機動戦艦ナデシコ アナザーストーリー

 

世紀を超えて

第5話 似て非なる物

 

 

 

核…。

一般的に原子爆弾とか水素爆弾とか言われている20世紀最大の発明にして悪魔の兵器…。  

 

その余りの破壊力もさる事ながら被爆地を放射能汚染し生き残った人間に被害を与え、

その上その土地を長い間使用不能にする…。  

…その為か殆ど実戦では使われない兵器である。  

理由はまだ有るが、今回の場合…使えない理由のその内一つが欠けていた…。  

 

…そう、独立派は核を持っていない。   つまり、核による報復は行えないのだ・・・。  

 

…今回の核攻撃は多分に好奇心が入っていたのではないだろうか?  

相手が反撃出来ないとなれば…人によっては、では有るが…。  

人は・・・何処までも・・・残酷に・・・なれるだろう。  

 

・・・。  

 

・・・・・・。  

 

連合軍戦艦…ブリッジにて  

「ふっふっふ。これで反乱分子は一掃されるわね…。

 私の名は未来永劫、伝説として語り継がれるでしょうね。」  

一番えらそうな男がそう言い放つ。  

「…アオイ中尉。お友達には残念だけど、これは戦争なの…我慢しなさい。」  

 

・・・。  

 

本来…彼らの任務は独立派への恫喝と降伏勧告であった。  

…だが、名門の出でありながら今までこれという手柄もなく昇進してきた男が提督として指揮を取る事となり

…事態は急変した。  

その男、ムネタケ少将は功を焦るばかりに独立派を攻撃…

本国へは独立派が軍の倉庫を襲い武器を奪って激しく抵抗した為…と説明した。  

 

…本国の反応はものすごい物があった。  

今までは、独立運動…とは言ってもやる事は平和的に署名を集めたりとか…後はデモ行進したり、

住民投票を求めたりとか…政府にとっては、…言っちゃあ悪いが、痛くも痒くもない物だった。  

…むしろ政治不信気味の大衆の不満のはけ口になると喜んでさえいたのだ…。  

 

だが、  

 

状況は一転する。  

政府は独立派を反乱軍とみなし、妨害工作を開始した。  

 

・・・。  

 

…確かに独立派は軍施設を襲い、武器弾薬を奪っていた。  

だが、それは一部の過激派によるものだった。  

…それもムネタケの流した情報に踊らされる形で…。  

だが、そんな事はこの場合関係ない…。  

「そこまでやる必要などない!」

「いや…こうするべきだったんだ!!」

「…いずれにしてもこのままでは多くの死傷者が出てしまう…。」

「降伏する気か!?」

「賛成します!…このままでは我等は反乱軍だ…。」

「馬鹿な事を言うな!」   喧々囂々・・・。  

 

・・・・・・。  

 

…そして、独立派は二つに割れた。

一方は、穏健派と合流。

もう一方は…完全に態度を硬化。徹底抗戦を宣言する。  

…だが、その宣言が人々の目に止まることはなかった…。  

連合軍の派遣艦隊は恫喝から攻撃へと任務を変更。

…内々のうちに独立派を…しかも穏健派と合流した方を攻撃したのである。  

…一説には穏健派のリーダーとムネタケ少将との間に密約が交わされ、

独立派から合流した物達を売ったといわれる・・・。  

 

…。  

 

なんにしても…これは独立派にとっての最後通牒であった。  

 

 

…戦えば負けるだろうが、降伏しても待っているのは破滅と思い込んだ独立派のメンバーは、密かに月を脱出。

そのまま作業員の名目で当時開発中だった火星に向かったのだ。

…一仕官の謀略とも知らずに。  

 

…それを追う連合軍艦隊。  

実はこれはムネタケの意思では無く、軍本部からの命令であった。  

当時は軍縮の時代で軍は肩身が狭かった。

そこで、ここで『戦争を演出』して軍の必要性を世論にアピールしようとしたのであった。  

 

…余談ではあるが、艦隊が核を使用した事によりその目論見は崩れる。

流石に世間は核の使用を許さないだろうと本部は判断したのである。  

 

…話は火星にもどる。  

「兎に角…だ、ここも危険かもしれん。その…テンカワとか言うのが来次第、ここを移動する。」  

ロングヘアーの男がそう言う。  

「了解です。このままではジリ貧ですけどね…まさか国に見捨てられるとは思いませんでしたが…。

 実際、本国に通信をいれたらボクは死んだ事になっていました…。」

長い髪を風になびかせながら、赤い目に銀髪…そして真っ白な肌と言う余りに目立つ容貌の少女は顔を曇らせた。

「…おーい、ラピスちゃ−−−ん。怖くないから出ておいでーーー(泣)。」  

ヤマサキ…

恐らく、あの『ヤマサキ博士』の先祖と思われる温厚そうな青年は奥に隠れたラピスをまだ呼んでいる…。  

いきなり嫌われたのが相当ショックだったらしい。  

「ぷくくくく…ヤマサキ君。無駄だってば…アタシを笑い死にさせる気?」  

そしてナツメ…彼女は笑いをこらえている…。  

 

…。  

 

そんな、彼らの元に悲報がもたらされる。  

…突然ラピスがノートパソコンを抱えてナツメの元に走り寄る!  

「大変!ミサイルがココに来るヨ!!」  

「へ?」  

ロングヘアーの男が施設内から飛び出すと上を凝視した!  

「…!来るぞ…ここを狙っているようだ!!」  

「ゲンゴロウさん…本当ですか!?」  

銀髪の少女が尋ねる。  

「…その名を呼ぶなァ!!私は月臣!!ツキオミと呼べっ!!」  

ロングの男…ツキオミ・ゲンゴロウは名前がコンプレックスらしかった…。  

 

・・・。  

 

《アキト・・・アキト・・・ミサイルが・・・》  

アキトの元にラピスからのエマージェンシーコールが届く。  

《分かった・・・歴史に干渉したくない・・・逃げるぞ・・・》  

《・・・待って!ツキオミの先祖がココに居るの!》  

《な・・・それじゃあ!》  

…どちらにしても歴史は変わる…しかも、最悪の場合…アキトは力を手に入れられず、

北辰に一矢報いることすら出来ないかもしれない。  

「やるしかないか…。」  

アキトは組みあがったばかりのエステを横目にそう呟いた…。  

 

・・・。  

 

・・・・・・。  

 

迫るミサイルは何故だかゆっくりと落ちてくるように見えた。

…とは言ってもこれはまだミサイルがかなり上空にあるからで、

スピードが上がったと思ったら次の瞬間には全員消し飛んでいる事だろう…。  

 

閃光  

そして  

爆発!!  

 

・・・。  

 

・・・・・・。  

 

…それら全てが収まった後、地上には  

「あれ、何でアタシ達生きてんの?」  

「…どうやらかなり上空で爆発したみたいですね。」  

「…威力も核にしては小さいような気がするけど・・・?」  

「本当に核爆発ならキノコ雲が上がるはずだ。…あの程度な訳が無い!」  

そうして上を見上げると…  

黒くカラーリングされた巨人が浮かんでいた…。  

 

・・・。  

 

その頃、連合軍艦隊?ブリッジ  

「一体如何言う事なの!!」  

「分かりません…本艦以外はあの黒い巨人に沈められました。」  

「た、たった数分で私の艦隊が・・・!全部!?」  

「…核ミサイルはどうなりました…?」  

…それにおずおずと答える下士官。  

「そ、それが…信管が外された状態で倉庫に戻ってきています!」  

「…何ですって?…如何言う事よ!」  

そこに艦長が口を出す。  

「あの…差し出がましいようですが…。」  

「…分かってるわ!全艦…一時撤退!戦力を立て直すわよ!」  

 

・・・。  

 

「…あー、アオイ君。」  

「なんでしょう…艦長。」  

「…脱出艇の回収…。」  

「もう、命じています。」

艦長はヒステリックに騒ぐ上官を横目にため息をついた…。

 

…。  

 

…本来ならば、これで全てが終わっていたはずであった…

が未来からの介入により、歴史は修正不可能なレベルにまでに変化していた。  

 

…アキトは今後、如何動く気なのであろうか?  

 

・・・。  

 

・・・・・・。  

 

黒い巨人はゆっくりとシャトル基地の前に降り立つ。  

皆、突然の来訪者に如何したものか分からず驚きを隠せないようだ・・・。  

…約1名を除いて…。  

「アキト!」  

トテトテトテトテトテトテ・・・。  

走り寄るラピス。  

するとアサルトピットが開き、黒ずくめの男が姿を現す…。  

 

・・・。  

 

「おい、ナツメ…あれがアキトか?」  

「…うん、そうなんだけど、ね…。」  

…ヤマサキがいない  

「…す、凄いや…これ!どうやってつくったんだい!?」  

…エステの周りをウロウロしていた

…銀髪の少女もいない…。  

 

・・・。  

 

「!!き、君は!?」  

「…初めまして、テンカワさん。」  

ぺこり  

アキトに挨拶していた。  

「こう見えてもボクはお姫様なんですよ。…国からは見捨てられましたが。」

 

・・・。  

 

「…あ、今回は危ないところを有難う御座います。皆に代わりお礼を…」  

だが、アキトは聞いていなかった…。  

「ルリ…ちゃん?」  

「は?…どなたでしょうか……ボクは…アム。」  

「…アメジスト・フォン・ピースランド…銀行国家ピースランドの第一王女…だった者です…。」  

その、言葉でアキトは理解した…。  

(独立派にルリちゃんの先祖が関わっていたとはな…。

 いや、違うか…この子は本来…ここで死ぬはずの子なんだろうな…。)  

…そこまで思ってアキトは不意に気づいた。  

(しまった…もう、これで歴史は完全に書き換わった!…これでは帰っても…そこは俺の知る場所じゃない!)  

アキトは自分の失敗を呪った。  

…そんなアキトの様子を勘違いしたアムは  

「…そんなに驚かないで下さい。…国に見捨てられた王侯貴族なんて…惨めな存在なんですよ…。」  

少女は続ける。  

「…ボクは、今まで独立運動を政治の面と資金面で援助してきたんですよ。

 …国のバックアップがない…今のボクは、無力です。足手まといなんですよ…存在意義の無いお人形。

 …あ、何を初対面の人に言ってるんでしょうね…。」  

…存在意義の無い人形…それは先日までのアキトその物であった…。  

ルリに良く似た少女からそんな言葉が出るのが耐えられなかったアキトはそっと少女の涙をすくい、

優しく抱きとめた…。  

そして  

「そんな事は言わない方が良いよ。君にだって出来る事は必ずある。

 諦めたらそこで負けだよ…元気を出すんだ…。」  

どん底を経験した者からの心からの言葉は少女の心を動かすのに充分だった。  

「あ、有難う御座います!…ボク…本当に…嬉しいです!」  

が、  

「アキト…。(怒)」  

「ラ、ラピス?」  

…相変わらずのアキトだった…そう、  

「…アキト…と言うお名前なんですか…。」  

「はい?」  

「どうかよろしくお願いします…。ア…アキトさん。(ぽっ)」  

「ああ、よろしく。…こら、ラピス、叩くな!」  

「あ、ボクの事…アムで良いです!!(赤面)」  

…アキトはラピスの相手に夢中で、意味深な言葉に気づいていない…。  

 

・・・。  

 

「…かなりの修羅場を潜って来ている様だ…。」  

アキトの動きを観察しながらツキオミが言う。  

「ええ、アタシもそう思う。」  

アムとのやり取りを立ち聞きしながらナツメが言う。  

 

・・・二人の会話は、実は噛み合っていなかった・・・。  

 

続く  

 

−−−その頃−−−  

「分かった!これ…ネルガル製の作業機械を改造した奴だ!

 …すごいや!!こんな改造方法があったなんて!」  

…ヤマサキはどうやらずっとエステに掛かりきりだったようだ…。  

 

::::後書き::::  

 

BA−2です!

第5話です!

やってしまった!!  

…早いとこ、登場人物の一覧でも作らないと自分でも忘れてしまいそうです。

頑張りますから応援よろしく!

では!!

 

 

管理人の感想

 

 

BA-2さんからの連載投稿です!!

む、予想が外され、なんとルリちゃんのご先祖登場です。

アキトは歴史の改革を恐れていますが・・・

既に手遅れでしょう(苦笑)

元々、君はそういう星の元に生まれたんだよ(爆)

しかも、月臣のご先祖様に山崎のご先祖様ですか。

さて、次の話では誰が出てくるのでしょうかね?

 

ではBA-2さん、投稿有り難う御座いました!!

次の投稿を楽しみに待ってますね!!

 

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