機動戦艦ナデシコ  アナザーストーリー

 
                           世紀を超えて

                      第30話  歴史は繰り返す

 

…某月某日・午前10:00…。

独立派と連合軍との間で、和平会談が開かれようとしていた…。

…双方の幹部級が集い、今後の事を話し合う。


そして、これからの歴史を決定付ける為の場でもあるのだった…。

・・・。

独立派側・控え室

「…凄い、将軍クラスが大勢出席してる…。」


ナツメの感嘆も無理は無い。

彼女が手に持つのは連合側の出席者一覧。

…そこには連合のお偉方がズラリと揃い踏みしていた。

「…此方を評価してくれているのか?」


月臣である。

…因みにこの会議に出席するのは

アキト・ナツメ・月臣。


そして、月に残った独立派の代表達であった。

「…さあな…しかし…銃は拙くないか?」


…アキトがそこで言いよどむ。

会議出席者に、拳銃を所持して居る者がいるのに気づいたのだ。


「…ほっほっほ…気になさるな英雄殿?」
「相手は、あの軍部ですゆえ。」
「一応です、一応。」

…そうは言うものの、月残留組の所持するのは44マグナム…。

人を殺すには十分だ。


「ま、軍相手に撃ったら全面戦争ゆえ…。」
「敵相手に撃ちかける事は無いでしょう。」
「用心ですよ、用心…。」


…だが、アキトはこの…『独立派のお偉方』に対し…

一抹の不安を覚えるのだった…。


・・・。


和平会談の会場。

そこは、都市から独立した、一個のドームだった。

…中立を保つ為に、両者から選出された作業員により作られた、

仮設の大会議場だ。

…。

両者の代表が大広間に入る。

…そこには多くの椅子が設けられていた。


しかもご丁寧に、中央には分厚い防弾ガラス。

見た目には映画館で、スクリーンにそっくりな部屋が映っている…と言ったところか。


…そこで会議になるのか、多いに不安が残る。

…だが、拳銃を所持する者が多い以上、やむをえない処置だろう…。


しかし…、


「本当に大丈夫なのか…?」


…これが偽らざるアキトの本音であった…。

そして、不穏な空気の中…会議が始まろうとしていた…。


・・・。


「…わし等は怖いから後ろに座ろうかの?」


…独立派・月残留組のトップがそう言い放つ。


「…どうぞ…アタシ達は前に行くよ。」

「相手に信用されない限り、会議の成功は無い!」


…ナツメと月臣は最前列に…。


「考えても仕方ない…か。」


…そして、アキトも…。


・・・。


「…では、第一回和平会談を開催します。」


…ナツメの声が響く…。

そして、形式通りの挨拶などが交わされる…。

「…なお、この会議に参加して頂いた返礼として、会議の成果如何に関わらず、現在捕虜であるアオイ・マスミ中尉をお返ししたいと存じます…。」

…現在、マスミは別室にいる。

…そこで、会議が終わるのを待っているのだろう。


・・・。


双方の和平条件が書かれた紙が配られた…。

が…そこには…。


「…印刷ミスかね?」


…ミスマル中佐が不思議そうに言った。

…そこにあるのは…白紙…。


「どう言う事?」


ナツメの手にあるのも…白紙。


・・・。


不可解な沈黙が続く…。


…それを破ったのは…


バァ…ン


…あの時と同じ…一発の銃声だった…。


・・・。


どさっ…


…アキトは突然横から襲ってきた衝撃で倒れ込む!


(…どう言う事だ!?)


そこに…スッ…と影が差す。


「済まん…テンカワ…!!」


(…月臣!?)


・・・。


苦悩の表情で月臣は事の顛末を話し出した・・・。


…全ては、数日前に遡る。

突然、月臣の前に独立派の最高幹部が訪ねて来た。


「…テンカワを殺せと!?」


…それが訪問の内容だった。

もう既に、軍との折衝は付いているのだと言う。


…実際の会議でも、それ以前の協議で既に結論は決まっている場合が多いらしいが。

…そして…軍が独立派に求めた事はただ一つ。


…それは…『黒帝』の抹殺…。


…これに独立派のトップは喜んだ。

英雄等と言う物が役に立つのは実際、戦時中だけである。

…平和な時代の英雄は…権力者にとって政敵以外の何物でもない。

しかも…大抵の場合、市民からの強烈な支持を受けている以上、通常のやり方では勝ち目は無い。

…それを消せと言うのだ。


しかも、そのお陰で連合政府から多大な譲歩を引き出す事も出来た。
正に一石二鳥。


その上、今回の戦いで飛ぶ鳥落とす勢いのナツメの勢力を削ぐ事も出来る。
すなわち、一石三鳥。


独立派のトップにそれを断る理由など存在しなかった…。


・・・。


「…勿論、一度は断った、だが…。」


…アキトに駆け寄ろうとするナツメを羽交い締めにしながら月臣は続ける。

…泣きが入っているのは見間違いではあるまい。

・・・。


アキト暗殺…断ろうとした月臣だが、帰ってきた返答は恐るべきものだった。


「では、ナツメ君にも死んでもらわんとな…。」


…これは、言葉通りの意味ではない。

ナツメにアキト暗殺の罪を被せると言う意味だ。

…社会的に死んでもらうと言う意味だと思えば良い。


…月臣は数分間顔を歪めて思案した後…うなだれながら言う。


「承知…しま…した…。」


…既に自分には監視がついていた。

自分がやらねば二人とも殺される…。


…月臣弦悟郎…苦渋の決断であった…。

・・・。


「…と言う訳だ…誰も…会議などする気は無かったんだよ…済まん。」


・・・。


この時、アキトは月臣の言外の意図を察した。


月臣の銃は旧式だ。

…普通の人ならともかく、アキトなら死なない…と考えたのだろう。


…そこでアキトは…一計を案じる…。


・・・。


アキトの周囲に血液らしき物が溜まり始めた…。

…当のアキトはピクリともしない。


…実は、アキトは用心の為に血袋を巻いていた。

まさか、味方から狙撃されるとは思わなかったろうが…。


・・・。


「嫌ぁッ…アキトぉっ!!」


…泣き喚くナツメを抑えながら、月臣は心の中で詫び続けるのだった…。


・・・。


「さて、これで契約は果たしましたぞ?」


…独立派トップの爺がニヤつきながら話し出す。


「…そうですな…では、これで…。」


…そして、双方立ち去ろうとした。

ナツメも月臣に羽交い締めされた状態で連れていかれる。


「…ナツメ君は火星に戻って貰おうかのぉ。」

「研究所の所長さん…ですしねぇ…。」


…まだ泣き止まないナツメに対し、満足そうに声がかけられる。

それは、獲物を追い詰めた猫のようであった…。


・・・。

「…待ってくれ!!」


…突然声を荒げる者が一人…ミスマル中佐だ!


「いきなりの事で何がなんだか解らん…明確な説明を乞う!!」


…その言葉には、あまりに理不尽な現状に対する怒りすら見える。


「そうそう、忘れていたよ。」


バァ…ン!


「ぐっ!?」


中佐が背後から撃ちぬかれた!


「…無用心ねぇ…中佐?」

ふふんと鼻を鳴らしながら出てきたのは…ムネタケ!?


「ご苦労。」


…連合軍の将官がムネタケを労う…?


ガハ…一体…どう言う…?」


ガツッ!


…息も絶え絶えの中佐に対し、顔を靴で踏みつけながらムネタケが言う。


「…厄介払いよ。」


つまり、こう言うことだ。

…軍部はテンカワ大佐を疎ましく思っていた。

性能が良くても、制御できない歯車は不要だと言う考え方。


…そして、今回…マスミが敵の捕虜になったと聞いた軍部はある策を弄す。


そのシナリオとは…


@…従兄弟であるマスミを人質に取られたミスマル中佐は、敵のスパイと成り果てる。

A…そして、敵内部に存在する反黒帝グループの指示の元、和平会議の途中、
黒帝を撃ち殺す。

B…その後マスコミには、敵から『軍により黒帝謀殺』の報がもたらされる。

Cその後の調査で真犯人が判明。

D部下の前代未聞な不始末の責任を取り、大佐は死刑。


…酷い話だ…更に無茶苦茶だ。

だが、これが地球で発表されれば…恐らく大多数の人間は信じてしまうのだろうが…。

・・・。


「私の大降格もその為の物よ。」

「…大佐はあれで用心深いからな。」

「第一、4等兵なんて階級…ある訳無いでしょうが?」


「ぐ…貴様等っ!」


…グリッ!!


ムネタケの靴に力が篭る…!


「…上官に対しての口の聞き方がなってないわね?」

「まあまあ、中将…死ぬ間際の人間の戯言だ。」


「…ち、中…将!?」


唖然とする中佐。


「そ、今回の功績で昇進するのよ…地球に帰ったら…私は…。」

「…中将は極東方面軍の司令官に就任するのだよ。」

「…全ての部下は私の昇進の為の駒…。」


・・・。


「中佐…私の為に死になさい!

…そして…言いたい事だけ言った後、ムネタケ達は部屋を後にする…。

少しして、ムネタケがひょっこり戻ってきた。


「そうそう…このドームには爆弾が仕掛けてあるわ。」

「私を愚弄した罪は重いわよ…恐怖の中で死ぬと良いわ!!」


「おーほっほっほっほっほ!!」


そして、また去っていく。

…そして…会場には二人だけがとり残された…。


続きます!


::::後書き::::

BA−2です。

長くなりそうなんで、ここで切ります。

…コメントは次でまとめて…。