機動戦艦ナデシコ アナザーストーリー

 

世紀を超えて

第22話 それは裏切りなのか

 

 

 

 

 

…不気味な沈黙がどれだけ続いたろうか?

アキトはバイザーを失い、効かない感覚を騙しながら戦闘を続行していた。

 

一方の大佐も、アキトの様子がおかしい事には気づいたが、自身も肩に深い傷を受けていて、

朦朧とする意識の中、必死に拳銃を構えていた。

 

バシュ!…バシュ!…バシュ!…

 

アキトのブラスターが吼える…!

だが、感覚が殆ど無い状態での射撃は、まったく動いていない大佐ですら、当たる事は無かった。

 

バァン!

 

 

大佐からも反撃が行われる…だが、出血が激しい為か狙いが定まらず、結局アキトに避けられてしまう…。

 

(…残り…四発か。)

 

大佐の顔に焦りが浮かぶ。

…この時、運悪く予備の弾を置いてきてしまい、はじめから込められていた分しか使えなかったのである。

 

・・・。

 

(…何処だ…何処にいる!?)

 

一方のアキトも焦っていた。

辛うじて相手のいる方向は特定できた。

…だが、だいたいの方向が解るだけでは戦えはしない。

 

「ちっ!」

 

バシュ!…バシュバシュ!…バシュ!!

 

下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるの論理でブラスターを撃つが、手応えが無い。

 

・・・。

 

そして、睨み合い…。

時折銃声が轟くものの、両者決定打に欠く戦いは、何時までも続くように思われた…。

…が、それも終わるときが来る。

 

・・・。

 

バタタタタタタ・・・

 

ヘリコプターのホバリング音が聞こえる…。

 

…連合軍の物だ。

 

 

ドォー・・・ン!

 

 

身を乗り出した兵士の放つバズーカがアキトに撃ちつけられる・・・!!

そして、衝撃の中、アキトの意識は途絶えた…。

 

 

・・・。

 

 

バタタタタタタ・・・

 

アキトは捕らえられた…そしてヘリは一路、連合軍基地に向かう。

…大佐がアキトの横にやってきた。

 

「…衛生兵、生きているのか?」

 

アキトに応急処置を施していた兵士がそれに答える。

 

「はい…しかし、なんでバズーカの直撃を受けたのに生きてるんでしょうかね…この男は。」

 

…アキトのスーツにはディストーションフィールド発生装置が取りつけられている。助かったのはその所為だ。

もっとも、それは先ほどの衝撃で壊れてしまっているが…。

 

・・・。

 

アキトを覗き込む大佐。…顔を見て驚いたようだ。

 

「俺に良く似ているな。」

 

「意外と親類筋なのかも知れませんね。」

 

「…まさか。そんな事がある訳がない。」

 

和やかな会話…そこに通信兵が入ってくる。

 

「報告します。…全施設の掌握が完了しました。」

 

「そうか。」

 

「…大佐の直属の部隊、流石ですね。…ムネタケの部下を数分で制圧しましたから。」

 

「…。」

 

「流石は人外の魔物」

 

ガチャ!

 

大佐が通信兵に向かい拳銃を突き付けた!

 

「…今後、そう言う言葉遣いは慎んでくれ。…良いな?」

 

「…は、はい!」

 

…その言葉に満足したのか大佐は銃を収める。

 

「…あ、あの、実はもう一つ報告が…。」

 

…冷や汗を掻きながらも残りの仕事を続ける通信兵。

確かに失言で殺されてはたまらないだろう。

 

「なんだ?」

 

「…先程から本機に接近する影があるんです…。」

 

「…で、それがどうかしたか?」

 

「…人間なんですが。…でも、スピードが尋常じゃ無いんです。」

 

「…人間?」

 

「ええ、ですからレーダーが故障した可能性があるので報告を。」

 

・・・。

 

大佐が考え込む。

 

・・・突然顔をガバッと上げた!

 

いかん!…迎撃準備だ!!」

 

「…はっ!?」

 

…だが、兵士達がその命令を理解する前に・・・

 

 

 

ドッゴー−−ーン!!

 

 

 

ヘリコプターは爆発四散していた。

 

 

 

・・・。

 

 

ユサユサ…………

 

アキトは自分が揺さぶられている事に気づく。

 

「…気づかれましたか。」

 

無感情な声がする。

 

「…!七瀬…さんか。」

 

彼女は…今は眼鏡を掛けていない。

…普段、眼鏡を掛けている彼女は比較的おとなしい性格をしている。

だが、一度眼鏡を外すと、非情の戦士へと変貌するのだ。

 

…因みにナツメの話では、眼鏡有りの方が本来の性格らしい。

 

・・・。

 

「…ラピスさんがこれを…と。」

 

そういって予備のバイザーを取り出した七瀬。

どうやらアキトのピンチを知ったラピスが、届けさせたらしい。

…精神的な繋がりはこんな所でも役に立ったのだ。

 

・・・。

 

「有難う…しかし、どうやってヘリを落としたんだ?」

 

アキトの疑問。

 

「…ローターに石をぶつけました。」

 

…あっさり言うな、ホントに…。(汗)

 

ま、あの北方の娘だし…当然なのかも…。

 

・・・。

 

 

「…そんな事で戦闘ヘリが撃墜されてたまるかぁっ!」

 

 

ゾロゾロと生き残った兵士が現れた。

 

が、

 

「…20人ぐらいでは俺は止められん!」

 

ザシュ…ガッ…ドゴォッ!!

 

…あっという間に数人をボコボコにするアキト。

バイザーがあるだけで随分と違う物だ。(苦笑)

 

ブス…ブシュ−ッ…ザク…

 

 

一方の七瀬は手にした2本のサバイバルナイフを敵の脳天に突き刺していた。

…まったく無駄躊躇も無い。

 

父親は力任せに突っ込んでいくタイプだったが、

…無表情で返り血を浴び、次々と敵の頭にナイフを突き刺すその姿は、

 

はっきり言って、下手なホラー映画より怖い。

 

・・・。

 

…戦闘機の編隊が迫ってくる。

突然、味方機の信号が途絶えたのだ。

恐らくはその確認だろう。

 

「厄介だな…敵は遥か頭上だ。」

 

アキトが呟いた。…既にB・カイザーは無い。

空への攻撃手段は皆無だ。

 

「…撃ち墜としますか。」

 

七瀬が聞いてくる。

 

「出来ればそうしたいんだが…。」

 

「了解。」

 

「…はいぃっ?」

 

ダダダッ・・・

 

走り去る七瀬。

 

・・・。

 

その時、戦闘機のパイロット達は事故を起こしたらしい味方機を探していた。

 

「…何処だ…っ…え?…ええっ!?

 

気づいたら、自機の風防に女性が一人乗っかっていた。

そしておもむろに手を掛けたかと思うと

 

 

べリッ……!!

 

 

いきなり風防を引っ剥がした!!

 

…墜落していく機体を尻目に、七瀬は次の機体に飛び乗る!

 

 

…ズバラッ!!!

 

 

垂直尾翼を切りさき、また次の敵に!

 

・・・。

 

そして最後の一機。

 

ボギィッ!…バギィッ!!

 

主翼を両方折り取った後、着地する。

 

 

…ドッカーーン!!!

 

 

そして、墜落する敵機を確認し、アキトに走り寄っていった…。

 

・・・。

 

「任務完了しました。」

 

「…無表情でとんでもない事言わないで欲しいんだけど。(汗)」

 

最早、呆れ果てる他無いアキト。

生身で戦闘機を落とせる奴など普通は居ない。

…アキト自身は出来るかも知れないが。(笑)

 

・・・。

 

「…仕方有るまい、そう言う仕様なんだからな。」

 

…突然、ヘリの残骸から声がした!

 

 

「な…大佐さんか!?…生きてたのか?」

 

「…ああ。」

 

「…仕様…とか言ったな?」

 

「ああ。」

 

「どう言う意味だ!?」

 

…それに大佐が答えた。

 

「彼女とその父は以前うちの軍のラボに居たんだよ。…俺が副局長だった時な。

 …当時の局長は人工筋肉の権威でね。」

 

借金のカタに連れてこられた二人を改造したんだ。」

 

「…精神操作も施されていてね、作戦中は感情を消すようになっている。」

 

「例の眼鏡…知ってるだろう?」

 

「アレは脳内に埋め込まれているマイクロチップを一時停止させる物でね。」

 

「掛けている間だけは本来の精神状態に戻るのだよ。」

 

「…父親の場合は失敗して、あんな性格になったらしいがな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…そういう事かい!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・。

 

暫く聞き入っていたアキトだが、すっとブラスターを取り出す。

 

「…まったく、酷い事をする…。」

 

大佐が頷く。

 

「…ああ、俺が局長をやるようになってから止めたがな。」

 

「そうか…。」

 

…そして静寂が周囲を包む。

 

 

 

・・・。

 

 

「戯れはここまでにしようか。…始めるぞ!

 

…アキトが宣言する。…大佐は片手を吊った状態だ。

しかも、七瀬と二人がかり。

圧倒的に有利なはずだった。

 

「…そうだな。・・・七瀬君!

 

・・・?

 

「黒帝を捕らえろ!!」

 

「…了解。」

 

・・・!?

 

ガガッ・・・ザシュゥッ!!

 

七瀬のサバイバルナイフがアキトの頬をかする…。

 

「…ま、待て…何で…?」

 

「…上官の命令が優先。…コマンド入力を拒否します。」

 

「…何ッ!!」

 

・・・。

 

「…本人の意思は関係無い。…ただ、目上の命令に絶対服従する。」

 

「それが、彼女達なんだよ、黒帝…。」

 

…そう言う大佐の顔は悲しみに満ちていた…。

 

七瀬はアキトと戦う。…自分の意思とは関係無く。

 

そう言う風に作られたから…。

 

…本人にその気は無い…それでも、これは…裏切りなのだろうか…?

 

続く

 

−−−その頃のムネタケ−−−

 

 

 

 

 

「ウソよ−−−−ッ!!」

 

 

 

絶叫が響き渡る。…降格を言い渡されたキノコである。

 

そんなキノコに更なる試練が…。

 

「…そして、が貴方の直属の上司になります。」

 

…。

 

「…何処に居るのよ。何処にも居ないじゃ」

 

「…あれです。」

 

…目の前には前回整備不良で出撃できなかった『先行者』。

 

 

「…は?」

 

あれが上司になります。」

 

…。

 

「…冗談は止して!…なんでアタシがロボット3等兵なんかの…。」

 

 

 

 

 

「…煩いぞ4等兵!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁーーーーーっ!!??」

 

 

 

・・・。

 

 

「で、これが同僚だ。

 

…ドン…。

 

「これ…ロボ犬?……あ、AIBO…!?

 

 

 

…。

 

 

「ノオォォォぉー―――ッ!!

 

 

…キノコの叫びは先行者3等兵のキャノンでつつかれ、連れて行かれるまで続いていたと言う…。

 

 

::::後書き::::

 

BA‐2です。

…アキト、ピンチです。…いやあ、当初からの設定、ようやく出せました。

…北方の壊れた性格の理由もこれでお分かりでしょう。

因みに大佐は当初、北方が攻めてきたと思ってます。

故に迎撃を選ぶ…と。

 

 

…ムネタケ…哀れ、少将からいきなり4等兵。

先行者の下で何をさせられるやら…。

まあ…書く気は無いんですがね…。

 

…こんなもので良ければ応援宜しくお願いします!

では!

 

 

 

 

 

管理人の感想

 

 

BA-2さんからの連載投稿です!!

おお七瀬さんが敵の手駒に!!

・・・それ以前に、どうやって戦闘ヘリの高さまで飛んだんだ?

ジャンプか?

それともブーツの踵にジェットでもついてるのか?(笑)

は!! もしかして自力で空を飛べるんだな!! 重力を操ったりして!!

さすが、北方の娘だぜ(汗)

 

ではBA-2さん、投稿有り難う御座いました!!

次の投稿を楽しみに待ってますね!!

 

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