よ、よんじうななえん・・・


おぉう 壮観だぜ・・・

俺は 目の前にある全財産を見て思わず言葉を失った

マズイ・・・原稿を書けば報酬が入るが これでは取材もままならない

必要経費はすべてネルガルにツケれるとは言え

飛行機のチケット代ばかりは・・・

ネルガルに金借りに行ったらクビだろうし




俺に残されたのは この前買った中古車だけか

この前ぶつけたばかりだから これを売っても大した額にはならないし

なんとか この車でいける距離で次の取材相手を探さないと・・・


しかし、西欧で活躍してた漆黒の戦神の愛人を 東の果ての日本で探せと言われてもなぁ・・・



















と思ったらいた

流石は漆黒の戦神、その交友範囲は世界規模に広がっているらしい

なんとか 首の皮1枚繋がったようだ


俺は再び飼い猫を大家に預けると

すぐさま トランクを積んで車を走らせる

他のヤツに先を越されたら 残った皮1枚もちぎれちまう






今回の旅は 短くなりそうだなぁ・・・ま、いっか



漆黒の戦神アナザー

河合 美沙緒の場合



...今回は取材を受けていただいて本当にありがとうございました


いえ、いいんです


...では、自己紹介からお願いできますか?


河合 美紗緒といいます

その・・・小学生です


...(犯罪だぞ戦神)あなたはあの漆黒の戦神と面識があるそうですね


ヨーロッパに行っていた時にお知り合いになりました


...観光旅行ですか?


いえ・・・お父さんを探しに行ってました


...お父さんを、ですか?


私のお父さんってピアニストでほとんど家にいないんです

それで、ふと お父さんに会いに行こうって思い立って


...それで、ヨーロッパへ? 行動力ありますね


後でお母さんに怒られちゃいました


...1人で行ったんですか?


はい


...(ホントに行動力あるぞ おとなしそうな見た目と裏腹に)


どうかしましたか?


...いえ、それは大変でしたねぇ では 彼と出会った時の事を話していただけますか?


あれは 空港に到着した直後でした

お母さんに連絡を入れようと電話している時に 荷物を持っていかれちゃったんです


...そこで彼が登場したと?


はい、えーっと らりあっとって言うんですか?

こう腕を荷物を持っていってた人に


...カウンター気味に決めたわけですな


そう だと思います

それで荷物は戻ってきたんですけど

お母さんとは連絡がつかなくて・・・その後も色々電話してみましたけど

結局 お父さんが一体ヨーロッパのどこにいるかはわからなかったんです


...(この子は 目的地わからないまま飛行機に乗ったのか?)


あの人は 後ろでその電話を聞いてて 事情を察してくれたみたいで

お父さんを一緒に探してあげるって言ってくれて・・・


...狙いをさだめたワケですな


狙い? 何のですか?


...いえ、こちらの話です



...それで、どのように探したんでしょうか? 彼は音楽方面にも詳しいのですか?


いえ、あの人は お父さんの事知らなかったみたいで

私も お父さん以外の人はあまり知らなかったから


...それは・・・大変だったんじゃないですか?


ええ、まずは あの人の提案でシャノワールって所に行きました

そこの支配人さんなら知ってるかもしれないって


...シャノワール・・・ああ、彼の謎の人脈のひとつですね


支配人さんに話を聞いてみると お父さんの事を知っていて

それで 今はツアー中だからって 開催地の一覧が書かれたメモをくれました

つい数日前は その町にいたらしいですけどね


...それは ニアミスでしたね


それから メモに書かれてる所を順々にまわって行ったのですけど

その・・・そのメモって支配人さんの手書きで

開催日時とか ぜんぜん無視したものでしたから・・・


...という事は・・・


20ぐらいある開催地全部まわる事になっちゃいました

1ヶ月ぐらいかかったかしら・・・

宿泊費とか 何から何まであの人のお世話になてしまって・・・


...あの人 金は持ってるみたいですからねぇ・・・ケッ






結局 最後の開催地でお父さんに会う事はできました

でも、あの人をお父さんに紹介しようと思って振り向いたら もうそこにはいなくて・・・


...いなかった?


ええ、ただ あの人のいた足元が変にヘコんでました


...それは猛スピードでどこかに行ったのでは?


? どうしてですか?


...う〜ん 近くに金銀の美人姉妹とかいませんでした?


さぁ? 見覚えないです

近くで騒ぎがあったから あの人はそっちの方に行ったと思ってましたけど

優しい人ですから きっと放っておけなかったんですよ


...(それ 戦神がらみの騒ぎなんじゃ?)なるほど




その後、私を1人で帰すわけにはいけないからって

お父さんも一緒に日本に帰ってくれて・・・


...それでは お父さんは今も日本に?


いえ、3日ぐらいで またヨーロッパに行っちゃいました


...おや、それは残念でしたね


でも、お父さん 年に何度か帰ってくるかどうかぐらいですから

私 とってもうれしかったです

あの人は こうなる事がわかってて 姿を消したのかもしれませんね

また会えたら その時は私のピアノを聞いて欲しいな


...本日は ありがとうございました











『漆黒の戦神 その軌じゃすと あもぉめ〜〜〜〜〜んっと♪


...だ、誰だ!?


私はっ 愛の魔法少女ピクシィーーーーーミサぁ!


...あれ、あの子はどこに行った? さっきまでいたのに


ちょっと 無視しないでよ

せーっかく 隠されたマル秘ネタ プレゼントしようと思ったのに


...マル秘ネタ?


やっと こっち向いたわね

そうよ、あのめくるめく愛の日々〜


...それはゼヒ!


うふふふふ〜 私は知ってるのよ〜

美紗緒ちゃんったら 行くトコ行くトコで空振りするたんびにがっくりくるもんだから

彼ったら 毎日のように美紗緒ちゃんをデートにさそって観光に行ってたのよん♪

その他にもイロイロ・・・


...そっち方面には 手間暇惜しみませんなぁ


実は美紗緒ちゃんってば 彼の写真いつも持ち歩いてるのよ

「・・・また、会いたいな」って


...ほぅ、そんな事言ってくれなかったのに


恥ずかしがりやだからねぇ

でもでも! ただでさえライバル多いんだから

押すべきところは ちゃんと押さないとネ

にょほほほほほほほ〜〜〜♪


...ほ、本日は どうもありがとうございました〜・・・あの子 どこ行ったんだろ 帰っちゃったのかなぁ?











『漆黒の戦神 その軌跡』より抜粋























食堂で味見を頼まれたアキト突如 強烈な眠気に襲われ

次に目を覚ましたら Uの字型のテーブルの真ん中に転がされ

周囲を席についた某・同盟らしきの面々に囲まれていた

しかし、照明がほとんどなく 暗い影でしか人を確認できないので誰が誰かはわからない

言うまでもなく怖い




「さて、アキトさん まずはご苦労様でした」

「この子 放っておいたら見知らぬ地でどうなってたかわからないもんね」

「そういう意味で貴方のとった行動は正しかったと言えるわ アキト君」

「そ、それじゃ お仕置きは・・・!」

わずかながらに差し込んだ希望の光明にすがるアキトだったが

同盟の面々はアキトの言葉を意に介せず話を続ける

「しかし、1ヶ月もかかるとは不手際でしたね」

「う・・・」

「私達が何を言いたいかわかりますか?」

「さ、さぁ?」


ハ〜〜〜ッ


同盟の面々が一斉にため息をつく

「アキトさん・・・私達が気付かないと思ったんですか?」

「1ヶ月間 彼女の父親を探し続けたという事は・・・」

「その間 彼女と寝食を共にしたって事じゃないですか!」

「ぎくぅっ!」

言わなくてもいいのに わざわざ口で言う


「ピクシーミサさんの情報によれば かなり彼女にご執心だったらしいじゃないですか」

「いや、それは・・・放っとけないだろ やっぱりさ」

「覚悟はできてるよね? アキト」

それは疑問でも質問でもなく確認

「・・・・・・・・・はい」

素直に頷く以外 彼に何ができると言うのだろうか?






そして、残されていた僅かな照明が一斉に消された























「いやぁ、今回の仕事は楽に済んだなぁ」

「そりゃよかったじゃねぇか ホレ ツケ払え」

「おうよ」

一仕事終えた男は 報酬を手に入れた帰り 行きつけのバーに顔を出しツケを払った

そして、ツケが払い終わると また飲む

こんな生活を送っているからツケがたまる一方なのだ

「まさか、戦神の愛人探して 小学生にブチ当たるとは思わなかったよ」

「お前・・・アレの仕事してるなら 既刊は全部読んどけよ」

「どういうこった?」

「ヤツぁ 年令なんか気にしねぇぞ」

「・・・まぁ、それもそうだな しかし、意外だなマスターもアレ読んでるのかい?」

「この御時世 アレを読んでない人間探す方が難しいだろ」

「ごもっとも じゃなきゃ あんな報酬は出ないわな」

その報酬の半分以上を酒代につぎ込むのがこの男だ

もっとも 酒代の大半が入る店としてはそれを指摘する気にはなれないが


「そうだ 今度取材に行くときは ウチの猫預かってくれねぇか?」

「ん? 大家はどうした?」

「いや・・・あんまり旅行ばっかしてると今度から金取るぞって言われてさ」

「なるほど、構わんよ猫預かるぐらい それでツケ払ってくれるんだからな」

「助かるよ」




「・・・で、お前の猫 なんて名前だったかな?」

「ああ トムって言うんだ






おわる?



あとがき


え? とあるライターの名前ですか?

何を仰るやら・・・猫のトム君なんてよくある名前じゃないですか


ちなみに 使用許可はちゃんと取っております




前に『プロスペクターの場合』の時に質問されたのですが

私はこのシリーズのヒロイン達は 姓名を

それぞれ同作品(もしくはシリーズ)の別のキャラからとって組み合わせています

外見は名前の方に準拠という事で・・・

間違ってるわけじゃないんですよ(その割には ピクシーミサはまんま使ってますが)


ただ、フレイだけは例外なんです

気付く人はすぐに気付くでしょうが 名前は○ジェネFから

外見はク□スボーンガンダムの□ーズマリーがモチーフだったり


別に深い意味があるわけではなく

ただ単に その時は上の方法を考えてなかっただけなんです



 

 

代理人の感想

とあるライターさん復活(笑)!

これはこれでシリーズで続けて欲しいかなとちょっと思ったり(笑)。

 

 

>名前の元ネタ

ああ、そう言えば元ネタ当てクイズで(クイズちゃうっちゅーに)ケアレスミス一つだけして

パーフェクトを逃したときがあったなァ・・・・・・・・。

あれは妙に悔しかった(爆)。