機動戦艦ナデシコ アナザーストーリー

 

世紀を超えて

第23話 『謎』

 

 

 

 

 

ブシュッ…。

 

 

アキトのわき腹にサバイバルナイフが深く突き刺さる…。

 

戦闘開始から一時間。

 

傷ついた体で、良くここまでもった…と評価できるほどにアキトは傷つき、疲れ果てていた。

しかも、相手はあの北方の娘。

その上、敵に操られているだけの味方なのだ。

 

…アキトに戦えと言う方が酷な話だ。

 

 

・・・。

 

 

「大佐…捕獲を完了しました。」

 

抑揚の無い声で話し出す七瀬。

肉体を戦闘用に弄られ、何時でも操れるように精神すら調整された存在…。

…それが彼女だった。

 

「…ご苦労…辛い仕事を押し付けてしまったな。」

 

大佐も辛そうだ。

…恐らく、体調が万全ならば意地でも使う事は無かっただろう。

人の痛みを知る事の出来る士官…連合軍でも稀有の人材なのだから…。

 

「…だが…少々、時を掛けすぎたか。」

 

…。

 

遠くから、何かが来る!

 

ブォンブォン・・・ブゥゥゥゥゥゥッ!!!

 

バギーが一台、凄まじい勢いで迫ってきた!

…なぜか、不相応な程の土煙を上げながら…。

 

「…トオッ!!」

 

…すたっ

 

白鳥だ!…以前(第10話)持っていたレーザー砲(自称:ゲキガンビーム)を肩に掛け、颯爽と大地に降り立つ!

 

「この白鳥五十六が来たからには、貴様等の思い通りにはさせん!!」

 

ビシイッ!!

 

右手の人差し指を大佐に向けて言い放つ!

…多少、恍惚とした表情が気になるが…。

 

…。

 

数瞬後…。

 

白鳥は宙を舞っていた…。

…一瞬にして距離を詰めてきた七瀬に、アッパーを食らったのだ。

 

盛大に鼻血を放出しつつ放物線を描いて飛んでいく…。

 

幸せそうな顔…白鳥は今、夢の中に居た。

…アキトを救った英雄として皆に祝福される夢…。

 

ズボ

 

あ、頭から地面に突き刺さった…。

 

・・・。

 

「何がやりたかったんだ…ヤマダの弟よ…。」

 

「…不明です。」

 

唖然とする大佐の後ろを極楽トンボが飛んでいく…。

 

…。

 

「…貴方とも有ろう方が詰めの甘い事だ。」

 

…後方からの声!…月臣だ!!

バギーを走らせアキトの元に走っている!

…作戦だったのか!?

 

「アイツの暴走もたまには役に立つ…。」

 

…偶然かい。

 

!…ガキン!!!

 

鍔迫り合いの音が響く!!

…一瞬の間を置いて、七瀬が妨害行動に出たのだ!

ナイフで切りかかるも、月臣は愛刀『菊』を抜き放つ!!

 

「…パワーではこちらが勝っています…降伏されたし。」

 

「な、七瀬君か…君の事は聞いていたが…くうっ!!」

 

…流石に片手でハンドルを握りながら七瀬の相手はきつそうだ。

 

・・・ドン!!

 

…アキトが宙に舞った…。(汗)

 

……よそ見運転は事故の元です。注意しましょう。

…ってそんな事言ってる場合じゃない!!

 

ドサッ!!…ゴロゴロゴロゴロ…バタ…ッ…

 

アキトが地面に叩きつけられ、暫く転がり、止まった…。

 

…ナイフが腹に刺さったままで。(爆)

 

 

…しーん

 

 

最早、誰も動ける者は居なかった…。

 

ガキン…ギリギリギリギリ

 

「待て、七瀬君…非常事態だ!!」

 

「…捕獲が最優先…。」

 

…この二人を除いて。

 

と、言う事はこの場に居る半数が動いていた事になるが…。

 

・・・。

 

静止した時が、どれだけ流れただろうか。

一瞬かもしれないし、かなり長い時間だったかも知れない。

…稀代の英雄のあっけない最期?に、皆(一部除く)唖然としていた。

月臣と七瀬の死闘の音も…何だか遠く感じる。(ヲイ)

 

その、静寂を破ったのは、拡声器越しの少女の怒声だった。

 

 

『私はアキトの目、アキトの耳…(中略)…そしてアキトの妻!!(予定)』

 

『私はアムやナツメより役に立つノ!!』

 

…ラピスだ!

 

最近出番が無かった腹いせだろうか?

 

ドドドドドドドドドド…

 

なんと量産型エステバリスを大量に引き連れご登場だっ!!

…後ろでは山崎が何故か大漁旗を振っている。(汗)

 

 

二人は…この数ヶ月の間に量産体制を整えていたのだ!!

 

 

…原因はアムやナツメに構うアキトへの不満。

自分に構う時間が減った事に腹を立てたラピスは、自分がいかに役に立つ存在かをアピールしようとしたのだ。

まあ…二人きりの時と比較する方が間違っているかも知れないが…。

 

…因みに今回のはナデシコA出航当時の正規採用版である。

この時代では多分にオーバーテクノロジーであるが、最早ラピスにそんな事は関係が無かった。

…嫉妬に狂った人間は怖い。…それは少女でも同じ事…なのだ。

 

・・・。

 

まあ、そんな訳で設計図を描いて山崎に渡す。

…準備はこれでOK。

後は山崎のほうが勝手にやってくれた。

 

「凄いや…本当に凄いやッ!…はーっはっは!…ひょーっほっほっほ!!」

 

やせ細り、死にかけながらも嬉しそうに不眠不休で作業を続ける山崎…。

機械の山の中で高笑いを上げるその姿に…周囲はかなり引いたらしい。

 

しかし…山崎の扱いが上手いな…ラピス。(汗)

 

…。

 

そして今…数十機の機体が完成し、ここに居る。

 

「…アキト!!」

 

ラピスがアキトを見つけた!

血まみれで倒れ伏すアキト(笑)…涙混じりでラピスが叫んだ!!

 

「…酷いヨ…連合軍…許さない…!」

 

…。

 

「…濡れ衣だあっ!!」

 

 

…大佐、絶叫。(汗)

 

「騙されるなぁっ!!」

 

月臣も絶叫(ヲイ)。轢いた張本人が何を言うのか…。

 

…だが、不利を悟った大佐は、撤退を決意する。

 

「七瀬君…ここは引くぞ!」

 

「了解。」

 

サッ…と背中を差し出す七瀬。乗れと言う事らしい。

 

「…子供でもあるまいし…この歳でそれは恥ずかしいのだが…。」

 

この一瞬の躊躇を逃さなかった男が居た!

 

「覚悟ぉっ!」

 

パシッ!

 

…月臣の刀を真剣白刃取りで受け止める大佐。…しかも片手で。

 

大佐…よくもテンカワを!!(邪笑)」

 

…証拠隠滅かい。(汗)

 

「月臣…貴様ッ!!」

 

ボギッ!!…

 

 

・・・。(空白の時)

 

 

「…大佐、撤退します…。」

 

「ああ…って待ってくれ七瀬君?」

 

…大佐の腕が掴まれる。そして七瀬は走り出した。

 

但し…全力で。

 

グワァッ…そっちは怪我した方・・・っ!!」

 

「…生命の安全を最優先…コマンドを拒否します。」

 

「な…ギャァァァァァァァ…

 

・・・。

 

彼らが消えた後、残されたのは…

 

と化した月臣

 

折れた菊一文字(無銘)だけであった…。

 

 

・・・。

 

 

 

数日後…

アキトはようやく目を覚まそうとしていた…。

 

「…生きているのか…俺は?」

 

体を起こす…見るとベッドの横で寄り添うように寝息を立てるアムの姿が。

 

「有難う…ずっと…看病しててくれたんだね…。」

 

そして、何だかまだ違和感のある体を引きずりながら窓に向かう。

 

「…良い天気だ…。こんな日は…………へ?」

 

…晴天の元…駐車場のスペースを埋め尽くし、訓練に励むエステバリス。

それも群れをなして。

 

「…なんだ…夢か…。」

 

…その一言で片付けるアキト…もしくは現実逃避か?

 

「アキト−−−ッ!!」

 

そんな彼を現実に引き戻す声。…ラピスが嬉しそうに手を振っている。

…訓練の指揮をとっているようだ。

 

「…謎は全て解けた…。」

 

某探偵の決め台詞を吐きつつ、窓から飛び降りラピスの元に向かうアキト。

…病室…10階なんですけど…。(汗)

 

スタッ…ドドドドドドド…ピタ

 

「あ、アキト!治ったノ!?」

 

「…。」

 

「…アキト?」

 

「…犯人はお前だ!!」

 

だからそれも他人の台詞だってば。

 

「駄目?」

 

「…なんて事するんだ!アレは(この時代には)あってはならない!」

 

 

ドン!!

 

アキトは指揮台代わりに使っていた車のボンネットを叩き、潰す!

 

…潰す?

 

ドッゴーーン!!

 

…潰されたショックでエンジンが爆発する!!

 

「ラピス!!」

 

アキトは咄嗟にラピスを庇う!

 

…が、無傷だ。アキトの張ったフィールドが衝撃を吸収したのだ。

 

…ってアレ?今…アキトはパジャマなのに?

 

…。

 

「…と、兎に角、場所を変えよう!」

 

集まってきた野次馬を尻目にアキトは病室の窓まで飛びあがる。

…ってだから10階なんだってば!

 

ここのアキトは劇場版がベースだから、『時の流れに』のアキトみたいな真似が出来る訳無い。

 

…はず。

 

続く

 

 

−−−アキトの病室−−−

 

「ここならいいか。…ラピス、なんであんな真似を!」

 

アキトはラピスの肩に両手を置き、詰問する。

 

「だって、アキト…アキト…。」

 

半泣きのラピス。…だが、今回ばかりは可哀想とも言っていられない。

 

「…いいか、ラピス…俺は、俺はな」

 

…お前が憎いわけじゃ無い。…と、言おうとしたその時…扉が開いた。

 

 

・・・。(気まずい雰囲気)

 

「あ、あの…差し出がましいですが…幼女趣味はやはり…問題が…。」

 

…白鳥だ…完全に誤解している。が、アキトは声を大にして言いたかった。

 

…お前も人の事言えるのか!?

 

…因みに彼の妻は13歳である。(現在駈け落ち中)

 

…。

 

30分後…ようやく誤解が解け、白鳥は当初の用件を持ち出す。

 

「…以前、コミケで使った服なのですが、テンカワさんに似合うと思って持ってきました。」

 

…そう言って、袋に入った一着のジャケットを取り出す。

 

「…同じアニメ好き同士、これからも宜しく。」

 

…そう言うと、白鳥はさっさと行ってしまった。どうやら…誤解は解けきった訳ではないらしい。

 

「…アキト…アニメ好きなノ?」

 

「…昔はな。…って何でこの時代の白鳥がそんな事を知ってるんだ!?」

 

「さあ…ワカンナイ。」

 

ガサガサ…

 

解らない事は仕方ないので、取りあえず貰った物を確かめるアキト。

 

「黄色のジャケット…昔、ナデシコで着ていた奴に似てるな。」

 

「どのへん?」

 

「…特に左上腕に付いているナデシコのマークなんか良く出来てる…。」

 

「…でも、作りが良くないヨ?」

 

「コスプレ用の衣装だからさ。…実用より見栄え重視なんだよ。」

 

「フゥン…で、何でナデシコのマークがこの時代にアルノ?」

 

「…え?」

 

…不覚にも、アキトはその時までその事実に気づかなかった。

 

…余りの不可解さに辺りが真っ白になる。

 

そして…。

 

 

・・・。

 

 

ガバッ!!

 

「…はぁ…はぁ…なんだ…夢か。」

 

 

夢オチかい!!?

 

 

・・・。

 

 

 

「…はあ…まったくとんでもない夢を…なっ!!」

 

…驚愕するアキト。

 

その手には、白鳥から貰った黄色いジャケット。

 

…そして…やはりナデシコのマークが…。

 

余りに不可解だが…確かな事は一つ。

あの出来事は…全て、現実。

 

::::後書き::::

 

BA−2です!23話…如何でしたか?

 

…謎が謎を呼ぶ展開!

アキトの体はどうなってしまったのか!?

そして、この時代に存在するナデシコのジャケットの意味とは!?

 

…謎を残したまま物語は続く…。

 

…こんな駄文ですが、応援していただければ幸いです!

 

では!

 

 

 

 

 

管理人の感想

 

 

BA-2さんからの連載投稿です!!

いや〜、死にませんでしたねアキト君(笑)

それよりも、遺跡から救出された瑠璃はどうなったんでしょうか?

いえ、ちょっと気になったものですから(汗)

しかし、微妙に伏線が入り混じってますね〜

 

ではBA-2さん、投稿有り難う御座いました!!

次の投稿を楽しみに待ってますね!!

 

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