『時の流れに』アフターストーリー

20年後のピースランドにて

 

 

 

 

 

 

木星と地球、この両者で行われた不毛な戦争は一人の英雄の活躍によって終結を迎えた。

 

 

……其の名は、テンカワ・アキト。またの名を『漆黒の戦神』…。

 

 

既に『大戦』終結から20年…。

時には『火星の後継者』関係の反乱なんかが有ったりはする物の、世界は基本的には平和を謳歌していた。

だが、それは一般的には…の話。

 

・・・。

 

ピースランド王宮・メノウ姫の間

 

「久しぶりの我が家ですね…。」

 

何時もはハーリーの船に乗っているメノウだが、今回は実家に里帰りをしていた。

この宮殿は何時も騒がしい…が、無論嫌な訳ではない。

何故ならその喧騒は暖かさに満ちているから…。

 

…最もこの宮殿で生活している兄弟だけでも十数人居るのだから当然と言えば当然なのかもしれない。

 

メノウ姫は窓から外を見た。

…彼女の想い人が、父親と組手をしている。

 

「…もう…日暮れも近いのですが…ふふ、仕方ない人達です。」

 

微笑をその顔に浮かべたメノウはそう言ってから窓を離れ、

暫くお留守にしていた帝王学の勉強を始めるべく机に向かう。

…やはり一国の王女で、ルリ王妃の一人娘の彼女はそれなりに忙しいのだ。

因みにその日、彼女の部屋の明かりは午後11時まで付いていた…。

 

・・・。

 

「はァッ!!…トオッ!!」

 

ガシ…バシィッ!!

 

「ハーリー君…まだまだぁっ!!」

 

ゴガッ!ズガ…バギッ、ドカッ!!!

 

…常人には見えない程の応酬が続く。

アキトは嬉々として組手に興じていた。

…何せ、二十人近い奥さんに行動の全てを握られている。

分刻みのスケジュールに従って動くだけの生活が始まって、既に何年経つのか分からないほどだ。

 

…従って、こう言う機会でもない限り自分の想うように体を動かす事など無いのだ。

…まったくもってご愁傷様である。

因みに最近、体重が遂に30キロまで落ちてしまったらしい。

ハーリー曰く、

 

「や…やつれましたね・・・。(汗)」

 

だそうだ。

 

・・・。

 

どれだけの時がたったのか…既に日が暮れかけていた。

 

「さ、テンカワさん。…次はラピスの所へ行くんでしょ?」

「う…そうだった…じゃあな…はぁ…。」

 

また、分刻みのスケジュールに戻っていくアキト。

…因みに奥さん全員に一人は子供が居る。

 

…恐ろしい子宝父さんだ。

 

背中に哀愁を背負ったアキトを見送ると、ハーリーはくるりと後ろを向く。

そこではアキトの長男が、気を練っていた。

(彼が不死身な理由(後編)の追伸に出てきたユリカの子供です。)

 

「コウタロウ…遅くなった。」

 

ハーリーが声を掛ける。

 

「こっちは準備OK。マキビの兄さん…始めますか?」

 

年の頃16から17歳と言った所か…。

ユリカと同じ色の髪と、アキト似の顔立ちを持つ少年が立ち上がった。

 

 

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〇ミスマル・コウタロウ
アキトの長男で母親はユリカ。
父親似の顔と母親似の髪を持つ。
両親の良い所を継いだ天才で、兄弟中で一番モテル。
指揮・戦闘も、料理すらも難無くこなす。
祖父の後を継ぐ事が決まっている為、ミスマル姓を名乗る。
…何故かレイン・アカツキと相思相愛の関係。
但し、父の女難も継いでしまった…。
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「へへっ…こっちもだぜ!」

その横から髪を緑に染めた少年が出てきた。

リョーコとアキトの息子で名をリョウジと言う。

 

 

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〇スバル・リョウジ
言うまでも無くリョーコの子供。
格闘戦と機動兵器戦のプロフェッショナル。
男の中の男と言った性格なのだが、顔が母親と生き写しの為、何時も女の子と間違われる。
燃え盛る烈火の如き紅い昂気を操る。(北斗は朱金)
使用する機体はレッドサレナ・カスタム。
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「二人とも、元気そうだね…じゃ、始めるかい?」

 

ハーリーから緑の昂気が舞い上がる…。

それに呼応するかのごとく、蒼銀と紅の昂気が舞う…!

 

・・・。

 

数分後、倒れる少年二人と息切れ一つ無いハーリーがそこに居た。

 

「畜生…オッサン、頑丈過ぎだぜ!!」

 

リョウジの負け惜しみが空しく木霊する。

 

「…確かに昂気を込めた鉄拳1万発がまるで効いてないしな…。」

 

冷静に数を数えていたコウタロウ君もどうかと思うが…。

 

…それに対するハーリーの答えは苛烈な物だった。

 

「お前達に足りない物があるんだよ…。」

 

話は続く…。

 

「そう…それは覚悟…だね。」

「テンカワさん…君達のお父さんの全盛期はそれは凄かったよ…。」

 

…そう言いながら上を向くハーリーの胸中はいかなる物だろうか?

 

「狂気と隣り合わせで戦い、自分自身は常に最前線にいた。」

「軍からは危険視され、敵からは眼の敵にされてね…。」

「…敵に捕まって人体実験に使われた事さえあるんだ。」

 

「お前達に…誰にも認められる事が無くても戦いつづける事…出来るかい?」

「困難な道に自ら飛び込んでいく事が…出来るか?」

 

・・・。

 

二人は黙ったままだった。

…後で聞いた話では、彼らはTV等でやっている事しか知らなかったのだそうだ。

…基本的に誰も話していなかったらしい。

 

因みにハーリーが『覚悟』を身に付けたのは、雪山特訓の最中。

食料が無く、遂に最終手段として熊を狩る事にした時である。

 

…野犬の群れを率いて巨大な熊と格闘戦を展開したらしい。

 

・・・。

 

…ふと、辺りを見まわす。

 

「マキビか・・・元気そうだな。」

 

道場から北斗が帰ってきたようだ。

因みにピースランド城下には『木連式・天川流』の道場が有る。

最高師範は北斗が勤め、ハーリーも師範として登録されているその道場。

…実はピースランドの近衛部隊をスカウトする為に有るらしい。

 

アキトが創始者であるその道場には数百人もの弟子がいたりする。

…師範代の半数がアキトの肉親なのが少し気に掛かるが…。

 

「皆、揃っているとは…久しぶりだな。」

「「「はっ!!」」」

 

ザザッと北斗に頭を下げる3人。

 

「む…付いて来い。」

 

何に気づいたのか…そう言って北斗が消えた。

 

ザザッ!!

 

そして3人も消える。

…後には何も残らなかった。

 

別にジャンプした訳ではない。

純粋に速いのだ…。

 

・・・。

 

「あれ?叔父さん達…どこ行ったのかな?」

 

数分後、ハーリー達がいた場所で、お玉を持ったエプロン姿の少女が一人首を傾げていた。

 

…彼女の名はジャスミン。

母親のコードネーム(某同盟の)をそのまま名前に貰った、

 

ネオ・ホウメイガールズ

 

の一員である。

 

…アキトの子供達は随分と分かり易い名前の者が多い。

何故なら…母親を間違えよう物ならえらい目に会うからだ…。

 

・・・。

 

…一方、北斗達はと言うと…。

 

「ぐわっ!!」

 

不審な男を捻りあげていた。

…今日も何処かの工作員が紛れ込んでいたようだ。

 

「…ピースランドとは名ばかり…ふ、退屈しなくて良いがな。」

 

北斗のストレスはこうして発散される。

 

「…アレ?ハーリーのオッサンは?」

 

リョウジが気づいた。

 

「…あそこか。」

「何処なんだ?」

「子供は知らんで良い…。」

「ふん!何時もの子供扱いかよ!」

 

・・・。

 

「…飯が出来たぞ!」

 

辰斗が跳んで来た…。

 

「ああ、分かった…。」

 

北斗が答えるが辰斗はキョロキョロしている。

 

「あれ…ハーリーは?」

「…すぐ来るさ。さあ、行くぞ。」

「…了解…お袋。」

 

そして影はその場から消えた…。

 

・・・。

 

その頃、ハーリーは、イネス・ラボの敷地内にいた。

緑の鎧を纏い、巨大な戦斧を持ち、

緊張した面持ちで臨戦態勢を取っている。

 

「…居るんだろ。ファイナル・ブーステッド!

 

ニョキ・・・。

 

「ホーッホッホ…よく分かったわね!!」

 

…キノコのキグルミを着たムネタケらしき奴が生えてきた!

…実はそのキグルミは体の一部なのだが…。

 

もう、お分かりだろうが、コレはムネタケの細胞から培養されたイネス作の失敗作である。

ハーリーはその駆除に追われていたのである…。

 

「…私はこの力を持って世界をひれ伏させるのよ!!」

 

ブファー・・・!!!

 

菌糸がまるで触手の如くハーリーに襲いかかる!

 

ズバラッ!!

 

だが、ハーリーはその手の戦斧でキノコの体ごと一刀両断にする!

 

「ギャピー!!」

 

正面からまッ二つになり悲鳴を上げるキノコ…。

だが、

 

ピタ…。

 

 

くっつく。(汗)

 

 

「化け物め…。」

 

 

「アンタにだけは言われたか無いわよ。」

 

 

…その一言で切れたのか、ハーリーはガソリンをキノコにぶっ掛ける!

 

「ぐふぇ…なによコレ!?」

 

かち・・・。

 

ボオッ・・・メラメラ・・・。

 

「ギョへ−−−−−ッ!!」

 

…こうしてキノコは灰になった…。

どうやら…弱点は火らしい。

 

・・・。

 

「じゃあ、また。」

 

ハーリーがお辞儀をした。

 

「ありがと。また今度ね…。」

 

イネスさんはまだ怪しい実験を繰り返している様子。

…室内のヤマダらしき影を見なかった事にして、ハーリーは去っていった。

 

「…次は3ヶ月後か…。」

 

そんな言葉を残して…。

 

・・・。

 

その頃…森では新たなキノコが生えてきていたりする…。(汗)

…完全に根絶やしにするのは…かなり難しい事のようだ…。

 

・・・。

 

「…今回の奴は手応えが有りませんでした。」

「そうか、ご苦労。」

 

ハーリーは北斗に報告を入れている。

 

「あんなの…子供達には…見せられませんね。」

「ふん、過去の負の遺産に悩まされるのは俺達だけで充分だ…。」

 

…そう言って酒をあおる北斗は何を考えているのか?

それは…北斗と枝織だけが知っている事だろう…。

 

「…明日には行くのか?」

「ええ、夕方にはここを立ちます。」

「・・・朝にしろ。」

「…何故ですか?」

…。

「零夜が…来る。」

 

…不気味な沈黙が暫く続く…。

 

「…分かりました、香織を連れて朝一で出ます。…メノウは後で迎えに。」

「頼んだぞ…アレを零夜に会わせたら…。(汗)」

「…。(ゴク)」

 

…何か…聞いてはならない事があるらしい・・・。

 

…。

 

そして、また…朝が来る。

コレがピースランドの日常。

 

アキトが命がけで手に入れた『平穏』で、あった。

 

::::後書き::::

20年後のピースランドの日常の一こまです。

…掲示板にオリキャラについての議論が有る最中に、またオリキャラを出してしまいました…。

…まあ、これがBA‐2の作風なんで…。

 

裏設定:この時代のピースランドは世界の中心になっています。

    原因は…200年遅れの恐怖の大王(ヲイ)の所為です。

    …世界中が破壊された為、発言力が上がったんですね。

では!

 

 

 

BA-2さんからの投稿です!!

天国なのか、地獄なのかは本人次第か・・・

まあ、アキトが妻達に逆らえるとは思えんが(苦笑)

しかし、30kgって痩せ過ぎだろう(爆)

それでもハーリーと互角に戦う辺り、流石だなアキト。

でも零夜が何なのだろう?

それだけが不思議?

 

ではBA-2さん、投稿有り難う御座いました!!

次の投稿を楽しみに待ってますね!!

 

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