『時の流れに』アフターストーリー

ハーリー列伝

 

 

 

 

木星と地球、この両者で行われた不毛な戦争は一人の英雄の活躍によって終結を迎えた。

 

 

 

……其の名は、テンカワ・アキト。またの名を『漆黒の戦神』…。  

ところで・・・彼の側近達と言えば誰を思い出すだろうか?  

やはりホシノ・ルリかラピス・ラズリのマシンチャイルドコンビがそのトップに立つであろう。

・・・が、  

貴方達は忘れてはいないだろうか?マシンチャイルドは二人ではない!  

 

・・・今回はその、ナデシコ唯一の男性マシンチャイルド、マキビ・ハリのその後のお話・・・。

 

 

       ・・・漆黒の戦神テンカワ・アキト…−マキビ・ハリの章−  

 

 

−中略−  

 

・・・彼が戦艦ナデシコに乗船したのは6歳のときだと言われる。

・・・但しこの6歳という年齢はナデシコにおいては他にラピス・ラズリが存在した為に殆ど問題視されていない。  

・・・だが、ラピス・ラズリがテンカワ・アキトの養女であると言う事を考慮に入れると話は俄然違ってくる。  

ラピスの場合は親権者であるテンカワ・アキトと行動を共にしなければならない

確固とした理由が有ったのである・・・。  

 

・・・それは、『住所』  

 

そう、テンカワ・アキトはナデシコに乗船した際に自らのアパートを解約し、

・・・語弊を恐れずに言えばナデシコに『住み着いた』のである。  

つまりラピス・ラズリにとっては戦艦ナデシコは唯一家族の存在する、まさしく『我が家』であったと言えるのである。

・・・反面マキビ・ハリは両親の元から拉致同然(同意の上とはいえ)にナデシコに乗船した挙句、

両親はテンカワ・アキト自らによる説得(一説には脅迫じみた行為が行われたとする説もある。)

で事後承諾させられたのである。  

クルー達からの評判は悪くなく、オペレーターとしても一級の腕を見せるものの、

一部のクルーより酷い虐待を受けていたいう、信じがたい報告が聞かれるなど彼にとってナデシコは必ずとも

最高の環境とは言えなかったであろう。  

 

ここにある資料…

磔にされた挙句、赤い槍で体中を何度も痛めつけられる写真がその全てを物語っていると言えよう。

なお、この横に写る人物はネルガル会長、アカツキ氏であるという。

彼らに何が起こったかは、もはや余人の知るところでは無いのだろうが大変に興味をそそられる事でもある。

…彼らもこの事件については余り多くを語ろうとはしないので全ては闇の中ではあるのだが・・・。  

さて、そんな彼を支えたのが先輩であるホシノ・ルリであると言う事実は余りに有名な話である。  

…それが、我々の言う愛とか恋とかいう代物なのかは専門家の間でも意見が分かれる所ではあるが…

ここでは彼がナデシコに乗船していたとき10歳にも満たない幼児であったことを考慮して

彼のホシノ・ルリに対する感情は『思慕』それも姉や母親に対するそれに準じる物であると判断して話を続ける。  

 

彼と彼女の関係はホシノ・ルリがナデシコに乗船した頃にまで遡るという。  

…何時からか…は不明であるが、二人…いやラピス・ラズリを加えた3名はその頃に出会ったという。

…但し、ネットを通しての関係ではあるが…。

(なお、『ダッシュ』という謎の人物が彼らに関わっていたという情報もある。

 ただし、この人物はその後の歴史にまったく関わってこない。

 …その為、最初からそんな人物はいないとする説と、彼らの行動に付いていけずに彼らの研究から途中で

 脱落したとする説が現在では有力である。)  

そして、意気投合した三人は共同研究を始めたのだが…

その際、研究資金集めに株を売買し、ネルガルの株式を相当数買い占めたという。  

 

それは直ぐにテンカワ・アキトに渡ったらしいが、それがテンカワがネルガルに入れ込む理由だという

専門家もいる・・・。  

 

・・・。  

 

ここは、とある戦艦のブリッジ・・・。  

「・・・端から見ると、そう言う風に見えるのかな?」  

座席に腰掛けた、20代半ば程の青年がポツリと漏らす。  

『ハーリー。ボクもそう思うんですが・・・。』  

…何処からか声が聞こえる。オモイカネ系AIのようだ。  

 

パタン…本が閉じられる。  

 

「…今は、昔の話さ。」  

青年…ハーリーの目はかなり遠くを見つめている。  

「僕は…僕のやる事は、何時も手遅れで…何時もあの人に先を越されていたからね・・・。」  

『ハーリー。アキトさんにハーリーが勝利する可能性は34%』  

「…今の僕と今のあの人なら、それくらい行くと思うよ。」  

 

プシュン・・・たったったっ  

 

「今や…軍のエースだもんな。」  

…そう言って入ってくる赤い髪。  

「辰斗か?」  

「・・・ああ、お袋から伝言だ。…次の稽古は3日後だ。」  

そう言ってハーリーの横に立つ少女。14〜15歳くらいか?  

「…なあ、ハーリーは…どうしてそんなに強くなったんだ?」  

「・・・そうする必要があった。少なくともそう思いこんでいた。」  

そう言いながら、船の進路をピースランドに向けるハーリー。  

「…じゃ、また何時もみたいに昔の話聞かせてくれよ。ハーリーの話は聞いてて飽きないから♪」  

そう言いつつハーリーの膝の上にぴょこんと少女は乗った。  

「ふう。困ったな…。『香織』は幾つになっても甘えん坊なんだね。」  

「…そっちの名前は…人前で使うなよ?(赤)」  

この少女。香織はアキトと北斗(枝織)の子。

母親のような2重人格ではないがどうにも不器用で、普段は辰斗と名乗り男として暮らしている。  

「で、ハーリー。お袋に戦い方を教わろうとしたのは何でだ?」  

「…あれは、戦争終結から数年。ルリさんの16歳の誕生パーティーの時。」  

 

・・・・・・・・・・・・・・・。  

 

ハーリーはルリのドレス姿に見とれていた・・・。  

が、  

「おお、ルリ。立派になったのう・・・。」  

「はい、父。…ところで、アキトさんとの事でご相談が・・・。」  

「ム…まあ良い。なんだね?ルリよ。」  

 

・・・。  

 

そんな会話を耳にしたハーリーは、  

(…このままじゃまずい!…テンカワさんの毒牙に掛かる前にルリさんを助け出す方法・・・何か無いか?)  

・・・そこに通りかかる北斗。

…ハーリーの脳みそに良い考えが浮かんだ。  

「北斗さん!」  

「ん?」  

「僕を…僕を弟子にしてください!!」  

 

・・・。  

 

「「「「「「「「「!?」」」」」」」」  

会場は一時騒然となった・・・。  

 

・・・・・・・・・・・・・・・。  

 

「でも…なんで、そんな事を?」  

「ふ。あの頃は強くなればもしかしたら…と思ったんだ。」  

まあ、自分を磨くのが一番の近道であろう。  

「で・・・オチは?」  

「…分かってるだろうけど、修行は厳しかった。

 いきなり山篭りだもんな。しかも降りたきゃ自分で道を探せって…雪山でさ

 …数年後にはお前の世話も加わったしね。」  

「ぐ。」  

「…でも、なんとか5年後に下山が許されて…で、ルリさんの21歳の誕生パーティーに参加したんだ。」  

 

・・・・・・・・・・・・・・・。  

 

「ルリさん!お久しぶりです!」  

「ハーリー君!久しぶりですね…って随分逞しくなりましたね。」  

「はい!修行の成果です!」  

「…頑張ったんですね。ハーリー君。」  

「ええ!…ところで…ルリさんにお話が有るんです!」  

「私にも有るんです。・・・おいで、メノウ…さ、ご挨拶。」  

 

ピシッ…。  

 

ザップ−−−−−−−−ン・・・・・・。  

 

・・・・・・・・・・・・・・・。  

 

「・・・既に人妻か?」  

「まあ、ね。…で、僕の初恋は終わったのさ。(苦笑)」  

「無駄骨。」  

「ぐむう・・・。」

 

・・・プシュン とて とて とて  

 

「…で、それが私とハリ様の運命的な出会いだった・・・。(うっとり)」  

・・・さっきの話の中の少女テンカワ・メノウ。オペレーターである。(笑)  

どご!  

「ぐあっ!」  

香織を突き飛ばすと早速ハーリーの膝に収まる。  

「ところで…ハリ様。反政府ゲリラの攻撃部隊を発見しましたが?」  

「そうか…ご苦労。・・・予定変更だね。ブラックサレナUで僕も出る!」  

「「はっ!!」」  

づが・・・!  

辰斗がメノウをハーリーの膝から叩き落した!  

・・・。  

「ハーリー!」 

「ハリ様!」

 「ん?」  

 

「「酷いです(ぞ)!!」」

 

クワッ!

ずがばぎどごぼがぼがずど・・・・・・・・・・・・・・・!!!  

 

・・・。  

 

…その時、オモイカネはふと以前あの二人の少女に聞いた言葉を思い出す  

「ハーリーのどこがいいって?」  

「ああ、…特にここって場所はない・・・が、しいて言うなら」  

「ハリ様の良いところ?私は全てが好きですが…しいて言うなら」  

「「どんな悪戯しても死なないとこ?」」  

『ハーリーは幸せ?不幸?分からない・・・。』  

 

オモイカネの悩みは尽きなかった・・・。  

 

−−−その後−−−  

「で、どれを選ぶ?」  

「何なんだコリャ?」

「うえ!これ使われたらマジで死んじまう!」  

「…大丈夫。僕も使われた事が有る。」  

「「でええええええええ!?」」  

…ハーリーは捕らえたゲリラに、昔使われた『お仕置き道具』を見せていた。  

…って使う気かよ?…少なくとも肩に担いだ赤い槍は使うなよ!?  

「…ぐう・・・流石は『戦神の後継者』!」  

ブス・・・!  

だから刺すなって。…ハーリーに取り、アキトはトラウマのようだ。  

…がんばれ、ハーリー。  

 

::::後書き::::  

BA‐2です!

逃亡シリーズが収拾つかない所まで行ってしまったので、ここでワンクッション置きます。

…如何でしょうか?約20年後のハーリーは?…強くなってもやはりハーリーなんですけど。

…応援があればこれもシリーズ化したいです。

では!

 

 

管理人の感想

 

 

BA-2さんからの投稿です!!

ハーリーの未来・・・

これは予測不可能でしたね〜(苦笑)

そうか〜、北斗に弟子入りか〜

でも、生きて山を下りてくるとは素質はあったんだね(笑)

もともと、不死身に近い再生能力を持ってたしね〜

Benとしては是非とも続きを読みたいですね!!

 

ではBA-2さん、投稿有り難う御座いました!!

次の投稿を楽しみに待ってますね!!

 

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