冗談・・・言って・・・!?」

バーニアを停止させた次の瞬間、リリーは驚愕した。

いつのまにか、セレスが抱えていた腕を外し、首投げのように二の腕をリリーの首にかけていたのだ。

いまだ垂直に突っ込んでいっていた体を押し戻すかのようにセレスの右肩のフィンから大きい炎が上がる。

「捕まえた・・・!」

(捕まった!?)


ごおぉ・・・。


首に引っ掛けたままの体勢で、二人は地面へと急降下した。

「衝撃の・・・ファーストブリットォォ!!」
























(負ける・・!?)

落下していく中、リリーは一抹の恐怖を抱いた。

(私が・・・壊れる・・・!?)

この時の為に生まれた、壊されても後悔はしないと誓っていたのに。

(壊されたくない・・・)

地面に近づいていく中、彼女は確かに恐怖していたのだ。

(死にたくない・・・)

心を持った故に、恐怖してしまった。

(死にたくないよ・・・)

戦う為に生まれてきたのに。

壊す為に生まれてきたのに。

彼女は間違いなく恐怖していた。

壊れる事を、死ぬことを。

(・・壊れたらどうなるんだろう?私はどうなるんだろう?捨てられるのかな・・・)

死んだあとの事も考えた。

(・・・・誰からも、忘れられちゃうのかな・・・・・セレスは覚えててくれるかな・・・)

自分という存在を、忘れて欲しくなかった。

そして−。


どすん・・・っ。


コンクリートの床が砕かれ、大きな煙が立ち昇った。

そして煙が晴れてくるにつれて、リリーは自分が砕かれて居ないことを認識した。

「い、きてる・・?」

「生きてる?

ばっかねぇ・・・これくらいじゃ私達は死ねるわけないじゃない」

セレスが声をかけると、リリーは周りを見回した。

確かに死んではいない。

だが視界が非常に悪かった。

働いているメモリは30%と表示されている。

今の一撃で、先にシェルブリットが直撃したのはコンクリートだ。

しかし、本来なら今の速度であればリリーも粉々に砕かれていてもおかしくは無かった。

セレスが、とっさに見えない程度に残った左腕でリリーを庇っていたのだ。

無論、その程度では減速は充分ではなく、それでもかなりのスピードで叩きつけられた。

「どう、して・・?」

「・・・あなたみたいに心があるのに・・・完全に壊せないもん・・・」

彼女は頭がぼやけて、返事が出来なかった。

電力の供給ラインもかなりが切断されていた。

だが、残りの30%をほとんど使う事で理解できた。

自分と同じで、死ぬのが怖いから、壊したくなかった。

それだけだった。

「あ・・・」

「ごめん」

リリーは何かを言おうとしたように見えたが、その目が閉じられると、動かなくなった。

修理不能というほどではないが、戦闘不能だろう。

「・・・」

セレスは動かなくなったリリーを抱き上げ、ウリバタケの方のコーナーに歩いていった。

勝負の完全決着で観客達は盛り上がっていたが、彼女はその中で、唯一静かだった。

そして、ウリバタケの前にリリーをそっと横たわらせた。

「私の・・・勝ちです・・・」

「・・・ああ」

どこか悲哀に満ちた感じで彼女はウリバタケに宣言した。

それを受けてウリバタケも深く頷いた。

応じるように彼女も深くお辞儀をした。

すると、自らもシーラ達の元に戻った。
















会場の隅で、腕を組んでにやついている男が居た。

傍から見れば、自分に向けられたら気分を害するような、纏わりつくような嫌な笑みである。

しかし、観客達は試合のほうに夢中で気付いたりはしない。

「くく・・・甘いな。

作り主が大甘なら戦い方までとことん甘い。

せめて容赦なく戦えるようにすればまだ救い様があろうに」

「リチャード様」

一人でぼやいていたリチャードに、声をかける男が一人居た。

「何だ」

「我々の目的は別にあるはずです。

こんな所で時間を浪費しては」

「そんな事は分かっている。

だが、ここで急いた所で急に勝ち目がある訳でもない。

かえって、娘の技術でも見て、いい部分を盗んだ方がいいというものだ」

「・・・はっ」

「それより、『しぃ』の調整は終わったのかしたのか?」

「いえ、現在も続いております」

「ならばお前は戻っていろ。

私に説教をしている場合ではないだろう」

「了解しました」

男は慇懃無礼に礼をすると、踵を返して歩いていった。

「シーラ、お前のロボットは私の『しぃ』に勝てるかな?」















その夜−。

シーラはすうすうと眠っていたが、セレスは眠れないで居た。

誰かに電源を落としてもらえば手際よく眠れるのだが、それをしない。

今は電源を切ってくれるシーラが眠っているし、そもそも彼女が電源のオン・オフはほとんどしない。

それは、人間らしく居て欲しいというシーラの気持ちの表れでもあったのだが、

その気持ちに反してセレスは今日、自分をあくまでロボットだと主張した。

故に、シーラとセレスは気まずいまま、宿に戻っていた。

そして、彼女はそれに悩んでいた。だから眠れないのだ。

「・・・」

セレスはぼんやりと月を見上げる。

その姿を見てどこの誰が彼女をロボットだと看破できようか?

ただ一つ、人間らしくない場所を挙げるとすれば、その瞳である。

暗闇であると微弱ながら瞳の色である赤に光る。

まるで彼女のモデルとなった吸血鬼のように怪しく光る瞳だ。

満月が彼女の姿を照らす。

すると、月光を遮るように人影が入っていた。

それにハッと気付くと、光が少なくて彼女のカメラでは誰なのか捉えられずに居ると、

聞きなれた声が聞こえて来た。

「セレスちゃん」

「ライザさん?どうかしたんですか?」

「あなたと同じ理由かもよ」

「はあ・・」

テーブルと一緒にあった古びた椅子、セレスも腰掛けていたそれに自らも腰掛けると、その瞳を覗き込む。

「眠れないんでしょ?」

「そうですけど、ライザさんも?」

「そうね。

けど、理由は分かってる。

心のどこかで考え事をしたいと思ってる・・・だから眠れない。

だからどんどん頭の中に考えなきゃいけないことが浮かんでくるの」

そう言うと、ライザは頬杖をついて空を見上げた。

「・・・例えば?」

「例えばね、今私はここに居ていいのかな、シーラちゃんの邪魔にならないのかなって」

「・・・私も、そんな事を考えていました」

セレスはあまりいい気持ちではなかった。

自分のようなロボットが、ライザと同じ考え方をして居る事に、思い上がりをしていると思ったのだ。

しかし、彼女の考え方とは全く正反対に、ライザは小さな笑顔を浮かべて、セレスを見た。

「そう。

私達、似たもの同士ね」

「そんな風に言わないで下さい!」


だんっ。


セレスは大声を張り上げて机に自らの掌を叩きつけた。

「ちょ、ちょっと静かに」

ライザはシーラが起きないかどうか心配しながらセレスをなだめた。

セレス自身も、今が夜で、シーラが眠って居る事を思い出し、認識すると、静かにした。

「はっ、す、すいません・・・。

でも・・・私みたいなロボットと自分を一緒にしないで下さい、ライザさん・・・」

「?どうして?」

「だって、ライザさんはロボットじゃないのに・・」

「けど、思ってることは一緒なんでしょ?」

「・・・」

セレスは黙り込んでしまった。

それを気にかけないように、ライザは畳み掛けるごとく言葉を繋いだ。

「確かに、私は人間で、あなたはロボット。

だから違う、全く別で、あなたの方が下?

そんな事無い、あなたも私もシーラちゃんを大切に思ってる、シーラちゃんと居たいと思ってる」

「・・・はい」

セレスは小さく頷いた。

まだ不服そうなニュアンスのある返事だが、明らかに納得の意を含む返事である。

それを見て、ライザは話を続けた。

「・・人間だって、ロボットだって関係ないし、それぞれ考え方だってある。

だけどシーラちゃんにとって邪魔になるかどうか決めるのは私でも、あなたでもない。

シーラちゃんなのよ」

「・・・」

「考えているうちに私にも一つの結論が出たの。

私もあなたと同じように邪魔になるかもしれないって思ってる。

それでも、私はそれ以上にシーラちゃんと一緒に居たい・・・。

シーラちゃんが邪魔に感じた時に居なくなる、それで今は何も考えないでいい・・。

そして、シーラちゃんと居る事で得られる人間的な成長がある。

そういう、この気ままな自由も、時間もある、今までで一番恵まれた場所なの。

それが私にとってはとても尊い」

「・・・」

「・・・勝手な思い込みとは言え、テツヤは私に大きな存在だった。

だけど、テツヤと共に居た世界は決して自由じゃなかった。

限られた場所だったから、テツヤしか選択肢が無かっただけなのかもしれない。

私もシーラちゃんみたいに誰かと恋をしてみたいってずっと思ってたけど、テツヤしか選べなかった。

テツヤ自身は別にそんな事一言も言わなかったし、出て行くのも自由って言ってたけど、

彼が私を思ってくれなくても、思ってくれるようになる、そう願いつづけてテツヤを見ていた。

・・・彼がそういう思いに答えてくれるかどうかなんて分からなかったのにね。

そういう、束縛だけの世界から抜け出させてくれた、

私に、私だけの人生を歩ませようとしてくれるシーラちゃんの気持ちが嬉しくて、

考えていくごとに、シーラちゃんが私を邪魔に思う事なんてないんじゃないかって気持ちが強くなる。

それに甘えてるんだと思う。

でも、私は・・・」

「・・・ライザさん」

セレスはどこか悲しいような、微妙な表情を浮かべた。

ライザはいつもシーラの近くで、大人の女性らしく、静かに、そしてクールに振舞っている。

そんな彼女の心の柔らかい部分の露呈を、彼女は意外に思うと共に、人間が人間を思う気持ちの難しさを、

シーラのライザに対する思いの強さを知った。

それは彼女にとって、晴れ晴れとした納得の気持ちは招かなかったが、

それでもライザに対する心配の気持ちはぼんやりと解消されたのだ。

「・・・私は、ここまでしてくれるシーラちゃんがあなたに何の思いも抱いていないなんて思えない。

少なくとも、私はシーラちゃんも、ヒロシゲも、あなたも家族なんだと思ってる」

「・・家族?」

普段聞きなれない単語を、ライザの口から聞いて首を傾げるセレス。

「口にしてなくても、そう思ってる。

他人とか、自分より格が下とか思ってない。

今まで、大切な人が居なかった私でも、はっきり分かる。

あなた達は、大切な、一緒に人生を歩んでいる家族」

「・・・・」

家族という意味が、頭の中の辞書データとうまく合わなくて理解しきっては居ないが、

ライザの真摯な態度が、セレスに納得を促した。

セレスはその後も、月を眺めて考えつづけていたが、ライザは眠るといって部屋に戻った。

セレスには全く聞こえていなかった。

ライザはシーラの体温で温まった布団に入ると、心地よさそうに、眠りに落ちていった。

そして、夜が更けていった。




























わあああああ・・・・・。


ドームが歓声で揺れる。

人間とは、些細な他人事でも興奮するもので、今もこうして意味も無い声を上げているのである。

地が割れんばかりの音量を浴びながら、ステージの上で司会者が大きく息を吸い込むと、声を張り上げる。

「さあーーーーッ!

最終試合が始まろうとしています!

『Heart of bullid』VS『RED CROWS』!

片や大戦中に多大な戦果を上げたエステバリスのネルガル!

片や大戦中に連合軍を苦しめつづけた虫型戦闘機のクリムゾン!

どちらのメカニックが勝っているのか気になるところです!」

「どうして人の命を奪う戦争の事をああいう風に大っぴらにいえるんだろう?・・・・・・・馬鹿みたい・・・」

やかましいアナウンスを聞いてシーラはボソリと呟く。

曇り気味の表情でセレスのシェルブリットの調子を見ていた。

「馬鹿は放って置け。

気持ちは分からなくもないけどよ。

−俺達がそれに関わってないとは言えないからな」

ヒロシゲが彼女の心中を察したのか、フォローを入れる。

だが、あまり効果が上がったわけではなく、まだ表情は曇っていた。

「・・・はい」

しょんぼりとした様子でシーラは作業の手を止めた。

すると、セレスの服を調えていたライザが何気なく肩を叩いた。

「気にしないで、シーラちゃん。

刃物だって作った時は物を切って糧にする為に使ってたけど、それがいつしか人を殺す為の道具にされた。

使う人によって物は幾らでも変化するものよ」

「・・・」

「ああ、そうだな」

シーラが応えないので、ヒロシゲがほとんど取って代わるように返事をした。

「シーラ、何も悩んでるのはお前だけじゃねえ。

俺も、ライザも、それからセレスだって悩むだろ?

お前は何も悪くねえよ」

「・・・はい」

ヒロシゲはセレスの右腕を診てしゃがんでいたシーラの頭をぽんぽんと叩いた。

どことなく、安心感を感じたシーラは、それでもまだ迷ったような顔を上げた。

そして、彼がステージのほうを指差してもう一言、継いだ。

「そうやって悩めるうちは大丈夫だ。

−けど、目の前に居るアイツは、人に何したって悩む事は無いだろうよ」

「・・・・・!」

シーラの胸の中に、言い得ぬ感情が渦巻いた。

その視線の先にはステージの上で何か審判と押し問答しているリチャードの姿があった。

かつては優しかった父親だったが、今は自分達の命を奪おうとした敵だ。

(・・・私はまだ断ち切れてない。

私を縛る運命も・・・あの親父の因縁も・・・)

彼女は、自身の心の曇りに、どこか不快感を感じた。

自分の目の前に居る三人を見つめる。

心配そうにこちらを見ていた。

(そうだ・・私は一人ぼっちじゃないんだ。

ヒロシゲさんも、ライザさんも・・セレスだって居るのに・・何を不安になってるの?

まだ戦える・・・まだまだ止まらない!)

それを認識すると、彼女は大きく頭を振って気持ちを切り替えようとした。

そして視界が少しぶれた後、安定すると、不安感は引っ込んでいた。

セレスの右腕をぽん、と叩くと、彼女は立ち上がった。

「・・・セレス!行こう!」

「はい・・!」

シーラはセレスを舞台に送り出すように背中を押しながら歩き出す。

そして、耳元で呟いた。

(それに・・・)

「後ね、セレス・・・」

「何です?」

「昨日、ずっと気まずくって何も話せなかったけどね・・・」


ぎゅ。


シーラは急にセレスを抱きしめた。

「あなたはロボットなんかじゃない、奴隷なんかじゃない・・・。

私の大切な・・・家族だよ・・?

だから・・・もうあんな風に言わないで・・・」

「・・・お母さん」

「行って来なさい、セレス。

それで・・・必ず、帰って来て!」

抱きしめていた腕を離すと、大きく息を吸って、シーラは叫んだ。


「ガンバレーッ!」


鼓膜を持たないセレスは、耳を痛める事は無かったが、それでも大音量の応援に少し、戸惑った。

しかし、それは彼女を送り出す気持ちの大きさの表れでもあった。

「・・・いきますッ!」

そして、彼女は舞台に上がった。

「・・・ライザさん、ありがとう。

セレスが、あんな風に悩んでたなんて私・・・分からなくて・・」

「私はたいした事はしてないわ。

背中を押してあげたのはあなたでしょ?」

「セレスがこれで少しでも自分を大切にしてくれると嬉しいんですけど・・・」

シーラが寂しげな顔をして話すのを見て、ライザは優しく呟いた。

「それなら、あなたもセレスちゃんが帰ってきたら、何か望みを聞いてあげなさい」

「え?」

「人に何かを望むなら、自分も相手に望まれた事をしなければいけない。

−いわゆるギブ&テイク、等価交換ね。

それが、もっとも単純で原始的な人間同士の信頼関係よ」

「・・・はい!」

シーラが、声は大きくないが、はっきりとした返事を返した。

一見すると、行動全てに見返りを求めてしまいかねないライザの発言だが、

彼女の言った事は実に理に適った事実なのだ。

ただ生きているだけの動物ですら弱肉強食のみでは生きていく事が出来ず、何かに協力を求めている。

恐竜が絶滅した理由の仮説に、植物との折り合いをつけられなかったという説がある。

種を含む果物は草などよりカロリーが高く、猿などが進んで食べた。

果物は猿に種を運んでもらい(種は捨てられるか糞から出るかする)代わりに、果実を食べさせた。

草食恐竜はカロリーの少ない草や葉を食べていたが、やがて森は減り、

そこに巨大隕石が落ちて長い冬、氷河期を迎えてしまい、草が無く絶滅してしまった。

当然、草食恐竜を主食としていた肉食恐竜は絶滅した、という説。

つまり、子孫を残す意味で、果物と生物がギブ&テイクの関係にあったように、

人間のような知性を絡んだ信頼関係とは違うが、直接的な意味では間違いなく同じなのだ。

−そして、セレスは舞台に上がると、天井を見上げた。

目を細めながら、とても眩しい照明を見つめる。

訝しげな顔をしながら、セレスは思う。

(・・・そういう風に、私を思ってくれている、そして帰って来くることを望んでくれる・・ロボットのはずの私を・・・。

けど、それは大きな矛盾の上に成り立っている。

家族を、こういう場所に放り出す事は無いのだと思う。

確かに私は戦闘用のロボット・・だけど、感情も持ち合わせている・・・。

しかし・・それが私の思考を悲しくしてしまいがち・・・)

左の掌を見つめた。

そこには、一見しただけでは作り物だとは気付かれない、人間そっくりの手があった。

(・・・お母さんは、戦闘ロボットとしての私も、家族としての私も欲しているという事なのだろう・・・。

そして、信じてくれるのだろう・・。

私が誰にも負けないと、自分が作ったロボットだから負けないと信じているのだろう・・。

だけど・・・多分、いつか戦わなくていい日が来る・・・。

その時に・・・私はやはり邪魔になる・・・)

セレスが考えている間に、試合の準備は整えられていた。

そして、試合が始まった。

『ファイッ!』

「セレス!」

「・・!」


どんっ。


シーラに大きな声で呼ばれると、目の前には敵側のロボットが突撃してきた。

セレスと同じく人型で、特徴としては目の所に穴が開いている仮面をつけて居る事だけである。

そのスレンダーなボディに見合わない、恐ろしく重量感を感じる構えでの突撃で。

咄嗟にセレスはその動きを回避する為に腕で受け流す運動を取った。

そうする中で、自分を納得させる為の思考を廻らせていた。

(いや、だからこそ、邪魔になるかもしれないからこそ、たった一瞬でもお母さんの役に立ちたい。

私の、私なりのやり方で。

こうして戦う事もその一つ。

特に、今回はあのクリムゾン。

お母さんを殺そうとした完全な敵。

・・・やらなきゃ!)

決意を固めると、彼女は飛び込んできた敵ロボットに狙いを定める。

敵は剣を突きの構えで固定して、スラスターで突撃してきた。

セレスは、その動きを見て少し微笑んだ。

自分と同じような戦い方をするもの敵を少々おかしく思ったのだ。

そして、自らもフィンを回転させて、跳躍する。

地から足が離れてからやっとシェルブリット独特のスラスターの咆哮が上がった。


しゅぱああぁぁぁぁ・・・。


「衝撃のファーストブリット・・・」

「・・・」

しかし、相手は構えを崩さない。

お互いがお互いの技の斜線の直線状に入った。

ちょうど正面衝突の形でぶつかりそうになる。

そこで−

「だと思わないで!」

「・・!」

セレスは無理矢理体を捻る。

その上で、突き出した拳を剣を握っていた手にぶち当てて剣を弾く。

さらに、体を捻ってしまった為にスラスターが向きを変えて彼女は回転してしまう。

だが、彼女はその回転を、蹴りに乗せて放った。

「ヒロシゲさん直伝!


バックスピン・キィーック!」


どがっ。


敵が吹き飛ばされ、ディストーションフィールドに激突する。

そして、そのままステージの真中に落ちていく。

(・・・行ける!)

そう思った刹那、敵の仮面が取れた。

そこにあった顔は−。

「・・・!?お母さんッ!?」

敵のロボットについていた顔は、紛れも無いシーラの顔そのものだった。

彼女の中で、一度結論付けたはずの想いが揺らぎそうになった。


ずこんっ。


「・・・あ・・・・・・ぁ・・・」

敵はそんな事は全くお構いなしに彼女の胴に剣を突き刺した。

十数秒、完全にセレスの思考は停止していたのだ。

それだけの時間を与えてしまったのは致命的なミスだった。

人間だったらここまで悩まないだろう。

敵が剣を向けてきたら親類の顔と同じであっても危険を回避する程度の隙ですむ。

だが、彼女は感情があったとしてもロボットであり、思考の処理に人間より長い時間をかけてしまう事は多い。

彼女が目の前にあるエラーを回復しないまま、敵は攻撃してしまったのだろう。


「セェェレスゥーーーーッ!!」


「・・・はっ」

シーラに声をかけられて、やっと今の状況を整理する事が出来た。

自分が剣を突き刺されている事、そして目の前に居るのはシーラではなく敵だという事を。

「ぐ・・・痛い・・・じゃない・・・」

「・・・痛いわけ、無い」

そして、敵は、シーラに似ていた彼女は表情を全く変えることなく答える。

「私もあなたもロボット。戦うためのロボット。

予備なんていくらでもいる、つまらない兵器よ」

「あなたがどう思ってるかなんて知らないけど、私は痛いし、今のところ、私の予備は居ないの。

・・・その剣を退けなさい。

でなきゃぶっ壊すわよ」

「・・・私はこのままあなたを完全破壊するわ」

「やってみなさい」


ぐ。


大きな力を込めて、彼女は剣を縦に振ろうとした。

振ろうとした、のだ。

だが、動かない。

セレスが小さく彼女の手を抑えていたが、それくらいでは抑えきれそうに無いほど力を入れているのにも関わらず。

「・・・あなたも馬鹿じゃない?

人間なら確かにそうすれば内臓を引っ掻き回してずたずたにできるけど、私達はロボットなのよ。

金属部品をそんな太い剣で、勢いもつけられないこの状態で上下に振り回したって切れっこないでしょ」

セレスの言うとおり、彼女を貫いたような太めの剣は突撃による貫通は可能でも上下運動による切断は不可能である。

DFS、もしくはディストーションフィールドを纏った剣ならば容易な事だが、

剣や拳にディストーションフィールドを纏う為には多少なりとも人間の精神集中が必要なのだ。

AIによって纏うイメージの負担を減らす事は出来てもゼロには出来ない。

実を言うと、セレスはディストーションフィールドを拳には一切纏ってはいない。

ロボットの構造上の急所を狙った、一撃必殺−。

それこそがセレス・シェルブリット装備の真骨頂である。

これに限って言えば、ディストーションフィールドを纏う事のできるシーラの方が何倍も強力だと言えよう。

ただし、セレスの場合は相転移エンジンの出力の全てを加速に使用できるため、加速力では譲る。


「・・・・くっ」


がし。


言い切ると、セレスは敵の腰に抱きついた。

「この武器は、まさにこういう局面で使用する事を前提に考えられた物。

・・・・謹んで受け止めなさい!」

「くあぁ・・?!」


ぎりりり・・・・。


異様な音がして腰がどんどんと締め付けられていく。

硬い金属が強力な重圧によってゆっくりと曲げられていくような、重苦しくて、鈍い音が。

セレスの腕は肌の人工皮膚がべろりと剥げ、何故か強固な金属パーツを露出していた。

「最後の最後、相手が留めを刺す為に近づく一瞬だけに許された・・私の最終兵器よ・・・。

いわゆる・・・さば折りだけど・・・格好悪いから、元になった技を言うわ」

「ぐぎゃ・・・あ・・・ぁ・・・」


ばきっ。


そして、敵のボディを真っ二つにした。

同時に、締め付けていたセレスの両腕も折れてしまった。


「ジーク・ブリーカー」




がしゃ・・・ん。





わあああああ・・・・。


『しょ・・・・。

勝者!「Heart of bullid」!!』


歓声がホールを一杯に満たしつづける。

耳を劈く騒音に顔をしかめながら、セレスは膝を着いた。

否、脱力していた。

(私は・・・勝った・・・)

シーラ達が駆け寄ってきた。

しかし、セレスはそんな事を意識できるような状態ではなかった。

締め付けた敵ロボットがボディを傷つけ、腕を砕き、エンジンにすら影響を与え、もはや停止寸前だった。

機能が停止するまで、セレスはぼんやりと天井を見つめていた。

























作者から一言。

ちょっとハート・ブレイク。もとい、閑話です。

メインキャラに関わる人物のエピソードを一つずつ位は作りたいと思って執筆に至りました。

前回、今回、そしてこれから、ライザ、セレス、チハヤ、ジュン達をクローズアップします。

重要な役割に起きたい割に、話に関わり無さ過ぎると思ったんで、独立エピソードとして描いてみました。

でも独立しすぎて話が滅茶苦茶な気もするのですが・・・ホントに何が書きたいのでしょう。

ウリバタケがリリーになんで感情をつけたのか明らかにしてませんし。理由は単純ですが。

アカツキの絡みもちょっとしたら出ます。たぶん。

一応、今回はセレスのロボットとしての悩みを書いているつもりなんですけど。

これだけインターバル置くのはこれも一種の「溜め」だからです。

次々回でおそらく・・・ですが・・・この先の話は多分読まれている・・・。

少なくとも、代理人様にはッ!

・・・・・・・・・クローン北辰読まれてたし。

でもかえって読まれていた事で展開に捻りが出せそうで嬉しい限りですな。

代理人様、あなた様の批評こそが僕が小説を書く上での最大の成長要素だと考えています。

これからもご指導ご鞭撻の程・・・よろしくお願いします。

と、気を引き締めた(?)今日この頃です。

と言いつつ・・・気が緩む追伸その2に続く。

>合意と見てよろしいですね!?

・・・そう来ちゃったすか。

合意と見てもよろしいですが、個人的にはロボットバトルについては最近テレビで見かけたので、

最近凝ってる刃牙と組み合わせて直接ネタに変換させていただきやした。

前回がAパートで前半、今回が後半になってるのは、一応シーラの周りの話だということを強調したかったからです。

では、次回へ。









追伸。

関係ないことですが、つい先日、指定校推薦の内定が決まりました。

割と早めに決定して拍子抜けさせられましたが、これでやっと心おきなく執筆できます。

しかし、学科試験無いって逆に怖いなぁ。何か起こりそうで(汗)。









追伸2。

あー、これで連載1年かぁ。長かったような短かったような・・・。

最近、アイディアが消化不良気味・・・。

次回作のアイディアも消化不良気味・・・。

ああああああ、このネタを全部消化してェェェ・・・。

今までに無いネタを用意してあるのにぃぃぃ・・・。

それは置いておいて。ここまでほとんど月一ぐらいで連載したからには何か記念にやりたい・・・。

テーマとネタを決めてリレー小説でもやってみるとか・・・。

誰かこの馬鹿を手伝ってやってください・・・。

てか、むしろ誰かネタ提供するから代わってください(爆)。

それは創作家として禁句か(汗)。

誰でも一回は思うでしょ?筆が詰ったりすると。

管理人さんも代理人さんもそうでしょうッ!?

そう思うだろ、アンタ(読者様)もッ!?








・・・あー、どこか外れたかな、ネジが。いや、最初からか。




 

 

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代理人の感想

んー、どうも違和感が。

「そんなに悩ませるくらいなら最初っから出るんじゃねぇ、しかもノリノリでマイクパフォーマンスしてるんじゃないっ!」

と、理由にしてしまえばそれだけなんですけどね。

悩ませることが主眼であるのに思いっきりお遊びっぽくして、しかもその前後でギャップが十分にあったとは言いがたい。

どちらかと言えば、ギャグパートとシリアスパートでつなぎと伏線が上手くいってないのかな。

最初で緩んだ気分を読んでいて引き締められなかった気がします。