機動戦艦ナデシコ アナザーストーリー

 

世紀を超えて

第13話 嵐の前

 

 

 

 

一時の休息の時は過ぎ去り、今のこの静かな時間はただ、嵐の前の静けさに過ぎない・・・。  

そう・・・誰もが理解していた。  

火星の晴れ渡った空の向こうから大艦隊が押し寄せてくる。  

まだ肉眼では確認する事など出来はしないが、

レーダーには連合軍の艦隊が火星に向かって突き進んでくるのがよく解った…。  

 

・・・。  

 

各地の独立派の拠点からは活気が消え、亀の様に首を引っ込めて嵐が過ぎるのを祈りつづける。  

既に廃墟と化した、作りかけの街の地下で、息を潜める者達・・・。      

だが…そんな中一つだけ緊迫した空気の元で、戦いの準備を進める一団があった。  

忙しそうにトラックが出入りし、対空砲の整備が進められる。  

各所には見張りが立ち、内部の生産施設からは機械の唸り声が聞こえる。  

 

…そして、戦車隊を率いて訓練に明け暮れる巨人の姿。  

 

・・・。  

 

「全車!…ダミーに砲撃開始!!」  

 

ド派手なカラーリングの巨人から大声が響き渡る。  

 

・・・ドドドッ!!  

 

・・・。  

 

…ズガ−ーン!!  

 

「…命中したのは、10台中3台…か。」  

 

月臣が肩を落とす。…彼は軍に居た経験があるため、戦車隊の指揮を取っていたのだ。  

 

「…まあ、素人にしては上出来じゃないか…なあ、弦悟郎。」  

 

巨人のコクピットから白鳥の声が聞こえた。  

 

「…俺をその名で呼ぶなと言ってるだろうが。」  

「ああ、済まん。…時に月臣。」  

「なんだ。」  

「この忙しい時期に、テンカワさんは何処にいったんだ?」  

「…正体不明の大名行列を調査しにいったらしい。」  

「は?」  

 

・・・。  

 

一方、アキト達は…目の前の大名行列を眺めていた。  

 

ゾロゾロゾロゾロ・・・。  

 

「…あの、虫型のロボットが運んでいるのがダッシュさんなんですか?」  

「そうだヨ。」  

「…結局、修理は諦めたのか。」  

「アキト・・・仕方ないヨ。」  

 

ゾロゾロゾロゾロ・・・。  

 

…沢山のバッタに守られ、ジョロ達によって作られた神輿に乗せられ、

運ばれていくユーチャリスのメインコンピュータ、オモイカネ・ダッシュ。  

かつての墜落で受けたダメージは思いの他激しく、本来の材料が手に入らない状況の為に修理は難航。  

 

…遂にダッシュは修理を諦め、連合軍がやって来る前に安全な場所まで移動する事を決めたのであった。  

 

正に大名行列そのものの一行が向かう先は当然(苦笑)極冠遺跡。  

 

…何をする気なのだろうか?  

 

『アキト・ラピス…暫く音信不通になるけどお元気で』  

「ああ、お前もな。」  

「じゃあね…ダッシュ」  

 

ゾロゾロゾロゾロ・・・。  

 

「行ってしまったな・・・。」  

「…ダッシュ…。」  

 

・・・。  

 

「…それにしても、あれだけのAIを開発してるなんて・・・。」  

((ギク))  

「・・・アキトさん。まだ何かボクに隠してる事、有るんじゃ無いですか?」  

 

ブルブルと首を振るアキト。  

…そりゃあボソンジャンプとか極冠遺跡とかブラックサレナとか  

…挙句にユリカやルリの事とか  

言えない事は山ほどあるけど。  

 

「…そう言えば、何処に行く気なんでしょうか?」  

「さ、さあ・・・?(大汗)」  

 

…こうして冷や汗混じりの再会は終わり、アキト達は戦いに備えるべく行動を開始した。  

 

・・・。  

 

ここは、ナツメの執務室。  

 

「あ、お帰り。アキト、どうだった?」  

「…あ、ああ。問題は無い。」  

 

…アキトとナツメの間にササッと入り込むアム。  

 

「…で、ナツメさん。今後ボク達は如何言う行動に出ますか?(怒)」  

 

うんうんと頷きながらナツメは  

 

「…最初は様子見ね。アタシ達には戦力が乏しいから集中的に運用しないといけないしね。」  

 

と、のたまう。最もそれは…あくまで数の上での話だが。  

 

「専守防衛・・・ってやつですか・・・。」  

「でも、時が来たら攻撃に出るわよ。」  

「…その前にここ…持つのでしょうか?」  

「…その時はその時。…覚悟は出来てるんでしょ?」  

「ボクは…アキトさんと一緒なら、何があっても大丈夫ですから。(微笑)」  

「・・・そう?」  

 

何故か勝ち誇った笑みを浮かべるナツメ。  

 

「…あ、そうだ。ここの施設のコードネームだけどね。」  

 

これは、戦闘中等に使用される暗号名の事。  

…例えば戦車隊は小隊名と番号で識別される。  

 

例えばコードネームが『トータス4』なら、トータス小隊の4号車となる。      

 

「『研究所』に決まったから。」      

 

・・・。  

 

「…は?」  

「だから、研究所。」  

「なんでだ?」  

「ここって元々研究施設だし。」  

「・・・だからってなあ。」  

「月臣君にも言われたけどね…。」  

「やっぱり・・・。」  

「白鳥君に土下座までされちゃって・・・断れなくてさ。」  

(やはり…)  

 

緊張感の無いアキトとナツメの会話であった。  

 

・・・。  

 

「…白鳥さんらしいですね。」  

「ああ。」  

「…あ!」  

「アムちゃん?」  

「いい事思いつきました。」  

「はい?」  

「…アキトさん。期待しててください。」  

 

とてててて・・・。  

 

走り去るアム。…何か思いついたようだ。  

 

ゾクッ・・・。  

 

何故かアキトの背筋に寒気が走った。      

そして・・・。  

ここは、格納庫。エステの前でアキトと白鳥が話し込んでいる。  

 

「…で、来週には妻が合流するんです・・・!」  

「ほう。良かったな(…ユリカ。)」  

「ええ、これがもう可愛いのなんのって・・・。」  

「どんな子だ?」  

「美雪と言います。…実は自分達は現在駈け落ち中なんです…。」  

(…駈け落ち…か…。)      

「流石に先方も13歳の娘を嫁に出す気は無かったようでして・・・。」      

「…はいぃ!?(…13歳!?)」  

「ははは・・・お恥ずかしい。」  

 

・・・。  

 

アキトは話の内容の余りの凄まじさに、思わず話題を変えようと試みる。  

・・・ふと…巨人が目に止まる。  

 

「…しかし、本当にゲキガンモドキだなあ・・・。」  

 

目の前のエステ(?)を見上げつつアキトが呟く…呆れながら。  

 

「テンカワさん。自分の機体はゲキガンモドキでは有りません!」  

「じゃあ、何なんだよ…色はゲキガンそのものじゃないか?」  

「モドキではないと言いました。

 …そう、これこそは追い詰められた我々を救うため現実世界に突如として現れたゲキガンガーの化身!」  

(よくもまあ、そこまで思い込めるな…。)      

「・・・マーズガンガーです!!!」      

(…コードネーム…か?…オイオイ(汗))      

「そして、貴方の機体はブラックカイザー!!」      

「…ち…ちょっと待て!!(驚愕)」  

「はい?」  

「な…何だそれは!?」  

「マーズガンガープロトタイプ・エステバリス=ブラックカイザー・・・。」  

「貴方の機体に与えられた名前ですが?」  

「・・・だ、誰が決めた?」  

「自分のは自ら決めましたが・・・。」  

「お、俺のは!!?」  

「はあ、何でもアムさんが、」  

 

『アキトさんにはカッコイイ名前を用意しました。(はーと)』  

 

「とか言って決められたそうですが?」  

「…そのコードネーム…もう決定なのか?」  

「はい。」      

 

ばたん・・・きゅー・・・。  

 

「て、テンカワさん!?」  

 

アキト、倒れる。(爆笑)  

こんなんで、本当に大丈夫なのだろうか…?  

 

続く  

 

−−−一方、連合軍側−−−  

 

「さ、提督。本日の歓迎式典のお時間です。」  

「うぉっほん…解ったわ。」  

 

ムネタケのその返答に対し、慌てて言うアオイ中尉。  

 

「て…提督。作戦会議のほうは?」  

「よきに計らうと良いわ。」  

「でも、もう3日も無駄に・・・。」  

 

ムッ  

 

「五月蝿いわねぇ。…指揮官たるものはね・・・地元との交流も大切な大切なお仕事なのよ・・・。(怒)」  

(…ホントはただの宴会好きなのでは?)  

「…まあ良いじゃないかアオイ中尉。…提督もお忙しいようだ。」  

「流石は艦長ね。…じゃ、任せたわよ。」  

 

こつこつこつ・・・。  

 

提督は行ってしまった。  

 

「良いんですか、司令官抜きで作戦会議しても?」  

「アオイ君。勝利の為にはそのほうが良いのだ。」  

 

・・・。  

 

「でも、中佐。…負けたら責任を被せられるんじゃ?」  

「…それは居ても同じだ。」  

「!…ですね。じゃあ、始めましょう。」  

 

…。  

 

「実は…もう、命令は下してある。」  

「…来ないの、解ってたんですね。」  

「ああ。」  

 

・・・。  

 

「ナツメ君のことか…?」  

「…はい。…出来れば助けてあげたいんですが。」  

 

…。  

 

「・・・正直、難しいな・・・。」  

 

そう言って、ミスマル中佐は従兄弟でもある中尉から目を逸らすように天を見上げて、タバコに火を付けた・・・。  

 

・・・。  

 

その頃…研究所(笑)から数百キロの位置に有る連合軍戦車部隊のキャンプ。  

 

「ほら、ヤマダさん!…そろそろ出撃の時間ですよ。」  

 

そばかすの少女が寝袋の中で寝ていた青年を叩き起こした。  

 

「カズミ…幼馴染に対してもう少し優しくは出来ないのか?」  

 

…青年、山田太郎は不平を口に出す。  

 

「…大佐の足元に追いつけたらね。」  

 

少女、カズミ・レイナードはそう言うと、次の人を起こしに向かう。  

 

・・・。  

 

戦車が100台と歩兵が5000人。  

第1陣にしては多すぎると思われる戦力が移動を開始した。  

キャンプには予備戦力が未だ大量に残っている。  

 

・・・連合軍の気合の入れ方が解ろうと言うものだ。  

 

「ヤマダさん!」  

 

カズミが大声を挙げる。      

 

「…大佐が来るまでは長引かせてよね!!」      

 

ズコーーーー!  

 

盛大にコケる歩兵達。  

一方ヤマダは、  

「大佐…か、攻撃艦隊の第2波を率いてるんだったな…。」  

 

結構冷静に構えていたりする。  

 

・・・。  

 

そして…独立派の部隊が見えた時、  

 

(…カズミには悪いが、大佐の到着前に決着を付けてやるさ。)  

 

ガバッ!  

 

戦車の上に顔を出す。  

 

「よく聞け反乱軍ども!」  

「我こそは連合軍で2番目の実力を持つパイロットで戦車乗り!!」  

「…ちょこっと無敵なナイスガイ!」      

「俺が!ヤマダだあっっっーーーーーーーっ!!!」      

 

吼えるヤマダ…そして、戦いが始まる。  

 

::::後書き::::  

BA−2です。連載第13話です。如何でしたか?

連合軍側の人間も出てきましたよ!

…エステのネーミングはあえて、こんな風にしてみました。

…まあ、今後は戦闘シーンですね。…上手く書けると良いのですが…。

では!応援よろしくお願いします!!

 

 

 

管理人の感想

 

 

BA-2さんからの連載投稿です!!

凄いネーミングになっちゃいましたね〜(苦笑)

それにしても白鳥・・・お前って(汗)

幼妻にも限度があるぞ(爆笑)

ヤマダの兄さんも出てきたし(やっぱり濃い)

・・・最後の台詞「ちょこっと無敵な・・・」って、やはり実力は無いのか?(核爆)

 

ではBA-2さん、投稿有り難う御座いました!!

次の投稿を楽しみに待ってますね!!

 

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