本当にこの仕事を受けてよかったのだろうか?

もしかしたら私は とんでもない悪事に荷担してしまったのかもしれない

だが

私が生きていくため 仕方がなかった事も事実だ




漆黒の戦神アナザー

カタリーナ・ヴェルテの場合




...本日はお忙しいところ 本当にありがとうございました


いいのよ、おもしろそうだったし


...では、お名前からまず伺わせてもらいます


カタリーナ・ヴェルテ、泣く子も黙る赤毛の女海賊とは私の事よ♪


...赤毛の海賊のウワサは行く先々で聞いてはいましたが まさか女性の方だったとは・・・


ま、普通はそう思うわよね

私だって 数年前までは自分が海賊稼業やるなんて 思ってもみなかったし


...ワケありだったそうですね


? そんな話誰から聞いたの?


...前の取材でオットー提督から少し


あのヒゲったら・・・


...まぁ、提督自身は隠そうとしてたのですが 副官のマシューさんが・・・


最後まで言わなくていいわ、だいたいわかったから

しっかし マシューのおっさんも相変わらずバカみたいね

あんた気付いた? あの2人 実はヒゲの提督の方が若いのよ

老け顔だから 逆に見えるけど


...(あの提督相手によくぞここまで・・・)へ、へぇ それは気が付かなかったですね


うんうん、そうよねぇ




...ところで カタリーナさんは 海賊艦隊を率いる頭領なんですよね?


そうよ


...失礼ですが、おいくつでいらっしゃるんでしょう?


あら、レディに年令を聞くなんて なかなか勇敢ね


...い、いえ 海賊艦隊の頭領をやってるわりにはお若いので


ま、いいわ・・・18才になったとこよ


...18才!?


な、なによ 文句あるっての?


...むしろ納得できる年令なのですが、その若さで頭領とは・・・


あー・・・そりゃそうよねぇ 私だってこの若さで艦隊率いてるヤツがいたら

思わず主砲叩き込んでるかもしれないわ


...(主砲?)そういえば 『彼』はどうですか、ウワサによればかなり若いらしいですが


『彼』? ああ、アキトの事ね

う〜ん、どうだろ? 艦長ぐらいはこなせると思うけど

艦隊率いる提督となるとどうかな?

私もそうだけど 優秀な副官がいれば どーとでもなると思うけどね


...なるほど、よく見ているって感じですね


そりゃ そうよ

一度は殺してやるために なんとかして弱点探そうとしてたんだから


...ぶ、物騒ですね


あはは、まぁ勘違いだったんだけどね


...勘違い?


うん、私がさ 婚約者の仇を追ってたって話は知ってるんでしょ?


...ええ、詳しい経緯は存じませんが


経緯は省くけど、その仇を追ってる時にさ

真犯人を見つける為にイングランドに潜り込んだんだけど

その時、聞いたのよ「真犯人はあの漆黒の戦鬼だ」って


...なるほど 当時の彼は『戦鬼』と呼ばれてたって話ですから 有り得なくはないですね


まぁ そういう事ね

ただ、今にして思えば 彼の死は事故として処理されたんだから

真犯人がどうのこうのってが おおっぴらにウワサされる事自体おかしいんだけどね〜


...根本的ですな


黒幕が仕掛けた罠だったんでしょうね

あの頃は私も若かったわ


...あの頃って・・・


まだ 17才だったわ・・・


...はぁ、そうですか


若さゆえの過ちってヤツよ

その後、私は無謀にも漆黒の戦鬼、アキトに勝負を挑んだのよ


...無謀な・・・よく 生き延びる事ができましたね


人違いだったし、事情がわからないから迂闊に反撃もできなかったんでしょうね

ま、アキトの実力があって はじめてできる芸当なんだろうけど


でも、あれはショックだったわねぇ

士官学校の頃はおろか 子供の頃から負け知らずだった私が

アキト相手には手も足も出なかったんだから


...やはり、彼は相当の実力を隠し持っていると?


まね、パイロットとしては 私は戦艦の艦長で畑違いだからなんとも言えないんだけど

白兵戦なら・・・正直、彼に勝てる、いえ まともな勝負をできる人なんて思い当たらないわ


...そ、そこまで?


? 何、信用できないって言うの?


...直接会った事はありませんから、ここまで非常識な戦果をあげられるとちょっと・・・


まぁ、しょうがないか

私だって直接会うまでは 調べれば調べる程 現実の話とは思えなくなってたからねぇ

貴方も直接会えばわかると思うわ

彼、ガード固いから そんな機会があるかどうかはわからないけどね


私から一言言わせてもらえるなら

「彼は戦う事ばっかり考えてる悪魔なんかじゃなく れっきとした血の通った人間だ」って事よ


...失礼しました




...もうひとつ聞きたいのですが 一度は殺そうとした彼と どうやって和解したのですか?


う〜ん、実を言うとね 最初会った時から なかなか見所のある男だなぁとは思ってたんだけど

ちゃんと和解したのは黒幕のギルバートが現れた戦いの後なのよ


...ほぅ、で どのように?


あの戦いの後ね、ウチの旗艦ボロボロでさ

戦艦何隻かで牽引しなきゃ 動きもしない状態だったの


...それはまた こっぴどくやられましたな


で、まぁ 寄港するまで ヒゲの提督の艦でお世話になってたんだけど

それが ビックリよ

私の艦を半壊させた張本人が 厨房入ってゴハン作ってるんだから


...彼が、ですか?


しかも、その料理が美味いのよ

ホレたね 私は


...(食い物に釣られたのか この人は)彼はコックとしても かなりの腕らしいですね


アキトはコックの方が本職だって言ってたけどね


...そのあたりがよくわかりませんな 要・調査っと


ん? 何メモってるの?


...いえいえ、こちらの仕事の話です


あ、そう




...そういえば 最近は貴方の話をあまり聞きませんね 懐かしむようなフシもあったのですが


あの戦いが終わって 体勢整えるまで時間がかかったってのもあるけど

その後も ずっと開店休業状態なのよねぇ

ギルバートが亀みたく閉じこもっちゃったから手出しできないし

あいつ これまでの悪事がバレまくってるから もう必要もないし

真犯人がハッキリしちゃったら 他の艦隊襲うのも気が引けるしね


...このまま 海賊は辞めてしまおうと?


う〜ん、そうなるかも

部下の皆も養わないといけないし

この際さ、ナデシコ遊撃隊にでもなろうかと思ってるのよ


...本職軍人を震え上がらせた赤毛の海賊がナデシコ遊撃隊に華麗なる転身、ですか?


華麗なる転身かぁ、それいい感じ♪

決めた、ナデシコ遊撃隊になっちゃおう!


...(この人、物事深く考えない人なんだな)記者会見でも開くなら呼んでください


OK! 2番目に優先して呼んであげるわ


...1番目は?


やだぁ、アキトに決まってるじゃない

私の晴れ姿、アキトに見せないで 誰に見せるって言うのよ?


...でしょうね、そう言うと思ってました


やっぱり、わかる〜?

これが愛の深さなのよねぇ〜♪


...ほ、本日はどうも ありがとうございました〜(やっぱ、この仕事受けたの失敗だったか?)




『漆黒の戦神その軌跡』より抜粋





















「エリナさん、彼は本当に優秀ですね」

「ええ、我ながらいい人材を見つけたものだわ」

「これでアキトにおしおきできるのね♪」

手段と目的が逆転してきた人々

それに巻き込まれるアキトは不幸である


しかし、『自業自得』という四文字を彼が背負っている以上

同情する必要はまったくないのだが・・・




「ねぇ アリサ・・・」

「姉さん どうしたの?」

サラの手にあるのは もちろん例の本

ただ今 お仕置の真っ最中

2人は順番待ちだ

「この海賊さんとウチの艦長 勝負したらどっちが強いかな?」

「う〜ん、どうだろ・・・彼女 噂の赤毛の海賊でしょ?

1対1なら 艦の性能で勝てるだろうけど、向こうは艦隊率いてるからねぇ

・・・でも、どうしたの急に?」

「うん・・・この人がアキトさんを奪還しに来たらどうしようって・・・」

「・・・・・・・・・」


有り得ない話ではない


「や、や〜ねぇ こっちにはアキトがいるのよ? 大丈夫に決まってるじゃない」

「そ、そうよね 私ったら 考え過ぎよね」

「サラー! アリサー! あなた達の番よ〜!」

「「あ、はーい!」」

やけに満足気なユリカに呼ばれ2人は本を置いてアキトの元へ行った

アキトの方は・・・もう、悲鳴を上げる元気すらないらしい


今回のお仕置は皆が待ち望んでた事もあり 長くなりそうだった






ある国の場末の酒場

長い出張から帰ってきたあのライターが酒を飲んでいる

今日は客の入りが悪いらしく マスターも彼の前に座り込んで飲んでいる

「なんだい、ずいぶん羽振りがいいじゃないか 銀行でも襲ってきたのかい?」

「おいおい、よしてくれよ まっとうな仕事さ」

マスターは呆れながらも空になったコップに酒を注ぐ

「お前を雇うなんて 物好きもいたもんだな?」

「おぅ、物好きよ 専属契約までしてくれたんだぜ?

戦神のネタを見つけて書けば大金になるんだ、ん〜 まさにバラ色人生♪」

そのセリフに気をよくしたのかマスターはニッコリ笑って手を出し

「んじゃ、とっとと払ってもらおうか?」

と、のたまった

「あ? ツケは出発前に払ったろ?」

「ツケじゃねぇ、お前が酔った勢いでぶつけてスクラップにした 車の弁償金だ」

「げ!」

「バラ色人生なんだろ?」

「・・・・・・え〜〜〜〜〜と」

「大金なんだろ?」

「・・・・・代金、ツケといてくれ 新しいネタ探してくるわ」

そういうと 先程までの上機嫌はどこへやら 闇を背負って店を出ていった

マスターは瓶に残っていたビールをラッパ飲みし こう言った

「あんな 金に困りまくってるヤツに狙われるなんざ・・・漆黒の戦神も災難だねぇ」




彼の受難は終らない

『彼』がどちらを指すかは不明なのだが






おわりです



あとがき


やっとこさ終りました

こんなマイナーネタ 誰がわかるんでしょう?


ちなみに大航海時代2および外伝のキャラの名前を使用しています

しかも カタリーナはゲーム本編ではなく

32ビット機対応版の攻略本の一部に登場したVer.だったり

う〜ん ドマイナー



 

 

代理人の感想

 

三段構えのコンビネーションブローが綺麗に決まりましたな(笑)。

定番のお仕置に加えてオチをもう一つ追加しているのもヒネリがあってさすがです。

 

・・・・・・・それにしても、つくづく忍耐強いなアキトは。

私だったら千年の恋も覚めてとっくに逃げ出してるぞ(爆)。

 

管理人の感想


・・・むう、やられましたね(汗)

まさかこうくるとは思いませんでした(苦笑)

しかし、毎回毎回・・・お仕置きに泣かされてるな、アキトの奴は(爆)

さてさて、然職業制覇の道にまた近づきましたね〜