機動戦艦ナデシコ アナザーストーリー

 

世紀を超えて

第1話 現実から逃げ出したくて

 

 

 

広大なる大宇宙の片隅で今、2隻の戦艦が壮絶なドックファイトを繰り広げていた。  

一隻は連合宇宙軍最強と目されるナデシコC。  

もう一隻は連続コロニー爆破犯が潜伏していると巷で噂されるユーチャリスと言う船であった。  

「アキトさん、もう…いい加減に帰ってきてください!」  

「…その気は無い。そう、言ったはずだ…。」  

艦長同士の話し合い(?)は平行線をたどり、何時果てるとも無く続いていた。  

が、  

「でも、もう逃げられませんよ?」  

ルリが呟く…。  

「アキトさん。あなた達にはもう、時間が無いはずです。」  

そう、ルリ達には絶対的な勝算があったのである。  

……。  

「…知っていますよ。とうとうネルガルが貴方を見捨てた事を…ね。」  

…。  

そう、先日アキトはネルガルの重役達に呼び出された。  

「……と、言うわけで我々ネルガルとしても何時までも貴様を庇い立てしている訳にはいかないのだよ。

 早々に援助を打ち切らせてもらう。」

「なお…、君にはネルガル職員の義務として、わが社の利益を損なうような事命しておく…

 学の無い君にも分かるように言うと、つまり、軍に捕まってもネルガルの名を出してはならない!と言う事だ…

 分かったかね。」  

「ああ、そうそう…願わくば軍の新鋭戦艦と戦って、データを送った後に壮絶な戦死でも遂げてくれるとありがたい。」

「死にかけていたところを我等に助けられたのだ…よもや嫌とは言わんな?」

「「「「寛大な我等に感謝するが良い。」」」」  

 

……。  

 

………。  

 

それは、  

 

余りにも、  

 

残酷な命令……  

 

…。  

 

「言いたいことは…それだけか?」  

アキトのコトバ  

「第一、俺の両親を…」  

有るのはイカリ  

「殺したのは貴様らダロウガッ!!」  

そして………決別。  

「…許さん。ネルガルの裏の顔、世界中のマスコミに暴露させてもらう。」  

が、  

「…無理だと思うがね。君には…。」  

冷たく言い放つ重役達。  

「アカツキ会長を君は見捨てられるのか?」

「エリナくんはどうする?」

「スキャンダルがあった場合、会長の不信任決議が採択される。」  

それは猫がネズミを追い詰めるかのようなコトバの暴力…。  

とどめは…。  

 

 

「もし、君が全ての真実を世界に語ると言うなら我等は…。」      

 

「ラピス・ラズリの生い立ちを全宇宙に発表してやろう。」  

 

「!!」

 

…アキトの完全な敗北であった。それに気を良くした重役達はさらに続ける。  

「…人質と言う物はね。何も柄を拘束しなくても取れる物なんだよ。」

「それに君はね。親のカタキと知った上でネルガルにいたのだよ?」

「それに大量殺人犯だ。」

「世間は君を許さんよ。」

「「「「それに、世間に真実が知れればホシノ・ルリはどうなる?」」」」  

…やや置いてからアキトに声が掛かった。

「分かったかね。さ、行くんだ。」  

「まあ、生まれた時代が悪かったな。」  

温情の欠片も無い言葉に見送られ、アキトが退室していく。  

 

「行ったな。では軍に恩でも売るとするか」  

「うむ、では宇宙軍…いや統合軍の方が良いか。」  

「ああ、連絡してくれたまえ。」  

「…『コロニー連続破壊犯、発見せり』…ネルガル諜報部…と。」  

 

ガクン!  

 

…突然、電気が落ちる。  

「な、なんだ!」  

奥から現れる人影が3つ。  

「…全て聞かせてもらいました。会長の不信任決議ですか…ゴートさん。」

「…貴方達は先ほど、会長命令により解任されました。」

「年貢の納め時…ね。さあ、出ていって頂戴!」  

 

…そして、数刻後。  

 

「さて…、アキト君にあいつ等がもういないって教えてあげないとね。」  

「ええ、そうですねエリナさん…ところで肝心のテンカワさんは?」  

「…消息不明、だそうだ。」  

「「ええっ!?」」  

 

そっと、倉庫の方を指差すゴート。そこからは黒い煙が上がっている。

「テンカワはあの後直ぐに倉庫を襲い、物資を盗んで逃走。だそうだ。」  

「…参りましたねえ。あの倉庫の再建で幾らかかるやら…。」  

「ん、メール?…アキト君!!」  

 

『エリナ、アカツキに伝えて欲しい。もうこれ以上迷惑はかけない、と。』  

 

…短い、メール。だがそれは…アキトにとっては死刑宣告を自らにしたような物だった。  

「…どうしてテンカワさんに救いの手が差し伸べられるのは、もう手遅れになった後なんでしょうかね…。」  

プロスペクターの呟きに答えられるものは誰もいなかった。  

 

…。  

 

………。      

 

そして、戦場。  

「…あの後、なにも知らない倉庫の警備員があなたの事を通報してくれたんです。

 さ、帰りましょう…ユリカさんも待っています。」

「そうそう、艦長はアンタの為に随分危険な橋を渡ってきたんだぜ…

 たまには妹の我侭を聞いてやるのも兄の務めじゃあないかい?」

「まったくです!兎に角1度じっくり話し合って…奥さんの元に帰ってあげるのが筋じゃないですか?

 艦長にあまり迷惑掛けないで下さい!!」  

「…通報したのは俺自身だ。」  

「えっ、それじゃあ!」

「おっ、ついに観念したかな?」  

 

しかし・・・。  

 

ビ−ッ!ビ−ッ!ビ−ッ!ビ−ッ!ビ−ッ!ビ−ッ!ビ−ッ!  

 

「大変です!三時の方向から統合軍の大艦隊がこの空域に迫っています!」  

「こ、こっちは…九時の方向!火星の後継者の残存部体だっ!!」  

「ど、どうして…。」  

 

アキトからの通信が入った。  

 

「…あれも俺の通報だ…ルリちゃん、ありがとう。」  

「あ、アキトさん!?」  

「さよなら。」  

「ま、待ってください!!」  

「…もう、疲れたよ。」  

 

プツン  

 

通信が途絶えた…。  

 

…ユーチャリスは艦首を火星の後継者の方に向け、突撃すると速攻でグラビティーブラストを放った。

全エネルギーを使ったその一撃は艦隊を一瞬で消し飛ばした。

余りにあっけない、火星の後継者の最後だった…。  

だが、それを見た統合軍は、エネルギーを使いきったユーチャリスに集中攻撃を加える。弾け飛ぶ装甲…。

 …そして…爆発。  

ユーチャリスは光と共に虚空に消えた…。  

後には残骸のみが残った。  

 

…。  

 

……。  

 

………。  

 

全ては数分間の出来事。

 

 

 

・・・。  

 

「うまく行ったな…。」   コクリと頷くラピス。   そこは船の残骸が漂う辺境の地。  

『装甲内部に仕掛けた爆薬のせいであちこち傷ついててもう戦闘続行は不可能だよアキト。』  

「ああ、そうだろうな。…だが、お前が戦う事はもう無いと思う。」  

『…じゃあ、僕はなにをしたら良いの。』  

「…ではオモイカネ・ダッシュに艦長として命ずる。まず、第一に…」  

アキトの指示は以下の通り。  

 

1.ユーチャリスを修理した上で大型輸送船としての偽装を施す事。

  偽装と言っても輸送船としてきちんと使える様にする事。

2.アキト達の新しい戸籍を用意する事。

3.物資調達の為ユーチャリスにプラントを設置する事。  

等である。  

 

…数ヶ月後、とある運送屋が開業。  

安い値段と異常なまでの運送速度を売りにしてそこそこの成功を収める。  

…アキトはついに平穏を手に入れたのだった。      

 

 

::::後書き::::

BA‐2です。始めての連載物です。

…けれども題名さえ変えれば読みきりに出来ますね。これ(笑)

題名の由来は2話で明かされます。

よろしければ感想でも送ってください。

 

 

管理人の感想

 

 

BA-2さんからの連載投稿です!!

かなりの悪ぶりでしたね〜、重役さん達(笑)

まあ、見事に成敗されちゃいましたけど(苦笑)

あの後は大人しくなったのでしょうかね?

それだけが心配です。

それにしても、アキトが運送会社・・・

何処にでも跳べますからね、文字道理に(爆)

そりゃあ、早いでしょうね(笑)

 

ではBA-2さん、投稿有り難う御座いました!!

次の投稿を楽しみに待ってますね!!

 

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