機動戦艦ナデシコ アナザーストーリー

 

世紀を超えて

第3話 リターン・トゥ・ザ・センチュリー

 

 

 

…ルリ達はアキトを追って、ナデシコA出発の時へと跳んだ…。

だが、アキト達は『その時』には行かなかったのである…。  

 

…。  

 

あれから数ヶ月…。ユーチャリスは火星の近くを飛んでいた。  

…否、漂う…と言った方が正しい。

相転移エンジンが大破し生命維持装置を動かすのがやっとだったからである。  

「アキト…。」

心配そうにラピスが呟く。  

「…ラピス。早く艦を降りろ…。俺は、どうでも良いから…さ。」  

!!  

逆上したラピスは椅子にだらしなく伸びているアキトの襟首を小さな手でギュッと掴んだ。  

「アキト…今のアキトはオカシイ。私の知っているアキトは…前向きじゃないけど…決してあきらめる人じゃナイ!」  

ゆっくりと首を振りながら答えるアキト  

「…俺の存在価値は消滅したんだ。

 …ネルガルも、もう狂犬は要らないようだし…丁度良い。亡霊は誰にも知られずに消えるさ…。」  

「アキトのバカ!」  

「…そうだ…な。結局ユリカも助けられなかった。…ネルガルにも見捨てられた俺には、もう何の価値もない。」  

「…そんな。」  

「早く行け。火星の重力圏に捕まったらシャトルでは逃げられない…。」  

…ラピスはフルフルと首を振ると…そっとアキトの膝に座った。  

「最後まで一緒に居ル。約束…私が死ぬ時は、アキトのために…死にたい。」  

…そんな会話を中断するようにオモイカネ・ダッシュの連絡が入る。  

『とうとう来たよ。…火星の重力圏に捕まった…お別れだね。アキト。』  

ユラリと艦が火星の方へ方向を変える・・・。  

死への秒読みが始まった…。  

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・・・・・。  

ボロボロの艦が激しく揺れる…。

擬装用の輸送船部分がボロボロと剥がれ落ちていく…。

…このまま地表にぶつかれば、おそらく木っ端微塵だろう…。  

「済まんな…こんな事になっちまって…。」  

「私はアキトの目…アキトの耳…アキトの…」  

何時もの台詞を一心に唱えつづけるラピス。

…それは、彼女なりの『心配しないで』というメッセージ…。  

…だが、アキトは気づいた。  

何時もより声が震えている…。

何時もより肩が震えている…。

何よりも…心が震えている…。  

…そう、あの時。

…北辰が現れた…あの時の様に!

そう、思った…アキトは考えるより先に動いていた!  

エンジンは動かない…ならば!!

「ダッシュ!…ミサイルを地表に放て!!反動でコースを変えろ!」

『ええ−っ!…地表が近すぎるよ!』

「被害にはかまうな!!死にたくはないだろう!」

『!了解』  

…。  

ズバッ!…チュドーーーン!!!  

ズガガガガガガガガガガガガガガガガガ・・・。  

…ミサイル発射の反動で艦の前部が浮き上がり、爆発の反動で落下スピードが落ちた!!  

…そして不時着!!

そのまま何処までもズズズ・・・と火星の地表を疾走する!  

『前方に岩山!大きい!…ぶつかるよ!!!』  

「やはり…ここまでか?」  

…諦めかけるアキト…だが傍らのラピスは…微笑んでいた…。

アキトが元に戻ったと喜んでいるのだ…。そんなラピスを見たアキトは  

「グラビティブラスト!発射!!」

『無理!エンジンが爆発するよ!?』

「構うな!このままじゃ犬死だ!!これは賭けだ!」

『り、了解!!』  

「…俺にもまだ…死ねない理由があったんだな。」  

自嘲気味に呟くアキト・・・。まだ、彼にはやらなければいけない事があった。  

…自分の復讐にほぼ無理やり駆り出してしまった少女に…

ホントなら…まだ小学校か中学校に通っているはずの年齢のラピスに…

彼はまだ、何もしてやっていない…少なくとも彼はそう思っていたのだ…。  

 

…。  

 

!!閃光が走る!  

 

…。  

 

……。  

 

そして…全てが終わった後…ユーチャリスは完全に岩山に埋まっていた…。  

 

…。  

 

『アキト…ラピス…』  

「…生きてる…のか?」  

「…うう…アキト…。」  

…どうやら皆、無事のようだ…。  

ユーチャリスの放ったグラビティブラストは岩山に大きな洞窟を作ったが、

その中に突っ込んだ衝撃で入り口の岩が崩れ、船ごと生き埋め状態になっていたのだ。

…修理が終わるまで動かすのは不可能だろう。  

「エンジンはどうだ?」  

『駄目、バッタ達だけじゃ修理に数年はかかる』  

「…生き埋めナノ?」  

『人の出入りできるくらいの穴ならあるよ…後で回りの岩をバッタ達に処理させて秘密ドッグにしようと思うんだ…。

 バッタを増産して良い?アキト』  

「任せる。」  

『じゃ、バッタの材料と、後…燃料を集めてきて』  

「…なに?」  

『これじゃ屑鉄も手に入らないからね…燃料はガソリンとかでいいよ』  

「ガソリン?そんな物何に使うんだ。」  

『バッタ製造プラント動かせるほど相転移エンジンは無事じゃない。何時止まるか分からないんだ。

 核パルスの方も…核燃料…手に入る?無理でしょ?』  

「…そっか。じゃアキト・・・行こうヨ。」  

「…分かった。」  

『僕は、古いタイプの発電機でも作ってる』  

「…新しいのにすれば良いんじゃないのか」  

『…普通ならね』  

(・・・?)  

「アキト…。」  

「…わかった、行こうか?」  

 

…。  

 

そして外に出ると…。  

「大惨事のゲンバ?」  

「…屑鉄はこれで良し…と。」  

…偽装用の船体が、あちこちに散らかっていた…。  

それから数日後…。  

…今、アキト達は一番近くの軍基地に向かっていた…乗っているのは、運送途中だった骨董品扱いのバギー。

幸い動いたので使っているのだ。  

そして、目的地に着いたのだが…。  

「オカシイね…。」

「ああ。このあたりのはず…なんだが。」  

何ヶ所回っても結果は同じだった…。  

普通だったら諦めていただろう…それでも…ピクニック気分ではしゃぐラピスの顔を見ていてアキトは思う。  

何で全てを諦めていたのだろう…もう少し前向きだったらもう少し違う展開もあったかも知れないのに…

だが過ぎた時は戻らない…せめてこの子だけは守ってやろう。…と。  

…そんな風に思っていると急に愛おしくなってヒョイとラピスを抱き上げるとその小さな額にチュッとやった。  

 

…。  

 

トタトタトタッ・・・  

びっくりしたのか顔色を熟れたトマトにしてラピスが走り去る…が、ほっぺたがニターッとだらしなく伸びているが…。

 

アキトが探しに行くと…。いた。岩山の影に居るようだ…影が見えている…。  

…だが、様子がおかしい…。  

!何物かがラピスを掴みあげた!?  

「おい…このガキ…奴らの仲間か?」

「だろうな。じゃなけりゃ…ここにこんな小さな子がいるわけない。」

「じゃ…お別れだな。…恨むんなら反体制派の親を恨むんだな。」  

ラピスを放り投げた後…男は銃を構える!

…間髪居れずに

ダダダダダダッ!  

…だが、そこにはもうラピスは居なかった…。  

「…いきなり何をする。」  

…男たちは突然金縛りにあったように感じた…体が動かない…。  

「答えろ…。」  

現れた男は全身黒ずくめだった。  

「グッ…このっ!」  

いち早く精神の再構築を果たした一人がアキトに発砲する。  

が、アキトは目にもとまらぬスピードで近づき、相手の手足をへし折る。  

「…ば、化け物!?」  

男たちは我先に逃げ出した…。  

ズガガガガガガ…!!  

!?そんな男たちに突然機関銃が撃ち掛けられた!  

…そして数名が倒れ、残った者は何処かへ逃げ延びていった・・・。  

…。  

「…ありがと。キミ達のおかげで助かったよ…キミ等が居なかったらアタシは見つかってたわ。」  

そう言いながら、岩陰から女が出てきた。機関銃を握っている…。  

「…悪いけどちょっと退いてねっ…と!」  

ガガッ!  

「うぐっ!!」  

…先ほどアキトが骨をへし折った男が断末魔の声をあげる・・・。  

「なっ!?」  

「やられなきゃ…やられるんだ。…それに…父さんの敵討ちなんだ…。」  

そういって女はある方向を指差す。そこにはかつて人間だった肉隗がごろごろしている…。  

「父さんはさ…独立派のリーダーだったんだ…。だから一番酷くなぶり殺しにされちゃってね…。」  

「…。(…独立?)」  

正直なところ、アキトには何がなんだか分からなかったが、

自分が無為に過ごしてきた数ヶ月の間に何か政変があったのだろうと思った。

が…何かおかしい。  

 

…。  

 

「…悪いね…。送ってもらっちゃって。」  

「ついでだから構わん。…燃料は確かにその場所に有るんだな?」  

アキト達は女に連れられて、有る場所に向かっていた。  

「ああ、あそこは廃棄シャトルの集積所だからね…

 しかし、キミもついてないね…こんなとこに墜落してくるなんてね…。

 実はあたし等も『謎の大型船』が何なのかを調べに来たんだ…。来なけりゃ良かったけど…。」  

「しかし…あんな所に何か有ったかなあ…?」  

「?廃棄物問題なんかで結構有名な場所だとアタシは思ってたけど。」  

「…?」  

「…暗いぞキミ。…あ、そうだ。このバギー、最新型の奴でしょ!

 どうやって手に入れたの…そういえば運送屋だったって言ってたね…横領?」  

「!!(これが…最新型だと!?)」  

「ア…図星だね!?」  

…アキトのなかで全てが繋がった…何時の間にか時を越えていたらしい…。

しかも、ここは!!  

(…100年前!月の植民地の独立運動の真っ只中か!)  

「…ごめんごめん、しょうがないよね…。こんな場合は。」  

(するとコイツは…木蓮人の祖先!?)  

「…なんか怖いな…エート…あ、私達の所に来たらどう?キミ達…私達の仲間だと思われてるよ。絶対。

 …キミ、強いし…さ。」  

(…どうする?……そうだな…それも…面白いか。)  

「ああ、そうさせてもらおうか…。」  

女の顔がパッと輝いた。  

「へへっ、決まり!!…じゃ、やることやったらアタシ達の隠れ家に案内するよ。

 …今は一人でも戦える人間がいるんで…歓迎させてもらいます!」  

「…俺はテンカワ・アキト。こっちはラピス・ラズリ。」  

「アタシはナツメだよ。…よろしく、アキト。」  

 

続く  

 

−−−その頃−−−  

 

「…その報告。本当かね?」

「…はい。」

「…銃弾を上回るスピードの男か…。」  

…。  

「良し…やはりアレしかないか!」

「アレ!?…まさか…!!」  

「核ミサイルの準備だ!奴らを根絶やしにするのだ!!」  

…今のところ、歴史は『正常』に進んでいた…?  

 

::::後書き::::  

・・明けましておめでとうございます!・・

どうも、BA‐2です。

『世紀を越えて』第3話です。

これ、本当に世紀越えしながら書いたんです!

…こんな駄文で良ければ応援お願いします。

 

 

 

管理人の感想

 

 

BA-2さんからの連載投稿です!!

予想外の展開ですね!!

まさか、木連の先祖とアキトが共闘とは!!

う〜ん、今後はどうなるのでしょうか?

それとルリちゃんはどうなるんでしょう?

 

ではBA-2さん、投稿有り難う御座いました!!

次の投稿を楽しみに待ってますね!!

 

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