機動戦艦ナデシコ アナザーストーリー

 

世紀を超えて

第12話 そして時は動き出す

 

 

 

 

アキト達が奪取した軍の研究施設に移ってから・・・既に数ヶ月の時が流れている・・・。  

既にこの火星上に連合軍の拠点は数えるほどしか存在しない…。  

 

…現在この施設に居るのは全部で500名程度…全世代からまんべんなく集められていた。  

 

何故か?  

 

話は…施設奪取から一月程たった、ある晴れた日に遡る・・・。  

 

・・・。  

 

「はーい!…皆、注目!」  

 

広いロビーにナツメの元気な声が響き渡る。  

 

「なんだなんだ…?」

「さあ?」

「とにかく行こうぜ。」  

 

先程から作業に没頭していた者達がゾロゾロと集まってきた。  

 

「えー、発表します!」  

 

ナツメはコホンと咳払いをした後  

 

「本日はこの施設に残る人と、別なところに移動する人を分けます!」  

 

と、いきなり一言だけいった。  

 

ザワザワザワザワザワザワザワザワ・・・・・・・・・。  

 

当然の事だが…突然のことに驚いた周りが騒ぎ出す。  

 

「選抜方法は如何するんです?」  

 

一人が聞くと・・・。  

 

「残りたい人は2〜3日中に連絡してください。」  

 

ナツメの答えは極めて簡潔な物だった・・・。  

 

・・・。  

 

この時点では・・・の話しだが・・・。  

 

…当然、皆残るつもりだ。

…ここは食糧事情も良く、建物も無傷な物が多い為、暮らしていくのには最高だったのである。  

特に…鉱山に潜伏していた連中は、随分と肺をやられていた。元の場所に戻る気などまったく無さそうだった。  

 

・・・それに補足を付けるアムの言葉を聞くまでは・・・。  

・・・。  

 

「但し…ここに残る人は、連合軍の反抗が有った時、先頭に立って戦ってもらいます。」  

 

ザワ・・・。  

 

・・・場がざわめく。・・・それはそうだ…誰だって死にたくは無いだろう。  

 

「・・・因みに、残った人は逃げ出す事も許されなくなります…全ては…仲間を一人でも多く生き延びさせる為・・・。」  

 

そこまで言ったアムを制し、ナツメが続けた。  

 

「アタシ達の言う事…解った?…つまり、この施設は」  

「・・・囮になるのよ。」  

 

・・・。  

 

場が、静まり帰った…。  

…その後もアムの説明は続いたが、  

要約すれば、こう言う事である。  

 

…この施設は元々連合軍の研究施設…それも兵器開発と言う、いわば軍事機密の宝庫とも言える。  

当然、連合軍も躍起になって奪い返そうとしてくるだろう。  

そこで、この作戦となる。      

…まずここに、カモフラージュの為、全世代をまんべんなく集める。  

そして、あたかもここに、独立派全員が居るかのように見せかける。  

そして、連合軍に必死の抵抗をする。  

その間、他の班は元の場所で息を潜め、目立たないようにする。  

 

…もし、ここが落ちたときは、全員最後まで戦い、独立派があたかも全滅したかのように装う。  

他の班は、連合軍が引き上げたのを確認した後…  

居残りの兵士にでも…独立派に追われ、隠れていた作業員ですとかなんとか言ってうまく元の生活に戻る。      

つまり・・・この施設に残る=最初から捨て駒…であった。  

 

・・・。  

 

辺りからザワザワと『ふざけるな』や『冗談じゃない』とかいう声が上がる。  

 

だが・・・、  

 

「その代わり、ここに残る人には最優先で食料が供給されるわ。…無論、日用品の類も。」  

 

ザワザワザワッ…ピタ。  

 

静まり返る。  

 

「それに、シャワーやお風呂も使いたいだけ使えます…。あ、後ベッドで寝られるんですよ…因みにボクは、残ります。」  

 

・・・ざわ・・・ざわ・・・。  

 

辺りは別な意味でざわめいた。  

やはり、廊下だったと思われる場所に、薄いボロ毛布一枚で眠らなければならないと言うのは、かなり疲れる様だ。  

・・・迷うものが出始めた。  

 

それに気づいたナツメは最後の一押しに入る。  

 

「そうそう、ここ、冷暖房完備よ。(にっこり)」  

!!  

何人かが顔をガバッと上げた…どうやら残る者が出てきたようだ・・・。  

 

・・・。  

 

・・・時系列を戻して・・・      

 

廊下をナツメと月臣が歩いている。  

 

「結局・・・300人しか残ってくれなかったけどね。」  

 

ナツメがぼやく。  

 

「…それで、他の班にも志願者を募ったのか・・・。」  

 

月臣は、ふうとため息を突きつつ相槌を打つ。  

 

「仕方ないでしょ、残ってくれた人の大半が老人と子供じゃあ・・・。」  

「…戦いにならない…か。」  

 

ナツメが首を振る。  

 

「…連合軍に疑われるでしょうが。

 …若いのは如何したって…アタシ達が玉砕した場合、それで独立派が全滅したと敵に思わせないといけないんだから。」

「・・・まったく…お前って奴は(汗)」  

 

余りの言いぐさに呆れ返る月臣。  

 

「…けどさ、その為にわざわざ好待遇にしてるんだから。」  

 

ナツメは続ける。  

 

「…お前も、その玉砕する人間に入っているんだぞ?」  

 

月臣が指摘する…が、  

 

「…指揮官なんだし…当然でしょ?」  

 

…取り付く島も無かった・・・。  

 

・・・。  

 

その頃…アキトは…。  

 

「…ここまで、完成させたのか。」  

 

…驚いていた。  

 

「まあね…でも、僕も機械の事には詳しいはずなんだけど、君の機体には本当に驚かされるよ。…君自身にもだけど。」

 

随分出番が無かった山崎だが、どうやらエステの研究をしていたらしい。

ただ…君自身…の所でアムとラピスを見ていたのは何故だろう?(苦笑)  

 

「でも、ようやくここまで来れた。ま、ここは設備も良いし…これなら実戦にも出せると思うね。」  

 

白衣の下にツナギというぶっ飛んだ格好の山崎の後ろには2台のエステモドキが鎮座していた。  

一台はアキトが持ってきた物。  

もう一台は山崎がアキトのエステバリスを元に作り上げた物。  

だが、それらを本当にエステと呼んで良い物なのだろうか?  

…アキトはコレを持ち出す際、オーバーテクノロジーだと言う理由でディストーションフィールド発生装置を取り外していた。  

武装も、運んでいたアンティーク物のバズーカのみ。…しかも弾切れを起こしてしまい、既に捨ててしまっていた…。  

現在は、基地に置いてあった戦車用の機関砲を無理やり改造して持っている。  

…因みにフィールド発生装置の有った部分には予備バッテリーを積んだので行動時間が延びたのは僥倖ではある。  

 

山崎の作ったほうは更に酷い。  

陸戦フレームっぽいのだが、ワイヤードフィストが片腕にしか付いていない。その上、付いている方の手はなんと鉄球だ。

山崎曰く「僕の技術じゃ、パンチのたびに手が壊れちゃうんで…。」  

作れなかったのか、アサルトピット方式ではない。  

スラスターの類は付いていない。

…代わりに装甲が厚い。  

 

だが、そんな物は問題ではない  

 

白鳥がペンキを持って右往左往している…青・赤・白・黄…間違い無い。  

・・・あいつ・・・ゲキガンガーにする気だ!!!(大汗)  

なにせもう既に背中に使いどころの無さそうな羽根らしきものが取りつけられてるし…。  

 

・・・。  

 

「所で…山崎。」  

「なんだい?」  

「コイツは…どうみても陸戦フレームなんだが・・・。」  

 

アキトが冷や汗混じりに聞く…因みにアキトの乗っているのは空戦フレーム。  

 

「ラピスちゃんに設計図を見せてもらったんだ。」  

 

・・・。  

 

《ラーピース−−−−−!(怒)》  

 

アキト、怒る!  

 

《…ごめん、アキト…山崎がね、ちょっとだけって言うから(泣)》  

《ちょっとだけってなあ…ラピス・・・》  

 

アキト、呆れる。  

 

《…だって》  

《あれほど言っただろう?…あれは出しちゃいけないって…》  

 

とてとて・・・。  

 

《アキトさん…まあまあ、ラピスが可哀想じゃないですか(微笑)》  

 

アムが割り込んでくる。  

 

《みんな…アムのせい(怒)》  

(アムちゃん?…ああ、そうか…そう言う事か(苦笑))  

 

納得するアキト。恐らくラピスの思考を読まれたのだろう。  

 

(・・・このままじゃあ・・・俺達の正体がばれるのも時間の問題だな…)  

 

アキトがそんな事を考えていると  

 

《この間、言ってたじゃないですか?》  

《え?》  

《…あんまりよく解りませんでしたけど、アキトさんは・・・》  

 

・・・。  

 

《要するに『ボク』を助けに来た正義の宇宙人さんなんですよね?(ポッ)》  

 

・・・。  

 

…どう解釈したらそうなるのかは不明だが、取りあえず彼女はそう言う事で納得したらしい…

まあ、これで彼女がアキト達の本当の正体に気づく事はないであろう・・・。  

…そこにナツメと月臣が現れる。  

 

「やっほー、アキト!」  

 

ぽふ・・・。  

軽くアキトに抱きつきながら話しかけるナツメ。  

 

「!…あ、ああ・・・。(汗)」  

 

・・・ただそれだけで異様にうろたえるアキト・・・。  

 

「アキトから離れテ!」  

 

ポコポコ・・・。  

 

ラピスがナツメを叩くが、効く訳がない。  

…暫く睨み合っていた3人だが、  

 

「さ、兎に角話しを進めましょうか?(怒)」  

 

指をポキポキ鳴らしながら笑顔で言うナツメ。  

 

「ええナツメさん…(怒)」  

 

アムのにこやかな表情の隅には青筋が浮かんでいたりする。  

 

「・・・。(怒)」  

 

アキトの足にしがみ付いてアカンべーするラピス。  

・・・当のアキトは後ろで月臣と話し込んでいる。  

 

「…テンカワ、昨日2班から数十名合流した。…後は…暫くかかるな。」  

「そうか…で、今回の攻撃目標は?」  

「…もう、これ以上の攻撃は意味がない…連合軍が、仲間の居る場所に降りてきたら終わりだからな。」  

「…あえて、巣穴は残しておく…か。」  

「ああ…再侵攻は近いぞ。」  

 

・・・そんなシリアスな会話の後ろでは・・・。  

 

バチバチバチバチバチバチ・・・!!  

 

3名の夜叉が目から火花を散らしている。  

周りの連中は慣れている様で、スイスイと横を通りすぎて行く。  

北方に至っては飛び散る火花でタバコに火を付けていたくらいだ。  

 

…そんな静かな戦いを、アキトの頭越しに見ていた月臣は思った。  

 

「何でコイツはこの異様な雰囲気に気が付かないのだろう・・・。(冷汗)」   と。  

 

・・・。  

 

・・・だが、彼等に残された時間は少ない。

・・・連合軍の艦隊は既に火星のすぐ近くまでやって来ていたのである。  

…休息の時は終わりを告げようとしている・・・。      

 

 

そして・・・時は動き出す・・・。      

 

続く  

 

−−−連合軍艦隊・旗艦ブリッジ−−−  

 

「今回こそはあの小生意気な連中を根絶やしにしないといけないわよね!」  

 

ムネタケ提督・・・再臨!!  

 

「さあ、火星よ!…先ずは…生き残ってる連合軍の基地はある?」  

 

…。  

 

「はい。…独立派の拠点からは離れていますが、2〜3程。」  

 

アオイ中尉も来ていたようだ。

…オペレーターだろうか?  

 

「独立派…違うわよ、あいつ等は反乱軍!…反乱軍なの!いい?…今後、間違える事のないように…ね。」

 

そんな事に拘らなくても良さそうな物だがこだわるムネタケ…所詮はキノコ。  

 

「!!・・・はい…気を…付けます…。」  

 

内心は煮え繰り返っていたが、取りあえず従順に言う中尉。      

 

「解れば良いのよ…さてと。ミスマル艦長〜ォ!…さっさといくわよォ!!」  

「・・・・・・はっ。」  

 

…あれ、今回艦長を務めるのはミスマル中佐。…あれ…前任の人は?  

(提督が指揮を取る限り、この戦争・・・負けるな。

 …だが、私は…前任者のように、あの男のスケープゴートにはならんぞ!…絶対に!!)  

 

決意も新たに心の中で宣言する中佐…前任の名も無い艦長さん…ご愁傷様。      

 

そして…艦隊は、火星へ・・・。  

 

 

::::後書き::::  

BA‐2です。

いやー…ようやくここまで来ました。  

ついに連合軍と独立派の戦闘が始まります!  

…これで、地球側のオリキャラが出せます。  

では、こんな駄文ですが応援よろしくお願いします!

 

 

 

管理人の感想

 

 

BA-2さんからの連載投稿です!!

なかなか、悲壮な覚悟ですね(汗)

う〜ん、囮役を自ら務めるナツメちゃん達。

そんな中にあっても、ひたすら我が道を行く白鳥と北方(爆)

・・・もしかして、この二人って仲がいいのでは?

 

ではBA-2さん、投稿有り難う御座いました!!

次の投稿を楽しみに待ってますね!!

 

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