機動戦艦ナデシコ アナザーストーリー

 

世紀を超えて

第26話 暗雲、そして・・・歴史が動き出す

 

 

 

 

 

ここは月へと離脱する、連合軍の艦隊旗艦のブリッジ…。

通信機越しに別れの挨拶を交わす人影がある。

 

「では、ここでお別れだな。」

『はい…そちらは一度月に行かれるのでしたね。』

「うん…アスカ…君は確か…?」

『ええ、軍を除隊し父の会社に入ろうと思います。』

「そうか、もう会う事もあるまい…元気でな。」

『はい…ところで大佐…。』

「ん?」

『彼等を火星に置いてきて良かったのですか?』

 

…彼等とは以前大佐が火星に降下した時、別の場所に降りた連中の事である。

 

「ああ、それが彼等の望みだからね。」

『…死に場所…ですか。』

「…もう、長くは持つまい…好きにさせてやろう。」

 

…。

 

『では…彼等の指揮官としてアオイ・マスミ中尉を残したのは何故です?』

「…彼女と敵の指揮官…草壁夏芽とは親友同士だ。」

『…では、最初から?』

「…捕まっても厚遇されるだろうし、これからの交渉で…、」

『双方の掛け橋になって貰うのですね?』

「ああ、そうだ…両方の気持ちを解る者で無ければこれは勤まらんよ。」

 

…。

 

『…しかし、何者なのでしょうね…あの青年は。』

「黒帝…か、本名すら不明の男…。謎が多すぎる。」

 

因みに連合軍でアキトの本名を知っているのはアオイ中尉ただ一人。

…以前、研究所に降伏勧告を持っていった時にナツメから聞いている。

 

『…大佐に良く似ていたそうですね?』

「…ああ、そっくりだった。」

『もしや、親戚だったんじゃ?』

 

「…俺に肉親はいない。」

『あ…申し訳ありません。』

 

・・・。

 

そして…艦隊は2つに分かれ、大佐の率いる部隊は月に入った。

 

ビィー−−ッ!!…ビィー−−−ッ!!

 

「何だ!?」

 

サイレンが鳴り響く!

 

…近くを右往左往していた整備兵を捕まえ、事の次第を尋ねる大佐!

 

「は…反乱です!」

「何!?」

 

・・・。

 

その日…火星では…。

 

…連合軍基地…

 

「…ここが最後の軍の拠点ですか…。」

「どう…敵の配置は?」

「無人の警備メカが少しと…アレ?…あの人は?」

「どうしたの白鳥君?」

「…あれ、アオイさんですよ?」

「エ…あ、ホントだ。マスミ…帰ってなかったんだ…。」

 

…今まで、一部を除いて隠れ暮らしていた独立派だが、連合軍の撤退により全面攻勢に出ていた。

 

最早、残っているのは僅かな警備兵だけであり、しかも乗る船が足りなかった為に残っているだけの兵士達は、

即座に降伏してくるのである。

 

…今、まだ連合軍の旗を掲げているのは…目の前の基地のみ。

 

・・・。

 

アキトは新型機『リモニウム』の起動テストも兼ねてここにいた。

 

現在完成しているのは試作機が3機。

 

…黒がアキト、白鳥はゲキガンカラー、残り一台は月臣が使用していた。

 

『永久不変』の花言葉を持つ花から名を取ったこの機動兵器は、

 

ナノマシンにより自己修復と自己進化をする能力を持つ。

 

基本的に手間暇掛かる構造の割には性能は上がらず、

 

…機体性能はエステバリスカスタムと同程度と言った程度だが…。

 

多少の損傷ならば整備すら要らないと言うのは、人的資源の不足している独立派には良い話であった。

 

・・・。

 

「…敵が出てきたぞ!」

 

…戦いの始まりは、そんな月臣の怒声からだった。

 

戦闘ヘリが数十機と戦闘機が数機…。

 

…以前と比べると随分少ないような気がするが、恐らくコレが最後の戦力なのだろう。

 

…見ると、既に基地からは白旗を振った兵士達が出てきていた…。

 

つまり…残った者は死の覚悟くらい決めているに違いなかった…。

 

・・・。

 

「ゲキガン・カッターッ!!」

 

白鳥が機体後方に取りつけた2本のブーメランを投げつける!

 

…ドゴーン!!

 

直撃を受け、戦闘機が爆発四散する!

 

「どうですか、この…マーズガンガーの力は!」

 

ビシッとポーズを決める白鳥!

 

…もはやこの男を止められる者は居ないのだろうか?(汗)

 

ブスッ…………バタッ

 

…あ、戻ってきたブーメランが頭部を直撃…。

 

 

…。

 

そして、月臣…。

 

「受けよ…秘剣・空中円月殺法!!」

 

ユラ…リ

 

ズガガーーーン!!

 

…空中で謎の太刀(山崎製作)が怪しく一回転!

 

そして数台の戦闘ヘリが戦場の露と消えた…。

 

カチン…

 

「ふっ、決まった…。」

 

…戦闘中に刀を鞘に納めるなよ。(汗)

 

後、戦場で立ち止まるな。

 

ドゴゴゴゴゴゴー−ーン!!

 

「…グワァ−−−ッ!?」

 

…ほれ見ろ…集中攻撃受けてるじゃないか…。

 

・・・。

 

ドガーン…ズガガガガッ!…ドゴーン!!

 

…そして、そんな二人には目もくれず撃墜数を伸ばし続けるアキト。

 

「…これで全部か。」

『アキトさん、ご苦労様です。』

 

…アムが労いの通信をいれてきた。

 

「ああ…だがこの機体、機動性は高いが運動性に難があるな…。」

 

そう言いながらも敵をバタバタと倒していくアキト。

 

・・・。

 

空中部隊は壊滅…。

 

そして、部隊が建物に近づいた時…。

 

「…あれは!」

 

…以前大佐が乗ってきた陸戦型の機動兵器だ…!

 

…多少フォルムが違う為、同型機と思われる。

 

「ここは自分に任せてください!」

 

白鳥がそう宣言し、一直線に突っ込んでいく!

 

ダダダダダダダッ!!!

 

が…敵の携帯していたマシンガンで蜂の巣だ(汗)。

 

「…大丈夫!…ナノマシンとやらで自己再生するんでしょう!?」

 

・・・。(歩み出る山崎)

 

「…そんなにすぐに再生する訳じゃ無いんだよ?」

 

「…へ?」

 

…チュドーン!!(爆)

 

…出来たばかりの新型機を早速大破させる白鳥五十六…。

 

子孫と比べてなんたる差だろうか…。

 

「…あんなに壊れたら自己修復もできないだろうね(汗)。」

 

…そして、そこにはスクラップの山が残った…。

 

…。

 

「…しかし、敵はあれだけの技術、何処から?」

 

…そんな思いに捕らわれつつ、アキトは敵に向かう…。

 

ハード面はともかく、ソフト面で考えればこの時代にあるはずが無いレベルの兵器なのは間違い無い。

…あれだけの物をどうやって制御しているのだろうか?

 

因みに…その後ろでは、月臣の機体が早速ゲキガンカラーに塗り直されようとしていたと言う…。

 

「白鳥…貴様、自分のが無くなったからって!!」

「気にするな…少し借りるだけだろ、弦悟郎!」

 

「俺をその名で呼ぶなぁっ!!」

 

…多少の問題はあるようだが…。

 

 

・・・。

 

ズガガガガッ!!

 

敵のマシンガンの掃射をかわしつつ、アキトは距離を詰める!

 

…肩アーマーから吸着地雷を取り出すと、すれ違いざまに投げつけた!

 

…ドガァーーーン!!

 

「やったか!?」

 

…見ると、敵の右腕が無くなっている…。

 

…と、思った途端敵は格納庫内部に入っていく!

 

「…追うぞ。」

 

…そして、アキトは格納庫内部に入っていく…。

 

だが、そこは…。

 

「何処だ…うっ!?」

 

ザザッ…ダダダダダダッ!!

 

…アキトの避けた刹那…マシンガンが撃ち掛けられる!

 

そして、敵の姿を見て…アキトは驚愕する。

 

「…腕が…元に戻っている!?」

 

…先ほど爆破した右腕が…ある!

 

敵がここに入ってからアキトが入ってくるまでおよそ2分。

 

…その間に修理できたとは思えない。

 

…見ると、天井から下がったクレーンに腕のパーツがぶら下がっていた。

 

「…付け替えたか?」

 

…スチャ…ガガガガガッ

 

ラピッドライフルを取りだし、即座に周囲を掃射!!

 

ガンガンガン…ズザァッ!!

 

だが…敵は当たる事を気にせず、アキトに殴りかかる!

 

「掛かったな!」

 

ガチィッ!!

 

…敵が腕を振りかぶった瞬間、関節にナイフを突き刺すアキト!

 

動力伝達を妨げられ力を失った腕を尻目に、

 

頭部を中心にライフルを乱射する!!

 

バラタタタタタッ!!…ドコーン!!

 

…頭部を中心に爆発し、流石の敵も動作が止まる…。

 

「…流石に、中枢をやられたら再生出来ないよな…。」

 

アキトが呟くのとほぼ同時に…敵からの通信が入った。

 

『オミゴト』

 

…それを見て、戦いは終わった事を感じ取ったアキトは、敵の機体に近づく。

 

「お前もよくやったさ…。」

 

…そして、ハッチを空け、内部を覗き込むと…。

 

「…これは!?」

 

そこには…ひび割れた胴体ほどのガラスの容器に…、

 

…既に壊死しかかった脳髄がプカリと浮いていた…。

 

「…なんて事だ…。」

 

呆然とするアキト…。

 

…そして…アキトの横のディスプレイには…。

 

『アリガトウ』

 

…とだけ書かれていたのだった…。

 

…。

 

…一方、基地の司令室では、ナツメとマスミが話し合いを持っていた。

 

「…じゃあ、この基地は明け渡してもらうわよ?」

「うん、分かった。…後の事はお願い。」

「…でも、マスミは…。」

「分かっている…捕虜として扱ってくれれば良いから。」

 

…既に一通りの話は終わっている様だ。

 

「コホン…では、司令代理として降伏文書にサインして頂きます。」

「はい。承知しました…寛大な処置に感謝します。」

 

…こうして、火星から連合軍の勢力は残らず消えたのである。

 

 

・・・。

 

 

そして…その日の夜…月で大規模な反乱が発生した。

 

…旧連合軍基地・作戦室…

 

「アタシが議長のナツメです…じゃ、始めるわよ。」

「今回…ボクの出番あるんですかね?…書記のアメジストです。」

 

…。

 

「あの・・・。」

「なに、マスミ?」

「…なんで捕虜の私がここに?」

「連合軍の内部に一番近いから。」

「はぁ・・・。」

 

その他、月臣や、今まで各班を束ねていた人達も集まっていた。

 

…(結果的に)奥さんに逃げられた南雲氏は

寝込んでいて欠席だが。

 

「…じゃ、始めるわね」

「今回の事は…ボク達が連合軍に勝利し、パワーバランスが崩れた事によって起こった様です。」

「…ま、弱った連合軍なら勝てると踏んだんでしょうね。」

 

「…で、月で騒ぎを起こしたのは誰なんだ?」

「月臣君、鋭い!…でも、決まってるでしょ?」

「…月に残った臆病者どもか。」

「月臣さん…一応味方なんですから。(汗)」

 

…取りあえず月臣を宥めるアム。

 

「…では、状況ですけど…、」

「アムちゃん…これが最新の資料ね。」

 

「はい…現在月に残留していた独立派勢力が軍に対して攻撃を開始し…」

 

因みに…戦況的には悪くない状況を作り出している。

 

…軍関係の建物は流石に手が出せていないものの、民間施設の殆ど…、

 

特に空調関係の設備や、生産施設を押さえているのが大きい。

対する連合軍は、実働戦力を火星に向け続けた所為で戦力が激減…。

そして…戦線は硬直状態に陥っていた…。

 

・・・。

 

「…ねえ、マスミ…軍人としてどうなると思う?」

 

…不意にナツメが口を開いた。

 

「…今のままなら現状維持だと思う。」

「なら、後少しでも不利になったら?」

「…防衛ラインが地球まで下がるだけ。」

 

「ふぅん…。」

 

・・・。

 

そして…運命の決定が下される…。

 

「…では、全戦力を率いて月に行きます…月を…取り戻すのよ!!」

 

・・・。

 

その頃アキトは、格納庫前で山崎と話し込んでいた。

 

「…じゃあ、リモニウムはまだ開発途上だって言うのか?」

「違うよ…ただ、テンカワさんには役不足だろうって思ってさ。」

「…じゃあ、コイツは何の為に!?」

「量産試作機って所かな?…コストパフォーマンスが悪いのが欠点だけど。」

 

…ゴソゴソと設計図を取り出す山崎。

 

「これがテンカワさん専用機…まだ、基本設計も完成して無いけどさ。」

「…お前はまた…とんでもない物を…。(汗)」

「…コレを完成させるのには後、数年はかかるだろうね。」

「それだけで済むのか…こんなの化け物は俺のいた時代にも無かったぞ?」

「…え?」

「あ、いや…何でも無い。(滝汗)」

 

そこに大声が…、

 

「テンカワさん!…赤いペンキ何処かで見ませんでしたかーっ!?」

「いや…見てないが…!?」

 

「…あの…『俺のいた時代』ってどう言う」

 

「あー、白鳥?ペンキがあったぞ!…今持っていく!」

 

「ち、ちょっと…待って下さいよ!」

 

…こんなやり取りをしている間にも…

歴史は…確実に動き出そうとしていた。

 

続く

 

−−−その頃−−−

 

ボガッ・・・ズガッ

 

「ぐわぁっ!!」

 

…捕虜になった連合軍兵士が数人に囲まれリンチを受けている…。

 

「…親父のカタキィ!!」

 

ドガッ!!

 

「…へっ…いい気味だ…死んで行った仲間達の分まで苦しんでもらうぜ!」

 

ズガァッ!!

 

・・・。

 

そして…いつしか兵士の体は…冷たくなっていった…。

 

・・・。

 

「はー、すっきりした!」

「兄さん達のカタキ…取れたんだよね!」

「…ああ、俺達はやったんだ!!」

 

…そして…嬉々として去っていく独立派の若者達…。

 

…。

 

アキトの行く末に暗雲が垂れ込め始めた。

被害者と加害者が…入れ替わろうとしていたのだ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…そして、舞台は月へ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

::::後書き::::

 

BA−2です。気が付いてみたらもう26話目です。

…さて、火星でのお話はひとまず終了。

次からは月での話になります。

…あまり長くはなりませんがね(予定)。

…さて…火星圏の連合軍優位が崩れ、傲慢さが出始めた独立派…。

…これは、今後のお話にどう影響するでしょうか!?

 

でも…こう言う展開…頭から否定できます?

…親のカタキが目の前で捕虜になっていたら…貴方…どうしますか?

 

…では!

 

 

 

代理人の感想

 

いきなり今回から代理人の感想がつく事になりました。

某大魔王に笑顔で脅されまして・・・よよよよよよ(嘘泣き)。

まあ、そんな冗談?はさておき二クール目が終了、次回から新展開であります。

お約束の新メカの伏線も語られた上になんかト○ノ系の匂いも漂ってきてます(笑)。

ヤマサキにも新しいフラグが立ちそうな予感(爆)。

・・・・それとひとつ聞きたいのですが、最後は敵味方全滅して終わりって事はないですよね?(激爆)

 

 

 

 

管理人の感想

 

 

BA-2さんからの連載投稿です!!

う〜ん、実に難しい問題ですね。

・・・親の仇が目の前に。

実際、アキトは復讐者になってますからね。

彼らの気持ちは嫌というほど理解出来るんでしょうね。

 

・・・さてさて、月ではどんな事件が起きるのでしょうか?

 

ではBA-2さん、投稿有り難う御座いました!!

次の投稿を楽しみに待ってますね!!

 

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