『時の流れに』アフターストーリー

『復讐鬼』は一人じゃない

 

 

 

木星と地球、この両者で行われた不毛な戦争は一人の英雄の活躍によって終結を迎えた。      

 

 

……其の名は、テンカワ・アキト。またの名を『漆黒の戦神』…。  

…だが、彼が未来から来た人間だと言うことを知るものは少ない・・・。  

何をしていたか…等といったらほんの一握りの人間が知るのみである。  

…。  

彼を英雄視するものは数多居る…彼が大量虐殺者だと聞いても誰も信じないであろう。  

さもなくば、平和の為の…特別な事情でもあったと考えるだろう。  

否。   彼は彼自身と最愛の妻の為に戦ったに過ぎない。  

…沢山の人が死んだ…。  

だが、数千人だろうが、数万人だろうが…例え死んだのが一人だろうが、

殺された方にすれば許せない事に変わりはない。  

 

 

…火星の後継者の蜂起の暫く前…。

 

ネルガル、整備員詰め所…。  

「…何やってる!休憩は終わりだぞ。」  

「…あ、班長。家族からのテレビ電話が来まして…。」  

「…ほう。…見てても言いか?」  

「どうぞどうぞ!…ふふふ。」  

『あなた!元気にしてますか?』  

「…何だぁ、この美人は?」  

「へへへ、妻でして…。」  

「大金星でしてね…横は長女です。生後11ヶ月…可愛いでしょう?」  

『…もう、そんなに誉めてる暇があったらたまには帰ってきてよ。』  

「へへへ…ごめんごめん。」  

 

…。  

 

「…俺は行くぞ。のろけにゃ付き合ってられん。」  

『それでね…この新居はいい感じよ。さすが最新型よね。』  

「!!最新型…ヒサゴプラン!?」  

「…ええ、そうですが。…まあ、ネルガルの社員がクリムゾンの住宅に住むのはやっぱ問題ですか?」  

「あ、当たり前だ!!…早く引っ越せ!」  

『班長さんにそう言われても…まだローンを払い始めたばかりですしね。』  

苦笑する女性。だが、ウリバタケはそれどころでは無かった…。  

(…何処のコロニーだ?…今日はアキトの奴が!!)  

「…じゃ、忙しいから切るね。

 …今、極秘で動かしてる戦艦の整備をやってるんだ…帰るのは、

 …数ヶ月かかるだろうな…。」  

『…そう、…仕方ないわね。私はこの子と待ってるわ。』

『…さ、お父さんにバイバイしましょうね。…バイバー』  

ゴワッ!  

突然、後ろの窓から星が消えた!

…黒い機動兵器。

…ブラックサレナ!   閃光!!  

…そして、  

ザーーーーーーーーーーー・・・  

テレビ電話のディスプレーにはノイズだけが残った…。  

 

…。  

 

男は暫くの間落ちこんでいたが、その内に立ち直った…。  

ウリバタケはそう思っていた…。  

……。  

 

『時の流れに』プロローグ…あの時のドッグファイト時  

雄大な火星をバックに二隻の船がチェイスを繰り返していた・・・  

「アキトさん!! ・・・もう直ぐユリカさんが退院されるのですよ!!    

 せめて、せめて顔を出すくらいいいじゃないですか!!」  

(そんな権利…アンタには無い。)  

そう思いながら、盗聴機のスイッチを入れる。  

「・・・ラピス、ジャンプの準備を頼む。」   

「・・・うん、解ったアキト。」  

(…よし!掛かった!!)   

「アキトさん!!」  

(艦長…呼ぶだけ無駄です。全ては終わりました。)  

『ジャンプフィールド生成完了しました!!』  

(…俺は、この為にあの船の整備を続けていたんだ…。

 そしてこの間、フィールド精製装置にちょっとした細工を施した。

 …次のジャンプは…何処に飛ぶか分からないぞ…。)  

(…テンカワさんよ。こう言う復讐もあるんだぜ…あばよ。)  

 

……。  

 

気がついたら、男はナデシコAの建造現場に居た。

…どうゆう事かは分からなかったが…自分の幸せを取り戻す為…全力で頑張った。  

そして十数年。  

有る日、男は何時もは読まない新聞を読んでいた・・・。  

 

民明書房刊「漆黒の戦神、その軌跡」  

 

「…随分売れてるようだな。」  

「そうだよ。凄いんだから…珍しいね。お父さんが新聞読んでるなんてね。」  

忙しさにかまけて、男は新聞すら読んで居なかったりする。  

「…面白いのか、その本。」  

「うん、私も戦神のファンなんだ!」  

…仕事帰りに買ってみる  

(…こ、この男は!?)  

 

…。  

 

数ヶ月後  

「面倒だね…アキト兄。」  

「仕方ないだろう…。」  

「…自業自得。」  

アキトはとうとう捕まり(第三作、『運命の友』参照)

沢山の奥さんの間を分刻みのハードスケジュールで行ったり来たりしていた。  

…日本近海。  

ブワッ  

バサッ…ザッパ−ン  

「何だ!!」  

「変な…網みたいな物に絡め取られた!」  

「アキト兄…バーニアが海水で壊れちゃったよ!」  

…流石のブローディアも、想定されていない状況では実力を発揮出来ない。

さらに政治家どもの思惑で、全ての武器が取り外されていた。  

「何物だ!?」  

「初めまして…かな。プリンス・オブ・ダークネス!」  

かつての二つ名…流石のアキトもたじろいだ!!  

「私の家族は、前の人生でお前に惨殺された!」  

「ヒサゴプランのコロニー?」  

「その通り!…復讐としてお前の船に細工をしたがお前は生き残り…あまつさえ英雄視されている!

 …もう少し復讐させてもらう。」  

「我が機体、エステバリス・海戦フレームで海の藻屑と消えるが良い!」  

完全に網に絡め取られ、身動きできないブローディアに三又のフィールドランサー、『トライデント』が襲いかかる!  

流石に防御も高く、そう簡単にやられたりはしない。だが、少しずつ小さな傷を受け始める。

…エステとはいえ水中専用に特化された特注機だ!

…身動きの取れない状態では流石に分が悪い。  

…数時間後…ついにコクピットに水が入ってきた…。  

「こちらの勝ちだ。」  

男が言う。  

「…お前の復讐は成功だな。」  

アキトが言う。  

「勝者は敗者に要求する権利がある。…一つ言う事を聞いてもらおう。」  

「…良いだろう。ただし、余り時間は無いぞ。」  

「いい返事だ…確かに聞いたからな。」  

そう言うと、突然男はブローディアを水面に引き上げた。  

「…何故だ。」  

「復讐してもどうなる物ではない。それに…この世界の家族は生きている。」  

「強いな…。」  

「…エステに負けたんだ。お前の名声はがた落ちだぞ。」  

「構わん。」  

「それじゃあ…な。直ぐそこにナデシコが来ているはずだ。」  

「呼んでいてくれたのか。」  

「…ああ、約束は守れよ…。」  

 

…そして男は去っていった。      

 

−−−この物語を死んでいったヒサゴプランのコロニー居住者に捧ぐ−−−  

終わり?      

 

−−−その後−−−  

 

「アキト…これ、どう言う事?(怒)」  

「こんな物が送られてきたの。(怒)」  

「は?」  

見せられたのはサセボ抑留時代の写真。

アキトの横でルリが眠っている。  

「事実ですもんね…アキトさん?」  

嬉しそうなルリ…。

その手にはルリがアキトの屋台でチャルメラを吹く写真があったりする。  

 

…その上  

 

「…嬉しいです!あのアキトさんとデートだなんて!

 …お父さんてばアキトさんと知り合いならもっと早く言ってくれれば良いのに…。」  

「あはははは…そうかい?(…何故、こんな事に?)」  

男の娘とアキトは遊園地でデートしていた…。  

言う事を聞いた結果だ。

…娘から頼まれたようだがどうやら娘には甘いらしい。  

アキトは、かつて自分が殺した少女に戸惑い気味だが…。  

…後ろの視線×15〜17が痛い…余りにも。  

男には、まだ『ラピスとお風呂』・『夫婦の愛の営み』等の諜報部から持ち出した写真が山ほど有る…。

これからも『注文』は続くだろう。

 

…アキトに平穏は来ない。  

 

PS なお、あの後エステバリス海戦フレームが突然注文され始めていたりする…。  

 

::::後書き::::  

BA‐2です。前から書きたかったエピソードです。  

黒貴宝さんのSSから 民明書房刊「漆黒の戦神、その軌跡」 を名前だけ使わせて貰いました。

…申し訳無いです。  

…どうでしょうか、有る一人の男のセコさ爆発の復讐模様。

では、よろしければ応援よろしくお願いします。

 

 

 

 

管理人の感想

 

 

BA-2さんからの投稿です!!

何と言うか・・・日常生活でさえ、『ブローディア』で移動をしてるのかアキト(笑)

お前にはボソンジャンプがあるだろうが(爆)

・・・でも、奥さん達はそれぞれの故郷に住んでるのか?

通い妻ならぬ、通い夫?

ま、アキトらしいよな。

それにしても、男の執念は凄いですね〜

ちなみに、海戦フレームの購入者はやはり彼等ですかね?

 

ではBA-2さん、投稿有り難う御座いました!!

次の投稿を楽しみに待ってますね!!

 

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