機動戦艦ナデシコ アナザーストーリー

 

世紀を超えて

第14話 圧倒的なるその力

 

 

 

 

(TV版、オープニング風に・・・)  

 

アムです。  

…強い風が吹きつけて来ます…ですが、気にはなりません。  

遂に現れた連合軍戦車部隊。  

率いているのは…白鳥さんのお兄さん…。  

100台もの戦車と、数千人もの兵士さんが押し寄せてきます。  

 

・・・ボク達・・・生き残れるんでしょうか?  

 

(オープニングテーマが流れる)  

 

・・・。  

 

・・・暗い車内で話し声が聞こえる。  

 

「ゆーげっとばーにんっ…♪」  

「何だそれ?」  

「100年くらい前のアニメの主題歌さ。」  

「ふーん。でも、戦闘前に不謹慎だぜ…。」  

「十台かそこらの戦車であれだけの敵を相手にしろって言うんだ、歌くらい好きに歌わせてもらおうぜ。」  

「…ま、それもそうか。」  

 

「…そこ!少しは黙れ…戦闘前だぞ!」  

「「あ…はい!すいません月臣さん!!」」  

 

・・・。  

 

ここは、戦闘指揮車の中。月臣は解り切っていた事とはいえ、士気も練度も低い上、数まで少ない味方に呆れかえっていた。

 

「…糞、使える味方が少なすぎる。」  

 

そこに通信が入る。  

 

「弦悟郎、心配するな。俺に任せておいてくれ。」  

 

白鳥だ。見ると横の巨人、マーズガンガー(爆笑)が手を振っている。  

 

「…今回ばかりは頼りにさせてもらうぞ。…死ぬなよ五十六。」  

「ああ。少なくとも…仲間が死んでいくのはもう御免だからな…。」  

 

この時代の通信装置では顔は見えない。

…だが月臣にはコクピットの中で天を仰ぐ白鳥を容易に想像できた。  

 

・・・。  

 

…これまでの戦いで独立派はその殆どを失っていた。  

それも、大抵の場合は連合軍による虐殺と言っても良かった。  

…特に、この火星に舞台が移ってからは…。  

 

何故か?  

 

…それは、既に彼らが地球の戸籍上では死人扱いになっているからであった。  

独立派は既に月で消滅しており、生き残った僅かな人間は連合軍に降伏。  

…それが政府の発表であった。  

故に、生死の不明な者は死亡したと伝えられる。  

更に…この火星に存在する独立派の事は地球では伏せられていた。  

 

・・・連合軍にとって一番怖いのは国民の反応である。  

 

…しかし、火星にはそれが無い。  

当然、普段出来ないような事をして見たくなる者が現れ始めた。  

略奪…暴行…

酷いものになると、降伏してきた人間を至近距離で射殺したり、生きたまま体を切り刻み始めた例すら有ると言う。  

 

正に・・・狂気。  

 

狂気は狂気を呼ぶ。  

混乱する戦場。  

 

…いや…もはやそれは『狩り』と、呼ぶべき物。  

…獲物に情けは無用…と、言うことらしい…。  

 

・・・。  

 

「こちらラビット1…指揮車、聞こえますか!?」  

 

ふと、通信が入った。  

 

「ああ、聞こえている。…如何した?」  

 

前方をバイクに乗って偵察をしていた者からだ。  

 

「…ついに現れました!連合軍です!!」  

 

!!…緊張が走る!!  

 

「戦車100台から成る機動部隊と…逆方向から軍用トラックの大軍!」  

「…トラック?…積荷は何だ!?」  

「兵士が乗り込んでいます…数は、推定すると…5千人は居る物かと。」  

 

…カタン  

 

月臣は驚きのあまりマイクを取り落とす…。  

 

「2方面からの同時攻撃だと!…お前…偵察兵を見落としたか!?」  

 

月臣の剣幕に怯えながらも報告を続ける名も無い青年…哀れだ。  

 

「…いえ、偵察は無い様です。」  

「何故、そう言い切れる!」  

「敵の指揮官がヤマダ大尉の様ですから。」  

 

!!!!  

 

今度の衝撃は大きかった。…余りに有名な男だ…そして…。  

 

「いきなり兄が来ましたか。」  

 

白鳥の表情が曇る。…そう、白鳥五十六は旧姓をヤマダと言う。  

 

「予想外だな。」  

 

そう月臣がコメントすると、  

 

「…いずれは戦わなければならない相手だ。気にするな弦悟郎。」  

 

白鳥がそう答える。  

 

「…とにかく、ラビット1…帰還せよ。」  

 

そう、指示を出す月臣…。  

 

「ま、テンカワさんと北方の戦いぶりに期待しようか。」  

「…余裕だな、五十六。」  

「…そう見えるか?」  

「まあな…やはりそいつのお陰か?」  

「コイツは化け物だ。…弦悟郎、その内お前も乗って見ると良い。」  

「その内な…後は、作戦の成功を祈るばかり…か。」  

 

…暫しの沈黙。…そして  

 

「よし、全車…発進!…所定のポイントまで移動しろ!!」  

 

月臣が叫んだ。  

 

「皆…敵は自分のマーズガンガーで引き付けておく!…止めは任せた!!」  

 

白鳥が戦車の連中に活を入れる!  

 

キュラキュラキュラキュラ・・・  

 

…そして…キャタピラ音を響かせて、戦車隊が行く。  

 

ガチャンガチャンガチャン…  

 

先頭を行くのは白鳥だ。  

…一方アキトは?  

空中を行く黒塗りの機体…アキトのエステだ。  

最も…今はブラックカイザーと呼んだほうが良いかもしれない。(笑)  

恥ずかしいコードネームにも慣れて来たのか、アキトが通信を入れた。  

 

「研究所…聞こえるか、こちら・・・えー・・・ブラックカイザー。」  

「はい!アキトさん。よく聞こえています。」  

 

アムが答えた。  

 

「敵歩兵隊の上空に達した。」  

「では、ミミックを投下して下さい。」  

「解った!」  

 

そう答えるや否や、アキトは恐々と持っていた巨大な箱を敵集団のど真ん中に勢い良く投下した。  

 

ヒュルルルルルルルルルルルルルルルルルルル・・・。  

 

・・・ドサッ  

 

「な・・・何だ?」  

 

連合軍兵士達がトラックを止め、近寄ってくる。  

 

「・・・でかいな。」  

「ああ、何が入ってるんだ?」  

 

そう言うと、一人が箱の中に首を突っ込む。  

 

「爆弾かもしれないぜ・・・。」  

 

相方の軽率な行動に呆れながらもう一人が注意する。  

 

ズポッ  

 

首を突っ込んでいた男がいきなり箱の中に入っていった。  

・・・いや、   引き込まれたのかもしれない。  

 

「オイ…どうかしたのか?」  

 

つかつかと箱に近寄るもう一人。  

 

   グヴァア!!  

 

…消えた…いや、彼もまた引き込まれた様だ。  

ゾロゾロとやってくる兵士一同。  

どうかしたのかと、ザワザワ言っている・・・。  

 

・・・刹那  

 

          ズボッ!!  

 

箱の底から足が突き出てきた!!  

 

!!!???  

 

唖然とする兵士達。  

…そうこうする内に箱が僅かに開いた。  

…暗い箱の中から…  

ギョロリとした爬虫類のような赤い目が覗く…  

ジュルリ…と、舌なめずりが聞こえる…  

先に飲み込まれたと見られる兵士達のうめき声が響き渡る…  

 

そして…  

 

    ガバアァァァッ!!  

 

突然…箱が突っ込んできた!!  

その箱の僅かに開いた口からは・・・

まるで血に染まったかのような先が五股になった赤い2本の舌が覗いていたという…。  

 

    ・・・(描写不可能)。  

 

火星に新たなる神話が生まれた。      

 

 

 

 

 

その頃のアキト…。  

…居た!戦車部隊の後方に回り込んでいる!  

 

「…最初に徹底的に潰しておけば、早い段階で和平が出来るかも知れない。」  

 

…例に漏れず和平を考えるアキト。  

…でも、君が和平をやると、話がこじれるのは最早世間の常識かも知れないよ?(爆笑)  

 

…。  

 

アキトの機体が空中に浮く。  

 

…そして、 敵陣内に一気に突っ込んだ!!  

 

「な…何だ!!」  

「分かりません!!」  

「は、速い!」  

「戦闘機?…何処に隠れていた!?」  

「!!…ち、違います!!」  

「ロ…ロボットだ!!」  

「例の艦隊殲滅をやってのけた奴か!?」  

「た…多分!」  

「く…大尉は先行し過ぎている!」  

「き…来ます!!」  

 

ズザザザー−−−ッ  

 

戦車隊の真ん中に突っ込んだアキトは猛然と機関砲を撃ちつける!

 

 

 

流石に致命傷には至らないものの、全弾がどれかに当たっている。  

一方の連合軍側は、同士討ちを恐れて撃って来れないでいる。  

 

   ズグァー―ーン!!  

 

…被弾が相次いだ一台が爆発、炎上した。  

 

          チュドドドー――ーン!!!  

 

その爆発に巻き込まれる形で、数台が燃え上がる!   爆発を避ける様に散開していく戦車達。  

隙間が広まった事により、同士討ちの危機を脱したと判断したのか機銃を撃ち始めた!  

 

  ガガガガガガガガッ!!  

 

ヒラリヒラリと避けるアキト。  

 

ドー―ーン!…ズドー――ーン!!  

 

業を煮やした数台が放った主砲の砲弾が辺りに降り注ぎ、味方の戦車に損害を与えた。  

完全にアキトに翻弄されている!  

…だが…アキトの機関砲も銃弾が尽きつつあった…。  

!…アキトの機体が上空に舞い上がる。  

 

「アイツ…一体如何したんだ?」  

「…弾切れみたいですね。」  

「チャンスじゃないですか!!」  

「残念だが、高すぎる…砲弾は届くまい…。」  

「…今なら倒せるかもしれないのに。」  

 

それでも、連合軍の兵士達はホッとした様であるが…。  

アキトは、そう甘くはなかった!  

…このブラックカイザーには、ディストーションフィールド発生装置が付いていない。  

…恐らくパンチを放った日には、腕のほうが砕け散る事だろう。  

 

だが・・・。  

 

「な…降りてくる!!」  

 

兵士の一人が驚愕の声をあげる。  

 

   ヒュ―――…ン・・・・・・ドギュ!!  

 

垂直に落ちてきたかと思うと、戦車の上だ!  

…大体にして、戦車の装甲は前面が厚い。…

側面にもそれなりの装甲を施してあるものだが、床下等はそれほど強くは無い。  

今回、アキトは真上から飛び降りてきたのだ…真上の敵に…立ち向かう術は戦車には無い。  

薄い上部装甲版を貫き、足が車内に届く!  

…またすぐに上昇を始めるアキト。…戦車は間もなく爆発した…。  

 

「成功だな…脚部のサスペンションを強化した甲斐があった。」  

 

先ほど踏み潰した兵士に心の中だけで黙祷を捧げると、アキトは次なる敵に向かっていった…。  

 

・・・。  

 

この戦いは、正に一方的な物になった。

100台有る連合軍の戦車の内、後詰の80台が10分と持たずに全滅してしまったからである。  

 

「俺はもう、マリオはやらない…。」  

 

生き残ったうちの一人はそれだけ言った後、その戦いの話をする事は無かったと言う…。      

 

…一方、白鳥。  

 

「ゲキガンパー―ーンチ!!」  

 

ドッ・・・・・・・・・グシャァ!!  

 

ワイヤードフィストが戦車にめり込んだ…

もっとも、飛んでいくのが鉄球の為にガンダムハンマーの方が良いんじゃないかと言いたくなるが…。  

 

残った敵は3台。その内2台はこちらの戦車と壮絶な撃ち合いを続けている。  

…まあ、10対2だ…負けはしまい。  

 

「兄さん・・・決着を付けよう。」  

 

白鳥がそう通信を入れる。…兄の周波数は知っていた。  

 

「…まったく、馬鹿な弟を持つと苦労するぜ…。」  

 

そう言う通信と共に、丘の上で今まで待機していた指揮官用の戦車がキャタピラ音を響かせつつ迫ってくる。  

 

「それは奇遇だな。俺もだらしない兄を持った所為で苦労している。」  

 

そう言いつつ、ゆっくりと前進する白鳥。      

 

・・・。  

 

…対峙してから数十秒…戦いが動いた!!  

白鳥は突然走り出す!  

ヤマダの戦車から発射された砲弾を横っ飛びでかわすと、そのまま大ジャンプを敢行する!  

そして・・・そのまま、戦車の後方に降り立つ!!  

 

・・・。  

 

振り返り、ワイヤードフィストを構える白鳥…。  

 

「兄さん。もう良いだろう…俺の勝ちだ。」  

 

戦車から通信が入る。  

 

「未だわからねえぞ…。」  

「…砲塔を少しでも動かしたら潰すぞ、兄さん。」  

 

…。  

 

「…未熟な奴だぜ。」  

「なっ!?」  

 

・・・ギュララララ!!!ドカーーン!!  

 

一瞬にして戦車が後ろを向く!   そのまま主砲が火を吹いた!!  

 

「…ぐっ!!」  

 

砲弾が直撃した!!…だが、そんな物でやられるヤワな機体ではない!!  

 

「な…そんなに速く砲塔を動かせるわけが!」  

「…わからないか?。」  

 

・・・この戦いは未だ続く・・・。      

 

…さて、その頃の独立派の司令室。  

元はレーダー室だった物を拡張して、司令塔にしている。  

 

「…白鳥君。苦戦してるみたいね。」  

 

ナツメは指揮官ぶりが板についている。…冷静にそう分析した。  

 

「ええ…でもボク、気になるんですけど。」  

 

アムはそう、言葉を濁した。  

 

「ああ、さっきの。」  

「あのタイプだと砲塔が180度振り返るのには数秒かかる筈なんです。」  

 

…ナツメは暫く考えていたが、  

 

「スピンターンかしら。」  

「はぁ?」  

「あの戦車、ターボでも積んでるのか…ダッシュ力が凄いじゃない。」  

「ええ。」  

「右のキャタピラを通常どうりに動かして、左を逆回転させるの。」  

「あ…。」  

「ターボと併用すればかなりのスピードで回れるんじゃない?」  

「砲塔も、当然回してるから…」  

「そう。早く後ろを向ける訳よ。」  

「…手ごわいですね。」  

「ま、向こうは終わったみたいだし、アキトが駈け付けてくれれば、どうってことは無いんじゃない?(笑)」  

「…もちろんです!(赤面)」  

 

ナツメの言葉にうなずくアム。  

白鳥…期待されてないのか?  

 

続く  

 

−−−その頃−−−  

 

ここは、連合軍キャンプ地。  

 

「あれ…アオイ中尉。…来られてたんですか?」  

 

レイナード准尉がそう言う。  

 

「カズミちゃん…別にいつもどうりで良いよ。」  

 

アオイ中尉だ。  

 

「あ、そう?…で、何しにここまで?」  

 

…。  

 

「ヤマダさんが、帰って来次第、この降伏文書を届けなきゃならない。」  

 

…苦悩の表情で答える中尉。  

 

「あんまり嬉しそうじゃないね。」  

「…あのナツメがこれを飲むとは考えられないから。」  

「…次のクラス会、幼馴染が一人減っちゃうのかな・・・。」  

 

フルフルと首を振る。  

 

「そうはさせない…あの権力欲の権化の思いどうりには…絶対。」  

 

だがカズミは、  

 

「でも…どうやって?」  

「・・・・・・。」  

 

何も考えつかないアオイが黙っていると、後ろからカズミが抱きしめてきた。  

暖かな感触……中尉は不意に気づいた。  

 

カズミは…泣いていた…。  

 

「…ゴメン…でもさ、私もナツメには生きててもらいたい。」  

「うん。」  

「それだけは…忘れないでよ?・・・マスミ。」  

 

・・・。  

 

それは風の少し強い日のお話。  

美少女二人の抱擁シーンに、回りの男達が前かがみになって、のた打ち回っていたのは公然の秘密である。  

 

::::後書き::::  

BA−2です。連載第14話です。今回はそれぞれの戦いを書いてみました。

…我ながら未熟な文章で困ってしまいます。

今回は、最初をTV版風にしてみました。ルリちゃんの代わりにアムを登用。

…雰囲気は出てましたか?  

…アオイ中尉が何か、男だと勘違いされるので、一応設定を明かしておきました。

…本名 アオイ マスミ。女の子です。  

では!こんな駄文ですが応援よろしく!

 

 

 

管理人の感想

 

 

BA-2さんからの連載投稿です!!

マリオ(爆笑)

この時代にも任天堂は生き残っているのですか。

さすが、天下の任天堂ですね〜

しかし、さすがに100年後の技術・・・

あれだけの戦力差をモノともしませんか。

う〜ん、戦争って技術競争の世界なんですよね・・・

 

ではBA-2さん、投稿有り難う御座いました!!

次の投稿を楽しみに待ってますね!!

 

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