アキトの訓練がはじまって一週間


その間 アキトは梁に「お前は 一応密航者だから部屋が用意できん」と言われたため

ずっとリョーコの部屋に寝泊りしていた

当初は監視のためともにリョーコの部屋に泊まっていたヒカルとイズミだったが

3日もすれば 「この2人に間違いはなかろう」と それぞれ自分の部屋に帰ってしまった

例えるならば『小学生』、あまりにもな初々しさに眩暈がしたらしい


ヒカルに「ここまできちゃうと ネタにもならないわねぇ」と言わせた程だ

どれほどかは推して知るべし である


とりあえず 2人ともどこかうれしそうなので

ヒカルとイズミは暖かい目かどうかは知らないが 黙って見守る事にしたのだった






「ねぇねぇ リョーコ知ってる?」

「ん? なんだ?」

今日も 他の候補生達とはズレた時間で食事をとっていたリョーコの元にヒカルがやって来た

アキトは梁に出前を頼まれて届けに行って今はいない

「梁教官なんだけどさ すっごい通り名があるらしいんだ〜」

「通り名? あんだけ強え現場叩き上げのパイロットだ それぐらいあるだろ」

しかし、ヒカルは その反応を待っていたとばかりに にやにや笑い

「それが 違うんだな〜」

と、何故か自慢げに、胸をはった

「んじゃ なんだってんだよ?」

「あの教官ね・・・『仲人将軍』って呼ばれてるんだってさ」

「は?」

「部下同士の仲を取り持って結婚させる事で有名なんだって

次々とゴールインさせる事 なんと49組!」

「へ、へぇ〜」


「リョーコ達さ・・・50組目に狙われてるんじゃない?

否定要素はどこにもなかった



機動戦艦ナデシコif

case5. スバル リョーコ

後編



「(お、俺とアキトをだと・・・?)」


「攻撃が緩んだ・・・?」


「(別にイヤってわけじゃないけど・・・)」


「チャンス!」


現在シミュレーターで訓練中の2人

しかし、リョーコの方は先程ヒカルに言われた事が気になって上の空だ

「リョーコちゃん 今日こそ勝ってやる!」

訓練をはじめてからのアキトの勝ち数は0

今日こそ勝利を得ようとアキトはスピードに乗った拳を繰り出すが


ひょい バキ!


流石は梁教官に鍛えられてきたリョーコか

上の空でありながらも アキトの攻撃を避け、更にカウンターを入れる

「うわあぁ〜っ!」

「・・・あれ?」

リョーコは無意識のうちに勝ってしまったようだ




「アキ坊はまだまだだな・・・鍛練が足りん」

「当然でしょう、まだ一週間と少ししか経っていませんから」

リョーコがアキトのフォローをした

「そうだがな・・・スバル、ナデシコでここを発つのは何日後だ?」

「明後日です、本当なら明日の予定でしたが 戦艦内で手術してるとかで1日遅れるそうです」

リョーコの言葉に梁が眉をピクンとはね 振り返る

「ほぅ・・・怪我人でも出たのか?」

「大気圏突破の際、副艦長とパイロットが壮絶な一騎討をしたとか」

「死んだのか?」

「いえ、双方 命に別状はないようです」

「・・・随分と愉快な艦のようだな」

「ハッ!」

そのリョーコの反応を見た梁が少し寂しそうに笑った

「スバルよ 結局なおらなかったな」

「・・・何がでしょう?」

「私は現場叩き上げの人間だ、そういう堅苦しい言葉は苦手なのだがな」

「もっ 申し訳ありません」

謝りながらも堅苦しい口調のリョーコ

そんなリョーコを見て 梁はさらに笑みをこぼす

「お前とアマノとマキ・・・3人の中で一番筋がよかったのはお前だったが

一番軍人の匂いを漂わせているのも お前だったな」

「・・・教官は軍人が嫌いなのですか?」

「はっはっはっ 火星の人間は多かれ少なかれ軍人を嫌っているものだよ」

「そうなんですか・・・」

「・・・無論、アキ坊もな」

「!!」

「え? 俺がどうかしましたか?」

アキトはようやく復活していた


「いや、なんでもねぇ・・・アキト悪いんだけど 今日はメシ一緒に食えねぇ」

「え、そうなの?」

「悪ぃな」

リョーコは 梁の言葉がショックだったのかフラフラしながらシミュレータールームを出ていった

「ふむ、ではアキ坊 今日は私がメシをおごってやろう」

「いいんすか?」

「かまわんよ」

そして 梁はアキトを引き連れて近くの居酒屋に連れて行った

リョーコはとうに食事を終えたヒカルとイズミを連れ屋台でくだをまいていたらしい

後にヒカルは「あれは人生に疲れきったおとっつぁんだった」と語ったという・・・






その頃、梁とアキトは 梁の行きつけの居酒屋で遅めの夕食を食べていた

無論、この居酒屋もネルガルの施設の1つなのだが



「・・・アキ坊、何を考えている?」

「え? 何の事ですか?」

「とぼけるな、お前が黙ってパイロットの訓練を受けるなど・・・有り得ん」

「・・・・・・・・・」

しばし、無言だったアキトだが 梁の全てを見透かしているような瞳の前に

隠し事はできまいと すべてを話す事にした

「俺・・・守れなかったんスよ」

「家族をか?」

梁はアキトに家族がいない事を知っている

しかし、世話になった施設の人々を『家族』と呼んでいる事も知っていた

「それもあるけど・・・シェルターで出会った女の子を」

「・・・」

「俺のあげたオレンジ、喜んでくれたんです・・・原っぱで遊ぼうって約束したんです・・・」

そこまでいって アキトは泣き出してしまった

いままで 周囲の勢いに流されて自らは流す事のできなかった涙が 感情が すべてが流れだしてしまったのだ

梁は何も言わない、言えることなど何もない

しばし、アキトのすすり泣く声だけが店に響いた


やがて アキトは顔を上げる

「おじさん、俺 強くなります 二度とあんな事のないように・・・」

「・・・そうか」

それからは 2人とも口をきく事無く黙々と食事を続けた

ただ、アキトはどこか晴々とした顔をしていたという






そしてアキトが梁と別れて部屋に戻った時

リョーコは相当思い悩んだのか またパジャマ姿で体育座りをして顔を膝に埋めていた




「ど、どうしたの? リョーコちゃん」

「なんでもねぇ・・・」

とてもそうは見えない

しかし、無闇に触れてはならない雰囲気をリョーコは漂わせていた




どうすればいいのかわからず おろおろしているアキトに

背後からヒカルという助け船がやってきた


「アキトくん アキトくん」

「あ、ヒカルちゃん」

ヒカルに呼ばれるまま部屋を出るアキト

そこにはイズミの姿もあった

「実はリョーコさ、自分は軍人だからアキト君に嫌われるんじゃないかって思ってんのよ」

「は? リョーコちゃん 軍人だったの?」

アキトは真顔だ

「これは天然ね・・・手強いわ」

何故かライバル意識を燃やす芸人 イズミ

「私達 もうすぐ民間船に乗り込むから『元』なんだけどさ」

「え?」

「明後日よ その艦は明日には到着するそうだけど」

「そっか・・・淋しくなるな・・・」

そのアキトの態度に「脈アリ」と見たヒカルとイズミは ここぞとばかりに親友のために一肌脱ぐ

「ズバリ聞くわよ アキト君!」

「え? 何?」

突然のヒカルの剣幕に壁に追い詰められながらも頷くアキト

「アキト君・・・リョーコの事どう思ってるの!?

「え? そりゃ・・・家族、かな?」

「「はぁ〜〜〜〜〜」」

予想通りの天然なセリフにヒカルはおろかイズミまでもため息をつく

「あのね、アキト君! あんたとリョーコは姉でも弟でも兄でも妹でもないのよ!」

「そりゃそうだけどさ・・・」

「そういう相手を家族にする どういう事かわかってるの?」

「そうは言われても・・・慣れてるし

「「!?」」

突如のアキトの言葉に今度はヒカルとイズミが逆の壁まで下がる

「アキト君ってば・・・」

「もしかして・・・手馴れてる?

当然 誤解だ

それは アキトの次の言葉で証明される事になる

「俺、孤児院育ちだからさ 血の繋がらない家族なんて いくらでもいたから・・・」

「・・・あ」

「・・・そういうことね、天然だけど」




「まぁいいわ! アキト君 家族ならリョーコ慰めて!」

「俺が?」

「・・・あんたしかいないのよ ロンリーを慰められるオンリー・・・クックックッ」

「わ、わかった・・・」

何故かイズミには逆らってはいけない気がした


そして アキトはヒカルとイズミに部屋の中へと蹴飛ばされる

そのまま 勢いをつけてリョーコの前まで来る

「あのさ・・・リョーコちゃん」

「・・・・・・・・・」

「その、何ていうか・・・」

「・・・・・・・・・」




当然 ドアの所でヒカルとイズミは見張っているのだが

「あ〜 じれったい!」

「しょうがないねぇ・・・」




「だから・・・その「今夜は一緒に寝ない?」!?

「!!」

バッと顔をあげるリョーコ

アキトの顔の青さに対してリョーコの顔は真っ赤だ

「・・・わかった」

「ちょ、ちょっとリョーコちゃん それはマズイって・・・!」

顔の赤さのわりには頭の方は真っ白になってるのか 動きはのろのろとしたものだが

何故か有無を言わせぬ力強さがある

「・・・・・・・・・」

「リョ、リョーコちゃん を覚まし・・・!」

抵抗虚しく アキトはそのままベッドに引きずりこまれてしまった






それを見届けたヒカルとイズミはドアを閉めそれぞれ部屋に戻る事にする

「ねぇ イズミ どこでそんなの手に入れたの?」

「通信販売よ」

ニヤリと笑うイズミの手にはボイスチェンジャーが握られていたとか











その日の晩

すやすやと安らかな顔で眠るリョーコに対し アキトはいまだに眠れずにいた

「うぅ・・・眠れない・・・」

しかし、それが幸いした 何故なら・・・


ドカァンッ!!


突如 響き渡る爆発音


ヴィー! ヴィー!


続いて聞こえてくるのは警報音にアキトはすぐさま飛び起きた

「リョーコちゃん 起きて!」

「ああ、もう起きてるぜ」

リョーコの方も最初の爆発音で既に目覚めていた

「これは一体・・・」

「敵襲だ!」

「てき・・・木星トカゲ!?」

「それ以外にいねぇだろ 急げ!」

リョーコはそう叫ぶやいなや アキトの目も気にせずパジャマを脱いでパイロットスーツに着替える!

そして着替えが終わると 部屋を出て両隣の部屋のヒカルとイズミを呼ぶ


しかし、2人からの返事はかえってこなかった


「クッ・・・」

「リョ、リョーコちゃん・・・もしかして 2人は・・・」

「バカな事言うんじゃねぇ!」

「ご、ごめん・・・」




その時、リョーコの部屋に通信が入る

乱れがちの画面に映ったその顔は 連合軍の旧式パイロットスーツに身を包んだ梁だった

「教官!」

「おじさん!」


「ふむ、2人とも無事だったようだな・・・」

「何やってるんだよ そんな旧式着て!」

「生憎と 私は新しいパイロットスーツは好かんのでな」

「おじさん・・・戦っているんですか?」

「・・・ああ、アキ坊 スバルを守ってやれ」

「はい」

「ズバル、アキ坊を頼む」

「・・・おう」


「アキ坊」

「・・・はい」

「私は ここで死ぬ」

「!? な、何言ってんですか!?」

「かまわん、私が死んでも 私の思いを受け継ぐ者はいる

私の部下達、その子供達 そして お前達と いずれ生まれいずるその子供」

「「!!」」

「平和への願いは・・・受け継がれればいい それで私の命は無意味ではなくなる」

「だからって・・・!」

力を込めすぎたリョーコの拳から血が流れる

「おじさん・・・」

「まぁ、おかげでいつの間にか『仲人将軍』などと呼ばれてたがな

お前達が記念すべき 50組目だ 間に合ってよかった」

梁が微笑む


そんな梁の死を超越したと思わせる表情に

戦闘 真っ只中でありながら どこか神々しい空気に満たされる


そして、梁は とても良く通る声で2人に言った




「アキト・・・汝、病める時も 健やかなる時も リョーコを妻とし助け合い 共に生きる事を誓いますか?」

「・・・・・・はい」

しばしの後 アキトが力強く頷く




「リョーコ・・・汝、病める時も 健やかなる時も アキトを夫とし助け合い 共に生きる事を誓いますか?」

「・・・・・・・・・は、はい」

リョーコが涙だらけの顔で頷く




「スバル・・・そんな顔をするヤツがあるか」

「す、すいません」

しかし、涙は止まらない

「アキ坊、嫁さんは意外に泣き虫だ 大事にしてやれよ」

「は、はい」




「人生とは面白いものだ・・・最後になって 私に神父の真似事までさせてくれるとは」

「最後なんて言わないで下さい おじさん!」

「そうだぜ 教官! 俺はまだ あんたに教わる事が一杯ある!」


しかし、どこかシニカルな顔をする梁の答えはこうだった

「うるせぇな 死に場所ぐらい自分で選ばせろい」


そしてニッと歯を見せ 迷いのない笑みを見せる

そう、梁は死に際しなお笑っていたのだ


「悔いは無い・・・私は・・・の・・・きた」


ザーーーッ・・・


そして通信は途切れる

梁の最後の言葉を聞きとる事はできなかったが

最後まで梁の顔か笑顔が途切れる事はなかった






「おじさん・・・おじさん・・・」

何も映らないモニターにすがったまま震え続けるアキト

リョーコとて平然としている訳ではなにのだが

このまま ここにいれば梁の意思を受け継ぐどころではなくなる事は確かだ

自分が何とかしなければいけない そう決心したリョーコの行動は速かった


「アキト!」

その声とともにアキトの頭を自分の胸に押し付け そのまま強く抱きしめる

「リョリョリョーコちゃん?」




「俺の心臓、ばくばくいってるの・・・聞こえるか?」

「う、うん・・・」

「俺だって・・・俺だって 怖いんだよ お前だけじゃねぇ」

「リョーコちゃん・・・」

「でも、お前がいてくれるなら 戦える・・・お前は、お前はどうだ?」

「リョーコちゃん 俺・・・」


アキトも決心した

もう、逃げないと、リョーコを守ると


「俺も戦うよ、リョーコちゃんと一緒なら戦える!

「アキト・・・!」

「行こう! 絶対に2人で生き延びるんだ!」

「ああ、俺が乗るはずの艦が近くまで着ているはずだ そこに行くぞ!」

アキトはリョーコの手を引いて走り出した

繋いだその手が離れる事は決してなかった











2人は比較的破壊の少ない廊下を通って0G戦フレームが置かれている格納庫に辿り着いた

「・・・残ってるのは7機か・・・2機は俺達が乗るとして 残り5機」

「リョーコちゃん はやく行こう!」

アキトがリョーコを急かす

じょじょにコロニー内の空気が薄くなってきている

アキトの方はパイロットスーツではないので 気が急くのも無理はない

「アキト、お前 実際に乗るのは初めてだろ 大丈夫か?」

「大丈夫さ、やってやる!」

「そうか・・・アキト お前は2機牽引していけ 俺が3機牽引していくから」

「え? これ 持ってくの?」

「ああ、ナデシコがこいつを待ってるはずだからな」

「なでしこ?」

「俺が乗り込む船の名前さ」

そして 2人はそれぞれエステバリスに乗り込み

それぞれ2機ずつ牽引した後 残りの1機を牽引しようとリョーコ機がワイヤーを片手に近付く




ヴン・・・




しかし、その時 無人のはずのエステバリスの1機の目に光が宿った

「!?」

そのエステバリスに手を伸ばしていたリョーコ機が咄嗟に距離を取る

「ヒカルか? ・・・いや、こんな悪趣味な事するのはイズミか!?」

「ち、違うよ リョーコちゃん」

例えるならばホラー映画に出てくるゾンビのような動きで近付いてきたエステバリス

その頭、背中、そして腕には 獲りついた木星トカゲ達の姿が

「・・・ま、まさか、こいつらが操ってるのか?」

「来るぞ!」

リョーコの声を合図に散開する2機

先程まで2機が立っていた所に 操られたエステバリスの攻撃が突き刺さる


「色々乗っけてるくせになんて速さだ!」

「こいつ!」

アキトが殴りかかるが相手は容易く避けてしまう

「避けられた!?」

「下がってろ!」

そう言うやリョーコ機は折れかかっていた鉄柱をむしり取り それで殴りかかる

しかし、敵は リョーコの攻撃も容易くよけ

更にリョーコ機の首を掴んで壁に叩きつけた

そして そのままトドメを刺そうと拳を構える

「こっ こなくそーッ!」

「リョーコちゃん!」


ガシャァッ!


その時 背後からアキト機が体当たりをし

獲りついた木星トカゲ数匹を破壊しエステバリス吹き飛ばす!




その時、リョーコは敵のエステバリスが鳴らす特徴的な音を聞いた

「! アキト、腕が来るぞ!

「えっ!?」


その言葉とともにエステバリスの両手が伸びアキトに迫る!

「ぐあっ!」

リョーコの方に注意が向いていたアキトが不意を突かれ一撃目を食らい

更にトドメを刺すつもりか腕についた木星トカゲがバーニアを吹かせ拳の方向を変える

リョーコでも避けようのない一撃、それがアキトに迫っている

「危ないッ!」

リョーコが声をあげるが 壁に叩きつけられたエステが動いてくれない


次の光景を想像し リョーコは思わず目を瞑る


しかし!


「うわあぁぁぁッ!!」

アキトは叫び声とともに機体を酷使する旋回運動で攻撃を避け

そして、勢いをつけて一回転した後 そのまま突撃をかけた!

対し 頭部に獲りついていた木星トカゲは 自らに搭載されたミサイルでアキト機を迎え撃つ

「アキトぉっ!!」

「守ってみせる! 絶対にッ!!

降りしきるミサイルの雨をくぐり抜け

アキトの繰り出した拳が 木星トカゲごとエステバリスの頭部を砕いた!





















2機ずつ牽引しながら近くまで来ていたナデシコに向かっているアキト機とリョーコ機

結局、木星トカゲに取り付かれていた1機は使い物にならず サツキミドリに置いて行く事にした

「アキト・・・お前 トラクターで四輪ドリフトするって話ホントだったんだなぁ」

『ははは、俺さ 昔 プラントと食堂と掛け持ちで働いてたから

早く移動しようとして いつの間にか 身についてたんだよ』

リョーコは目を丸くする まさか自分にもできない急旋回を

そんな理由で身に付けていたとは思わなかったのだ

「へ、へぇ〜 その急旋回をエステでもやっちまうなんて・・・」

『リョーコちゃんの攻撃に比べたら 大した事なかったよ』

「ひでぇな・・・それと、リョーコ『ちゃん』は止めろ 前にも言っただろ」

『あ、ゴメン・・・』

「ったく・・・」




『わかったよ、リョーコ


ぼんっ


リョーコは真顔で呼び捨てにされ 顔を真っ赤にしてしまう

「な、な、な・・・」

『ゴメン、これからは ちゃんとリョーコって呼ぶよ リョーコ

「・・・・・・リョーコちゃんでいい」

モニター越しにでもアキトの顔を見ることができず俯いたまま小声でポツリと呟いた

しかし、アキトは気付かない

『無理する事ないよ 俺 これからずっと リョーコって呼ぶからさ』

「だから!」






『2人ともいつのまに そんな仲良くなっちゃったのー!?』

『友のいぬ間になんとやら・・・』


突如入ってきた通信は 行方のわからなかったヒカルとイズミ

『ヒカルちゃん! イズミちゃん! 無事だったんだね!』

『あったりまえじゃな〜い♪ 先にナデシコに乗り込ませてもらったよ』

『リョーコの白無垢姿見るまでは死に切れなくてねぇ』

「お前は俺のお袋か!」






『全員とは言わないけど 大勢逃げれたよ・・・教官のおかげで』

『リョーコ、言いにくいんだけど・・・』

急にシリアスになったヒカルとイズミが何を言いたいのか察しがついた

「いい、わかってるから」

『そう・・・』




「アキト、教官との約束 守らなきゃな・・・」

平和への願いを受け継ぐ・・・決してリョーコは1人ではない

しかし、アキトは


『え? 子供つくるの? まだ 早いよリョーコ』

やっぱり わかっていなかった


「ドアホーーーーー!!」

音が無いはずの真空の宇宙にリョーコのツっこみが虚しく響き渡った




その後、ナデシコに乗り込んだリョーコが

にやにやと笑うヒカルとイズミにからかわれまくったのは言うまでもない








あとがき


今まで掲示板でメールで感想をくださった皆様

本当にありがとうございました!

これにて 機動戦艦ナデシコifは閉幕となります


捕われのお姫様になり

料理のうまいお嫁さんになり

さらには 病床の令嬢にされ

トドメに かいがいしい妻となる


可憐な真のヒロインと言われ続けたアキト

最後の最後でそれなりにカッコ付ける事ができました・・・かな?


それでは、皆様の感想 お待ちしております



 

 

代理人の感想

 

祝・五作目にして初のヒーローアキト誕生!

 

つーことは、IFのアキトって

 

ヒーロー5%

ヒロイン45%

 

 

天然横綱スケコマシ50%

 

 

な訳ですね!

(いや、一度に一人だからそれでも大関と言ってやるべきか?)