機動戦艦ナデシコ  アナザーストーリー


世紀を超えて

第105話 残骸





…もくもくもく…。


黒煙が上がる中、ナデシコブリッジでは懸命の消火作業が進んでいた。

三羽烏達の放った爆弾つきバッタの自爆をもろに食らった結果である…。


「ちょ…ルリルリィッ!?…目…あけなさいよぉっ!?」

「…きゅう…。」


…至近弾を受けたルリは未だに目を覚まさない…。


「やっぱりジュン君は最高の友達だね!」

「…そろそろ次のステップに進みたいんだけどね、僕としては…。(泣)」


…ジュンがになったおかげでユリカは無事だ。

そして、ジュン自身は頭頂部から噴水のように血を流しながらも笑顔で応対している。(爆)


ついでに言えば、イネスとゴート、それにプロスペクターはひなぎくで降下中。

フクベ提督は行方不明…。


…つまり、押さえ役無し。(爆)


しかも、この騒ぎに気付いた警備の無人兵器群がナデシコに向かって殺到してきている…。

ナデシコの運命は、まさに風前の灯であった…。


…。


「…こんな時…。」

「そうねぇ、アキト君が生きててくれればねぇ。」


勝手にアキトを殺すミナト。

そして…何故か一人だけ無傷なメグミがそんな事を言いあっている。


「…いない者をいってもしょうがないだろう…今あるものだけで何とかするんだ。」

「そうだね、それにアキトならどうしようもなくなった時にいいタイミングで帰って来るんです!」


「…ユリカ、その根拠は?」

「だって、アキトは私の王子様ですから!!」


…エッヘンと胸をはるユリカ。

それを見てクルーは転職か逃亡かを考えていたが、誰がそれを責められよう…。


「…そんな事より、敵です。」

「…エ?」


…くるっ

何時の間にやら復活していたルリの言葉に全員が振り向く。


…眼前でミサイル発射体勢のバッタが一機…!

だが、ナデシコは動けもしない…。


「…しまった…!!」

「フィールド張りつつ後退!!」


「…不可能です。」


的確な指示を出すユリカだが、返って来たのは…妙に冷静なルリの言葉。

…そう、現在のナデシコはフィールドを張ることすら出来ない状態なのだ…。


そして…バッタ達のミサイルが発射されようとしたその時…!


…ドォォォォン!!


「…わりぃ、遅くなった!!」

「…リョーコさん!!」


…パイロット三人娘のご登場である!


最近出番が薄く、描写すらされなかった彼女達だが…それでも彼女達の腕前は一流のそれなのだ。

…問題は周囲が人外だと言う事、その一点に尽きる。(爆)


だが、現在ここにいる敵は、普通の無人兵器。

人外には手も足も出せなくとも…このレベルの相手なら問題にはならない!


だが、視界の先では敵の増援の姿が見て取れる。

…そして果てしなき消耗戦…その幕が上がったのだった…。


…。


…10分後。
リョーコ達は順調に戦っていた。



「…エステバリス隊、敵の約三割を掃討。」

「うわー、凄い凄い!」


「ルリルリ…やっぱ頭打ったでしょ…何だか変よ…?」

「…馬鹿…。」


…。


…さらに10分後。
エステバリス隊にはまだ、一応の余裕が見られる。



「…敵増援、…無人兵器多数。」

「大丈夫大丈夫、ガツンといきましょう!」


「…艦長…そう言う問題ではないのですが。」

「…ルリルリ…。(汗)…でも、エステ頑張ってるから大丈夫じゃない?」


…。


…また10分後。
ジワジワと弾数が尽きる武器が現れ始める…。



「…また敵増援、戦艦3、無人兵器多数。」

「ホントに飽きないわねぇ…。」


「イズミ機被弾、帰還します…。」

「ええーっ!?…ルリちゃん、せめて後退を…。」


「…私じゃ無理です。」

「…じゃあ…さっきまで動かしてたのは誰?」


「…一応、私です…けど。」

「…でも、無理なのねルリルリ…。」


…。


そしてまた10分。
ビーム系の武器ですら、焼き切れて使用不能になる物が現れはじめる。



「…敵増援、チューリップです。」

「えええ!?…どうしようジュン君!!」


「ぼ、僕に振らないでよ!?」


「…ひなぎく、帰還しました。…戦闘の余波でそれどころじゃなかったみたい。」

「…よく生きて帰れたわねぇ…。」


…。


それから更にまた10分…。
…遂に…限界がやってきた。



「リョーコ機、被弾…損傷が激しいので帰還するそうです。」

「ヒカル機、バッテリー部に損傷!…行動不能です!!」


ルリ&メグミの報告に、流石のユリカも青くなる。


「そんな…。」

「実働兵器ゼロです。…艦長、どうします?」


「…イズミさんは!?」

「フレーム換装中、後1分以内に再出撃可能です。」


…だが、敵は容赦なくナデシコを取り囲んでいく。

…一気に勝負を決めるつもりだ!


「…敵に高エネルギー反応!」

「…ええっ!!」


…。


『…任せておけぃ。』

「「「…はい?」」」


突然…しゃがれた声が通信越しに聞こえる。

しかも、聞き覚えのある声だ。


「フクベ提督!?」

「…通信、護衛艦クロッカスからです。」


…よく見ると、クロッカスの外壁に人型の穴が空いている。

先日吹き飛ばされた後、ここに飛び込んだというのが真相であろう。


『…頭を打ったせいか、久々に正気に戻ったようじゃ。…ここはわしが押さえよう。』


そう言うと共に、クロッカスの砲塔が火を噴く!

そしてそれは、ナデシコに銃口を向けていたバッタ達に向かう…。


「提督…!!」

『わしは良い大人ではなかったな…。』


…。


…チュドォォォオオオン!!

…クロッカス艦体が一気に爆発する!(ヲイ)


ただの護衛艦、しかも改装前のクロッカスの攻撃なぞバッタにすら効く訳が無い。

フィールドでレーザー砲を弾いたバッタはそのまま180度反転し、

ナデシコに向けていたミサイル郡を、そのままクロッカスに向けた…!


…。


「…提督…。」

「…あそこで宙を舞ってるの…提督じゃない?」


…それを気にしてはいけない。(爆)

それよりも問題なのは…。


「…く、クロッカスが…。」

「…ジュン君、それがどうかしたの?」


…そう、それが大問題。(爆)

クロッカスが無くなってしまった…これでは帰還の際に差し支える。


…けれどそんな事よりも、

クロッカスを葬ったバッタ達が、再びナデシコに向かってくる事の方が何倍も問題であろう。



だが、それらが再びナデシコに向き直る事は無かった。



「高エネルギー反応…凄まじい勢いで迫ってきます。…これは!」

「あー、目でも見えるわよルリルリ。…流石にアレぐらいじゃあ死なないのね。」



…。




「…ルリィッ!!…サフィィィイッ!!」


…荒野の彼方からこれでもかと言う勢いで迫り来る人影がある。

それはナデシコに向かって一直線に走り寄って来ていた…。


「判り易い奴だな…。」
「アキ君…。妹さん思いって良い事なんだよ…ね?」
「…でもぉ、アレはちょっと行き過ぎじゃない…?」


「…アキト!…私のピンチに助けにきてくれたのね!!」


…呆れ帰る一般クルー、そして浮かれるユリカの対比がどうしようもない雰囲気をかもし出す中、

アキトはバッタの群れに突っ込む!!




…。




それから数分…アキトは敵陣をかき回していた。

…そして、その頃ようやく辿り着いたオモイカネが、ナデシコを起動させる…。































「グラビティブラスト…発射ぁ!!」






























…こうして、散々苦労したわりにいやにあっさりと決着がついたのであった…。

ただしこの苦戦は敵の強弱がどうこうと言うより、ナデシコ側の自滅と取れないでもないが。


だが、挨拶もそこそこにアキトは格納庫に飛び込み、自機に飛び乗ると即座に飛び出していく…。


「…あ、アキト!?」

「機体を借りる!…コウの奴が何時まで持つかわからん!!」


…アキトは来た道を戻っていく。

そう、アキトはコウと枝織にしんがりを頼み、機体を取りにきていたのだ。



…。



…ナデシコがアキト達に追いついたのは、それから数時間後のことだった。


「枝織ちゃん…しっかり!!」

「…ううっ…。」



あちこちボロボロなアキトの機体は、その片腕にぐったりとした枝織を載せ、

ライフルのみで敵に応戦している。


「お兄ちゃん…!」

「あ、サフィーちゃん…あれって例のハニワじゃない!?、」


…あの後、原因不明の昏睡状態に陥ったルリの代わりに入ったサフィーの悲鳴が響く。


敵も半壊しているがこちらも半壊状態だ…かなりの相手である事は間違いない。

しかも、敵の破壊箇所はかなり年代モノが多いのだ…。



「と、とにかくアキトを援護します!!」

「…そうだね、訳判んないけど敵みたいだし…。」


…そうして、ナデシコも敵に近づいていく。

『史実』に無い展開に、ジュンなどは頭をひねりながら…だが。


…。


そんなナデシコを後方の丘の上から眺める一団がある。


「…サレナ様。…クロッカスが失われた今…どうするのです?」

「…アレが倒されるまでは静観を。…後は予定調和に近づけるように細工を致しましょう。」


…銀色の機体の言葉に、大鎌を持つ黒い機体が応えた。


「…クロガネは…?」

「適当なチューリップを捕獲したと報告が入っています。…いずれ到着するでしょう…。」


…大鎌を持つ黒い機体と狙撃銃を持つ銀色の機体。

その背後に…もう一機、漆黒の機体が鎮座していた。


「…ユリカ…。」


…コクピットハッチが開き、中から一人の男が顔を出す。

漆黒のマント…そして黒いバイザー…。


「…父上…?」

「サレナ様…陛下の精神波形に異常値が見られます…!」


…ゴォッ!!


「…あっ!?」

「…陛下。」



止める暇も無かった。

漆黒の機体が宙に浮き、そのまま猛スピードで突っ込んでいく…!


「…ブラックサレナ・オリジナル。…遮光を撃破…。」

「…父上…何をなさるおつもりなのです…?」


そして…丘の上には2機の機動兵器だけが残された。

そして…飛び去った機動兵器からの通信だけがその場に響く。



ユリカ…ユリカ……ユリカぁッ!?…ククク…クククククククククク、ヒャーハッハッハハハハハ…ハハハハハハハ……!!』



…そこにいたのはかつて『黒帝』と呼ばれた男。

………その、残骸であった…。


続く


::::後書き::::

BA−2です。


…黒アキト、崩壊してます。

しかも、長い間話に絡んで来なかったオリキャラも再登場させてるし…。(汗)


次辺りでようやくナデシコがチューリップに入ってくれるでしょう。

…ようやく8ヶ月のジャンプと相成るわけです。


こんな駄文…しかも今回はかなり短いですが、応援してくださると嬉しいです。

今後も頑張るんでどうかよろしく。

では!


 

 

代理人の感想

ハニワと土偶は違うのよ〜〜〜っ!

 

と、そこはかとなく嫌っぽい突っ込みをいれて本題。

 

なんか暴走してますけど、こ〜ゆ〜ところに黒帝陛下連れて来てどうするつもりだったのかな(汗)。

ギャグだったら黒帝がルパンダイブかますくらいでケリがつくと思いますけど、これ一応シリアスだし(爆)。