機動戦艦ナデシコ アナザーストーリー

 

世紀を超えて

第9話 英雄と殺人者の違い

 

 

 

 

アキト達が移動を開始してから暫く後。  

街の大ホールにてビデオデッキを超大型テレビに繋いでいる男がいる・・・。  

なれた手つきで配線を終わらせると、早速上映開始。  

 

…とは言っても、人数が多い。1度には見れないらしく、まず最初の組がホールに入ってきた。  

 

『レッツゴー ゲキガンガー3−〜♪』  

 

ナデシコ関係ではおなじみのゲキガンガーである。…子供達は一心に見入っている。

自分達の置かれている状況は決して芳しくはない・・・。  

それをゲキガンの主人公達に置き換えているのだろうか?  

 

・・・正義は勝つ?  

…嘘だ。…現実ではそんな事は滅多にない。  

一番、勝つことが多いのは『正義の皮を被った利己主義』であろう。  

 

・・・人の痛みを本当に知るためには同じ痛みを受けなければならない。  

もっとも・・・。  

知ることが出来ても、相手と上手くやれるかは別問題であるが。  

 

・・・だってそうだろう。  

親しい人を殺されたので、相手の親しい人を奪ったとして・・・。  

 

「…君も辛かったんだね。」

「お前もな…今後は仲良くやろう。」  

 

…ってなるわけは無い。  

 

・・・。  

 

「有りがとうよ。今週も子供達が大喜びしとるよ。」  

「いえ、自分は当然の事をしたまでであります。」  

 

現在、留守を任されている老人と、ある青年が話をしている。  

青年は20代半ばであろうか?…どうやらビデオの持ち主らしい。  

 

「ところで…草壁代表が亡くなられたそうですが?」  

 

老人が顔をしかめる。  

 

「ああ、今はナツメがここの指揮をとっておる。…上手くやっとるよ。」  

「…で、今は何処に?御悔やみでも…と思いまして。」  

「作戦中じゃ。」  

「・・・は?」  

 

かくかくしかじか・・・。  

 

「な…あの要塞に?…たった5人で?」  

「ああ。…とうとう勝負にでおった…」  

 

ドドドドドドドドドドドドドド…。  

 

「?行ってしまったわい。」  

 

突然青年は出ていってしまった…。彼は一体?  

 

・・・。  

 

さて、その頃のアキト一行。  

 

「ねえ、アキト。」  

「なんだ、ナツメ。」  

「作戦の説明。」  

「ああ…分かった。」  

「では、ボクが・・・。」  

 

アムが口を開いた…。

 

「先ず、別行動の北方さんが正面から敵の注意を引き付けます。

 その間にボクたちは研究所内に進入。

 …メインコンピュータルームの有る最下層を目指します・・・。

 その際に発見されたら、月臣さんに所長室か警備隊長の詰め所を目指してもらい、

 敵の注意を引き付けてもらいますが…」

「とにかくボクがメインコンピュータに取り付いたら勝ちです。

 …後は自動迎撃システムが敵を勝手に駆逐してくれます。」

「…以上。」  

「質問がある。」  

「何?…アキト。」  

「囮が北方一人で大丈夫か?」  

「ああ…大丈夫。タックンの異常な性癖は敵にも有名だから。…捕まったら大変だって敵さん必死よ。」  

「ふふ、あそこは我が狩場よ。

 …何、2〜3人さらって正しき友を増やすなど『日常茶飯事』。…なんだその目は。」  

 

北方から月臣とアキトが離れた・・・。  

 

「俺からも一つ。」  

「ん・・・月臣君…何?」  

「…お前は俺に死ねと言うのか?」  

「ああ、囮の件?大丈夫よ…その時はアタシはアムちゃんの盾になって死んでるだろうから。」  

「おいおい。って…正気か?」  

「勿論。・・・今回は私たち全員の運命が掛かってるの!…命を惜しんでる暇は無いわ。」  

「…最終的にアムが生き残ればそれで良し…か。」  

「まあね。…でもタックンやアキトがやられるとは思えないけど。」  

 

・・・。  

 

そして・・・アキト達は研究所近くまでやってきた・・・。  

 

・・・。  

 

「ようやく着きましたね。」  

「思ったよりも時間がかかった物だ。」  

「止むおえないな。レーダーに見つかったら元も子もない。」  

「じゃ、ここから分かれるよ…タックン、お願いね!」  

「はっ!閣下に勝利を!!」  

 

そうして北方は喜び勇んで駆けて行った・・・と、思ったら  

 

「閣下ーーー!」  

 

直ぐ戻ってきた。  

 

「…どうしたの?忘れ物?」  

「…一人で敵に攻撃を仕掛けていた馬鹿者が居りました故、持ってまいりました。」  

「「「「は?」」」」  

 

…そこにいたのは…ガイ?…いや、白鳥九十九?   そう、アキトにとって…思いで深い顔であった。  

 

・・・。  

 

「…で、白鳥君。どういうつもりなのか説明して?(怒)」  

「まったくお前は・・・。」  

 

ナツメ・月臣の嫌味に耐えつつも青年…白鳥は話し始めた。  

 

「えー、自分は…その…皆さんがここを攻撃に向かったと聞きまして…。」  

 

ズガーン…。  

 

「それで、自分も何か出来ないものかと…思いまして。」  

 

ドゴーーーン…。  

 

「…で、車でここまで突っ込んできたわけ?」  

 

何処だ−−−!探せ−−−!  

 

「…見つけてください…って言ってるのと同じですね。」  

 

バタタタタタタタタ・・・。  

 

「馬鹿か?お前は…。」  

 

キュラキュラキュラ・・・。  

 

「…弦悟郎。悪かったな・・・。」  

 

・・・。  

 

「ゥォ俺をその名で呼ぶなと言ったろうがァァァッ!」  

 

…居たぞ!・・・あそこだ−−−−!  

 

見つかったようだ。  

 

「・・・馬鹿?」  

「・・・。(アキト、懐かしがる)」  

「アキトさん?」  

「いや…何でも無い。」  

 

・・・。  

 

「見つけたぞ!反乱分子め!!」  

 

そう言って近づいてきた警備兵。  

 

ボゴォッ!  

 

「う・・・。」  

 

バタッ  

 

アキトの一撃で即ぐに沈んだ。  

 

「…大した物だ。」  

 

白鳥が言う。  

 

「…テンカワ・アキトだ。」  

 

アキトが自己紹介すると、  

 

「・・・白鳥 五十六 (しらとり いそろく)です。」  

 

そういう答えが返ってきた。  

 

・・・。  

 

「…しかし、お前のお陰で潜入任務が台無しだ。…帰るぞ。」  

 

そう言うと月臣は帰り支度を始めるが、  

 

「・・・月臣君。・・・作戦は決行するよ。」  

「な・・・ナツメ、本気か?」  

「ええ、このまま帰っても敵は次から警備を厳しくするわ。…チャンスは今しかない・・・。」  

「・・・このまま突っ込むのか!?」  

「そうするしかないでしょ?…ま、なる様になるわ。」  

「流石ですね。勇敢だ…おい、弦悟郎。少しはナツメさんを見習え。」  

 

ピシ・・・(激怒)  

 

「…こうなったのは全部お前のせいだろうが・・・ヤマ…いや白鳥。」  

「ヤマ?」  

「ああ、テンカワ。ヤマダってコイツの旧姓だ。…婿養子なんでな。」  

「連合軍に兄が居ります。…元気で居れば良いのですが。」  

 

・・・。      

 

・・・謎は・・・全て解けた!(爆笑)      

 

(あのガイと白鳥が親戚だったとはな・・・。)  

 

《アキトさん、ガイって誰ですか?…白鳥さんのお兄さんは太郎さんって言うんですよ。

 …多分アキトさんの考えてる人とは別人ですよ。》  

 

…山田太郎…居そうでいない名前だ・・・。  

さぞかしコンプレックスをもっているだろう・・・。  

 

・・・。  

 

そして、白鳥を加えた6人は基地内に侵入・・・いや、突入を敢行した!  

難易度的には常に気配メーターが殺(赤)で忍具無しの『天誅』だろうか?

はたまた無線とレーダー無しで素手のみの『メタルギア・ソリッド』?  

いずれにしても…ミッション・インポッシブルになるのは間違い無かった。  

 

…。  

 

・・・。  

 

無論、それはそれを行うのがまっとうな意味での『人間』ならばだ。  

こちらには最低2人は『怪物』がいる。  

・・・はたして、上手く行くのだろうか?  

 

・・・。  

 

研究施設は施設全体の中心部分。ならばコンピュータルームもそこにある。  

アキト達はそう判断し、城壁のような外壁を登る・・・?  

 

ズガ!…バラバラ・・・  

 

北方の馬鹿力で壁に穴があいた・・・厚さが2メーターも有ったのに・・・。  

 

外壁の上部で機銃を構えていた兵士が唖然とすると、下から飛び上がる黒い影が一つ・・・アキトだ。  

ポイ…どさっ!  

首根っこを掴んでポイッと下へ投げ落とすアキト。

…因みにここは地上10m。  

下に落とされた兵士は間もなく動かなくなった・・・。  

 

(ここまでしないといけないのか…?…本来ならば死ぬはずではない人間を殺してもよいのか?)  

 

そう思っていると・・・。  

 

《アキトさん、仕方ないです。…手加減出来る状況では有りませんし。》  

 

アムが励まして来る…だが、アキトは人を殺すのを躊躇している訳ではない。

歴史の大幅な改変を恐れているのだ。  

 

「…やれやれ、まだ14歳の女の子に心配されるとは…な。

 しかし…このまま歴史を変えつづけて…果たして良いものなのか?」  

 

アキトの呟きを聞いているものは誰もいない…そして迷っている暇は無いと判断したのか…

アキトは先へと向かった・・・。  

 

バタタタタタ…。  

 

「どうしたの…アキト?」  

 

マシンガンを撃ちながらナツメが聞く。  

 

タタッ…バシッ!…ドゴッ!…ゴギ…  

 

「いや、ちょっとね・・・。」  

 

数名の兵士を一方的になぎ倒しつつ、アキトが答える・・・。  

 

「…もしかして、敵を倒すのに躊躇してる?・・・駄目だよ、躊躇してたら。

 いい、戦争してる間は大量殺人者が誉められるの。…細かい事は考えたら駄目になっちゃうよ?」  

 

彼女の考えは…間違っているかも知れないが、アキトに対する心配がにじみ出ていた・・・。  

 

「…知ってる?一人殺せば殺人者で百万人殺せば英雄なんだって。」  

 

(…だとしたら…俺も『英雄』なのか?)  

 

…心の闇が、アキトを包む。  

 

「私達はただ、生きていける場所が欲しいだけ・・・。アキトは分かってくれるよね?」  

 

(それが叶ったら、次は何を望む・・・?)      

 

・・・。      

 

スタッ  

 

「…アキトさん(怒)さっきからお二人で何してるんです!」  

 

…アキトから闇が消える。  

 

「アムちゃん…あ、話しこんでる?」  

 

余りの剣幕に慌てるナツメ。  

 

「ええ・・・それはもう。」  

「はは・・・じゃ、行くね。…アキト、迷っちゃ駄目だからね!」  

 

スタタタタ…。  

 

ナツメは行ってしまった。  

 

「アキトさん…ボク、怒ってるんですからね。」  

「あ、戦闘中なのにね。・・・ゴメンゴメン。さ、行こうか?」  

「…そう言う意味じゃないです(ぼそっ)」  

「ん?」  

「…鈍感。」  

 

そう言うとアムも走り出した…が、頭の中ではある疑問が頭をもたげ始めていた・・・。  

 

(さっき…アキトさんの心が一瞬闇に染まりました…心の声が聞き取れないくらい。

 …何を…隠してるんですか?…何を…考えているんです?)  

 

「・・・ボクでは、相談相手にもならないんですか?」  

 

彼女の想いがアキトに届くときは来るのだろうか?  

…そして、中央に有る、メインコンピュータルームの有る施設にアキト達は辿り着いた。  

 

・・・。  

 

施設を見上げる一同  

 

「ここです。…遠くで見た時よりも大きく見えますね。」  

「…何で、間発途上のこの火星にこんな立派な施設があるんだ?」  

「…開発中だからさ、テンカワ。」  

「そ、一般人が入ってくる前に兵器の実験をしておこうって言う腹。」  

「ふ、下劣な連合政府の考えそうな事よ。」  

「敵の要塞に単身挑む!…なんだか燃えるシチュエーションですな!」  

 

今後、彼等を待つ運命とは?  

 

続く  

 

−−−その頃−−−  

…研究所の第一会議室  

 

「ネズミが数匹迷い込んだか。」  

「目的はなんだ?」  

「倉庫の食料ではないかと。」  

「弾薬もだろう。」  

「レーダーの破壊活動の可能性も有ります。」  

 

喧々囂々・・・。  

・・・会議の結論は出そうにも無かった。

・・・侵入者は直ぐそこまで来ていると言うのに。  

 

「ま、兎に角…撃退したら警備の強化を。」  

「…責任は取るのかね?」  

「…警備の責任者は貴方でしょうが。」  

「そう言う事なら…早期発見出来なかったレーダー部にも責任が…。」  

「ま、待ち給え…今はそんな責任論を言ってる場合では…。」  

「…レーダー関係の責任者は貴方でしたね。」  

「う…。」  

 

会議は終始こんな感じで進み・・・とにかく醜かった・・・。  

 

::::後書き::::  

BA−2です!第9話は如何でしたか?

…山田と白鳥はなぜ似ているのか?…書いてみたかったんですよ。(苦笑)

後、敵が侵入してるのに間抜けな会議してる高官達。

・・・あんまり戦闘シーン書けなかったですね。

…頑張りますんで応援よろしくお願いします!

 

 

 

管理人の感想

 

 

BA-2さんからの連載投稿です!!

衝撃の新事実です!!

あの白鳥とヤマダが親戚関係!!

・・・一番納得がいく説明ですね(笑)

それにしても、性格までまるで同じだとは(苦笑)

やはり、あの血族中には脈々と『熱血』の血が流れているんでしょうね〜

 

ではBA-2さん、投稿有り難う御座いました!!

次の投稿を楽しみに待ってますね!!

 

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