とある病院から無事退院し

平穏な生活が送れる

・・・と、思ったら大間違い

並んで歩く2人には

人とはあきらかに違う あるモノを

持っていたのだった


『断る!』

『どうしてよ?』


2人とも無言だが意志の疎通ははかられている


そう、2人は心が繋がってしまっているのだ


『だいたい、どう考えたらそういう結論になるんだ!』

『私はただ、一緒に暮らそうって言っただけじゃない』


2人は退院後の身の振り方を話し合っていた

いや「話して」はなかったが


『だから、その結論に至った経緯を説明してくれ!』

『それぐらい、読んでよ』


ピタ


いきなりアキトが足を止め

イツキが数歩先に進む形となる


「俺は読まない! 幸い意識をしなけりゃ情報は入ってこないみたいだからな!」

「アキトならそう言うでしょうね・・・でも」


ツツツツ


イツキは足早にアキトへ歩み寄り


ズイッ


互いの息も感じられるぐらいに顔を近付け


「それじゃあねぇ・・・ブラのサイズ」

「!」


「私がお風呂でカラダをどこから洗うか」

「!!」


「人には言えないほくろの位置」

「!!!」




ぱた




アキトは突如顔を真っ赤にして倒れ

顔の一部分から流血している


『そういうプライベート情報を持ってるアキトを野放しにできるわけないじゃない』

「俺が悪かった・・・」


こうしてイツキとアキトの今後の身の振り方は決定した


今から3ヶ月前の話である




機動戦艦ナデシコ if

case1.イツキ・カザマ

後編



こうしてはじまった2人の奇妙な同居生活は

最初から順調だったわけではなかった

何せ心が繋がった2人

しかも、1つ屋根の下で共に暮らせば

否応無しに相手の事を意識してしまう

さらに、相手を意識するという事はこの2人にとって

その全てが相手にも伝わっているという事だ


「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・」


おのずと2人は無言になる

ロクに目を合わす事もできない


だが


2人の表情がふと緩む

やおらアキトは立ち上がり

上着を羽織って無言のまま家を出る


「いってらっしゃい」


そしてイツキはアキトの後をおうように玄関まで行く

その一言とともにアキトを見送る

言葉を必要としなくても

イツキはこの一言だけは欠かした事がなかった

本当なら2人の間に言葉など必要ない


そう、2人は心が通じ合っているのだから




「それは 一種の後遺症ね」

これは2人を診察したドクターが

2人に告げた言葉だが

事実その通りだった

3ヶ月たった今

2人の心の繋がりは明らかに強くなっていたが

それと同時に

偶然の産物である『声』は徐々に弱くなってきていたのだ


「・・・もう聞こえないや」

この3ヶ月でわかった事がいくつかある

2人の距離が離れると『声』が届きにくくなるらしい

そして、日が経つにつれじょじょにだが

声の届く距離は明らかに短くなっている


「もうすぐ、聞こえなくなるのかなぁ・・・」

道を行くアキトを窓から見送りながらイツキがポツリと呟く

アキトはまだ窓から見える距離にいる

だが、『声』もう届いていない

なんとなくわかるのだ


それと、もう1つ


アキトは3ヶ月間、1度たりとも自分からイツキの心を読もうとはしなかった

そして、自分の心の奥を読ませようとはしなかったのだ


その事に不満は無いと言えば嘘だが

アキトの性格なら「仕方ないなぁ」と

納得してしまう

イツキにとってはそれ以上の問題があるからだ


「ヒマだなぁ」

と言って伸びをひとつ

実はこの3ヶ月、イツキは自分の事で家の外に出ていなかった

火星にいた頃はテストパイロットとして

1日のほとんどを研究所とその宿舎で過ごしてきた彼女にとって

突如する事のなくなってしまった地球での生活は

それこそ退屈極まるものだったのだ

かと行って外を出歩くわけでもない

これは同居生活当初

家とアキトの仕事先であるラーメン屋ほどの距離があっても

はっきりと『声』がとどいてたため

1人でいるような感覚がなく

常にアキトが見るモノ、聞くモノを感じる事ができたから

わざわざ外に出ようとも思わなかったのだ


そして、『声』が届かなくなった今でも

イツキは外にでようとはしなかった


「アキト・・・」


よろよろと窓から壁へと倒れこむように歩いてきたイツキは

両手で自分を抱きしめるように

壁にもたれかかったまま座り込んでしまう


「さびしいよ・・・」


そう、イツキにとってアキトは近過ぎたのだ

そんなアキトの存在が感じられなくなる

今のイツキは孤独に押しつぶされそうだった


「会いたい・・・」


アキトの存在を感じられない

それだけで 外に出る事ができなくなるほど

今のイツキは臆病になっていた

言わばイツキにとっては

これも後遺症のひとつだったのかも知れない

外に出る事といえばひとつぐらいだ




「よしっ、アキトに会いに行こう!」


イツキはやおら立ち上がり

久しく袖を通してなかった上着を羽織る




そう、外に出る事といえばアキトがらみの事ばかり

アキトはすでにイツキの心奥深くまで

確かな楔を打ちこんでしまっているようだ


部屋で弱々しくしていたのが嘘のように

それこそ スキップでもはじめそうな雰囲気で

アキトの働く店へと急ぐ

周囲の人達は暖かい眼差しで、そんなイツキを見守る

もう、このあたりでは『日常』となってしまった光景だ




ただし、半径3m以内に近付かないようにして






「こんにちは〜〜〜」

「らっしゃい! おっ 嬢ちゃんじゃねぇか」

元気良く店に入ったイツキを迎えた威勢のいい声の主は

アキトの現在の雇い主である雪谷 才蔵だ

「おい、アキト! 嬢ちゃんが 来たぞ!」

「あ、イツキさん もうすぐ閉店だから ちょっと待ってて」

厳しい人物であるが 身寄りのない2人の事情を察し

何かと世話を焼いてくれている

そして、アキトにとって尊敬すべき料理の師でもある

「そろそろ 閉店時間だな嬢ちゃんのれんをおろしてくれないか?」

「は〜い」

元気な返事1つ

のれんをおろそうと扉を開けたイツキだったが

その前にスーツ姿の2人が店に入ってきた

「ん? 客かい? 今日はもう閉店だぜ」

才蔵がこちらを振り向く事なく言い放つ

「いえいえ、私どもはこちらのお嬢さんに用がありまして・・・」

「あんだと・・・?」

才蔵の眼がスッと細まる


そこに立っていたのは

デカい怖面に細いニコニコ顔

なんとも好対象な2人

「私、こういう者でして」

差し出された名刺を思わず受け取るイツキ

それを横からひったくる才蔵

その後ろにはアキトが立っている

「プロスペクターねぇ・・・本名かい?」

「いえいえペンネームみたいなもんでした」

「だったら人に渡したりすんなよ、意味ねぇじゃねえか」

そう言って名刺をプロスペクターと名乗る男に突き返す

「これは手厳しい」

「で、嬢ちゃんに 何の用だい?」

「お前が知る必要はない」

これはデカい怖面の方のセリフだ

「閉店に間際の人の店に入ってきて、たいした言い草じゃねぇか」

「まぁまぁ お2人とも」

プロスペクターが剣呑な雰囲気となった2人の間に入る

「実は私ネルガルの者でして」

「ネルガル? あの総合企業のネルガルかい?」

「ネルガル・・・!」

「あ・・・」

そう、イツキか火星にいた頃所属していた研究所

それがネルガルの研究所だ

「いやぁ ご実家の方にも連絡入れてないそうで、探すのに苦労しましたよ」

イツキ、そしてネルガルの2人が向かい合うように席につき

プロスペクターが発した第一声がそれだった

「それなのに探し当てるんですから よほどヒマなんですね」

思いきり悪態を吐きながら茶を出すアキト

「彼女は数少ない木星トカゲとの実戦を経験し、なおかつ生存しているパイロットですから」

「・・・私1人で生き残ったわけじゃない」

イツキが小さな声で返す

「ところで、あなたは・・・?」

「彼女の同居人です」

アキトは迷う事なく答えた

そのセリフを聞いたプロスの眉がピクンと上がる

「・・・と言いますと、イツキさんとともにエステバリスから救出されたのは」

「俺だよ、文句あるか?」

「いえいえ・・・それではあなたも無関係というわけではありませんな」

そう言ってプロスペクターはアキトにも着席を促す

「・・・・・・・・・」

アキトは憮然とした表情ながらも着席する

イツキのアキトを見つめる、すがるような瞳に気付いたからだ

「実はイツキさん、あなたをスカウトにやってきたのです」

「私は退職届を出して、すでに受理されているはずですが」

イツキはしれっと返す

「ええ、ですから再びスカウトに来たわけでして」

「・・・お断りします」

「できれば最後まで聞いてくれませんか?」

「イヤです」

とりつくしまもない

「俺達は、ただ2人で静かに暮らしたいだけなんだ!」

アキトが立ち上がり怒鳴り散らす

「どうして、ほっといてくれないんだよ!」

そのままプロスにつかみかかろうとするが

スッと間に割ってもう1人の男に遮られる

「ありがとうございますゴートさん」

そう言いながらプロスペクターは立ち上がる

「どうやら、今日はまともに話を聞いてもらえそうにないですね」

そして、手に持ったカバンの中から封筒を取り出し

「とりあえず、これを置いておきます。」

どうやら契約書等の一式書類らしい

「そんなもの・・・!!」

「それでは、我々はこれで」

いらないと続けようとしたが

断る間も与えずプロスペクターとゴートの2人は店を出ていった

「チッ・・・」

「おう、アキト! 塩まいてこい!」

「了解ッス!」

普段のアキトからは想像もつかないスピードで

塩の入った壷を抱えて走っていった

「私は・・・どうすれば・・・」

そんなアキトに対して元気がないのがイツキ

うれしさ半分、悲しさ半分といったところだろうか

今、イツキはアキトの心が読めた

アキトは今のイツキとの生活をとても大事に思ってくれている

それと同時に

今の彼等に対して本気で怒っている

そして

彼等をここに呼び寄せてしまったのは、まぎれもないイツキ自身なのだ

『ゴメンナサイ、アキト・・・』

イツキは心で呼びかけた

その時!


ガシャァアンッ!!


「なっ なんだお前達は!?」


外が騒がしい


キキイィ! バタムッ! ブロロロロロロロ・・・


シーーーーーン・・・

フイに騒ぎが途絶える

「アキト!?」

イツキが外に飛び出した時

アキトの姿は影もカタチもなく

ただ、割れた壷が残されているのみだった


「どうした!?」

そして才蔵が店の外に出た時

「・・・・・・アキト」

そこには 肩を抱くようにうずくまる

イツキの姿があった

「おい、どうした」

「・・・聞こえない」

「あ?」

「・・・アキトの声が聞こえないよ・・・」


「どうかしましたか?」

プロスペクターとゴートの2人が

騒ぎを聞きつけ店に戻ってきたのは その時だった






「さらわれた? さっきの方がですか?」

とりあえず4人は 店内に入り 落ち着いて事情を確認する

「てめぇらの 指し金じゃないのか?」

「まさか! あくまで このスカウトは相手の了承を得る事が第一なのですから」

プロスペクターが 大袈裟に首を振って否定する

その時、携帯電話でどこかに連絡をしていたゴートが電話を切り

「ネルガルのシークレットサービスを動かした、見つけるのも時間の問題だろう」

「・・・・・・・・・」

しかし、イツキの表情は晴れない

イツキにとっては 今 アキトの声が聞こえない事の方が重要なのだ


「あんたら何者だよ!」

「・・・・・・」

アキトはさらわれた車の中で

自分をさらった相手である黒服の男達に叫ぶが

男達は無反応

と思ったら前の助手席の男がこちらを振り返る

「テンカワ博士の息子ですね?」

「テンカワ博士? 親父の事か?」

「まさか、地球に逃れているとは思ってもみませんでしたよ」

「なんの事だ?」

「テンカワ博士から受け取ってるモノ、あるのでしょ?」

「知らない、そんなモノは!!」

「・・・まぁ、こちらもすぐに出してもらえるとは思っていませんよ」

そう言って男は視線を前方に戻す

アキトは精一杯その男を睨み付けたが

相手はニヤついた笑みを浮かべるばかりだった

「(・・・・・・・・・イツキさん)」

もう車に乗せられて1時間近く経つ

今、自分がどのあたりにいるかもわからない


思えば、2人の心が繋がったのが偶然とすれば

これは奇跡だったのかもしれない


「・・・・・・アキト!」

つい数秒前まで黙り込んでいたイツキが

突然立ち上がり店先へ飛び出した

「どうしました!?」

プロスペクターも後を追い飛び出す

「アキトー! アキトどこなの!?」

「だから、どうしたんです」

「アキトの声が聞こえたの!」

そう言ってイツキは駆け出す

聞こえたのだ、そしてわかったのだ

アキトがどこにいるのかがハッキリと


「何をバカな・・・」

続いて出てきたゴートが信じられない顔で呟く

「・・・わかりました」

「ミスター?」

それに対しプロスペクターはしたり顔で肯く

「車をまわしましょう、案内してください」

「信じるのか?」

「恋人たちの奇跡というのもいいじゃないですか」

「・・・理由になっていないぞ」

とはいえ、手がかりがまったくない以上

ワラをも掴む思いで、イツキの言葉を信じる事にした

「わかる! わかるわ! アキトそこにいるのねっ!!」

虚空に向かって叫びつづけるイツキの姿は異様の一言だったが・・・







「フゥーッ」

何度目かわからないため息をはくゴート

かれこれ1時間近く車を走らせている

その間、ずっと助手席で騒ぐ女


イツキ・カザマ

あの当時、火星にいたネルガルの関係者はおろか

軍も含めた機動兵器に関わる人間の中で

唯一の生存者である

ならば、常人にない特殊な能力を持っていても肯けないこともないが

隣で騒ぐイツキからはそのような力の片鱗も見受けられない

「まったく・・・ここまで来たらさすがに」

続きの言葉が出なかった

プロスペクターがそれを遮ったからだ

「あの車・・・」

「むっ!」

プロスペクターの指差す先に黒塗りの車がある

「ミスター、あの車は」

「・・・ある意味、目立ちまくりの車ですね」

「これが『恋人たちの奇跡』か?」

「さて、それはどうでしょう?」

「あそこよ! あのビルにアキトはいるわっ!!」

ゴートもイツキの指差す廃ビルを見る

内部に潜入したわけではないので何とも言えないが

ゴートの目から見れば無防備の一言だ

相手も、ここが突き止められるとは思っていないのだろう

「さっ あの方を助け出しちゃいましょう」

プロスペクターの一言がゴートを後押しする

ここまでくれば勝ったも同然だった

「アキト、あなたを感じるわ! すぐに行くから待っててね! そして私を抱きしめてぎゅっと!!」

イツキは相変わらず騒がしかった



















ある廃ビルの一室に囚われているアキトが無事救出され

誘拐犯の一味が逮捕されたのは

それから、わずか30分後の事だった

その場所はなんと、才蔵の店から数十km離れた場所にあったのだ

これを奇跡と呼ばすして何と言おうか

『恋人たち』かどうかは本人たちに聞いてみないとわからないが・・・






「大変な目にあったね」

「ああ・・・」

事後処理をプロスペクターにまかせ

アキトとイツキの2人はゴートに送ってもらって家に戻った


玄関に入ったところでやっと一息つく

「結局、これ受けとっちまったな・・・」

アキトの手にはプロスペクターから渡された契約書一式がここにある

「アキト・・・」

一方、イツキの方は元気がない

「どうした?」

「・・・アキトが誘拐されたの・・・私のせい?」

「え?」

「ネルガルから人が来たのも私のせいだし・・・」

「いや、そんな事は・・・」

「アキトが危ない目にあったのも私の!」

「違うって! あいつらはウチの親父に用があったみたいだったし!」

「・・・お父さん?」

「そう! イツキさんのせいなんかじゃないって ゼッタイ!」

少しイツキの表情に笑みが戻る

そしてイツキのその安堵の感情はアキトにも伝わった

アキトにもわかった

今、失われつつあった2人の心の繋ぐ『声』が

3ヶ月前よりも遥かに強くなっている事を






「問題はこれからどうするかね・・・」

イツキがお茶をいれ、一杯飲んで一息つき

今後の事を考える

「イツキさんは、どうするつもりなんだ?」

「・・・ネルガルのこの契約書・・・ネルガルの新造戦艦の乗組員のものらしいわ」

「ネルガルに戻るのか?」

「・・・あの後、プロスペクターさんに聞いたの、その艦ね、火星に行くんだって」

「火星!?」

言うまでもない、あの時 2人が出会った場所だ

「私、もう一度 火星に行きたい あの時、あの場所で何があったのかを知りたいのっ!」

「そうか・・・俺は・・・」

イヤだ、と続けようとしたが

「お願い、アキトも一緒にきて!」

先手をうたれてしまった

「悪いけど、俺はネルガルも信用するつもりなんてないんだ」

「そんな・・・」

「それに、あいつらは俺個人を狙ってきたんだ」

これは事実

「これ以上一緒にいたらイツキさんに迷惑がかかる」

そして、これが隠されていたアキトの本心

アキトは両親の死が不審なものであると子供の頃から薄々感づいていたのだ

だからこそ今回の事も詳しくはわからないが

父の科学者としての何らかの成果を狙った軍か企業だとあたりをつけていた

そして、ネルガルもアキトにとっては

決して信用できるものではない




・・・アキトは失念していた

「そっか・・・アキトそんな事考えてたんだ」

物思いに耽っていたアキトはイツキの読みに対して無防備になっていたのだ

アキトが今までイツキに迷惑をかけまいとひた隠しにしてきたモノが

全てイツキに知られてしまったのだ

「! いや、だから・・・」

なんとかして断ろうとするが言葉が続かない

今 2人の心の繋がりが今まで以上に強くなっている

イツキがどれだけアキトの事を想っているかが

ダイレクトに伝わってきているのだ

言えるわけがない

「そういう理由で アキトが狙われているなら『テンカワ』の名前を出すのもマズイかもね」

イツキは1人 納得する

「それは、イツキさんには関係ない事だから・・・」

「大丈夫よ、私にいい考えがあるから」

この時、何故かアキトは顔も名前も思い出せない幼なじみを思い出したのだった

「こんな事もあろうかと用意してたものがあるの♪」

イツキは棚からあるモノを取り出した

もはや逃げることはできない







結局、2人はネルガルの誘いに乗った

どうもプロスペクターの方も

アキトも一緒にスカウトしようと思っていたらしく

わざとらしいぐらいのニコニコ顔で

こちらの申し出を受け入れてくれた







そして、2人の心を繋いでいた『声』だが

あの後 寝て起きたら消えていた

それはもう キレイさっぱりと

蝋燭は消える間際に一番輝くと言うが

それと似たようなものだったのだろうか?

数十kmという距離がありながら2人の心を繋いだ偶然は

1つの奇跡を生み、それと同時に消えてしまったのだ


だが、イツキはもうその事を気に病んだりはしない

もう孤独に悩まされることもないのだ

なぜなら・・・





















「エステのパイロットはいないの!? はやく出しなさい!」

「もう出てます」

場所はナデシコのブリッジ

時は出航の日

今 ナデシコは 木星トカゲの攻撃の真っ只中にさらされていた

艦長が遅刻という笑うに笑えない状況の中

ナデシコの救世主となれるだろうか?

2機のエステバリスが作業用リフトを使い地上へと向かう




「アキト、いいの?」

「かまわないさ、はじめての事でもないしね」




もちろん、その2機のパイロットはアキトとイツキ

『声』は失われてしまって久しい


『そこのエステバリス登場者2名 所属と姓名は?』


コミュニケから声が聞こえる

どうやら、2人をスカウトに来た片割れのゴートらしい




2人は はっきりと答えた















「イツキ・カザマ、パイロット!」

「アキト・カザマ、コック兼パイロット!」

「「新婚ですっ!!」」




「「「「「「ええ〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!」」」」」









続・・・かない



あとがき


アキトはもう逃げられないです

もう見事なほどに

逃げるつもりもないのでしょうが・・・


このifなんですが「case.1」とあるように

ヒロインを替え2,3と続けていこうかと考えてます

今のとこ 4ぐらいまで考えてます

次は誰になるでしょうか・・・?

ユキナかカグヤだと思いますが

そこらへんはまだ考えていません

次は北斗ちゃんを書くつもりですから

 

では 次回は

 

 

僕は、凍った川を滑る

スケートの刃のような存在

だけど、僕は・・・・・・


次回、サクラ大戦2


第6話「レニよ、銃をとれ」




太正桜に浪漫の嵐!


僕は、何のために・・・
















・・・あれ?








おまけ☆



突然ですがピンチです


ナデシコは今、木星トカゲに襲撃されています

いつもなら、なんてことのない規模なんですが

皆さん動きに精彩さがありません


理由は・・・思い当たる事はひとつです


先日のヨコスカベイでの戦い


町を襲撃してきたゲキガンモドキとの戦いで出た戦死者のせいでしょう


1人目がイツキ・カザマさん


そして、もう1人


コック兼パイロットのテンカワ アキトさん


テンカワさんは実験中のトラブルのために

帰らぬ人となったのですから

厳密には「戦死」ではありませんが

この際、細かい事は良しとしましょう



え? 何の実験かって?

私は詳しくは知りませんが

「生体ボソンジャンプ」というやつらしいです

エリナさん曰く

テンカワさんは2週間前の月にワープするはずだったらしいのですが

月の方に連絡をいれてもテンカワさんの存在は確認できず

そのまま帰らぬ人となってしまいました


ユリカさんをはじめとする何人かは

エリナさんに文句のひとつも言いたいところなのでしょうが

当のエリナさんが

ここ数日、部屋に閉じこもりっきりで

ロクに食事もとってない状態では

さすがに何も言う事ができないようです

たぶん、エリナさんもショックだったのでしょう

それが、実験の失敗のせいか別の理由があるかは

私は少女だからわかりませんが・・・


ドオォォォンッ!!


おっと

そういえば戦闘中でした


「うぅ アキトぉ〜」


艦長、仕事してください


絶対絶命というヤツでしょうか?

私もこんな若い身空で命を散らしたくはないです


とはいえ、パイロットのみなさんも本調子じゃないので

どうしようもないかもしれませんね

特にリョーコさんは2人分のショックを

背負いこんじゃってるみたいですし

意外と繊細な人です

ナデシコはもう『風前の灯火』

それとも『年貢の納め時』ってヤツでしょうか?

なむなむ


そういえば、私は死んだらどこのお墓に入るのでしょう?

身寄りはないですからね

どうせなら、テンカワさんと同じ墓に入れといてください

それなら、死んでからも食事に困りそうにないですから

え? 死んだら食事は必要ない?

細かい事はどうでもいいです











そんな時でした




白銀に輝く2機の新型空戦フレームが援軍に駆けつけたのは


あらら

とりあえず通信を繋いでみましょう


そこに映ったのはどこかで会った事があるような

顔を隠した男の人


もしかして・・・






「天定まって またよく 人に勝つ!」


は?


「我等は平和の使者、翼の男爵 アーラバ□ーネッ!!」

















バカ?


今 確かに時間が止まりました


私達も

連合軍も

木星トカゲさえも


そして、もう1機の方とも通信が繋がります

こちらは女性のようです

同じく顔を隠してますが

つい最近会ったような気がします

こちらの方は話が通じればいいんですが・・・

あまり期待できそうにありません




その女性の唇から紡がれた言葉は




「誇り高き嵐の刃を恐れぬならば、かかってくるがよいッ!!」

















ハッ


今 時間が止まりました

オモイカネ、チェックして


え? 正常?

そんなはずないです


そんなこんなで私がオモイカネとお話しているうちに

2機のエステバリスは

木星トカゲをことごとく撃墜し


「キャッチュー レイター♪」


トドメとばかりに女の人の方の投げキッスひとつ残して

ツッコミを入れる間も与えずに飛び去っていきました




・・・でも、通信はまだ繋がってます









「やったね、イツキさん!」

「キマリましたね アキトさん!」











きっと、ナデシコの面々の心は一つだったでしょう




「「「「「バレバレやん」」」」」




ミナトさん曰く

それは 言ってはいけない『おやくそく』なんだそうです

私は少女ですから大人の事情はわかりません




でも




大人って色んな意味で大変だなと思いました


バカばっか










おわる



 

 

 

管理人の感想

 

 

別人28号さんからの投稿です!!

わはははは!! こんな手でくるとは予想外でしたよ!!

確かに婿養子になれば、全然OKですよね(笑)

しかし、あの台詞・・・「新婚です!!」は笑いましたね!!

その後のおまけにも笑いましたけど(笑)

 

それでは、別人28号さん投稿有難うございました!!